(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反送液モードの実行中の前記管部内圧力値情報の変化推移情報である圧力値変化推移情報に基づき、前記反送液モード停止情報生成部が、前記反送液モード停止情報を生成し、
前記圧力値変化推移情報は、所定時間内の降下速度が所定の範囲内であるか否かであることを特徴とする請求項1に記載の医療用ポンプシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、医療用ポンプを複数用いて薬液を患者に投与する場合がある。この場合、各医療用ポンプが送液する薬液を収容するチューブはそれぞれ別々に針やカテーテル等を介して患者に送液することなく、混注部を介して、最終的に1本のチューブに、それぞれの薬液を送液する場合が多い。
また、複数の医療用ポンプは、それぞれ別個の閉塞センサを有しているため、各閉塞センサによって圧力検知の精度の相違や閉塞判断の設定の相違等が発生する。
【0005】
このような医療用ポンプが、混注部を介して1本のチューブで薬液を患者等に投与する際に、当該チューブに閉塞が発生すると、医療用ポンプ毎に閉塞と判断する時期等が相違するおそれがある。すなわち、或る医療用ポンプは、閉塞を検知して,モータを逆転作動(動作)するが、他の医療用ポンプは、引き続き送液動作を実行するという事態が発生する。
この場合、各医療用ポンプの各チューブが接続されている「混注部」で以下のような問題が発生するおそれがある。
すなわち、引き続き送液を実行している医療用ポンプの薬液等が、「混
注部」を介して、逆転動作を実行している医療用ポンプ側に吸引される「吸引現象」が発生するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、一の医療用ポンプ側から他の医療用ポンプ側へ薬液が吸引される「吸引現象」の発生を精度良く防止することができ
る医療用ポンプシステム、医療用ポンプ
システムの
作動方法及び医療用ポンプ
システムの制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明にあっては、 管部に収容された液体を送液する
複数の医療用ポンプ
と、前記複数の医療用ポンプに、それぞれ配置される前記管部を連結し、対象者に接続されている対象者側管部と連結する混注部と、を備える医療用ポンプシステムであって、
前記医療用ポンプは、少なくとも、前記管部内の液体を送液方向に移動させる送液モードと、反送液方向に移動させる反送液モードに切り替え可能な液体移動部と、前記
管部内の圧力値である管部内圧力値情報を検知する管部内状態情報検知部と、前記
管部内圧力値情報に基づき、前記管部の閉塞情報を生成する閉塞判断部と、を備え、前記液体移動部は、前記送液モードで動作させた後、前記閉塞情報に基づき、前記反送液モードの動作に変更される構成となっており、前記
管部内圧力値情報に基づいて前記反送液モードの停止情報である反送液モード停止情報を生成する反送液モード停止情報生成部を有
し、前記反送液モード動作中に、前記閉塞情報が閉塞緩和基準情報に達しないときは、前記反送液モードの逆転動作積算送液情報が、対象者に投与する液体の予定液量である予定送液量情報に達しているか否かを判断し、前記予定送液量情報に達していないときは、前記逆転動作積算送液量情報が、当該閉塞情報で想定される前記管部内に滞留している予想滞留液体量情報に達したときに、前記反送液モード停止情報を生成することを特徴とする医療用ポンプ
システムにより達成される。
【0008】
前記構成によれば、液体移動部は、送液モードで動作させた後、閉塞判断部の閉塞情報に基づき、反送液モードで動作(例えば、逆転動作(作動)等)に変更される構成となっており、管部内状態情報に基づいて反送液モードの停止情報である反送液モード停止情報を生成する反送液モード停止情報生成部(例えば、「想定薬液量判断処理部」「閉塞検出値降下判断処理部」等)を有する。
このように、管部内状態情報に基づいて反送液モード停止情報が生成されるので、適切なタイミングで反送液モードを停止でき、当該輸液ポンプのチューブが、他の輸液ポンプのチューブと「混注部」で連結され、他の輸液ポンプが送液モードで実行中であっても、他の輸液ポンプから薬液等の液体が当該輸液ポンプ側に吸引される「吸引現象」の発生を精度良く未然に防止することができる。
また、閉塞状態が解消したとき、薬液等が管部から患者に急激に送液されてしまうことを防止することができる
【0010】
前記構成によれば、反送液モード停止情報生成部は、予想液体量情報(例えば、想定薬液量等)に基づいて、反送液モード停止情報を生成するので、閉塞状態で管部内に滞留している予想滞留液体量情報分のみ反送液モードを実行する。
したがって、他の輸液ポンプから薬液等の液体が当該輸液ポンプ側に吸引される、「吸引現象」の発生をより精度良く未然に防止することができる。
また、閉塞状態が解消したとき、薬液等が管部から患者に急激に送液されてしまうことを防止することができる
【0011】
好ましくは、
前記医療用ポンプシステムは、前記反送液モードの実行中の前記管部内圧力値情報の変化推移情報である圧力値変化推移情報に基づき、前記反送液モード停止情報生成部が、前記反送液モード停止情報を生成し、
前記圧力値変化推移情報は、圧力値が下降傾向か否かであることを特徴とする。
また、好ましくは、前記医療用ポンプシステムは、前記反送液モードの実行中の前記管部内圧力値情報の変化推移情報である圧力値変化推移情報に基づき、前記反送液モード停止情報生成部が、前記反送液モード停止情報を生成し、前記圧力値変化推移情報は、所定時間内の降下速度が所定の範囲内であるか否かであることを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、反送液モード停止情報生成部が、反送液モードの実行中の管部内圧力値情報の変化推移情報である圧力値変化推移情報(例えば、「閉塞検出値が降下傾向か否か」「所定の降下速度以下か否か」等)に基づき、反送液モード停止情報を生成する。
したがって、反送液モードの実行中にもかかわらず、圧力値変化推移情報で、例えば、圧力値が降下しない、又は、降下速度が所定の範囲内でないときは、反送液モード停止情報生成部が、反送液モード停止情報を生成する。
したがって、他の輸液ポンプから薬液等の液体が当該輸液ポンプ側に吸引される「吸引現象」の発生をより早く未然に防止することができる。
また、閉塞状態が解消したとき、薬液等が管部から患者に急激に送液されてしまうことを防止することができる
【0014】
上記目的は、本発明にあっては、
複数の医療用ポンプが、少なくとも、管部に収容された液体を送液方向に移動させる送液モードと、反送液方向に移動させる反送液モードに切り替え可能な液体移動部と、前記管部内の
圧力値である管部内圧力値情報を検知する管部内状態情報検知部と、
前記管部をそれぞれ連結し、対象者に接続されている対象者側管部と連結する混注部と、を有する医療用ポンプ
システムの
作動方法であって、前記管部内
圧力値情報に基づき、前記管部の閉塞情報を生成し、前記液体移動部は、前記送液モードで動作させた後、前記閉塞情報に基づき、前記反送液モードの動作に変更され、前記管部内
圧力値情報に基づいて前記反送液モードの停止情報である反送液モード停止情報を生成
し、前記反送液モード動作中に、前記閉塞情報が閉塞緩和基準情報に達しないときは、前記反送液モードの逆転動作積算送液情報が、対象者に投与する液体の予定液量である予定送液量情報に達しているか否かを判断し、前記予定送液量情報に達していないときは、前記逆転動作積算送液量情報が、当該閉塞情報で想定される前記管部内に滞留している予想滞留液体量情報に達したときに、前記反送液モード停止情報を生成することを特徴とする医療用ポンプ
システムの
作動方法により達成される。
【0015】
上記目的は、本発明にあっては、
複数の医療用ポンプが、少なくとも、管部に収容された液体を送液方向に移動させる送液モードと、反送液方向に移動させる反送液モードに切り替え可能な液体移動部と、前記管部内の
圧力値である管部内圧力値情報を検知する管部内状態情報検知部と、
前記管部をそれぞれ連結し、対象者に接続されている対象者側管部と連結する混注部と、を有する医療用ポンプ
システムに
おいて、前記管部内
圧力値情報に基づき、前記管部の閉塞情報を生成する工程と、前記液体移動部は、前記送液モードで動作させた後、前記閉塞情報に基づき、前記反送液モードの動作に変更される工程と、前記管部内状態情報に基づいて前記反送液モードの停止情報である反送液モード停止情報を生成する工程と、
前記反送液モード動作中に、前記閉塞情報が閉塞緩和基準情報に達しないときは、前記反送液モードの逆転動作積算送液情報が、対象者に投与する液体の予定液量である予定送液量情報に達しているか否かを判断する工程と、前記予定送液量情報に達していないときは、前記逆転動作積算送液量情報が、当該閉塞情報で想定される前記管部内に滞留している予想滞留液体量情報に達したときに、前記反送液モード停止情報を生成する工程と、を含み、これらの工程を実行させることを特徴とする医療用ポンプ
システムの制御プログラムにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、一の医療用ポンプ側から他の医療用ポンプ側へ薬液が吸引される「吸引現象」の発生を精度良く防止することができ
る医療用ポンプシステム、医療用ポンプ
システムの
作動方法及び医療用ポンプ
システムの制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態にかかる医療用ポンプである例えば、輸液ポンプ10、100を複数、用いた医療用ポンプシステムである例えば、輸液ポンプシステム1の概略図である。
本実施の形態では、医療用ポンプとして内部に管部である例えば、ポンプ側チューブ11a、11bをそれぞれ配置し、このポンプ側チューブ11a、11bを押圧等することで、ポンプ側チューブ11a、11b内の液体である例えば、薬液を送液させる輸液ポンプ10、100を例えば、2個使用した例で以下説明するが、内部にシリンジを有し、このシリンジで薬液を押し出す形式のシリンジポンプを用いても構わない。
【0020】
本システム1は、
図1に示すように、2個の輸液ポンプ10、100を有しており、それぞれの輸液ポンプ10、100に薬液を供給するために薬液を内部に収容している薬液バッグ12a、12bが配置されている。
これら薬剤バッグ12a、12bは、それぞれポンプ側チューブ11a、11bを介して薬液を供給する構成となっているが、これらポンプ側チューブ11a、11bは、
図1に示すように、その一部が輸液ポンプ10、100内に配置される構成となっている。
【0021】
また、2つのポンプ側チューブ11a、11bは、
図1に示すように、それぞれ混注部13に接続されている。
この混注部13は、対象者側管部である例えば、患者側チューブ14に接続され、この患者側チューブ14は、留置針15等を介して、患者Pの腕等の血管と接続されている。
したがって、
図1の2つのポンプ側チューブ11a、11b内の薬液は、混注部13で合流し、患者側チューブ14と留置針15等を介して、患者に投与される構成となっている。
【0022】
図2は、
図1の輸液ポンプ10の主な構成を示す概略斜視図である。輸液ポンプ100は、輸液ポンプ10と同様な構成であるため説明を省略する。
図1に示すように、輸液ポンプ10は、
図2に示すように、各種情報を表示する表示部であるディスプレイ21を有すると共に、各種操作ボタン22を備えている。
例えば、内部にLEDを含み、光拡散剤を介して発光・表示して輸液ポンプ10の動作状態を示すパイロットランプ22a、設定流量(mL/h)より早い注入速度で薬液を注入するための早送りスイッチボタン22b、開始スイッチボタン22c、停止スイッチボタン22d、メニュー選択ボタン22e等が配置されている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、輸液ポンプ10は、その内部に配置されるポンプ側チューブ11aを押圧等し、その内部の薬液を送液するための液体移動部である例えば、送液駆動部30が配置されている。
また、この送液駆動部30の上流側(薬剤バッグ12a側)には、送液駆動部30より上流側のポンプ側チューブ11a内の閉塞等を検知する管部内状態情報検知部である例えば、上流閉塞センサ16が配置されている。一方、送液駆動部30の下流側(混注部13側)には、送液駆動部30より下流側のポンプ側チューブ11a内の閉塞等を検知する管部内状態情報検知部である下流閉塞センサ17が配置されている。
これら上流閉塞センサ16及び下流閉塞センサ17は、例えば、圧力センサであり、ポンプ側チューブ11a内の圧力を検知する構成となっている。
【0024】
図3は、
図1及び
図2に示す輸液ポンプ10の送液駆動部30の主な構成を示す概略説明図である。
送液駆動部30は、
図3に示すように、カム構造体32とフィンガ構造体33を有し、これらの構造体でポンプ側チューブ11a内の薬液の送液を制御する構造となっている。
すなわち、このカム構造体32の動作によって、ポンプ側チューブ11a内の薬液の送液を精度良く制御する構成となっている。
【0025】
具体的には、複数のカム、例えば、6個のカム32a乃至32fを有し、フィンガ構造体33は、6個のカム32a乃至32fに対応して、6個のフィンガ33a乃至33fを有している。
6個のカム32a乃至32fは、互いに位相差を付けて配列されており、カム構造体32は、駆動モータ18の出力軸18aに連結されている。
すなわち、
図3の駆動モータ18が駆動し、回転すると、カム32a乃至32fを介して、複数のフィンガ33a乃至33fが
図3のY方向に個別駆動し、ポンプ側チューブ11aの外周面を
図3のT方向に沿って順次押圧して、ポンプ側チューブ11a内の薬液の送液を行う構成となっている。
【0026】
すなわち、送液駆動部30は、上述のように、複数のフィンガ33a乃至33fの蠕動様運動を制御することにより、フィンガ33a乃至33fを順次、前後進させ、あたかも波動が進行するようにして、ポンプ側チューブ11a内の閉塞点をT方向に移動させることでポンプ側チューブ11aをしごいて薬液を移送する構成となっている。
したがって、
図3の駆動モータ18の回転を逆転作動(動作)させることで、ポンプ側チューブ11a内の薬液の送液方向を逆方向(
図3のT方向と反対方向)に変更させることができる。
【0027】
図1に示す輸液ポンプ10、100は、コンピュータを有し、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、これらは、バスを介して接続されている。
【0028】
図4は、
図1に示す輸液ポンプ10の主な構成を示す概略ブロック図である。輸液ポンプ110は、輸液ポンプ10と同様の構成のため、以下、輸液ポンプ10についてのみ説明する。
図4に示すように、輸液ポンプ10は、「制御部41」を有し、制御部41は、輸液ポンプ10が薬剤ライブラリ等を格納する機器等と通信するための「通信装置42」や
図2等で示すディスプレイ21、駆動モータ18、上流側閉塞センサ16及び下流側閉塞センサ17等を制御する。
また、制御部41は、
図4に示す「第1の各種情報記憶部50」、「第2の各種情報記憶部60」及び「第3の各種情報記憶部70」も制御する。
【0029】
図5乃至
図7は、それぞれ「第1の各種情報記憶部50」、「第2の各種情報記憶部60」及び「第3の各種情報記憶部70」の主な構成を示す概略ブロック図である。これらの具体的な内容は後述する。
【0030】
図8乃至
図10は、本実施の形態に係る輸液ポンプシステム1の主な動作例等を示す概略フローチャートである。
本実施の形態では、
図1に示すように、2つの輸液ポンプ10、100を使用して患者Pに薬液を投与する場合で、
図1の輸液ポンプ10の下流閉塞センサ17が輸液ポンプ100より先にポンプ側チューブ11aの閉塞を検知した例に基づき、以下説明する。
【0031】
先ず、
図1に示すように、患者Pに投与する例えば、異なる種類の薬液を2つの薬液バッグ12a、12bに収容し、それぞれの薬液バッグ12a、12bにポンプ側チューブ11a、11bを接続し、これらポンプ側チューブ11a、11bを混注部13に接続させる。
これにより、2つのポンプ側チューブ11a、11bは、混
注部13を介して、1本の
患者側チューブ14と接続される。
また、この患者チューブ14は、留置針15を介して患者Pと接続されることになる。
【0032】
また、
図1に示すように、輸液ポンプ10、100がポンプ側チューブ11a、11bを内部に収容するように配置される。
この状態で、ステップ(「ST」という)1では、患者Pに投与する各薬液の予定送液量である「予定送液量情報」のデータを、輸液ポンプ10及び輸液ポンプ100に入力する。
以下、本実施の形態では、主に輸液ポンプ10について説明し、同様の構成である輸液ポンプ100についての説明を省略する。
この「予定送液量情報」のデータは、具体的には、
図5の輸液ポンプ10の「輸液ポンプ側予定送液量情報記憶部51」に記憶される。
【0033】
次いで、輸液ポンプ10、100が動作し、送液モードである例えば、送液を開始し、ST2に進む。ST2では、2つの輸液ポンプ10、100が動作して、所定の速度で当該薬液の送液を開始すると共に2つの輸液ポンプ10、100の「下流閉塞センサ17」等がポンプ側チューブ11a等内の管部内状態情報である例えば、「閉塞検出圧」の測定を開始する。
【0034】
次いで、ST3及びST4へ進む。ST3では、
図5の「積算送液量情報演算処理部(プログラム)52」が動作し、
図5の「送液量基準情報記憶部53」を参照する。この送液量基準情報記憶部53には、駆動モータ18の回転数と送液量の関係情報である「送液量基準情報」、すなわち、駆動モータ18が何回、回転すれば、どの程度の送液量となるかについての情報が記憶されている。
【0035】
したがって、積算送液量情報演算処理部(プログラム)52は、この既定の「送液量基準情報」と駆動モータ18の「回転量」情報等から輸液ポンプ10の「積算送液量情報」を演算し、
図5の「積算送液量情報記憶部54」に記憶させる。
このように、積算送液量情報記憶部54には、輸液ポンプ10の累積の薬液の送液量の情報が記憶されることになる。
【0036】
一方、ST4では、輸液ポンプ10が「下流側閉塞センサ17」の閉塞検出圧を
図5の「下流側閉塞検出値記憶部55」に記憶する。
次いで、ST5へ進む。ST5では、
図6の閉塞判断部である例えば、「輸液ポンプ閉塞判断処理部(プログラム)61」が動作し、
図6の「輸液ポンプ閉塞基準値情報記憶部56」を参照する。
このとき、
図1の輸液ポンプ10と輸液ポンプ100とでは、異なる数値が記憶されている場合があり、本実施の形態では、この場合に該当する。
【0037】
すなわち、輸液ポンプ100は、輸液ポンプ100の出荷時の値である例えば、「60kPa」を閉塞と判断する「閉塞基準値」としているが、輸液ポンプ10は、出荷時から変更し、「30kPa」を「閉塞基準値」と設定している。
【0038】
したがって、輸液ポンプ10は、
図5の「下流側閉塞検出値記憶部55」及び「輸液ポンプ閉塞基準値情報記憶部56」に基づいて、「下流側閉塞検出値」が閉塞基準値を超えているか否かを判断する。
すなわち、輸液ポンプ10は、「下流側閉塞検出値」が「30kPa」に達しているか否かを判断する。
一方、
図1の輸液ポンプ100は、「下流側閉塞検出値」が「60kPa」に達しているか否かを判断する。
【0039】
次いで、ST6へ進む。ST6で、輸液ポンプ10は「下流側閉塞検出値」が「30kPa」に達していると判断したときは、「閉塞状態」が生じていると判断し、ST7へ進む。
ST7では、「下流側閉塞検出値記憶部55」の該当する検出値に関連付けて「閉塞フラグ」を付する。
【0040】
このとき、
図1の輸液ポンプ100は、「下流側閉塞検出値」が「60kPa」に達していないので、未だ、閉塞とは判断せず、「閉塞フラグ」が付されない。
次いで、ST8へ進む。ST8では、
図6の「輸液ポンプ逆転動作処理部(プログラム)62」が動作し、「下流側閉塞検出値記憶部55」に「閉
塞フラグ」が付されたとき、輸液ポンプ10の駆動モータ18を反送液モードである例えば、逆転動作させる。
このとき、
図1の輸液ポンプ100の駆動モータは、未だ「逆転動作」していない。
このため、この状態を継続させると、
図1の輸液ポンプ100の薬液が混注部13を介して輸液ポンプ10へ流入(吸引)するおそれがある。
そこで、本実施の形態では、以下のような工程を実行する。
【0041】
先ず、ST9及びST10が実行される。ST9では、「逆転動作積算送液量情報演算処理部(プログラム)63」が動作し、
図5の「送液量基準情報記憶部53」の「送液量基準情報」と駆動モータ18の「回転量」等から輸液ポンプ10の逆転動作により積算された薬液の送液量である「逆転動作積算送液量情報」を演算し、
図6の「逆転動作積算送液量情報記憶部64」に記憶する。
【0042】
ST10では、輸液ポンプ10が、下流側閉塞センサ17の閉塞検出圧を
図5の「下流側閉塞検出値記憶部55」に記憶し続ける。
次いで、ST11では、
図6の「輸液ポンプ閉塞解消判断処理部(プログラム)65」が動作し、「下流側閉塞検出値記憶部55」及び
図5の「輸液ポンプ閉塞緩和基準値情報記憶部57」に基づいて「下流側閉塞検出値」が閉塞緩和基準値以下であるか否かを判断する。
すなわち、
図1に発生した閉塞状態、例えば、患者側チューブ14の折れ曲がり、によるポンプ側チューブ11a等内の圧力が高まった状態が解消したか否かを判断する。
【0043】
次いで、ST12で、下流側閉塞検出値が閉塞緩和基準値以下であると判断されると、ST13へ進む。
ST13では、
図5の「下流側閉塞検出値記憶部55」の該当する検出値に関連付けて解消フラグを付する。
【0044】
次いで、ST14へ進む。ST14では、
図6の「輸液ポンプ逆転動作停止処理部(プログラム)66」が動作し、
図5の「下流側閉塞検出値記憶部55」に解消フラグが付されたとき、輸液ポンプ10の駆動モータ18の逆転動作を停止させる。
したがって、ポンプ側チューブ11a等内の圧力が高まった状態の解消と共に駆動モータ18の逆転動作が停止され、
図1の輸液ポンプ100の薬液が輸液ポンプ10側に吸引されるのを防ぐことができる。
また、閉塞状態が解消したとき、薬液が患者側チューブ14から患者Pに急激に送液されてしまうことを防止することもできる。
【0045】
しかし、ST12で、ポンプ側チューブ11a等内の圧力が高まった状態が解消していないと判断されたときは、輸液ポンプ10の駆動モータ18は、逆転動作を継続するため、
図1の輸液ポンプ100側からの薬液が混注部13を介して、吸引されるおそれがある。
そこで、その場合は、ST15へ進む。ST15では、
図7の「予定送液量到達判断処理部(プログラム)71」が動作し、
図6の「逆転動作積算送液量情報記憶部63」と
図5の「輸液ポンプ側予定送液量情報記憶部51」を参照し、「逆転動作積算送液量」が「輸液ポンプ側予定送液量」に達しているか否かを判断する。
【0046】
すなわち、薬液の送液方向と反対方向への移動が輸液ポンプ10の予定の送液量を超える場合は、
図1の輸液ポンプ100側の薬液が混注部13を介して輸液ポンプ10側に吸引される蓋然性が高いので、かかる事態となっているか否かを判断する。
【0047】
そこで、ST16で、「逆転動作積算送液量」が「輸液ポンプ側予定送液量」に達していると判断したときは、ST17へ進み、輸液ポンプ10の駆動モータ18の逆転動作を停止させる。
これにより、
図1の輸液ポンプ100側の薬液が輸液ポンプ10側に吸引されるのを防ぐことができる。
また、閉塞状態が解消したとき、薬液が患者側チューブ14から患者Pに急激に送液されてしまうことを防止することもできる。
【0048】
一方、ST16で「逆転動作積算送液量」が「輸液ポンプ側予定送液量」に達していない場合でも、
図1の輸液ポンプ100から輸液ポンプ10側へ薬液が吸引される場合があり得る。
そこで、本実施の形態では、より精度高く、輸液ポンプ100から輸液ポンプ10側への薬液の吸引を未然に防止するため、以下の工程を実行する。
【0049】
先ず、ST18で、
図7の「予想排出薬液量情報生成処理部(プログラム)72」が動作し、「下流側閉塞検出値記憶部55」の閉塞検出値を取得する。そして、
図7の「閉塞検出値対応薬液量情報記憶部73」を参照する。
この閉塞検出値対応薬液量情報記憶部73には、当該閉塞検出値で想定されるポンプ側チューブ11a等内に溜まっている想定薬液量、すなわち、当該閉塞検出値において閉塞状態を解除したときにポンプ側チューブ11a等から排出される想定薬液量の情報が、閉塞検出値毎に予め記憶されている。
【0050】
具体的には、予め実験等で計測した想定薬液量の情報となっている。なお、この想定薬液量が予想滞留液体量情報の一例となっている。また、閉塞検出値対応薬液量情報記憶部73に記憶されている閉塞検出値対応薬液量情報が管部内圧力値対応予想液体量情報の一例となっている。
【0051】
したがって、ST18では、当該閉塞検出値に対応する想定薬液量を「閉塞検出値対応薬液量情報記憶部73」から取得し、
図7の「想定薬液量情報記憶部74」に記憶する。
【0052】
次いで、ST19へ進む。ST19では、
図7の反送液モード停止情報生成部である例えば、「想定薬液量判断処理部(プログラム)75」が動作し、
図6の「逆転動作積算送液量情報記憶部64」の「逆転動作積算送液量」が、
図7の「想定薬液量情報記憶部74」の「想定薬液量」に達したか否かを判断する。
【0053】
すなわち、当該閉塞検出値において、実際にポンプ側チューブ11a等において滞留等している薬液量の分だけ、駆動モータ18を逆転動作させるので、効果的にポンプ側チューブ11a等内に滞留している薬液を薬液バッグ12a側に戻すことができると共に、
図1の輸液ポンプ100側の薬液が、輸液ポンプ10側へ吸入されることを正確に未然に防止することが可能となる。
また、閉塞状態が解消したとき、薬液が患者側チューブ14から患者Pに急激に送液されてしまうことを防止することもできる
【0054】
したがって、ST20で、「逆転動作積算送液量」が「想定薬液量」に達したと判断されたときは、ST21へ進み、輸液ポンプ10の駆動モータ18の逆転動作が停止される。
以上のように,本実施の形態では、輸液ポンプ100からの薬液が輸液ポンプ10側に吸引される「吸引現象」の発生を精度良く未然に防止することができる。
【0055】
なお、輸液ポンプ10による薬液の送液が完了(
図5の「輸液ポンプ側予定送液量記憶部51」の「輸液ポンプ側予定送液量」の送液が完了)した後に、下流側閉塞センサ17の閉塞検出値が閉塞情報と判断されたときは、
図5の「積算送液量情報記憶部54」の「積算送液量」から
図5の「輸液ポンプ側予定送液量記憶部51」の「輸液ポンプ側予定送液量」を減じた「送液量」を求め、
図6の「逆転動作積算送液量情報記憶部64」の「逆転動作積算送液量」が、この送液量に達したときに、輸液ポンプ10の駆動モータ18の逆転動作を停止する構成としても構わない。
【0056】
これにより、送液完了後の
図1の輸液ポンプ100の薬液が輸液ポンプ10側へ吸引されることを精度良く防止することができる。
【0057】
(本実施の形態の変形例)
本変形例にかかる輸液ポンプシステム200の多くの構成は、上述の実施の形態にかかる輸液ポンプシステム1の構成と共通するため、以下、相違点を中心に説明する。
図11は、本変形例にかかる輸液ポンプの主な構成を示す概略ブロック図である。本変形例では、上記の実施の形態の
図6の「閉塞検出値対応薬液量情報記憶部73」、「予想排出薬液量情報生成処理部(プログラム)72」、「想定薬液量情報記憶部74」及び「想定薬液量判断処理部(プログラム)75」の代わりに、反送液モード停止情報生成部である例えば、
図11の「閉塞検出値降下判断処理部(プログラム)」が配置されている。
【0058】
図12は、本変形例にかかる輸液ポンプシステムに主な動作例を示す概略フローチャートである。
本フローチャートは、上述の実施の形態の
図10のST18乃至ST21の代わりに実行される工程を示す。
【0059】
本変形例では、先ず、ST31で、
図11の「閉塞検出値降下判断処理部(プログラム)81」が動作し、所定時間内の
図5の「下流側閉塞検出値記憶部55」の閉塞検出値を参照し、これらの値が降下傾向を示しているか否かを判断する。
この閉塞検出値の降下傾向か否かの情報が、圧力値変化推移情報の一例となっている。
【0060】
すなわち、本変形例では、所定時間内の下流側閉塞センサ17の閉塞検出値の傾向を判断し、値が下降傾向でない場合は、閉塞によるポンプ側チューブ11a等内の圧力が高まった状態が解消せず、
図1の輸液ポンプ100の薬液が混注部13を介して輸液ポンプ10側へ吸引されるおそれがあると判断するものである。
【0061】
次いで、ST32へ進み、閉塞検出値が降下傾向を示さないときは、ST33へ進み、輸液ポンプ10の駆動モータ18の逆転動作を停止させる。
以上のように、本変形例によれば、閉塞検出値が降下傾向を示さないときは、直ちに駆動モータ18の逆転動作を停止させるので、輸液ポンプ100からの薬液が輸液ポンプ10内に誤って吸引させる「吸引現象」の発生をより早く未然に防止することができる。
また、閉塞状態が解消したとき、薬液が患者側チューブ14から患者Pに急激に送液されてしまうことを防止することもできる
【0062】
なお,本変形例では、所定時間内の閉塞検出値の降下傾向の有無で閉塞によるポンプ側チューブ11a等内の圧力が高まった状態の解消の有無を迅速に判断していたが、これに限らず、所定時間内の閉塞検出値の降下速度を求め、所定の降下速度以下のときは逆転動作を停止させる構成としてもよい。
【0063】
本発明は、上述の実施の形態等に限定されない。