特許第6792548号(P6792548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792548
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】旋回装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/00 20060101AFI20201116BHJP
   B66C 23/84 20060101ALI20201116BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B66C23/00 C
   B66C23/84 H
   B66C23/42 A
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-506610(P2017-506610)
(86)(22)【出願日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2016058510
(87)【国際公開番号】WO2016148241
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-55753(P2015-55753)
(32)【優先日】2015年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(73)【特許権者】
【識別番号】515075278
【氏名又は名称】山浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山浦 弘
(72)【発明者】
【氏名】谷住 和也
(72)【発明者】
【氏名】野口 真児
(72)【発明者】
【氏名】多田野 有司
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−036193(JP,A)
【文献】 特開平10−059679(JP,A)
【文献】 特開平05−139689(JP,A)
【文献】 特開2001−130865(JP,A)
【文献】 特開2012−041180(JP,A)
【文献】 特開平07−076490(JP,A)
【文献】 特表2006−525928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00−23/94
B66C 13/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを起伏及び伸縮可能に支持する旋回体を旋回させる旋回アクチュエータを制御する制御部を備えており、
上記制御部は、
上記旋回体の旋回開始位置と旋回終了位置、及び上記ブームの先端部から吊下された吊荷までの長さである振り子長さを取得する取得処理と、
上記旋回開始位置から上記旋回終了位置まで上記旋回体が旋回するときの上記ブームの先端部の角速度の推移を示す旋回角速度パターンであって、上記旋回開始位置から加速されその次に減速されさらにその次に加速されて旋回角速度ωに至る第1区間、及び上記旋回角速度ωから減速されその次に加速されさらにその次に減速されて上記旋回終了位置で停止する第2区間における上記旋回角速度パターンを、上記ブームの先端部の位置、上記振り子長さ、及び上記ブームの先端部から延出されたロープと鉛直方向とのなす角に基づいて定められ且つ線形化されたクレーンモデルの運動方程式を拘束条件とし、上記ブームの先端部の角加速度に基づく所定の関数の積分値を求める最適制御理論の評価関数を用いて当該積分値を最小化する、最適制御によって決定する旋回角速度パターン決定処理と、
上記旋回角速度パターンで示される速度で上記ブームの先端部が旋回方向に移動するように、上記旋回アクチュエータに上記旋回開始位置から上記旋回終了位置まで上記旋回体を旋回させるアクチュエータ制御処理とを実行し、
上記旋回角速度パターン決定処理において、振り子運動する吊荷の上記振り子長さによって定まる周期より短い制御時間Tの上記第1区間及び上記第2区間において、上記制御時間Tが短いほど極大角速度及び極小角速度の差が大きくなる上記旋回角速度パターンを決定する旋回装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記旋回角速度パターン決定処理において、上記旋回アクチュエータの応答性能の範囲で、上記制御時間Tが最も小さくなる上記旋回角速度パターンを決定する請求項1に記載の旋回装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記旋回角速度パターン決定処理において、上記第1区間の初期条件及び終端条件を満足する式1の係数α(i=1,・・・,5)を特定することによって、旋回開始からt秒後における上記ブームの先端部の角速度x’(t)を決定する請求項1又は2に記載の旋回装置。
【数1】
l:振り子長さ
【請求項4】
該旋回装置は、
上記制御部に制御されて上記ブームを起伏させる起伏アクチュエータと、
上記制御部に制御されて上記ブームを伸縮させる伸縮アクチュエータと、をさらに備えており、
上記制御部は、
上記旋回開始位置から上記旋回終了位置まで上記旋回体が旋回するときの上記ブームの先端部の旋回半径方向の移動速度の推移を示す半径速度パターンであって、上記第1区間及び上記第2区間において旋回半径を増大及び減少させる上記半径速度パターンを決定する半径速度パターン決定処理をさらに実行し、
上記取得処理において、上記旋回開始位置における上記旋回体の旋回中心と上記ブームの先端部との水平方向の距離である旋回半径rをさらに取得し、
上記半径速度パターン決定処理において、上記第1区間の終端及び上記第2区間の終端で上記旋回半径rの位置の上記吊荷に作用する旋回半径方向の力を釣り合わせる上記半径速度パターンを決定し、
上記アクチュエータ制御処理において、上記半径速度パターンで示される速度で上記ブームの先端部が旋回半径方向に移動するように、上記起伏アクチュエータ及び/又は上記伸縮アクチュエータに上記ブームを起伏及び/又は伸縮させる請求項1から3のいずれかに記載の旋回装置。
【請求項5】
上記制御部は、上記半径速度パターン決定処理において、上記旋回開始位置から上記旋回終了位置まで上記旋回体が旋回するときに、上記旋回半径r上を上記吊荷が移動する上記半径速度パターンを決定する請求項4に記載の旋回装置。
【請求項6】
上記制御部は、上記半径速度パターン決定処理において、上記第1区間の初期条件及び終端条件を満足する式2の係数r(i=0,・・・,5)を特定することによって、旋回開始からt秒後における上記ブームの先端部の旋回半径方向の移動速度R’(t)を決定する請求項4又は5に記載の旋回装置。
【数2】
【請求項7】
上記制御部は、上記半径速度パターン決定処理において、上記第1区間の初期条件及び終端条件を満足する式3の係数b(i=1,・・・,5)を特定することによって、旋回開始からt秒後における上記ブームの先端部の旋回半径方向の移動速度R’(t)を決定する請求項4又は5に記載の旋回装置。
【数3】
Ω:定数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブームの先端に吊荷を吊り下げた状態で旋回する旋回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブームの先端に吊荷を吊り下げた状態で旋回する旋回装置において、旋回終了後の吊荷の揺動を抑制する技術が知られている。例えば、特許文献1には、旋回の加速区間及び減速区間を、振り子運動する吊荷の揺動周期の整数倍の時間に設定することによって、吊荷の揺動が抑制されると記載されている。また、特許文献2には、加速区間及び減速区間それぞれに定速区間を含めることによって、吊荷の揺動が抑制されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2501995号公報
【特許文献2】特公平7−12906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、吊荷の揺動周期以上の加速区間及び減速区間を設ける必要があるので、旋回開始位置から旋回終了位置までの旋回時間を短縮することが難しいという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、旋回終了位置における吊荷の揺動を抑制しつつ、旋回時間を短縮可能な旋回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る旋回装置は、ブームを起伏及び伸縮可能に支持する旋回体を旋回させる旋回アクチュエータを制御する制御部を備える。上記制御部は、上記旋回体の旋回開始位置と旋回終了位置、及び上記ブームの先端部から吊下された吊荷までの長さである振り子長さを取得する取得処理と、上記旋回開始位置から上記旋回終了位置まで上記旋回体が旋回するときの上記ブームの先端部の角速度の推移を示す旋回角速度パターンであって、上記旋回開始位置から加速されその次に減速されさらにその次に加速されて旋回角速度ωに至る第1区間、及び上記旋回角速度ωから減速されその次に加速されさらにその次に減速されて上記旋回終了位置で停止する第2区間における上記旋回角速度パターンを、上記ブームの先端部の位置、上記振り子長さ、及び上記ブームの先端部から延出されたロープと鉛直方向とのなす角に基づいて定められ且つ線形化されたクレーンモデルの運動方程式を拘束条件とし、上記ブームの先端部の角加速度に基づく所定の関数の積分値を求める最適制御理論の評価関数を用いて当該積分値を最小化する、最適制御によって決定する旋回角速度パターン決定処理と、上記旋回角速度パターンで示される速度で上記ブームの先端部が旋回方向に移動するように、上記旋回アクチュエータに上記旋回開始位置から上記旋回終了位置まで上記旋回体を旋回させるアクチュエータ制御処理とを実行し、上記旋回角速度パターン決定処理において、振り子運動する吊荷の上記振り子長さによって定まる周期より短い制御時間Tの上記第1区間及び上記第2区間において、上記制御時間Tが短いほど極大角速度及び極小角速度の差が大きくなる上記旋回角速度パターンを決定する。
【0007】
上記構成によれば、旋回終了位置における吊荷の旋回方向の揺動を抑制することができる。また、第1区間及び第2区間を、振り子運動する吊荷の周期Tより短くすることができる。その結果、旋回開始位置から旋回終了位置までの旋回時間を、従来の方法と比較して短縮することができる。
【0008】
(2) 好ましくは、上記制御部は、上記旋回角速度パターン決定処理において、上記旋回アクチュエータの応答性能の範囲で、上記制御時間Tが最も小さくなる上記旋回角速度パターンを決定する。
【0009】
上記構成によれば、旋回アクチュエータの応答性能の範囲で旋回時間をさらに短縮することができる。
【0010】
(3) 例えば、上記制御部は、上記旋回角速度パターン決定処理において、上記第1区間の初期条件及び終端条件を満足する下記式7の係数a(i=1,・・・,5)を特定することによって、旋回開始からt秒後における上記ブームの先端部の角速度x’(t)を決定する。
【0011】
(4) 好ましくは、該旋回装置は、上記制御部に制御されて上記ブームを起伏させる起伏アクチュエータと、上記制御部に制御されて上記ブームを伸縮させる伸縮アクチュエータと、をさらに備える。上記制御部は、上記旋回開始位置から上記旋回終了位置まで上記旋回体が旋回するときの上記ブームの先端部の旋回半径方向の移動速度の推移を示す半径速度パターンであって、上記第1区間及び上記第2区間において旋回半径を増大及び減少させる上記半径速度パターンを決定する半径速度パターン決定処理をさらに実行し、上記取得処理において、上記旋回開始位置における上記旋回体の旋回中心と上記ブームの先端部との水平方向の距離である旋回半径rをさらに取得し、上記半径速度パターン決定処理において、上記第1区間の終端及び上記第2区間の終端で上記旋回半径rの位置の上記吊荷に作用する旋回半径方向の力を釣り合わせる上記半径速度パターンを決定し、上記アクチュエータ制御処理において、上記半径速度パターンで示される速度で上記ブームの先端部が旋回半径方向に移動するように、上記起伏アクチュエータ及び/又は上記伸縮アクチュエータに上記ブームを起伏及び/又は伸縮させる。
【0012】
上記構成によれば、旋回終了位置における吊荷の旋回半径方向の揺動を抑制することができる。
【0013】
(5) 例えば、上記制御部は、上記半径速度パターン決定処理において、上記旋回開始位置から上記旋回終了位置まで上記旋回体が旋回するときに、上記旋回半径r上を上記吊荷が移動する上記半径速度パターンを決定する。
【0014】
(6) 一例として、上記制御部は、上記半径速度パターン決定処理において、上記第1区間の初期条件及び終端条件を満足する下記式12の係数r(i=0,・・・,5)を特定することによって、旋回開始からt秒後における上記ブームの先端部の旋回半径方向の移動速度R’(t)を決定する。
【0015】
(7) 他の例として、上記制御部は、上記半径速度パターン決定処理において、上記第1区間の初期条件及び終端条件を満足する下記式19の係数b(i=1,・・・,5)を特定することによって、旋回開始からt秒後における上記ブームの先端部の旋回半径方向の移動速度R’(t)を決定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、旋回終了位置における吊荷の旋回方向の揺動を抑制することができると共に、旋回開始位置から旋回終了位置までの旋回時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係るラフテレーンクレーン10の概略図である。
図2図2は、ラフテレーンクレーン10の機能ブロック図である。
図3図3は、旋回制御処理のフローチャートである。
図4図4は、ラフテレーンクレーン10の概略平面図である。
図5図5は、(A)がブーム先端部の旋回角の推移の例を、(B)がブーム先端部の旋回角速度の推移の例を示す図である。
図6図6は、旋回角速度パターンを決定するためのクレーンモデルを示す図である。
図7図7は、(A)がブーム先端部の半径方向位置の推移の例を、(B)がブーム先端部の半径方向速度の推移の例を示す図である。
図8図8は、半径速度パターンを決定するためのクレーンモデルを示す図である。
図9図9は、旋回制御処理中におけるブーム先端部と吊荷40との旋回半径方向の位置関係を示す図である。
図10図10は、旋回制御処理中における吊荷40の動きを示す図であって、(A)は旋回半径方向の揺動角及び揺動速度を、(B)は旋回方向の揺動角度及び揺動速度を示す。
図11図11は、制御時間Tを算出するための周期Tに乗じる係数αと、第1区間における旋回角速度パターンとの関係を表す図である。
図12図12は、半径速度パターンを決定するためのクレーンモデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0019】
[ラフテレーンクレーン10]
本実施形態に係るラフテレーンクレーン10は、図1に示されるように、下部走行体20と、上部作業体30とを主に備える。下部走行体20は、エンジン(図示省略)の駆動力が伝達されて回転するタイヤによって、目的地まで走行することができる。上部作業体30は、旋回ベアリング(図示省略)を介して下部走行体20に旋回自在に支持されている。上部作業体30は、旋回モータ31(図2参照)によって、下部走行体20に対して旋回される。下部走行体20は、ベースの一例である。上部作業体30は、旋回体の一例である。旋回モータ31は、旋回アクチュエータの一例である。
【0020】
また、上部作業体30は、伸縮ブーム32と、フック33と、キャビン34とを主に備える。伸縮ブーム32は、起伏シリンダ35によって起伏され、伸縮シリンダ36(図2参照)によって伸縮される。フック33は、伸縮ブーム32の先端部(以下、「ブーム先端部」と表記する。)から下方に延出されたロープ38に吊り下げられている。フック33は、ウインチ39(図2参照)によってロープ38が巻き上げられることによって上昇し、ロープ38が繰り出されることによって降下する。さらに、キャビン34は、下部走行体20及び上部作業体30を操作するための操作部56(図2参照)を有する。
【0021】
起伏シリンダ35は、起伏アクチュエータの一例である。伸縮シリンダ36は、伸縮アクチュエータの一例である。下部走行体20に対して旋回可能な上部作業体30、或いは上部作業体30を旋回させる旋回モータ31及び不図示の旋回減速機は、旋回装置の一例である。但し、旋回装置の具体例はラフテレーンクレーン10に限定されず、例えば、オールテレーンクレーン、カーゴクレーン等であってもよい。また、ベースは必ずしも移動可能である必要はない。この場合の旋回装置は、例えば、タワークレーン、旋回式天井クレーン等であってもよい。
【0022】
ラフレレーンクレーン10は、図2に示されるように、制御部50を備える。制御部50は、ラフテレーンクレーン10の動作を制御する。制御部50は、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)によって実現されてもよいし、ハードウェア回路によって実現されてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0023】
制御部50は、図2に示されるように、旋回角センサ51、起伏角センサ52、ブーム長さセンサ53、ロープ長さセンサ54、吊荷重センサ55、及び操作部56から出力される各種信号を取得する。また、制御部50は、取得した各種信号に基づいて、旋回モータ31、起伏シリンダ35、伸縮シリンダ36、及びウインチ39を制御する。
【0024】
旋回角センサ51は、上部作業体30の旋回角度(例えば、下部走行体20の前進方向を0°とした時計回り方向の角度)に応じた検出信号を出力する。起伏角センサ52は、伸縮ブーム32の起伏角度(水平方向と伸縮ブーム32とのなす角)に応じた検出信号を出力する。ブーム長さセンサ53は、伸縮ブーム32の長さ(以下、「ブーム長さ」と表記する。)に応じた検出信号を出力する。ロープ長さセンサ54は、ウインチ39から繰り出されたロープの長さ(以下、「繰出長さ」と表記する。)に応じた検出信号を出力する。吊荷重センサ55は、フック33に吊下された吊荷40の重量m(以下、「吊下重量m」と表記する。)に応じた検出信号を出力する。厳密には、吊下重量mには、フック33及びブーム先端部から延出されたロープ38の重量も含まれる。
【0025】
操作部56は、ラフテレーンクレーン10を動作させるためのユーザの操作を受け付ける。そして、操作部56は、受け付けたユーザ操作に応じた操作信号を出力する。すなわち、制御部50は、操作部56を通じて受け付けたユーザ操作に基づいて、下部走行体20を走行させ、上部作業体30を動作させる。操作部56は、ラフテレーンクレーン10を動作させるレバー、ステアリング、ペダル、及び操作パネル等を含む。
【0026】
また、本実施形態に係る操作部56は、上部作業体30の旋回終了位置及び旋回角速度ω等を入力するユーザ操作を受け付けることができる。そして、制御部50は、後述する旋回制御処理において、入力を受け付けた旋回終了位置及び旋回角速度ω等に基づいて決定した速度パターンに従って、上部作業体30を旋回させ、伸縮ブーム32を起伏及び/又は伸縮させる。
【0027】
また、本実施形態に係る旋回モータ31、起伏シリンダ35、伸縮シリンダ36、及びウインチ39は、油圧式のアクチュエータである。すなわち、制御部50は、供給する作動油の方向及び流量を制御することによって、各アクチュエータを駆動させる。但し、本発明のアクチュエータは油圧式に限定されず、電動式等であってもよい。
【0028】
[旋回制御処理]
次に、図3図10を参照して、本実施形態に係る旋回制御処理を説明する。旋回制御処理は、フック33に吊下された吊荷40の旋回終了位置における揺動が小さくなる速度パターンに従って、旋回開始位置から旋回終了位置まで上部作業体30を旋回させる処理である。旋回制御処理は、例えば、制御部50によって実行される。
【0029】
[取得処理]
まず、制御部50は、図1及び図4に示される旋回開始位置、旋回終了位置、上部作業体30の旋回角速度ω、伸縮ブーム32の起伏角度、ブーム長さ、繰出長さ、及び吊下重量mを、各種センサ51〜55及び操作部56を通じて取得する(S11)。ステップS11の処理は、取得処理の一例である。
【0030】
旋回開始位置は、例えば、上部作業体30の現在位置である。すなわち、制御部50は、旋回角センサ51から出力される検出信号に基づいて、旋回開始位置を取得すればよい。旋回終了位置は、旋回制御処理の終了後における上部作業体30の位置である。旋回角速度ωは、後述する定速区間における上部作業体30の旋回角速度を指す。制御部50は、旋回終了位置及び旋回角速度ωを操作部56を通じてユーザから取得すればよい。但し、旋回角速度ωの入力が省略された場合には、予め定められたデフォルトの旋回角速度ωが用いられてもよい。
【0031】
また、制御部50は、起伏角度及びブーム長さに基づいて、旋回開始位置における旋回半径rを算出する。旋回半径rは、例えば、上部作業体30の旋回中心とブーム先端部との間の水平方向の距離を指す。ブーム先端部は、例えば、ロープ38を巻回するシーブの回転中心の位置である。さらに、制御部50は、ブーム長さ及び繰出長さに基づいて、ブーム先端部から吊荷40までの長さである振り子長さlを算出する。制御部50は、例えば、ブーム長さ及び繰出長さに基づいて算出されるブーム先端部とフック33との間の長さに、フック33から吊荷40の重心位置までの長さに相当する予め定められた定数を加算することによって、振り子長さlを算出すればよい。
【0032】
[旋回角速度パターン決定処理]
次に、制御部50は、旋回角速度パターンを決定する(S12)。旋回角速度パターンは、上部作業体30が旋回するときのブーム先端部の角速度の推移を示すものである。旋回角速度パターンは、例えば図5(B)に示されるように、旋回開始位置から旋回角速度ωに至る制御時間Tの第1区間と、旋回角速度ωで定速移動する定速区間と、旋回角速度ωから旋回終了位置で停止する制御時間Tの第2区間とを含む。ステップS12の処理は、旋回角速度パターン決定処理の一例である。
【0033】
より詳細には、ブーム先端部は、制御時間Tの第1区間において、速度0から加速され、その次に減速され、さらにその次に加速されて旋回角速度ωに至る。以下、加速から減速に切り替わるときの角速度を「極大角速度」と表記し、減速から加速に切り替わるときの角速度を「極小角速度」と表記する。図5(B)の例では、極大角速度がωであり、極小角速度が0である。そして、第1区間における旋回角速度パターンは、制御時間Tが短いほど、極大角速度及び極小角速度の差が大きくなる。換言すれば、第1区間におけるブーム先端部は、制御時間Tが短いほど、急加速、急減速、及び急加速される。
【0034】
制御時間Tは、例えば、以下のようにして決定される。まず、制御部50は、ブーム先端部から延出されたロープ38、フック33、及び吊荷40を振り子とみなして、式1のように振り子の周期Tを算出する。次に、制御部50は、周期Tに係数α(α<1)を乗じることによって、制御時間T(=T×α)を算出する。係数αは、例えば、旋回モータ31の応答性能に応じて決定される値である。すなわち、係数αを小さく(すなわち、制御時間Tを短く)した場合の旋回角速度パターンに旋回モータ31が追従できる範囲で、係数αを小さくすればよい。本実施形態では、係数α=0.4とする。
【0035】
【数1】
【0036】
また、第2区間における旋回角速度パターンは、例えば、第1区間における旋回角速度パターンの回転対称である。すなわち、ブーム先端部は、制御時間Tの第2区間において、旋回角速度ωから減速され、その次に加速され、さらにその次に減速されて旋回終了位置で停止する。以下、第1区間の旋回角速度パターンを決定する手順を詳細に説明する。
【0037】
まず、制御部50は、図6に示されるクレーンモデルを用いて、旋回方向におけるブーム先端部の移動軌跡を解析的に導出する。図6において、xは、初期位置O(すなわち、旋回開始位置に対応するブーム先端部の位置)から移動したブーム先端部の位置である。θは、位置xのブーム先端部から延出されたロープ38と鉛直方向とのなす角(以下、「振り子角」と表記する。)である。gは、重力加速度である。そして、図6に示されるクレーンモデルの運動方程式は、下記式2で表される。さらに、式2を線形化することによって、式3が得られる。
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
次に、式3を制御対象として、式4に示される最適制御理論の評価関数を用いて、ブーム先端部の旋回方向の軌道を設計する。具体的には、拘束条件として式3を含むように、ラグランジュの未定乗数法で式4を拡張すると、式5が得られる。また、汎関数Jが最小になるときの被積分関数F’は、式6を満たす。そして、これを解くことによって、式7が得られる。
【0041】
【数4】
【0042】
【数5】
【0043】
【数6】
【0044】
【数7】
【0045】
ここで、式5のλは、Lagrangeの未定乗数である。また、式7の定数a(i=1,・・・,5)は、式8に示される初期条件及び終端条件を与えることによって、特定される。具体的には、zにxを代入した式6をx、x’について解き、zにθを代入した式6をθ、θ’について解き、zにλを代入した式6をλについて解くと、積分の過程により得られる未定定数a〜aを含む5つの方程式が得られる。得られた5つの方程式に式8の各条件を代入して連立方程式を解くことによって、定数a〜aが特定される。例えば、図5(B)に示される旋回角速度パターンにおいて、a=0.6609、a=2.034、a=0、a=1.743、a=−20.53である。また、R(T)は、旋回開始からT秒後における旋回半径を指し、式9によって算出される。
【0046】
【数8】
【0047】
[半径速度パターン決定処理]
次に、制御部50は、半径速度パターンを決定する(S13)。半径速度パターンは、旋回開始位置から旋回終了位置まで上部作業体30が旋回するときのブーム先端部の旋回半径方向の移動速度の推移を示すものである。図7(B)に示される半径速度パターンの例によると、第1区間におけるブーム先端は、旋回半径を増大させる向きに移動され、その次に旋回半径を減少させる向きに移動される。また、定速区間におけるブーム先端は、旋回半径方向に移動されない。さらに、第2区間における半径速度パターンは、第1区間における半径速度パターンの回転対称である。ステップS13の処理は、半径速度パターン決定処理の一例である。
【0048】
より詳細には、第1区間におけるブーム先端部は、移動開始位置における旋回半径rの位置から旋回半径を増大させる向きに移動され、その次に旋回半径を減少させる向きに移動されて、第1区間の終端で後述する目標旋回半径r’の位置に到達する。第1区間の半径速度パターンは、第1区間の終端において、旋回半径rの位置の吊荷40に作用する旋回半径方向の力(すなわち、遠心力、及びロープ38の張力の水平方向成分)を釣り合わせるためのブーム先端部の移動パターンを定義するものである。
【0049】
また、定速区間におけるブーム先端部は、目標旋回半径r’の位置から旋回半径方向に移動されない。すなわち、吊荷40に作用するロープ38の張力の水平方向成分の大きさは、定速区間において変化しない。また、定速区間における吊荷40の旋回角速度ωは一定なので、吊荷40に作用する遠心力も変化しない。その結果、定速区間における吊荷40は、図9に実線で示されるように、旋回半径方向の力が釣り合った状態で、旋回半径rの位置を移動する。
【0050】
さらに、第2区間におけるブーム先端部は、目標旋回半径r’の位置から旋回半径rの位置よりさらに旋回半径が大きくなる位置まで移動され、その後に旋回半径を減少させる向きに移動されて、第2区間の終端(すなわち、移動終了位置)で旋回半径rの位置に到達する。第2区間の半径速度パターンは、第2区間の終端において、旋回半径rの位置の吊荷40に旋回半径方向の力(すなわち、遠心力、及びロープ38の張力の水平方向成分)を0にするためのブーム先端部の移動パターンを定義するものである。
【0051】
目標旋回半径r’は、例えば、以下のようにして決定される。図8に示されるクレーンモデルにおいて、旋回半径rの位置の吊荷40に作用する旋回半径方向の力を釣り合わせるための目標旋回半径r’は、例えば式9によって算出される。また、式9におけるφeは、第1区間の終端における振り子角度であって、式10によって算出される。
【0052】
【数9】
【0053】
【数10】
【0054】
そして、制御部50は、第1区間における旋回半径の推移を表すR(t)を、式11のように5次関数として設定する。そして、R(t)を微分することによって、式12に示される半径速度パターンが得られる。
【0055】
【数11】
【0056】
【数12】
【0057】
なお、式11及び式12の定数r(i=0,・・・,5)は、式13に示される初期条件、境界条件、及び終端条件を与えることによって、特定される。具体的には、式13の各条件を式11、式12に代入して、連立方程式を解けばよい。例えば、図7(B)に示される半径速度パターンにおいて、r=10.08、r=0、r=1.355、r=−1.770、r=0.6424、r=−0.07070である。
【0058】
【数13】
【0059】
[アクチュエータ制御処理]
次に、制御部50は、決定した旋回角速度パターンに従って、旋回モータ31を駆動する。また、制御部50は、決定した半径速度パターンに従って、起伏シリンダ35及び/又は伸縮シリンダ36を駆動する(S14)。ステップS14の処理は、アクチュエータ制御処理の一例である。
【0060】
具体的には、制御部50は、旋回角速度パターンで示される角速度でブーム先端部が旋回方向に移動するように、旋回モータ31に旋回開始位置から旋回終了位置まで上部作業体30を旋回させる。図5(B)に示される旋回角速度パターンに従って移動するブーム先端部の旋回角度の推移を、図5(A)に示す。
【0061】
また、制御部50は、半径速度パターンで示される速度でブーム先端部が旋回半径方向に移動するように、起伏シリンダ35及び/又は伸縮シリンダ36に伸縮ブーム32を起伏及び/又は伸縮させる。図7(B)に示される半径速度パターンに従って移動されるブーム先端部の旋回半径方向の位置の推移を、図7(A)に示す。
【0062】
なお、制御部50は、半径速度パターンに従ったブーム先端部の移動を、起伏シリンダ35及び伸縮シリンダ36の一方のみで実現してもよいし、起伏シリンダ35及び伸縮シリンダ36の両方で実現してもよい。例えば、制御部50は、旋回開始位置における伸縮ブーム32の起伏角度に応じて、半径速度パターンを実現するために用いるアクチュエータを選択してもよい。
【0063】
制御部50は、伸縮ブーム32の起伏角度が第1閾値未満である場合に、伸縮シリンダ36のみを用いて旋回半径方向の動作を制御してもよい。また、制御部50は、伸縮ブーム32の起伏角度が第1閾値以上で且つ第2閾値未満である場合に、起伏シリンダ35及び伸縮シリンダ36を連動させて旋回半径方向の動作を制御してもよい。さらに、制御部50は、伸縮ブーム32の起伏角度が第2閾値以上である場合に、起伏シリンダ35のみを用いて旋回半径方向の動作を制御してもよい。なお、第2閾値は、第1閾値より大きい。例えば、第1閾値=30°、第2閾値=60°であってもよい。
【0064】
また、起伏シリンダ35及び伸縮シリンダ36の両方を用いて半径速度パターンを実現しようとする場合、制御部50は、半径速度パターンを起伏速度及びと伸縮速度に分解すればよい。そして、制御部50は、起伏速度に応じて起伏シリンダ35を駆動させ、伸縮速度に応じて伸縮シリンダ36を駆動させればよい。
【0065】
[実施形態の作用効果]
図5(B)に示される旋回角速度パターン、及び図7(B)に示される半径速度パターンに従ってブーム先端部を移動させた場合において、ブーム先端部と吊荷40との旋回半径方向の位置関係を、図9に示す。図9に実線で示される吊荷40は、旋回半径rの円周上を移動する。一方、図9に点線で示されるブーム先端部の位置は、定速区間において、旋回半径rより小さい目標旋回半径r’の円周上を移動する。そして、ブーム先端部の旋回半径方向の位置は、第1区間の始端及び第2区間の終端において吊荷40の旋回半径方向の位置と重なる。
【0066】
また、図5(B)に示される旋回角速度パターン、及び図7(B)に示される半径速度パターンに従ってブーム先端部を移動させた場合において、旋回半径方向の吊荷40揺動角(実線)と、旋回半径方向の吊荷40の揺動速度(点線)との関係を図10(A)に、旋回方向の吊荷40の揺動角度(実線)と、旋回方向の吊荷40の揺動速度(点線)との関係を図10(B)に示す。なお、揺動角度は、鉛直方向とロープ38とのなす角を指す。また、揺動速度は、ブーム先端部の速度との相対速度(速度差)を指す。
【0067】
図10(A)に示されるように、第1区間及び第2区間における吊荷40は、半径速度パターンに従ってブーム先端部が旋回半径方向に移動されることによって、旋回半径方向に揺動する。そして、第1区間の終端において、吊荷40の旋回半径方向の揺動速度は概ね0に収束し、吊荷40の旋回半径方向の揺動角は概ねφeに収束する。また、定速区間において、吊荷40の旋回半径方向の揺動速度は概ね0で安定し、吊荷40の旋回半径方向の揺動角は概ねφeで安定している。さらに、第2区間の終端において、吊荷40の旋回半径方向の揺動速度は概ね0に収束し、吊荷40の旋回半径方向の揺動角は概ね0に収束する。
【0068】
また、図10(B)に示されるように、第1区間及び第2区間における吊荷40は、旋回角速度パターンに従ってブーム先端部が旋回方向に移動されることによって、旋回方向に揺動する。そして、第1区間の終端及び第2区間の終端において、吊荷40の旋回方向の揺動速度は概ね0に収束し、吊荷40の旋回方向の揺動角は概ね0に収束する。また、定速区間において、吊荷40の旋回方向の揺動速度は概ね0で安定し、吊荷40の旋回方向の揺動角は概ね0で安定している。
【0069】
このように、上記の実施形態によれば、旋回終了位置における吊荷40の旋回方向の揺動のみならず、吊荷40の旋回半径方向の揺動をも抑制することができる。その結果、特に狭い場所で伸縮ブーム32を旋回させる際に、遠心力によって外側に押し出された吊荷40が障害物と接触することを抑制することができる。
【0070】
また、上記の実施形態によれば、第1区間及び第2区間の制御時間Tを、旋回モータ31の応答性能の範囲内で、振り子運動する吊荷40の周期Tより短くすることができる。その結果、旋回開始位置から旋回終了位置までの旋回時間を短縮することができる。なお、旋回角速度パターンにおいて、定速区間は必須でなく、省略することができる。
【0071】
なお、図11は、制御時間Tを算出するための係数αと、第1区間における旋回角速度パターンとの関係を表す図である。図11において、α=0.4(T=0.4T)のときの旋回角速度パターンが実線で、α=0.6(T=0.6T)のときの旋回角速度パターンが破線で、α=0.8(T=0.8T)のときの旋回角速度パターンが一点鎖線で、α=1(T=T)のときの旋回角速度パターンが二点鎖線で図示されている。
【0072】
図11に示されるように、係数αの値が小さくなるほど、角速度ωに達するまでの制御時間Tが短くなる。すなわち、旋回開始位置から旋回終了位置までの旋回時間を短縮する観点からは、係数αの値が小さいほど望ましい。一方、係数αの値が小さくなるほど、極大角速度及び極小角速度の差が大きくなって、急加速及び急減速が必要になる。換言すれば、係数αの値が大きくなるほど、極大角速度及び極小角速度の差が小さくなり、係数α=1における旋回角速度パターンは直線(すなわち、等加速度運動)になる。
【0073】
すなわち、係数αの値を小さくし過ぎると、旋回角速度パターンに従って制御部50が旋回モータ41を制御しようとしても、旋回モータ41が追従できない可能性がある。そこで、旋回モータ41の応答性能の範囲内において、最小の係数αを選択することが望ましい。なお、旋回モータ41の応答性能とは、旋回モータ41そのものの応答性能だけでなく、旋回モータ41に作動油を供給する油路に配置されたバルブ等の応答性能を含んでもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、半径速度パターンを式12のように決定した例を説明したが、半径速度パターンの決定方法はこれに限定されず、旋回角速度パターンと同様に、最適制御によって決定してもよい。具体的には、図12に示されるクレーンモデルの運動方程式は、式14のようになる。また、式14を近似することによって、式15が得られる。なお、式15における定数Ωは、式14の遠心力項の旋回角速度に相当する。
【0075】
【数14】
【0076】
【数15】
【0077】
そして、式15を制御対象として、式16に示される最適制御理論の評価関数を用いて、ブーム先端部の旋回半径方向の軌道を設計する。具体的には、拘束条件として式15を含むように、ラグランジュの未定乗数法で式16を拡張すると、式17が得られる。また、汎関数Jが最小になるときの被積分関数F’は、式18を満たす。そして、これを解くことによって、式19が得られる。
【0078】
【数16】
【0079】
【数17】
【0080】
【数18】
【0081】
【数19】
【0082】
ここで、式17のλは、Lagrangeの未定乗数である。また、式19の定数b(i=1,・・・,5)は、式20に示される初期条件及び終端条件を与えることによって、特定される。具体的には、zにRを代入した式18をR、R’について解き、zにφを代入した式18をφ、φ’について解き、zにλを代入した式18をλについて解くと、積分の過程により得られる未定定数b〜bを含む5つの方程式が得られる。得られた5つの方程式に式20の各条件を代入して連立方程式を解くことによって、定数b〜bが特定される。例えば、図7(B)に示される半径速度パターンにおいて、b=46.22、b=−104.8、b=96.34、b=−119.0、b=−50.62である。また、定数Ωは、好適な半径速度パターンを得るために、試行錯誤によって導出される値である。例えば、図7(B)に示される半径速度パターンにおいて、Ω=1.5rpmである。
【数20】
【符号の説明】
【0083】
10・・・ラフテレーンクレーン
20・・・下部走行体
30・・・上部作業体
31・・・旋回モータ
32・・・伸縮ブーム
33・・・ロープ
36・・・起伏シリンダ
37・・・伸縮シリンダ
38・・・ロープ
50・・・制御部
51・・・旋回角センサ
52・・・起伏角センサ
53・・・ブーム長さセンサ
54・・・ロープ長さセンサ
55・・・吊荷重センサ
56・・・操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12