特許第6792626号(P6792626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792626
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】介助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   A61G5/14
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-538985(P2018-538985)
(86)(22)【出願日】2016年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2016076951
(87)【国際公開番号】WO2018051406
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡志
(72)【発明者】
【氏名】五十棲 丈二
(72)【発明者】
【氏名】野口 剛裕
(72)【発明者】
【氏名】平岡 丈弘
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−110080(JP,A)
【文献】 特開2012−090771(JP,A)
【文献】 特開2012−192901(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/103497(WO,A1)
【文献】 特開2012−200409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00− 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者の上半身を支持して前記被介助者の起立補助を行う介助装置であって、
基台と、
前記基台に昇降可能に設けられ、前記被介助者の上半身を前方より支持する身体支持部材と、
前記身体支持部材に設けられ、前記被介助者により付与される荷重を検出する荷重検出装置と、
前記荷重検出装置によって検出された荷重に基づいて、前記身体支持部材にかかる荷重の前記身体支持部材の前後方向でのかかり度合いを表示する表示装置と、
を備える、介助装置。
【請求項2】
前記荷重検出装置は、
前記被介助者により付与される第一荷重を検出する第一荷重検出器と、
前記身体支持部材において前記第一荷重検出器よりも後方に設けられ、前記被介助者により付与される第二荷重を検出する第二荷重検出器と、
を有し、
前記表示装置は、前記第一荷重及び前記第二荷重に基づいて前記かかり度合いを表示する、請求項1に記載の介助装置。
【請求項3】
前記表示装置は、前記かかり度合いとして、前記第一荷重と前記第二荷重の差を表示する、請求項2に記載の介助装置。
【請求項4】
前記表示装置は、前記かかり度合いとして、前記第一荷重と前記第二荷重の差を表示すると共に、さらに前記第一荷重及び前記第二荷重のそれぞれの大きさを表示する、請求項3に記載の介助装置。
【請求項5】
前記表示装置は、前記第一荷重と前記第二荷重との差、並びに、前記第一荷重及び前記第二荷重のそれぞれの大きさを、前記身体支持部材の動作動画に連動して表示する、請求項4に記載の介助装置。
【請求項6】
前記介助装置は、前記基台に昇降可能に設けられる昇降部材を備え、
前記身体支持部材は、前記昇降部材に前後方向に傾動可能に設けられ、前記被介助者の上半身を支持する、請求項1−5の何れか一項に記載の介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被介助者の起立補助を行う介助装置には、被介助者の脚力による起立能力を向上させることも期待されている。そこで、被介助者の起立補助を行う装置において、被介助者が自身の脚力をどの程度用いているか(装置にどの程度依存しているか)を把握することが、特許文献1,2に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の介助装置は、昇降可能な支持部材に被介助者の身体の一部をもたせかけた状態で起立動作を行う際に、支持部を上昇させるためのモータのかかる負荷に基づいて、被介助者による装置に対する依存度合い(被介助者が自身の脚力を用いている程度)を決定する。さらに、特許文献1に記載の介助装置は、依存度合いに応じて視覚的や聴覚的な情報を通知している。そして、介助装置は、過去の依存度合いの履歴データと今回の依存度合いを比較して、励ますような内容のメッセージを通知する。
【0004】
また、特許文献2には、被介助者が介助装置のアーム機構に加える力を力検出部により検出し、力検出部の値を、例えばアーム機構に設置されたモニタなどに提示することで、どれぐらいアーム機構に力を加えているかを確認できることが記載されている。その場合は、多くの力をかけているほど、被介助者自身の下半身などの身体を使えていないということなので、例えば、リハビリの進捗状況を被介助者自身で確認することができるようになる。さらに、記憶された過去の力情報と比較することで、以前からどれぐらいリハビリの効果があるのかの確認が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−86586号公報
【特許文献2】特開2016−64124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の介助装置は、単純に支持部材にかかる荷重を検出するものであり、介助者又は被介助者は、支持部材の前後方向における荷重のかかり度合いがどのようになっているかを把握することはできなかった。
【0007】
本発明は、介助者又は被介助者が支持部材の前後方向における荷重のかかり度合いを把握することができる介助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示する介助装置は、被介助者の上半身を支持して前記被介助者の起立補助を行う介助装置であって、基台と、前記基台に昇降可能に設けられ、前記被介助者の上半身を前方より支持する身体支持部材と、前記身体支持部材に設けられ、前記被介助者により付与される荷重を検出する荷重検出装置と、前記荷重検出装置によって検出された荷重に基づいて、前記身体支持部材にかかる荷重の前記身体支持部材の前後方向でのかかり度合いを表示する表示装置とを備える。
【0009】
表示装置は、荷重検出装置によって検出された荷重に基づいて身体支持部材にかかる荷重の身体支持部材の前後方向でのかかり度合いを表示する。これにより、介助者又は被介助者は、身体支持部材の前後方向における荷重のかかり度合いを容易に把握することができる。また、介助者又は被介助者は、身体支持部材の前後方向における荷重のかかり度合いを把握することで、例えば、被介助者が自身の脚力を用いている程度や、被介助者の搭乗姿勢等を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】座位姿勢の被介助者が乗り込む状態における介助装置を斜め後方から見た斜視図である。
図2図1の介助装置の側面図を示し、さらに座位姿勢の起立補助の動作開始姿勢の被介助者を付加する。
図3】被介助者が起立準備姿勢に移行した状態における介助装置の側面図を示し、起立準備姿勢の被介助者を付加する。
図4】被介助者が立位姿勢に移行した状態における介助装置の側面図を示し、立位姿勢の被介助者を付加する。
図5】制御ユニット7の構成を示す図である。
図6】表示装置8の第一表示画面81を示す図であって、被介助者Mの搭乗姿勢が良好で且つ自身の脚力を用いている場合の各種情報の挙動を示す。
図7】表示装置8の第二表示画面82を示す図であって、被介助者Mの搭乗姿勢が良好で且つ自身の脚力を用いている場合の図である。
図8】表示装置8の第二表示画面82を示す図であって、被介助者Mの搭乗姿勢が良好で且つ自身の脚力を用いている場合の他の図である。
図9】表示装置8の第一表示画面81を示す図であって、被介助者Mの搭乗姿勢が良好ではないか又は自身の脚力を用いていない場合の各種情報の挙動を示す。
図10】表示装置8の第二表示画面82を示す図であって、被介助者Mの搭乗姿勢が良好ではないか又は自身の脚力を用いていない場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.介助装置1の構成)
被介助者の動作の介助を行う介助装置1について、図1及び図2を参照して説明する。本実施形態においては、介助装置1は、起立補助及び着座補助を行う装置を例に挙げるが、他の介助を行う装置にも適用できる。
【0012】
介助装置1は、被介助者Mの上半身を支持して、被介助者Mの座位姿勢から立位姿勢への起立補助を行う。さらに、介助装置1は、被介助者Mの上半身を支持して、被介助者Mの立位姿勢から座位姿勢への着座補助を行う。これにより、介助装置1は、被介助者Mの移乗介助及び移動介助が可能となっている。
【0013】
なお、「立位姿勢」とは、被介助者Mの下半身が立っている姿勢を意味し、上半身の姿勢を問わない。つまり、起立補助は、被介助者Mの臀部の位置を上方へ移動させる動作の補助である。また、着座補助は、被介助者Mの臀部の位置を下方へ移動させる動作の補助である。
【0014】
介助装置1は、基台2、昇降部3、揺動部4、身体支持部材5、荷重検出装置6、制御ユニット7、及び表示装置8を備える。基台2は、フレーム21、支柱22(図2に示す)、固定カバー23、足載置台24、下腿当て部25、及び6個の車輪26〜28などを備える。フレーム21は、床面Fの近くにほぼ水平に設けられる。支柱22は、フレーム21の前寄りの左右方向の中央から上方に向かって立設されている。支柱22の略矩形断面の内部空間に、後述する昇降駆動部32が配置される。固定カバー23は、支柱22及び後述する昇降部材31の下部の周囲を覆って保護する。
【0015】
足載置台24は、フレーム21の上面後方に固定されて、ほぼ水平に設けられる。足載置台24の上面には、被介助者Mが足を乗せる位置を案内するための足形の接地マーク241が記されている。下腿当て部25は、L字状の左右一対の支持アーム251,251によって、接地マーク241よりも少し前側の上方に設けられる。下腿当て部25は、左右の支持アーム251の直立した部分を渡って配置され、左右方向に延在する。下腿当て部25は、被介助者Mの下腿が接触する部位であり、クッション材によって形成される。下腿当て部25の配置高さは、調整可能である。
【0016】
フレーム21の下側には、左右に3個ずつの車輪26〜28が設けられている。各車輪26〜28は、移動方向を転換する転舵機能を有しており、少なくとも前車輪26は、移動を規制するロック機能を備える。6個の車輪26〜28の転舵機能により、介助装置1は、前後方向の移動および方向転換だけでなく、横移動(真横への移動)や超信地旋回(その場旋回)が可能となっている。
【0017】
昇降部3は、昇降部材31、昇降駆動部32、及び、昇降カバー33などを備える。昇降部材31は、上下方向に長い長尺部材であり、支柱22の後面に昇降可能に支持されている。本実施形態においては、昇降部材31は、支柱22に対して上下動することにより昇降するが、支柱22に対して揺動することにより昇降するようにしてもよい。
【0018】
昇降部材31の上部は後方に突出しており、突出した後端寄りに揺動支持部34が設けられている。昇降部材31の上部の内部空間には、後述する揺動駆動部42が配置される。支柱22の内部空間に配置された昇降駆動部32は、昇降部材31の昇降動作を駆動する。昇降カバー33は、昇降部材31及び支柱22の周り及び上方を覆って保護する。昇降カバー33は、昇降部材31に結合されており、昇降部材31とともに昇降する。昇降する昇降カバー33の下部は、常に固定カバー23の外周側に重なっている。
【0019】
揺動部4は、揺動部材41、揺動駆動部42、及び、第一ハンドル43を備える。揺動部材41は、アーム状に形成されている。揺動部材41は、昇降部材31に対して前後方向に揺動可能に設けられる。詳細には、揺動部材41の一端が、昇降部材31の揺動支持部34に揺動可能に支持されている。昇降部材31の上部の内部空間に配置された揺動駆動部42は、揺動部材41の一端を揺動中心として、揺動部材41の他端を前後方向に揺動駆動する。
【0020】
揺動部材41の他端には、第一ハンドル43が一体に設けられている。第一ハンドル43は、概ね四角形の枠形状に形成されている。第一ハンドル43は、揺動部材41の他端から前上方向に延びるように形成されている。第一ハンドル43の側方部分は、被介助者Mの両手によって把持される。さらに、第一ハンドル43の側方部分及び前方部分は、介助者によって介助装置1を移動させるために把持される。
【0021】
身体支持部材5は、胴体支持部材51、脇支持部材52,52、及び第二ハンドル53などを備える。胴体支持部材51は、支持本体511と、クッション材512とを備える。支持本体511は、金属製であって、板状に形成されている。支持本体511の前下側は、揺動部材41の他端に支持されている。従って、支持本体511は、揺動駆動部42によって昇降部材31に対して前後方向に傾動可能となる。
【0022】
さらに、支持本体511は、揺動部材41に対して前後方向に自由傾動可能に支持されている。支持本体511は、図2に示す状態から図2の時計回りに所定角度範囲を傾動可能となる。なお、自由傾動とは、アクチュエータなどによって駆動される傾動ではなく、手動によって動かすことが可能な傾動を意味する。
【0023】
支持本体511の後上側に、クッション材512が固定されている。クッション材512は、被介助者Mの胴体形状に近い面状に形成されており、柔軟な変形が可能になっている。クッション材512の支持面は、被介助者Mの胴体の前面を面接触にて支持する。特に、クッション材512は、被介助者Mにおける胸部から腹部に亘る範囲を下方から支持する。
【0024】
脇支持部材52,52は、胴体支持部材51の左右に設けられている。脇支持部材52は、支持本体521と、脇アーム522とを備える。脇支持部材52の支持本体521は、金属製であって、胴体支持部材51の支持本体511に揺動可能に支持される。脇アーム522は、被介助者Mの脇を支持する。脇アーム522は、棒状部材により、L字状に形成されている。脇アーム522の表面は、柔軟な変形が可能な材料により覆われている。
【0025】
第二ハンドル53は、胴体支持部材51の支持本体511の前面に一体に設けられている。第二ハンドル53は、横長のU字状に形成されている。第二ハンドル53は、支持本体511の下端に固定され左右方向に延びる基軸部分と、基軸部分の両端から第一ハンドル43側に向かって延びる把持部分とを備える。
【0026】
荷重検出装置6は、図2に示すように、胴体支持部材51に取り付けられ、被介助者Mの上半身により付与される荷重を検出する。荷重検出装置6は、支持本体511の上面に取り付けられ、支持本体511とクッション材512との間に挟まれる。荷重検出装置6は、2個の第一荷重検出器61と、2個の第二荷重検出器62とを備える。
【0027】
第一荷重検出器61は、支持本体511の上下方向(前後方向)の中央付近に設けられる。第一荷重検出器61は、被介助者Mの上半身の第一部位(例えば、胸部付近)に対応する。第一荷重検出器61は、被介助者Mにより付与される第一荷重aを検出する。第一荷重検出器61は、介助装置1の電源がONの間、所定サンプリング時間で第一荷重aを取得し続ける。2個の第一荷重検出器61は、左右に離れて配置される。
【0028】
第二荷重検出器62は、第一荷重検出器61より下方且つ後方に設けられる。第二荷重検出器62は、被介助者Mの上半身のうちの第一部位よりも下方且つ後方に位置する第二部位(例えば、腹部付近)に対応する。第二荷重検出器62は、被介助者Mより付与される第二荷重bを検出する。第二荷重検出器62は、介助装置1の電源がONの間、所定サンプリング時間で第二荷重bを取得し続ける。2個の第二荷重検出器62は、左右に離れて配置される。
【0029】
制御ユニット7は、フレーム21の上側右寄りに設けられている。制御ユニット7は、昇降駆動部32及び揺動駆動部42を制御する制御装置71などを備える。制御装置71は、被介助者M又は介助者からの指令に基づいて、昇降駆動部32及び揺動駆動部42を制御する。制御装置71は、ソフトウェアで動作するコンピュータ装置を用いることができる。コンピュータ装置は、被介助者M又は介助者からの指令を受け付ける図略のリモコン装置を備えていてもよい。ソフトウェアとして、起立補助を行う起立補助プログラムや、着座補助を行う着座補助プログラムが実行可能に記憶されている。制御装置71の下側には、繰り返しての充放電が可能な符号略のバッテリ電源が付属されている。バッテリ電源は、フレーム21の上側左寄りにも付属されている。バッテリ電源は、昇降駆動部32及び揺動駆動部42にも共用される。
【0030】
表示装置8は、介助者又は被介助者Mに各種情報を表示する表示画面を備える。本実施形態においては、表示装置8は、荷重検出装置6によって検出された荷重に基づいて、身体支持部材5にかかる荷重の身体支持部材5の前後方向でのかかり度合いを表示する。特に、表示装置8は、第一荷重a及び第二荷重bに基づいて、身体支持部材5における前後方向の荷重のかかり度合いを表示する。
【0031】
ここで、表示装置8は、介助装置本体(2,3,4,5,6,71)に一体的に設けられるようにしてもよい。この場合、表示装置8は、揺動部4又は身体支持部材5に取り付けられるようにしてもよいし、制御ユニット7に取り付けられるようにしてもよい。なお、介助装置本体とは、基台2、昇降部3、揺動部4、身体支持部材5、荷重検出装置6、及び、制御装置71を含むユニットである。
【0032】
また、表示装置8は、介助装置本体(2,3,4,5,6,71)とは別体の装置とすることもできる。この場合、表示装置8は、制御ユニット7と無線通信によりデータを取得して、各種情報を表示する。表示装置8は、例えば、タブレット及びスマートフォンなどの携帯端末、パソコンなどである。表示装置8は、介助装置本体(2,3,4,5,6,71)の近傍に存在しない場合であっても、各種情報を制御ユニット7から取得すると共に、取得した各種情報を表示することができる。
【0033】
(2.介助装置1による補助動作)
次に、介助装置1の起立補助の動作について、図2図4を参照して説明する。介助装置1は、起立補助の動作において、図2に示す起立補助動作の開始状態から、図3に示す起立準備状態となり、その後に図4に示す起立完了状態となる。
【0034】
まず、介助者は、介助装置1を座位姿勢の被介助者Mの近くに移動させる。このとき、介助者は、図2に示すように、介助装置1を動作させて、座位姿勢の被介助者Mが乗り込むことができる状態にする。また、介助者は、被介助者Mの高さに応じて、昇降部材31の高さを調整する。続いて、被介助者Mは、両脚を身体支持部材5の下側に入り込ませる。ここで、身体支持部材5が邪魔になる場合には、被介助者M又は介助者が、身体支持部材5の下端部を手で持ち上げて、被介助者Mの両脚を身体支持部材5の下側に入れやすくすることができる。
【0035】
次に、被介助者Mは、両足を接地マーク241の上に載せ、下腿を下腿当て部25に接触させる。さらに、被介助者Mは、胴体を胴体支持部材51のクッション材512の支持面に載せる。つまり、被介助者Mの上半身は、身体支持部材5に支持された状態において、少し前傾した姿勢となる。同時に、被介助者Mは、脇に脇アーム522を挿入させる。このようにして、介助装置1は、起立補助動作の開始状態に設定される。そして、介助者は、被介助者Mに、第一ハンドル43を把持させる。このときの被介助者Mの当該姿勢が、起立補助動作の開始姿勢である。
【0036】
続いて、介助者は、介助装置1の起立補助プログラムに基づいて、介助装置1の駆動を開始する。これにより、昇降部材31の昇降と揺動部材41の前方への傾動とが協調して行われる。
【0037】
起立補助プログラムが実行されると、介助装置1は、図3に示す起立準備状態となる。介助装置1の起立準備状態とは、座位姿勢の被介助者Mを椅子Cから持ち上げる直前の状態である。つまり、介助装置1は、図2に示す開始状態から、昇降部材31は下降し、且つ、揺動部材41が前傾することにより、図3に示す起立準備状態となる。ここで、介助装置1が起立準備状態において、被介助者Mの臀部が椅子Cの座面に接触し、胴体が前傾し、且つ、胴体が伸張した状態となる。このときの被介助者Mの当該姿勢が、起立準備姿勢である。
【0038】
起立補助プログラムがさらに継続されると、図4に示すように、昇降部材31は上昇し、且つ、揺動部材41がさらに前傾することで、起立補助プログラムが終了する。そうすると、被介助者Mは、起立準備姿勢から立位姿勢となる。つまり、立位姿勢の被介助者Mの上半身は、大きく前傾した姿勢となり、被介助者Mの臀部の位置は、椅子Cの座面より高い位置に位置する。そして、被介助者Mの脚部は、ほぼ伸びた状態となる。
【0039】
このように、被介助者Mが介助装置1に乗り込んだ後には、胴体支持部材51が前方に傾動することにより、被介助者Mは座位姿勢における開始姿勢から起立準備姿勢を介して立位姿勢に移行する。
【0040】
また、介助装置1の着座補助の動作は、起立補助の動作に対してほぼ逆の動作を行うことになる。つまり、胴体支持部材51が後方に傾動しつつ、昇降部材31が下降することで、被介助者Mを立位姿勢から座位姿勢に移行させることができる。そして、座位姿勢の被介助者Mは、容易に脇アーム522を脇から抜くことができる。
【0041】
(3.制御ユニット7の詳細構成)
制御ユニット7の詳細構成について、図5を参照して説明する。図5に示すように、制御ユニット7は、制御装置71、荷重差算出部72及び記憶装置73を備える。制御装置71についての上述した内容については、ここでの説明は省略する。
【0042】
荷重差算出部72は、第一荷重a及び第二荷重bを取得する。ここで、上述したように、第一荷重a及び第二荷重bは、介助装置1の電源がONの間、所定サンプリング時間で取得される。つまり、第一荷重a及び第二荷重bは、起立補助動作の開始状態と起立完了状態との間だけでなく、起立補助動作の開始状態よりも前、及び、起立完了状態の後においても取得される。
【0043】
そして、荷重差算出部72は、第一荷重a及び第二荷重bに基づいて、身体支持部材5にかかる荷重の身体支持部材5の前後方向でのかかり度合いを表す指標として、第一荷重aと第二荷重bとの差FR(荷重差と称する)を算出する。荷重差FRは、第一荷重aから第二荷重を減算した値(a−b)とする。つまり、被介助者Mの上側(胸部側)の荷重が下側(腹部側)の荷重より大きい場合には、荷重差FRは、正値となる。一方、被介助者Mの上側(胸部側)の荷重が下側(腹部側)の荷重より小さい場合には、荷重差FRは、負値となる。
【0044】
起立動作において、被介助者Mの搭乗姿勢が適正であり、且つ、被介助者Mが自身の脚力を適度に用いている場合には、第一荷重aが第二荷重bより大きくなるか、もしくは、第二荷重bが第一荷重aより大きくなるとしても第一荷重aと第二荷重bとの差がそれほど大きくはない。一方、被介助者Mが自身の脚力をほとんど用いていない場合や、被介助者Mの搭乗姿勢が良好でない場合には、第二荷重bが第一荷重aより極めて大きくなる。第一荷重aと第二荷重bの大小関係は、荷重差FRにより把握できる。
【0045】
記憶装置73は、第一荷重a、第二荷重b、及び、荷重差FRを記憶する。さらに、記憶装置73は、制御装置71が昇降駆動部32及び揺動駆動部42を制御するための情報(動作軌跡情報)を、各種情報a,b,FRに関連付けて記憶する。記憶装置73に記憶された情報は、表示装置8に出力され、表示装置8の表示画面に表示するために用いられる。
【0046】
(4.表示装置の表示画面)
次に、表示装置8の表示画面について、図6図10を参照して説明する。表示装置8は、制御ユニット7の記憶装置73に記憶されている情報を表示画面に表示する。以下において、被介助者Mの搭乗姿勢が良好で且つ自身の脚力を適度に用いている場合(以下、適正時と称する)における表示画面(図6図8)と、被介助者Mの搭乗姿勢が良好でないか又は自身の脚力を用いていない場合(以下、不適正時と称する)における表示画面(図9図10)とについて、説明する。
【0047】
第一表示画面81は、図6に示すように、1回の起立補助の動作についての各種情報a,b,FRの挙動を表示する。ここで、図6に示す適正時の第一表示画面81は、4.3sec付近で起立補助の動作が開始され、5.4sec付近で臀部が椅子Cの座面から離れる起立準備状態となり、11secで起立動作が完了する状態が示されている。
【0048】
図6に示すように、第一荷重a及び第二荷重bは、4.3sec付近までは100程度であるが、起立補助の動作が開始される4.3sec付近以降に増加している。両者が増加している間、第一荷重aが第二荷重bより僅かに大きい。その後、第一荷重a及び第二荷重bは、共に増減する。この間、第一荷重aが第二荷重bより小さくなる。第一荷重a及び第二荷重bが上記のような挙動を示すことにより、荷重差FRは、4.3sec付近までは、ほぼ0付近であり、その後僅かに正値となった後に、負値に変化する。ただし、荷重差FRの最小値は、−100程度である。
【0049】
適正時の第二表示画面82は、図7及び図8に示す。図7に示す第二表示画面82は、図6の第一表示画面81における6sec付近のものである。図8に示す第二表示画面82は、図6の第一表示画面81における8sec付近のものである。第二表示画面82は、動作表示となっている。
【0050】
第二表示画面82の右側には、介助装置1及び被介助者Mの側面モデルが、アニメーション動画(動作動画)として表示される。アニメーション動画は、制御装置71から得られた動作軌跡情報に基づいて表示される。ここで、アニメーション動画は、少なくとも身体支持部材5が表示されていればよく、介助装置1のみを表示してもよいし、身体支持部材5のみを表示してもよい。
【0051】
さらに、第二表示画面82の右側には、アニメーション動画における身体支持部材5に相当する位置に、第一荷重a及び第二荷重bが連動して表示される。第一荷重a及び第二荷重bは、矢印にて表示されており、矢印の長さが、第一荷重aの大きさ及び第二荷重bの大きさに対応する。
【0052】
図7には、被介助者Mの臀部が椅子Cの座面から離れてから少し経過したタイミングが表示されている。このとき、第一荷重aに対応する矢印の長さは、第二荷重bに対応する矢印の長さより長い。つまり、第一荷重aが第二荷重bより大きいことが表されている。また、図8には、被介助者Mの臀部が椅子Cの座面から大きく離れたタイミングが表示されている。このとき、第一荷重aに対応する矢印の長さは、第二荷重bに対応する矢印の長さより短い。つまり、第一荷重aが第二荷重bより小さいことが表されている。そして、図8に示す第一荷重a及び第二荷重bは、図7のときに比べると、共に大きくなっている。
【0053】
また、第二表示画面82の左側には、枠内に、現在の荷重差FRが●印にて表示されている。荷重差FRを示す●印の位置は、第二表示画面82の右側のアニメーション動画と、第一荷重a及び第二荷重bの変化に連動して、変化する。
【0054】
ここで、枠内の中央(破線の交点)が、荷重差FRが0となる位置である。枠内の上側が、第一荷重aが第二荷重bより大きくなる状態、すなわち前寄りの荷重のかかり方になっている状態に相当する。図7においては、現在の荷重差FRが、前寄りの荷重のかかり方になっている。一方、枠の下側が、第二荷重bが第一荷重aより大きくなる状態、すなわち後寄りの荷重のかかり方になっている状態に相当する。図8においては、現在の荷重差FRが、後寄りの荷重のかかり方になっている。
【0055】
枠内の二点鎖線は、下限閾値であり、荷重差FRが下限閾値を下回る状態は、適正ではないことを意味する。また、第二表示画面82の左側上欄には、現在の介助装置1の動作状態が示されており、動作中又は停止中と表示される。図7及び図8において、荷重差FRは下限閾値より上であるため、何れも適正であることが分かる。介助者又は被介助者Mは、表示装置8を見ることで、被介助者Mが自身の脚力を用いている程度や被介助者Mの搭乗姿勢等が適正であることを把握できる。
【0056】
次に、不適正時の第一表示画面81は、図9に示すように、5sec付近で起立補助の動作が開始され、6.1sec付近で臀部が椅子Cの座面から離れる起立準備状態となり、11secで起立動作が完了する状態が示されている。
【0057】
図9に示すように、第一荷重a及び第二荷重bは、5sec付近までは100程度であるが、起立補助の動作が開始される5sec付近以降に増加している。両者が増加している間、第一荷重aが第二荷重bより僅かに大きい。その後、第一荷重aは、急激に減少するのに対して、第二荷重bは、さらに増加する。この間、第一荷重aが第二荷重bより非常に小さくなる。第一荷重a及び第二荷重bが上記のような挙動を示すことにより、荷重差FRは、5sec付近までは、ほぼ0付近であり、その後僅かに正値となった後に、負値に急激に変化する。ただし、荷重差FRの最小値は、−400よりも小さい。
【0058】
不適正時の第二表示画面82は、図10に示す。図10に示す第二表示画面82は、図9の第一表示画面81における9sec付近のものである。図10の右側に示すように、第二荷重bに対応する矢印が非常に長く表示されているのに対して、第一荷重aに対応する矢印が非常に短く表示されている。また、図10の左側の枠内において、●印が、下限閾値よりも下に位置することから、不適正な状態であることが示されている。介助者又は被介助者Mは、表示装置8を見ることで、被介助者Mが自身の脚力を用いている程度や被介助者Mの搭乗姿勢等が不適正であることを把握できる。
【0059】
(5.実施形態の効果)
本実施形態の介助装置1は、被介助者Mの上半身を支持して被介助者Mの起立補助を行う。この介助装置1は、基台2と、基台2に昇降可能に設けられ、被介助者Mの上半身を支持する身体支持部材5と、身体支持部材5に設けられ、被介助者Mにより付与される荷重を検出する荷重検出装置6と、荷重検出装置6によって検出された荷重に基づいて、身体支持部材5にかかる荷重の身体支持部材5の前後方向でのかかり度合いを表示する表示装置8とを備える。
【0060】
表示装置8は、荷重検出装置6によって検出された荷重に基づいて身体支持部材5にかかる荷重の身体支持部材5の前後方向でのかかり度合いを表示する。これにより、介助者又は被介助者Mは、身体支持部材5の前後方向における荷重のかかり度合いを容易に把握することができる。また、介助者又は被介助者Mは、身体支持部材5の前後方向における荷重のかかり度合いを把握することで、例えば、被介助者Mが自身の脚力を用いている程度や、被介助者の搭乗姿勢等を評価することができる。
【0061】
また、荷重検出装置6は、被介助者Mにより付与される第一荷重aを検出する第一荷重検出器61と、身体支持部材5において第一荷重検出器61よりも後方に設けられ、被介助者Mにより付与される第二荷重bを検出する第二荷重検出器62とを有し、表示装置8は、第一荷重a及び第二荷重bに基づいて身体支持部材5の前後方向における荷重のかかり度合いを表示する。これにより、介助者又は被介助者Mは、身体支持部材5の前後方向における荷重のかかり度合いをより確実に把握することができる。
【0062】
そして、介助装置1は、基台2に昇降可能に設けられる昇降部材31を備える。身体支持部材5は、昇降部材31に前後方向に傾動可能に設けられ、被介助者Mの上半身を支持する。このように、身体支持部材5が昇降部材31に前後方向に傾動する構成であることにより、介助者又は被介助者Mは、身体支持部材5の前後方向における荷重のかかり度合いを把握することで、例えば、被介助者Mが自身の脚力を用いている程度や、被介助者の搭乗姿勢等を確実に評価することができる。
【0063】
また、表示装置8の第二表示画面82は、身体支持部材5における前後方向の荷重のかかり度合いとして、第一荷重aと第二荷重bの差(荷重差FR)を表示する。起立動作において、被介助者Mの搭乗姿勢が適正であり、且つ、被介助者Mが自身の脚力を適度に用いている場合には、第一荷重aが第二荷重bより大きくなるか、もしくは、第二荷重bが第一荷重aより大きくなるとしても第一荷重aと第二荷重bとの差がそれほど大きくはない。一方、被介助者Mが自身の脚力をほとんど用いていない場合や、被介助者Mの搭乗姿勢が良好でない場合には、第二荷重bが第一荷重aより極めて大きくなる。第一荷重aと第二荷重bの大小関係は、荷重差FRにより把握できる。そこで、表示装置8は、荷重差FRを表示することで、介助者又は被介助者Mは、被介助者Mが自身の脚力を用いている程度や、被介助者Mの搭乗姿勢等を適切に把握できる。
【0064】
さらに、表示装置8の第二表示画面82は、身体支持部材5における前後方向の荷重のかかり度合いとして、荷重差FRを表示すると共に、さらに第一荷重a及び第二荷重bのそれぞれの大きさを表示する。これにより、介助者又は被介助者Mは、身体支持部材5における前後方向の荷重のかかり度合いを、より詳細に把握することができる。
【0065】
また、表示装置8の第二表示画面82は、荷重差FR、並びに、第一荷重a及び第二荷重bのそれぞれの大きさを、身体支持部材5の動作動画に連動して表示している。これにより、介助者及び被介助者Mは、どのようなタイミングで身体支持部材5にかかる荷重が変化しているかを把握することができる。特に、第二表示画面82は、荷重差FR、並びに、第一荷重a及び第二荷重bのそれぞれの大きさを、介助装置1全体及び被介助者Mの動作動画に連動して表示している。これにより、介助者及び被介助者Mは、介助装置1の動作をより把握しやすくなり、荷重の変化のタイミングをより容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0066】
1:介助装置、 2:基台、 3:昇降部、 4:揺動部、 5:身体支持部材、 6:荷重検出装置、 8:表示装置、 31:昇降部材、 32:昇降駆動部、 41:揺動部材、 42:揺動駆動部、 51:胴体支持部材、 52:脇支持部材、 61:第一荷重検出器、 62:第二荷重検出器、 71:制御装置、 72:荷重差算出部、 73:記憶装置、 a:第一荷重、 b:第二荷重、 FR:荷重差、 M:被介助者
図1
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図10