特許第6792621号(P6792621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792621旋回する結像光ガイドを有するヘッドマウントディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792621
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】旋回する結像光ガイドを有するヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20201116BHJP
   G02B 6/34 20060101ALI20201116BHJP
   G02B 6/124 20060101ALI20201116BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G02B27/02 Z
   G02B6/34
   G02B6/124
   H04N5/64 511A
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-532193(P2018-532193)
(86)(22)【出願日】2017年1月5日
(65)【公表番号】特表2019-507365(P2019-507365A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】US2017012348
(87)【国際公開番号】WO2017120346
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2018年8月16日
(31)【優先権主張番号】62/275,560
(32)【優先日】2016年1月6日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516201548
【氏名又は名称】ビュージックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Vuzix Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, ロバート, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】トラバース,ポール, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,タイラー, ダブリュー.
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−522064(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111471(WO,A1)
【文献】 特開2012−037761(JP,A)
【文献】 特表2003−536102(JP,A)
【文献】 米国特許第06580529(US,B1)
【文献】 米国特許第08743464(US,B1)
【文献】 特開2015−049278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,27/02
G02B 6/00,6/34
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見る者の頭部にディスプレイ装置を支持するとともに、前部を有するフレームと、
前記フレーム内に嵌め込まれ、画像担持光のビームを発するように動作可能なプロジェクタと、
前記画像担持光の経路に配置された結像光ガイドと、
前記フレームの前部に設けられたマウントと、
を備え、
前記結像光ガイドは、
透明な光学材料により形成された基板を有する導波路と、
前記画像担持光のビームを前記導波路に向けるように配置されたインカップリング光学素子と、
前記画像担持光のビームを横方向に拡大して見る者のアイボックス内にバーチャル像を形成し、見る者の視野に、見る側から距離をおいてバーチャル像を表示するように配置されたアウトカップリング光学素子と、
を有し、
前記マウントは、前記結像光ガイドを見る者の前で支持し、前記プロジェクタに対して前記導波路を角度調節するヒンジを提供し、前記ヒンジが、前記導波路を前記プロジェクタに対して水平面上で角度調節するための垂直軸を有し、
前記マウントは、水平面内における前記導波路の位置を調整し、それによって前記プロジェクタを再度位置決めすることなく、見る者の視野内でバーチャル像が現れる距離を変えることなく、前記導波路内のバーチャル像を、見る者の視線内で再度位置決めするように構成されているウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項2】
前記ヒンジは、前記導波路を前記プロジェクタに対して垂直面上で角度調節するための水平軸を有する、請求項1に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項3】
前記結像光ガイドは回転光学素子を有し、この回転光学素子は、前記インカップリング光学素子からの前記画像担持光のビームを、第1の次元で拡大し、この拡大された画像担持光のビームを、前記アウトカップリング光学素子に向けるよう配置されており、
前記アウトカップリング光学素子は、前記画像担持光のビームを第2の次元で拡大するように配置されている、請求項1に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項4】
見る者の頭部にディスプレイ装置を支持するフレームと、
前記フレーム内に嵌め込まれ、画像担持光のビームを発するプロジェクタと、
前記画像担持光の経路に配置された結像光ガイドと、
前記フレームに設けられ、前記結像光ガイドを見る者の前で支持するマウントと、
を備え、
前記結像光ガイドは、
透明な光学材料により形成された基板を有する導波路と、
前記画像担持光のビームを前記導波路に向けるように配置され、ある周期での周期的な罫線を含むインカップリング光学素子と、
見る者のアイボックス内にバーチャル像を形成するように配置されたアウトカップリング光学素子と、
前記インカップリング光学素子からの第一回折光出力を第二回折光出力として前記アウトカップリング光学素子に再方向付けするように配置された中間回転格子であって、前記インカップリング光学素子の格子ベクトルと前記アウトカップリング光学素子の格子ベクトルとの間の角度差に応じて構成され、前記インカップリング光学素子の周期的な罫線の前記周期によって決定される角度配向および間隔配列を有する回折素子を含む中間回転格子と、
有し、
前記マウントは、前記プロジェクタに対して前記導波路を角度調節するヒンジを提供し、それによって、前記プロジェクタを再度位置決めすることなく、見る者の視野内でバーチャル像が現れる距離を変えることなく、前記導波路内のバーチャル像を、見る者の視線内で再度位置決めするウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項5】
前記ヒンジは、前記導波路を前記プロジェクタに対して水平面上で角度調節するための垂直軸を有する、請求項4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項6】
前記ヒンジは、前記導波路を前記プロジェクタに対して垂直面上で角度調節するための水平軸を有する、請求項4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項7】
前記中間回転格子は、伝播の第一方向に沿う前記インカップリング光学素子からの第一回折光出力との多数の回析遭遇によって、ビーム拡大に寄与するように構成された、請求項4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項8】
前記アウトカップリング光学素子は、前記第一方向と直交する伝播の第二方向に沿う前記中間回転格子からの第二回折光出力との多数の回析遭遇によって、直交する方向のビーム拡大に寄与するように構成された、請求項7に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項9】
前記中間回転格子は、前記インカップリング光学素子のピッチおよび前記アウトカップリング光学素子のピッチに一致するピッチを備えた、請求項4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項10】
前記中間回転格子は、伝播の第一方向に沿う前記インカップリング光学素子からの第一回折光出力に対して約60°の角度に方向付けられた回転格子を含む、請求項4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項11】
前記インカップリング光学素子と前記アウトカップリング光学素子のうちの1つまたは両方が、回折光学素子とプリズムのうちの少なくとも1つである、請求項1または4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項12】
前記インカップリング光学素子は、前記導波路の平面内に位置し前記導波路の外面に対して傾いたミラーからなる、請求項1または4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項13】
前記インカップリング光学素子は、複数の少なくとも部分的に反射するミラーからなり、前記導波路の平面内に配置され前記導波路の外面に対して傾いている、請求項1または4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【請求項14】
前記アウトカップリング光学素子は、複数の少なくとも部分的に反射するミラーであり、前記導波路の平面内に配置され前記導波路の外面に対して傾いている、請求項1または4に記載のウエアラブルディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ディスプレイに関し、特に、結像光ガイドを用いて画像担持光を見る者に伝送するヘッドマウントディスプレイ(ニアアイディスプレイ)に関する。
【背景技術】
【0002】
単眼型または双眼型のニアアイディスプレイを含むヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、軍事、商業、工業、消防、および娯楽分野への適用を含め、様々な用途に向けて開発されている。これら適用の多くにおいて、HMDユーザーの視野にある現実世界の像に重ね合わせ可能なバーチャル像を形成することは、非常に価値がある。様々なタイプの導波路を組み込んだ結像光ガイドは、狭い空間内で画像担持光を観察者に中継し、バーチャル像を観察者の瞳に向け、この重ね合わせ機能を可能にする。
【0003】
従来の結像光ガイドでは、画像源からの、コリメートされ角度的に関連付けられた光ビームは、インカップリング回折格子のようなインプット光学カップリングによって、一般に導波路と呼ばれる光ガイド基板内に結合される。このインプット光学カップリングは、基板の表面に形成したり、基板内に埋め込むことができる。他のタイプの回折光学素子をインプットカップリングとして用いることができる。例えば、ホログラフィックポリマーを分散した液晶(HPDLC)や体積ホログラムのような、異なる屈折率の材料が交互に配置された回折構造を含む。回折光学素子は、表面レリーフ回折格子として形成することもできる。コリメートされた光ビームは、回折光学素子の形態をとることができる同様のアウトプット光学カップリングによって、導波路外へ向けることができる。導波路から射出された、コリメートされ角度的に関連付けられたビームは、射出瞳を形成する導波路からのアイリリーフ距離で重なり合う。射出瞳内で、画像源によって生成されたバーチャル像を見ることができる。アイレリーフ距離でバーチャル像を見ることができる射出瞳の領域は、「アイボックス」と称される。
【0004】
アウトプットカップリングも、射出瞳を拡大するように構成することができる。例えば、コリメートされたビームの反射された部分をアウトプットカップリングに沿って伝播する方向にオフセットすることによって、または導波路に沿う異なる位置から異なる角度のコリメートされたビームを射出することによって、コリメートされたビームは一つの次元で拡大することができ、これにより、コリメートされたビームを導波路からのアイレリーフ距離でより効率的に重ね合わせる。
【0005】
インプットカップリングとアウトプットカップリングとの間の導波路に沿って配置されたいわゆる「回転光学素子」は、第2の次元で瞳のサイズを拡大するために、用いることができる。コリメートされたビームの反射された部分をオフセットして、ビーム自身の第2の次元を拡大することにより、またはコリメートされたビームをアウトプットカップリングの異なる領域に向け、異なる角度のコリメートされたビームを異なる位置から出射させることにより、この拡大は実行され、これにより、アイボックス内でより効率的に重なり合うことができる。回転光学素子はまた、回折光学素子の形態をとることができ、特に、インプットカップリングとアウトプットカップリングの回折格子の間に位置する場合、中間格子と呼ぶこともできる。
【0006】
結像光ガイド光学系は、観察者の視野内において、離れた位置にある実際の対象の外観を有するバーチャル像を形成する。結像技術分野の当業者には周知のように、バーチャル像は、光学系から眼に提供される光線の拡散によって合成的にシミュレートされる。この光学効果は、観察者の視野内において、所定の位置および距離にあるかのように見える「バーチャル像」を形成する。実際に光線が発散する視野内の対応する「実」対象は存在しない。いわゆる「拡張現実」表示システムは、典型的には、バーチャル像形成システムを使用して、見られる現実のシーンにバーチャル像を重ね合わせる。バーチャル像を形成し視聴者の視界において現実の画像コンテンツと組み合わせることができる能力は、拡張現実結像装置を、現実世界を同時観察できない他のバーチャル像装置と区別する。
【0007】
見る者にとって意図された位置にバーチャル像を形成することを成功させるためには、光学装置が様々な幾何学的および位置的要件を満たすことが必要である。これらの要件は、見る者の位置や見る者の目に対する光学システムの配置などの設計および使用可能性のファクタをしばしば制約する。光学システムは、例えば、見る者の間の解剖学的相違のために、特定の見る者または目的にとって最も有用な位置に、バーチャル像を正確に位置決めすることができない場合がある。見る者は、視界内で利用可能なバーチャル像コンテンツを有することを望むかもしれないが、視野内の現実世界の対象に画像コンテンツを直接重ね合わせたり、部分的に隠すことを望まないかもしれない。多くの従来のHMD光学設計での硬直した制約は、拡張現実システムを実用的な機能として用いるのに不便なものにしている可能性がある。
【0008】
したがって、バーチャル像自体の相対的な位置は勿論のこと、バーチャル像のために用いられる光学的構成要素の配置に、ある程度の柔軟性を提供する方法および装置は、実用性があることが理解されよう。
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、コンパクトなヘッドマウントディスプレイ(ニアアイディスプレイ)内に像を表示する技術を進歩させることにある。有利なことに、本開示の実施形態は、結像光ガイド付きのウエアラブルディスプレイを提供し、この結像光ガイドは、見る者に高解像度で広視野(FOV)のコンテンツを表示するための拡大された瞳孔サイズを提供する。さらに、本開示の実施形態は、視聴者がウエアラブルディスプレイを取り外すことなく、バーチャル像コンテンツの視認性を妨害することなく、バーチャル像コンテンツの相対位置を手動で調整することを可能にする。
【0010】
本発明の態様、目的、特徴および利点は、好ましい実施形態の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を検討し、添付の図面を参照することにより、より明確に理解され、認識されるであろう。
【0011】
本開示の一態様によれば、フレームを含むウエアラブルディスプレイ装置が提供される。フレームは、見る者の頭部にディスプレイ装置を支持する。フレーム内に取り付けられたプロジェクタは、経路に沿って発せられる角度的に関連付けられた画像担持光のビームを、生成する。結像光ガイドは、画像担持光のビームの経路において、フレームの前部に結合される。結像光ガイドは、(a)透明な光学材料から形成された基板を有する導波路と、(b)導波路に形成され、画像担持光のビームを導波路内に導くように配置されたインカップリング回折光学素子と、(c)導波路に形成された回転光学素子と、を含んでいる。この回転光学素子は、インカップリング回折光学素子からのビームを、第1の次元(dimension)で拡大し、この拡大された画像担持光のビームをアウトカップリング回折光学素子に向けるように配置されている。アウトカップリング回折光学素子も導波路に形成され、画像担持光のビームを第2の次元で拡大し、見る者のアイボックス内にバーチャル像を形成するように配置されている。マウントは、結像光ガイドを見る者の前で支持し、プロジェクタに対して導波路を水平角度調整するための垂直ヒンジを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書は、本発明の主題を特に指摘し明確に主張する特許請求の範囲で結論づけているが、本発明は、添付の図面と以下の説明からより良く理解できるであろう。
【0013】
図1】回折ビームエキスパンダとして構成された単眼式結像光ガイドの1つの可能な構成の簡略化した断面を示す概略図である。
【0014】
図2】回転格子付きの回折ビームエキスパンダとして構成された結像光ガイドを示す斜視図である。
【0015】
図3A】バーチャル像を形成する光がコリメートされた光のビームとして眼に提供される様子を示す概略断面図である。
【0016】
図3B】視野内の実際の対象に対する見る者の焦点を示す概略断面図である。
【0017】
図4A】結像光ガイドがバーチャル像をどのように形成するかを概略的に示す平面図である。
【0018】
図4B】画像担持光の入射角がバーチャル像の見かけの位置にどのように影響するかを概略的に示す平面図である。
【0019】
図4C図4Bとは反対の方向に入射を変化させた場合のバーチャル像VIの相対的シフトを概略的に示す平面図である。
【0020】
図5】プロジェクタを固定位置にし、入射角を変化させるために結像光ガイドを移動させることにより、バーチャル像位置の相対的なシフトがどのように行なわれるのかを概略的に示す平面図である。
【0021】
図6A】発射された光の入射角が垂直の場合に、結像光ガイドがどのようにバーチャル像を形成するかを概略的に示す側面図である。
【0022】
図6B】発射された光の入射角が斜めの場合に、結像光ガイドがどのようにバーチャル像を形成するかを概略的に示す側面図である。
【0023】
図7】結像光ガイドを移動可能に支持する、調整可能な結像装置の一部を示す斜視図である。
【0024】
図8】異なる角度位置に動かされた導波路を示す斜視図である。
【発明の詳細な説明】
【0025】
本開示は特に、本発明に係る装置の一部を構成する要素、または本発明に係る装置と直接的に協働する要素に向けられている。具体的に記載されていない要素は、当業者に周知の様々な形態を取ることができることを理解すべきである。
【0026】
本明細書で使用される場合、「第1」、「第2」等の用語は必ずしも順番や優先順位を示すものではなく、特に明記しない限り、単に1つの要素または要素の集合を他と区別するために用いられる。用語「頂」および「底」は、必ずしも空間的位置を示すのではなく、平坦な導波路の対向面を区別するなど、構造に関する相対的な情報を提供する。
【0027】
本明細書の文脈において、「見る人」、「操作者」、「観察者」、および「利用者」という用語は均等とみなされ、HMD装置を装着する人を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「励起可能(energizable)」は、電力を受け取ったとき、およびオプションで許可信号を受け取った時に指示された機能を実行する装置または構成要素のセットに関する。
【0029】
用語「作動可能」は、通常の意味を有し、刺激への応答、例えば電気信号に応答として作動することができる装置または構成要素に関する。
【0030】
ここで使われる「集合(set)」という用語は非空集合を指し、集合の要素の集まりという概念として初等数学で広く理解されている。「部分集合(subset)」という用語は、特に明記されない限り、非空の真部分集合、すなわち、1以上の要素を持つ、より大きな集合の部分集合を指す。集合Sの部分集合が集合Sの全体集合であってもよい。しかし、集合Sの「真部分集合(proper subset)」は、集合Sに完全に含まれ、しかも集合Sの1つ以上の要素を含まない。
【0031】
本開示の文脈において、「斜(oblique)」という用語は、90°の整数倍でない角度を
意味する。例えば、2つの線、線形構造、あるいは平面は、約5°以上平行から離れた角度、あるいは約5°以上垂直から離れる角度で、互いに広がったり収束したりする時、互いに「斜」であると見なされる。
【0032】
本開示の文脈において、「波長帯域(wavelength band)」及び「波長範囲(wavelength range)」の用語は均等であり、カラーイメージングの技術分野の当業者によって使用されるような標準的な意味合いを有し、多色画像の1つまたはそれ以上の色を形成するために使用される光の波長の範囲を指す。異なる波長帯域は、従来のカラーイメージング用途において赤色、緑色および青色の原色を提供するような、異なる色チャンネルを介して方向付けされる。
【0033】
光学システムは、実像投射の代わりに、バーチャル像を表示することができる。実像を結ぶ方法とは対照的に、バーチャル像がディスプレイ面に結ばれることはない。つまり、ディスプレイ面がバーチャル像を知覚する位置にあるとしたら、ディスプレイ面に像は結ばれない。拡張現実表示において、バーチャル像表示には固有の利点が数多くある。例えば、バーチャル像の見かけの大きさはディスプレイ面の寸法や位置によって制限されない。しかも、バーチャル像のソースオブジェクト(source object)は小さくてもよい。簡単な例として、拡大鏡はそのオブジェクトのバーチャル像を提供する。実像を投影するシステムに比べて、ある程度離れたところにあるように見えるバーチャル像を結ぶことによって、より現実的な視覚体験を提供することができる。また、バーチャル像を提供すれば、実像投影の場合には必要となるスクリーンを補う必要が無くなる。
【0034】
本開示において、「結合(coupled)」という用語は、2以上の構成要素間の物理的な
関連、接続、関係又は連結を指し、1つの構成要素の配置が、それと結合した構成要素の空間的配置に影響を及ぼすような状態を指す。機械的結合については、2つの構成要素が直接的に接触している必要はなく、1以上の中間構成要素を介して連結していてもよい。光学カップリング(optical coupling)の構成要素は、光エネルギーが光学装置に入力され、光学装置から出力されることを許容する。「ビーム拡大器(beam expander)」と「瞳拡大器(pupil expander)」という用語は同義であると見なされ、ここでは交換可能に用いられる。
【0035】
図1は、光ガイド10の一つの従来構造を簡略化した断面図を示す概略図であり、この光ガイド10は、インカップリング回折光学素子IDO(入力側結合回折光学素子)のようなインプットカップリング光学素子と、アウトカップリング回折光学素子ODO(出力側結合回折光学素子)のようなアウトプットカップリング光学素子と、を備えた単眼タイプの光回折ビーム拡大器または射出瞳拡大器として構成されている。インカップリング回折光学素子IDOとアウトカップリング回折光学素子ODOは、基板Sを有する透明な平面導波路22に配置されている。この例では、インカップリング回折光学素子IDOは反射型回折格子として示されている。しかしながら、インカップリング回折光学素子IDOは、透過型回折格子、体積ホログラムまたは他のホログラフィック回折素子、または入光する画像担持光を回折する他のタイプの光学部品であってもよい。これらは、導波路基板Sの下面12に配置される。この下面12で、入射光波W1は最初に導波路基板Sと相互作用する。
【0036】
バーチャルディスプレイシステムの一部として使用される場合、インカップリング回折光学素子IDOは、角度的に関連付けられた複数の入射画像担持光ビームW1の各々と結合する。この画像担持光ビームW1は、画像作成部(imager)から適切なフロントエンド光学系(図示せず)を介して基板Sの導波路22に入り込む。入力光ビームW1は、インカップリング回折光学素子IDOによって回折される。例えば、一次回折光は、角度的に関連付けられたビームWGの集合として基板Sに沿って伝播し、図2の右方向に移動し、アウトカップリング回折光学素子ODOに向かう。格子または他のタイプの回折光学素子間において、光は全内部反射(Total Internal Reflection:TIR)によって導波路22に沿って運ばれまたは向けられる。アウトカップリング回折光学素子ODOは、ビーム長さ方向に沿ってすなわち図1のx軸に沿って伝播された光ビームWGと多数の回折遭遇(multiple diffractive encounter)することにより、ビーム拡大に寄与し、各遭遇位置から回折光を観察者の目の意図された位置に向かって方向付けする。
【0037】
図2は、中間回転格子TGを用いてx軸及びy軸に沿うビーム拡大を提供する公知のビーム拡大器として構成された結像光ガイド20を示している。中間回転格子TGは、インカップリング回折光学素子IDOからの光出力(第1の回折モード)を、アウトカップリング回折光学素子ODOへと再方向付けする。図2の装置では、インカップリング回折光学素子IDOは、周期dの周期的な罫線を含んでおり、角度的に関連付けられた入力光ビームW1を回折して、角度的に関連付けられたビームWGの集合として導波路22に送り、全内部反射により、初期方向で中間回転格子TGに向かって伝播させる。中間格子TGは光路内でのその機能ゆえに、「回折格子」と呼ばれており、その格子ベクトル(grating vector)にしたがい、導波路22内からのビームWGをアウトカップリング回折光学素子ODOに向けて再方向付けする。これにより、インカップリング回折光学素子IDOとアウトカップリング光学素子ODOの格子ベクトルの差に対処する。中間格子TGは、回折素子の角度配向および間隔周期dによって決定される間隔配列を有し、内部反射されたビームWGを方向付けるだけでなく、伝播の初期方向に沿ってすなわち図2におけるy軸に沿って伝播してきた光ビームWGとの多数の回折遭遇(multiple diffractive encounter)を介して、ビーム拡大に寄与する。アウトカップリング回折光学素子ODOは、再方向付けされた伝播方向に沿って、すなわち図2におけるx軸に沿って伝播された光ビームWGとの多数の回折遭遇を介して、直交する方向のビーム拡大に寄与する。
【0038】
一般にkで示され色チャンネル内の光に特有の下付き文字で示される格子ベクトルは、導波路表面の平面と平行に延び、インカップリングおよびアウトカップリング回折光学素子IDO,ODOの周期性の方向にある。
【0039】
結像(imaging)に使用される光ガイドの設計を考える場合、導波路内を移動する像担持光は、インカップリング機構が回折格子、ホログラム、プリズム、ミラー、または他の機構のいずれを使用するかにかかわらず、インカップリング光学素子によって効果的にエンコードされる。入力において起きる光の反射、屈折及び/又は回折は、観察者に提示されるバーチャル像を再形成するために、出力によってデコードされなければならない。
【0040】
インカップリング回折光学素子IDOとアウトカップリング回折光学素子ODOのような入力カップリングと出力カップリングとの間の中間位置に配置された回転格子TGは、典型的には、エンコードされた光のあらゆる変化を最小にするように選択される。このように、回転格子のピッチは、好ましくは、インカップリング回折光学素子IDOおよびアウトカップリング回折光学素子ODOのピッチに一致する。さらに、エンコードされた光束が回転格子の一次反射の1つにより120°で回転されるように、回転格子をインカップリング回折光学素子IDOとアウトカップリング回折光学素子ODOに対して60°で方向付けすることにより、バーチャル像を提示することができる。回転格子TGの回折効果は、回転格子の格子ベクトルと平行な入射光のベクトル成分で最も顕著に表れる。このように配置された回転格子は、バーチャル像のエンコードされた角度情報の変化を最小限に抑えながら、ガイド基板内で光束の方向を変える。このように設計されたシステムにおいて得られるバーチャル像は回転されない。このようなシステムがバーチャル像に回転を導入した場合、回転効果は、異なる視野角および光の波長にわたって不均一に分布することがあり、結果として得られるバーチャル像に望ましくない歪みまたは色収差を引き起こす。
【0041】
本明細書に記載される実施形態について想定される回転格子TGの使用は、入力ビームおよび出力ビームが互いに対称的に配向されるように、光ガイド20の設計に固有の幾何学的精度を持たせる。格子TGの適切な間隔および方向性では、格子ベクトルkは、インカップリング回折光学素子IDOからの光を、アウトカップリング回折光学素子ODOに導く。結像光ガイドで見る人のために形成された画像は、無限遠または少なくとも光ガイド20の正面でフォーカスされたバーチャル像であるが、入力画像内容に対する出力画像内容の相対的な向きが保存されていることに留意されたい。x-y平面に対する入射光ビームW1のz軸まわりの回転または角度方向の変化は、アウトカップリング回折光学素子ODOからの出射光の対応する対称的な回転または角度の変化を引き起こすことができる。画像配向の面から、回転格子TGは、あるタイプの光学リレーとして機能するように意図されており、インカップリング回折光学素子IDOを介して入力されアウトカップリング回折光学素子ODOへ方向転換された画像の1つの軸に沿って、拡大を行なう。回転格子TGは、典型的には、傾斜した又は正方形の格子であるか、またはブレーズド格子でもよい。光をアウトカップリング回折光学素子ODOに向かって回転させるために、反射表面を用いることもできる。
【0042】
図2の構成を使用する場合、2つの異なる次元のビーム拡大が提供される。回転格子TGは、インカップリング回折格子IDOからの回折されたビームを、図示のようにy方向に拡大する。アウトカップリング回折光学素子ODOは、図示のように、y方向と直交するx方向に回折ビームをさらに拡大する。
【0043】
図2に示す公知の結像光ガイド20は、見る人に画像コンテンツを提供するための既存の多くのヘッドマウンテッド装置(頭部装着型装置;HMD)で使用されている。このタイプのビームエキスパンダ(ビーム拡大器)は、画像コンテンツを透明な結合光ガイドを通して見える現実の視野に重ね合わせることができる拡張現実(Augmented Reality)アプリケーションに特によく適している。
【0044】
拡張現実(AR)アプリケーションは、バーチャル像と視野(FOV)からの現実世界の画像コンテンツとを組み合わせ、しばしばバーチャル像コンテンツをFOVに重ね合わせる。生成されたバーチャル像は、光学システムによって形成される。結像光ガイド20(図2)の場合、バーチャル像を形成する光は、図3Aの概略断面図に示されるように、コリメートされた光として眼に供給される。眼は、あたかもかなり遠い距離にある対象物にフォーカスするように、この光を受け入れる。図3Bに示されるように、約5mより遠い対象を有する視野(FOV)については、通常の眼のフォーカス状態は一般に無限遠焦点に十分近く、見る人は焦点距離の相違に気づかない。
【0045】
本開示の装置および方法を理解するために、表示されるバーチャル像がどのように形成されるかを考察することは有益である。図4Aは、結像光ガイド10が導波路22に沿って伝搬するコリメートされた光ビームを用いて、バーチャル像をどのように形成するかを示す。プロジェクタ40は、後に示すように結像光ガイド10を保持するフレームまたはマウント内に嵌め込むことができる。プロジェクタ40は、画像担持光ビームを、インカップリング回折光学素子IDOを介して導波路22に導くように方向付ける。光は導波路基板Sを通って運ばれ、アウトカップリング回折光学素子ODOに至り、観察者の眼に見えるバーチャル像を形成する。バーチャル像VIは、見る者の真正面で視野内に現れる。
【0046】
図4Bは、プロジェクタ40から放射され、導波路22に入射する画像担持ビームのうちの中央ビームの入射角が、バーチャル像VIの見かけの位置にどのように影響するかを示している。導波路22への入射角が変化すると、結像光ガイド10はこの角度変化を反映し、図4Bに誇張して示すようにバーチャル像VIをシフトされた位置に形成する。図4Cは、入射が他の方向に変化した場合のバーチャル像VIの相対的なシフトを示している。図4B図4Cでは、プロジェクタ40の角度位置の相対的変化が示されている。
【0047】
図5は、プロジェクタ40を固定位置にしてバーチャル像VIの位置を相対的にシフトさせ、導波路22を垂直軸の周りに旋回させて入射角を変化させることを示す。相対角度の変化は、バーチャル像VI位置の対応するシフトを引き起こす。
【0048】
バーチャル像VIの位置の変化は、垂直方向でも行うことができる。図6A図6Bは、プロジェクタ40からの中心ビームが、導波路22に垂直入射した状態および斜め入射した状態を示す側面図である。プロジェクタ40が固定された状態で、導波路22が水平軸を中心として旋回され、導波路22が垂直位置から相対的に傾斜される。
【0049】
本開示の一実施形態は、ヒンジ構造を用いて導波路22を回転させることにより、生成されたバーチャル像の水平位置をシフトさせる。
【0050】
図7は、可動構造の導波路22を支持する調整可能な結像装置70を示す。ヒンジ88は、図8に示すように、フレームのプロジェクタ部分68内のプロジェクタ40を動かすことなく、導波路22が水平面内で垂直軸の周りに回動することを許容する。プロジェクタ40が固定位置にあり、導波路22のみが動く。バーチャル像への視野が導波路22に伴い動くだけでなく、バーチャル像が導波路22内を移動することにより、バーチャル像をユーザーの視線内でより良好に位置決めすることが可能になる。
【0051】
本明細書に記載の実施形態は、インカップリング機能とアウトカップリング機能のための回折光学素子と、一般的な平面導波路を用いている。インカップリングおよびアウトカップリングは、角度的にエンコードされたビームを導波路に導入し導波路から導出させるように方向付けし、所望のビーム拡大を提供するために、例えば反射等、回折以外のメカニズムを用いることができることに留意されたい。インカップリング光学素子およびアウトカップリング光学素子の一方または両方は、例えば、プリズムであってもよい。インカップリングまたはアウトカップリング光学系は、導波路の平面内に配置され外面に対して傾斜した1つまたは複数のミラーであってもよい。ミラーは部分的に反射することができ、互いに平行に配置することができる。
【0052】
本発明は、現在の好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明されているが、本発明の精神および範囲内で変形および修正が可能であることが理解されるであろう。したがって、ここに開示された実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないとみなされる。 本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その均等物の意味および範囲内に入るすべての変更は、その中に包含されることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8