特許第6792623号(P6792623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792623改良された凝集剤によってスラッジを脱水する方法及びこの方法を実施するプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792623
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】改良された凝集剤によってスラッジを脱水する方法及びこの方法を実施するプラント
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20190101AFI20201116BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C02F11/14
   C02F11/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-534047(P2018-534047)
(86)(22)【出願日】2017年5月15日
(65)【公表番号】特表2019-501020(P2019-501020A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】EP2017061634
(87)【国際公開番号】WO2017211542
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2018年6月28日
(31)【優先権主張番号】1655229
(32)【優先日】2016年6月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503289595
【氏名又は名称】ヴェオリア・ウォーター・ソリューションズ・アンド・テクノロジーズ・サポート
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】クランポン,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ジャフェ,マリク
(72)【発明者】
【氏名】ギブラン,エリク
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/065509(WO,A1)
【文献】 特開平11−309496(JP,A)
【文献】 特開2008−080252(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/079175(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/079177(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0034582(US,A1)
【文献】 特開2008−307535(JP,A)
【文献】 特開2009−006319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジに凝集剤を注入するステップと、前記スラッジを脱水するステップとを含む、凝集剤によってスラッジを脱水する方法であって、
前記方法は、備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において凝集剤を注入するステップを含み、前記予備ステップは、1000rpm〜2000rpmの回転速度で回転する軸に回転可能に取り付けられたブレードを備える円筒チャンバから構成されたミキサー内において、前記スラッジを混合し、これによって、前記スラッジを分解し、その粘度を低下させ、前記ミキサーからポンプを備えた配管を介して前記スラッジを前記脱水するステップに放出するようになっており、
前記方法は、前記ミキサー及び前記配管を減圧し、その結果として、キャビテーションによる前記スラッジの分解を生じさせる、前記予備ステップに後続して前記脱水するステップに先行する減圧ステップを含み、前記減圧ステップは、少なくとも0.1秒にわたって行われるようになっており、前記配管の前記減圧ステップは、前記ポンプのキャビテーションによるものであ
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記減圧ステップは、0.1〜30秒間にわたって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱水するステップは、少なくとも1つの遠心分離機を用いて実施される遠心分離ステップであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スラッジを予熱するために、前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、温水及び/又は生蒸気又はフラッシュ蒸気及び/又は凝縮物を注入することを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、前記スラッジ内に希釈水を注入することを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、前記スラッジを酸化させることを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、前記スラッジ内に凝結剤を注入することを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
スラッジ脱水装置と、凝集剤を注入する手段とを備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法を実施するプラントであって、前記プラントは、回転可能に取り付けられたブレードを備える円筒チャンバから構成されたミキサーであって、前記脱水装置の上流に配置されている、ミキサーと、前記ミキサーから前記スラッジ脱水装置にラッジを移送する移送配管とを備えており、前記プラントは、前記ミキサーの前記チャンバ及び前記配管を減圧する手段を備え、前記減圧する手段は、前記ミキサーの上流に設けられた弁と、前記ミキサーの下流に設けられたポンプとを備えていることを特徴とする、プラント。
【請求項9】
前記脱水装置は、遠心分離機であることを特徴とする、請求項に記載のプラント。
【請求項10】
前記ミキサーは、凝集剤を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項又はに記載のプラント。
【請求項11】
前記ミキサーは、凝結剤を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項10のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項12】
前記ミキサーは、希釈水を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項11のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項13】
前記ミキサーは、温水及び/又は生蒸気又はフラッシュ蒸気及び/又は凝縮物を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項12のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項14】
前記ミキサーは、圧縮空気を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項13のいずれか一項に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、有機物を含むか又は有機物を含まないスラッジの処理の分野である。特に、本発明は、排水処理プラントにおいて生じた(他の廃棄物と混合されているか又は混合されていない)スラッジ、飲料水製造方法において生じたスラッジ、又は他の工業プロセスにおいて生じたスラッジの処理に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、ポリマーなどの凝集剤の注入によって、スラッジを(その発生源を問わず)脱水する方法に関する。このような方法を、以下、「凝集剤による脱水(flocculating reagent−assisted dewatering)」方法と呼ぶことにする。
【0003】
このような方法は、スラッジ、特に、すでに増粘されているスラッジ、具体的には、15重量%未満(好ましくは、2〜7重量%)の低乾燥度を有するスラッジの脱水に特に適している。本明細書において、「スラッジ乾燥度(sludge dryness)」という用語は、スラッジに含まれる乾燥物の重量%として理解されたい。さらに具体的には、スラッジは、鉱物質と水との混合物から構成される流体であり、工業プロセスにおいて生じる場合には、化学残滓、とりわけ、有機物を含んでいる。スラッジ乾燥度は、乾燥物の重量とスラッジの全量との間の重量比を求めることによって、計算される。
【0004】
スラッジは、具体的には、飲料水の浄化プロセスにおいて生じるものであってもよく、又は、家庭用若しくは工業用の排水処理プロセスにおいて生じるものであってもよい。
【背景技術】
【0005】
工業化及び都市化が進むにつれて、水処理プロセスは、ますます多量のスラッジを生じるようになっている。
【0006】
ここ数十年間において、スラッジの量を低減させる方法、特に、脱水方法が開発されてきている。
【0007】
これらの脱水方法は、(遠心分離機やドラムやテーブルやトレイフィルタやベルトフィルタなどの)種々の装置を用いることによって、かつ当該装置内のスラッジからの水の分離を促進する適切な凝集剤及び/又は凝結剤を用いることによって、実施するようになっている。
【0008】
凝集剤による脱水方法を実施するコストは、凝集剤のコストによって無視できないほど影響される。特に脱水し難いある種のスラッジは、多量の凝集剤を必要とし、これによって、このような方法を実施するプラントの操業コストを増大させることになる。
【0009】
先行技術において、凝集剤の消費を最適化させるために又は凝集剤の使用を回避するために、種々の方法が提案されてきている。
【0010】
SUEZ EnvironmentによるDehydris Lime(登録商標)法が知られている。この方法では、脱水されるべきスラッジと石灰とをミキサー内において混合し、次いで、該混合物を遠心分離機に移送し、その一方、ポリマーを該遠心分離機の注入口に注入するようになっている。
【0011】
このような技術は、凝集剤に加えて他の添加物、すなわち、石灰を供給する必要があるという欠点、及びこれによってスラッジの重量を増大させるという欠点を有している。分配されるポリマーの量の節約は、石灰の供給及びスラッジの排出量の増大に伴う支出によって、少なくとも部分的に相殺されることになる。
【0012】
SUEZ EnvironentによるDehydris Osmo(登録商標)法も知られている。この方法は、スラッジのゼータ電位を変更させるために、スラッジに磁場を印加することを意図している。
【0013】
このような方法は、実施する技術が複雑な磁場の印加を含むという欠点を有している。
【0014】
2つの主ステップを含むAquenによるFlocFormer(登録商標)法も知られている。第1のステップでは、スラッジを受け入れる撹拌チャンバ内にポリマーが注入される。第2のステップでは、第2の大きなチャンバ内においてスラッジとポリマーとの混合物をゆっくりと撹拌しながら凝集させ、フロック(floc)を形成するようになっている。
【0015】
この技術は、極めて大容量となることが想定される凝集チャンバに関連してエネルギー消費が高くなるという欠点を有している。さらに、このような方法を実施する装置は、脱水プラントの上流に独立して設けられるので、プラントから独立して管理されねばならない。
【0016】
OregeによるSLG(登録商標)法も知られている。この方法は、スラッジを約1〜2バールの圧縮空気の緩慢な流れに晒した後、スラッジと圧縮空気との混合物を脱気によって膨張させ、これによって、後続の脱水を容易にする技術を提案している。ポリマーは、遠心分離機の注入口に注入されるか、又は先行技術によって場合によっては推奨されているように、遠心分離機のいくらか上流においてスラッジ供給パイプに注入されるようになっている。
【0017】
このような方法は、保守を必要とする高価な要素群、例えば、圧縮機、リアクタ、又は他の分離器を含む嵩張ったプラント内において実施されるという欠点を有している。
【0018】
EMOによるIHM(登録商標)(「インライン式ハイドロダイナミックミキサー」)法は、ポリマーを遠心分離機の上流に注入し、そして、スラッジ/ポリマーの混合物の状態を改善するために弁によって乱流を生じさせるステップを含んでいる。乱流を生じさせるのに必要なエネルギーは、流体自体から、従って、遠心分離機の供給ポンプから得られるようになっている。
【0019】
最後に、SiemensによるCrown(登録商標)法も引用することができる。この方法では、ノズルにおけるスラッジの分解を促進させるために、消化槽の上流においてベンチュリ管を介してスラッジを20バールに加圧するようになっている。
【0020】
先行技術の上記方法のいずれも、嵩張ったプラント内において実施されなければならないという欠点を共有している。さらに、上記方法のいずれも、石灰の添加を除けば、ポリマー消費の実質的な節約を明らかにしておらず、またどのような乾燥度の有意義な増大、すなわち、1.5%を超える乾燥度の増大も示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、同等レベルの凝集剤消費及び同等品質の脱離液の条件下での任意の脱水方法によって生じたスラッジ、さらに具体的には、遠心分離機によって生じたスラッジの乾燥度を改良する方法、及び/又は同等品質の脱離液の条件下での凝集剤の消費を最適化する方法、及び/又は既存の遠心分離機などの脱水装置の負荷を最適化する方法、及び/又は凝集剤による固形相の捕獲率を増大させる方法を提案することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、既存の脱水方法に害を与えることなく容易に組み入れられるこのような方法を開示することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、このような方法を実施するプラントを提案することにある。
【0024】
本発明の1つの目的は、少なくともいくつかの実施形態において、既存の脱水装置の操業を最適化するために該装置に組み込まれるこのようなプラントを開示することにある。
【0025】
特に、本発明の1つの目的は、主たる遠心分離機のみならずフィルタプレス及びベルトフィルタによっても構成されるスラッジ脱水装置の操業を最適化させるこのようなプラントを開示することにある。
【0026】
本発明の1つの目的は、すでに適所に配置されている遠心分離機などの脱水装置の取外し、移動、又は交換を行うことなく、極めて容易に設置することができるこのようなプラントを開示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの目的及び以下に明らかになるであろう他の目的は、ポリマーなどの凝集剤をスラッジに注入するステップと、スラッジを脱水するステップとを含む、凝集剤によってスラッジを脱水する方法に関する本発明によって達成される。この方法は、予備ステップを含み、該予備ステップは、500rpm〜4000rpmの回転速度で回転する軸に回転可能に取り付けられたブレードを備える円筒チャンバから構成されたミキサー内において、スラッジを混合し、これによって、スラッジを分解し、その粘度を低下させ、次いで、スラッジをミキサーから配管を介して脱水ステップに放出することを特徴とすると共に、この方法は、ミキサー及び配管を減圧し、その結果として、キャビテーションによるスラッジの分解を生じさせるステップを含み、該減圧ステップは、少なくとも0.1秒にわたって行われることを特徴とする。
【0028】
従って、本発明は、脱水されるべきスラッジを分解し、その粘度を低下させるために該スラッジを混合することを意図する、実施が容易な方法を提案することになる。ミキサーの減圧は、熱伝達を改良することによって、スラッジの分解を促進する。配管の減圧は、キャビテーションによるスラッジの機械的な分解を可能にする。
【0029】
この方法を用いることによって、凝集剤に対するスラッジの親和性が増大し、当然の結果として、脱水装置内における脱水の効率が向上することになる。また、この方法は、スラッジ内に存在する最も大きい粒子及び/又は最も重い粒子を微細化し、潜在的に該粒子に結合された水をさらに解放することも可能にする。機械的な分解中に、この方法は、結合水をさらに解放させ、粒子の大きさをさらに縮小させる。このような効率の向上の結果として、同等レベルの凝集剤の消費の条件下での脱水装置から生じるスラッジの乾燥度が高められ、又は所定のスラッジ乾燥度を得るために用いられる凝集剤の量が実質的に低減され、又は凝集剤による有機物の捕獲の効率が高められ、又は脱水装置の負荷が増大されることになる。いずれにしても、本発明は、このような装置の操業コスト及び排出スラッジのコストを大幅に節約することになる。
【0030】
好ましくは、ミキサー及び配管に対して行われる減圧ステップは、0.1〜30秒間にわたって、好ましくは、1〜10秒間にわたって、0.001〜1バール(大気圧)未満の圧力で行われるようになっている。
【0031】
有利には、スラッジを混合する予備ステップは、スラッジをミキサー内に導くことを含んでいる。ミキサーは、好ましくは1000rpm〜2000rpmの範囲内の回転速度で回転する軸に回転可能に取り付けられたブレードを備える円筒チャンバから構成されている。このような混合速度は、求められる目的をさらに最適化する。すなわち、このような混合速度によって、凝集剤の効率を高めることができる。
【0032】
本発明による方法は、任意の脱水方法を用いて実施することが可能である。従って、有利には、脱水ステップは、少なくとも1つの遠心分離機を用いて実施される遠心ステップである。遠心分離機は、スラッジを脱水するために一般的に用いられている。遠心分離機は、高価な装置であり、その価格は、大きさ及び性能によって大きく異なる。従って、本発明による方法は、低性能レベルの装置(旧式の装置)を高性能レベルの装置(より新しい装置)に交換する代替案として経済的な利点をもたらすことになる。
【0033】
本発明の代替的な一実施形態によれば、ポリマーは、遠心分離機の注入口内に注入されるようになっている(遠心分離機の注入口(spout)は、遠心分離されるべき材料が入る入口個所であると理解されたい)。
【0034】
しかし、特に有利な一つの代替的な実施形態によれば、凝集剤を注入するステップは、予備ステップ最中又は予備ステップの上流過程においてポリマーを注入することによって行われるようになっている。このような代替的な実施形態によって、凝集剤の効率、従って、脱水装置の性能レベルの効率を最適化させることができる。このような代替的な実施形態によれば、凝集剤は、すでに崩壊し、かつキャビテーションによって機械的に分解されたスラッジと混合され、これによって、凝集剤の機能を最適化する親和性の高い混合が得られることになる。
【0035】
本発明の代替的な実施形態によれば、この方法は、予備ステップの最中又は予備ステップの上流過程において、添加物、特に、塩化第二鉄などの凝結剤、COなどのpH調整剤をスラッジに注入することをさらに含んでいる。このようなステップによって、スラッジへの凝集剤の作用がさらに最適化される。
【0036】
本発明の代替的な実施形態によれば、この方法は、スラッジを予熱するために、予備ステップの最中又は予備ステップの上流過程において、温水及び/又は生蒸気又はフラッシュ蒸気及び/又は凝縮物を注入することを含んでいる(このような凝縮物は、他のプロセスから得られ、ここで用いられてもよい)。このような予熱ステップは、凝集剤の消費のレベルを最適化しながら、スラッジの粘度をさらに低下させ、その脱水をさらに最適化させることになる。
【0037】
本発明の代替的な実施形態によれば、この方法は、予備ステップの最中又は予備ステップの上流過程において、希釈水をスラッジ内に注入することをさらに含んでいる。このようなステップは、スラッジを希釈し、凝集剤とスラッジとの間の接触をさらに最適化する。
【0038】
また、本発明の代替的な実施形態によれば、この方法は、予備ステップの最中又は予備ステップの上流過程においてスラッジを酸化をさせることを含んでいる。このステップも、ミキサーのチャンバ内にスラッジ/ポリマー/空気のエマルジョンを形成することによって、凝集剤をスラッジに対して良好に反応させることができる。
【0039】
上記の流体の全ては、ミキサーのチャンバ内において極めて高速に混合され、ミキサーの寸法は、この混合に応じて算出されるようになっている。
【0040】
本発明は、スラッジ脱水装置と凝集剤を注入する手段とを備える、本発明による方法を実施するプラントにさらに関する。このプラントは、回転可能に取り付けられたブレードを備える円筒チャンバから構成されたミキサーであって、脱水装置の上流に配置されている、ミキサーと、スラッジをミキサーから脱水装置に移送する移送配管と、を備えることを特徴とすると共に、このプラントは、ミキサーのチャンバ及び配管を減圧する手段を備えることを特徴とする。
【0041】
このようなミキサーは、商業的に入手可能である。ブレードは、スラッジを混合することのみを目的とする。これらのブレードは、チャンバ内におけるスラッジの前方移動に関与するものではない。円筒チャンバの容量は、小さく、円筒チャンバ内の滞留時間は、極めて短く、数秒程度である。
【0042】
好ましくは、減圧手段は、ミキサーの上流に設けられた弁及びミキサーの下流に設けられたポンプを備えており、配管内を移行するスラッジのキャビテーションを可能にするように作動可能になっている。
【0043】
このようなミキサー及び減圧手段は、脱水装置を含む既存のプラント内にその性能レベルを高めるために容易に組込み可能になっている。
【0044】
さらに有利には、脱水装置は、遠心分離機である。
【0045】
好ましくは、ミキサーは、ポリマーなどの凝集剤を注入する手段に接続されている。
【0046】
代替的な実施形態によれば、ミキサーは、有機凝結剤、又は塩化第2鉄などの無機凝結剤を注入する手段に接続されている。
【0047】
代替的な実施形態によれば、ミキサーは、希釈水を注入する手段に接続されている。
【0048】
代替的な実施形態によれば、スラッジを予熱するために、ミキサーは、温水及び/又は生蒸気又はフラッシュ蒸気及び/又は凝集物を注入する手段に接続されている。
【0049】
また、代替的な実施形態によれば、ミキサーは、圧縮空気を注入する手段に接続されている。
【0050】
本発明及びその種々の利点は、本発明の範囲を制限しない例示的な目的で記載される以下の本発明の実施形態の説明を図面を参照して読むことにより、さらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明によるプラントの模式図である。
図2】本発明によ(遠心分離機やドラムやテーブルやトレイフィルタやベルトフィルタなど)る方法及び先行技術による従来方法を用いる図1のプラントの操業中の凝集剤(ポリマー)消費のレベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[プラント]
図1を参照すると、プラントは、遠心分離機によって構成されたスラッジ脱水装置1を備えている。この遠心分離機は、スラッジ供給手段2及びポリマー注入手段3に接続されている。
【0053】
本発明によれば、プラントは、脱水装置の上流に設けられたミキサー4をさらに備えている。また、プラントは、水供給手段6と、必要に応じて、スラッジの化学的調整を行う場合に塩化第2鉄を注入する手段6aとを備えている。塩化第2鉄は、スラッジのコロイド安定性を低減させるために、任意選択的に添加されるものである。
【0054】
スラッジ供給手段2と、ポリマー注入手段3と、水供給手段6と、任意選択的な塩化第2鉄注入手段6aとは、パイプ12、13、16によって、コレクタ7にそれぞれ接続されている。スラッジとポリマーと(塩化第2鉄が任意選択的に混合される)水とは、弁22、23、26によって、コレクタ7にそれぞれ分配可能になっている。
【0055】
スラッジ供給手段2と、ポリマー注入手段3と、水供給手段6とは、パイプ32、33、36によって、遠心分離機1にそれぞれ接続されている。スラッジとポリマーと水とは、弁42、43、46によって、遠心分離機1の注入口にそれぞれ直接に分配可能になっている。
【0056】
水を混合タンク7及び遠心分離機にそれぞれ移送するパイプ16、36は、各々、共通の流量計56を備えている。
【0057】
本発明によれば、ミキサー4は、ブレード4cが取り付けられた回転軸4bを有する円筒チャンバ4aを備えている。回転軸は、(図1に示されていない)モータによって駆動され、ブレードを500rpmから4000rpmの範囲内の高回転速度で回転させることができる。
【0058】
ミキサー4は、混合タンク7から、弁10を備える共通パイプを介して、ポリマー及び必要に応じて塩化第2鉄及び水と混合されたスラッジを受け入れるようになっている。混合され、かつ分解されたスラッジは、ポンプ12及び弁13を備えるパイプ11によって、遠心分離機に向かって移送される。
【0059】
ここに記載されるプラントは、スラッジと水とポリマーとをコレクタ7に移送することができ、及び/又は遠心分離機1に直接に移送することができるようになっている。
【0060】
[方法]
図1に示されるプラントを作動させ、先行技術及び本発明によって処理された混合スラッジを脱水した。該スラッジの当初の乾燥度は28%である。
【0061】
これらの実験の範囲内において、遠心分離機は、常に、最大能力(2000G)で用いた。
【0062】
第1の実験では、先行技術に従って、弁22、23、26、46を閉じ、弁42、43のみを開き、スラッジ及びポリマーをそれらの供給手段2、3からミキサーを経由することなく直接に遠心分離機1の注入口に導いた。
【0063】
第2の実験では、本発明に従って、弁23、26、46を閉じたままとした。スラッジをタンク7を介してミキサー4内に分配するために、弁22を開き、弁42を閉じた。ポリマーを続けて遠心分離機1の注入口に移送するために、弁43を開いたままとした。
【0064】
第3の実験では、弁26、46を閉じたままとし、そして、本発明に従って、スラッジ及びポリマーをミキサー4に移送させるために、弁22を開いたままとし、弁43を閉じ、弁23を開いた。
【0065】
第3の実験中、ポンプ12を用いて、コレクタ7の混合物をミキサー4にポンプ移送させた。そして、弁10とポンプ12との間のミキサー4のチャンバ及び配管の減圧によって該混合物のキャビテーションを生じさせるために、弁10を1〜5秒間にわたって部分的に閉じた。実際には、この時、該チャンバ及び配管内の圧力は、大気圧未満の0.1から0.3バールの圧力に減圧された。
【0066】
閉じた弁10とポンプ12との間の配管の減圧によって、ポンプ12のキャビテーションが生じ、その結果、ポンプの運転がポンプ性能曲線から外れることになる。このポンプ12の性能をポンプ性能曲線に戻し(ポンプの全動圧(TDH)を修正し)、これによって、ポンプ12に常に一定の負荷を掛け、膠着状態に陥らないようにするために、弁13を操作し、ポンプ12の下流に負荷損失を生じさせるようになっている。
【0067】
3つの実験の各々において、3種類の添加量、すなわち、5kg/TDM(Tones of Dry Matter)、7.5kg/TDM、及び11kg/TDMのポリマーを用いた。
【0068】
第2及び第3の実験において、ミキサーを用いたが、そのブレード速度は、2000rpmとした。このブレード速度によって、スラッジを遠心分離機1に移送する前に分解することが可能になる。
【0069】
スラッジは添加しなかった。なぜならば、ここでは、スラッジは、塩化第2鉄を必要としなかったからである。
【0070】
遠心分離機1から生じたスラッジの乾燥度の結果は、図2に示されるグラフにまとめられている。
【0071】
これらの結果は、ポリマー添加量が同一の場合、本発明によれば、特にポリマーがダイナミックミキサーの上流に設けられたコレクタに注入された時、極めて良好なスラッジ乾燥度を得ることができることを示している。
【0072】
具体的には、1トンの乾燥物当たりのポリマー添加量が11.3kg(11.3kg/TDM)の場合、本発明によれば、32%のスラッジ乾燥度が得られ、ダイナミックミキサーの上流にポリマーを注入することによって、33%を超えるスラッジ乾燥度が得られた。一方、先行技術によって得られた乾燥度は、28.5%にすぎない。これらの結果は、塩化第2鉄及び圧縮空気を施すことなく得られた。なぜならば、これらは、このスラッジに必要とされなかったからである。また、(先行技術による乾燥度28.5%に匹敵する)29%の乾燥度が、わずかに5kg/TDMのポリマーの添加によって得られ、その結果、ポリマーの量が約50%節約された。
なお、本願の出願当初の開示事項を維持するため、本願の出願当初の請求項1〜17の記載内容を以下に記載する
(請求項1)
スラッジに凝集剤を注入するステップと、前記スラッジを脱水するステップとを含む、凝集剤によってスラッジを脱水する方法であって、
前記方法は、予備ステップを含み、前記予備ステップは、500rpm〜4000rpmの回転速度で回転する軸に回転可能に取り付けられたブレードを備える円筒チャンバから構成されたミキサー内において、前記スラッジを混合し、これによって、前記スラッジを分解し、その粘度を低下させ、前記ミキサーから配管を介して前記スラッジを前記脱水するステップに放出するようになっており、
前記方法は、前記ミキサー及び前記配管を減圧し、その結果として、キャビテーションによる前記スラッジの分解を生じさせる減圧ステップを含み、前記減圧ステップは、少なくとも0.1秒にわたって行われるようになっている
ことを特徴とする、方法。
(請求項2)
前記減圧ステップは、0.1〜30秒間にわたって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(請求項3)
前記回転速度は1000rpm〜2000rpmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
(請求項4)
前記脱水するステップは、少なくとも1つの遠心分離機を用いて実施される遠心分離ステップであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
(請求項5)
前記凝集剤を注入するステップは、前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、前記凝集剤を注入することによって行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(請求項6)
前記スラッジを予熱するために、前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、温水及び/又は生蒸気又はフラッシュ蒸気及び/又は凝縮物を注入することを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
(請求項7)
前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、前記スラッジ内に希釈水を注入することを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
(請求項8)
前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、前記スラッジを酸化させることを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
(請求項9)
前記予備ステップの最中又は前記予備ステップの上流過程において、前記スラッジ内に凝結剤を注入することを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
(請求項10)
スラッジ脱水装置と、凝集剤を注入する手段とを備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を実施するプラントであって、前記プラントは、回転可能に取り付けられたブレードを備える円筒チャンバから構成されたミキサーであって、前記脱水装置の上流に配置されている、ミキサーと、前記ミキサーから前記脱水装置に前記スラッジを移送する移送配管とを備えており、前記プラントは、前記ミキサーの前記チャンバ及び前記配管を減圧する手段を備えることを特徴とする、プラント。
(請求項11)
前記減圧する手段は、前記ミキサーの上流に設けられた弁と、前記ミキサーの下流に設けられたポンプとを備えていることを特徴とする、請求項10に記載のプラント。
(請求項12)
前記脱水装置は、遠心分離機であることを特徴とする、請求項10又は11に記載のプラント。
(請求項13)
前記ミキサーは、凝集剤を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載のプラント。
(請求項14)
前記ミキサーは、凝結剤を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載のプラント。
(請求項15)
前記ミキサーは、希釈水を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載のプラント。
(請求項16)
前記ミキサーは、温水及び/又は生蒸気又はフラッシュ蒸気及び/又は凝縮物を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか一項に記載のプラント。
(請求項17)
前記ミキサーは、圧縮空気を注入する手段に接続されていることを特徴とする、請求項10〜16のいずれか一項に記載のプラント。
図1
図2