特許第6792570号(P6792570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792570粘着剤用組成物、粘着剤層および粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792570
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】粘着剤用組成物、粘着剤層および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20201116BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20201116BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20201116BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J7/00
   C09J11/08
   C09J133/02
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-558917(P2017-558917)
(86)(22)【出願日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2016086564
(87)【国際公開番号】WO2017115632
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-256462(P2015-256462)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】楠本 直
(72)【発明者】
【氏名】清水 政一
【審査官】 武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/192492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/06
C09J 7/00
C09J 11/08
C09J 133/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(a1)で表される構造を有し、分子の両末端に水酸基を有し、かつカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量(Mw)が300,000〜600,000、分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下である(メタ)アクリルポリマー(A)と、
1分子中のイソシアネート基数が2以上であるイソシアネート化合物(B)を、前記(メタ)アクリルポリマー(A)100質量部に対して0.1〜5質量部と、
軟化点95℃以上のタッキファイヤー(C)と
を含有する粘着剤用組成物。
【化1】
【請求項2】
(メタ)アクリルポリマー(A)が、カルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合体である請求項1に記載の粘着剤用組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリルポリマー(A)が、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種を有するモノマーの使用量が0.3質量%以下である重合性二重結合含有モノマーの重合体である、請求項1または2に記載の粘着剤用組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)が、式(A1−1)で表わされる重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤用組成物。
【化2】
[式(A1−1)中、R1はそれぞれ独立に2価の有機基であり、(A)はそれぞれ独立にカルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの重合体に由来する2価の基である。]
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤用組成物から得られる粘着剤層。
【請求項6】
請求項5に記載の粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤用組成物、粘着剤層および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着剤の分野では、良好な粘着力を有し、より苛酷な状況においても剥がれ落ちない優れた耐久性を有する信頼性の高い粘着剤が求められている。
一般に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材に、アクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤を貼着する場合、良好な粘着力を発現させるためには、粘着剤中に適当なタッキファイヤーを添加する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定のアクリル系ポリマーを含むポリマー成分と、ロジン系粘着付与樹脂またはテルペン系粘着付与樹脂とを含有する粘着剤層を有する粘着テープが開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の一般的なアクリル系ポリマーに単にタッキファイヤーを添加しただけでは、ポリオレフィン系低極性素材への貼着において、荷重環境下で充分な耐久性を有する粘着剤層が得られないことがある。
【0005】
また、粘着剤は、高温条件下における耐久性も求められる。
特許文献2には、特定の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、多官能イソシアネート化合物とを含有する粘着剤用組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2の実施例に開示される重合体の重量平均分子量は、70,000〜250,000であり、高温条件下における耐久性が充分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−110724号公報
【特許文献2】国際公開第2014/192492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材への貼着においても良好な粘着力を発揮し、かつ高温荷重環境下での秀逸な耐久性を有する粘着剤層を形成可能な、粘着剤用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、特定の(メタ)アクリルポリマーと、特定量の多官能イソシアネート化合物と、特定のタッキファイヤーとを含有する粘着剤用組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、例えば以下の[1]〜[6]である。
[1] 式(a1)で表される構造を有し、分子の両末端に水酸基を有し、かつカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量(Mw)が300,000〜600,000、分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下である(メタ)アクリルポリマー(A)と、1分子中のイソシアネート基数が2以上であるイソシアネート化合物(B)を、前記(メタ)アクリルポリマー(A)100質量部に対して0.1〜5質量部と、軟化点95℃以上のタッキファイヤー(C)とを含有する粘着剤用組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[2] (メタ)アクリルポリマー(A)が、カルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合体である[1]に記載の粘着剤用組成物。
【0012】
[3] (メタ)アクリルポリマー(A)が、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種を有するモノマーの使用量が0.3質量%以下である重合性二重結合含有モノマーの重合体である、[1]または[2]に記載の粘着剤用組成物。
【0013】
[4] (メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)が、式(A1−1)で表わされる重合体である[1]〜[3]のいずれかに記載の粘着剤用組成物。
【0014】
【化2】
[式(A1−1)中、R1はそれぞれ独立に2価の有機基であり、(A)はそれぞれ独立にカルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの重合体に由来する2価の基である。]
【0015】
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の粘着剤用組成物から得られる粘着剤層。
【0016】
[6] [5]に記載の粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材への貼着においても良好な粘着力を発揮し、かつ高温荷重環境下での秀逸な耐久性を有する粘着剤層を形成可能な、粘着剤用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の粘着剤用組成物、粘着剤層および粘着シートを説明する。
なお、本明細書において、「重合体」とは単独重合体および共重合体を包含する意味で用い、また、「重合」とは単独重合および共重合を包含する意味で用いる。
また、アクリルおよびメタクリルを総称して「(メタ)アクリル」とも記載する。
【0019】
〔粘着剤用組成物〕
本発明の粘着剤用組成物は、特定の(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)(以下「重合体分子(a)」ともいう。)を含む特定の(メタ)アクリルポリマー(A)と、1分子中のイソシアネート基数が2以上であるイソシアネート化合物(B)(以下「多官能イソシアネート化合物(B)」ともいう。)と、特定のタッキファイヤー(C)とを含有する。
【0020】
<(メタ)アクリルポリマー(A)>
(メタ)アクリルポリマー(A)は、重合体分子(a)を含む。
〈(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)〉
重合体分子(a)は、式(a1)で表される構造を有し、分子の両末端に水酸基を有し、かつカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有する。
【0021】
【化3】
重合体分子(a)は、式(a1)で表される構造(以下「トリチオカーボネート構造」ともいう。)を有する。
【0022】
重合体分子(a)は、分子の両末端に有する水酸基が、多官能イソシアネート化合物(B)で架橋され、架橋体(ネットワークポリマー)を形成する。前記架橋体は、応力緩和性に優れるため、本発明の粘着剤用組成物から得られる粘着剤層は、高温下でも高い定荷重剥離性を維持することができ、耐久性に優れると考えられる。
【0023】
また、重合体分子(a)は、カルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有する。重合体分子(a)が、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を有するためには、例えば、重合性二重結合含有モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを用いることが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有することにより、重合体分子(a)が有する水酸基と多官能イソシアネート化合物(B)が有するイソシアネート基との反応を促進することができるため、荷重環境下での耐久性に優れた粘着剤層を形成することができる。さらに、重合体分子(a)が、カルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有するため、重合体分子(a)を含む粘着剤用組成物から形成される粘着剤層は、SUS板やアルミ板に貼着したときの耐久性にも優れる。
【0024】
重合体分子(a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300,000〜600,000であり、より好ましくは320,000〜550,000、さらに好ましくは330,000〜500,000である。
【0025】
重合体分子(a)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは1.5〜3.8、さらに好ましくは1.8〜3.5である。
MwおよびMw/Mnは、例えば、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0026】
重合体分子(a)は、式(A1)で表される化合物(以下「化合物(A1)ともいう。)に、(メタ)アクリル酸エステル等の重合性二重結合含有モノマーを可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法で重合させて得られる重合体であることが好ましい。
【0027】
【化4】
式(A1)中、R1はそれぞれ独立に2価の有機基である。
【0028】
化合物(A1)は、分子中にトリチオカーボネート構造を有し、分子の両末端に水酸基を有する。化合物(A1)は、例えば、特開2007−230947号公報記載の方法に従って合成することができる。前記構造を有する化合物(A1)を用いることで、有害な有機金属を含まずにテレケリック構造を形成することができる。
【0029】
RAFT重合を行うことにより、分子中のトリチオカーボネート構造の両側にほぼ均等に重合性二重結合含有モノマーに由来する繰返し構造単位が結合し、分子の両末端に水酸基が結合した対称性の高い鎖状の重合体を得ることができる。
【0030】
化合物(A1)としては、例えば、式(A2)で表される化合物(以下「化合物(A2)」ともいう。)、式(A3)で表される化合物(以下「化合物(A3)」ともいう。)が挙げられる。
【0031】
化合物(A2)は、分子中にトリチオカーボネート構造を有し、分子の両末端に1つずつ水酸基を有する。化合物(A2)としては、例えば日本テルペン化学(株)製のRAFT−NTが挙げられる。
【0032】
【化5】
式(A2)中、Xはそれぞれ独立に−COO−、−CONR3−または直接結合であり、R3はそれぞれ独立にアルキル基であり、当該アルキル基の炭素数は好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3であり;R2はそれぞれ独立にアルキレン基であり、当該アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6であり;Arはそれぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基またはフェニレン基,ナフチレン基に含まれる芳香環水素の少なくとも1つを置換基に置き換えてなる基である。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。なお、Xにおいて−COO−および−CONR3−中のカルボニル基がArに結合するものとする。2つのXは同一の基であることが好ましく、2つのR2は同一の基であることが好ましく、2つのR3は同一の基であることが好ましく、2つのArは同一の基であることが好ましい。
【0033】
化合物(A3)は、分子中にトリチオカーボネート構造を有し、分子の両末端に2つずつ水酸基を有する。化合物(A3)としては、例えば日本テルペン化学(株)製のRAFT−DiOHが挙げられる。
【0034】
【化6】
式(A3)中、XおよびArは式(A2)中の同一記号と同義であり;R4はそれぞれ独立にアルキレン基であり、R5はそれぞれ独立に直接結合またはアルキレン基であり、これらのアルキレン基の炭素数は好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6である。2つのXは同一の基であることが好ましく、2つのR4は同一の基であることが好ましく、2つのR5は同一の基であることが好ましく、2つのArは同一の基であることが好ましい。
化合物(A1)の具体例を以下に示す。
【0035】
【化7】
RAFT重合において、化合物(A1)の存在下、重合性二重結合含有モノマーを重合させる。化合物(A1)の使用量は、重合性二重結合含有モノマーの総量100質量部に対して、通常0.05〜20質量部、好ましくは0.05〜10質量部である。化合物(A1)の使用量が前記範囲の下限値以上であれば反応制御が容易であり、前記範囲の上限値以下であれば得られる重合体の重量平均分子量を上記範囲に調整することが容易である。
【0036】
例えば、化合物(A1)中の硫黄原子と当該硫黄原子に隣接するメチレン基との間に重合性二重結合含有モノマーが挿入するように反応して、式(A1−1)で表される重合体(以下「重合体(A1−1)」ともいう。)、具体例としては式(A2−1)または式(A3−1)で表される重合体(以下「重合体(A2−1)」「重合体(A3−1)」ともいう。)を生成する。
【0037】
【化8】
式(A1−1)中、R1は式(A1)中の同一記号と同義であり、(A)はそれぞれ独立にカルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの重合体に由来する2価の基(重合性二重結合含有モノマーの重合体鎖)である。
【0038】
【化9】
式(A2−1)中、X、R2およびArは式(A2)中の同一記号と同義であり、(A)はそれぞれ独立にカルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの重合体に由来する2価の基(重合性二重結合含有モノマーの重合体鎖)である。
【0039】
【化10】
式(A3−1)中、X、R4、R5およびArは式(A3)中の同一記号と同義であり、(A)はそれぞれ独立にカルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの重合体に由来する2価の基(重合性二重結合含有モノマーの重合体鎖)である。
【0040】
式(A1−1)〜(A3−1)中の前記A(重合体由来の2価の基)は、重合性二重結合含有モノマーの単独重合体構造および共重合体構造のいずれでもよく、また共重合体構造としては重合性二重結合含有モノマーのランダム共重合体構造およびブロック状共重合体構造のいずれでもよい。
【0041】
式(A1−1)〜(A3−1)中の前記A(重合体由来の2価の基)において、重合性二重結合含有モノマー由来の繰返し構造単位数は、重合体分子(a)のMwが上記範囲となる数である。
【0042】
ブロック状共重合体構造は、例えば、化合物(A1)に重合性二重結合含有モノマーを添加して第1のRAFT重合を行い、得られた重合体に対して追加の重合性二重結合含有モノマーを添加して第2のRAFT重合を行うことで得ることができる。ここでは2成分系のブロック構造の例を挙げたが、3成分系のブロック構造などであってもよく、特に限定されない。例えば、式(A1−2)、具体例としては式(A2−2)または式(A3−2)で表される重合体(以下「重合体(A1−2)」「重合体(A2−2)」「重合体(A3−2)」ともいう。)が挙げられる。
【0043】
【化11】
式(A1−2)中、R1は式(A1)中の同一記号と同義であり、(A1)および(A2)はそれぞれ独立にカルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの重合体に由来する2価の基(重合性二重結合含有モノマーの重合体鎖)である。
【0044】
【化12】
式(A2−2)中、X、R2およびArは式(A2)中の同一記号と同義であり、(A1)および(A2)はそれぞれ独立にカルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの重合体に由来する2価の基(重合性二重結合含有モノマーの重合体鎖)である。
【0045】
【化13】
式(A3−2)中、X、R4、R5およびArは式(A3)中の同一記号と同義であり、(A1)および(A2)はそれぞれ独立にカルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの重合体に由来する2価の基(重合性二重結合含有モノマーの重合体鎖)である。
【0046】
重合体分子(a)として、重合性二重結合含有モノマーの重合体鎖がブロック状共重合体構造を有する重合体、例えば重合体(A1−2)〜(A3−2)を用いた場合、得られる粘着剤用組成物は、目的に応じた、疎水性−親水性、柔軟性−剛直性等のバランスのとれたものとなる。
【0047】
上記構造を有するRAFT重合体は、重合性二重結合含有モノマーの重合体鎖に由来するソフトセグメントを有している。したがって、多官能イソシアネート化合物(B)のイソシアネート基が前記RAFT重合体の末端水酸基に近付きやすいため、ウレタン結合の形成が効率的に進行すると考えられる。
【0048】
重合体分子(a)は1種単独で、または2種以上を使用することができる。
(メタ)アクリルポリマー(A)は、重合体分子(a)に加え、重合体分子(a)以外の重合体をさらに含んでもよい。重合体分子(a)以外の重合体としては、例えば、RAFT重合で重合体分子(a)を製造する場合、RAFT重合の副生成物が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリルポリマー(A)中の重合体分子(a)含有量は特に規定されず、(メタ)アクリルポリマー(A)中に重合体分子(a)が含まれていればよい。
(メタ)アクリルポリマー(A)は、例えば、RAFT重合により得られる。
【0050】
(メタ)アクリルポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーのRAFT重合体であることが好ましい。
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するために使用する重合性二重結合含有モノマーは、前記重合体分子(a)を形成するために使用する重合性二重結合含有モノマーと、同一であることが好ましい。つまり、前記重合体分子(a)と、(メタ)アクリルポリマー(A)に含まれる前記重合体分子(a)以外の重合体とが、同一の重合性二重結合含有モノマーから形成された重合体であることが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリルポリマー(A)のGPCにより測定されるMwは、300,000〜600,000であり、好ましくは320,000〜550,000、より好ましくは330,000〜500,000である。Mwが前記範囲にあるアクリルポリマー(A)を用いることで、高温荷重環境下での耐久性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0052】
(メタ)アクリルポリマー(A)のMw/Mnは、4.0以下であり、好ましくは1.5〜3.8、より好ましくは1.8〜3.5である。Mw/Mnが前記範囲にある(メタ)アクリルポリマー(A)は分子量が均一であり低分子量体が少ないことから、得られる架橋体が耐熱性に優れるとともに、低温から高温条件での粘着シート剥離時における低分子量体による被着体の汚染を抑えることができる。
【0053】
MwおよびMw/Mnは、例えば、実施例に記載の方法で測定することができる。
粘着剤用組成物中の(メタ)アクリルポリマー(A)の含有量は、粘着剤用組成物100質量%中、通常10〜95質量%である。
【0054】
《重合性二重結合含有モノマー》
重合性二重結合含有モノマーを、例えば、RAFT重合することにより、重合体分子(a)を含む(メタ)アクリルポリマー(A)を得ることができる。重合性二重結合含有モノマーとして、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルおよびカルボキシル基含有モノマーが用いられる。ただし、前記(メタ)アクリル酸エステルからは、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレート等の官能基含有(メタ)アクリレートを除く。
【0055】
そのほか、重合性二重結合含有モノマーとして、カルボキシル基以外の官能基含有モノマーおよびこれら以外の共重合性モノマーから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0056】
<(メタ)アクリル酸エステル>
重合体分子(a)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するために、重合性二重結合含有モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0057】
アルキル(メタ)アクリレートでのアルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、iso−ステアリル(メタ)アクリレート、ジデカ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−エトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0059】
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステルは1種単独で、または2種以上を使用することができる。
(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、全重合性二重結合含有モノマー100質量%に対して、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0062】
RAFT重合法において、ブロック状共重合体構造を形成する場合、例えば重合体(A1−2)〜(A3−2)において、前記A1およびA2それぞれを形成する重合性二重結合含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルから選択された異なる種類のモノマーをそれぞれ含むことが好ましい。
【0063】
<カルボキシル基含有モノマー>
重合体分子(a)が、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を有するために、重合性二重結合含有モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーが用いられる。
【0064】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5−カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。
【0065】
カルボキシル基含有モノマーは1種単独で、または2種以上を使用することができる。
カルボキシル基含有モノマーの使用量は、全重合性二重結合含有モノマー100質量%に対して、通常0.5〜15質量%、好ましくは1〜12質量%、より好ましくは3〜10質量%である。
【0066】
<カルボキシル基以外の官能基含有モノマー>
カルボキシル基以外の官能基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基以外の酸基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素系複素環含有モノマー、シアノ基含有モノマーが挙げられる。カルボキシル基以外の酸基としては、例えば、酸無水物基、リン酸基、硫酸基が挙げられる。
【0067】
カルボキシル基以外の酸基含有モノマーとしては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物基含有モノマー;側鎖にリン酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー等のリン酸基含有モノマー;側鎖に硫酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー等の硫酸基含有モノマーが挙げられる。
【0068】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0070】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。窒素系複素環含有モノマーとしては、例えば、ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタムが挙げられる。シアノ基含有モノマーとしては、例えば、シアノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0071】
官能基含有モノマーは1種単独で、または2種以上を使用することができる。
重合体分子(a)の合成において、カルボキシル基以外の官能基含有モノマーを使用してもよいが、イソシアネート基との反応性が高い水酸基、アミノ基などの官能基を含有するモノマーの共重合体の場合、イソシアネート架橋により、分子の両末端以外の場所が架橋し、自由末端が一定量増加することで、結果として得られた粘着剤層の耐久性が低下することがある。よって耐久性向上の観点からは、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種を有するモノマーの使用量は、全重合性二重結合含有モノマー100質量%に対して、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
重合体分子(a)は、イソシアネート基への反応性を持つ官能基を含有するモノマーに由来する構成単位を有しないことが好ましい。
【0072】
<共重合性モノマー>
共重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレン等のアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨウ化スチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレン等のスチレン系単量体、酢酸ビニルが挙げられる。
共重合性モノマーは1種単独で、または2種以上を使用することができる。
【0073】
《重合開始剤》
RAFT重合は、重合開始剤の存在下に行うことが好ましい。重合開始剤としては、例えば、通常の有機系重合開始剤が挙げられ、具体的には、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの中でも、アゾ化合物が好ましい。
【0074】
アゾ化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス(N,N'−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、2,2'−アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス(2−シアノプロパノール)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0075】
重合開始剤は1種単独で、または2種以上を使用することができる。
重合開始剤の使用量は、重合性二重結合含有モノマー100質量部に対して、通常0.001〜2質量部、好ましくは0.002〜1質量部である。重合開始剤を前記範囲内で使用することにより、(メタ)アクリルポリマー(A)のMwを適切な範囲内に調整することができる。
【0076】
《重合条件》
RAFT重合法での反応温度は、通常60〜120℃、好ましくは70〜110℃であり、通常は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行われる、この反応は常圧、加圧および減圧のいずれの条件で行うこともでき、通常は常圧で行われる。また、反応時間は通常1〜20時間、好ましくは2〜14時間である。重合条件については、例えば、特開2007−230947号公報および特開2011−52057号公報を参照することができる。
【0077】
なお、RAFT重合は、通常は反応溶媒を用いずに反応させるが、必要により反応溶媒を使用してもよい。反応溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上を使用することができる。
【0078】
〈多官能イソシアネート化合物(B)〉
多官能イソシアネート化合物(B)は、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート化合物である。多官能イソシアネート化合物(B)の、1分子中のイソシアネート基数は、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜5である。イソシアネート基数が前記範囲にあると、重合体分子(a)とイソシアネート化合物との架橋反応効率の点、および入手容易性の観点で好ましい。
【0079】
1分子中のイソシアネート基数が2のジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4〜30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の炭素数7〜30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8〜30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0080】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0081】
また、イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基数が2または3以上の上記イソシアネート化合物の、多量体(例えば2量体または3量体、ビウレット体、イソシアヌレート体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート化合物との付加反応生成物)、重合物が挙げられる。前記誘導体における多価アルコールとしては、低分子量多価アルコールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のアルコールが挙げられ;高分子量多価アルコールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
【0082】
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
【0083】
多官能イソシアネート化合物(B)は、1種単独で、または2種以上を使用することができる。
粘着剤用組成物中の多官能イソシアネート化合物(B)の含有量は、(メタ)アクリルポリマー(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜4質量部、より好ましくは1〜3質量部である。化合物(B)の含有量が前記範囲にあると、得られる組成物の凝集性が低下することがなく、また得られる組成物の粘着物性のバランスに優れ、耐久性に優れた粘着剤層を得ることができる。特に化合物(B)を前記下限値以上で使用すると、末端水酸基とイソシアネート基との反応率が向上し、充分に硬化するため粘着性能を発現することができるため好ましい。
【0084】
〈タッキファイヤー(C)〉
本発明の粘着剤用組成物は、タッキファイヤー(C)を含有するため、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材への貼着においても良好な粘着力を発揮する粘着剤層を形成することができる。
【0085】
タッキファイヤー(C)の軟化点は、95℃以上であり、より好ましくは95〜150℃である。タッキファイヤー(C)の軟化点が前記範囲内であると、粘着剤層が適度なタック性を有し、かつ耐熱性に優れるため、高温環境下における耐久性に優れた粘着剤層が得られるため好ましい。前記軟化点は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)によって、23℃から180℃まで毎分5℃の昇温速度で測定することができる。
【0086】
タッキファイヤー(C)としては、例えば、ロジンエステル樹脂等のロジン系化合物;テルペンフェノール樹脂等のテルペン系化合物が挙げられる。
前記ロジンエステル樹脂としては、例えば、不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、重合ロジンエステル樹脂が挙げられる。
【0087】
前記不均化ロジンエステル樹脂としては、例えば、スーパーエステルA−100(荒川化学工業社製、軟化点95〜105℃)、スーパーエステルA−115(荒川化学工業社製、軟化点108〜120℃)、スーパーエステルA−125(荒川化学工業社製、軟化点120〜130℃)が挙げられる。前記水添ロジンエステル樹脂としては、例えば、パインクリスタルKE−604(荒川化学工業社製、軟化点124〜134℃)、パインクリスタルKE−140(荒川化学工業社製、軟化点130〜150℃)が挙げられる。前記重合ロジンエステル樹脂としては、例えば、ペンセルA(荒川化学工業社製、軟化点100℃以上)、ペンセルC(荒川化学工業社製、軟化点117〜127℃)、ペンセルD−125(荒川化学工業社製、軟化点120〜130℃)、ペンセルD−135(荒川化学工業社製、軟化点130〜140℃)、ペンセルD−160(荒川化学工業社製、軟化点150〜165℃)が挙げられる。
【0088】
前記テルペンフェノール樹脂としては、例えば、YSポリスターG150(ヤスハラケミカル社製、軟化点145〜155℃)、YSポリスターG125(ヤスハラケミカル社製、軟化点120〜130℃)、YSポリスターT100(ヤスハラケミカル社製、軟化点95〜105℃)、YSポリスターT115(ヤスハラケミカル社製、軟化点110〜120℃)、YSポリスターT130(ヤスハラケミカル社製、軟化点125〜135℃)、YSポリスターT145(ヤスハラケミカル社製、軟化点140〜150℃)、タマノル80L(荒川化学工業社製、軟化点145〜160℃)、タマノル901(荒川化学工業社製、軟化点120〜135℃)が挙げられる。
これらのタッキファイヤー(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
粘着剤用組成物中のタッキファイヤー(C)の含有量は、(メタ)アクリルポリマー(A)100質量部に対して、通常5〜50質量部、好ましくは8〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部である。タッキファイヤー(C)の含有量が前記範囲にあると、粘着剤層が適度なタック性を有し、オレフィン系低極性素材への粘着力に優れる。
【0090】
〈添加剤〉
本発明の粘着剤用組成物は、上記成分のほか、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶媒、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、前記(C)以外の粘着付与樹脂、可塑剤、消泡剤、充填剤、安定剤、軟化剤、および濡れ性調整剤から選択される1種または2種以上を含有してもよい。
【0091】
有機溶媒としては、RAFT重合の《重合条件》の欄で説明した反応溶媒を用いることができる。例えば、RAFT重合で得られた、(メタ)アクリルポリマー(A)および反応溶媒を含むポリマー溶液と、多官能イソシアネート化合物(B)とタッキファイヤー(C)とを混合して粘着剤用組成物を調製することができる。本発明の粘着剤用組成物において、有機溶媒の含有量は、通常0〜90質量%であり、好ましくは10〜80質量%である。
【0092】
〔粘着剤層〕
本発明の粘着剤層は、上述の粘着剤用組成物を架橋することにより、具体的には(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)を含む(メタ)アクリルポリマー(A)を多官能イソシアネート化合物(B)で架橋することにより得ることができる。このようにして得られる粘着剤層は、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材への貼着においても良好な粘着力を発揮し、かつ高温荷重環境下での秀逸な耐久性を有する。
【0093】
粘着剤層の膜厚は、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
粘着剤層は、偏光板の歪みの抑制、凝集力、接着力、再剥離性の向上の観点から、ゲル分率が、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%、さらに好ましくは40〜70質量%である。
【0094】
粘着剤層の形成条件は、以下のとおりである。例えば、前記組成物を支持体またはセパレーター上に塗布し、通常60〜120℃、好ましくは70〜110℃で、通常1〜5分間、好ましくは2〜4分間乾燥し、塗膜を形成する。
【0095】
粘着剤層は、以下の条件で形成することが好ましい。前記組成物を支持体またはセパレーター上に塗布し、上記条件で形成された塗膜上に支持体またはセパレーターを貼付した後、通常3日以上、好ましくは7〜10日間、通常5〜60℃、好ましくは15〜40℃、通常30〜70%RH、好ましくは40〜70%RHの環境下で養生する。上記のような熟成条件で架橋を行うと、効率よく架橋体(ネットワークポリマー)の形成が可能である。
【0096】
支持体およびセパレーターとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のプラスチック製フィルム;不織布;紙セパレーターが挙げられる。
【0097】
〔粘着シート〕
本発明の粘着シートは、上述の粘着剤用組成物からなる粘着剤層を有する。この粘着シートは、基材を有することが好ましく、粘着剤層上にセパレーターを有していてもよい。粘着シートとしては、例えば、上記粘着剤層のみを有する両面粘着シート、基材と、基材の両面に形成された上記粘着剤層とを有する両面粘着シート、基材と、基材の一方の面に形成された上記粘着剤層を有する片面粘着シート、およびそれら粘着シートの粘着剤層の基材と接していない面にセパレーターが貼付された粘着シートが挙げられる。
【0098】
粘着剤層の膜厚は、通常3〜100μm、好ましくは5〜80μmである。基材およびセパレーターの膜厚は、特に限定されないが、通常10〜100μm、好ましくは25〜50μmである。
【0099】
基材およびセパレーターとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のプラスチック製フィルム;不織布;紙セパレーターが挙げられる。
【0100】
本発明の粘着シートは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材への貼着においても良好な粘着力を発揮し、かつ高温荷重環境下での秀逸な耐久性を有する。
【0101】
したがって、本発明の粘着シートは、広く工業用粘着シートとして使用できるものであるが、特に自動車の内装や電子機器内部に用いられる、不織布両面テープやウレタンフォーム貼り合わせ用両面テープに使用することができる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
実施例における各測定値は、以下の方法により求めた。
【0103】
〔重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)〕
(メタ)アクリルポリマーについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記条件で標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
・測定装置:HLC-8120GPC(東ソー(株)製)
・GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー(株)製)
(1)TSK-GEL HXL-H (ガードカラム)
(2)TSK-GEL G7000HXL
(3)TSK-GEL GMHXL
(4)TSK-GEL GMHXL
(5)TSK-GEL G2500HXL
・サンプル濃度:1.0mg/cm3となるように、テトラヒドロフランで希釈
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0cm3/min
・カラム温度:40℃
【0104】
〔加熱残分測定〕
精秤したブリキシャーレ(質量:n1)に(メタ)アクリルポリマー溶液1gを入れ、合計質量(n2)を精秤した後、105℃で3時間加熱した。その後、当該ブリキシャーレを室温のデシケータ内に1時間静置し、次いで再度精秤し、加熱後の合計質量(n3)を測定した。得られた質量測定値(n1〜n3)を用いて、下記式から加熱残分を算出した。
加熱残分(質量%)=100×[加熱後質量(n3−n1)/加熱前質量(n2−n1)]
【0105】
<アクリルポリマー>
[製造例A1]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、n−ブチルアクリレート44部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、アクリル酸6部、およびビス[4−{エチル−(2−ヒドロキシエチル)アミノカルボニル}−ベンジル]トリチオカーボネート(日本テルペン化学(株)製)(以下「RAFT剤−1」ともいう。)0.1部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を80℃に加熱した。
【0106】
RAFT剤が溶解した事を目視で確認した後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」ともいう。)0.02部を攪拌下にフラスコ内に添加し、フラスコ内の内容物の温度を80℃に維持できるように加熱および冷却を1時間行った。次いで、フラスコ内の内容物の温度を80℃に保ったまま酢酸エチル100部を1時間かけて滴下し、その後もフラスコ内の内容物の温度を80℃に維持できるように加熱および冷却を10時間行い、最後に酢酸エチル20部を添加した。
【0107】
以上のようにして、アクリルポリマー(A1)を含むポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液に含まれるアクリルポリマー(A1)についてGPCにより測定した分子量は、Mw:380,000、Mw/Mn:2.4であった。得られたポリマー溶液の加熱残分は45質量%であった。
【0108】
[製造例A2およびB1〜B4]
製造例A1において、成分組成を表1に記載したとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、アクリルポリマー(A2)および(B1)〜(B4)を含むポリマー溶液を得た。なお、製造例B1では、酢酸エチルは、フラスコ内の内容物の温度を80℃に保ったまま1時間かけて60部滴下し、最後に20部添加した。
表1に記載の各成分は以下に示すとおりである。
BA:n−ブチルアクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
2−HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
AA:アクリル酸
RAFT剤-1:ビス[4−{エチル−(2−ヒドロキシエチル)アミノカルボニル}−ベンジル]トリチオカーボネート
RAFT剤−2:S,S−ジベンジルトリチオカーボネート
【0109】
<粘着剤用組成物および両面粘着シート>
[実施例1]
製造例A1で得られたアクリルポリマー(A1)を含むポリマー溶液と、タッキファイヤーとしてD−125(荒川化学工業社製、軟化点120〜130℃)とを混合した。この混合物に、イソシアネート化合物としてL−45(綜研化学(株)製,トリレンジイソシアネート系架橋剤、1分子中のイソシアネート基数約3)を混合し粘着剤用組成物を得た。なお、アクリルポリマー(A1)100部に対するD−125の配合量が30部、L−45の配合量が2.0部となる割合(いずれも固形分比)で混合した。
【0110】
粘着剤用組成物を、泡抜け後、ドクターブレードを用いて剥離処理された紙セパレーター(EKR−80D)上に乾燥後の厚みが65μmになるように塗工し、80℃の乾燥機で2分間乾燥させて溶剤を除去した。得られた粘着剤塗膜を厚さ38μmの不織布基材の両面に貼り合わせ、23℃、65%RH環境下で7日間エージングして、紙セパレーター/粘着剤層/不織布基材/粘着剤層/紙セパレーターからなる、両側の紙セパレーターを除いた総テープ厚が140μmである両面粘着シートを得た。
【0111】
[実施例2、3および比較例1〜6]
実施例1において、組成成分を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤用組成物および両面粘着シートを得た。
なお、表1に記載のタッキファイヤーは以下に示すとおりである。
D−125:ロジン系タッキファイヤー(荒川化学社製、商品名:ペンセルD−125、軟化点:120〜130℃)
T145:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名:YSポリスターT145、軟化点:140〜150℃)
A−75:ロジン系タッキファイヤー(荒川化学社製、商品名:スーパーエステルA−75、軟化点:70〜80℃)
【0112】
<評価>
〔ゲル分率〕
実施例等で得られた粘着剤層約0.1gをサンプリング瓶に採取し、酢酸エチル30mLを加えて4時間振盪した後、このサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥質量を測定した。次式により、粘着剤層のゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着剤層採取質量)×100(%)
【0113】
〔高温定荷重試験〕
23℃、50%RH条件下で、実施例等で得られた両面粘着シートの一方の紙セパレーターを剥がし、露出した粘着剤層面に厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを裏打ちした。その後、もう一方の紙セパレーターを剥がし、露出した粘着面をポリプロピレン板に2kgのローラーを用いて圧着した。貼付面積は20mm幅×50mmとした。貼付から20分後に、110℃かつ乾燥条件で20分間保温し、その後100gの荷重を粘着剤層面に対して90°方向に鉛直にかけ、60分後のはがれ長さ(mm)を測定した。測定時間内に試験片がポリプロピレン板から落下した場合は、落下までに要した時間を測定した。落下した場合は「落下」と記載した。
【0114】
【表1】