(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周壁バーナの前記火口部は、前記天井バーナの旋回型の火炎が前記外周壁部に沿う向きと相対向する向きに向けられることを特徴とする請求項2に記載の回転炉床炉。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる回転炉床炉及びその改造方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る回転炉床炉の好適な一実施形態を概略的に示す斜視図、
図2は、
図1に示した回転炉床炉であって、天井バーナの燃焼状態を説明する平面断面図、
図3は、
図1に示した回転炉床炉に適用される天井バーナの要部を説明する説明図、
図4は、
図1に示した回転炉床炉の設備レイアウトであって、天井バーナが燃焼モード時、周壁バーナが排気モード時を示す説明図、
図5は、
図1に示した回転炉床炉であって、周壁バーナの燃焼状態を説明する平面断面図、
図6は、
図1に示した回転炉床炉の設備レイアウトであって、周壁バーナが燃焼モード時、天井バーナが排気モード時を示す説明図である。
【0018】
本実施形態に係る回転炉床炉1は、
図1及び
図2に示すように、水平に右回りあるいは左回りに回転駆動される円環状の回転炉床2を、その上方から炉体3で覆って構成される。炉体3は、円環状の回転炉床2の内周縁内方に位置させて設けられる円筒体状の内周壁部4と、回転炉床2の外周縁外方に位置させて設けられる円筒体状の外周壁部5と、回転炉床2の上方でこれら外周壁部5の上端部と内周壁部4の上端部との間に架け渡して設けられる円環状の天井部6とから構成され、当該炉体3で区画形成された炉内Fに回転炉床2が設けられる。
【0019】
被加熱物(図示せず)は、外周壁部5に設けられた入口(図示せず)から回転炉床2の上に載置され、周回しながら加熱されて、外周壁部5に設けられた出口(図示せず)から取り出される。
【0020】
天井部6には、少なくとも一つ、本実施形態にあっては複数の蓄熱式の天井バーナ7が設けられる。複数の天井バーナ7は、回転炉床2の回転方向(図中、矢印Rで示す)に等間隔で配設される。図示例では、4台の天井バーナ7が90°間隔で設けられている。天井バーナ7は
図3に示すように、その火口部7aが天井部6を貫通して炉内Fに向けて設けられ、これにより天井部6から真下に火炎Mcが向けられるようになっている。
【0021】
天井部6よりも下方の外周壁部5には、少なくとも一つ、本実施形態にあっては複数の蓄熱式の周壁バーナ8が設けられる。複数の周壁バーナ8は、天井バーナ7と同様に、回転炉床2の回転方向に等間隔で配設される。周壁バーナ8は、天井バーナ7との関係では、当該天井バーナ7と同数で、回転炉床2の回転方向に隣接する天井バーナ7同士の中間位置に配設される。図示例では、周壁バーナ8は、4つの天井バーナ7と交互に、90°間隔で4台設けられている。
【0022】
また、天井バーナ7が上方に位置されるのに対し、周壁バーナ8はそれよりも下方に位置される。周壁バーナ8は
図2に示すように、その火口部8aが外周壁部5にその平面円形状の接線方向から接続され、これにより外周壁部5に沿うように火炎Mwが向けられるようになっている。同数で設けられる天井バーナ7と周壁バーナ8とは、1台ずつを1組として、この1組を単位として交番燃焼が行われるようになっている。
【0023】
天井バーナ7及び周壁バーナ8は共に、蓄熱式バーナとされる。蓄熱式バーナ自体は周知であって、
図1,
図2,
図4〜
図6に示すように、炉内Fに向けて開放された火口部7a,8aを有するバーナ本体7b,8bと、火口部7a,8aとは反対側で、バーナ本体7b,8bに直結して設けられた蓄熱部7c,8cとを備えている。
【0024】
そして、バーナ本体7b,8bの火口部7a,8aから炉内Fに向けて火炎Mc,Mwを噴出して炉内Fを加熱する燃焼モードと、火口部7a,8aから炉内Fの炉気が排気Ec,Ewとして排出される排気モードとが、本実施形態に係る回転炉床炉1の天井バーナ7と周壁バーナ8とで、交互に繰り返し切り替えられて運転されるようになっている。バーナ7,8の燃焼運転で炉内Fに充満する炉気は、炉内Fから排出されるときに排気Ec,Ewとなるので、以下の説明中、排出される炉気のことを排気Ec,Ewと言い換える。
【0025】
蓄熱式バーナは、排気モード時に、炉内Fから排出される排気Ec,Ewが蓄熱部7c,8cに流通され、これにより当該排気Ec,Ewの排熱が蓄熱部7c,8cに蓄熱され、蓄熱部7c,8cを通過した排気は降温されて排気系9へ排出されることとなり、その後、排気モードから燃焼モードに運転が切り替えられると、給気ブロア10aを有する給気系10の給気作用で燃焼用空気が蓄熱部7c,8cに流通されて、当該蓄熱部7c,8cに蓄熱された排気Ec,Ewの排熱で燃焼用空気が予熱(加熱)される。
【0026】
そして、予熱された燃焼用空気が、バーナ本体7b,8bへ給気され、各火口部7a,8a近傍に設けられた燃料ノズル12aを通じて供給される燃料ガスfと混合されて燃焼されることにより、バーナ本体7b,8bは、排熱を利用した省エネルギ運転で、火炎Mc,Mwを生成する。
【0027】
蓄熱式バーナを用いる場合、燃焼モードと排気モードとの運転モードの切り替えに伴って炉内温度が変動しないように、当該蓄熱式バーナは、少なくとも一組一対、すなわち天井バーナ7と周壁バーナ8の組み合わせで用いられる。
【0028】
いずれか一方の蓄熱式バーナ(例えば、天井バーナ7)が燃焼モードのときには、他方の蓄熱式バーナ(例えば、周壁バーナ8)は排気モードで運転され、前者が排気モードに切り替えられたときには、後者が燃焼モードに切り替えられるように、燃焼モードと排気モードとが一対の蓄熱式バーナ相互間で、一定の時間間隔(例えば、1分間隔)で交互になるように運転制御される。
【0029】
各バーナ7,8の蓄熱部7c,8cは、炉内Fに臨む火口部7a,8a側が排気入口側(燃焼用空気出口側)となり、火口部7a,8a側とは反対側が排気出口側(燃焼用空気入口側)となる。
【0030】
従って、蓄熱式バーナそれぞれの蓄熱部7c,8cでは、排気モード時、排気Ec,Ewは、火口部7a,8aから蓄熱部7c,8cへ向かって流通して当該蓄熱部7c,8cの排気出口側から排気系9へ排出され、また、燃焼モード時、燃焼用空気は、給気系10から蓄熱部7c,8cの排気出口側へ供給され、蓄熱部7c,8cから火口部7a,8aへ向かって流通することで予熱される。
【0031】
本実施形態に係る回転炉床炉1では、天井バーナ7及び周壁バーナ8はそれぞれ、炉内Fに向けて開放された火口部7a,8aを有するバーナ本体7b,8bと、バーナ本体7b,8bに、火口部7a,8aとは反対側で接続された蓄熱部7c,8cと、バーナ本体7b,8bに隣接させて設けられ、燃焼用空気と混合されて火炎Mc,Mwを生成する燃料ガスfなどの燃料を火口部7a,8aに向けて噴射する燃料ノズル12a、燃料ノズル12aに接続され、燃料fを供給する燃料供給管12b、並びに燃料供給管12bに設けられ、燃料fの供給・停止を制御する燃料用開閉弁12c(図中、白抜き表示は開;黒ベタ表示は閉)からなる燃料供給系12と、燃焼用空気を給気する給気ブロア10a、給気量を調整する給気ダンパ10b、並びに燃焼用空気の供給・停止を制御する開閉自在な給気弁10c(図中、白抜き表示は開;黒ベタ表示は閉)を有し、蓄熱部7c,8cの排気出口側へ向かって燃焼用空気を供給するための給気系10と、排気Ec,Ewの排出・停止を制御する開閉自在な排気弁9a(図中、白抜き表示は開;黒ベタ表示は閉)及び排気量を調整する排気ダンパ9bを有し、炉内Fの排気Ec,Ewを、火口部7a,8aを介して煙道9cへ向けて排出するように、蓄熱部7c,8cの排気出口側から流出される排気Ec,Ewが流通される排気系9とを備えて構成される。煙道9cは、煙突9dに接続されている。
【0032】
給気系10は詳細には、給気ブロア10aが設けられ、1組の天井バーナ7及び周壁バーナ8双方へ向けて燃焼用空気を供給することが可能な給気用集合管10dと、給気集合管10dから分岐させて設けられ、天井バーナ7及び周壁バーナ8それぞれの蓄熱部7c,8cに燃焼用空気を供給するための複数の給気管10eと、各給気管10eに設けられた上記給気弁10cとから構成される。
【0033】
排気系9は詳細には、煙道9cに接続され、1組の天井バーナ7及び周壁バーナ8双方から排気Ec,Ewを排出することが可能な排気集合管9eと、排気集合管9eから分岐させて設けられ、天井バーナ7及び周壁バーナ8それぞれの蓄熱部7c,8cから排気Ec,Ewを排出するための排気管9fと、各排気管9fそれぞれに設けられた上記排気弁9aとから構成される。
【0034】
給気弁10cは、天井バーナ7及び周壁バーナ8いずれであっても、燃焼モードのとき、燃焼用空気を、蓄熱部7c,8cを介してバーナ本体7b,8bの火口部7a,8aに供給するために開かれ、排気モードのとき、燃焼用空気の供給を停止するために閉じられる。
【0035】
排気弁9aは、天井バーナ7及び周壁バーナ8いずれであっても、排気モードのとき、炉内Fの排気Ec,Ewを、蓄熱部7c,8cを介してバーナ本体7b,8bの火口部7a,8aから排出するために開かれ、燃焼モードのとき、排気Ec,Ewの排出を停止するために閉じられる。給気ブロア10aは、回転炉床炉1の操業中は通常、常時運転される。
【0036】
燃料用開閉弁12cは、天井バーナ7及び周壁バーナ8いずれであっても、燃焼モードのとき、燃料fを燃料ノズル12aに供給するために開かれ、排気モードのとき、燃料fの供給を停止するために閉じられる。
【0037】
図4に例示されているように、燃焼モードの天井バーナ7では、排気弁9aが閉じられ、かつ給気弁10cが開かれて、給気系10の給気作用で送り込まれる燃焼用空気は、給気系10の給気集合管10dから給気管10eの給気弁10cを介して蓄熱部7cへ流通され、蓄熱部7cからさらに、バーナ本体7bの火口部7aへ向けて供給されるようになっている。
【0038】
そして、燃料ノズル12aの燃料用開閉弁12cが開かれて、燃料供給管12bから燃料fが火口部7aに向けて供給されて、火炎Mcが形成される。炉体3の内部が燃料fの自己燃焼温度以上の場合は、自然着火するが、温度がそれよりも低い場合は、点火プラグやパイロットバーナ(図示せず)によって着火される。
【0039】
他方、排気モードである周壁バーナ8では、排気弁9aが開かれ、かつ給気弁10cが閉じられて、炉内Fの排気Ecは、バーナ本体8bの火口部8aから蓄熱部8cへ流通され、蓄熱部8cからさらに、排気弁9aを介して排気管9fから排気系9の排気集合管9eへ排出されるようになっている。
【0040】
天井バーナ7はさらに、天井部6からその直下の炉内Fへ向けて、旋回型の火炎Mcを生成する旋回炎生成タイプのバーナとされる。天井バーナ7は、
図3に示すように、バーナ本体7bの火口部7a側がその内部に円筒空間11を確定する円筒形状に形成される。
図3(A)は、天井バーナ7の火口部7a周辺の側断面図、
図3(B)は、
図3(A)中、A−A線矢視断面図である。円筒空間11は、燃料ノズル12aからの燃料fで火炎Mcを生成する燃焼室を構成する。
【0041】
また、バーナ本体7bは、円筒空間11の上部に開口するノズル流路13を有する。ノズル流路13は、円筒空間11の円筒面に接する平面からなる第1の側面13aと、第1の側面13aに対向して第1の側面13aと平行に延伸する平面からなる第2の側面13bと、第2の側面13bから屈曲して90°の角度で延伸し、円筒空間11に接する平面からなる第3の側面13cとを備える。
【0042】
また、ノズル流路13の天面13dは円筒空間11の天面に連続するように延伸し、ノズル流路13の底面13eは、天面に平行である。つまり、ノズル流路13の天面13d及び底面13eは、円筒空間11の中心軸Xに対し、直角に交わる平面である。
【0043】
ノズル流路13は、第1の側面13aと第2の側面13bとによって画定され、断面が一定なスリット状の助走部14と、90°以下の角度で互いに交差する円筒空間11の2つの接面である第1の側面13aと第3の側面13cとによって画定された開口部15とからなる。ノズル流路13の他端は、蓄熱部7cに連通している。燃料ノズル12aは、円筒空間11に向けて開口されている。
【0044】
燃焼用空気は、ノズル流路13から、円筒空間11を形成するバーナ本体7bの円筒形状の内壁に沿って接線方向に吹き込まれ、円筒空間11内に螺旋状に旋回する気流が形成される。燃料ノズル12aから供給された燃料fが燃焼して形成される火炎Mcは、この旋回気流に乗って、螺旋状に延伸する。火口部7aから炉内Fに噴出された火炎Mcは、旋回気流に乗って、その径方向外側へ全周に亘って広がるような渦状の流れを形成し、火炎Mcは旋回しつつ傘状に拡がって形成される。
【0045】
これに対し、周壁バーナ8は、火口部8aから真っ直ぐ直進する火炎Mwを生成し、この周壁バーナ8の火炎Mwは
図5に示すように、外周壁部5に沿わされる。周壁バーナ8の火炎Mwは、火口部8aから火炎先端までの直線距離が長い長炎とされ、他方、天井バーナ7の火炎Mcは、旋回作用により、火口部7aから火炎先端までの直線距離が短い短炎とされる。
【0046】
それらにより、回転炉床2上に載置された被加熱物と火炎Mc,Mwとの間の距離が確保されるので、火炎Mc,Mwが被加熱物に接触して局部的に高温になったり、被加熱物に損傷を与えることが防がれる。また、炉体3全体を小型化することもできる。
【0047】
周壁バーナ8の火口部8aは、
図2に示すように、炉内Fで旋回する天井バーナ7の火炎Mcが外周壁部5に沿う向きと相対向する向きに向けられる。すなわち、
図2と併せて
図5を見ることで理解されるように、仮に周壁バーナ8と天井バーナ7を同時に燃焼した場合、周壁バーナ8の火炎Mwと天井バーナ7の火炎Mcが、外周壁部5のすぐ内側で衝突するような向きに、周壁バーナ8の火口部8aが臨ませられる。実際には、周壁バーナ8と天井バーナ7とは、交番燃焼されるので、火炎Mc,Mw同士の衝突はない。
【0048】
言い換えれば、交番燃焼させる一組の周壁バーナ8と天井バーナ7の関係で、外周壁部5の位置から天井バーナ7の火炎Mcを見たときに、火炎Mcが左回りに旋回する場合には、周壁バーナ8の火口部8aは、見ている位置から右側に設けられ、火炎Mcが右回りに旋回する場合には、左側に設けられる。
【0049】
そして、炉内Fの炉気(排気)は、
図2及び
図5に示すように、周壁バーナ8の燃焼時には、天井バーナ7へ向かう一方向の流れ(
図5中、矢印Dwで示す)となり、他方、天井バーナ7の燃焼時には、周壁バーナ8へ向かう反対方向の流れ(
図2中、矢印Dcで示す)となって、これら天井バーナ7と周壁バーナ8を切り替える交番燃焼が繰り返されることで、炉気が繰り返し正逆反対方向に流れるようになっている。
【0050】
このように炉気が繰り返し正逆反対方向に流れるので、周壁バーナ8の火炎Mwの向きは、回転炉床2の回転方向Rに沿う向きとしても、あるいは回転方向Rに相対向する、反対の向きとしても、いずれであっても良い。同様に、天井バーナ7の火炎Mcの旋回方向も、周壁バーナ8と上記関係が保たれれば、右旋回としてもあるいは左旋回としても、いずれであっても良い。
【0051】
次に、本実施形態に係る回転炉床炉1の作用について説明する。回転炉床炉1の稼働中、
図2及び
図4に示すように、天井バーナ7が燃焼モードになり、周壁バーナ8が排気モードになると、蓄熱部7cで加熱された燃焼用空気と燃料ノズル12aからの燃料fによって各天井バーナ7の火口部7aで生成された火炎Mcが複数個所から炉内Fへ向けて短炎の旋回流となって広がり、この旋回炎による炉気が炉内Fに拡散していく。
【0052】
旋回作用を受けている炉気は、外周壁部5の周辺で、炉体3の周方向に沿って一方向へ向かって(内周壁部4の周辺では反対方向へ向かって)炉内F全体に行き渡りつつ、天井部6下方の外周壁部5に設けられた複数の周壁バーナ8の各火口部8aから、排気Ecとして排出される。
【0053】
次いで、天井バーナ7が排気モードになり、周壁バーナ8が燃焼モードになるように切り替えられると、
図5及び
図6に示すように、各周壁バーナ8の火口部8aで生成された長炎の直進する火炎Mwが外周壁部5に沿って炉内Fへ広がり、この長炎による炉気が炉内Fに拡散していく。
【0054】
炉気は、外周壁部5の周辺で、炉体3の周方向に沿って、天井バーナ7の燃焼時とは反対向きに炉内F全体に行き渡りつつ、外周壁部5上方の天井部6に設けられた複数の天井バーナ7の各火口部8aから、排気Ewとして排出される。そして、天井バーナ7と周壁バーナ8との間でモードが切り替わる度に、炉気の流れが、上から下向き、下から上向きと、そしてまた、外周壁部5周辺で正逆反対方向に、反復的に繰り返し切り替わるようになっている。
【0055】
このような立体的な撹拌作用によって炉内F全体の温度が均一化され、被加熱物に対して様々な方向から炉気が接触し、被加熱物も全体が均一に加熱される。
【0056】
本実施形態に係る回転炉床炉1にあっては、天井部6に、炉内Fへ火口部7aを向けて設けられた蓄熱式天井バーナ7と、外周壁部5に、その接線方向から炉内Fへ火口部8aを向けて設けられ、天井バーナ7と交番燃焼される蓄熱式周壁バーナ8とを備えたので、回転炉床炉1の稼働中、周壁バーナ8と天井バーナ7が交番燃焼されることで、炉内Fの炉気が、天井部6からその下方の外周壁部5へ向かって流れることと、外周壁部5からその上方の天井部6へ向かって流れることとが繰り返され、さらに、外周壁部5に沿う流れも正逆反対向きに切り替えられることが繰り返されて、炉内Fの炉気の撹拌作用を促進することができる。これにより、炉内温度分布を均一化することができる。
【0057】
また、天井バーナ7で生成される火炎Mcは、周壁バーナ8の火口部8aに直接的に向かうことなく、天井部6から天井面に沿って流れ、また、周壁バーナ8で生成される火炎Mw及び排気Ewは、天井部6の天井バーナ7の火口部7aに直接的に向かうことなく、外周壁部5の周方向へ向かうことから、これにより、回転炉床2上の被加熱物に火炎Mc,Mwが接触し難くなり、被加熱物に火炎Mc,Mwが接触して損傷が生じることを防ぐことができる。また、天井バーナ7及び周壁バーナ8の排気Ec,Ewが直ちに近隣の火口部7a,8aから排出されてしまうことを防止でき、蓄熱式バーナによる省エネルギ効果を十分に発揮させることができる。
【0058】
蓄熱式バーナを天井部6及び外周壁部5に、組として取り付けるようにしているので、バーナを外周壁部5だけに設けることに比して、バーナの設置スペースを天井部6にまで広く確保することができて、バーナの設備台数を増やせるレイアウトを得ることができ、従来よりも大きな燃焼量を確保することができる。
【0059】
天井バーナ7は、旋回炎生成タイプのバーナであるので、炉気は、天井部6と外周壁部5との間で上下に流れて撹拌されるだけでなく、天井バーナ7の旋回炎Mcによって撹拌作用をさらに促進することができる。
【0060】
周壁バーナ8の火口部8aの向きが、天井バーナ7の旋回型の火炎Mcが外周壁部5に沿う向きと相対向する向きに向けられていて、天井バーナ7による旋回流に伴って外周壁部5に沿って流れる炉気は、その流れの向きと相対向する向きに向いている周壁バーナ8の火口部8aへ、排気Ecとしてスムーズに流れ込むので、円滑に排出することができ、また、周壁バーナ8の火炎Mwに伴って外周壁部5に沿って流れる炉気も、支障なく天井バーナ7の火口部7aに向けて、排気Ewとして流れ込んで良好に排出することができる。
【0061】
天井バーナ7及び周壁バーナ8が複数かつ同数で設けられ、天井バーナ7は回転炉床2の回転方向Rに等間隔で配設されると共に、周壁バーナ8は隣接する天井バーナ7同士の中間に配設されていて、回転炉床炉1全体としてバーナ7,8の配置が均等化されるので、バーナ配置の点からも、炉内温度分布を適切に均一化することができる。
【0062】
図7は、上記実施形態に係る回転炉床炉1に用いる天井バーナ7の変形例を示す側断面図である。この変形例では、天井バーナ7の火口部7aは、旋回型の火炎Mcの旋回半径を拡げるために、炉内Fへ向かって拡がるように形成される。
【0063】
すなわち、図示するように、火口部7aには、円筒空間11から炉内Fに向かって拡径する拡径空間16を画定する拡径部が形成される。円筒空間11と拡径空間16とで燃焼室が構成される。拡径空間16は、炉内F側へ向けて、拡径率が大きくなっている。
【0064】
円筒空間11で生成された火炎Mc(旋回気流)が拡径空間16に達すると、その形状に合わせて、旋回気流の旋回半径が拡大してゆく。そして、炉内Fに到達した旋回気流は、径方向外側へ、かつ天井部6に沿って全周に広がるような渦状の流れを形成する。これにより、見かけ上の火炎Mcは傘状に広がったものとなる。このように天井バーナ7の火炎Mcの旋回流が拡げられるので、炉内温度分布の均一化をさらに促進することができ、被加熱物に対し、さらに火炎Mcが接触し難くすることができる。
【0065】
また、例えば特許文献2のような回転炉床炉が既存のものである場合、当該炉に対し、蓄熱式天井バーナ7を追加し、周壁バーナを蓄熱式周壁バーナ8に付け替える改造を行えば、
すなわち、少なくとも円筒状の外周壁部5及び天井部6で取り囲んで形成された炉内Fに回転炉床2が設けられた既存の回転炉床炉の改造方法として、既存の回転炉床炉1の天井部6に、炉内Fへ火口部7aを向けて、蓄熱式天井バーナ7を設け、外周壁部5に、その接線方向から炉内Fへ火口部8aを向けて、天井バーナ7と交番燃焼される蓄熱式周壁バーナ8を設け、天井バーナ7及び周壁バーナ8は複数かつ同数で設け、天井バーナ7を、回転炉床2の回転方向に等間隔で配設すると共に、周壁バーナ8を、隣接する天井バーナ7同士の中間に配設して改造することとすれば、既に設置されている回転炉床炉であっても、上記実施形態の回転炉床炉1と同様な作用効果が得られるようにすることができる。