(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792618
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】高強度6XXXアルミニウム合金及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/06 20060101AFI20201116BHJP
C22C 21/12 20060101ALI20201116BHJP
C22F 1/057 20060101ALI20201116BHJP
C22F 1/05 20060101ALI20201116BHJP
C22C 21/02 20060101ALI20201116BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
C22C21/06
C22C21/12
C22F1/057
C22F1/05
C22C21/02
!C22F1/00 602
!C22F1/00 612
!C22F1/00 623
!C22F1/00 630A
!C22F1/00 630G
!C22F1/00 630K
!C22F1/00 631A
!C22F1/00 640A
!C22F1/00 661C
!C22F1/00 682
!C22F1/00 683
!C22F1/00 685Z
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 691C
!C22F1/00 694A
!C22F1/00 694B
【請求項の数】51
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-528563(P2018-528563)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-501288(P2019-501288A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】US2016067209
(87)【国際公開番号】WO2017106665
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年6月1日
(31)【優先権主張番号】62/269,180
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】ヘイニー・アーメッド
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ウェン
(72)【発明者】
【氏名】コッラード・バッシ
(72)【発明者】
【氏名】オード・デスポワ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・フロレイ
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・ヴァロン
【審査官】
馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−240424(JP,A)
【文献】
特開2000−160310(JP,A)
【文献】
特開平09−209068(JP,A)
【文献】
特開平05−112840(JP,A)
【文献】
特開平10−130768(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/146654(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0145266(US,A1)
【文献】
特開2015−034330(JP,A)
【文献】
特表2013−542320(JP,A)
【文献】
特表2015−528856(JP,A)
【文献】
特開2015−193903(JP,A)
【文献】
特開2006−009140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00−21/18
C22F 1/04− 1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001〜0.25重量%のCr、0.4〜2.0重量%のCu、0.15〜0.30重量%のFe、0.8〜2.0重量%のMg、0.15〜0.30重量%のMn、0.5〜1.5重量%のSi、最大で0.15重量%のTi、0.01〜3重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物およびを含み、残りがアルミニウムである6xxxアルミニウム合金製品であって、
前記6xxxアルミニウム合金製品が少なくとも300MPaの降伏強度を有し、かつ
前記6xxxアルミニウム合金製品が少なくとも10%の伸びを有する、6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項2】
0.03重量%のCr、0.8重量%のCu、0.15重量%のFe、1.0重量%のMg、0.2重量%のMn、1.2重量%のSi、0.04重量%のTi、0.01重量%のZn、及び最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである、請求項1に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項3】
0.03重量%のCr、0.4重量%のCu、0.15重量%のFe、1.3重量%のMg、0.2重量%のMn、1.3重量%のSi、0.04重量%のTi、0.01重量%のZn、及び最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである、請求項1に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項4】
0.1重量%のCr、0.4重量%のCu、0.15重量%のFe、1.3重量%のMg、0.2重量%のMn、1.3重量%のSi、0.04重量%のTi、0.01重量%のZn、及び最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである、請求項1に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項5】
0.05〜0.15重量%のSnを更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項6】
前記Crが0.02〜0.08重量%の量で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項7】
前記Crが0.08〜0.15重量%の量で存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項8】
前記Fe及び前記Mnの前記重量%の合計が0.35重量%未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項9】
前記Znが0.05〜2.5重量%の範囲で存在する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項10】
前記Znが0.05〜2重量%の範囲で存在する、請求項9に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項11】
前記Znが0.05〜1.5重量%の範囲で存在する、請求項10に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項12】
前記Znが0.05〜1重量%の範囲で存在する、請求項11に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項13】
前記Znが0.05〜0.5重量%の範囲で存在する、請求項12に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項14】
前記Cuが0.4〜0.8重量%の範囲で存在する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項15】
前記Cuが0.4〜0.6重量%の範囲で存在する、請求項14に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項16】
前記Cuが0.6〜1.0重量%の範囲で存在する、請求項15に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項17】
前記Cuが0.5〜0.8重量%の範囲で存在する、請求項16に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項18】
前記Cuが0.8〜1.0重量%の範囲で存在する、請求項17に記載の6xxxアルミニウム合金製品。
【請求項19】
6xxxアルミニウム合金シートを作製する方法であって、
6xxxアルミニウム合金を鋳造することと、
前記鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度に加熱することと、
前記鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度で0.5〜4時間維持することと、
前記温度を420℃〜480℃に低下させることと、
前記鋳造されたアルミニウム合金を前記アルミニウム合金シートに熱間圧延することであって、前記圧延されたアルミニウム合金シートが、330℃〜390℃の熱間圧延出口温度で最大で18mmの厚さを有する、熱間圧延することと、
前記アルミニウム合金シートを510℃〜540℃の温度で0.5〜1時間熱処理することと、
前記アルミニウム合金シートを周囲温度に急冷することと、を含み、
前記6xxxアルミニウム合金が、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.15〜0.30重量%のFe、0.8〜2.0重量%のMg、0.15〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.01〜3重量%のZn、及び最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムであり、
前記6xxxアルミニウム合金シートが少なくとも300MPaの降伏強度を有し、かつ
前記6xxxアルミニウム合金シートが少なくとも10%の伸びを有する、方法。
【請求項20】
前記アルミニウム合金シートを160〜240℃で0.5〜6時間維持することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アルミニウム合金シートを冷間圧延することと、
前記アルミニウム合金シートを200℃で0.5〜6時間維持することと、を更に含む、請求項19または20の1項に記載の方法。
【請求項22】
CW%が、10%〜45%である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
CW%が、10%〜40%である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
CW%が、10%〜35%である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
CW%が、10%〜30%である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
CW%が、10%〜25%である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
CW%が、10%〜20%である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記6xxxアルミニウム合金が、0.05〜0.15重量%のSnを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記6xxxアルミニウム合金シートの降伏強度及び伸びを測定して、前記6xxxアルミニウム合金シートが所望の降伏強度及び伸びを達成するかどうかを決定することを更に含む、請求項19〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記6xxxアルミニウム合金を鋳造することが、インゴットを直接冷却鋳造することを含む、請求項19〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記6xxxアルミニウム合金を鋳造することが、スラブ、シェート、プレート、またはシートを連続的に鋳造することを含む、請求項19〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記6xxxアルミニウム合金を鋳造することが、押出物を押出すことを含む、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記鋳造されたアルミニウム合金が、T6、T8x、T4、またはF質別にある、請求項19〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記6xxxアルミニウム合金シートが、300MPa〜450MPaの降伏強度を有する、請求項19〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記アルミニウム合金シートの最小r/t比が、亀裂を伴わずに1.2である、請求項19〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記6xxxアルミニウム合金シートが、2〜14mmの最終ゲージを有する、請求項19〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記6xxxアルミニウム合金シートが、1mm未満の最終ゲージを有する、請求項19〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
6xxxアルミニウム合金シートを作製する方法であって、
6xxxアルミニウム合金を連続的に鋳造することと、
前記連続的に鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度に加熱することと、
510℃〜590℃の前記温度を0.5〜4時間維持することと、
前記温度を420℃〜480℃に低下させることと、
前記連続的に鋳造されたアルミニウム合金を熱間圧延して前記アルミニウム合金シートを作ることであって、前記アルミニウム合金シートが、330℃〜390℃の熱間圧延出口温度で1mm未満の厚さを有する、作ることと、
前記アルミニウム合金シートを510℃〜540℃の温度で0.5〜1時間熱処理することと、
前記アルミニウム合金シートを周囲温度に急冷することと、を含み、
前記6xxxアルミニウム合金が、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.15〜0.30重量%のFe、0.8〜2.0重量%のMg、0.15〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.01〜3重量%のZn、及び最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムであり、
前記6xxxアルミニウム合金シートが少なくとも300MPaの降伏強度を有し、かつ
前記6xxxアルミニウム合金シートが少なくとも10%の伸びを有する、方法。
【請求項39】
前記アルミニウム合金シートを160〜240℃で0.5〜6時間維持することを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記アルミニウム合金シートを冷間圧延することと、
前記アルミニウム合金シートを200℃で0.5〜6時間維持することと、を更に含む、請求項38または39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記CW%が、10%〜45%である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記CW%が、10%〜40%である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記CW%が、10%〜35%である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記CW%が、10%〜30%である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記CW%が、10%〜25%である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記CW%が、10%〜20%である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記6xxxアルミニウム合金シートの降伏強度及び伸びを測定して、前記6xxxアルミニウム合金シートが所望の降伏強度及び伸びを達成するかどうかを決定することを更に含む、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記6xxxアルミニウム合金を連続的に鋳造することが、二重ベルト鋳造機、二重ロール鋳造機、またはブロック鋳造機を使用することを含む、請求項38〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記6xxxアルミニウム合金が、0.05〜0.15重量%のSnを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記連続的に鋳造されたアルミニウム合金が、T6、T8x、T4、またはF質別にある、請求項38〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記6xxxアルミニウム合金シートが、300MPa〜450MPaの降伏強度を有する、請求項38〜50のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2015年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/269,180号に対する優先権及びその出願の利益を請求する。
【0002】
本発明は、新規な高強度6xxxアルミニウム合金及びこれらの合金を製造する方法を提供する。これらの合金は、改善された機械的特性を示す。
【背景技術】
【0003】
乗り物における鋼製部品は、乗り物の重量を増大させ、燃料効率を低下させる。鋼部品を高強度アルミニウム部品に置き換えることは、乗り物の重量を減少させ、燃料効率を高める可能性があるので望ましい。高い降伏強度及び低い伸びを有する新規な6xxxアルミニウム合金、及びこれらの合金を作製する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
網羅される本発明の実施形態は、この概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。この概要は、本発明の様々な態様の高レベルな概説であり、図面及び以下の詳細な説明のセクションで更に記載するコンセプトの一部を紹介している。この概要は、特許請求された主題の肝要なまたは本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求された主題の範囲を決定するために分離して使用されることも意図していない。主題は、明細書全体の適切な部分、任意のまたは全ての図面、及び各請求項を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
新規な高強度6xxxアルミニウム合金組成物が開示されている。本明細書に記載の6xxxアルミニウム合金の元素組成は、0.001〜0.25重量%のCr、0.4〜2.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.5〜2.0重量%のMg、0.005〜0.40重量%のMn、0.5〜1.5重量%のSi、最大で0.15重量%のTi、最大で4.0重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の総不純物を含み得、残りの重量%はAlである。いくつかの非限定的な例では、本明細書に記載の6xxxアルミニウム合金は、0.03重量%のCr、0.8重量%のCu、0.15重量%のFe、1.0重量%のMg、0.2重量%のMn、1.2重量%のSi、0.04重量%のTi、0.01重量%のZn、及び最大で0.15重量%の不純物を含み得、残りの重量%はAlである。いくつかの更なる非限定的な例では、本明細書に記載の6xxxアルミニウム合金は、0.03重量%のCr、0.4重量%のCu、0.15重量%のFe、1.3重量%のMg、0.2重量%のMn、1.3重量%のSi、0.04重量%のTi、0.01重量%のZn、及び最大で0.15重量%の不純物を含み得、残りの重量%はAlである。また更なる非限定的な例では、本明細書に記載の6xxxアルミニウム合金は、0.1重量%のCr、0.4重量%のCu、0.15重量%のFe、1.3重量%のMg、0.2重量%のMn、1.3重量%のSi、0.04重量%のTi、0.01重量%のZn、及び最大で0.15重量%の不純物を含み得、残りの重量%はAlである。
【0006】
また、これらの新規な高強度6xxx合金組成物を製造する方法が開示されている。アルミニウム合金シートを作製する方法は、6xxxアルミニウム合金を鋳造することと、鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度に急速に加熱することと、鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度で0.5〜4時間維持することと、温度をおよそ420℃〜480℃に低下させることと、鋳造されたアルミニウム合金をアルミニウム合金シートに熱間圧延することと、を含み得る。圧延されたアルミニウム合金シートは、最大でおよそ18mmの厚さ及び330℃〜390℃の熱間圧延出口温度を有し得る。アルミニウム合金シートは、510℃〜540℃の温度での0.5〜1時間の熱処理及びその後の周囲温度への急冷に供され得る。アルミニウム合金シートは、任意に最終ゲージに冷間圧延され得、その冷間圧延は10%〜45%の厚さ減少をもたらす。アルミニウム合金シートを200℃で0.5〜6時間維持することによって、アルミニウム合金シートは任意に時効され得る。
【0007】
上記の方法で生成された6xxxアルミニウム合金シートは、少なくとも300MPaの降伏強度及び/または少なくとも10%の伸びを達成し得る。その6xxxアルミニウム合金シートはまた、亀裂を伴わずに約1.2の最小r/t比(rは使用される工具(ダイ)の半径であり、tは材料の厚さである)を示し得る。
【0008】
いくつかの例では、アルミニウム合金シートを作製する方法は、6xxxアルミニウム合金を連続的に鋳造することと、連続的に鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度に急速に加熱することと、510℃〜590℃の温度を0.5〜4時間維持することと、温度を420℃〜480℃に低下させることと、連続的に鋳造されたアルミニウム合金を熱間圧延して、330℃〜390℃の熱間圧延出口温度で1mm未満の厚さにすることと、アルミニウム合金シートを510℃〜540℃の温度で0.5〜1時間熱処理することと、アルミニウム合金シートを周囲温度に急冷することと、を含み得る。アルミニウム合金シートを200℃で0.5〜6時間維持することによって、アルミニウム合金シートは冷間圧延及び時効に供され得る。アルミニウム合金シートは、任意に最終ゲージに冷間圧延され得、その冷間圧延は10%〜45%の厚さ減少をもたらす。
【0009】
上記の方法で生成された6xxxアルミニウム合金シートは、少なくとも300MPaの降伏強度及び/または少なくとも10%の伸びを達成し得る。6xxxアルミニウム合金シートはまた、亀裂を伴わずに約1.2の最小r/t比を示し得る。
【0010】
これらの新規な高強度6xxx合金は、輸送産業で多くの用途を有し、より軽い重量の乗り物を生成するために鋼部品を置き換え得る。そのような乗り物には、限定されないが、自動車、バン、キャンピングカー、移動住宅、トラック、ホワイトボディ、トラックのキャブ、トレーラー、バス、オートバイ、スクーター、自転車、ボート、船舶、輸送コンテナ、列車、列車のエンジン、鉄道旅客車、鉄道貨物車、飛行機、ドローン、及び宇宙船が含まれる。
【0011】
新規な高強度6xxx合金は、シャーシまたはシャーシの部品部分などにおける鋼部品を置き換えるために使用され得る。これらの新規な高強度6xxx合金はまた、限定されないが、乗り物の部品において、例えば、列車部品、船舶部品、トラック部品、バス部品、航空宇宙機部品、乗り物のホワイトボディ、及び自動車部品において使用され得る。
【0012】
開示された高強度6xxx合金は、高強度鋼をアルミニウムで置き換え得る。一例では、340MPa未満の降伏強度を有する鋼は、必要とされる場合に補強剤を添加することを除き、主要な設計変更を必要とせずに開示された6xxxアルミニウム合金で置き換えられ得る。ここで、補強剤は、設計によって必要とされる場合に追加的に添加される金属プレートまたはロッドを指す。
【0013】
これらの新規な高強度6xxx合金は、延性を大幅に低下させることなく(少なくとも8%の全伸びを維持する)高強度を必要とする他の用途で使用され得る。例えば、これらの高強度6xxx合金は、エレクトロニクス用途ならびに電池の極板、電子部品、及び電子デバイスの部品を含むがこれらに限定されない特別な製品に使用され得る。
【0014】
本発明の他の目的及び利点は、以下の本発明の非限定的な例の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一例による高強度6xxxアルミニウム合金を製造する方法の概略図である。
【
図2】40%の冷間加工(CW)後に200℃で様々な時間(x軸、分)時効させた選択された例について、左のy軸ではMPaでの降伏強度(「YS」)及び右のy軸では全伸び率(TE%)の要約を示している。実施形態1、実施形態2−1、及び実施形態2−2は、表1に示されている例である。
【
図3】左のY軸の40%のCWでの実施形態1のMPaでの降伏強度(ひし形)の200℃で様々な時効時間(分)での関数としての概略図である。シートの最終ゲージは3mmである。右のy軸は、実施形態1の伸び率を、四角で示された40%のCWでの様々な時効時間(分)の関数として示している。
【
図4A】<001>ゾーン軸に沿って検査されたβ’’/β’析出物(25〜100nm)(長さバー=50nm)を示すT6人工時効させた状態の実施形態1の透過型電子顕微鏡法(TEM)の顕微鏡写真である。
【
図4B】<001>ゾーン軸に沿って検査されたL/Q’相析出物(2〜5nm)(長さバー=20nm)を含有するCuを示すT6人工時効させた状態の実施形態1の透過型電子顕微鏡法(TEM)の顕微鏡写真である。
【
図5A】冷却圧延の間に発生した転位に沿ったβ’’/β’析出物を示すT8x状態(溶体化熱処理後の40%のCWに続く200℃で1時間の人工時効)の実施形態1のTEMの顕微鏡写真である。
【
図5B】冷却圧延の間に発生した転位に沿ったL/Q’相析出物を示すT8x状態(溶体化熱処理後の40%のCWに続く200℃で1時間の人工時効)の実施形態1のTEMの顕微鏡写真である。析出物はT6質別と比較してわずかに粗く見える。冷間加工による更なるひずみ硬化が観察され、析出及び転位の強化の組み合わせがもたらされる。
図5Aは、長さバー=50nmを含み、
図5Bは長さバー=20nmを含む。
【
図6】AA6061基準合金及び実施形態1(それぞれ40%のCW)の使用中の引張強度(左のY軸のMPaでの降伏強度)及び右のy軸の伸び率(El%)に対する疲労なし(左の4つのヒストグラムバー)または疲労(右の4つのヒストグラムバー)の影響を示す棒チャートである。初期の結果は、使用中の強度条件が維持されることを示している。円形の記号は、40%のCW後の実施形態1の全伸びを表す。四角の記号は、40%のCWでの参照材料AA6061の全伸びを示している。4つのヒストグラムバーの各グループにおける左の2つのヒストグラムバーは、AA6061(左のバー)及び実施形態1(右のバー)の降伏強度を表している。4つのヒストグラムバーの各グループにおける右の2つのヒストグラムバーは、AA6061(左のバー)及び実施形態1(右のバー)の極限引張強度を表している。データは、疲労に供されていても供されていなくても、強度または伸び率に有意な影響を示さない。
【
図7A-7B】AA6061のT8x(
図7A)及び実施形態1のT8x(
図7B)の腐食挙動を示すASTM G110腐食試験後のサンプルの横断面の画像である。同等の腐食挙動が両方のサンプル間で観察された。
図7A及び7Bのスケールバーは100ミクロンである。
【
図8】30%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には140℃での時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率(A80)が示されている。これらのデータは、30%の冷間加工(CW)でのAA6451を使用して得られた。Rp0.2=降伏強度、Rm=引張強度、Ag=均一伸び(最高Rmでの伸び)、A80=全体の伸び。このグラフは、10時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが減少することを示している。
図8及び
図9では、サンプルを2mmゲージで実行した。
【
図9】23%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には170℃での時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率(A80)が示されている。これらのデータは、23%の冷間加工でのAA6451を使用して得られた。降伏強度(Rp)は5〜10時間でピークに達する。引張強度(Rm)は2.5時間後に低下する。伸びは時効後に低下する。
図8と同様に、記号Rp、Rm、A80、及びAgが使用されている。
【
図10】180℃で30分間の塗装焼付け中のMPaでの強度安定性を示すチャートである。50%の冷間加工を適用した。時効は、140℃で5時間であったX記号を除き、140℃で10時間行った。このグラフは、高強度6xxxクラッド/コア合金組成物の強度が、塗装焼付けで本質的に安定であることを示している。実際に、強度はわずかに増加する。X=合金8931高強度6xxxクラッド/コア合金組成物(コア:Si−1.25%、Fe−0.2%、Cu−1.25%、Mn−0.25%、Mg−1.25%、Cr−0.04%、Zn−0.02%、及びTi−0.03%、クラッド:Si−0.9%、Fe−0.16%、Cu−0.05%、Mn−0.06%、Mg−0.75%、Cr−0.01%、及びZn−0.01%)、ひし形=AA6451、四角=AA6451+0.3%のCu、星=合金0657。
【
図11】伸び(y軸A80)及びx軸におけるMPaでの強度(Rp0.2)に対する30%または50%の冷間圧延(CR)及び様々な温度での時効の影響を示すチャートである。時効の温度は図において次のように記号によって表されている:丸=100℃、ひし形=120℃、四角=130℃、三角=140℃。試験した合金は、AA6451+0.3%のCuであった。Xは完全T6状態の合金AA6451を表す。その図は、CRの増加が強度を増加させ、伸びを減少させたことを示している。そのデータは、冷間加工の変化が強度と伸びとの間の妥協点を得るために使用され得ることを実証している。30%のCWの場合の伸び値の範囲は約7%〜約14%であった一方で、対応する強度レベルは約310MPa〜約375MPaの範囲であった。50%のCRの場合の伸び値の範囲は約3.5%〜約12%であった一方で、対応する強度レベルは約345MPa〜約400MPaの範囲であった。50%のCRは、30%のCRよりも高い強度であるが、低い伸びをもたらした。
【
図12】伸び(y軸A80)及びx軸におけるMPaでの強度(Rp0.2)に対する30%または50%のCR及び様々な温度での時効の影響を示すチャートである。時効の温度は図において次のように記号によって表されている:丸=100℃、ひし形=120℃、四角=130℃、三角=140℃、X=160℃、及び星=180℃。試験された合金である合金8931は高強度6xxxである。Xは、完全T6状態の合金8931を表す(高強度6xxxクラッド/コア合金組成物(コア:Si−1.25%、Fe−0.2%、Cu−1.25%、Mn−0.25%、Mg−1.25%、Cr−0.04%、Zn−0.02%、及びTi−0.03%、クラッド:Si−0.9%、Fe−0.16%、Cu−0.05%、Mn−0.06%、Mg−0.75%、Cr−0.01%、及びZn−0.01%))。その図は、冷間加工の増大が強度を増大させ、伸びを減少させたことを示している。30%のCRの場合の伸び値の範囲は約6%〜約12%であった一方で、対応する強度レベルは約370MPa〜約425MPaの範囲であった。50%のCRの場合の伸び値の範囲は約3%〜約10%であった一方で、対応する強度レベルは約390MPa〜約450MPaの範囲であった。50%のCRは、30%のCRよりも高い強度であるが、低い伸びをもたらした。そのデータは、CRの変化が強度と伸びとの間の妥協点を得るために使用され得ることを実証している。
【
図13】圧延方向に対して90°での表面組織の変化(r値)に対するCRの影響を示すチャートである。試験した合金は、T4状態のAA6451+0.3%のCuであった。三角はT4状態+50%のCRを表し、四角はT4状態+23%のCRを表し、ひし形は140℃での2、10、または36時間の人工時効のT4状態を示している。そのデータは、冷間加工の増大が、圧延方向に対して90°のr値を増大させることを実証している。そのデータはまた、冷間圧延後の時効がr値を大幅に変化させないことを実証している。
【
図14】表面組織の変化(r値)に対するCRの影響を示すチャートである。試験した合金は、T4状態でのAA6451+0.3%のCuであった。XはT4状態を示し、三角はT4状態+23%のCR+170°での10時間の人工時効を表し、四角はT4状態+50%のCR+140℃での10時間の人工時効を表し、ひし形はT4状態+50%のCRを示している。そのデータは、冷間加工の増大が、圧延方向に対して90°のr値を増大させることを実証している。そのデータはまた、冷間圧延後の時効がr値を大幅に変化させないことを実証している。
【
図15】20%〜50%のCR及び120℃〜180℃での時効の後の様々な合金の強度及び伸びの表である。強度の測定結果は、圧延方向に対して90°で得られた。試験した合金は、AA6014、AA6451、AA6451+0.3%のCu、合金0657(Si−1.1%、Fe−0.24%、Cu−0.3%、Mn−0.2%、Mg−0.7%、Cr−0.01%、Zn−0.02%、及びTi−0.02%の組成を有する合金)、AA6111、合金8931(高強度6xxxクラッド/コア合金組成物(コア:Si−1.25%、Fe−0.2%、Cu−1.25%、Mn−0.25%、Mg−1.25%、Cr−0.04%、Zn−0.02%、及びTi−0.03%、クラッド:Si−0.9%、Fe−0.16%、Cu−0.05%、Mn−0.06%、Mg−0.75%、Cr−0.01%、及びZn−0.01%))であった。
【
図16】0.3%のCuを有するAA6451合金及び0.1%のCuを有するAA6451合金の降伏強度(Rp0.2(MPa))に対する、30%のCRに続く140℃で10時間の時効の影響を示す表である。結果は、0.3%のCuを含有する合金の場合、降伏強度が30%のCR及び140℃での10時間の時効で増大することを実証している。0.1%のCuを含有する合金の場合でも増加するが、0.3%のCuを有する合金ほど大幅ではない。
【
図17】0.3%のCuを有するAA6451合金及び0.1%のCuを有するAA6451合金の伸び(A80(%))に対する、30%のCRに続く140℃で10時間の時効の影響を示す表である。結果は、CR及び時効が、0.3%のCu及び0.1%のCuを含有する合金の伸びに対して同様の影響を有することを実証している。
【
図18】T8状態のそれぞれ3mmの厚さの実施形態1(左)、実施形態2−2(中央)、及び典型的なAA6061(右)の曲げ性の結果(r/t y軸)を示すチャートである。ひし形=合格、X=不合格。
【
図19】MPaでの降伏強度(四角)(左のy軸)及び右のy軸のTE%での伸び率(ひし形)を時効時間(x軸、分間(分))の関数として示す20%のCRに供された実施形態1(パネル)の代表図である。
【
図20A】実施形態2を示すチャートであり、
図20Bは、MPaでの降伏強度(四角)(左のy軸)及び右のy軸のTE%での伸び率(ひし形)を時効時間(x軸、分間(分))の関数として示す20%のCRに供された実施形態2−2を示すチャートである。
【
図21】は、実施形態1の降伏強度(左のY軸)(MPaでのYS、各ヒストグラムバーの下側部分)及び極限引張強度(MPaでのUTS、各ヒストグラムバーの上側部分)、及び黒丸としての全伸び%(右のy軸)(EL%)を示す棒チャートである。左から右へ、ヒストグラムバーは、a)T6質別、5mmのシートの実施形態1、b)T8x質別、7mmのシートの20%のCWでの実施形態1、c)T8x質別、7mmのシートの40%のCWでの実施形態1、及びd)T8x質別、3mmのシートの40%のCWでの実施形態1を表している。
【
図22】30%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には200℃での時効時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率が示されている。これらのデータは、30%のCWでアルミニウム合金の実施形態3を使用して得られた。YS=降伏強度、UTS=引張強度、UE=均一伸び(最高UTSでの伸び)、及びTE=全伸び。この表は、4時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが減少するか一定にとどまることを示している。
【
図23】26%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には200℃での時効時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率が示されている。これらのデータは、26%のCWでアルミニウム合金の実施形態3を使用して得られた。この表は、4時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが減少するか一定にとどまることを示している。
【
図24】46%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には200℃での時効時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率が示されている。これらのデータは、46%のCWでのアルミニウム合金の実施形態3を使用して得られた。この表は、4時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが減少するか一定にとどまることを示している。
【
図25】65%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には200℃での時効時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率が示されている。これらのデータは、65%のCWでのアルミニウム合金の実施形態3を使用して得られた。この表は、4時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが減少するか一定にとどまることを示している。
【
図26】32%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には200℃での時効時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率が示されている。これらのデータは、32%のCWでのアルミニウム合金の実施形態4を使用して得られた。この表は、4時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが一定にとどまることを示している。
【
図27】24%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には200℃での時効時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率が示されている。これらのデータは、24%のCWでのアルミニウム合金の実施形態4を使用して得られた。この表は、4時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが一定にとどまることを示している。
【
図28】45%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には200℃での時効時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率が示されている。これらのデータは、45%のCWでのアルミニウム合金の実施形態4を使用して得られた。この表は、4時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが一定にとどまることを示している。
【
図29】66%のCW後の時効曲線を示すチャートである。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には200℃での時効時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率が示されている。これらのデータは、66%のCWでアルミニウム合金の実施形態4を使用して得られた。この表は、4時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが減少するか一定にとどまることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義及び説明
本明細書で使用される場合、「発明」、「その発明」、「この発明」、及び「本発明」という用語は、本特許出願及び以下の特許請求の範囲の主題の全てを広く指すことを意図している。これらの用語を含有する記述は、本明細書に記載の主題を限定するものではなく、または以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものではないと理解すべきである。
【0017】
本明細書では、「シリーズ」などのAA番号及び他の関連名称によって特定される合金について記述する。アルミニウム及びその合金の命名及び特定に最も一般的に使用される番号名称システムの理解については、いずれもThe Aluminum Associationにより発行された「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot,」を参照。
【0018】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈が他に明確に指示していない限り、単数及び複数の言及を含む。
【0019】
元素は、本出願を通して重量パーセント(重量%)で表される。合金中の不純物の合計は、0.15重量%を超えない場合がある。各合金の残りはアルミニウムである。
【0020】
「T4質別」などの用語は、溶体化され、次いで実質的に安定な状態に自然時効させたアルミニウム合金体を意味する。T4質別は、溶体化後に冷間加工されないか、または平坦化または直線化における冷間加工の影響が機械的特性の限度では認識されない場合がある本体(bodies)に適用する。
【0021】
「T6質別」などの用語は、溶体化され、次いで最大強度状態(1ksi以内のピーク強度)に人工的に時効させたアルミニウム合金体を意味する。T6質別は、溶体化後に冷間加工されていないか、または平坦化または直線化における冷間加工の影響が機械的特性の限界では認識されない場合がある。
【0022】
T8質別という用語は、溶体化熱処理、冷間加工、次いで人工時効がされたアルミニウム合金を指す。
【0023】
F質別という用語は、製作されたままのアルミニウム合金を指す。
【0024】
合金:
一例では、6xxxアルミニウム合金は、0.001〜0.25重量%のCr、0.4〜2.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.5〜2.0重量%のMg、0.005〜0.40重量%のMn、0.5〜1.5重量%のSi、最大で0.15重量%のTi、最大で4.0重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0025】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.001〜0.18重量%のCr、0.5〜2.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.6〜1.5重量%のMg、0.005〜0.40重量%のMn、0.5〜1.35重量%のSi、最大で0.15重量%のTi、最大で0.9重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0026】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.06〜0.15重量%のCr、0.9〜1.5重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.7〜1.2重量%のMg、0.05〜0.30重量%のMn、0.7〜1.1重量%のSi、最大で0.15重量%のTi、最大で0.2重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.07重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0027】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.06〜0.15重量%のCr、0.6〜0.9重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.9〜1.5重量%のMg、0.05〜0.30重量%のMn、0.7〜1.1重量%のSi、最大で0.15重量%のTi、最大で0.2重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.07重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0028】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.8〜2.0重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.01〜3.0重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0029】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.15〜0.25重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.01〜3重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0030】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.15〜0.25重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜3重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0031】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.08重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.15〜0.25重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜3重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0032】
更に別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.08〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.15〜0.25重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜3重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0033】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜2.5重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0034】
更に別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.8〜1.4重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜2重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0035】
更に別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.6〜1.5重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜1.5重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0036】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.6〜1.5重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜1重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0037】
更に別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.02〜0.15重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.10〜0.30重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.10〜0.30重量%のMn、0.6〜1.5重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜0.5重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0038】
更に別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.01〜0.15重量%のCr、0.1〜1.3重量%のCu、0.15〜0.30重量%のFe、0.5〜1.3重量%のMg、0.05〜0.20重量%のMn、0.5〜1.3重量%のSi、最大で0.1重量%のTi、最大で4.0重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0039】
別の例では、前述の合金のいずれかにおけるFe及びMnの重量%の合計が0.35重量%未満である。
【0040】
更に別の例では、前述の合金のいずれかにおけるTiは、0.0〜0.10重量%、0.03〜0.08重量%、0.03〜0.07重量%、0.03〜0.06重量%、または0.03〜0.05重量%で存在する。
【0041】
別の例では、6xxxアルミニウム合金は、0.04〜0.13重量%のCr、0.4〜1.0重量%のCu、0.15〜0.25重量%のFe、0.8〜1.3重量%のMg、0.15〜0.25重量%のMn、0.6〜1.5重量%のSi、0.005〜0.15重量%のTi、0.05〜3重量%のZn、最大で0.2重量%のZr、最大で0.2重量%のSc、最大で0.25重量%のSn、最大で0.1重量%のNi、最大で0.15重量%の不純物を含み、残りがアルミニウムである。
【0042】
クロム
様々な例では、開示された合金は、最大で0.25重量%、0.02〜0.25重量%、0.03〜0.24重量%、0.04〜0.23重量%、0.05〜0.22重量%、0.06〜0.21重量%、0.07〜0.20重量%、0.02〜0.08重量%、0.04〜0.07重量%、0.08〜0.15重量%、0.09〜0.24重量%、または0.1〜0.23重量%の量でCrを含み得る。例えば、合金は、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、または0.25%のCrを含み得る。全て重量%で表示されている。
【0043】
銅
様々な例では、開示された合金は、0.4〜2.0重量%、0.5〜1.0重量%、0.6〜1.0重量%、0.4〜0.9重量%、0.4〜0.8重量%、0.4〜0.7重量%、0.4〜0.6重量%、0.5〜0.8重量%、または0.8〜1.0重量%の量でCuを含み得る。例えば、合金は、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.10%、1.15%、1.20%、1.25%、1.30%、1.35%、1.4%、1.45%、1.50%、1.55%、1.60%、1.65%、1.70%、1.75%、1.80%、1.85%、1.90%、1.95%、または2.0%のCuを含み得る。全て重量%で表示されている。
【0044】
マグネシウム
様々な例では、開示された合金は、0.5〜2.0重量%、0.8〜1.5重量%、0.8〜1.3重量%、0.8〜1.1重量%、または0.8〜1.0重量%の量でMgを含み得る。例えば、合金は、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、または2.0%のMgを含み得る。全て重量%で表示されている。
【0045】
ケイ素
様々な例では、開示された合金は、0.5〜1.5重量%、0.6〜1.3重量%、0.7〜1.1重量%、0.8〜1.0重量%、または0.9〜1.4重量%の量でSiを含み得る。例えば、合金は、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、または1.5%のSiを含み得る。全て重量%で表示されている。
【0046】
マンガン
様々な例では、開示された合金は、0.005〜0.4重量%、0.1〜0.25重量%、0.15〜0.20重量%、または0.05〜0.15重量%の量でMnを含み得る。例えば、合金は、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、0.30%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%、0.36%、0.37%、0.38%、0.39%、または0.40%のMnを含み得る。全て重量%で表示されている。
【0047】
鉄
様々な例では、開示された合金は、0.1〜0.3重量%、0.1〜0.25重量%、0.1〜0.20重量%、または0.1〜0.15重量%の量でFeを含み得る。例えば、合金は、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、または0.30%のFeを含み得る。全て重量%で表示されている。
【0048】
亜鉛
様々な例では、開示された合金は、最大で4.0重量%のZn、0.01〜0.05重量%のZn、0.1〜2.5重量%のZn、0.001〜1.5重量%のZn、0.0〜1.0重量%のZn、0.01〜0.5重量%のZn、0.5〜1.0重量%のZn、1.0〜1.9重量%のZn、1.5〜2.0重量%のZn、2.0〜3.0重量%のZn、0.05〜0.5重量%のZn、0.05〜1.0重量%のZn、0.05〜1.5重量%のZn、0.05〜2.0重量%のZn、0.05〜2.5重量%のZn、または0.05〜3重量%のZnを含み得る。例えば、合金は、0.0%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、0.30%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%、0.36%、0.37%、0.38%、0.39%、0.40%、0.41%、0.42%、0.43%、0.44%、0.45%、0.46%、0.47%、0.48%、0.49%、0.50%、0.55%、0.60%、0.65%、0.70%、0.75%、0.80%、0.85%、0.90%、0.95%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、または4.0%のZnを含み得る。いくつかの場合では、Znは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表示されている。
【0049】
チタン
様々な例では、開示された合金は、最大で0.15重量%、0.005〜0.15重量%、0.005〜0.1重量%、0.01〜0.15重量%、0.05〜0.15重量%、または0.05〜0.1重量%の量でTiを含み得る。例えば、合金は、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.010%、0.011%、0.012%、0.013%、0.014%、0.015%、0.016%、0.017%、0.018%、0.019%、0.020%、0.021%、0.022%、0.023%、0.024%、0.025%、0.026%、0.027%、0.028%、0.029%、0.03%、0.031%、0.032%、0.033%、0.034%、0.035%、0.036%、0.037%、0.038%、0.039%、0.04%、0.041%、0.042%、0.043%、0.044%、0.045%、0.046%、0.047%、0.048%、0.049%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、または0.15%のTiを含み得る。いくつかの場合では、Tiは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表示されている。
【0050】
スズ
様々な例では、上記の例に記載の開示された合金は、最大で0.25重量%、0.05〜0.15重量%、0.06〜0.15重量%、0.07〜0.15重量%、0.08〜0.15重量%、0.09〜0.15重量%、0.1〜0.15重量%、0.05〜0.14重量%、0.05〜0.13重量%、0.05〜0.12重量%、または0.05〜0.11重量%の量でSnを更に含み得る。例えば、合金は、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.010%、0.011%、0.012%、0.013%、0.014%、0.015%、0.016%、0.017%、0.018%、0.019%、0.020%、0.021%、0.022%、0.023%、0.024%、0.025%、0.026%、0.027%、0.028%、0.029%,0.03%、0.031%、0.032%、0.033%、0.034%、0.035%、0.036%、0.037%、0.038%、0.039%、0.04%、0.041%、0.042%、0.043%、0.044%、0.045%、0.046%、0.047%、0.048%、0.049%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、または0.25%のSnを含み得る。いくつかの場合では、Snは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表示されている。
【0051】
ジルコニウム
様々な例では、合金は、合金の総重量を基準として最大で約0.2%(例えば、0%〜0.2%、0.01%〜0.2%、0.01%〜0.15%、0.01%〜0.1%、または0.02%〜0.09%)の量でジルコニウム(Zr)を含む。例えば、合金は、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、または0.2%のZrを含み得る。所定の態様では、Zrは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表示されている。
【0052】
スカンジウム
所定の態様では、合金は、合金の総重量を基準として、最大で約0.2%(例えば、0%〜0.2%、0.01%〜0.2%、0.05%〜0.15%、または0.05%〜0.2%)の量でスカンジウム(Sc)を含む。例えば、合金は、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、または0.2%のScを含み得る。所定の態様では、Scは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表示されている。
【0053】
ニッケル
所定の態様では、合金は、合金の総重量を基準として、最大で約0.07%(例えば、0%〜0.05%、0.01%〜0.07%、0.03%〜0.034%、0.02%〜0.03%、0.034〜0.054%、0.03%〜0.06%、または0.001%〜0.06%)の量でニッケル(Ni)を含む。例えば、合金は、0.01%、0.011%、0.012%、0.013%、0.014%、0.015%、0.016%、0.017%、0.018%、0.019%、0.02%、0.021%、0.022%、0.023%、0.024%、0.025%、0.026%、0.027%、0.028%、0.029%、0.03%、0.031%、0.032%、0.033%、0.034%、0.035%、0.036%、0.037%、0.038%、0.039%、0.04%、0.041%、0.042%、0.043%、0.044%、0.045%、0.046%、0.047%、0.048%、0.049%、0.05%、0.0521%、0.052%、0.053%、0.054%、0.055%、0.056%、0.057%、0.058%、0.059%、0.06%、0.061%、0.062%、0.063%、0.064%、0.065%、0.066%、0.067%、0.068%、0.069%、または0.07%のNiを含み得る。所定の態様では、Niは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表示されている。
【0054】
その他
上記の例に加えて、開示された合金は以下を含有し得る:最大で0.5重量%のGa(例えば、0.01%〜0.40%または0.05%〜0.25%)、最大で0.5重量%のHf(例えば、0.01%〜0.40%または0.05%〜0.25%)、最大で3重量%のAg(例えば、0.1%〜2.5%または0.5%〜2.0%)、最大で2重量%の合金元素Li、Pb、またはBiのうちの少なくとも1種(例えば、0.1%〜2.0%または0.5%〜1.5%)、または最大で0.5重量%の次の元素Ni、V、Sc、Mo、Coもしくは他の希土類元素のうちの少なくとも1種(例えば、0.01%〜0.40%または0.05%〜0.25%)。全ての百分率は重量%で表示されており、合金の総重量を基準とする。例えば、合金は、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、または0.20%の、Mo、Nb、Be、B、Co、Sn、Sr、V、In、Hf、Ag、及びNiのうちの1種以上を含み得る。全て重量%で表示されている。
【0055】
表1は、比較目的のための参照合金(AA6061)及び合金のいくつかの例を示している。全ての数字は(重量%)であり、残りはアルミニウムである。例の合金において、各合金は最大で約0.15重量%の不純物を含有し得る。
【表1】
【0056】
実施形態1及び2などのいくつかの例では、改善された曲げ性のために、FeとMnの合計が0.35重量%以下で維持されることを確実にするように合金を設計した。
【0057】
プロセス:
本明細書に記載の6xxxアルミニウム合金は、当業者に知られている任意の好適な鋳造方法を使用して、例えば、これらに限定されないが、インゴット、ビレット、スラブ、プレート、シェート、またはシートに鋳造され得る。いくつかの非限定的な例として、鋳造プロセスには、直接冷却(DC)鋳造プロセス及び連続鋳造(CC)プロセスを含まれ得る。CCプロセスには、二重ベルト鋳造機、二重ロール鋳造機、またはブロック鋳造機の使用が含まれ得るがこれらに限定されない。また、本明細書に記載の6xxxアルミニウム合金は、当業者に知られている任意の好適な方法を使用して押出物に形成され得る。DC鋳造プロセス、CCプロセス、及び押出プロセスは、当業者に知られているようなアルミニウム工業で一般的に使用されている規格に従って実施され得る。次いで合金は、鋳造インゴット、ビレット、スラブ、プレート、シェート、シート、または押出物として、更なる処理工程に供され得る。
【0058】
図1は、1つの例示的なプロセスの概略図を示している。いくつかの例では、6xxxアルミニウム合金は、合金を約520℃〜約590℃の温度で溶体化することによって調製される。溶体化後、急冷及び冷間加工(CW)、及びそれに次ぐ熱処理(人工時効)が続く。溶体化後のCWの百分率は、少なくとも5%〜80%、例えば、10%〜70%、10%〜45%、10%〜40%、10%〜35%、10%〜30%、10%〜25%、または10%〜20%、20%〜60%、または20〜25%のCWで変動し得る。まず溶体化し、次いで冷間加工に続いて人工時効することにより、全伸び%を犠牲にすることなく、降伏強度及び極限引張強度に関して改善された特性が得られた。この文脈において、CW%は、冷間圧延による厚さの変化を冷間圧延前の初期ストリップ厚さで除したものとして言及される。別の例示的なプロセスでは、6xxxアルミニウム合金は、合金を溶体化し、続いてCWなしで熱処理(人工時効)することによって調製される。冷間加工は、本出願では冷間圧延(CR)とも称される。
【0059】
溶体化熱処理に続く急冷の後、過飽和の固溶体が得られる。冷間圧延の間、形成動作中に更に転位が発生する。以下の記述によって縛られることを望むものではないが、これにより増大した強度がもたらされ、元素拡散が助長され、その後の人工時効中に析出物形成のためのより高い密度の核生成部位がもたらされると考えられる。以下の記述によって縛られることを望むものではないが、これは、転位による空孔における急冷の消滅に起因し得るクラスターまたはGuinier−Preston(GP)ゾーンの形成を抑制すると考えられる。その後の人工時効の間、最大強度は、β’’/β’針状析出物及びL相を含有するCuの析出を介して達成される。冷間加工は、増大した反応速度論ならびにより高い塗装焼付け強度及び加速した人工時効反応をもたらすと考えられる。以下の記述によって縛られることを望むものではないが、溶体化熱処理後の冷間圧延は、β’’/β’針状析出物及びβ相の抑制をもたらすと考えられる。材料の最終強度は、冷間加工中に発生する転位密度の増加による析出強化及びひずみ硬化に起因する。
【0060】
いくつかの例では、以下の処理条件が適用された。サンプルを510〜590℃で0.5〜4時間均質化した後、熱間圧延した。例えば、均質化温度は、515℃、520℃、525℃、530℃、535℃、540℃、545℃、550℃、555℃、560℃、565℃、570℃、575℃、580℃、または585℃であり得る。均質化時間は、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、または3.5時間であり得る。目標レイダウン温度は420〜480℃であった。例えば、レイダウン温度は、425℃、430℃、435℃、440℃、445℃、450℃、455℃、460℃、465℃、470℃、または475℃であり得る。目標レイダウン温度は、熱間圧延前のインゴット、スラブ、ビレット、プレート、シェート、またはシートの温度を示す。サンプルを5mm〜18mmに熱間圧延した。例えば、ゲージは、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、または17mmであり得る。好ましくは、ゲージは約11.7mm及び9.4mmである。
【0061】
目標出口熱間圧延温度は、300〜400℃であり得る。目標出口熱間圧延温度は、300℃、305℃、310℃、315℃、320℃、325℃、330℃、335℃、340℃、345℃、350℃、355℃、360℃、365℃、370℃、375℃、380℃、385℃、390℃、395℃、または400℃であり得る。その後、サンプルを510〜540℃で0.5〜1時間溶体化熱処理した後、直ちに周囲温度まで氷水急冷して最大飽和を確保した。溶体化熱処理温度は、515℃、520℃、525℃、530℃、または535℃であり得る。周囲温度に達するまでの継続時間は、材料の厚さに基づいて変動し、平均で1.5〜5秒と推定されることが推定される。好ましくは、周囲温度に達するまでの時間は、2秒、2.5秒、3秒、3.5秒、4秒、または4.5秒であり得る。周囲温度は、約−10℃〜約60℃であり得る。周囲温度はまた、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、または50℃であり得る。
【0062】
いくつかの例では、アルミニウム合金シートを作製する方法は、次の工程:6xxxアルミニウム合金を鋳造することと、鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度に急速に加熱することと、鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度で0.5〜4時間維持することと、温度を420℃〜480℃に低下させることと、鋳造されたアルミニウム合金をアルミニウム合金シートに熱間圧延することであって、圧延されたアルミニウム合金シートが、330℃〜390℃の熱間圧延出口温度で最大で18mmの厚さを有する、熱間圧延することと、アルミニウム合金シートを510℃〜540℃の温度で0.5〜1時間熱処理することと、アルミニウム合金シートを周囲温度に急冷することと、を含み得る。
【0063】
いくつかの例では、アルミニウム合金シートを作製する方法は、次の工程:6xxxアルミニウム合金を連続的に鋳造することと、連続的に鋳造されたアルミニウム合金を510℃〜590℃の温度に急速に加熱することと、510℃〜590℃の温度を0.5〜4時間維持することと、温度を420℃〜480℃に低下させることと、連続的に鋳造されたアルミニウム合金を熱間圧延してアルミニウム合金シートを作ることであって、そのアルミニウム合金シートが、330℃〜390℃の熱間圧延出口温度で1mm未満の厚さを有する、作ることと、アルミニウム合金シートを510℃〜540℃の温度で0.5〜1時間熱処理することと、アルミニウム合金シートを周囲温度に急冷することと、を含み得る。
【0064】
その後、2つの追加の処理方法を検査した。
【0065】
方法1
溶体化処理後の急冷に続いて、サンプルを200℃で0.5〜6時間、可能な限り速やかに、しかし常に24時間以内に人工時効させた。溶体化熱処理及び急冷の完了と人工時効(熱処理)の開始との間の時間間隔は、自然時効の影響を避けるために、24時間未満であった。人工時効は、約160℃〜約240℃、約170℃〜約210℃、または約180℃〜約200℃の範囲の温度で行われ得る。
【0066】
方法2
溶体化熱処理後の急冷の後、サンプルを、人工時効(熱処理)の前に、約11mm及び約9mmの初期ゲージからそれぞれ約7mm及び約3mmに冷間圧延した。これは約20%及び40〜45%のCWと定義され得る。溶体化熱処理及び急冷の完了と人工時効の開始との間の時間間隔は、自然時効の影響を避けるために、24時間未満であった。試行の目的で適用されたCW%は40%であり、7mm(11.7mmの初期厚さから圧延した)及び3mm(5mmの初期厚さから圧延した)の最終ゲージをもたらした。これに200℃で1〜6時間の時効が続いた。いくつかの場合では、その後の時効は200℃で0.5〜6時間行われ得る。
【0067】
要約すると、そのプロセスの初期段階は、順次、鋳造、均質化、熱間圧延、溶体化熱処理、及び急冷を含む。次に、方法1または方法2のいずれかまたは両方が続く。方法1は、時効させる工程を含む。方法2は、冷間圧延及びその後の時効を含む。
【0068】
記載された方法で生成されたアルミニウムシートのゲージは、最大で15mmの厚さであり得る。例えば、開示された方法を用いて生成されたアルミニウムシートのゲージは、15mm、14mm、13mm、12mm、11mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3.5mm、3mm、2mm、1mm、または1mm未満の厚さの任意のゲージ、例えば、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、もしくは0.1mmであり得る。開始厚さは最大で20mmであり得る。いくつかの例では、開示された方法を用いて生成されたアルミニウム合金シートは、約2mm〜約14mmの最終ゲージを有し得る。
【0069】
合金の機械的特性
商業的に生成された材料の分析に基づいて、工業的組成物を模倣する実験室鋳造AA6061と比較して、新しい例は、(組成の変化によるT6状態ならびに製造方法(冷間加工)及び組成の変化の組み合わせによるT8x状態の両方において)強度の大幅な改善を示した。また、開示された合金は、限定されるものではないが、T4及びF質別で生成され得る。この新規な製造方法及び組成の変更は、AA6061などの現在の合金に対する改善である。前述のセクションで説明したように、新規な態様は、(i)製造方法(溶体化熱処理及び急冷後の冷間圧延を介する)と(ii)様々なCu、Si、Mg、及びCrの重量%での組成の変更との組み合わせに関する。
【0070】
表2は、AA6061と比較した2つの例示的な合金の改善された機械的特性を要約している。
図2及び3は、例示的な合金の特性に関する追加のデータを示している。降伏強度(YS)(MPa)及び伸び率(EL%)が示されている。
【表2】
【0071】
これらの合金をT6及びT8x状態での強度値及び伸び%について試験した。透過型電子顕微鏡(TEM)検査を実施して、析出タイプ及び強化メカニズムを確認した(
図4及び5参照)。いくつかの例では、本明細書に記載の方法に従って作製された6xxxアルミニウム合金シートは、少なくとも300MPa、例えば約300MPa〜450MPaの降伏強度を有し得る。いくつかの例では、本明細書に記載の方法に従って作製された6xxxアルミニウム合金シートは、少なくとも10%の伸びを有し得る。
【0072】
いくつかの例では、本明細書に記載の方法に従って作製された6xxxアルミニウム合金シートは、亀裂を伴わずに約1.2のアルミニウム合金シートの最小r/t比を有し得る。r/t比は、材料の曲げ性の評価を提供し得る。以下に説明するように、曲げ性はr/t比に基づいて評価され、rは使用される工具(ダイ)の半径であり、tは材料の厚さである。より低いr/t比は、材料のより良好な曲げ性を示す。
【0073】
また、合金を使用中負荷特性を評価するために試験した。具体的には、60℃の温度で、適用の観点から厳しい条件とみなされる−1のR値で70MPaの疲労負荷が適用された類型を試験した。100,000サイクル後、次いでサンプルを引張強度値を決定するために試験した。初期データは、疲労条件に供されていない基準金属と比較して、疲労負荷後に強度が維持されることを示唆している(
図6参照)。
【0074】
最後に、開示された合金をASTM G110に基づいて腐食条件で試験した。実施形態1の腐食挙動は、初期の知見に基づいて優れた耐腐食性であると考えられるAA6061の現在の基準に匹敵することが観察された(
図7参照)。
【0075】
図2〜6に示された知見の要約を以下に要約しており、200℃での人工時効中の強度値を示しており、TEM画像は強化メカニズムを要約しており、強度値は疲労負荷が適用され100,000サイクル試験された後に維持されることを確認している。
【0076】
以下の実施例は本発明を更に解説する役割を果たすが、それと同時にそのいかなる限定も構成しない。それどころか、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者に示唆され得る様々な実施形態、変更、及びその等価物に対して手段が与えられ得ることが明確に理解されるべきである。他に述べない限り、以下の実施例に記載の研究の間は従来の手順に従った。手順の一部を解説の目的のために以下に記載する。
【0077】
実施例1
表1に列挙された組成を有する例示的な合金を以下の例示的な方法に従って生成した:鋳造されたままのアルミニウム合金インゴットを約520℃〜約580℃の温度で少なくとも12時間均質化し、均質化したインゴットを次いで熱間圧延ミルを介して熱間圧延して16個の通路(pass)を含む中間ゲージとし、その場合、インゴットは、約500℃〜約540℃の温度で熱間圧延ミルに入り、約300〜400℃の温度で熱間圧延ミルを出て、中間ゲージアルミニウム合金を次いで任意に冷間圧延して、約2mm〜約4mmの最終ゲージを有するアルミニウム合金シートとし、アルミニウム合金シートを約520℃〜590℃の温度で溶体化し、シートを水及び/または空気のいずれかで急冷し、シートを任意に冷間圧延して約1〜約3mmの最終ゲージとし(すなわち、シートを約20%〜約70%(例えば、25%または50%)の冷間圧延に供し)、シートを約120℃〜約180℃の温度で約30分〜約48時間の期間(例えば、140℃〜160℃で5時間〜15時間)熱処理する。
【0078】
例示的な合金を引張強度及び伸びに対する影響を評価するために人工時効に更に供した。
図8は、30%のCW後の時効曲線の概略図である。左の垂直軸は強度(MPa)を示し、水平軸には140℃での時間(時)が示されており、右の垂直軸には伸び率(A80)が示されている。これらのデータは、30%のCWでのAA6451を使用して得られた。Rp0.2は降伏強度を指し、Rmは引張強度を指し、Agは均一な伸び(最高Rmでの伸び)を指し、A80は全体の伸びを指す。この表は、10時間後に強度が増加するかまたは一定にとどまり、伸びが減少することを示している。
図8及び
図9では、サンプルを2mmゲージで実行した。
【0079】
図9は、23%のCW後の時効曲線の概略図である。左のy軸は強度(MPa)を示し、x軸には170℃での時間(時)が示されており、右のy軸には伸び率(A80)が示されている。これらのデータは、23%の冷間加工でのAA6451を使用して得られた。降伏強度(Rp)は5〜10時間でピークに達する。引張強度(Rm)は2.5時間後に低下する。伸びは時効後に低下する。Rp0.2は降伏強度を指し、Rmは引張強度を指し、Agは均一な伸び(最高Rmでの伸び)を指し、A80は全体の伸びを指す。
【0080】
例示的合金を、引張強度に対する影響を評価するためにシミュレートされた塗装焼付けプロセスに供した。
図10は、180℃で3分間の塗装焼付けの間の強度安定性(MPa)の概略図である。50%の冷間加工を適用した。時効は、140℃で5時間であったX記号を除き、140℃で10時間行った。このグラフは、高強度6xxxクラッド/コア合金組成物の強度が、塗装焼付けで本質的に安定であることを示している。実際に、強度はわずかに増加する。凡例は
図10に示されており、「X」標識は合金8931を表す。合金8931は、本明細書に記載の例示的合金であり、高強度6xxxクラッド/コア合金組成物(コア:Si−1.25%、Fe−0.2%、Cu−1.25%、Mn−0.25%、Mg−1.25%、Cr−0.04%、Zn−0.02%、及びTi−0.03%、クラッド:Si−0.9%、Fe−0.16%、Cu−0.05%、Mn−0.06%、Mg−0.75%、Cr−0.01%、及びZn−0.01%)、「ひし形」標識はAA6451合金を表し、「四角」標識はAA6451+0.3%のCuを表し、「四角」標識はAA6451+0.3%のCuを表し、「星」標識は合金0657(Si−1.1%、Fe−0.24%、Cu−0.3%、Mn−0.2%、Mg−0.7%、Cr−0.01%、Zn−0.02%、及びTi−0.02%を有し、残りがAlである合金)を表している。
【0081】
図11は、伸び(y軸 A80)及びx軸におけるMPaでの強度(Rp0.2)に対する30%または50%の冷間圧延(CR)及び様々な温度での時効の影響を示すチャートである。時効の温度は図において次のように記号によって表されている:丸=100℃、ひし形=120℃、四角=130℃、三角=140℃。試験した合金は、完全T6状態でAA6451+0.3%のCuであった。その図は、CRの増加が強度を増加させ、伸びを減少させたことを示している。そのデータは、冷間加工の変化が強度と伸びとの間の妥協点を得るために使用され得ることを実証している。30%のCWの場合の伸び値の範囲は約7%〜約14%であった一方で、対応する強度レベルは約310MPa〜約375MPaの範囲であった。50%のCRの場合の伸び値の範囲は約3.5%〜約12%であった一方で、対応する強度レベルは約345MPa〜約400MPaの範囲であった。50%のCRは、30%のCRよりも高い強度であるが、低い伸びをもたらした。時効プロセス中の時間及び温度を変化させることは、CRの変化の影響と比較して、伸び及び強度に小さな影響を及ぼした。
【0082】
図12は、伸び(y軸 A80)及びx軸のMPaでの強度(Rp0.2)に対する30%または50%のCR及び様々な温度での時効の影響を示すチャートである。時効の温度は図において次のように記号によって表されている:丸=100℃、ひし形=120℃、四角=130℃、三角=140℃、X=160℃、及び星=180℃。試験された合金である合金8931は高強度6xxx合金である。Xは、完全T6状態の合金8931を表す(高強度6xxxクラッド/コア合金組成物(コア:Si−1.25%、Fe−0.2%、Cu−1.25%、Mn−0.25%、Mg−1.25%、Cr−0.04%、Zn−0.02%、及びTi−0.03%、クラッド:Si−0.9%、Fe−0.16%、Cu−0.05%、Mn−0.06%、Mg−0.75%、Cr−0.01%、及びZn−0.01%))。その図は、冷間加工の増大が強度を増大させ、伸びを減少させたことを示している。30%のCRの場合の伸び値の範囲は約6%〜約12%であった一方で、対応する強度レベルは約370MPa〜約425MPaの範囲であった。50%のCRの場合の伸び値の範囲は約3%〜約10%であった一方で、対応する強度レベルは約390MPa〜約450MPaの範囲であった。50%のCRは、30%のCRよりも高い強度であるが、低い伸びをもたらした。そのデータは、CRの変化が強度と伸びとの間の妥協点を得るために使用され得ることを実証している。時効プロセス中の時間及び温度を変化させることは、CRの変化の影響と比較して、伸び及び強度に小さな影響を及ぼした。
【0083】
図13は、圧延方向に対して90°での例示的合金の表面組織の変化(r値)に対するCRの影響を示すチャートである。試験した合金は、T4状態のAA6451+0.3%のCuであった。三角はT4状態+50%のCRを表し、四角はT4状態+23%のCRを表し、ひし形は140℃での2、10、または36時間の人工時効のT4状態を示している。そのデータは、冷間加工の増大が、圧延方向に対して90°のr値を増大させることを実証している。そのデータはまた、冷間圧延後の時効がr値を大幅に変化させないことを実証している。
【0084】
図14は、例示的合金の表面組織の変化(r値)に対するCRの影響を示すチャートである。試験した合金は、T4状態のAA6451+0.3%のCuであった。XはT4状態を示し、三角はT4状態+23%のCR+170°での10時間の人工時効を表し、四角はT4状態+50%のCR+140℃での10時間の人工時効を表し、ひし形はT4状態+50%のCRを示している。そのデータは、冷間加工の増大が、圧延方向に対して90°のr値を増大させることを実証している。そのデータはまた、冷間圧延後の時効がr値を大幅に変化させないことを実証している。
【0085】
図15は、20%〜50%のCR及び120℃〜180℃での時効の後の様々な合金の強度及び伸びを示す表である。強度の測定結果は、圧延方向に対して90°で得られた。試験した合金は、AA6014、AA6451、AA6451+0.3%のCu、合金0657(Si−1.1%、Fe−0.24%、Cu−0.3%、Mn−0.2%、Mg−0.7%、Cr−0.01%、Zn−0.02%、及びTi−0.02%の組成を有する合金)、AA6111、合金8931(高強度6xxxクラッド/コア合金組成物(コア:Si−1.25%、Fe−0.2%、Cu−1.25%、Mn−0.25%、Mg−1.25%、Cr−0.04%、Zn−0.02%、及びTi−0.03%、クラッド:Si−0.9%、Fe−0.16%、Cu−0.05%、Mn−0.06%、Mg−0.75%、Cr−0.01%、及びZn−0.01%))であった。
【0086】
図16は、0.3%のCuを有するAA6451合金及び0.1%のCuを有するAA6451合金の降伏強度(Rp0.2(MPa))に対する、30%のCRに続く140℃で10時間の時効の影響を示す表である。結果は、0.3%のCuを含有する合金の場合、降伏強度が30%のCR及び140℃での10時間の時効で増大することを実証している。0.1%のCuを含有する合金の場合でも増加するが、0.3%のCuを有する合金ほど大幅ではない。
【0087】
図17は、0.3%のCuを有するAA6451合金及び0.1%のCuを有するAA6451合金の伸び(A80(%))に対する、30%のCRに続く140℃で10時間の時効の影響を示す表である。結果は、CR及び時効が、0.3%のCu及び0.1%のCuを含有する合金の伸びに対して同様の影響を有することを実証している。
【0088】
実施形態1、2−1、及び2−2のサンプルを、それらの形成性を評価するために90°曲げ試験に供した。次第により小さくなる半径を有するダイを使用して曲げ試験を行った。曲げ性は、(r/t比)(rは使用される工具(ダイ)の半径であり、tは材料の厚さである)に基づいて評価した。より低いr/t比は、材料のより良好な曲げ性を示す。実施形態1、2−1、及び2−2のサンプルを高強度状態としても知られているT8xで試験した。結果を
図18に要約する。
【0089】
同等の曲げ性(r/t)比が実施形態1と2−2の間で観察され、不合格は1.5と2.5のr/tの間で生じたことが分かる。これは、Crの有害な影響が、減少したβ’’/β’析出物をもたらすマグネシウム含有量を低下させることによって相殺されたという事実に起因し得る。様々な場合において、開示された合金は、約1.6以上2.5未満のr/t比よりも低い曲げ性を有する(向上した曲げ性はより低いr/t比によって表される)。
【0090】
実施例2
実施形態1、2−1、及び2−2を前述のように溶体化熱処理した。これに約20%のCWが続き、約7mmの最終ゲージとした。その後、サンプルを200℃で様々な時間人工的に時効させた。結果を
図19に要約する。20%のCWの適用に続いて時効処理をした後の開示された合金は、360MPaの最小降伏強度及び20%以上の最小全EL%を有する。
図19、20A、及び20Bを参照。
【0091】
実施例3
実施形態1、2−1、及び2−2を従来の人工時効処理に続いて約20%〜約40%のCWに供した。冷間加工を約11mm及び約9mmの初期厚さを有するサンプルに適用して、7mm及び3mmの最終ゲージをもたらした。
図21において実施形態1についての結果を要約する。
【0092】
この例で実証されているように、実施形態1は、20%の最小全伸びを有し、T6状態で330MPaの最小降伏強度を有する。組成物及び製造方法(溶体化熱処理及び急冷後で時効の前に約20%以上のCWから25%未満のCWを適用する)を組み合わせることにより、約20%の最小全伸びを有し、最小降伏強度は約360MPaである。その類型は、15%の最小全伸びを有し、40%〜45%のCW後に390MPaの最小降伏強度を示した。
【0093】
実施例4
実施形態3及び4を従来の人工時効処理に続いて約24%〜約66%のCWに供した。冷間加工を約10mm及び約5mmの初期厚さを有するサンプルに適用して、約7.5mm、約5.5mm、約3.5mm、及び約3.3mmの最終ゲージをもたらした。人工時効処理時間を変化させた。サンプルを降伏強度、極限引張強度、全伸び、及び均一伸びについて試験した。
図22、23、24、及び25において実施形態3についての結果を要約する。
図26、27、28、及び29において実施形態4についての結果を要約する。
【0094】
上記で引用した全ての特許、刊行物、及び要約は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の実現において記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることを認識すべきである。以下の特許請求の範囲に定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、数多くの変更及びその適合が当業者には容易に明らかであろう。