【実施例】
【0037】
塗付用泥状物としての形態のモルタルは,構成,施工が単純・簡素であることから,いわゆる成形性,保形性,可撓性又は柔軟性,安定性すなわち長期の経時変化が小さいこと等の定形モルタルの具備条件が不要であって,成形体と同様・同程度の充填性,膨張性等の目地の構造体として必要な特性をより容易に得ることができる。
そこで,実施例A〜Cに,塗付用泥状物としての形態より複雑で特性に影響が生じやすい事前成形を行った定形モルタルについて,諸特性を確認した実施例を示す。
実施例Dに,塗付用泥状物としての形態のモルタルについて,諸特性を確認した実施例を示す。
さらに実施例Eに,実形状・構造のノズルと内孔スリーブを使用して,本発明のモルタルを設置して予熱及び溶融金属を注入した実験結果を示す。
【0038】
[実施例A]
実施例Aは,未膨張のバーミキュライト量の影響を調査した結果を示す。
試料は,表1に記載の配合物の構成で,前述の製造方法により得た。
未膨張のバーミキュライトは0.25mm〜1.0mm,フリット粉は0.2mm以下の,SiO
2を約40〜50質量%,B
2O
3を約20〜30質量%,Na
2Oを約20〜30質量%程度の化学組成,その他耐火原料としては200μm以下の焼結アルミナ(Al
2O
3純度≧95質量%)と粘土(非加熱,Al
2O
3:25質量%〜30質量%,SiO
2:50質量%〜60質量%)を使用した。
エチレン酢ビ系エマルジョンとしては,樹脂濃度58質量%,粘度200cps,pH5のものを使用した。また,テキサノールとしては,2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレートであるテキサノールモノイソブチレートを使用した。
評価は,混練物の成形性,常温での可撓性,800℃及び1650℃(共に1時間保持)での膨脹充填性(膨張状態と充填状態及び接着性),目地材としての使用可否としての総合評価にて行った。
ここで1650℃の温度条件を選択したのは,溶鋼鋳造中の温度に長時間曝される熱付加条件を短時間で確認するために,温度を高めたためである(熱付加=温度×時間)。
また,本発明のモルタル用配合物が溶鋼鋳造中の温度よりも低温度で溶融する成分を多く含んでいることによる使用時の変化を確認するためでもある。
混練物の成形性は,加圧成形後の乾燥によって所望の形状が得られたか否かで評価を行った。
常温の可撓性は,JIS−K6301加硫ゴム物理試験方法記載のスプリング式硬さ試験機を使用して評価した。測定した数値が小さいほど柔らかく,可撓性があることを示す。本発明においては,設置対象部位の内孔スリーブ径として最小と思われるφ80mm程度に変形可能な程度(変形前の形状を板状とする)を目標として調整した。
800℃での膨脹・充填・接着性(膨張状態と充填状態及び接着性,以下「膨張充填接着性」という。)は厚み4mmの定形モルタルを準備し,8mm隙間の並型れんが間にセットして800℃熱処理を実施し,熱処理後の前記隙間への充填性と接着性を目視確認にて評価した。結果は◎(優),○(良),×(不可)によって示し,◎,○を合格とした。すなわち,◎は隙間が無く,れんがからの取り外し時のれんがへの接着が有る場合,○は隙間が殆どないが,ごく僅かな一部に隙間があるか,又はれんがからの取り外し時のれんがへの接着が殆どあるが,ごく僅かな一部に無い場合,×は殆どに隙間があるか,れんがからの取り外し時のれんがへの接着が殆ど無い場合,である。
1650℃での膨脹・充填・接着性(膨張状態と充填状態及び接着性)においても前記800℃と同様の方法,評価方法とした。
総合評価は,定形目地材として使用可能である場合を◎(優),○(良),定形目地材としての使用には難があるものの,使用自体は可能又は不定形モルタルのように使用することは可能である場合を△(可),いずれの使用方法であっても目地材としては使用不可の場合を×(不可)として示した。
なお,これら試料の作成方法,評価方法・基準は,実施例B〜Dにおいても同じである。
【0039】
実施例Aの結果を表1に結果を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
比較例1は焼結アルミナ85質量%,バーミキュライト5質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)35質量%,テキサノール(可塑剤)2質量%を外掛けで添加して,卓上ミキサーを用いて混練し,厚み4mmのシート状に加圧成形して約80℃で乾燥させ,水分を蒸発させることによって定形目地材を作製し,評価を行った
評価結果は表1に示すとおり,混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性はあるもののバーミキュライトの添加量が少ないため800℃,1650℃共に膨脹充填性に劣り,不適格と判定した。
【0042】
実施例1では焼結アルミナ80質量%,バーミキュライト10質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで30質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,比較例1同様,定形目地材を作製し評価を行った。評価結果は表1に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。
【0043】
実施例2では焼結アルミナ75質量%,バーミキュライト15質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)35質量%,テキサノール(可塑剤)2質量%を外掛けで添加して,比較例1同様,定形目地材を作製し評価を行った。評価結果は表1に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。中でも1650℃での膨張充填接着性は,バーミキュライト量が増えた分,実施例1よりも良好であった。
【0044】
実施例3では焼結アルミナ70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)35質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,比較例1同様,定形目地材を作製し評価を行った。評価結果は表1に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。中でも1650℃での充填状態は,バーミキュライト量がさらに増えた分,実施例2よりも良好であった。
【0045】
比較例2では焼結アルミナ65質量%,バーミキュライト25質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)40質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,比較例1同様,定形目地材を作製し評価を行った。評価結果は表1に示すとおり,800℃での膨張充填接着性は良好だったものの,1650℃では バーミキュライト量がさらに増えた分,定形目地材自身の耐火度が低下して液相過多となり1650℃の膨張充填接着性は劣る結果であった。
【0046】
比較例3では焼結アルミナ65質量%,バーミキュライト25質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)40質量%,テキサノール(可塑剤)2質量%を外掛けで添加して,比較例1同様,定形目地材を作製し評価を行った。評価結果は表1に示すとおり比較例2よりテキサノール(可塑剤)が増えた分,常温の可撓性は大きくなった(可撓性の数値小→可撓性 大)。そして800℃での膨張充填接着性は良好だったものの,1650℃では比較例2と同様にバーミキュライト量がさらに増えた分,定形目地材自身の耐火度が低下して液相過多となり1650℃の充填状態は劣る結果であった。
【0047】
[実施例B]
実施例Bは,フリット粉末量の影響を調査した結果である。表2に結果を示す。
【0048】
【表2】
【0049】
比較例4は焼結アルミナ84.5質量%,バーミキュライト10質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末0.5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)35質量%,テキサノール(可塑剤)2質量%を外掛けで添加して,卓上ミキサーを用いて混練し,厚み4mmのシート状に加圧成形して約80℃で乾燥させ,水分を蒸発させることによって定形目地材を作製し,評価を行った
結果は表2に示すとおり,混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性あるもののフリット粉末の添加量が少ないため800℃,1650℃共に膨脹充填後,れんがとの密着性に劣り不適格と判定した。
【0050】
実施例4では焼結アルミナ84質量%,バーミキュライト10質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末1質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで30質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,比較例4同様,定形目地材を作製し評価を行った。評価結果は表2に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。
【0051】
実施例5では焼結アルミナ80質量%,バーミキュライト15質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末3質量%,粘土5質量%を副原料として配合した耐火原料配合B 100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで35質量%,テキサノール(可塑剤)2質量%を外掛けで添加して,比較例4同様,定形目地材を作製し評価を行った。評価結果は表2に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。
【0052】
実施例6では焼結アルミナ80質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで35質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,比較例4同様,混練を実施した。評価結果は表2に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。
【0053】
比較例5では焼結アルミナ80質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末6質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)40質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,比較例4同様,定形目地材を作製し評価を行った。評価結果は表2に示すとおり800℃での膨張充填接着性は良好だったものの,1650℃ではフリット量がさらに増えた分,定形目地材自身の耐火度が低下して液相過多となり1650℃の膨張充填接着性は劣る結果であった。また一部に収縮傾向も観られた。
【0054】
[実施例C]
実施例Cは,耐火原料種の影響を調査した結果である。表3に結果を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
実施例7は電融スピネル84質量%,バーミキュライト10質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末1質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)30質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,卓上ミキサーを用いて混練し,厚み4mmのシート状に加圧成形して約80℃で乾燥させ,水分を蒸発させることによって定形目地材を作製し,評価を行った
評価結果は表3に示すとおり,混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。そして800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。
【0057】
実施例8では電融スピネル70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで35質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。評価結果は表3に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。中でも1650℃での膨張充填接着性は,バーミキュライト量が増えた分,実施例7よりも良好であった。
【0058】
実施例9ではムライト70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)42質量%,テキサノール(可塑剤)2質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。評価結果は表3に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。中でも1650℃での膨張充填接着性は,バーミキュライト量が増えた分,実施例7よりも良好であった。
【0059】
実施例10ではシリマナイト族の一種であるアンダーリュサイト70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)39質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。評価結果は表3に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。中でも1650℃での膨張充填接着性は,バーミキュライト量が増えた分,実施例7よりも良好であった。
【0060】
実施例11ではペリクレース70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)35質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。評価結果は表3に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。中でも1650℃での膨張充填接着性は,バーミキュライト量が増えた分,実施例7よりも良好であった。
【0061】
実施例12ではジルコニア(未安定)70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)22質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。評価結果は表3に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。中でも1650℃での膨張充填接着性は,バーミキュライト量が増えた分,実施例7よりも良好であった。
【0062】
実施例13ではジルコン70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した耐火原料配合物F100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)25質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,比較例1同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。評価結果は表3に示す通り800℃での膨張充填,1650℃での充填状態,共に良好であった。中でも1650℃での充填状態は,バーミキュライト量がさらに増えた分,実施例7よりも良好であった。
【0063】
実施例14ではクオーツ70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)45質量%,テキサノール(可塑剤)2質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は良好で乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。評価結果は表3に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性,共に良好であった。中でも1650℃での膨張充填接着性は,バーミキュライト量が増えた分,実施例7よりも良好であった。
【0064】
実施例15はエチレン酢ビ系エマルジョンの濃度を40質量%のものを使用した例である。電融スピネル70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで35質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は エチレン酢ビ系エマルジョン濃度40%で水分割合が60%のため軟らかであったものの良好で,乾燥後,常温で可撓性ある定形目地材が得られている。評価結果は表3に示すとおり800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性は,バーミキュライト量が増えた分,実施例7よりも良好であった。
【0065】
実施例16はエチレン酢ビ系エマルジョンの濃度を38質量%のものを使用した例である。電融スピネル70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで35質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は エチレン酢ビ系エマルジョン濃度38%で水分割合が62%のため さらに軟らかであったが エチレン酢ビ系エマルジョン濃度(樹脂濃度)が38%と低く,乾燥後の成膜機能が相対的に低く,成形体を変形させようとするとひび割れが発生した。このモルタルは熱間では膨張するのでひびの存在自体は致命的な現象ではないものの,例えば内孔スリーブの形状に合致するように変形させる場合には難がある。
【0066】
実施例17はエチレン酢ビ系エマルジョンの濃度を58質量%のものを使用した例である。電融スピネル70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで35質量%,テキサノール(可塑剤)6質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性は可塑剤が多い分,軟らかであった。さらに乾燥後,単に置く等の成形体としての作業にはその保形性が低いことで難があったが,泥状の不定形モルタルとの中間的な施工方法としては使用可能であった。
【0067】
実施例18はエチレン酢ビ系エマルジョンの濃度を65質量%のものを使用した例である。電融スピネル70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,エチレン酢ビ系エマルジョン(結合剤)の添加量を外掛けで35質量%,テキサノール(可塑剤)1質量%を外掛けで添加して,実施例7同様,定形目地材を作製し評価を行った。混練物の成形性はエチレン酢ビ系エマルジョン濃度65%で水分割合が35%のため 硬めであった。乾燥後の定形目地材は エチレン酢ビ系エマルジョン濃度(樹脂濃度)が65%と多く,乾燥後の成膜機能過多のため,変形能が小さく,特定の成形後の形状通りの設置を行う用途では問題ないものの,その形状から一部を変形させて設置する用途には不向きであった。
【0068】
[実施例D]
実施例Dは,泥状(塗付用)モルタルを例に調査した結果である。表4に結果を示す。
【0069】
【表4】
【0070】
実施例19では電融スピネル70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,増粘剤(兼結合材)としてのデキストリンを1質量%,界面活性剤(分散剤)としてのリン酸ソーダ系を0.1質量%,界面活性剤(凝集剤)としてのリン酸アルミ系を0.05質量%,希釈用液体としての水を25質量%,それぞれ外掛けで添加して泥状(塗付用)モルタルを作製し,耐火れんが表面へのヘラ塗り(厚み4mmのシート状)により塗布作業性を確認した。その結果,表4に示すとおり塗布作業性は良好であった。その後,昇温しての800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性も良好であった。
【0071】
実施例20では電融スピネル70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,増粘剤としてのメチルセルロース系を1質量%,界面活性剤(分散剤)としてのリン酸ソーダ系を0.1質量%,界面活性剤(凝集剤)としてのリン酸アルミ系を0.05質量%,希釈用液体としての水を15質量%とエチレングリコール系を15質量%の混合液にて泥状(塗付用)モルタルを作製した。その後,耐火れんが表面へのヘラ塗り(厚み4mmのシート状)により塗布作業性を確認した。その結果,表4に示すとおり塗布作業性は良好であった。その後,昇温しての800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填も良好であった。
【0072】
実施例21では電融スピネル70質量%,バーミキュライト20質量%からなる主原料(耐火原料)に,フリット粉末5質量%,粘土5質量%を副原料として配合した配合物100質量%に対して,結合材としてのフェノール樹脂を10質量%,希釈用液体としてのエチレングリコール系を30質量%の混合液にて泥状(塗付用)モルタルを作製した。その後,耐火れんが表面へのヘラ塗り(厚み4mmのシート状)により塗布作業性を確認した。その結果,表4に示すとおり塗布作業性は良好であった。その後,昇温しての800℃での膨張充填接着性,1650℃での膨張充填接着性も良好であった。
【0073】
[実施例E]
実施例Eは,
図1(b)の,ノズル内孔に内孔スリーブを設置する形態において,ノズル内孔と内孔スリーブ間に本発明の定形モルタルを設置し,800℃に加熱し,その後内孔スリーブ及びノズルの内孔に溶融金属を注入した実験結果を示す。
【0074】
ノズル内径は86mm,スリーブ外径は70mm,定形モルタルの厚さは4mm,定形モルタルの高さは50mm,定形モルタルの供試料は前記の実施例1とした。
予熱後の状態は,内孔からバナーで加熱し,内孔表面温度を800℃にて0.5時間維持した後冷却し,縦方向に切断してその断面を観察した。
溶融金属の注入実験は,前記予熱後800℃を維持した内孔部に溶融金属を上から流し込む方法とした。
溶融金属としては,モルタルの充填状態すなわち隙間の有無がより明確に現れるように溶鋼よりも粘性が低い約1600℃の溶銑を使用し,内孔スリーブの上端を超えその外部のノズル内孔部分まで溶銑を充填した。
実験後の状態は,冷却後に縦方向に切断してその断面を観察した。
【0075】
実験の結果,予熱後,溶銑注入後のいずれの試料も定形モルタルが隙間全体を充填した状態であり,モルタル組織中や隙間への溶銑の侵入は観られなかった。またノズル間の目地付近を含め,ノズル等に酸化は観られず,目地間からの外気の侵入も観られなかった。