(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記荷重予測手段(60b)は、前記時間変化率(DFSA)に前記規定時間(TC1)を乗じて得た変化量を、現在の前記ペダル荷重検出値(FS)に加算することで、前記ペダル荷重予測値(FSC)を算出する請求項1に記載の変速制御装置。
前記変化率算出手段(60a)は、前記時間変化率(DFSA)として、制御周期で連続して検出した複数回の前記ペダル荷重検出値(FS)から得たペダル荷重差分(DFS)の平均値を算出する請求項1又は2に記載の変速制御装置。
前記変化率算出手段(60a)は、連続する複数回の前記ペダル荷重差分(DFS)の平均値を前記時間変化率(DFSA)として算出する請求項3に記載の変速制御装置。
前記予測値判定手段(60d)は、前記ペダル荷重検出値(FS)が前記第一の閾値(FSCC)に達したとき、直近の前記時間変化率(DFSA)から求めた前記ペダル荷重予測値(FSC)が前記第二の閾値(FSCTC)を越えるか否かを判定する請求項1から4の何れか一項に記載の変速制御装置。
前記荷重予測手段(60b)は、前記時間変化率(DFSA)に乗じる前記規定時間(TC1)を、10〜70msecの範囲内で設定可能とする請求項1から6の何れか一項に記載の変速制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの出力抑制制御によって変速機の駆動力抜けが生じる前は、ライダーの変速操作によるシフトペダル荷重が増加する。シフトペダル荷重が前記閾値を越えると、エンジンの出力抑制制御によって変速機の駆動力抜けが生じ、前記シフトペダル荷重によって変速機の変速動作がなされる。このとき、シフト機構が作動し、シフトペダル荷重の増加が止むことで、ライダーが変速操作の完了を認知する。
しかしながら、ライダーが変速操作を素早く行った際には、ライダーが変速操作の完了を認知する前に、シフトペダル荷重のピーク値が高くなり、変速操作が重いと感じられることがある。一方、前記閾値を低く設定してしまうと、ライダーに変速意思がないにも関わらず、走行中の身体の動きによってライダーの足がシフトペダルに触れてしまった際に、シフト操作検出装置が変速操作を誤検出する虞がある。このため、前記閾値はある程度高めの値を設定しつつ、変速操作の速さに影響されないシフトフィーリングの実現が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、シフトペダルで変速操作を行う変速制御装置において、変速操作の速さの違いによるペダルピーク荷重のバラツキを抑えてシフトフィーリングを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、シフトペダル(32)の変速操作を検出するペダル操作検出手段(42)と、前記ペダル操作検出手段(42)が検出する変速操作に応じて、エンジン(13)の出力を抑制する出力抑制制御を行う制御手段(60)と、を備えた変速制御装置において、前記制御手段(60)は、前記ペダル操作検出手段(42)が検出するペダル荷重検出値(FS)の時間変化率(DFSA)を算出する変化率算出手段(60a)と、前記時間変化率(DFSA)から規定時間(TC1)が経過後のペダル荷重予測値(FSC)を求める荷重予測手段(60b)と、前記ペダル荷重検出値(FS)が第一の閾値(FSCC)に達したか否かを判定するペダル荷重判定手段(60c)と、前記ペダル荷重検出値(FS)が前記第一の閾値(FSCC)に達したとき、前記ペダル荷重予測値(FSC)が第二の閾値(FSCTC)を越えるか否かを判定する予測値判定手段(60d)と、前記ペダル荷重予測値(FSC)が前記第二の閾値(FSCTC)を越えると判定したとき、前記出力抑制制御を行う出力抑制制御手段(60e)と、を備えている。
この構成によれば、シフトペダルで変速操作を行う変速制御装置において、ペダル操作検出手段によるペダル荷重検出値の時間変化率を求め、この時間変化率から規定時間経過後のペダル荷重予測値を求め、このペダル荷重予測値が第二の閾値を越えると判定した場合に、エンジンの出力抑制制御を行う。これにより、実際のペダル荷重検出値が第二の閾値に達する前に、エンジンの出力抑制制御を前倒しで開始することが可能となる。このため、素早い変速操作がなされた場合でも、変速操作の早い段階で出力抑制制御を開始することが可能となる。一方、ペダル荷重検出値の時間変化率からペダル荷重予測値を求めるので、変速操作の誤検出も抑制される。そして、前倒しで変速機の駆動力抜けを生じさせて変速作動を開始させるので、シフトペダル荷重の過剰な付与が抑止される。したがって、変速操作の速さの違いによるペダルピーク荷重のバラツキを抑え、シフトフィーリングを向上させることができる。
請求項2に記載した発明は、前記荷重予測手段(60b)は、前記時間変化率(DFSA)に前記規定時間(TC1)を乗じて得た変化量を、現在の前記ペダル荷重検出値(FS)に加算することで、前記ペダル荷重予測値(FSC)を算出する。
この構成によれば、変化率に規定時間を乗じて現在のペダル荷重検出値に加算するだけの簡単な計算で、ペダル荷重予測値を求めるようにしたので、制御手段の処理負荷を軽減した上で、エンジン制御の遅れを抑えることができる。
請求項3に記載した発明は、前記変化率算出手段(60a)は、前記時間変化率(DFSA)として、制御周期で連続して検出した複数回の前記ペダル荷重検出値(FS)から得たペダル荷重差分(DFS)の平均値を算出する。
この構成によれば、時間変化率を複数回のペダル荷重検出値から得たペダル荷重値差分の平均値として算出するので、制御手段の処理負荷を軽減するとともに、ペダル荷重検出値に単発的な異常値が発生した場合でも、誤検出によるエンジン制御への影響を低減することができる。
請求項4に記載した発明は、前記変化率算出手段(60a)は、連続する複数回の前記ペダル荷重差分(DFS)の平均値を前記時間変化率(DFSA)として算出する。
この構成によれば、連続する複数回のペダル荷重値差分の平均値を時間変化率として算出するので、制御手段の処理負荷を軽減し、かつ誤検出によるエンジン制御への影響を低減することができる。
請求項5に記載した発明は、前記予測値判定手段(60d)は、前記ペダル荷重検出値(FS)が前記第一の閾値(FSCC)に達したとき、直近の前記時間変化率(DFSA)から求めた前記ペダル荷重予測値(FSC)が前記第二の閾値(FSCTC)を越えるか否かを判定する。
この構成によれば、ペダル荷重検出値が第一の閾値に達したとき、最新の時間変化率から求めたペダル荷重予測値について判定を行うことで、変速操作に即応したエンジン制御を行うことができる。
請求項6に記載した発明は、前記変化率算出手段(60a)は、前記エンジン(13)の稼働中は常に前記時間変化率(DFSA)を算出する。
この構成によれば、エンジンの稼働中は常にペダル荷重検出値の時間変化率が算出されるので、素早い変速動作が行われた場合でも、変速操作の瞬間に近い最新の時間変化率を常に得ることができ、変速操作に対するエンジン制御の遅れを抑えることができる。
請求項7に記載した発明は、前記荷重予測手段(60b)は、前記時間変化率(DFSA)に乗じる前記規定時間(TC1)を、10〜70msecの範囲内で設定可能とする。
この構成によれば、時間変化率に乗じる規定時間を10〜70msecの範囲内で設定可能とすることで、変速制御装置を搭載する車両の特性に合わせて時間変化率に乗じる規定時間を調節可能となり、ペダル荷重予測値の精度を高めてエンジン制御を良好なタイミングで行うことができる。
請求項8に記載した発明は、前記シフトペダル(32)は、前記エンジン(13)に連結されたドグミッション(21)の変速操作を行うものであり、
前記荷重予測手段(60b)は、前記時間変化率(DFSA)に乗じる前記規定時間(TC1)を、30〜50msecの範囲内で設定可能とする。
この構成によれば、ドグミッションの変速動作に要する時間が30〜50msecであることに合わせて、時間変化率に乗じる規定時間を30〜50msecの範囲内で設定可能とすることで、エンジン制御を良好なタイミングで行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シフトペダルで変速操作を行う変速制御装置において、変速操作の速さの違いによるペダルピーク荷重のバラツキを抑えてシフトフィーリングを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0010】
図1に示すように、本実施形態は、鞍乗り型車両である自動二輪車1に適用されている。自動二輪車1の前輪2は、左右一対のフロントフォーク3の下端部に支持されている。左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して、車体フレーム5の前端部のヘッドパイプ6に支持されている。ステアリングステム4のトップブリッジ上には、バータイプの操向ハンドル4aが取り付けられている。
【0011】
車体フレーム5は、ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6から車幅方向(左右方向)中央を下後方へ延びるメインチューブ7と、メインチューブ7の後端部の下方に連なる左右ピボットフレーム8と、メインチューブ7および左右ピボットフレーム8の後方に連なるシートフレーム9と、を備えている。左右ピボットフレーム8には、スイングアーム11の前端部が揺動可能に枢支されている。スイングアーム11の後端部には、自動二輪車1の後輪12が支持されている。
【0012】
左右メインチューブ7の上方には、燃料タンク18が支持されている。燃料タンク18の後方でシートフレーム9の上方には、前シート19および後シートカバー19aが前後に並んで支持されている。シートフレーム9の周囲は、リヤカウル9aに覆われている。左右メインチューブ7の下方には、自動二輪車1の原動機であるパワーユニットPUが懸架されている。パワーユニットPUは、後輪12と例えばチェーン式伝動機構を介して連係されている。
【0013】
パワーユニットPUは、その前側に位置するエンジン13と後側に位置する変速機21とを一体に有している。エンジン13は、例えばクランクシャフト14の回転軸を左右方向(車幅方向)に沿わせた複数気筒エンジンである。エンジン13は、クランクケース15の前部上方にシリンダ16を起立させている。クランクケース15の後部は、変速機21を収容する変速機ケース17とされている。
【0014】
図2に示すように、変速機21は、メインシャフト22およびカウンタシャフト23ならびに両シャフト22,23に跨る変速ギヤ群24を有する有段式のトランスミッションである。カウンタシャフト23は変速機21ひいてはパワーユニットPUの出力軸を構成している。カウンタシャフト23の端部はクランクケース15の後部左側に突出し、前記チェーン式伝動機構を介して後輪12に連結されている。
【0015】
変速ギヤ群24は、両シャフト22,23にそれぞれ支持された変速段数分のギヤを有する。変速機21は、両シャフト22,23間で変速ギヤ群24の対応するギヤ対同士が常に噛み合った常時噛み合い式とされる。両シャフト22,23に支持された複数のギヤは、対応するシャフトに対して回転可能なフリーギヤと、対応するシャフトにスプライン嵌合するスライドギヤ(シフター)とに分類される。これらフリーギヤ及びスライドギヤの一方には軸方向で凸のドグが、他方にはドグを係合させるべく軸方向で凹のスロットがそれぞれ設けられている。すなわち、変速機21は、いわゆるドグミッションである。
【0016】
図3を併せて参照し、変速機21のメインシャフト22及びカウンタシャフト23は、クランクシャフト14の後方で前後に並んで配置されている。メインシャフト22の右端部には、クラッチアクチュエータ50により作動するクラッチ装置26が同軸配置されている。クラッチ装置26は、例えば湿式多板クラッチであり、いわゆるノーマルオープンクラッチである。すなわち、クラッチ装置26は、クラッチアクチュエータ50からの油圧供給によって動力伝達可能な接続状態となり、クラッチアクチュエータ50からの油圧供給がなくなると動力伝達不能な切断状態に戻る。
【0017】
図2を参照し、クランクシャフト14の回転動力は、クラッチ装置26を介してメインシャフト22に伝達され、メインシャフト22から変速ギヤ群24の任意のギヤ対を介してカウンタシャフト23に伝達される。カウンタシャフト23におけるクランクケース15の後部左側に突出した左端部には、前記チェーン式伝動機構のドライブスプロケット27が取り付けられている。
【0018】
変速機21の後上方には、変速ギヤ群24のギヤ対を切り替えるチェンジ機構25が収容されている。チェンジ機構25は、両シャフト22,23と平行な中空円筒状のシフトドラム36の回動により、その外周に形成されたリード溝のパターンに応じて複数のシフトフォーク37を作動させ、変速ギヤ群24における両シャフト22,23間の動力伝達に用いるギヤ対を切り替える。
【0019】
チェンジ機構25は、シフトドラム36と平行なシフトスピンドル31を有している。シフトスピンドル31の回動時には、シフトスピンドル31に固定されたシフトアーム31aがシフトドラム36を回動させ、リード溝のパターンに応じてシフトフォーク37を軸方向移動させて、変速ギヤ群24の内の動力伝達可能なギヤ対を切り替える(すなわち、変速段を切り替える。)。
【0020】
シフトスピンドル31は、チェンジ機構25を操作可能とするべくクランクケース15の車幅方向外側(左方)に軸外側部31bを突出させている。シフトスピンドル31の軸外側部31bには、シフト荷重センサ42(シフト操作検知手段)が同軸に取り付けられている(
図1参照)。シフトスピンドル31の軸外側部31b(またはシフト荷重センサ42の回動軸)には、揺動レバー33が取り付けられている。揺動レバー33は、シフトスピンドル31(または回動軸)にクランプ固定される基端部33aから後方へ延び、その先端部33bには、リンクロッド34の上端部が上ボールジョイント34aを介して揺動自在に連結されている。リンクロッド34の下端部は、運転者が足操作するシフトペダル32に、下ボールジョイント(不図示)を介して揺動自在に連結されている。
【0021】
図1に示すように、シフトペダル32は、その前端部がクランクケース15の下部に左右方向に沿う軸を介して上下揺動可能に支持されている。シフトペダル32の後端部には、ステップ32aに載せた運転者の足先を掛けるペダル部が設けられ、シフトペダル32の前後中間部には、リンクロッド34の下端部が連結されている。
【0022】
図2に示すように、シフトペダル32、リンクロッド34およびチェンジ機構25を含んで、変速機21の変速段ギヤの切り替えを行うシフトチェンジ装置35が構成されている。シフトチェンジ装置35において、変速機ケース17内で変速機21の変速段を切り替える集合体(シフトドラム36、シフトフォーク37等)を変速作動部35a、シフトペダル32への変速動作が入力されてシフトスピンドル31の軸回りに回動し、この回動を前記変速作動部35aに伝達する集合体(シフトスピンドル31、シフトアーム31a等)を変速操作受け部35b、という。
【0023】
ここで、自動二輪車1は、変速機21の変速操作(シフトペダル32の足操作)のみを運転者が行い、クラッチ装置26の断接操作はシフトペダル32の操作に応じて電気制御により自動で行うようにした、いわゆるセミオートマチックの変速システムを採用している。
【0024】
図4に示すように、上記変速システムは、クラッチアクチュエータ50、ECU60(Electronic Control Unit、制御装置)および各種センサ41〜45を備えている。
【0025】
ECU60は、シフトドラム36の回動角から変速段位を検知するドラム角度センサ(ギヤポジションセンサ)41、およびシフトスピンドル31に入力された操作トルクを検知するシフト荷重センサ(トルクセンサ)42からの検知情報、ならびにスロットル開度センサ43、車速センサ44およびエンジン回転数センサ45等からの各種の車両状態検知情報等に基づいて、クラッチアクチュエータ50を作動制御するとともに、点火装置46および燃料噴射装置47を作動制御する。ECU60には、後述する油圧センサ57,58からの検知情報も入力される。ECU60は、変化率算出部60a、予測荷重算出部60b、ペダル荷重判定部60c、予測値判定部60dおよび出力抑制制御部60eを備えており、これらの機能については後述する。
【0026】
図3を併せて参照し、クラッチアクチュエータ50は、ECU60により作動制御されることで、クラッチ装置26を断接する液圧を制御可能とする。クラッチアクチュエータ50は、駆動源としての電気モータ52(以下、単にモータ52という。)と、モータ52により駆動されるマスターシリンダ51と、を備えている。クラッチアクチュエータ50は、マスターシリンダ51および油圧給排ポート50pの間に設けられる油圧回路装置53とともに、一体のクラッチ制御ユニット50Aを構成している。
【0027】
マスターシリンダ51は、シリンダ本体51a内のピストン51bをモータ52の駆動によりストロークさせて、シリンダ本体51a内の作動油をスレーブシリンダ28に対して給排可能とする。図中符号55はボールネジ機構としての変換機構、符号54はモータ52および変換機構55に跨る伝達機構、符号51eはマスターシリンダ51に接続されるリザーバをそれぞれ示す。
【0028】
油圧回路装置53は、マスターシリンダ51からクラッチ装置26側(スレーブシリンダ28側)へ延びる主油路(油圧給排油路)53mの中間部位を開通又は遮断するバルブ機構(ソレノイドバルブ56)を有している。油圧回路装置53の主油路53mは、ソレノイドバルブ56よりもマスターシリンダ51側となる上流側油路53aと、ソレノイドバルブ56よりもスレーブシリンダ28側となる下流側油路53bと、に分けられる。油圧回路装置53はさらに、ソレノイドバルブ56を迂回して上流側油路53aと下流側油路53bとを連通するバイパス油路53cと、を備えている。
【0029】
ソレノイドバルブ56は、いわゆるノーマルオープンバルブである。バイパス油路53cには、上流側から下流側への方向のみ作動油を流通させるワンウェイバルブ53c1が設けられている。ソレノイドバルブ56の上流側には、上流側油路53aの油圧を検出する上流側油圧センサ57が設けられている。ソレノイドバルブ56の下流側には、下流側油路53bの油圧を検出する下流側油圧センサ58が設けられている。
【0030】
図1に示すように、クラッチ制御ユニット50Aは、例えばリヤカウル9a内に収容されている。スレーブシリンダ28は、クランクケース15の後部左側に取り付けられている。クラッチ制御ユニット50Aとスレーブシリンダ28とは、油圧配管53e(
図3参照)を介して接続されている。
【0031】
図2に示すように、スレーブシリンダ28は、メインシャフト22の左方に同軸配置されている。スレーブシリンダ28は、クラッチアクチュエータ50からの油圧供給時には、メインシャフト22内を貫通するプッシュロッド28aを右方へ押圧する。スレーブシリンダ28は、プッシュロッド28aを右方へ押圧することで、該プッシュロッド28aを介してクラッチ装置26を接続状態へ作動させる。スレーブシリンダ28は、前記油圧供給が無くなると、プッシュロッド28aの押圧を解除し、クラッチ装置26を切断状態に戻す。
【0032】
クラッチ装置26を接続状態に維持するには油圧供給を継続する必要があるが、その分だけ電力を消費することとなる。そこで、
図3に示すように、クラッチ制御ユニット50Aの油圧回路装置53にソレノイドバルブ56を設け、クラッチ装置26側への油圧供給後にソレノイドバルブ56を閉じている。これにより、クラッチ装置26側への供給油圧を維持し、圧力低下分だけ油圧を補う(リーク分だけリチャージする)構成として、エネルギー消費を抑えている。
【0033】
次に、クラッチ制御系の作用について
図5のグラフを参照して説明する。
図5のグラフにおいて、縦軸は下流側油圧センサ58が検出する供給油圧、横軸は経過時間をそれぞれ示している。
自動二輪車1の停車時(アイドリング時)、ECU60で制御されるモータ52およびソレノイドバルブ56は、ともに電力供給が遮断された状態にある。すなわち、モータ52は停止状態にあり、ソレノイドバルブ56は開弁状態にある。このとき、スレーブシリンダ28側(下流側)はタッチポイント油圧TPより低い低圧状態となり、クラッチ装置26は非締結状態(切断状態、解放状態)となる。この状態は、
図5の領域Aに相当する。
【0034】
自動二輪車1の発進時、エンジン13の回転数を上昇させると、モータ52にのみ電力供給がなされ、マスターシリンダ51から開弁状態のソレノイドバルブ56を経てスレーブシリンダ28へ油圧が供給される。スレーブシリンダ28側(下流側)の油圧がタッチポイント油圧TP以上に上昇すると、クラッチ装置26の締結が開始され、クラッチ装置26が一部の動力を伝達可能な半クラッチ状態となる。これにより、自動二輪車1の滑らかな発進が可能となる。この状態は、
図5の領域Bに相当する。
やがて、クラッチ装置26の入力回転と出力回転との差が縮まり、スレーブシリンダ28側(下流側)の油圧が下限保持油圧LPに達すると、クラッチ装置26の締結がロック状態に移行し、エンジン13の駆動力が全て変速機21に伝達される。この状態は、
図5の領域Cに相当する。
【0035】
マスターシリンダ51側からスレーブシリンダ28側に油圧を供給する際には、ソレノイドバルブ56を開弁状態とし、モータ52に通電して正転駆動させて、マスターシリンダ51を加圧する。これにより、スレーブシリンダ28側の油圧がクラッチ締結油圧に調圧される。このとき、クラッチアクチュエータ50の駆動は、下流側油圧センサ58の検出油圧に基づきフィードバック制御される。
【0036】
そして、スレーブシリンダ28側(下流側)の油圧が上限保持油圧HPに達すると、ソレノイドバルブ56に電力供給がなされて該ソレノイドバルブ56が閉弁作動するとともに、モータ52への電力供給が停止されて油圧の発生が停止される。すなわち、上流側は油圧が解放して低圧状態となる一方、下流側が高圧状態(上限保持油圧HP)に維持される。これにより、マスターシリンダ51が油圧を発生することなくクラッチ装置26が締結状態に維持され、自動二輪車1の走行を可能とした上で電力消費を抑えることができる。
【0037】
ここで、変速操作によっては、クラッチ装置26に油圧を充填した直後に変速を行うような場合も有り得る。この場合、ソレノイドバルブ56が閉弁作動して上流側を低圧状態とする前に、ソレノイドバルブ56が開弁状態のままでモータ52を逆転駆動し、マスターシリンダ51を減圧するとともにリザーバ51eを連通させ、クラッチ装置26側の油圧をマスターシリンダ51側へリリーフする。このとき、クラッチアクチュエータ50の駆動は、上流側油圧センサ57の検出油圧に基づきフィードバック制御される。
【0038】
ソレノイドバルブ56を閉弁し、クラッチ装置26を締結状態に維持した状態でも、
図5の領域Dのように、下流側の油圧は徐々に低下(リーク)する。すなわち、ソレノイドバルブ56およびワンウェイバルブ53c1のシールの変形等による油圧漏れや温度低下といった要因により、下流側の油圧は徐々に低下する。
【0039】
一方、
図5の領域Eのように、温度上昇等により下流側の油圧が上昇する場合もある。下流側の細かな油圧変動であれば、不図示のアキュムレータにより吸収可能であり、油圧変動の度にモータ52およびソレノイドバルブ56を作動させて電力消費を増やすことはない。
図5の領域Eのように、下流側の油圧が上限保持油圧HPまで上昇した場合、ソレノイドバルブ56への電力供給を低下させる等により、ソレノイドバルブ56を段階的に開弁状態として、下流側の油圧を上流側へリリーフする。
【0040】
図5の領域Fのように、下流側の油圧が下限保持油圧LPまで低下した場合、ソレノイドバルブ56は閉弁したままでモータ52への電力供給を開始し、上流側の油圧を上昇させる。上流側の油圧が下流側の油圧を上回ると、この油圧がバイパス油路53cおよびワンウェイバルブ53c1を介して下流側に補給(リチャージ)される。下流側の油圧が上限保持油圧HPになると、モータ52への電力供給を停止して油圧の発生を停止する。これにより、下流側の油圧は上限保持油圧HPと下限保持油圧LPとの間に維持され、クラッチ装置26が締結状態に維持される。
【0041】
自動二輪車1の停止時には、モータ52およびソレノイドバルブ56への電力供給をともに停止する。これにより、マスターシリンダ51は油圧発生を停止し、スレーブシリンダ28への油圧供給を停止する。ソレノイドバルブ56は開弁状態となり、下流側油路53b内の油圧がリザーバ51eに戻される。以上により、スレーブシリンダ28側(下流側)はタッチポイント油圧TPより低い低圧状態となり、クラッチ装置26が非締結状態となる。この状態は、
図5の領域G,Hに相当する。
【0042】
次に、自動二輪車1の変速制御について
図6、
図7を参照して説明する。
まず、比較例の変速制御について説明する。
図6に示すように、乗員の足操作によりシフトペダル32に入力される荷重(シフトペダル荷重)F1が立ち上がり、閾値である変速制御開始荷重値(換言すればエンジン強調制御開始荷重値)F1aを越えると、ECU60は、変速機21の変速操作(シフトペダル32の足操作)がなされたものと判断し、点火装置46の点火カットや燃料噴射装置47の燃料噴射カットといった出力抑制制御によって、エンジン駆動力(トルク)N1を一時的に低下させる。
【0043】
このエンジン駆動力N1の低下により、変速機21に一時的な駆動力抜けが生じ、このタイミングで変速ギヤ群24のドグの係合を切り替えることで、スムーズな変速が可能となる。エンジン駆動力N1の低下は急峻であり、規定時間後に出力抑制制御前のエンジン制御に戻った際も、エンジン駆動力N1は速やかに上昇する。その後、エンジン駆動力N1は、変速後のギヤ段に応じた駆動力に徐変する。エンジン駆動力N1を低下させるタイミングでは、エンジン回転数NEの上昇が止まり、僅かに減少を開始する。その後、エンジン回転数NEは、変速後のギヤ段に応じた回転数に向けて漸減する。
【0044】
シフトドラム36は、変速制御開始(換言すればエンジン協調制御開始)のタイミングT1から規定時間TC1後が作動開始(シフトドラム角D1の変化)のタイミングとなる。タイミングT1は、シフトペダル荷重F1が変速制御開始荷重値F1aに達したタイミングである。このタイミングT1から規定時間TC1が過ぎたタイミングT2が、シフトドラム36が作動を開始するタイミングとなる。
【0045】
変速制御開始からシフトドラム36が作動開始となるまでの規定時間TC1(ドラム作動時間)は、30〜50msecで安定している。一方、シフトペダル32の操作は、乗員によって速い遅いがあり、シフトペダル32の操作荷重(シフトペダル荷重F1)の立ち上がりの勾配に差が生じる。よって、シフトドラム36が作動開始したとき(変速開始時)のシフトペダル荷重F1のピーク値(以下、ペダルピーク荷重という。)F1P1は、ペダル操作速度によって異なる(すなわち、バラツキが生じる)。
【0046】
シフト操作を速めるとペダルピーク荷重F1P1も増加するので、速いシフト操作では変速操作が重いという印象を受けてしまう。変速開始のトリガーとなる変速制御開始荷重値F1aを単に下げると、シフトペダル32への外乱やセンサのノイズ等の影響等によって意図しない変速作動が生じる虞がある。
【0047】
そこで本実施形態では、
図7に示すように、シフトペダル荷重F1の予測値(ペダル荷重予測値FSC)を算出し、このペダル荷重予測値FSCが閾値(変速許可荷重値FSCTC)を越えると判断した時点で、前倒しで変速動作を開始する。本実施形態では、シフトペダル荷重F1の変化(勾配)の継続を確認し、その時間変化率(後述するペダル荷重差分平均値DFSA)からペダル荷重予測値FSCを算出する。
【0048】
ペダル荷重予測値FSCを算出するタイミングT3は、シフトペダル荷重F1が予測制御許可荷重値FSCCに達したタイミングである。このタイミングT3から規定時間TC1が過ぎたタイミングT4が、シフトドラム36が作動を開始するタイミングとなる。予測制御許可荷重値FSCCは、比較例の変速制御開始荷重値F1aよりも小さく、本実施形態のタイミングT3,T4は、それぞれ比較例のタイミングT1,T2から制御量A1だけ前倒ししたタイミングとなる。
【0049】
そして、シフトドラム36が回動を開始するタイミングと変速機21の駆動力抜けが生じるタイミングとを同等量だけ前倒しにずらすことで、変速動作はスムーズであり、シフトペダル荷重F1を増加させることもない。なお、比較例のシフトドラム角D1、エンジン回転数NE、エンジン駆動力N1を
図7中に鎖線で示す。また、操作開始からシフトドラム36の回動開始まで時間が短縮されるので、乗員がシフトペダル荷重F1を過剰に付与することが抑制される。これにより、ペダルピーク荷重F1P2が比較例のペダルピーク荷重F1P1よりも低下するので、ペダルピーク荷重のバラツキを抑えてシフトフィーリングを向上させることができる。
【0050】
次に、ECU60で行う処理の一例について、
図8のフローチャートを参照して説明する。
図8に示す制御フローは、電源がON(メインスイッチがON)の場合に規定の制御周期(1〜10msec)で繰り返し実行される。
【0051】
ECU60は、電源ONに伴い、ペダル荷重予測制御による変速要求判断を開始する(ステップS1)。具体的に、ECU60の変化率算出部60aは、シフト荷重センサ42が検出するペダル荷重検出値FS(N・msec)を制御周期毎にペダル荷重バッファ値FSBとしてバッファへ保存していく(ステップS2)。そして、ペダル荷重バッファ値FSBを保存する毎に、いま保存したペダル荷重バッファ値FSB(n)とその直前に保存したペダル荷重バッファ値FSB(n−1)との差分(ペダル荷重差分DFS)を算出し、かつ例えば直近の連続する三つのペダル荷重差分DFSからこれらの平均値(ペダル荷重差分平均値DFSA)を算出する(ステップS3)。
【0052】
次に、ECU60の予測荷重算出部60bは、シフト荷重センサ42が検出する現在のペダル荷重検出値FSと、ペダル荷重差分平均値DFSAに規定時間TC1をかけた値と、を足してペダル荷重予測値FSCを算出する(ステップS4)。規定時間TC1は30〜50msecであるが、ステップS4で用いる値は例えば45msecに設定する。なお、規定時間TC1は、車種に応じて10〜70msecの間で設定変更可能である。車両がドグミッションを備える場合、規定時間TC1は、30〜50msecの間で設定変更可能であるとより好ましい。
【0053】
その後、ECU60のペダル荷重判定部60cは、現在のペダル荷重検出値FSが予測制御許可荷重値FSCC以上か否かを判定する(ステップS5)。ステップS5でYES(現在のペダル荷重検出値FSが予測制御許可荷重値FSCC以上)の場合、次に、ECU60の予測値判定部60dは、ペダル荷重予測値FSCが変速許可荷重値FSCTC以上か否かを判定する(ステップS6)。ステップS6でYES(ペダル荷重予測値FSCが変速許可荷重値FSCTC以上)の場合、変速要求フラグを「1」とし(ステップS7)、一旦処理を終了する。ステップS5でNO(現在のペダル荷重検出値FSが予測制御許可荷重値FSCC未満)、またはステップS6でNO(ペダル荷重予測値FSCが変速許可荷重値FSCTC未満)の場合、変速要求フラグを「0」にリセットし(ステップS8)、一旦処理を終了する。ECU60の出力抑制制御部60eは、変速要求フラグが「1」になると、点火カットや燃料噴射カットといった出力抑制制御を実行する。
【0054】
ステップS5の予測制御許可荷重値FSCCは、比較例の変速制御開始荷重値F1aよりも小さく、ECU60は、比較例よりも早く出力抑制制御および変速制御を実施可能である。すなわち、ECU60は、変速要求フラグが「1」になると、比較例に比して前倒しで変速動作を開始する。EUC60は、比較例の変速制御開始のタイミングT1よりも早いタイミングT3でペダル荷重予測値FSCを算出し、このペダル荷重予測値FSCを基に前倒しで変速要求を判定する。ペダル荷重予測値FSCは、ペダル荷重検出値FSの時間変化率に基づき算出されるので、シフトペダル荷重F1の予測精度が高い。このため、タイミングT3でシフトドラム36を回動させるのに十分なシフトペダル荷重F1を確保しやすい。そして、変速操作の早い段階から変速制御を開始するので、乗員が変速操作の完了を認知するのも早く、ペダルピーク荷重も抑えられる。
【0055】
以上説明したように、上記実施形態では、シフトペダル32の変速操作を検出するシフト荷重センサ42と、前記シフト荷重センサ42が検出する変速操作に応じて、エンジン13の出力を抑制する出力抑制制御を行うECU60と、を備えた変速制御装置において、前記ECU60は、前記シフト荷重センサ42が検出するペダル荷重検出値FSの時間変化率(ペダル荷重差分平均値DFSA)を算出する変化率算出部60aと、前記時間変化率から規定時間TC1が経過後のペダル荷重予測値FSCを求める予測荷重算出部60bと、前記ペダル荷重検出値FSが第一の閾値(予測制御許可荷重値FSCC)に達したか否かを判定するペダル荷重判定部60cと、前記ペダル荷重検出値FSが前記第一の閾値に達したとき、前記ペダル荷重予測値FSCが第二の閾値(変速許可荷重値FSCTC)を越えるか否かを判定する予測値判定部60dと、前記ペダル荷重予測値FSCが前記第二の閾値を越えると判定したとき、前記出力抑制制御を行う出力抑制制御部60eと、を備えている。
【0056】
この構成によれば、シフトペダル32で変速操作を行う変速制御装置において、シフト荷重センサ42によるペダル荷重検出値FSの時間変化率(ペダル荷重差分平均値DFSA)を求め、この時間変化率から規定時間TC1経過後のペダル荷重予測値FSCを求め、このペダル荷重予測値FSCが第二の閾値を越えると判定した場合に、エンジン13の出力抑制制御を行う。これにより、実際のペダル荷重検出値FSが第二の閾値に達する前に、エンジン13の出力抑制制御を前倒しで開始することが可能となる。このため、素早い変速操作がなされた場合でも、変速操作の早い段階で出力抑制制御を開始することが可能となる。一方、ペダル荷重検出値FSの時間変化率からペダル荷重予測値FSCを求めるので、変速操作の誤検出も抑制される。そして、前倒しで変速機21の駆動力抜けを生じさせて変速作動を開始させるので、シフトペダル荷重F1の過剰な付与が抑止される。したがって、変速操作の速さの違いによるペダルピーク荷重のバラツキを抑え、シフトフィーリングを向上させることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、前記予測荷重算出部60bは、前記時間変化率に前記規定時間TC1を乗じて得た変化量を、現在の前記ペダル荷重検出値FSに加算することで、前記ペダル荷重予測値FSCを算出する。
この構成によれば、変化率に規定時間TC1を乗じて現在のペダル荷重検出値FSに加算するだけの簡単な計算で、ペダル荷重予測値FSCを求めるようにしたので、ECU60の処理負荷を軽減した上で、エンジン制御の遅れを抑えることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、前記変化率算出部60aは、前記時間変化率として、制御周期で連続して検出した複数回の前記ペダル荷重検出値FSから得たペダル荷重差分DFSの平均値を算出する。
この構成によれば、時間変化率を複数回のペダル荷重検出値FSから得たペダル荷重差分DFSの平均値として算出するので、ECU60の処理負荷を軽減するとともに、ペダル荷重検出値FSに単発的な異常値が発生した場合でも、誤検出によるエンジン制御への影響を低減することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、前記変化率算出部60aは、連続する複数回、例えば三回の前記ペダル荷重差分DFSの平均値を前記時間変化率として算出する。
この構成によれば、連続する三回のペダル荷重差分DFSの平均値を時間変化率として算出するので、ECU60の処理負荷を軽減し、かつ誤検出によるエンジン制御への影響を低減することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、前記予測値判定部60dは、前記ペダル荷重検出値FSが前記第一の閾値に達したとき、直近の前記時間変化率から求めた前記ペダル荷重予測値FSCが前記第二の閾値を越えるか否かを判定する。
この構成によれば、ペダル荷重検出値FSが第一の閾値に達したとき、最新の時間変化率から求めたペダル荷重予測値FSCについて判定を行うことで、変速操作に即応したエンジン制御を行うことができる。
【0061】
また、上記実施形態では、前記変化率算出部60aは、前記エンジン13の稼働中は常に前記時間変化率を算出する。
この構成によれば、エンジン13の稼働中は常にペダル荷重検出値FSの時間変化率が算出されるので、素早い変速動作が行われた場合でも、変速操作の瞬間に近い最新の時間変化率を常に得ることができ、変速操作に対するエンジン制御の遅れを抑えることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、前記予測荷重算出部60bは、前記時間変化率に乗じる前記規定時間TC1を、10〜70msecの範囲内で設定可能とする。
この構成によれば、時間変化率に乗じる規定時間TC1を10〜70msecの範囲内で設定可能とすることで、変速制御装置を搭載する車両の特性に合わせて時間変化率に乗じる規定時間TC1を調節可能となり、ペダル荷重予測値FSCの精度を高めてエンジン制御を良好なタイミングで行うことができる。
【0063】
また、上記実施形態では、前記シフトペダル32は、前記エンジン13に連結されたドグミッション(変速機21)の変速操作を行うものであり、前記予測荷重算出部60bは、前記時間変化率に乗じる前記規定時間TC1を、30〜50msecの範囲内で設定可能とする。
この構成によれば、ドグミッションの変速動作に要する時間が30〜50msecであることに合わせて、時間変化率に乗じる規定時間TC1を30〜50msecの範囲内で設定可能とすることで、エンジン制御を良好なタイミングで行うことができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、クラッチ制御ユニット50AにECU60を一体に設けてもよい。マスターシリンダ51からの油圧供給により切断状態となるクラッチ装置と組み合わせてもよい。
ペダル荷重差分平均値DFSAは、連続する二つのペダル荷重差分DFS、又は四つ以上のペダル荷重差分DFSの平均値として算出してもよい。
時間変化率から予測されるペダル荷重予測値をマップから求める荷重予測手段を備えてもよい。
上記実施形態のようにクラッチ操作を自動化した鞍乗り型車両への適用に限らず、マニュアルクラッチ操作を基本としながら、所定の条件下でマニュアルクラッチ操作を行わずに駆動力を調整して変速を可能とする、いわゆるクラッチ操作レスの変速装置を備える鞍乗り型車両にも適用可能である。
自動二輪車への適用に限らず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両に適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。