【課題を解決するための手段】
【0008】
全ての請求項における参照符号は、制限するためのものではなく、むしろ、単に請求項の明瞭さを改良することを意図するものである。
【0009】
上記の目的は、モジュール受容フレーム内に挿入されたモジュールをモジュール受容フレームに固定し、モジュールをモジュール受容フレームから取外しのために離脱させるための機構によって達成される。本発明による機構は、モジュール又はモジュール受容フレームに配置されたキャッチであって、開位置と係止位置との間で往復移動するようになっている、キャッチを備えている。キャッチを2つの位置の1つ、すなわち、開位置又は係止位置に付勢するためのバネが更に設けられている。
【0010】
機構は、キャッチホルダーを更に備えている。キャッチホルダーは、該キャッチホルダーがキャッチをバネの付勢に抗して保持する保持位置と、該キャッチホルダーがキャッチをバネの付勢に抗して保持しない離脱位置との間で往復移動するようになっているとよい。キャッチホルダーは、保持位置及び離脱位置のいずれもがキャッチホルダーの中立位置であるように、構成され且つ配置されている。
【0011】
本発明の目的から、「固定(securing)」という用語は、モジュールが固定後に機構を作動させることなくモジュール受容フレームから取り出されないことを意味している。本発明の目的から、「係止位置(locking position)」という用語は、モジュールがモジュールフレームのキャッチによって固定された時のキャッチの位置を指している。対照的に、本発明の目的から、「開位置(open position)」という用語は、モジュールがモジュールフレームのキャッチによって固定されない状態にある時のキャッチの位置を指している。
【0012】
本発明の目的から、「モジュール受容フレーム(module receiving frame)は、その内部に1つ又は複数のモジュールが挿入され且つ固定されると共に該内部から離脱され且つ取り出されるようなフレームである。モジュール受容フレームは、必ずしも閉鎖されている必要がなく、むしろ、1つ又は複数の開側面又は開部分を備えていてもよい。
【0013】
本発明の目的から、機構が外部から作動されない場合、もしキャッチホルダーが機構の構成及び配置に起因し、もはや保持位置又は離脱位置から2つの位置の他の1つ、すなわち、離脱位置又は保持位置に移動しないなら、保持位置及び離脱位置は、いずれも中立位置(neutral position)にある。
【0014】
キャッチホルダーが離脱位置及び保持位置を有しているので、有利には、実施形態によればキャッチを開位置に固定又は静止させ、これによって、ユーザーがモジュールを都合よくモジュール受容フレーム内に挿入することができる。特に、ユーザーは、モジュールをモジュール受容フレーム内に挿入するために、キャッチを開位置に保持するために常にキャッチをバネ力に抗して作動させねばならない不便さを回避することができる。更に、本発明によれば、有利には、ユーザーは、実施形態によればキャッチホルダーを保持位置から離脱位置に又は離脱位置から保持位置に移動させることによって、(好ましくはバネによって又は好ましくはバネ力に抗して)キャッチを開位置から係止位置に移動させ、これによって、モジュールをモジュール受容フレーム内に固定することができる。
【0015】
更に、本発明の目的は、前述の機構を有するモジュール受容フレームによって達成される。これは、有利には、モジュール受容フレームが一般的にモジュールよりも大きい機構設置空間を有するという事実を利用している。更に、互いに代替物として使用可能なモジュールの数がフレーム内のモジュールに対して利用可能な空間の数よりも著しく多い場合、機構をモジュール受容フレームに設ける方がより経済的である。
【0016】
しかし、本発明の目的は、前述の機構を有するモジュールによっても達成される。寸法が種々異なるモジュール、特に、モジュール受容フレーム内に固定される点における幅が種々異なるモジュールがモジュール受容フレーム内に受容されることが意図される時、特に、モジュールへの機構の設置が利用されるとよい。機構がモジュールに配置されるので、有利には、機構の位置がモジュール受容フレームによって予め決定されないことが確実になる
【0017】
また、上記の目的は、機構とモジュール又はモジュール受容フレームとからなるシステムによって達成される。このようなシステムでは、機構、モジュール、及びモジュール受容フレームは、摩擦を生じない操作を行えるように互いに適合されるとよい。
【0018】
最後に、この目的は、マスインターコネクト用のレシーバ又は交換可能なテストアダプタであって、前述のシステムを備えるレシーバ又は交換可能なテストアダプタによって達成される。マスインターコネクタのレシーバ又は交換可能なテストアダプタは、多くの場合、測定要件に応じて定期的に交換されねばならないモジュールを含んでいる。従って、本発明は、このような使用例において特に有利である。
【0019】
本発明の目的から、「マスインターコネクト(mass interconnect)」は、1つ又は複数のテスト器具を1つ又は複数のテスト対象物に接続するためのコネクタインターフェイスである(これに関連して、テスト対象物は、「被テストデバイス(Device Under Test (DUT))又は被テストユニット(Unit Under Test (UUT))として知られる)。好ましいマスインターコネクトは、マスインターコネクト及び1つ又は複数のテスト器具を備える(ATEとしても知られる)自動テスト機器の一部である。ATEは、テスト器具を制御するための1つ又は複数のPC(パーソナルコンピュータ)も備えているとよい。好ましくは、1つ又は複数のテスト器具は、1つ又は複数の以下の規格:すなわち、PXI(計装用PCI拡張)、VXI(計装用VME拡張)、LXI(計装用LAN拡張)、GPIB(一般目的インターフェスバス)、SCXI(計装用信号調整拡張)、PCI(周辺コンポーネントインターコネクト)に準じるものである。
【0020】
本発明の目的から、レシーバは、マスインターコネクトの構成要素であり、交換可能なテストアダプタ(又はITA)に接続され、テストアダプタをテスト器具に接続するようになっている。本発明の目的から、「交換可能なテストアダプタ(interchangeable test adapter)」は、マスインターコネクトの構成要素であり、一方ではレシーバに交換可能に接続され、他方では(交換可能なテストアダプタ上において概して交換可能な)実テスト対象物と交換可能に接続され、これによって、テスト対象物を交換可能なテストアダプタ及びレシーバを介してテスト器具に接続するようになっている。
【0021】
従属請求項の主題及び以下の説明は、個別に又は互いに組み合わせて用いられる有利な展開及びさらなる展開によって構成されている。
【0022】
好ましい機構のバネは、板バネとして構成されている。この板バネは、必ずしも平坦でなくてもよく、むしろ、例えば、S字状又はC字状に湾曲していてもよい。バネは、好ましくは、金属、特に好ましくは、バネ鋼から作製されている。従って、好ましい板バネは、バネ金属シートである。しかし、本発明は、他の材料、例えば、弾性プラスチック材料又はゴムから作製されたバネ及び板バネの実施形態も含んでいる。従って、本発明の目的から、例えば、キャッチを2つの位置の1つ(開位置又は係止位置)に付勢する弾性的に圧縮可能なゴム片もバネと見なされる。また、バネは、渦巻バネ又は螺旋バネの形態にあってもよい。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態では、バネは、キャッチとの一体片として具体化されている。本発明のこの実施形態によって達成される1つの利点は、機構の構成要素の数が減ることにある。キャッチ及びバネのこの組合せがプレート、特に好ましくは、金属シートから形成され、プレート又はシートの一部がキャッチを構成し、他の一部がバネを構成すると、特に好ましい。バネ及びキャッチの組合せ、すなわち、バネ及びキャッチを形成するプレート又は金属シートが、モジュール又はモジュール受容フレームに固定されるさらなる部分を追加的に構成すると、特に好ましい。
【0024】
好ましいキャッチは、少なくとも1つ、特に好ましくは、2つのタブを備えている。キャッチは、これらのタブによって、キャッチが配置されない2つの構成要素の一方(モジュール又はモジュールフレーム)に配置された相手側キャッチと相互作用し、これによって、モジュールをモジュール受容フレームに固定することになる。相手側キャッチは、好ましくは、キャッチが配置されない機構の2つの構成要素の一方(モジュール又はモジュールフレーム)に固定して設けられるとよい。
【0025】
好ましいキャッチホルダーは、離脱位置から係止位置へのキャッチホールダーの移動がキャッチをバネの付勢に抗して2つの位置の1つ(開位置又は係止位置)に移動させるように、機構内において構成され且つ配置されている。特に好ましくは、キャッチホルダーは、その離脱位置からその保持位置への移動によって、キャッチを開位置から係止位置に移動させるようになっている。しかし、本発明は、キャッチホルダーが、離脱位置から保持位置への移動によって、キャッチを係止位置から開位置に移動させる実施形態も含んでいる。好ましいキャッチホルダーは、係止位置から離脱位置へのキャッチホルダーの移動がキャッチを離脱させ、これによって、キャッチがバネの力によって2つの位置の1つ(係止位置又は開位置)に移動するように、機構内においてさらに構成され且つ配置されている。特に好ましくは、キャッチは、キャッチホルダの保持位置から離脱位置への移動に起因し、バネの力によってその係止位置からその開位置に移動するようになっている。しかし、本発明は、キャッチが、キャッチホルダーの保持位置から離脱位置への移動に起因し、バネの力によってその開位置からその係止位置に移動する実施形態も含んでいる。本発明のこれらの実施形態によれば、有利には、キャッチの開位置から係止位置への移動及びキャッチの係止位置から開位置への移動のいずれもがキャッチホルダーの移動しか必要としないことを確実なものとすることができる。
【0026】
キャッチホルダーは、好ましくは、回転可能に構成されている。これによって、有利には、キャッチホルダーを回転のみによって保持位置から離脱位置に及びその逆に離脱位置から保持位置に移行させることを確実なものとすることができる。回転軸は、好ましくは、開位置と係止位置との間のキャッチホルダーの移動経路と直交している。キャッチホルダーは、好ましくは、係止位置においてキャッチに作用する。この場合、キャッチホルダーの回転軸と直交する接線は、特に好ましくは、係止位置、すなわち、キャッチホルダーがキャッチに作用する点において、キャッチがバネの付勢によってキャッチホルダーに加える力の方向と直交する方向に延びている。これによって、係止位置において、キャッチは、回転方向におけるどのような力成分もキャッチホルダーに加えないことを確実なものとすることができる。これは、係止位置が中立位置であることを裏付けることになる。
【0027】
回転可能なキャッチホルダーを有する好ましい機構の場合、保持位置及び離脱位置は、280°未満の角度、特に好ましくは、100°未満の角度だけ互いに離間している。回転可能なキャッチホルダーを有する好ましい機構の場合、保持位置及び離脱位置は、80°を超える角度、例えば、80°から100°の角度だけ互いに離間している。ここに述べる全ての角度は、360°の全円に基づいている。
【0028】
好ましいキャッチホルダーは、偏心体から構成されている。これによって、キャッチをバネの力に抗して係止位置に保持するために、有利には、偏心体の回転軸から遠い部分がキャッチに作用するとよい。この場合、好ましくは、偏心体は、その拡張位置において、すなわち、その高い位置において、キャッチをバネの力に抗して係止位置に保持するとよい。
【0029】
キャッチホルダーは、例えば、偏心ヘッドを有するネジ又はボルトとして構成されているとよい。ネジ又はボルトがモジュール又はモジュール受容フレームの孔に回転可能に取り付けられると、特に好ましい。キャッチホルダーがネジとして構成される場合、該孔は、好ましくは、ネジのネジ山と螺合する雌ネジ山を備えているとよい。
【0030】
本発明の一実施形態では、機構は、キャッチホルダの移動を拘束するために1つ又は複数の制限ストッパを備えている。特に好ましくは、1つの制限ストッパは、離脱位置から保持位置への経路においてキャッチホルダが保持位置を超えて移動することが阻止されるように、配置されるとよい。本発明のこの実施形態では、ユーザーがキャッチホルダーを保持位置に移行させることが確実になるので有利である。加えて又は代替的に、1つの制限ストッパは、特に好ましくは、キャッチホルダーが保持位置から離脱位置への経路において離脱位置を超えて移動することが阻止されるように、配置されるとよい。本発明のこの実施形態では、有利には、ユーザーがキャッチホルダーを離脱位置に移行させることが確実になる。
【0031】
好ましい機構は、1つ又は複数の戻り止め位置へのキャッチの離脱可能なスナップ留めのための戻り止め手段を備えている。本明細書における「離脱可能なスナップ留め(releasable snapping-in)」という用語は、戻り止め手段がキャッチホルダーを戻り止め位置の外に移動させるために打ち勝たねばならない機械的な抵抗をもたらすことを意味している。回転可能なキャッチホルダーの場合、この抵抗は、好ましくは、回転軸を中心とする回転方向における抵抗である。好ましい戻り止め位置は、キャッチホルダーの保持位置と一致する。追加的な又は代替的な好ましい戻り止め位置は、キャッチホルダーの離脱位置と一致する。
【0032】
戻り止め手段は、例えば、キャッチの一部における(モジュール又はモジュール受容フレームの方を向く)ラグ又は凹部と、モジュール又はモジュール受容フレームにおける(ラグ又は凹部と相補的に相互作用する)凹部又はラグによって形成されるとよい。ここでは、キャッチは、好ましくは、打ち勝つために必要な抵抗をもたらす戻り止めバネ(例えば、スプリットロックワッシャー又は螺旋バネ)によって、モジュール又はモジュールフレームに向かって付勢されるようになっている。例示的な一実施形態では、キャッチホルダーは、ボルトとして具体化され、このボルトは、モジュール受容フレーム又はモジュールの貫通孔内において回転可能であると共にその長軸に沿って移動可能となるように、取り付けられるようになっている。このボルトは、片側に偏心ヘッドを備えている。一方、戻り止めバネが、モジュール受容フレーム又はモジュールの貫通孔の偏心ヘッドから離れる側に配置されている。戻り止めバネの一方の側は、モジュールフレーム又はモジュールに固定され、他方の側は、ボルトの偏心ヘッドから離れる方の端に固定され、これによって、偏心ヘッドをモジュール又はモジュールフレームに付勢するようになっている。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態では、バネは、キャッチを開位置に付勢し、キャッチホルダーは、その保持位置においてキャッチをその係止位置に保持するようになっており、これによって、本発明による機構の特に簡単な設計が有利に達成されることになる。この設計では、キャッチホルダーは、(もし機構がモジュール受容フレームに配置されるなら)モジュールから遠いキャッチの側に配置され、(もし機構がモジュールに配置されるなら)モジュール受容フレームから遠いキャッチの側に配置され、キャッチの係止位置は、開位置と比較して、モジュール又はモジュールフレームに向かってより遠くに配置されることになる。代替的に、キャッチホルダーは、キャッチを係止位置に付勢してもよい。この場合、キャッチホルダーは、その保持位置において、キャッチをその開位置に保持することになる。
【0034】
機構は、好ましくは、モジュール受容フレーム又はモジュールのいずれかに配置されるようになっている。しかし、本発明は、機構の構成要素の一部がモジュール受容フレームに配置され、他の一部がモジュールに配置される実施形態も含んでいる。後者の形式の好ましい一実施形態では、キャッチ及びバネが2つの構成要素の一方(モジュール受容フレーム又はモジュール)に配置され、キャッチホルダーがこれらの2つの構成要素の他方に配置されるようになっている。
【0035】
好ましいモジュール受容フレームは、モジュールの位置決め孔又は位置決めピンと相互作用することができる位置決めピン又は位置決め孔を備えている。これによって、有利には、ユーザーは、意図された位置において、モジュールをモジュール受容フレーム内に簡単に挿入することができる。1つ又は複数の位置決めピンは、特に好ましくは、モジュール又はモジュールフレームにねじ込まれるようになっている。ねじ込まれる1つ又は複数の位置決めピンが、バネ又はバネとキャッチとの一体組合せを同時にモジュール又はモジュールフレームに固定するようになっていると、特に好ましい。
【0036】
好ましいモジュール受容フレームは、2つ以上のモジュール、例えば、4つ以上のモジュール、8つ以上のモジュール、又は12個以上のモジュール用の空間を有している。好ましい1つのモジュール受容フレームは、本発明による2つ以上の機構、例えば、8つ以上の機構、16個以上の機構、又は32個以上の機構を備えている。モジュール受容フレームは、特に好ましくは、モジュール受容フレームの2つの対向するバー上に、特に好ましくは、受容可能なモジュールごとに2つの機構を備えており、これによって、モジュールの信頼性の高い固定を有利に達成することができる。複数の機構の設置によって、有利には、複数のモジュールをモジュール受容フレーム内に互いに独立して固定し、又は互いに独立して離脱させることができ、これによって、特にモジュールをモジュール受容フレーム内に互いに独立して挿入し、又はモジュール受容フレームから互いに独立して取り出すことができる。好ましいモジュール受容フレームは、マスインターコネクトのレシーバ又は交換可能なテストアダプタの一部である。
【0037】
もしモジュールが本発明による機構を備えているなら、該モジュールは、好ましくは、マスインターコネクトのレシーバ又は交換可能なテストアダプタのモジュール受容フレーム内に受容可能である。好ましいモジュールは、モジュール受容フレームの位置決め孔又は位置決めピンと相互作用する位置決めピン又は位置決め孔を備えており、これによって、ユーザーは、モジュールを意図された位置においてモジュール受容フレーム内に簡単に挿入することができる。1つ又は複数の位置決めピンは、特に好ましくは、モジュールにねじ込まれるようになっている。ねじ込まれる1つ又は複数の位置決めピンが、バネ又はバネとキャッチとの一体組合せを同時にモジュール又はモジュールフレームに固定するようになっていると、特に好ましい。
【0038】
本発明による好ましいレシーバは、少なくとも1つ、好ましくは、複数の交換可能なモジュールを受容するためのモジュール受容フレームを備えており、交換可能なモジュールは、各々、交換可能なテストアダプタの1つ又は複数の相手側コネクタに接続されるコネクタを備えている。相手側コネクタは、好ましくは、交換可能なテストアダプタのモジュールの一部であり、各モジュールは、特に好ましくは、意図されたように操作された時、交換可能なテストアダプタのモジュールの相手側コネクタがレシーバ内に受容されたモジュールの対応するコネクタに接続されるように、レシーバ内に受容されたモジュールに対応するようになっている。同じように、好ましい交換可能なテストアダプタは、少なくとも1つ、好ましくは、複数の交換可能なモジュールを受容するためのモジュール受容フレームを備えており、交換可能なモジュールは、各々、レシーバの1つ又は複数のコネクタに接続される相手側コネクタを備えている。
【0039】
以下、図面に概略的に示される多数の例示的な実施形態を参照して、更に有利な構成について詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施形態に制限されるものではない。