特許第6792489号(P6792489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792489
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20201116BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20201116BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20201116BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B01J35/04 301F
   B01J35/04 301C
   B01D39/20 D
   B01J35/04 301E
   F01N3/022 BZAB
   F01N3/28 301P
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-42738(P2017-42738)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-143974(P2018-143974A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】森 和也
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−326035(JP,A)
【文献】 特開2010−001205(JP,A)
【文献】 特開平11−268018(JP,A)
【文献】 特開2010−234316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/90,53/94−53/96
F01N 3/022
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、及び前記隔壁の外周の少なくとも一部に配設された第一外周壁を有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部の外側を囲繞するように配設された第二外周壁と、を備え、
前記ハニカム構造部は、前記セルの延びる方向に直交する断面における中央側に配設された前記隔壁によって構成された中央部と、前記中央部の前記隔壁よりも前記隔壁の厚さが厚くなるように構成された外周部と、を含み、
前記ハニカム構造部は、前記外周部における最外周の前記隔壁と前記第一外周壁との界面がないものであり、
前記第一外周壁と前記第二外周壁の合計の最大厚さX1が、1.2〜3.0mmであり、
前記第一外周壁と前記第二外周壁の合計の最大厚さX1と、前記第一外周壁と前記第二外周壁の合計の最小厚さX2と、の差Yが、0.2〜1.5mmであり、且つ、
前記ハニカム構造部が、下記式(1)の関係を満たす、ハニカム構造体。
式(1):0.5≦AB≦9.0(但し、式(1)において、Aは、前記外周部における前記隔壁の平均厚さTB[μm]と、前記中央部における前記隔壁の平均厚さTA[μm]と、の差の値であるTB−TA[μm]を示す。式(1)において、Bは、前記セルの延びる方向に直交する断面における前記ハニカム構造体の面積SA[cm]に対する、当該断面における前記外周部の面積SB[cm]の比であるSB/SAを示す。)
【請求項2】
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記ハニカム構造体の直径が、177.8〜266.7mmである、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記第一外周壁と前記第二外周壁の合計の最小厚さX2が1.4mm未満である、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記外周部における前記隔壁の平均厚さTB[μm]と、前記中央部における前記隔壁の平均厚さTA[μm]と、の差Aが、9〜25μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記ハニカム構造体の面積SA[cm]に対する、当該断面における前記外周部の面積SB[cm]の比である前記Bを百分率で表した百分率B[%]が、10〜30%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
複数の前記セルのうちの少なくとも一部の前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側の開口部に配設され、当該セルの開口部を目封止する目封止部を更に備えた、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、寸法精度に優れるとともに、アイソスタティック強度(Isostatic strength)にも優れたハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用される触媒装置用の担体として、セラミック製のハニカム構造体が採用されている。また、セラミック製のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒担体やフィルタとしても用いられている。このようなセラミック製のハニカム構造体は、耐熱性、耐食性に優れたものであり、上述したような種々の用途に採用されている。
【0003】
ハニカム構造体は、排ガスの流路となり複数のセルを区画形成する隔壁、及び隔壁の外周を囲繞するように配置された外周壁、を備えた柱状のものである(例えば、特許文献1参照)。このようなハニカム構造体は、例えば、セラミック原料等を含む成形原料を押出成形してハニカム形状の成形体を得、得られた成形体を乾燥し、焼成することによって製造されている。上記のような方法によって製造されたハニカム構造体は、隔壁と外周壁とが一度の押出成形によって形成されているため、隔壁と外周壁とが連続した1つの構造物となっている。以下、隔壁と外周壁とが押出成形等によって一体的に形成されたハニカム構造体を、「一体型ハニカム構造体」ということがある。
【0004】
また、ハニカム構造体の外周壁を研削加工等の機械加工によって除去し、除去した外周壁の代わりに、セラミック原料を含む外周コート材を塗工して、外周コート層を形成する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。外周コート層を備えたハニカム構造体は、外周壁が機械加工によって除去されているため、隔壁と外周コート層とが、異なる構造物となっている。以下、外周コート層を備えたハニカム構造体を、「外周コートハニカム構造体」ということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−39761号公報
【特許文献2】特開2013−56825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一体型ハニカム構造体は、外周コートハニカム構造体と比較して、外周壁の厚さを薄くしても、耐熱衝撃性に優れるという利点がある。しかしながら、一体型ハニカム構造体は、隔壁と外周壁とが押出成形等によって一体的に成形されているため、得られるハニカム構造体の寸法精度が悪くなり易いという問題があった。
【0007】
特に、大型のハニカム構造体は、寸法精度が悪くなり易い傾向がある。このため、大型のハニカム構造体は、その外周部分において、セルよれ等の隔壁の変形が生じ易く、アイソスタティック強度が低下してしまう、という問題があった。
【0008】
更に、従来、ハニカム構造体の外周部分における隔壁の厚さが、当該外周部分よりも内側の中央部分における隔壁の厚さより、相対的に厚くなるように構成されたハニカム構造体が提案されている。このようなハニカム構造体に対して、上述した外周コート層を備えた構成を適用しようとすると、外周研削において、ハニカム構造体の中心出しが難しく、外周部分及び中央部分の形状、狙い通りの形状とすることが困難になるという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、寸法精度に優れるとともに、アイソスタティック強度にも優れたハニカム構造体に関する。特に、大型のハニカム構造体において、圧力損失や耐熱衝撃性を悪化させることなく、寸法精度、及びアイソスタティック強度の向上を図ることが可能なハニカム構造体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下に示すハニカム構造体が提供される。
【0011】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、及び前記隔壁の外周の少なくとも一部に配設された第一外周壁を有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部の外側を囲繞するように配設された第二外周壁と、を備え、
前記ハニカム構造部は、前記セルの延びる方向に直交する断面における中央側に配設された前記隔壁によって構成された中央部と、前記中央部の前記隔壁よりも前記隔壁の厚さが厚くなるように構成された外周部と、を含み、
前記ハニカム構造部は、前記外周部における最外周の前記隔壁と前記第一外周壁との界面がないものであり、
前記第一外周壁と前記第二外周壁の合計の最大厚さX1が、1.2〜3.0mmであり、
前記第一外周壁と前記第二外周壁の合計の最大厚さX1と、前記第一外周壁と前記第二外周壁の合計の最小厚さX2と、の差Yが、0.2〜1.5mmであり、且つ、
前記ハニカム構造部が、下記式(1)の関係を満たす、ハニカム構造体。
式(1):0.5≦AB≦9.0(但し、式(1)において、Aは、前記外周部における前記隔壁の平均厚さTB[μm]と、前記中央部における前記隔壁の平均厚さTA[μm]と、の差の値であるTB−TA[μm]を示す。式(1)において、Bは、前記セルの延びる方向に直交する断面における前記ハニカム構造体の面積SA[cm]に対する、当該断面における前記外周部の面積SB[cm]の比であるSB/SAを示す。)
【0012】
[2] 前記セルの延びる方向に直交する断面における前記ハニカム構造体の直径が、177.8〜266.7mmである、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[3] 前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記第一外周壁と前記第二外周壁の合計の最小厚さX2が1.4mm未満である、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0014】
[4] 前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記外周部における前記隔壁の平均厚さTB[μm]と、前記中央部における前記隔壁の平均厚さTA[μm]と、の差Aが、9〜25μmである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[5] 前記セルの延びる方向に直交する断面における前記ハニカム構造体の面積SA[cm]に対する、当該断面における前記外周部の面積SB[cm]の比である前記Bを百分率で表した百分率B[%]が、10〜30%である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
[6] 複数の前記セルのうちの少なくとも一部の前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側の開口部に配設され、当該セルの開口部を目封止する目封止部を更に備えた、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体は、寸法精度に優れるとともに、アイソスタティック強度にも優れるという効果を奏するものである。本発明のハニカム構造体は、隔壁と第一外周壁とによって構成されたハニカム構造部の外側に、第二外周壁を更に備えたものである。ハニカム構造部は、隔壁と第一外周壁の界面がないものである。したがって、ハニカム構造部は、隔壁と第一外周壁とが連続した1つの構造物となっている。本発明のハニカム構造体は、上記式(1)の関係を満たすものであるため、寸法精度、及びアイソスタティック強度の向上を図ることができる。特に、本発明のハニカム構造体は、大型のハニカム構造体において、圧力損失や耐熱衝撃性を悪化させることなく、寸法精度、及びアイソスタティック強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。
図3図2のX−X’断面を模式的に示す、断面図である。
図4図2に示すハニカム構造体の、第一外周壁及び第二外周壁の一部を拡大した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。
【0020】
(1)ハニカム構造体(第一実施形態):
本発明のハニカム構造体の第一実施形態は、図1図4に示すようなハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、ハニカム構造部5の外側に、第二外周壁4を更に備えたものである。ハニカム構造部5は、多孔質の隔壁1と、第一外周壁3とを有する。ハニカム構造部5は、隔壁1と第一外周壁3の界面がないものである。即ち、ハニカム構造部5は、隔壁1と第一外周壁3とが連続する1つの構造物であるといえる。ハニカム構造部5の隔壁1は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成するものである。第一外周壁3は、隔壁1の外周の少なくとも一部を取り囲むように配設されている。第二外周壁4は、ハニカム構造部5の外側を囲繞するように配設されている。
【0021】
ハニカム構造部5としては、例えば、隔壁1と第一外周壁3とが一体的に構成されたものを挙げることができる。「隔壁1と第一外周壁3とが一体的に構成されたもの」とは、隔壁1と第一外周壁3とが、一度の成形によって形成されたものを意味する。ここで、成形とは、例えば、押出成形を挙げることができる。本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部5は、隔壁1と第一外周壁3とが連続した1つの焼結体によって構成された構造物であると言える。
【0022】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。図3は、図2のX−X’断面を模式的に示す、断面図である。図4は、図2に示すハニカム構造体の、第一外周壁及び第二外周壁の一部を拡大した拡大平面図である。
【0023】
ハニカム構造部5は、セル2の延びる方向に直交する断面における中央側に配設された隔壁1aによって構成された中央部15と、この中央部15の隔壁1aよりも隔壁1bの厚さが厚くなるように構成された外周部16と、を含む。したがって、本実施形態のハニカム構造体100のハニカム構造部5は、隔壁1の厚さが異なる、2つの領域を有している。この2つの領域は、セル2の延びる方向に直交する断面において、中央部分に位置する中央部15と、この中央部を取り囲むように配置された外周部16である。ハニカム構造部5の中央部15は、相対的に厚さの薄い隔壁1aによって、複数のセル2aが区画されたハニカム構造となっている。また、ハニカム構造部5の外周部16は、相対的に厚さの厚い隔壁1bによって、複数のセル2bが区画されたハニカム構造となっている。
【0024】
本実施形態のハニカム構造体100は、第一外周壁3と第二外周壁4の合計の最大厚さX1が、1.2〜3.0mmである。最大厚さX1が、1.2mm未満であると、ハニカム構造体100の寸法精度が低下する。即ち、押出成形後のハニカム成形体の外周に外周コート材を塗工することにより、当該ハニカム成形体の形状を整える際に、その形状を十分に整えることが困難となり、得られるハニカム構造体100の寸法精度が低下する。一方、最大厚さX1が、3.0mmを超えると、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性が低下する。最大厚さX1は、1.4〜2.6mmであることが好ましく、1.6〜2.4mmであることが更に好ましい。
【0025】
本実施形態のハニカム構造体100は、第一外周壁3と第二外周壁4の合計の最大厚さX1と、第一外周壁3と第二外周壁4の合計の最小厚さX2との差Y(即ち、「X1−X2」の値)が、0.2〜1.5mmである。この差Yが、0.2mm未満であると、ハニカム構造体100の寸法精度が低下する。即ち、差Yが、0.2mm未満であると、押出成形後のハニカム成形体の外周に外周コート材を塗工することにより、当該ハニカム成形体の形状を整える際に、その形状を十分に整えることが困難となり、得られるハニカム構造体100の寸法精度が低下する。一方、この差Yが、1.5mmを超えると、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性が低下する。この差Yは、0.3〜1.2mmであることが好ましく、0.4〜1.0mmであることが更に好ましい。
【0026】
以下、特に断りの無い限り、「第一外周壁の厚さ」及び「第二外周壁の厚さ」という場合、セルの延びる方向に直交する断面における「第一外周壁の厚さ」及び「第二外周壁の厚さ」を意味する。また、「隔壁の厚さ」という場合についても、セルの延びる方向に直交する断面における「隔壁の厚さ」を意味する。また、「第一外周壁と第二外周壁の合計の厚さ」とは、第一外周壁の表面に第二外周壁が配設されている状態にて測定された、「第一外周壁と第二外周壁の合計の厚さ」のことを意味する。即ち、「第一外周壁と第二外周壁の合計の最大厚さX1」とは、「第一外周壁と第二外周壁の合計の厚さの最大値」のことである。また、「第一外周壁と第二外周壁の合計の最小厚さX2」とは、「第一外周壁と第二外周壁の合計の厚さの最小値」のことである。
【0027】
本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部5が、下記式(1)の関係を満たす。なお、下記式(1)において、「AB」は、「Aの値」と「Bの値」の積を示す。
【0028】
式(1):0.5≦AB≦9.0
【0029】
ここで、式(1)において、Aは、ハニカム構造部5の外周部16における隔壁1bの平均厚さTB[μm]と、ハニカム構造部5の中央部15における隔壁1aの平均厚さTA[μm]との差の値を示す。即ち、Aは、式(a):A=TB−TAの関係を満たし、その単位は[μm]となる。以下、このAについて、「差A」ということがある。
【0030】
また、式(1)において、Bは、セル2の延びる方向に直交する断面における、ハニカム構造体100の面積SA[cm]に対する、当該断面における外周部16の面積SB[cm]の比を示す。即ち、Bは、式(b):B=SB/SAの関係を満た。以下、特に断りの無い限り、「ハニカム構造体100の面積SA」は、「セル2の延びる方向に直交する断面における、ハニカム構造体100の面積SA」を意味する。また、「外周部16の面積SB」は、「セル2の延びる方向に直交する断面における、ハニカム構造体100の外周部16の面積SB」を意味する。また、上述した「B」に関連する値として、SB/SA×100の値を、以下、「百分率B[%]」ということがある。更に、この「百分率B[%]」は、ハニカム構造体100及び外周部16の面積の割合を示す値であるため、この「百分率B[%]」を、「面積割合B[%]」と称することもある。
【0031】
上記式(1)におけるABの値が、0.5未満であると、寸法精度、及びアイソスタティック強度が低下する。また、上記式(1)におけるABの値が、9.0を超えると、ハニカム構造体100の圧力損失が悪化する。ABの値は、1.0〜7.0であることが好ましく、2.0〜5.0であることが更に好ましい。
【0032】
第一外周壁3と第二外周壁4の合計の最大厚さX1は、測定対象のハニカム構造体100の下記に示す3つの断面において、上記合計の厚さ(以下、「合計厚さ」ともいう)を各8点ずつ測定し、測定した24点の厚さのうちの最大値とする。上記合計の厚さを測定する断面としては、ハニカム構造体100の流入端面11側、ハニカム構造体100の流出端面12側、及びハニカム構造体100のセル2の延びる方向の中央の、3つの断面とする。ハニカム構造体100の流入端面11側の断面は、ハニカム構造体100の流入端面11から、セル2の延びる方向の長さの5%以内の任意の断面とする。ハニカム構造体100の流出端面12側の断面は、ハニカム構造体100の流出端面12から、セル2の延びる方向の長さの5%以内の任意の断面とする。ハニカム構造体100のセル2の延びる方向の中央の断面は、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向の中央の±5%以内の任意の断面とする。各断面における測定点については、まず、各断面において1つの測定点を決める。そして、この測定点から時計回りに45°ずつ移動した7つ点の測定点を決める。45°ずつ移動した7つ点の測定点に、最初に決めた1つの測定点を加えた8つ測定点を、各断面における測定点とする。
【0033】
そして、上記のように測定点を決めた後、各測定点を、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープによって観測し、第一外周壁3と第二外周壁4の合計厚さを測定する。第一外周壁3と第二外周壁4の合計厚さは、第二外周壁4の表面に対する法線方向の厚さとする。また、上記合計厚さを測定する際には、第一外周壁3と隔壁1との交差部を観察することで、第一外周壁3と隔壁1との境界の有無の確認することができる。第一外周壁3と隔壁1とに境界がない場合は、第一外周壁3と隔壁1との界面がないと判断することができる。例えば、第一外周壁3と隔壁1とが1つの焼結体によって構成された構造物であれば、第一外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものということができる。なお、境界の有無の確認は、上述した画像において、第一外周壁3と隔壁1の色調の違いにより判断することができる。例えば、第一外周壁3と隔壁1の組成が異なる場合、第一外周壁3と隔壁1の色調が相違することとなる。また、上記した色調以外にも、例えば、第一外周壁3及び隔壁1を構成するそれぞれの粒子の粒子径や、気孔率等の密度の違いにより、境界の有無の判別を行うこともできる。
【0034】
第一外周壁3と第二外周壁4との境界については、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ等により拡大した画像にて確認することができる。例えば、上述した画像において、第一外周壁3と第二外周壁4の色調の違いにより、その境界を判別することができる。また、上記した色調以外にも、例えば、第一外周壁3及び第二外周壁4を構成するそれぞれの粒子の粒子径や、気孔率等の密度の違いにより、境界の判別を行うこともできる。
【0035】
また、第一外周壁3と第二外周壁4の合計の最小厚さX2については、上述した最大厚さX1を求めるために測定された24点の合計厚さのうちの、最小値として求めることができる。
【0036】
外周部16における隔壁1bの平均厚さTB[μm]、及び中央部15における隔壁1aの平均厚さTA[μm]については、以下の方法で求めることができる。まず、ハニカム構造体100の断面を撮像する。次に、撮像によって得られた画像について、各隔壁1a,1bの厚さを測定し、それぞれ平均厚さを算出する。各隔壁1a,1bの厚さを測定する測定箇所(測定点)については、下記の通りとする。
【0037】
外周部16における隔壁1bの平均厚さTB[μm]を求める際の測定箇所(測定点)は、以下の12点とする。まず、ハニカム構造体100の最外周から、不完全なセル2を除いた1セル目における1つの隔壁1bを、1番目の測定点とする。次に、この1番目の測定点から、径方向に向かう仮想線を引き、当該仮想線上において、外周部16と中央部15の境界に最も近い位置に存在する外周部16の隔壁1bを、2番目の測定点とする。そして、1番目の測定点と2番目の測定点とを直線で結んだ仮想線において、その中点に最も近い位置に存在する隔壁1bを、3番目の測定点とする。次に、1番目の測定点から時計回りに90°移動した点に最も近い位置に存在する隔壁1bを、4番目の測定点とする。次に、1番目の測定点と同様にして、4番目の測定点から、径方向に向かう仮想線を引き、当該仮想線上において、外周部16と中央部15の境界に最も近い位置に存在する外周部16の隔壁1bを、5番目の測定点とする。そして、4番目の測定点と5番目の測定点とを直線で結んだ仮想線において、その中点に最も近い位置に存在する隔壁1bを、6番目の測定点とする。以下、4番目の測定点から時計回りに90°(1番目の測定点から時計回りに180°)移動した点と、当該点から更に時計回りに90°(1番目の測定点から時計回りに270°)移動した点とについても、それぞれ3点ずつの測定点を決定する。このようにして、計12点の測定点を決定する。このようにして決定した12点の測定点で測定した隔壁1bの厚さの平均値が、「外周部16における隔壁1bの平均厚さTB[μm]」となる。なお、外周部16は、ハニカム構造体100の断面において、中央部15の隔壁1aの厚さに対して、その隔壁1bの厚さが2.5μm以上厚く、且つ、このような厚さの隔壁1bが、最外周の隔壁1bまで連続している領域とする。
【0038】
中央部15における隔壁1aの平均厚さTA[μm]を求める際の測定箇所(測定点)は、以下の12点とする。なお、平均厚さTA[μm]を求める際の測定点は、上述した平均厚さTB[μm]における測定点のうち、「境界に最も近い位置に存在する外周部16の隔壁1b」を基準として、その測定点の位置を決定する。平均厚さTB[μm]における2番目の測定点を例とすると、2番目の測定点を決定する際の仮想線の延長線上において、外周部16と中央部15の境界を挟んで、中央部15側の最も近い位置に存在する隔壁1aを、平均厚さTA[μm]における測定点とする。このようにして、平均厚さTB[μm]における4つの測定点に対応した、平均厚さTA[μm]における4つの測定点を決定する。そして、この4つの測定点のうち、同一径方向に存在する2つずつの測定点間において、等間隔に、それぞれ4つずつの測定点を決定する。なお、「同一径方向に存在する2つずつの測定点」とは、上述した平均厚さTB[μm]における測定点のうち、時計回りに180°移動した測定点に対応する2つの測定点のことである。このようにして、2軸の同一径方向おいて、それぞれ6つの測定点が等間隔に配置された、計12点の測定点を決定する。このようにして決定した12点の測定点で測定した隔壁1aの厚さの平均値が、「中央部15における隔壁1aの平均厚さTA[μm]」となる。
【0039】
セル2の延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体100の面積SA[cm]は、円柱状のハニカム構造体100の4点平均径を測定し、そこから算出される断面積とした。4点平均径の測定は、まず、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面において、ハニカム構造体100の外周における1つの点から45°間隔で、計4点の直径をノギスで測定する。次に、測定した4点の直径の平均値を求め、求められた平均値を、ハニカム構造体100の4点平均径[mm]とする。セル2の延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体100の外周部16の面積SB[cm]については、外周部16の断面積の比であるBを、ハニカム構造体100の面積SAに乗ずることで、求めることができる。
【0040】
セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の形状としては、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。
【0041】
第一外周壁3と第二外周壁4の合計の最小厚さX2は、1.4mm未満であることが好ましく、1.2mm未満であることが更に好ましい。最小厚さX2が、1.4mm以上であると、実使用環境下に耐えるのに必要なハニカム構造体の耐熱衝撃性が確保できない可能性がある。
【0042】
中央部15における隔壁1aの平均厚さTAは、50〜260μmであることが好ましく、60〜210μmであることが更に好ましい。平均厚さTAが、50μm未満であると、ハニカム構造体100を把持する際に必要なアイソスタティック強度が確保し難くなることがある。また、平均厚さTAが、260μmよりも大きいと、圧力損失が増大することがある。
【0043】
外周部16における隔壁1bの平均厚さTBは、60〜280μmであることが好ましく、70〜230μmであることが更に好ましい。平均厚さTBが、60μm未満であると、ハニカム構造体100を把持する際に必要なアイソスタティック強度が確保し難くなることがある。また、平均厚さTBが、280μmよりも大きいと、圧力損失が増大することがある。
【0044】
セル2の延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体100の面積SA[cm]に対する、当該断面における外周部16の面積SB[cm]の比であるBを百分率で表した百分率B[%]は、10〜30%であることが好ましく、15〜25%であることが更に好ましい。上記「百分率B[%]」が10%未満であると、ハニカム構造体100を把持する際に必要なアイソスタティック強度が確保し難くなったり、押出成形後のハニカム成形体の形状が悪化したりすることがある。また、上記「百分率B[%]」が30%を超えると、圧力損失が増大することがある。
【0045】
セル2の延びる方向に直交する断面において、外周部16における隔壁1bの平均厚さTB[μm]と、中央部15における隔壁1aの平均厚さTA[μm]との差Aが9〜25μmであることが好ましく、12〜20μmであることが更に好ましい。TB[μm]とTA[μm]との差Aが、9μm未満であると、ハニカム構造体100を把持する際に必要なアイソスタティック強度が確保し難くなったり、押出成形後のハニカム成形体の形状が悪化したりすることがある。また、TB[μm]とTA[μm]との差Aが、25μmより大きくなると、圧力損失が増大することがある。
【0046】
隔壁1a及び隔壁1bの気孔率が、25〜60%であることが好ましい。隔壁1a及び隔壁1bの気孔率が25%未満であると、ハニカム構造体100の圧力損失が増大し、例えば、エンジンの排気系に設置されるPM捕集用のフィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。また、隔壁の気孔率が60%を超えると、十分な強度が得られないことがある。隔壁1a及び隔壁1bの気孔率は、水銀ポロシメータ(Mercury porosimeter)によって計測された値とする。水銀ポロシメータとしては、例えば、Micromeritics社製のAutopore 9500(商品名)を挙げることができる。
【0047】
ハニカム構造体100のセル密度は、例えば、28〜140個/cmであることが好ましい。28個/cm未満であると、ハニカム構造体100を排ガス浄化用部材として用いた際に、排ガス浄化処理を行う面積が小さくなり、十分な浄化性能が発揮されないことがある。一方、140個/cmを超えると、ハニカム構造体100にガスが流通するときの圧力損失が大きくなることがある。
【0048】
ハニカム構造体100の全体の形状は、例えば、端面の形状が円形、オーバル形等の柱状を挙げることができる。ハニカム構造体の大きさは、例えば、円柱状の場合、セル2の延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体100の直径が、177.8〜266.7mmであることが好ましい。また、ハニカム構造体100の中心軸方向の長さは、50〜260mmであることが好ましい。
【0049】
隔壁1及び第一外周壁3の材質については特に制限はない。例えば、隔壁1及び第一外周壁3の材質としては、セラミックを主成分とするものを挙げることができる。セラミックとしては、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、コージェライト化原料、リチウムアルミニウムシリケート、アルミニウムチタネート、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料から構成される群より選択される少なくとも1種を含む材料を好適例として挙げることができる。「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の50質量%以上含有することを意味する。
【0050】
第二外周壁4の材質については特に制限はない。第二外周壁4の材質としては、セラミックを主成分とするものを挙げることができる。第二外周壁の材質としては、隔壁1及び第一外周壁3の材質の好適例として挙げたものと同様のものを挙げることができる。第二外周壁4は、このような材料を含む外周コート材を、第一外周壁3の表面に塗工することによって形成された外周コート層であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態のハニカム構造体においては、複数のセル2を形成する隔壁1に触媒が担持されていてもよい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。触媒の種類としては、SCR触媒(ゼオライト、チタニア、バナジウム)や、Pt、Rh、Pdのうち少なくとも2種の貴金属と、アルミナ、セリア(Ceria)、ジルコニア(Zirconia)の少なくとも1種を含む三元触媒等が挙げられる。このような触媒を担持することにより、直接噴射式ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスに含まれるNOx、CO、HC等を無毒化することが可能となる。
【0052】
本実施形態のハニカム構造体において、上記のような触媒を担持させる方法は、特に制限はなく、当業者が通常行う方法を採用することができる。具体的には、触媒スラリーをウォッシュコート(wash coat)して乾燥、焼成する方法等が挙げられる。
【0053】
本実施形態のハニカム構造体においては、複数のセルのうちの少なくとも一部のセルの流入端面側又は流出端面側の開口部に配設され、当該セルの開口部を目封止する目封止部を更に備えていてもよい。例えば、所定のセルの流入端面側の開口部、及び所定のセル以外の残余のセルの流出端面側の開口部に、セルの開口部を目封止する目封止部が配設されていてもよい。このような目封止部を更に備えたハニカム構造体についても、これまでに説明したハニカム構造体と同様の効果を期待することができる。なお、目封止部を更に備えたハニカム構造体において、全てのセルに対して、いずれか一方の開口部を目封止する目封止部が配設されていてもよいし、一部のセルに対して、いずれか一方の開口部を目封止する目封止部が配設されていてもよい。
【0054】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体を製造する方法について説明する。
【0055】
まず、隔壁及び第一外周壁を作製するための可塑性の坏土を作製する。隔壁及び第一外周壁を作製するための坏土は、原料粉末として、前述の隔壁の好適な材料群の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって作製することができる。上記した添加剤としては、有機バインダ、分散剤、界面活性剤等を挙げることができる。
【0056】
次に、作製した坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及び隔壁を囲繞するように配設された第一外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を得る。押出成形においては、押出成形用の口金として、坏土の押出面に、成形するハニカム成形体の反転形状となるスリットが形成されたものを用いることができる。
【0057】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。また、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を配設してもよい。
【0058】
次に、得られたハニカム成形体を焼成することにより、隔壁及び第一外周壁を備えたハニカム構造部を得る。ハニカム構造部とは、第二外周壁が配設される前のハニカム構造体のことである。焼成温度及び焼成雰囲気は、ハニカム成形体の作製に用いた材料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。ここで、得られたハニカム構造部の第一外周壁については、例えば、公知の機械加工等により、適宜、第一外周壁の表面を研削して、その厚さを所望の厚さに調節してもよい。
【0059】
次に、第二外周壁を形成するための外周コート材を調製する。外周コート材は、原料粉末として、前述の第二外周壁の好適な材料群の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって作製することができる。
【0060】
次に、得られた外周コート材を、ハニカム構造部の表面に塗工する。塗工した外周コート材を乾燥し、ハニカム構造部の第一外周壁の表面に、第二外周壁を形成する。外周コート材を乾燥した後、必要に応じて、外周コート材を塗工したハニカム構造部を焼成してもよい。以上のようにして、本発明のハニカム構造体を製造することができる。本発明のハニカム構造体を製造する方法は、これまでに説明した方法に限定されることはない。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、それらを混合し、混練して押出成形用の坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径1〜10μmのコークスを使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0062】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱状のハニカム成形体を得た。なお、ハニカム成形体作製用の口金は、坏土排出面側のスリットの幅が、得られるハニカム成形体の中央部と外周部とで、それぞれ異なる幅となるように構成されたものを用いた。これにより、得られたハニカム成形体は、その中央部と外周部とで、隔壁の厚さが異なるように成形されたものであった。
【0063】
次に、得られたハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた。その後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0064】
次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、隔壁及び第一外周壁を備えたハニカム構造部を得た。得られたハニカム構造部は、端面の直径が177.8mmで、セルの延びる方向の長さが152.4mmの円柱状のものであった。得られたハニカム構造部は、中央部と外周部とで、隔壁の厚さが異なるものであった。中央部における隔壁の平均厚さTAは、114μmであった。外周部における隔壁の平均厚さTBは、127μmであった。外周部における隔壁の平均厚さTBと、中央部における隔壁の平均厚さTAとの差Aは、13μmであった。なお、この差Aは、「TB−TA」のことである。表1の「平均厚さTBと平均厚さTAとの差A[μm]」の欄に、外周部における隔壁の平均厚さTBと、中央部における隔壁の平均厚さTAとの差の値、即ち、「TB−TA」の値を示す。
【0065】
中央部における隔壁の平均厚さTA、及び外周部における隔壁の平均厚さTBは、以下の方法で測定した。まず、ハニカム構造体の断面を撮像した。次に、撮像によって得られた画像について、各隔壁の厚さを測定し、それぞれ平均厚さを算出した。中央部における隔壁の平均厚さTA、及び外周部における隔壁の平均厚さTBのそれぞれは、以下の12点の隔壁の厚さの平均値とした。平均厚さTBを求める際の測定点は、ハニカム構造体の最外周から、不完全なセルを除いた1セル目における1つの隔壁を、1番目の測定点とし、この1番目の測定点から、径方向に向かって、外周部と中央部の境界に最も近い位置の隔壁を、2番目の測定点とした。そして、1番目の測定点と2番目の測定点との中点の位置の隔壁を、3番目の測定点とした。そして、1番目の測定点から時計回りに90°間隔で、それぞれ3つずつの測定点(計9つの測定点)を決定した。最初に決定した1番目〜3番目の3つの測定点と、90°間隔で決定した計9つの測定点との合計12点の測定点を、平均厚さTBを求める際の測定点とした。なお、平均厚さTBを求める際の12点の測定点は、径方向の2軸上に存在する測定点となる。平均厚さTAを求める際の測定点は、外周部における隔壁厚さの測定時と同じ2軸上において、各軸について、6点ずつの測定点を決定した。具体的には、各軸について、外周部と中央部の境界に最も近い位置の隔壁を測定点として必ず含み、各軸上の6点の測定点は、各軸上において等間隔となるように決定した。
【0066】
ハニカム構造部のセル密度は62個/cmであった。隔壁の気孔率は35%であった。隔壁の気孔率は、Micromeritics社製のAutopore 9500(商品名)によって測定した。表1の「隔壁の平均厚さTA[μm]」の欄に、中央部における隔壁の平均厚さTAの値を示す。表1の「隔壁の気孔率[%]」の欄に、中央部及び外周部における隔壁の気孔率の値を示す。表1の「セル密度[個/cm]」の欄に、ハニカム構造部のセル密度の値を示す。
【0067】
次に、ハニカム構造部の第一外周壁の表面に、外周コート材を塗工して、塗工した外周コート材を乾燥して第二外周壁を作製した。外周コート材は、コージェライト粒子、コロイダルシリカ、水、分散剤を混合して調製した。
【0068】
以上のようにして、隔壁及び第一外周壁を有するハニカム構造部と、ハニカム構造部の第一外周壁の外側を囲繞するように配設された第二外周壁と、を備えた、実施例1のハニカム構造体を製造した。
【0069】
実施例1のハニカム構造体において、第一外周壁と第二外周壁の合計の最大厚さX1は、2.0mmであった。第一外周壁と第二外周壁の合計の最大厚さX1と、第一外周壁と第二外周壁の合計の最小厚さX2との差Yは、0.8mmであった。なお、この差Yは、「X1−X2」のことである。表1の「外周壁の最大厚さX1[mm]」の欄に、「第一外周壁と第二外周壁の合計の最大厚さX1」の値を示す。表1の「最大厚さX1と最小厚さX2との差Y[mm]」の欄に、「第一外周壁と第二外周壁の合計の最大厚さX1と、第一外周壁と第二外周壁の合計の最小厚さX2と、の差Y」の値を示す。
【0070】
第一外周壁と第二外周壁の合計の最大厚さX1及び最小厚さX2は、測定対象のハニカム構造体の下記に示す3つの断面において、第一外周壁と第二外周壁の合計の厚さを各8点ずつ測定し、測定した24点の厚さのうちの最大値及び最小値より求めた。各厚さを測定する断面としては、ハニカム構造体の流入端面側、ハニカム構造体の流出端面側、及びハニカム構造体のセルの延びる方向の中央の、3つの断面とした。ハニカム構造体の流入端面側の断面は、ハニカム構造体の流入端面から、セルの延びる方向の長さの5%以内の任意の断面とした。ハニカム構造体の流出端面側の断面は、ハニカム構造体の流出端面から、セルの延びる方向の長さの5%以内の任意の断面とした。ハニカム構造体のセルの延びる方向の中央の断面は、ハニカム構造体のセルの延びる方向の中央の±5%以内の任意の断面とした。
【0071】
また、実施例1のハニカム構造体において、セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体の面積SA[cm]に対する、当該断面における外周部の面積SB[cm]の比の百分率は、20%であった。なお、この百分率は、「SB/SA×100」のことである。表1の「外周部の面積割合B[%]」の欄に、セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体の面積SA[cm]に対する、当該断面における外周部の面積SB[cm]の比の百分率の値を示す。また、表1の「AB」の欄に、上記した「差A」と「面積割合B」を乗算した値を100で除算した値を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、「アイソスタティック強度」、「寸法精度」、「圧力損失」、及び「耐熱衝撃性」の評価を行った。結果を、表2に示す。
【0075】
[アイソスタティック強度]
アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格のM505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。即ち、アイソスタティック破壊強度試験は、缶体に、ハニカム構造体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。このアイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。以下の評価基準1により、アイソスタティック強度の評価を行った。
(評価基準1)
評価A:アイソスタティック強度が、比較例1のアイソスタティック強度に対して、+1.5MPa以上である。
評価B:アイソスタティック強度が、比較例1のアイソスタティック強度に対して、+1.0MPa以上、+1.5MPa未満である。
評価C:アイソスタティック強度が、比較例1のアイソスタティック強度に対して、+0.5MPa以上、+1.0MPa未満である。
評価D:アイソスタティック強度が、比較例1のアイソスタティック強度に対して、+0.5MPa未満である。
【0076】
[寸法精度(4点平均径)]
寸法精度の評価は、円柱状のハニカム構造体の4点平均径を測定し、以下の評価基準1に基づいて評価を行った。4点平均径の測定は、まず、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面において、ハニカム構造体の外周における1つの点から45°間隔で、計4点の直径をノギスで測定する。次に、測定した4点の直径の平均値を求め、求められた平均値を、ハニカム構造体の4点平均径(mm)とする。なお、下記評価基準における「狙いの直径」とは、各実施例のハニカム構造体を作製する際の「目標とする直径」のことを意味する。
(評価基準1)
評価A:4点平均径が、狙いの直径に対して、±0.5mm以内である。
評価B:4点平均径が、狙いの直径に対して、±1.0mm以内である。
評価C:4点平均径が、狙いの直径に対して、±1.5mm以内である。
評価D:4点平均径が、狙いの直径に対して、±2.0mmを超える。
【0077】
[圧力損失]
7.0Lのトラック用ディーゼルエンジンを搭載した乗用車の排気系に、ハニカム構造体を装着した。この乗用車を使用し、シャシダイナモ(Chassis dynamometer)による車両試験として、フルロードステップアップ(Full road step−up)時の圧力損失を測定した。具体的には、エンジン回転数を2500rpmまで、5分/ステップで500rpmずつ上昇させ、各ステップでの圧力損失を測定した。比較例1のハニカム構造体の圧力損失を、圧力損失評価の基準値とした。各実施例及び比較例の圧力損失の値と、基準値である比較例1の圧力損失の値を比較し、以下の評価基準1により、圧力損失評価を行った。なお、評価にあたっては、エンジン回転数2500rpm時の圧力損失を用いた。
(評価基準1)
評価A:圧力損失が、比較例1の圧力損失に対して、+5%未満である。
評価B:圧力損失が、比較例1の圧力損失に対して、+10%未満である。
評価C:圧力損失が、比較例1の圧力損失に対して、+15%未満である。
評価D:圧力損失が、比較例1の圧力損失に対して、+15%以上である。
【0078】
[耐熱衝撃性]
社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格のM505−87に規定されている方法に基づいて、電気炉スポーリング試験による耐熱衝撃性の評価を行った。具体的には、まず、室温より所定温度高い温度に保った電気炉に、室温のハニカム構造体を入れた。この状態で20分間保持した後、ハニカム構造体を取り出し、耐火レンガ上に載置した。この状態で15分間以上自然放置した後、室温になるまでハニカム構造体を冷却し、そのハニカム構造体にクラック等の破壊が生じているかを調べた。この操作を、ハニカム構造体にクラック等の破壊が生じるまで繰り返した。なお、電気炉内温度は、上記の操作を繰り返す度に、25℃ずつ上昇させていった。ハニカム構造体にクラック等の破壊が生じていることが確認された操作の1回前の操作における電気炉内温度を、ハニカム構造体の安全温度とした。以下の評価基準1により、耐熱衝撃性の評価を行った。
(評価基準1)
評価A:安全温度が、650℃以上である。
評価B:安全温度が、550℃以上、650℃未満である。
評価C:安全温度が、450℃以上、550℃未満である。
評価D:安全温度が、450℃未満である。
【0079】
(実施例2〜10)
ハニカム構造体の各構成を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2〜10のハニカム構造体を製造した。実施例2〜10のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、各評価を行った。結果を、表2に示す。
【0080】
(比較例1〜9)
ハニカム構造体の各構成を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1〜9のハニカム構造体を製造した。なお、比較例1のハニカム構造体は、ハニカム構造部の第一外周壁を全て研削加工によって取り除き、第一外周壁を全て取り除いたハニカム構造部の外周に、第二外周壁を配設することによってハニカム構造体を作製した。比較例1〜9のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、各評価を行った。結果を、表2に示す。
【0081】
(実施例11〜20)
ハニカム構造体の各構成を、表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例11〜20のハニカム構造体を製造した。なお、実施例11〜20のハニカム構造体は、端面の直径が266.7mmで、セルの延びる方向の長さが152.4mmの円柱状のものとした。実施例11〜20のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、各評価を行った。ただし、各評価については、それぞれの評価基準を、下記評価基準2に変更した。即ち、「アイソスタティック強度」、及び「圧力損失」の評価において、評価基準2に示すように、基準となるハニカム構造体を、比較例10のハニカム構造体に変更した。また、「寸法精度」、及び「耐熱衝撃性」の評価については、評価基準の値を、以下の評価基準2ように変更した。結果を、表4に示す。
【0082】
(比較例10〜18)
ハニカム構造体の各構成を、表3に示すように変更した以外は、実施例11と同様の方法で、比較例10〜18のハニカム構造体を製造した。なお、比較例10のハニカム構造体は、ハニカム構造部の第一外周壁を全て研削加工によって取り除き、第一外周壁を全て取り除いたハニカム構造部の外周に、第二外周壁を配設することによってハニカム構造体を作製した。比較例10〜18のハニカム構造体について、実施例11と同様の方法で、各評価を行った。結果を、表4に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
[アイソスタティック強度]
(評価基準2)
評価A:アイソスタティック強度が、比較例10のアイソスタティック強度に対して、+1.5MPa以上である。
評価B:アイソスタティック強度が、比較例10のアイソスタティック強度に対して、+1.0MPa以上、+1.5MPa未満である。
評価C:アイソスタティック強度が、比較例10のアイソスタティック強度に対して、+0.5MPa以上、+1.0MPa未満である。
評価D:アイソスタティック強度が、比較例10のアイソスタティック強度に対して、+0.5MPa未満である。
【0086】
[寸法精度(4点平均径)]
(評価基準2)
評価A:4点平均径が、狙いの直径に対して、±0.5mm以内である。
評価B:4点平均径が、狙いの直径に対して、±1.5mm以内である。
評価C:4点平均径が、狙いの直径に対して、±2.0mm以内である。
評価D:4点平均径が、狙いの直径に対して、±2.5mmを超える。
【0087】
[圧力損失]
(評価基準2)
評価A:圧力損失が、比較例10の圧力損失に対して、+5%未満である。
評価B:圧力損失が、比較例10の圧力損失に対して、+10%未満である。
評価C:圧力損失が、比較例10の圧力損失に対して、+15%未満である。
評価D:圧力損失が、比較例10の圧力損失に対して、+15%以上である。
【0088】
[耐熱衝撃性]
(評価基準2)
評価A:安全温度が、600℃以上である。
評価B:安全温度が、500℃以上、600℃未満である。
評価C:安全温度が、400℃以上、500℃未満である。
評価D:安全温度が、400℃未満である。
【0089】
(実施例21〜24)
ハニカム構造体の各構成を、表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例21〜24のハニカム構造体を製造した。なお、実施例21〜24のハニカム構造体は、端面の直径が177.8mmで、セルの延びる方向の長さが152.4mmの円柱状のものとした。実施例21〜24のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、各評価を行った。ただし、各評価については、それぞれの評価基準を、上記「評価基準1」に対して、基準となるハニカム構造体を、以下のように変更した。それ以外は、上記「評価基準1」に基づき評価を行った。結果を、表6に示す。
実施例21について、基準となるハニカム構造体を、比較例19とした。
実施例22について、基準となるハニカム構造体を、比較例20とした。
実施例23について、基準となるハニカム構造体を、比較例21とした。
実施例24について、基準となるハニカム構造体を、比較例22とした。
【0090】
(比較例19〜22)
ハニカム構造体の各構成を、表5に示すように変更した以外は、実施例21と同様の方法で、比較例19〜22のハニカム構造体を製造した。なお、比較例19〜22のハニカム構造体は、ハニカム構造部の第一外周壁を全て研削加工によって取り除き、第一外周壁を全て取り除いたハニカム構造部の外周に、第二外周壁を配設することによってハニカム構造体を作製した。比較例19〜22のハニカム構造体について、実施例21と同様の方法で、各評価を行った。結果を、表6に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
(結果)
実施例1〜24のハニカム構造体は、全ての評価において、評価Aから評価Cの結果となった。評価Aから評価Cについては、ハニカム構造体として良好な特性を示すものであるといえる。
【0094】
一方、「AB」の値が0.4となる、比較例2,3,11,12のハニカム構造体は、「アイソスタティック強度」及び「寸法精度」の評価において、不合格となる評価Dの結果となった。また、「AB」の値が9.2となる、比較例8,9,17,18のハニカム構造体は、「圧力損失」の評価において、不合格となる評価Dの結果となった。
【0095】
また、「外周壁の最大厚さX1[mm]」の値が、3.1mmとなる、比較例4,13のハニカム構造体は、「耐熱衝撃性」の評価において、不合格となる評価Dの結果となった。また、「外周壁の最大厚さX1[mm]」の値が、1.1mmとなる、比較例6,15のハニカム構造体は、「寸法精度」の評価において、不合格となる評価Dの結果となった。
【0096】
また、「最大厚さX1と最小厚さX2との差Y[mm]」の値が、1.6mmとなる、比較例5,14のハニカム構造体は、「耐熱衝撃性」の評価において、不合格となる評価Dの結果となった。また、「最大厚さX1と最小厚さX2との差Y[mm]」の値が、0.1mmとなる、比較例7,16のハニカム構造体は、「寸法精度」の評価において、不合格となる評価Dの結果となった。
【0097】
また、ハニカム構造体のセル密度を変更した実施例21及び比較例19についても、実施例21のハニカム構造体は、比較例19のハニカム構造体に対して、アイソスタティック強度及び圧力損失の改善が図られていることが分かる。同様に、実施例22及び比較例20についても、実施例22のハニカム構造体は、比較例20のハニカム構造体に対して、アイソスタティック強度及び圧力損失の改善が図られていることが分かる。
【0098】
また、ハニカム構造体の隔壁の厚さを変更した実施例23及び比較例21についても、実施例23のハニカム構造体は、比較例21のハニカム構造体に対して、アイソスタティック強度及び圧力損失の改善が図られていることが分かる。同様に、実施例24及び比較例22についても、実施例24のハニカム構造体は、比較例22のハニカム構造体に対して、アイソスタティック強度及び圧力損失の改善が図られていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のハニカム構造体は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスを浄化するための触媒を担持する触媒担体や、排ガスを浄化するためのフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,1a,1b:隔壁、2,2a,2b:セル、3:第一外周壁、4:第二外周壁、5:ハニカム構造部、11:流入端面、12:流出端面、15:中央部、16:外周部、100:ハニカム構造体。
図1
図2
図3
図4