特許第6792591号(P6792591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792591
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】シートベルト用リトラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/40 20060101AFI20201116BHJP
   B60R 22/41 20060101ALI20201116BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20201116BHJP
   B60N 2/22 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   B60R22/40 102
   B60R22/41
   B60N2/42
   !B60N2/22
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-90677(P2018-90677)
(22)【出願日】2018年5月9日
(65)【公開番号】特開2019-196077(P2019-196077A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2019年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新屋 祐介
(72)【発明者】
【氏名】日端 岩太
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−509571(JP,A)
【文献】 特開2000−046857(JP,A)
【文献】 特開2017−128303(JP,A)
【文献】 特開平03−045446(JP,A)
【文献】 米国特許第05660444(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00 − 22/48
B60N 2/42
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトを巻き取るスピンドルと、車両の前後方向における加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサによって検出される加速度に応じてシートベルトの引出動作をロックするロック機構とを備え、車両に設けられるリクライニング式シートのシートバックに取り付けられるシートベルト用リトラクタであって、
前記加速度センサは、前記シートバックと一体的に傾動するセンサカバーと、前記車両の幅方向に沿った軸線を中心として前記センサカバーに対して揺動自在に支持され、前記シートバックの傾動時に前記センサカバーに対して前記車両の前後方向に揺動し、且つ、慣性体支持面を備えたセンサハウジングと、前記慣性体支持面上に支持されて前記加速度が所定値以上となった際に中立位置から変位する慣性体と、該慣性体が前記車両の前後方向に移動した際に連動して前記ロック機構をロック側へ作動させる作動部材と、を有し、
前記センサハウジングは、円弧状に並ぶ複数の歯を有する外歯部を備え、
前記リトラクタは更に、前記スピンドルの軸に摩擦接合により連結されて、前記スピンドルが前記シートベルトを引き出す方向に回転するとき、先端に設けられた係合部が前記外歯部に係合する第1の方向に旋回し、前記スピンドルが前記シートベルトを巻き取る方向に回転するとき、前記係合部が前記外歯部から離間する第2の方向に旋回するレバー部材と、を備え、
前記外歯部の一部には、前記歯が存在しない間欠部が形成されることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記外歯部は、前記センサハウジングの側壁の一部が延設された外周面に形成される請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記外歯部は、前記センサハウジングの前記車両の幅方向の側壁をフランジ状に延設することで形成される請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
前記外歯部は、前記センサハウジングの側壁上に固定されたプレート状部材の外周面に形成される請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項5】
前記外歯部の前記間欠部は、前記シートバックの所定のリクライニング角度に対応した位置に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項6】
前記所定のリクライニング角度は、前記シートバックのリクライニング時に前記シートベルトの引き出しによる引き出しロックが生じるような角度である請求項5に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト用リトラクタに関し、より詳細には、リクライニング式シートのシートバックに取り付けられるシートベルト用リトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるシートベルト装置は、シートバック内のシートベルト用リトラクタから引き出されたシートベルトによって、シートに着座する乗員を拘束して車両衝突時等に乗員を保護するためのものである。シートベルト用リトラクタは、車両衝突時等に水平方向に所定値より大きな加速度が作用すると、この加速度を加速度センサが検出して、シートベルトのロック機構を作動させ、これによりシートベルトを引き出し不能にする。加速度センサに使用される慣性体としては、ボールを使用したものや自立慣性体を使用したものが知られている。
【0003】
リクライニング式シートのシートバックに、この種の加速度センサを備えたシートベルト用リトラクタを装備すると、シートバックのリクライニング角度によって、シートベルト用リトラクタの取付姿勢が変化してしまうため、そのままでは適正に加速度を検出できなくなる。そこで、シートバックのリクライニング角度によらず、適正に加速度を検出できるようにした加速度センサを装備したシートベルトリトラクタが知られている。このような加速度センサでは、たとえば車両に強い制動力が作用すると、シートベルト装置に対して加速度センサが旋回してしまい加速度センサの加速度検出感度が変化する場合がある。
【0004】
特許文献1に記載のシートベルトリトラクタは、車両衝突などによりシートベルトが引き出されると、ベルトシャフトに摩擦接合式に連結された制御レバーを加速度センサに係合させてシートベルト装置に対する加速度センサの姿勢を固定して加速度検出感度を一定に維持する。また、シートベルト巻取り時には、制御レバーと加速度センサとの係合を解除可能としている。
【0005】
特許文献2に記載のシートベルトリトラクタは、シートベルトを巻き取るリールシャフトを有する本体部がシートバックに取り付けられ、慣性体を用いた減速度感知手段を有する別体部がシート部に取り付けられ、本体部のリールシャフトと別体部に設けられたロックギヤとがフレキシブルシャフトアッシにより連結されている。そして、慣性体の作動時には、ロックギヤの回動によりワイヤアッシを介して本体部のリールシャフトがロックされるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−543666号公報
【特許文献2】特開平9−193742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のようなシートベルトリトラクタでは、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングすると、シートベルトが引き出されるため、加速度センサの姿勢が固定されてしまう。これにより、ロック機構が作動してシートベルトがロックされ、シートベルトが乗員を圧迫して不快感を与える虞があり、改善の余地があった。特許文献2に記載のシートベルトリトラクタでは、上記課題は存在しないものの、シートバックに取り付けられた本体部と、シート部に取り付けられた別体部が、フレキシブルシャフトアッシにより連結された複雑な構造となっているため、コスト増大の要因となっていた。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングしても、シートベルトが乗員に与える圧迫感を低減するようにしたシートベルト用リトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) シートベルトを巻き取るスピンドルと、車両の前後方向における加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサによって検出される加速度に応じてシートベルトの引出動作をロックするロック機構とを備え、車両に設けられるリクライニング式シートのシートバックに取り付けられるシートベルト用リトラクタであって、
前記加速度センサは、前記シートバックと一体的に傾動するセンサカバーと、前記車両の幅方向に沿った軸線を中心として前記センサカバーに対して揺動自在に支持され、前記シートバックの傾動時に前記センサカバーに対して前記車両の前後方向に揺動し、且つ、慣性体支持面を備えたセンサハウジングと、前記慣性体支持面上に支持されて前記加速度が所定値以上となった際に中立位置から変位する慣性体と、該慣性体が前記車両の前後方向に移動した際に連動して前記ロック機構をロック側へ作動させる作動部材と、を有し、
前記センサハウジングは、円弧状に並ぶ複数の歯を有する外歯部を備え、
前記リトラクタは更に、前記スピンドルの軸に摩擦接合により連結されて、前記スピンドルが前記シートベルトを引き出す方向に回転するとき、先端に設けられた係合部が前記外歯部に係合する第1の方向に旋回し、前記スピンドルが前記シートベルトを巻き取る方向に回転するとき、前記係合部が前記外歯部から離間する第2の方向に旋回するレバー部材と、を備え、
前記外歯部の一部には、前記歯が存在しない間欠部が形成されることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(2) 前記外歯部は、前記センサハウジングの側壁の一部が延設された外周面に形成される(1)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(3) 前記外歯部は、前記センサハウジングの前記車両の幅方向の側壁をフランジ状に延設することで形成される(2)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(4) 前記外歯部は、前記センサハウジングの側壁上に固定されたプレート状部材の外周面に形成される(1)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(5) 前記外歯部の前記間欠部は、前記シートバックの所定のリクライニング角度に対応した位置に形成されることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のシートベルト用リトラクタ。
(6) 前記所定のリクライニング角度は、前記シートバックのリクライニング時に前記シートベルトの引き出しによる引き出しロックが生じるような角度である(5)に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシートベルト用リトラクタによれば、シートバックの傾動時に車両の前後方向に揺動し、且つ、慣性体支持面を備えた加速度センサのセンサハウジングは、円弧状に並ぶ複数の歯を有する外歯部を備える。そして、スピンドルの軸に摩擦接合により連結されるレバー部材の係合部が、スピンドルがシートベルトを引き出す方向に回転するときに旋回して、外歯部に係合する。さらに、外歯部の一部には、歯が存在しない間欠部が形成されている。これにより、リクライニング時に、シートベルトのロック開始タイミグを遅らせてシートベルトの引き出し量を増やし、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングしても、シートベルトが乗員に与える圧迫感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るシートベルト用リトラクタの分解斜視図である。
図2図1の加速度センサ近傍の構造を示す斜視図である。
図3】加速度センサの要部分解斜視図である。
図4】(a)は、リクライニング式シートのシートバックが11°後傾した基準位置で、乗員がシートベルトを装着した状態にあるシートベルト用リトラクタの側面図、(b)は、シートバックが12°後傾した位置のシートベルト用リトラクタの側面図、(c)は、シートバックが17°後傾した位置のシートベルト用リトラクタの側面図、(d)は、シートバックが25°後傾した位置のシートベルト用リトラクタの側面図である。
図5】(a)は、シートバックが33.2°後傾した位置のシートベルト用リトラクタの側面図、(b)は、シートバックが38°後傾した位置のシートベルト用リトラクタの側面図、(c)は、シートバックが25°後傾した位置でシートベルトが巻き取られたときのシートベルト用リトラクタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るシートベルト用リトラクタを図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本実施形態のシートベルト用リトラクタ10は、不図示のリクライニング式シートのシートバックに装着されて、シートバックと共に車両前後方向に傾動(リクライニング)可能である。
【0014】
図1に示すように、シートベルト用リトラクタ10は、不図示のシートベルトが巻装される金属製(例えば、アルミ合金製)のスピンドル20と、スピンドル20を回転自在に支持する金属製のコ字状のフレーム11と、フレーム11の一方の側板11aの外側に配置され、シートベルトの引き出しを機械的にロックするロック機構40、及び加速度センサ70を備えるセンサ機構60と、フレーム11の他方の側板11bの外側に配置され、スピンドル20をシートベルトの巻き取り方向に回転付勢するバネ式の巻き取り装置30と、を備える。
【0015】
フレーム11の一対の側板11a、11bは、スピンドル20の軸方向の中央部分を挟んで互いに対向する。また、フレーム11の側板11aの円形開口の内周には、後述するロックドッグ41の爪42と噛合する多数の内歯12が形成されている。
【0016】
スピンドル20は、シートベルトが巻回される胴部21と、胴部21から軸方向外側に延出する一対の軸22、23と、を有する。スピンドル20は、一方の軸22が、後述する樹脂製のシステムカバー100の不図示のボスに形成された支持孔に嵌合し、また他方の軸23が、樹脂製のスプリングケース33に形成された支持孔34に嵌合して、回転自在に支持されている。スピンドル20は、回転することでシートベルトを巻き取り、引き出し可能である。
【0017】
また、スピンドル20の一方の端面側には、略3角形状のロックドッグ収容空間24が形成され、該ロックドッグ収容空間24内にロックドッグ41が変位自在に収容されている。
【0018】
巻き取り装置30は、スプリングハウジング31と、帯板状のばね素材を渦巻状に巻いて構成され、スピンドル20を常時、巻き取り方向に付勢する巻き取りばね32と、スプリングハウジング31を軸方向及び径方向から覆うようにして、フレーム11の他方の側板11bに固定されるスプリングケース33と、によって構成される。スプリングケース33の内壁面には、スピンドル20の他端側の軸23を回転自在に支持する支持孔34が形成されている。
【0019】
ロック機構40は、ロック部材としての金属製(例えば、鉄製)のロックドッグ41と、樹脂製のステアリングホイール44と、シートベルトの急激な引き出しを感知してスピンドル20のシートベルト引き出し方向の回転を阻止するWSレバー45及びWSスプリング46と、を備え、フレーム11に固定されるベアリングプレート47によって覆われている。
【0020】
ステアリングホイール44は、スピンドル20に相対回転可能に支持され、スピンドル20に対して回転遅れを生じることによりロックドッグ41を作動する。ステアリングホイール44は、ロックドッグ41のカムピン43が係合するカム孔48と、WSレバー45を揺動自在に支持する凸軸49と、外周面に形成された複数の係止爪50と、を有している。
【0021】
ロックドッグ41は、オメガスプリング25によりスピンドル20に対して反時計回りに付勢されている。したがって、カムピン43がカム孔48に挿入されたロックドッグ41は、爪42が内歯12から離れるロック解除方向に保持される。また、ステアリングホイール44がスピンドル20に対して時計回りに相対的に回転する(実際には、スピンドル20が回転する)時には、カムピン43がカム孔48に沿って作動し、爪42を径方向外方に進出させる。そして、径方向外方に進出した爪42を、フレーム11の内歯12に噛み合わせることにより、スピンドル20をフレーム11の内歯12にロックさせ、シートベルト引き出し方向の回転を機械的にロックする。
【0022】
WSレバー45は、慣性体としての機能も併せ持つように金属製で構成されており、ベアリングプレート47の内面に形成された不図示の内歯に係合可能な爪51を備え、ステアリングホイール44の凸軸49に嵌合する。WSレバー45には、WSスプリング46が装着されて爪51を内方に退避させる方向(ベアリングプレート47の内歯から離間する方向)に回転付勢している。従って、通常時には、爪51がベアリングプレート47の内歯と係合しない非作動位置に保持される。
【0023】
これにより、乗員の急な移動によりシートベルトが引き出されると、WSレバー45が慣性力によって回動し、WSレバー45の爪51が外方に突き出されて、ベアリングプレート47の内歯に噛合する。したがって、ステアリングホイール44のシートベルト引き出し方向の回転を阻止する。
【0024】
ベアリングプレート47の下方には、センサ機構60を構成する加速度センサ70が配設されている。図2及び図3も参照して、加速度センサ70は、ベアリングプレート47に固定されたセンサカバー71と、センサハウジング72と、センサハウジング72に収容される慣性体であるCSボール73と、作動部材である第1センサレバー74及び第2センサレバー75と、センサハウジング72に固定されたセンサウェイト76と、を備える。
【0025】
センサハウジング72は、車両の前後方向及び幅方向の側面が側壁で囲まれ、底部にすり鉢状凹面である慣性体支持面78が設けられ(図4(a)参照)、上方が開放された略椀型に形成されている。センサハウジング72は、車両の幅方向の側壁72a,72bからスピンドル20の軸22と平行に突出する一対のピン77(図3では一方のピンのみ図示)を備え、センサカバー71に旋回可能に支承されている。
【0026】
また、センサハウジング72に設けられた一対の割ピン72cは、センサウェイト76の一対の孔76aに挿通されてセンサウェイト76をセンサハウジング72に固定する。これにより、センサハウジング72は、センサウェイト76に作用する重力によって、一対のピン77を中心として回動して常に垂直方向に維持される。
【0027】
センサハウジング72の底部には、CSボール73を支持するすり鉢状凹面である慣性体支持面78が設けられている。そして、慣性体支持面78上に載置されたCSボール73が所定以上の水平方向の加速度を受けると、CSボール73が中立位置から変位して車両、即ち、シートベルトリトラクタ10に作用する加速度を検知する。
【0028】
また、センサハウジング72から上方に突出して設けられた一対の腕部79(図3では一方の腕部のみ図示)には、第1センサレバー74の基端部に形成された軸部74aが回動自在に嵌合する。第1センサレバー74の先端側には、CSボール73の上面に被さる椀部74bが設けられている。
【0029】
第2センサレバー75は、基端部に形成された支持孔75aと、先端部に形成された係合爪75bと、それらの中間部から横方向(車両幅方向)に突設された係止片75cとを備える。第2センサレバー75は、センサカバー71から上方に突出する腕部71aに設けられた支持ピン71bに支持孔75aが挿入されて回動自在に支持されている(図1参照)。第2センサレバー75は、第1センサレバー74の椀部74bの上面に当接している。
【0030】
そして、加速度によってCSボール73が中立位置から変位すると、第1センサレバー74が軸部74aを中心として回動し、椀部74bに当接する第2センサレバー75を押し上げて係合爪75bがステアリングホイール44の係止爪50に係合してステアリングホイール44の回転を停止させる。
【0031】
これにより、ロックドッグ41が作動して、フレーム11の一方の側板11aに設けられた内歯12に係合してシートベルトの引き出しを阻止して乗員を保護する。即ち、第1センサレバー74、及び第2センサレバー75は、ステアリングホイール44、ロックドッグ41、及びフレーム11の内歯12で構成されるロック機構40を作動させる作動部材を構成する。
【0032】
センサハウジング72の一方の側壁72aは、外方(図3において、左上方)に向かって扇形のフランジ状に延設され、ピン77を中心とする円弧状外周面には、外歯部84が形成されている。外歯部84は、周方向両端部に形成された複数の外歯81,82と、該外歯81,82の間に形成された間欠部83とを備える。
【0033】
間欠部83は、外歯81,82を備えておらず、不図示のリクライニング式シートのシートバックの傾斜角度に対応した位置、例えば、シートベルト用リトラクタ10の基準取り付け角度と、該基準取り付け角度から6°後傾した角度に対応した位置に形成されている。
【0034】
一方、図1及び図2を参照して、ベアリングプレート47から軸方向外側に突出するスピンドル20の軸22には、センターハブ85が一体回転可能に固定されている。センターハブ85は、軸方向に並んで形成されたギヤ85aと円筒部85bを備える。センターハブ85のギヤ85aは、第1ギヤ86、第2ギヤ87、及びカムディスク88と共にギヤ列を構成する。
【0035】
カムディスク88は、該ギヤ列のギヤ比に従って軸22の回転が減速されて回転する。カムディスク88の外周面には、第2センサレバー75の係止片75cに対向してカム部88aが形成されている。カム部88aは、カムディスク88の回転中心からの半径が小さなカム面88bと、カムディスク88の回転中心からの半径が大きなカム面88cとが、連続して形成されている。
【0036】
カムディスク88の回転によりカム面88bが第2センサレバー75の係止片75cに対向して位置したとき、カム面88bと第2センサレバー75の係止片75cとの間には所定の隙間を有している。従って、第2センサレバー75は支持孔75aを中心に回動自在であり、加速度センサ70による加速度検出が可能である。
【0037】
また、カムディスク88の回転によりカム面88cが第2センサレバー75の係止片75cに対向して位置したとき、カム面88cは第2センサレバー75の係止片75cに当接して第2センサレバー75の回動を阻止する。
【0038】
カム面88bとカム面88cとの切り替え位置、即ち、カム面88cが第2センサレバー75の係止片75cに当接を開始する位置は、無着座でバックルがタング(いずれも図示せず)にラッチされた状態(空ラッチ状態)から全量のシートベルトがスピンドルに巻き取られた状態(シートベルト格納状態)となる間に切り換わるように設定されている。
【0039】
これにより、カム面88cが第2センサレバー75の係止片75cに対向して位置するとき、加速度センサ70に水平方向の加速度が作用しても第2センサレバー75は作動せず、第2センサレバー75の意図しない作動による加速度センサ70のエンドロックを防止する。
【0040】
図2も参照して、センターハブ85の円筒部85bには、レバー部材90の基部91が摺動自在に嵌合する。基部91からは径方向外方に腕部93が延設され、腕部93の先端部には係合部92が一体に成形されている。
【0041】
基部91は、側面視において、周方向の一部が切欠かれた略C形に形成されると共に、切欠きの反対側には、径方向に延びる切欠き溝91aが設けられている。これにより、基部91は、径方向に弾性変形(縮径)可能である。
【0042】
基部91の外周面に形成された不図示の円環溝には、摩擦スプリング94が装着されている。これにより、基部91が摩擦スプリング94の弾性力により縮径し、センターハブ85の円筒部85bと基部91とが摩擦力により結合される。該摩擦力の大きさは、摩擦スプリング94の弾性力に略比例する。
【0043】
スピンドル20と共にセンターハブ85が回転すると、レバー部材90は、センターハブ85の円筒部85bと基部91との摩擦力により一体回転する。より具体的には、伝達トルクが、センターハブ85の円筒部85bと基部91との摩擦力によるトルクより小さい場合には、センターハブ85と基部91とは一体回転する。また、伝達トルクが、センターハブ85の円筒部85bと基部91との摩擦力によるトルクより大きい場合には、センターハブ85と基部91とは摩擦力に抗して摺動して相対回転する。なお、ベアリングプレート47の外側面には、レバー部材90の時計方向の回転を制限するためのストッパ47aが一体成型されている。
【0044】
即ち、レバー部材90は、摩擦スプリング94の作用により、スピンドル20の軸22の回動に伴って軸22と同じ方向に回動する。具体的には、スピンドル20がシートベルトを引き出す方向に回転すると、レバー部材90は、摩擦スプリング94の摩擦作用により係合部92が外歯部84に係合する第1の方向(図2において反時計方向)に旋回し、スピンドル20がシートベルトを巻き取る方向に回転すると、係合部92が外歯部84から離間する第2の方向(図2において時計方向)に旋回する。
【0045】
次に、図4及び図5を参照して本実施形態のシートベルト用リトラクタの作用を説明する。なお、以下では、乗員がシートベルトを装着した状態で、リクライニング式シートのシートバックを後傾する場合について説明する。
【0046】
図4(a)に示すように、リクライニング式シートのシートバック、即ちシートベルト用リトラクタ10が、例えば鉛直方向に対して11°後傾した基準位置にあるとき、レバー部材90は、係合部92が外歯部84(外歯81,82及び間欠部83)から離間した非係合位置にある。即ち、加速度センサ70のセンサハウジング72は、センサウェイト76に作用する重力によって、垂直方向を向いてその姿勢が維持される。
【0047】
ここで、図4(b)に示すように、リクライニング式シートのシートバックが後傾(図において時計方向回転)を開始してシートベルト用リトラクタ10が、例えば12°後傾すると、シートベルトが引き出されてスピンドル20が反時計方向に回転し、摩擦スプリング94の作用によりスピンドル20の軸22に摩擦結合するレバー部材90が反時計方向に回転する。
【0048】
これにより、レバー部材90の係合部92が第1の方向(図4において反時計方向)に旋回し、レバー部材90の係合部92が、間欠部83の外歯81側の位置に当接する。この時、センサハウジング72は、レバー部材90の係合部92により係止されておらず、センサウェイト76に作用する重力によって、垂直方向の姿勢が維持される。
【0049】
さらに、図4(c)に示すように、センサハウジング72の垂直方向の姿勢が維持されたまま、シートベルト用リトラクタ10が、例えば17°後傾すると、センサハウジング72とシートベルト用リトラクタ10との相対回転により、レバー部材90の係合部92が、間欠部83内で外歯82の方向に相対的に移動し、間欠部83の外歯82側の端面82aに当接する。この時点でも、センサハウジング72はレバー部材90によって係止されておらず、垂直方向の姿勢を維持する。
【0050】
さらに、図4(d)に示すように、シートベルト用リトラクタ10が、例えば25°後傾すると、レバー部材90の係合部92が、外歯部84の間欠部83の外歯82側の端面82aに当接しているので、シートベルト用リトラクタ10の回転(シートバックの後傾)に伴って加速度センサ70のセンサハウジング72が時計方向に回転を開始する。図4(d)は、加速度センサ70が垂直方向に対して8°(25°−17°)傾いた状態を示す。
【0051】
更に、図5(a)に示すように、シートベルト用リトラクタ10が、例えば33.2°後傾すると、さらにセンサハウジング72が時計方向に回転し、慣性体支持面78が傾くことで慣性体支持面78に支持されていたCSボール73が、図中右方向に移動する。そして、第1センサレバー74がCSボール73によって押し上げられ、軸部74aを中心として反時計方向に回動する。
【0052】
第1センサレバー74は、椀部74bに当接する第2センサレバー75を支持孔75aを中心として時計方向に回動させ、係合爪75bがステアリングホイール44の係止爪50に係合してステアリングホイール44の回転が停止する。
【0053】
図5(b)に示すように、さらにシートベルト用リトラクタ10が、例えば38°後傾すると、ロックドッグ41が、フレーム11の一方の側板11aに設けられた内歯12に係合してシートベルトの引き出しを阻止する。
【0054】
また、図5(c)に示すように、シートベルト用リトラクタ10が、例えば25°後傾した位置にあるとき、スピンドル20がシートベルトを巻き取る方向(時計方向)に回転すると、摩擦スプリング94の作用によりスピンドルの軸22に摩擦結合するレバー部材90も時計方向に回転してレバー部材90の係合部92と、センサハウジング72の外歯部84との係止が解除される。これにより、センサハウジング72は、センサウェイト76に作用する重力によって、センサハウジング72が垂直方向を向く位置まで反時計方向に回転して元の状態に戻る。
【0055】
なお、上記したスピンドル20の時計方向回転によるレバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84との係止解除作用は、25°後傾位置に限定されず、任意の後傾位置でも同様に作用する。
【0056】
このとき、レバー部材90の係合部92は、センサハウジング72の外歯82に対向する非係合位置にあるので、シートベルトが引き出されてスピンドル20が反時計方向に回転すると、直ちに、レバー部材90の係合部92がセンサハウジング72の外歯82に係合する。
【0057】
そして、さらにシートベルト用リトラクタ10が後傾すると、CSボール73が水平方向に移動し、第1センサレバー74及び第2センサレバー75が回動して、係合爪75bがステアリングホイール44の係止爪50に係合する。そして、ロックドッグ41がフレーム11の一方の側板11aに設けられた内歯12に係合して、ロック遅れなくシートベルトがロックされて引き出しを阻止する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ10によれば、慣性体支持面78を備えるセンサハウジング72に外歯部84に設ける。そして、スピンドル20の軸22に摩擦接合により連結されるレバー部材90の係合部92が、スピンドル20がシートベルトを引き出す方向に回転するときに旋回して、外歯部84に係合する。さらに、外歯部84の一部には、歯が存在しない間欠部83が形成されている。これにより、リクライニング式シートのシートバックが後傾する際、レバー部材90の係合部92とセンサハウジング72の外歯部84との係合のタイミング、即ち、シートベルトのロック開始タイミグを遅らせて、シートベルトの引出し量を増やし、乗員がシートベルトを装着した状態でリクライニングしても、シートベルトが乗員に与える圧迫感を低減することができる。
【0059】
外歯部84は、センサハウジングの側壁の一部が延設された外周面に形成されるので、部品点数を増加することなく、外歯部84を有するセンサハウジング72を安価に製作できる。
【0060】
また、外歯部84は、センサハウジング72の車両の幅方向の側壁72aをフランジ状に延設することで形成されるので、レバー部材90の係合部92と係合可能な外歯部84を有するセンサハウジング72を安価に製作できる。
【0061】
また、外歯部84の間欠部83は、シートバックの所定のリクライニング角度に対応した位置に形成されるので、間欠部83の位置を適宜設定することで、シートベルトのロック開始タイミグを任意に設定することができる。即ち、この所定のリクライニング角度とは、シートバックのリクライニング時にシートベルトの引き出しによる引き出しロックが生じるような角度であることが好ましい。
【0062】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、外歯部は、上記実施形態の様に、側壁の一部としてセンサハウジング自体に形成されても良いが、プレート状部材をセンサハウジングの側壁上に固定してそのプレート状部材の外周部に形成されていても良い。即ち、外歯部はセンサハウジングと一体的に設けられるものであるが、それが別部材で作られてセンサハウジングに取り付けられても良いし、センサハウジングの一部(側壁)がそれを有するように構成されても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 シートベルト用リトラクタ
70 加速度センサ
71 センサカバー
72 センサハウジング
72a 側壁
73 CSボール(慣性体)
74 第1センサレバー(作動部材)
75 第2センサレバー(作動部材)
78 慣性体支持面
81,82 外歯
83 間欠部
84 外歯部
90 レバー部材
92 係合部
図1
図2
図3
図4
図5