(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シールドシェルには当該シールドシェルを基板のグランド回路に接続する基板接続部が設けられ、前記シェル接続部および前記基板接続部はいずれも前記ハウジングの前端部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシールドコネクタ。
前記シェル接続部は、前記シールドシェルの前記一方の側板部から前記ハウジングの前記一方の側壁に形成された前記挿通穴を通って前記ハウジングの内側へ突出した後または突出しつつ湾曲し、さらに前記ハウジングの内側から前記ハウジングの前記一方の側壁に形成された前記挿通穴を再び通り、当該シェル接続部の先端部が前記シールドシェルの前記一方の側板部に接触していることを特徴とする請求項1または2に記載のシールドコネクタ。
前記シールドシェルの前記一方の側板部において前記シェル接続部の先端部が接触している部分には、前記シールドシェルの内側から外力を受けて弾性変形することにより前記シールドシェルの外側へ変位可能な弾性変位部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシールドコネクタ。
前記ハウジングの前記一方の側壁に形成された前記挿通穴は前記ハウジングの前記一方の側壁の後端部から前記凸部に達するまで伸長するスリットであり、当該スリットの上下方向の長さは前記凸部の上下方向の長さ以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のシールドコネクタ。
前記誤挿入防止部の一部は、前記挿入口の下側の角部にアールを付けることにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のシールドコネクタ。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルを基板に設けられた電子・電気回路に電気的に接続するために、互いに着脱可能なプラグコネクタおよびレセプタクルコネクタが用いられることが多い。プラグコネクタは同軸ケーブルの端部に取り付けられ、レセプタクルコネクタは基板に取り付けられる。
【0003】
同軸ケーブル用のプラグコネクタおよびレセクタプルコネクタの中には、同軸端子を樹脂性のハウジングに収容した構造を備えているものがある。
【0004】
具体的には、プラグコネクタは、樹脂製のハウジングと、ハウジング内に収容された同軸端子とを備えている。同軸端子は、中心導体を、絶縁体を介して筒状の外側導体により包囲する構造を有している。中心導体には、同軸ケーブルの内部導体(心線)が接続され、外側導体には、同軸ケーブルの外部導体(編組)が接続される。
【0005】
一方、レセクタプルコネクタも、樹脂製のハウジングと、ハウジング内に収容された同軸端子とを備えている。レセクタプルコネクタの同軸端子の中心導体は例えば基板の信号回路に接続され、レセクタプルコネクタの同軸端子の外側導体は基板のグランド回路に接続される。
【0006】
例えば、プラグコネクタのハウジングが雄型であり、レセクタプルコネクタのハウジングが雌型である場合には、プラグコネクタをレセプタクルコネクタに接続する際には、プラグコネクタのハウジングの先端側がレセプタクルコネクタのハウジングの挿入口に挿入される。これにより、プラグコネクタの同軸端子の中心導体と、レセクタプルコネクタの同軸端子の中心導体とが互いに接続され、かつプラグコネクタの同軸端子の外側導体と、レセクタプルコネクタの同軸端子の外側導体とが互いに接続される。
【0007】
また、同軸ケーブル用のプラグコネクタおよびレセプタクルコネクタで取り扱われる信号が例えばデジタル映像信号等の高周波信号である場合、高周波のノイズを除去するために、プラグコネクタおよびレセクタプルコネクタを金属製のシールドシェルで覆うことがある。
【0008】
また、シールドシェルによるノイズ除去効果を良好に発揮させるためには、同軸ケーブルの外部導体をシールドシェルに電気的に接続し、かつシールドシェルを基板のグランド回路に電気的に接続する必要がある。
【0009】
同軸ケーブルの外部導体とシールドシェルとの電気的接続は、例えば次のように行うことがある。すなわち、プラグコネクタのハウジングの外周側に、同軸端子の外側導体または同軸ケーブルの外部導体に電気的に接続された接続部を設ける。そして、レセプタクルコネクタのハウジングの外周側にシールドシェルを設け、当該ハウジングの内周側に、シールドシェルと電気的に接続された接続片を設ける。これにより、プラグコネクタのハウジングがレセプタクルコネクタのハウジングの挿入口に挿入されたとき、プラグコネクタのハウジングの外周側に設けた接続部と、レセクタプルコネクタのハウジングの内周側に設けた接続片とが互いに接触し、同軸ケーブルの外部導体とシールドシェルとが電気的に接続される。
【0010】
また、シールドシェルと基板のグランド回路との電気的接続は、例えば、シールドシェルに基板接続部を設け、その基板接続部を基板のグランド回路に接続することにより行うことができる。
【0011】
下記の特許文献1には、プラグコネクタに接続された同軸ケーブルの外部導体とレセクタプルコネクタに設けられたシールドシェルとの電気的接続を行う技術の一例が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(シールドコネクタ)
図1は本発明の実施形態のシールドコネクタ1を右上前方から見た状態を示している。
図2はシールドコネクタ1を右上後方から見た状態を示している。
図3はシールドコネクタ1を分解した状態を示している。
図4はシールドコネクタ1を前方から見た状態を示している。
図5はシールドコネクタ1の
図4中の矢示V−V方向から見た断面を示している。
【0029】
以下の実施形態において、シールドコネクタ1の挿入口27に相手コネクタ71(
図9参照)の先端側が挿入される方向を「コネクタ挿入方向」といい、その反対方向を「コネクタ抜去方向」という。
図1等における矢印Inはコネクタ挿入方向を示し、矢印Outはコネクタ抜去方向を示す。また、シールドコネクタ1におけるコネクタ挿入方向の手前側を前とし、先側を後ろとする。また、シールドコネクタ1を基板に取り付ける側を下とし、その反対側を上とする。また、左および右については、
図4に示すように、シールドコネクタ1を前方から見たときの左および右を基準とする。
図1等における矢印U、D、L、Rは上方向、下方向、左方向、右方向をそれぞれ示している。なお、これら前、後、上、下、左、右は説明の便宜のために定めたにすぎない。
【0030】
図1において、シールドコネクタ1は、基板に取り付けて使用するタイプのレセクタプルコネクタである。シールドコネクタ1には、プラグコネクタである相手コネクタ71(
図9参照)を着脱可能に接続することができる。シールドコネクタ1に相手コネクタ71が接続されることにより、相手コネクタ71に取り付けられた同軸ケーブル121の内部導体122および外部導体123が基板の信号回路およびグランド回路に電気的にそれぞれ接続される。
【0031】
図3に示すように、シールドコネクタ1は、同軸端子11、ハウジング21およびシールドシェル46を備えている。
【0032】
同軸端子11は、
図5に示すように、信号端子としての中心導体12、外側導体13、絶縁部材14、第1の回路接続部15および第2の回路接続部16を備えている。中心導体12は導電性材料により棒状または線状に形成されている。外側導体13は導電性材料により円筒状に形成され、中心導体12の外周側に設けられている。絶縁部材14は絶縁材料により形成され、中心導体12と外側導体13との間に設けられている。第1の回路接続部15は、中心導体12を基板の例えば信号回路に接続するための端子であり、中心導体12の後部に中心導体12と一体に形成されている。第2の回路接続部16は、外側導体13を例えば基板のグランド回路に接続するための端子であり、外側導体13の後部に外側導体13と一体に形成されている。また、外側導体13の外周面の上部には、同軸端子11をハウジング21に係止するための係止凸部17が形成されている。
【0033】
中心導体12および第1の回路接続部15は、例えば、金属板材に対してプレス加工を施し、または金属棒材もしくは金属線材に対して切削加工および曲げ加工を施すことにより形成されている。また、外側導体13および一対の第2の回路接続部16は、例えば、金属板材に対してプレス加工および曲げ加工を施すことにより形成されている。
【0034】
ハウジング21は、絶縁材料により形成されている。例えば、ハウジング21は樹脂成形により形成されている。ハウジング21は、
図3および
図5に示すように、横断面形状が略四角形の筒状に形成され、前端側が開口し、後端側が閉塞されている。ハウジング21は、上壁22、下壁23、左壁24、右壁25および後壁26を有している。また、ハウジング21の前端側の開口は、相手コネクタ71の先端側が挿入される挿入口27となっている。ハウジング21内には、相手コネクタ71の先端側が嵌合される。
【0035】
図2および
図5に示すように、ハウジング21の後部には同軸端子11の前部が収容されている。すなわち、ハウジング21の後壁26には、後壁26を貫通する端子支持穴28が形成され、端子支持穴28内に同軸端子11の前部が挿入されている。同軸端子11は、同軸端子11の外側導体13の外周面の上部に形成された係止凸部17が、端子支持穴28の内周面に形成された係止凹部に係止されることにより、端子支持穴28に固定されている。
【0036】
また、
図4に示すように、ハウジング21の前端部であって挿入口27の周縁部には、相手コネクタを挿入口27へ挿入する際の誤挿入を防止するための誤挿入防止部31が設けられている。誤挿入防止部31は、挿入口27の周縁部に成形された凹凸等により形成されている。
【0037】
ここで、
図8は、後述するシールドコネクタシステム150を示している。シールドコネクタシステム150は、例えば6つのシールドコネクタ151〜156を備えている。これらシールドコネクタ151〜156は、誤挿入防止部31およびスリット39L、39Rが異なる点を除き、同一に形成されている。
図8に示すシールドコネクタ151〜156のうち、シールドコネクタ151が
図1に示すシールドコネクタ1に当たる。なお、
図8中の二点鎖線は、仮に誤挿入防止部31が形成されていなかった場合の挿入口27の形状を示している。
【0038】
シールドコネクタ1(151)の誤挿入防止部31は、
図4に示すように、一対の凸部32L、32R、1つの角突出部34、および1つの角アール部35を有している。
【0039】
一方の凸部32Lは、ハウジング21の左壁24の前端部であって上下方向における中間部分に配置され、当該部分からハウジング21の内側、すなわち右方へ突出している。また、
図5に示すように、左側の凸部32Lは、ハウジング21の左壁24の前端部のみに形成されている。
【0040】
他方の凸部32Rは、
図4に示すように、ハウジング21の右壁25の前端部であって上下方向における中間部分に配置され、当該部分からハウジング21の内側、すなわち左方へ突出している。また、右側の凸部32Rは、ハウジング21の右壁25の前端部のみに形成されている。
【0041】
シールドコネクタ1(151)の誤挿入防止部31における左側の凸部32Lと右側の凸部32Rとは、上下方向における位置が互いに異なる。また、凸部32Lと凸部32Rとは、形状、具体的には上下方向の長さ(幅)が互いに異なる。
【0042】
シールドコネクタ1(151)の誤挿入防止部31における角突出部34は、ハウジング21の右壁25の上部に配置され、当該部分からハウジング21の内側、すなわち左方へ突出している。また、角突出部34は、ハウジング21の前端部から後端部にかけて伸長している。
【0043】
シールドコネクタ1(151)の誤挿入防止部31における角アール部35は、ハウジング21の右壁25の下部に配置されている。挿入口27の右下の角は左下の角と比較して緩やかにカーブしている。すなわち、挿入口27の右下の角には、左下の角よりも大きなアールが付けられている。この大きなアールが付けられた部分が角アール部35である。また、角アール部35は、ハウジング21の前端部から後端部にかけて伸長している。
【0044】
また、
図3に示すように、ハウジング21の後部上側の左部および右部には、シールドシェル46をハウジング21に係止して固定するための係止切欠37がそれぞれ形成されている。また、図示しないが、ハウジング21の後部下側の左部および右部には、シールドシェル46をハウジング21に係止して固定するための係止溝がそれぞれ形成されている。
【0045】
また、
図4に示すように、ハウジング21の左壁24における上下方向中間部には、左側のシェル接続片53Lを通すための挿通穴としてのスリット39Lが形成されている。
図5に示すように、スリット39Lはハウジング21の左壁24の後端部から左側の凸部32Lの直前の位置まで伸長している。また、
図4に示すように、スリット39Lの後端部40Lはハウジング21の後壁26の左端部を右方に伸長している。スリット39Lはハウジング21の左壁24を左右方向に貫通し、スリット39Lの後端部40Lはハウジング21の後壁26を前後方向に貫通している。また、スリット39Lの上下方向の長さ(幅)は左側の凸部32Lの上下方向の長さ(幅)以上である。また、スリット39Lの後端部40Lの右方への伸長量は、左側の凸部32Lの右方への突出量以上である。
【0046】
また、ハウジング21の右壁25における上下方向中間部には、右側のシェル接続片53Rを通すための挿通穴としてのスリット39Rが形成されている。スリット39Rは、左側のスリット39Lと同様に、ハウジング21の右壁25の後端部から右側の凸部32Rの直前の位置まで伸長している。また、
図4に示すように、スリット39Rの後端部40Rはハウジング21の後壁26の右端部を左方に伸長している。スリット39Rはハウジング21の右壁25を左右方向に貫通し、スリット39Rの後端部40Rはハウジング21の後壁26を前後方向に貫通している。また、スリット39Rの上下方向の長さ(幅)は右側の凸部32Rの上下方向の長さ(幅)以上である。また、スリット39Rの後端部40Rの左方への伸長量は、右側の凸部32Rの左方への突出量以上である。
【0047】
また、
図4に示すように、ハウジング21の上部には、相手コネクタ71のロック機構88の梁部89が挿入される梁部挿入部43が形成されている。また、
図5に示すように、ハウジング21の上壁22の前端部には、相手コネクタ71のロック機構88のロック突起部90を係止するロック穴44が形成されている。
【0048】
シールドシェル46は導電性材料により形成されている。例えば、シールドシェル46は、金属板材に対し、プレス加工および曲げ加工を施すことにより形成されている。シールドシェル46は、
図3に示すように、上板部47、左板部48および右板部49を有している。シールドシェル46は、
図1に示すように、ハウジング21の外周側に取り付けられている。シールドシェル46の上板部47、左板部48および右板部49はハウジング21の上壁22の外面、左壁24の外面および右壁25の外面をそれぞれ全面的に覆っている。シールドシェル46は、主に、相手コネクタ71に取り付けられた同軸ケーブル121の内部導体122および外部導体123と、シールドコネクタ1が取り付けられた基板の回路との間において高周波のノイズを遮蔽し、除去する機能を有している。
【0049】
図3に示すように、シールドシェル46の後部上側の左部および右部には、シールドシェル46をハウジング21の係止切欠37に係止して固定するための上側係止部50がそれぞれ形成されている。また、シールドシェル46の後部下側の左部および右部には、シールドシェル46をハウジング21の係止溝に係止して固定するための下側係止部51がそれぞれ形成されている(左側のみ図示)。
【0050】
また、
図3に示すように、シールドシェル46には、当該シールドシェル46を基板のグランド回路に接続するための複数の基板接続部52が一体形成されている。具体的には、シールドシェル46には6つの基板接続部52が形成され、それらのうちの3つの基板接続部52は、シールドシェル46の左板部48の下部の前部、前後方向中間部および後部にそれぞれ配置され、左板部48の下部から下方へそれぞれ突出している。残りの3つの基板接続部52は、シールドシェル46の右板部49の下部の前部、前後方向中間部および後部にそれぞれ配置され、右板部49の下部から下方へそれぞれ突出している。
【0051】
また、
図3に示すように、シールドシェル46には、相手コネクタ71に取り付けられた同軸ケーブル121の外部導体123とシールドシェル46とを電気的に接続するためのシェル接続部としての一対のシェル接続片53L、53Rが形成されている。相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたとき、シールドコネクタ1の一対のシェル接続片53L、53Rが、相手コネクタ71が有する一対の外部接続部84(
図11参照)とそれぞれ接触する。
【0052】
一対のシェル接続片53L、53Rのうち、一方のシェル接続片53Lは、シールドシェル46の左板部48の前端部における上下方向中間部に配置され、当該部分から右方に突出している。この左側のシェル接続片53Lは、ハウジング21の左壁24のスリット39Lを通ってハウジング21の内側に張り出している。他方のシェル接続片53Rは、シールドシェル46の右板部49の前端部における上下方向中間部に配置され、当該部分から左方に突出している。この右側のシェル接続片53Lは、ハウジング21の右壁25のスリット39Rを通ってハウジング21の内側に張り出している。また、本実施形態のように、一対のシェル接続片53L、53Rは上下方向において互いに同一の位置に配置されていることが好ましい。また、本実施形態のように、一対のシェル接続片53L、53Rの上下方向の位置は外側導体13の上下方向の範囲内であることが好ましい。また、本実施形態において、シェル接続片53L、53Rはそれぞれシールドシェル46に一体形成され、例えば曲げ加工によりそれぞれの形状が設定されている。
【0053】
また、左側のシェル接続片53Lは、
図5に示すように、誤挿入防止部31の左側の凸部32Lの後方に位置している。すなわち、左側の凸部32Lの配置は、左側のシェル接続片53Lの前方となるように設定されている。これにより、ハウジング21の挿入口27をその前方から見たときに、
図4に示すように、左側の凸部32Lと左側のシェル接続片53Lとが互いに重なり合っており、すなわち、シェル接続片53Lが凸部32Lの範囲内に位置している。詳細には、左側のシェル接続片53Lの上下方向の長さ(幅)は、左側の凸部32Lの上下方向の長さ(幅)よりも小さいものの、左側のシェル接続片53Lの左右方向の長さ(突出量)は、左側の凸部32Lの左右方向の長さ(突出量)よりも若干大きい。したがって、ハウジング21の挿入口27をその前方から見たとき、シェル接続片53Lの左部は左側の凸部32Lからはみ出していないが、シェル接続片53Lの右端部は左側の凸部32Lから少量はみ出している。
【0054】
また、右側のシェル接続片53Rは、誤挿入防止部31の右側の凸部32Rの後方に位置している。すなわち、右側の凸部32Rの配置は、右側のシェル接続片53Rの前方となるように設定されている。これにより、ハウジング21の挿入口27をその前方から見たときに、右側の凸部32Rと右側のシェル接続片53Rとが互いに重なり合っており、すなわち、シェル接続片53Rが凸部32Rの範囲内に位置している。詳細には、右側のシェル接続片53Rの上下方向の長さ(幅)は、右側の凸部32Rの上下方向の長さ(幅)よりも小さいものの、右側のシェル接続片53Rの左右方向の長さ(突出量)は、右側の凸部32Rの左右方向の長さ(突出量)よりも若干大きい。したがって、ハウジング21の挿入口27をその前方から見たとき、シェル接続片53Rの右部は右側の凸部32Rからはみ出していないが、シェル接続片53Rの左端部は右側の凸部32Rから少量はみ出している。
【0055】
シェル接続片53L、53Rと誤挿入防止部31の凸部32L、32Rとの位置関係等をこのように設定したことにより、他のケーブルや工具等の意図しない物体がハウジング21の挿入口27からハウジング21内に入り込み、この物体がシェル接続片53L、53Rに接触してシェル接続片53L、53Rが破損することを防止することができる。一方、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1のハウジング21の挿入口27からハウジング21内に挿入されたときには、シェル接続片53L、53Rを相手コネクタ71の一対の外部接続部84にそれぞれ接触させることができる。
【0056】
また、左側のシェル接続片53Lは、ハウジング21の左壁24に形成されたスリット39Lと上下方向における位置が一致している。また、スリット39Lの上下方向の長さ(幅)は左側のシェル接続片53Lの上下方向の長さよりも大きい。また、スリット39Lの後端部40Lの右方への伸長量は、左側のシェル接続片53Lの左右方向の長さ(突出量)よりも大きい。同様に、右側のシェル接続片53Rは、ハウジング21の右壁25に形成されたスリット39Rと上下方向における位置が一致している。また、スリット39Rの上下方向の長さ(幅)は右側のシェル接続片53Rの上下方向の長さよりも大きい。また、スリット39Rの後端部40Rの左方への伸長量は、右側のシェル接続片53Rの左右方向の長さ(突出量)よりも大きい。
【0057】
シェル接続片53L、53Rとハウジング21のスリット39L、36Rとの位置関係等をこのように設定したことにより、シールドコネクタ1の製造時に、シールドシェル46をハウジング21の後方から前方へハウジング21に沿ってスライドさせてハウジング21に取り付けるとき、シェル接続片53L、53Rを、スリット39L、39Rを通してハウジング21の前端部へ円滑に移動させることができる。
【0058】
また、一対のシェル接続片53L、53Rは、シールドシェル46の左板部48および右板部49の前端部にそれぞれ配置されている。これにより、シェル接続片53L、53Rは、シールドシェル46の左板部48および右板部49の下部前端部にそれぞれ配置された一対の基板接続部52とそれぞれ接近している。具体的には、
図5に示すように、左側のシェル接続片53Lは、左板部48の下部前端部に配置された基板接続部52の真上に配置されている。同様に、右側のシェル接続片53Rは、右板部49の下部前端部に配置された基板接続部52の真上に配置されている。
【0059】
シェル接続片53L、53Rの位置と基板接続部52の位置とを互いに接近させたことにより、シェル接続片53L、53Rと基板のグランド回路との間の電気経路が短くなるので、ノイズ除去効果を高めることができる。
【0060】
また、各シェル接続片53L、53Rはループ状の形状を有している。ここで、
図6はシールドコネクタ1の前部左側および前部右側の
図5中の矢示VI−VI方向から見た断面を示している。
図6に示すように、左側のシェル接続片53Lは、シールドシェル46の左板部48からハウジング21の左壁24に形成されたスリット39Lを左から右へ通り抜けてハウジング21の内側へ突出しつつ後方へ湾曲し、その後、後方へ伸長している。その後、シェル接続片53Lは、左方へ湾曲しつつ、ハウジング21の内側からスリット39Lを右から左へ通り抜け、当該シェル接続片53Lの先端部(後端部)がシールドシェル46の左板部48に接触している。同様に、右側のシェル接続片53Rは、シールドシェル46の右板部49からハウジング21の右壁25に形成されたスリット39Rを右から左へ通り抜けてハウジング21の内側へ突出しつつ後方へ湾曲し、その後、後方へ伸長している。その後、シェル接続片53Rは、右方へ湾曲しつつ、ハウジング21の内側からスリット39Rを左から右へ通り抜け、当該シェル接続片53Rの先端部(後端部)がシールドシェル46の右板部49に接触している。
【0061】
各シェル接続片53L、53Rの形状をこのようにループ状に設定したことにより、相手コネクタ71の各外部接続部84とシールドシェル46との電気経路を短くすることができる。すなわち、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたとき、相手コネクタ71の左側および右側の外部接続部84は、左側および右側のシェル接続片53L、53Rにおいて前後方向に伸長している部分(
図6中の二点鎖線で示した部分)にそれぞれ接触する。この結果、左側の外部接続部84とシールドシェル46の左板部48との間には、左側の外部接続部84と左側のシェル接続片53Lとが接触した部分の前側からシェル接続片53Lの前端部を介してシールドシェル46の左板部48に至る電気経路(
図6中の矢示KL1を参照)と、左側の外部接続部84と左側のシェル接続片53Lとが接触した部分の後側からシェル接続片53Lの後端部を介してシールドシェル46の左板部48に至る電気経路(
図6中の矢示KL2を参照)とが形成される。これらの電気経路の長さはいずれも、左側の外部接続部84とシールドシェル46の左板部48との間の最短の距離に近い。このように左側の外部接続部84とシールドシェル46の左板部48との間に複数の短い電気経路を形成することにより、ノイズ除去効果を高めることができる。
【0062】
同様に、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたとき、右側の外部接続部84とシールドシェル46の右板部49との間には、
図6中の矢示KR1およびKR2で示すような複数の電気経路が形成される。これらの電気経路の長さはいずれも、右側の外部接続部84とシールドシェル46の右板部49との間の最短の距離に近い。これにより、ノイズ除去効果を高めることができる。
【0063】
また、シールドシェル46の左板部48において左側のシェル接続片53Lの後端部が接触する部分には、右方から外力を受けて弾性変形することにより左方へ変位可能な弾性変位部55Lが形成されている。ここで、
図7は、シールドシェル46の前部を示している。
図7に示すように、シールドシェル46の左板部48の前端部には、横穴58が形成され、横穴58内に弾性変位部55Lが設けられている。弾性変位部55Lは、前後方向に伸長する棒状に形成され、弾性変位部55Lの前端部56L(基端部)は左板部48に支持され、弾性変位部55Lの後端部57L(先端部)は自由端となっている。
図6に示すように、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたとき、相手コネクタ71の左側の外部接続部84により左側のシェル接続片53Lが右から左へ押され、これにより、シェル接続片53Lの後端部により弾性変位部55Lの後端部57Lが左へ押される。これにより、シェル接続片53Lの後端部および弾性変位部55Lの後端部57Lが共に左方へ変位する。シェル接続片53Lだけでなく弾性変位部55Lも変位するので、シェル接続片53Lの変位範囲が大きくなる。
【0064】
同様に、シールドシェル46の右板部49において右側のシェル接続片53Rの後端部が接触する部分には、左方から外力を受けて弾性変形することにより右方へ変位可能な弾性変位部55Rが形成されている。
図7に示すように、弾性変位部55Rは、シールドシェル46の右板部49の前端部に形成された横穴58内に設けられている。弾性変位部55Rの前端部56R(基端部)は右板部49に支持され、弾性変位部55Rの後端部57R(先端部)は自由端となっている。
図6に示すように、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたとき、相手コネクタ71の右側の外部接続部84により右側のシェル接続片53Rが左から右へ押され、これにより、シェル接続片53Rの後端部により弾性変位部55Rの後端部57Rが右方に押される。これにより、シェル接続片53Rの後端部および弾性変位部55Rの後端部57Rが共に右方へ変位する。シェル接続片53Rだけでなく弾性変位部55Rも変位するので、シェル接続片53Rの変位範囲が大きくなる。
【0065】
(相手コネクタ)
図9は、シールドコネクタ1に対応する相手コネクタ71を示している。
図10は相手コネクタ71の
図9中の矢示XーX方向から見た断面を示している。
図11は相手コネクタ71の同軸端子11の
図10中の矢示XI−XI方向から見た断面を示している。
【0066】
相手コネクタ71は、シールドコネクタ1に挿入可能なプラグコネクタであり、同軸ケーブル121の端部に取り付けられる。相手コネクタ71は、
図10に示すように、同軸端子72、導電部材83およびハウジング86を備えている。
【0067】
相手コネクタ71の同軸端子72は、
図11に示すように、中心導体73、中心導体73の外周側に設けられた外部導体76、および中心導体73と外部導体76との間に設けられた絶縁部材81を備えている。
【0068】
中心導体73は中心接触部74および内部導体バレル部75を有している。本実施形態において、中心接触部74は、雌型であり、筒状に形成されている。中心接触部74には、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたときに、シールドコネクタ1の同軸端子11の中心導体12が弾性接触状態で嵌合される。また、内部導体バレル部75には同軸ケーブル121の内部導体122が圧着接続されている。
【0069】
外部導体76は、外側嵌合部77、外部導体バレル部78および被覆バレル部79を有している。外側嵌合部77には、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたときに、シールドコネクタ1の同軸端子11の外側導体13が嵌合される。また、外部導体バレル部78には同軸ケーブル121の外部導体123が圧着接続されている。また、被覆バレル部79には同軸ケーブル121の絶縁被覆125が圧着固定されている。
【0070】
相手コネクタ71の同軸端子72の外側導体76において、中心導体73の内部導体バレル部75が配置されている箇所の上部および下部には、相手コネクタ71に同軸ケーブル121を取り付ける際に、内部導体122を内部導体バレル部75に圧着接続するための工具を差し入れるための工具差入口80がそれぞれ形成されている。
【0071】
また、相手コネクタ71の同軸端子72の外側導体76において、中心導体73の内部導体バレル部75が配置されている箇所には、導電部材83が取り付けられている。導電部材83は同軸端子72の当該箇所の下側、左側および右側を覆っている。しかし、導電部材83は同軸端子72の当該箇所の上側は覆っていない。すなわち。同軸端子72の下部の工具差入口80は導電部材83により塞がれているが、上部の工具差入口80は導電部材83により塞がれていない。
【0072】
また、導電部材83は、同軸端子72の外側導体76と接触し、電気的に接続されている。また、導電部材83の左面および右面は、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたときに、シールドコネクタ1のシェル接続片53L、53Rと接続される一対の外部接続部84がそれぞれ形成されている。
【0073】
相手コネクタ71のハウジング86は、
図8および
図10に示すように、樹脂等の絶縁材料により、横断面形状が略四角形で両端が開口した筒状に形成されている。ハウジング86内には同軸端子72が収容されている。また、
図9に示すように、ハウジング86の左壁および右壁には、接続穴87がそれぞれ形成され、ハウジング86内において接続穴87に対応する位置に外部接続部84がそれぞれ配置されている。これにより、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に挿入されたときに、シールドコネクタ1のシェル接続片53L、53Rが接続穴87内に入って外部接続部84に接触することができる。
【0074】
また、相手コネクタ71のハウジング86には、相手コネクタ71をシールドコネクタ1に対して抜け止めするロック機構88が設けられている。ロック機構88は梁部89およびロック突起部90等を備えている。
【0075】
また、相手コネクタ71のハウジング86の先端側は、シールドコネクタ1のハウジング21の誤挿入防止部31の形状と合致する形状を有している。
【0076】
相手コネクタ71の先端側をシールドコネクタ1の挿入口27からシールドコネクタ1のハウジング21の奥まで挿入すると、相手コネクタ71のロック機構88のロック突起部90がシールドコネクタ1のロック穴44に入る。これにより、相手コネクタ71がシールドコネクタ1に固定される。この状態では、シールドコネクタ1の同軸端子11の中心導体12が相手コネクタ71の同軸端子72の中心導体73の中心接触部74内に入り、これら中心導体12、73同士が互いに電気的に接続される。これにより、同軸ケーブル121の内部導体122が、例えば基板の信号回路に接続される。また、シールドコネクタ1の同軸端子11の外側導体13が相手コネクタ71の同軸端子72の外側導体76の外側嵌合部77内に入り、これら外側導体13、76同士が互いに電気的に接続される。これにより、同軸ケーブル121の外部導体123が、基板のグランド回路に接続される。
【0077】
また、このように相手コネクタ71がシールドコネクタ1に固定された状態では、シールドコネクタ1のシールドシェル46のシェル接続片53L、53Rが、相手コネクタ71の導電部材83の一対の外部接続部84にそれぞれ電気的に接続される。これにより、同軸ケーブル121の外部導体123が、シールドシェル46を介して基板のグランド回路に接続される。そして、相手コネクタ71の同軸端子72の先端側がシールドコネクタ1のシールドシェル46内に入り、その部分の上側、左側および右側がシールドシェル46により覆われる。これにより、相手コネクタ71とシールドコネクタ1との接続部分が、グランド電位の設定されたシールドにより広く包囲される。これにより、同軸ケーブル121の内部導体122、相手コネクタ71の中心導体73またはシールドコネクタ1の中心導体12から放出される高周波ノイズをシールドシェル46により除去することができる。また、外部の高周波ノイズが、同軸ケーブル121の内部導体122、相手コネクタ71の中心導体73またはシールドコネクタ1の中心導体12に混入することをシールドシェル46により抑制することができる。
【0078】
特に、相手コネクタ71において、シールドシェル46に覆われる範囲には、相手コネクタ71の同軸端子72の外側導体76において、中心導体73の内部導体バレル部75が配置されている箇所が含まれている。すなわち、シールドシェル46に覆われる範囲には、相手コネクタ71の同軸端子72の外側導体76の上部において開口している工具差入口80が含まれている。したがって、工具差入口80は、電気的に見て、シールドシェル46により塞がれている。これにより、相手コネクタ71の中心導体73の内部導体バレル部75およびその付近から工具差入口80を介して放出される高周波ノイズをシールドシェル46により除去することができる。また、外部の高周波ノイズが、工具差入口80を介して相手コネクタ71の中心導体73に混入することをシールドシェル46により抑制することができる。
【0079】
(シールドコネクタシステム)
図8は本発明の実施形態のシールドコネクタシステム150を示している。
図8に示すように、シールドコネクタシステム150は、複数(例えば6つ)のシールドコネクタ151〜156を備えている。これらシールドコネクタ151〜156は、誤挿入防止部31およびスリット39L、39Rが異なる点を除き、同一に形成されている。
【0080】
具体的には、シールドコネクタ151〜156の誤挿入防止部31は、(a)左側の凸部32Lの上下方向における位置、(b)右側の凸部32Rの上下方向における位置、(c)左側の凸部32Lの上下方向の長さ、(d)右側の凸部32Rの上下方向の長さ、(e)角突出部34の有無もしくは位置、または(f)角アール部35の有無もしくは位置がシールドコネクタ151〜156ごとに異なっている。シールドコネクタ151〜156において、上記(a)〜(f)のすべてが同一の誤挿入防止部31を有するシールドコネクタが2つ以上存在することはない。
【0081】
しかしながら、シールドコネクタシステム150に含まれるすべてのシールドコネクタ151〜156において、それぞれのシールドコネクタ151〜156のハウジング21の挿入口27をそれらの前方から見たとき、誤挿入防止部31の一対の凸部32L、32Rとシールドシェル46の一対のシェル接続片53L、53Rとはそれぞれ互いに重なり合っている。すなわち、すべてのシールドコネクタ151〜156において、シェル接続片53L、53Rの直前に凸部32L、32Rが配置されている。
【0082】
詳細に説明すると、シールドコネクタシステム150に含まれるすべてのシールドコネクタ151〜156において、シールドシェル46は共通である。それゆえ、左側のシェル接続片53Lの位置はシールドコネクタ151〜156のそれぞれにおいて同一であり、右側のシェル接続片53Rの位置もシールドコネクタ151〜156のそれぞれにおいて同一である。シールドコネクタ151〜156間において、左側の凸部32Lの上下方向の位置が異なることがあるが、それぞれの凸部32Lの上下方向の位置は、シールドコネクタ151〜156のハウジング21の挿入口27をそれらの前方から見たとき、凸部32Lとシェル接続片53Lとが互いに重なり合うように設定されている。すなわち、それぞれの凸部32Lの上下方向の位置が互いに異なる場合には、それらの上下方向の位置が、凸部32Lとシェル接続片53Lとが重なり合うという条件を満たしつつ、互いに異なっている。また、シールドコネクタ151〜156間において、左側の凸部32Lの上下方向の長さが異なることがあるが、それぞれの凸部32Lの上下方向の長さは、シールドコネクタ151〜156のハウジング21の挿入口27をそれらの前方から見たとき、凸部32Lとシェル接続片53Lとが互いに重なり合うように設定されている。すなわち、それぞれの凸部32Lの上下方向の長さが互いに異なる場合には、それらの上下方向の長さが、凸部32Lとシェル接続片53Lとが重なり合うという条件を満たしつつ、互いに異なっている。また、シールドコネクタ151〜156間において、右側の凸部32Rの上下方向の位置または上下方向の長さが異なる場合があるものの、凸部32Rの上下方向の位置および上下方向の長さは、シールドコネクタ151〜156のハウジング21の挿入口27をそれらの前方から見たとき、凸部32Rとシェル接続片53Rとが互いに重なり合うように設定されている。
【0083】
また、各シールドコネクタ151〜156において、ハウジング21の左壁24に形成されたスリット39Lの上下方向における位置および上下方向の長さは、左側の凸部32Lの上下方向における位置および上下方向の長さに応じて設定されている。したがって、シールドコネクタ151〜156間で、左側の凸部32Lの上下方向における位置または上下方向の長さが異なる場合には、それに対応してスリット39Lの上下方向における位置または上下方向の長さが異なる。同様に、シールドコネクタ151〜156間で、右側の凸部32Rの上下方向における位置または上下方向の長さが異なる場合には、それに対応してハウジング21の右壁25に形成されたスリット39Rの上下方向における位置または上下方向の長さが異なる。
【0084】
しかしながら、上述したように、左側のスリット39Lの上下方向の長さは左側の凸部32Lの上下方向の長さ以上であり、右側のスリット39Rの上下方向の長さは右側の凸部32Rの上下方向の長さ以上である。したがって、左側の凸部32Lの上下方向の位置および長さが、凸部32Lとシェル接続片53Lとが互いに重なり合うように設定され、かつ右側の凸部32Rの上下方向の位置および長さが、凸部32Rとシェル接続片53Rとが互いに重なり合うように設定されている場合には、シールドコネクタ1の製造時に、シールドシェル46をハウジング21の後方から前方へハウジング21に沿ってスライドさせてハウジング21に取り付けるときにシェル接続片53L、53Rを、スリット39L、39Rを通してハウジング21の前端部へ円滑に移動させることができるという作用効果は維持される。
【0085】
以上説明した通り、本発明の実施形態のシールドコネクタ1およびシールドコネクタシステム150によれば、シールドコネクタ1(151〜156)に誤挿入防止部31が設けられているので、シールドコネクタ1(151〜156)に、当該シールドコネクタと対応しない相手コネクタを挿入しようとしても、当該シールドコネクタの凸部32L、32R、角突出部34または角アール部35が当該相手コネクタの先端部に衝突し、挿入することができない。
【0086】
また、シールドコネクタシステム150に含まれるいずれのシールドコネクタ1(151〜156)においても、誤挿入防止部31の一対の凸部32L、32Rは一対のシェル接続片53L、53Rの直前にそれぞれ配置され、ハウジング21の挿入口をその前方から見たときに、一対の凸部32L、32Rと一対のシェル接続片53L、53Rとがそれぞれ互いに重なり合っている。したがって、意図しない物体がシェル接続片53L、53Rに接触してシェル接続片53L、53Rが破損することを各凸部32L、32Rにより防止することができる。
【0087】
このように、シールドコネクタ1(151〜156)の誤挿入防止部31の一対の凸部32L、32Rは、相手コネクタのシールドコネクタ1(151〜156)への誤挿入を防止する機能に加え、意図しない物体の接触からシェル接続片53L、53Rを保護する機能をも有している。したがって、シェル接続片53L、53Rを保護する構造をシールドコネクタ1(151〜156)に別途形成する必要がないので、シールドコネクタ1(151〜156)の構造を簡素化することができる。これにより、シールドコネクタ1およびシールドコネクタシステム150の製造コストを下げることができる。
【0088】
また、本発明の実施形態のシールドコネクタ1では、シェル接続片53L、53Rがハウジング21の前端部に配置され、かつ、シールドシェル46の6つの基板接続部52のうちの2つがハウジング21の前端部に配置されている。したがって、シェル接続片53L、53Rと基板接続部52との間の距離が小さく、両者間の電気経路が短い。これにより、ノイズ除去効果を高めることができる。
【0089】
また、シェル接続片53L、53Rおよび2つの基板接続部52がハウジング21の前端部にそれぞれ配置されることにより、
図10から把握できる通り、シェル接続片53L、53Rと基板接続部52との間の電気経路がシールドコネクタ1の前端部に近い位置に形成される。これにより、相手コネクタ71がシールドコネクタ1に接続されてロック機構88により固定されたときに、シェル接続片53L、53Rと基板接続部52との間の電気経路が、相手コネクタ71の同軸端子72の外側導体76において中心導体73の内部導体バレル部75が配置されている箇所(工具差入口80が形成されている箇所)に対応する位置、またはそれよりも同軸ケーブル121側の位置に配置される。したがって、同軸ケーブル121を介して相手コネクタ71とシールドコネクタ1との接続部分に伝わる高周波ノイズを、当該ノイズが工具差入口80を介して中心導体73の内部導体バレル部75に混入する前に、一対の外部接続部84、シェル接続片53L、53R、上記2つの基板接続部52および基板のグランド回路から形成される電気経路により除去することができる。
【0090】
また、本発明の実施形態のシールドコネクタ1では、
図6に示すように、各シェル接続片53L、53Rがループ状に形成されている。これにより、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1に接続され、ロック機構88により両コネクタが固定された状態で、相手コネクタ71の各外部接続部84とシールドコネクタ1のシールドシェル46との電気経路を短くすることができる。これにより、ノイズ除去効果を高めることができる。
【0091】
また、本発明の実施形態のシールドコネクタ1では、
図7に示すように、シールドシェル46に弾性変位部55L、55Rが形成されており、相手コネクタ71の先端側がシールドコネクタ1の挿入口27に挿入されたときには、シェル接続片53L、53Rと共に弾性変位部55L、55Rがハウジング21(シールドシェル46)の外側方向へ弾性変形する。これにより、シェル接続片53L、53Rが弾性変形することができる範囲を拡大することができるので、シェル接続片53L、53Rの適切な弾性力の設定が容易になる。また、シェル接続片53L、53Rが相手コネクタ71の外部接続部84とシールドシェル46との間でつぶれて破損してしまうことを防止することができる。
【0092】
また、本発明の実施形態のシールドコネクタ1において、ハウジング21の左壁24に形成されたスリット39Lの上下方向の長さは左側の凸部32Lの上下方向の長さ以上であり、また、スリット39Lの後端部40Lの右方への伸長量は、左側の凸部32Lの右方への突出量以上である。また、ハウジング21の右壁25に形成されたスリット39Rの上下方向の長さは右側の凸部32Rの上下方向の長さ以上であり、また、スリット39Rの後端部40Rの右方への伸長量は、右側の凸部32Rの右方への突出量以上である。これにより、ハウジング21を、樹脂を用いて射出成形により形成するに当たり、ハウジング21の形状に合致するように前後方向に可動する金型で成形することができる。したがって、金型の構造を簡素化することができ、シールドコネクタ1の製造コストを削減することができる。
【0093】
また、本発明の実施形態のシールドコネクタ1においては、ハウジング21の挿入口27の下側の少なくともいずれか一方の角部に角アール部35を形成することにより誤挿入防止部31が形成されている。シールドコネクタ1が基板に固定された状態では、当該シールドコネクタ1に外力が加わったときに、ハウジング21の下側の部分の応力が大きくなり易い。したがって、ハウジング21の下側の部分に角アール部35を形成することにより、ハウジング21において応力が大きくなり易い部分を角アール部35により補強することができる。したがって、ハウジング21の強度を高めることができる。
【0094】
また、本発明の実施形態のシールドコネクタ1は、例えば数百Hzから数GHzの周波数を有する信号の伝送に適用することにより、シールドシェル46によるノイズ除去効果を良好に発揮させることができ、信号の伝送の品質を高めることができる。
【0095】
なお、上述した実施形態では、シールドシェル46の左板部48および右板部49のそれぞれにシェル接続片53L、53Rを設ける場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、シールドシェル46の左板部48および右板部49のうちのいずれか一方のみにシェル接続片を設けてもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、誤挿入防止部31に左右一対の凸部32L、32Rを設ける場合を例にあげたが、シールドシェル46の左板部48および右板部49のうちのいずれか一方のみにシェル接続片が設けられている場合には、ハウジング21の左壁24および右壁25のうち、シェル接続片が設けられている側の壁のみに誤挿入防止部の凸部を設けてもよい。
【0097】
また、上述した実施形態では、シールドコネクタ1に同軸端子11を設けたが、シールドコネクタに他の種類の信号端子を設けてもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、シェル接続片53L、53Rを誤挿入防止部31の凸部32L、32Rの直後に配置する場合を例にあげたが、シェル接続片53L、53Rの位置は、誤挿入防止部31の凸部32L、32Rの後方であれば、直後でなくてもよい。
【0099】
また、誤挿入防止部31の形状は、ハウジング21の挿入口27をその前方から見たときに凸部32L、32Rとシェル接続片53L、53Rとがそれぞれ互いに重なり合っているという条件を満たす限り、種々の形状を採用することができる。
【0100】
また、シールドコネクタシステム150を構成するシールドコネクタの個数は2つ以上であればよい。
【0101】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うシールドコネクタおよびシールドコネクタシステムもまた本発明の技術思想に含まれる。