(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
系統からの電力を蓄電可能な蓄電設備を有し、物の生産又は役務の提供に電力を使用する電力需要者の端末装置から電力の融通を募集する募集情報を受信する電力需要者対応処理部と、
自家発電設備及び前記系統への逆潮流による送電設備を有し、前記系統への送電が可能であるプロシューマの端末装置に前記募集情報に基づく募集条件を公開し、前記プロシューマの端末装置から、前記募集情報へ応募する応募情報を受け付けるプロシューマ対応処理部と、
前記プロシューマの送電設備を介して逆潮流で系統へ送電された送電電力量の情報を取得するプロシューマ送電情報取得部と、
前記募集情報及び前記応募情報に基づいて設定された、前記プロシューマが前記電力需要者へ融通すべき電力量の目標値と、前記取得した送電電力量とを比較し、比較結果に応じて前記プロシューマに贈呈するべきインセンティブを決定する目標管理部と、
を備え、
前記プロシューマ対応処理部は、
前記プロシューマと前記電力需要者との契約が締結された際に、1回の融通機会において融通すべき電力量を前記プロシューマの端末装置に表示すること、
を特徴とする電力融通管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”と言う)を、図等を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(電力融通管理装置が使用される環境)
図1に沿って、電力融通管理装置1が使用される環境を説明する。本実施形態においては、4つの電力取引主体51a、51b、51c及び51dが存在する。電力取引主体51a及び51bは家庭であり、電力取引主体51cはスタジアムであり、電力取引主体51dは工場である。なお、実際には、電力取引主体の数及び種類は限定されない。
【0013】
各電力取引主体51は、電力管理装置52、電力消費設備53、発電設備54、蓄電設備55、送受電設備56及び端末装置2(インホームディスプレイ、スマートフォン等)を有する。
図1においては、設備等の符号の末尾に付されたa、b、c及びdは、その設備等が属する電力取引主体の符号の末尾に付されたa、b、c及びdに対応している。
【0014】
電力管理装置52は、一般的なコンピュータである。電力管理装置52は、電力消費設備53、発電設備54、蓄電設備55及び送受電設備56と接続され、これらの間を流れる電力量を制御・記録している。端末装置2は、ネットワーク3を介して、又は、ネットワーク3を介することなく近距離電波通信技術を使用して、電力取引主体51の電力管理装置52と通信可能である。電力取引主体51に属するユーザは、端末装置2を使用する。電力融通管理装置1もまた、ネットワーク3を介して、各端末装置2及び電力管理装置52と通信可能である。なお、送受電設備56は、単に電力系統57から電力を受電するだけではなく、逆潮流によって電力系統57に対して、電力取引主体内では消費し切れない等で余った発電量を送電することもできる。なお、
図1において、太線の実線は電力の流れを、細線の実線及び細線の破線は情報の流れを示す。
【0015】
電力取引主体51a及び51bの電力消費設備53a及び53bは、例えば冷蔵庫、湯沸器等の家電設備である。電力取引主体51cの電力消費設備53cは、例えば空調設備、電飾設備、舞台設備等の設備である。電力取引主体51dの電力消費設備53dは、例えば電力取引主体51dが食品メーカである場合、食品製造設備である。電力取引主体51a及び51bの発電設備54a及び54bは、例えば太陽光自家発電設備である。電力取引主体51c及び51dの発電設備54c及び54dは、例えばコージェネレーションシステム及びディーゼルエンジン型自家発電設備である。
【0016】
各電力取引主体51の蓄電設備55は、発電設備54が発電した電力又は電力系統57から送受電設備56が受電した商用電力を蓄電する任意のタイプの蓄電設備である。蓄電設備55c及び55dの容量は、蓄電設備55a及び55bの容量よりも遥かに大きい。
前記から明らかなように、各電力取引主体51が有する各設備等は、電力消費設備、発電設備及び蓄電設備の種類・容量の相違を除けば、ほぼ共通である。そして、各電力取引主体51は何れも、必要な電力を電力系等57から受電し、又は、発電設備54で発生させ、電力消費設備53が消費しなかった残りの余剰電力を、蓄電設備55に蓄電する。
【0017】
一般に余剰電力又は不足電力が発生するタイミングは、電力取引主体によって異なる。つまり、各電力取引主体51のそれぞれは、あるタイミングでは、余剰電力を供給する者(プロシューマ)となり、また他のあるタイミングでは、電力を受ける者(電力需要者)となる。本実施形態では、家庭は、週平均等では概ね自給自足以上の発電設備を伴うプロシューマであることが前提になっている。さらに、スタジアム51c及び工場51dは、それ自身の発電設備では足りず、電力会社又はこれらのプロシューマから追加的に電力供給を受ける必要があることが前提になっている。以降では、電力取引主体51a及び51bがプロシューマであり、電力取引主体51c及び51dが電力需要者である例を説明する。
【0018】
図1において、プロシューマは、融通が指定された時間において、指定の電力量を電力系統57に供給する。電力需要者は、事前に指定された融通の時間及び電力量に応じて、電力系統57から融通相当分を消費する。
【0019】
(電力需要者の電力消費パターン)
電力需要者51cはスタジアムであり、その電力需要は、イベントが開催される特定の期間(時間帯)に集中する。例えば、年末の“年忘れアイドルコンサート”が2016年12月31日22時00分〜24時00分に開催される場合、この2時間の間に、空調設備、電飾設備、舞台設備等を稼働させるために、膨大な電力需要が集中的に発生する。この2時間の電力需要に比較すれば、休業中の電力需要は微小である。
【0020】
そこで、電力需要者51cは、2016年12月31日に先立つ準備期間における休業時間において、複数のプロシューマ(個人のアイドルファン等)から複数回に分けて融通電力相当分を受電し、蓄電設備55cに蓄電しておく。そして、電力需要者51cは、2016年12月31日22時00分〜24時00分の間に、蓄電しておいた電力を一度に消費する。この蓄電設備55cの使用方法を“随時蓄電一時消費パターン”と呼ぶ。
【0021】
電力需要者51dは工場であり、生産ラインの稼働率を維持するために、その電力需要は、ある期間ほぼ均等に発生する。例えば、“2017年秋向け◎◎県産チーズ”の生産ラインが、2016年11月1日〜2017年10月31日に稼働する場合、その期間の毎日、ほぼ同量の電力需要が発生する。例えば、ある日に消費する電力が1,000kWhである場合、電力需要者51dは、プロシューマ51a及び51b(美食家等)から、余剰電力を当日の前日までの2日間で1日500kWhずつ収集し、収集した余剰電力を蓄電しておく。この蓄電設備55dの使用方法を“随時蓄電随時消費パターン”と呼ぶ。
【0022】
(インセンティブ)
電力需要者は、プロシューマに対して、融通された電力の対価を渡す。これまで多くの場合、対価は、通貨を想定していた。しかしながら、本実施形態では、対価の一部又は全部に代替して、通貨以外の経済的価値が使用される。この経済的価値が、前記した“インセンティブ”であり、プロシューマ及び電力需要者が属する地域の産物又はその地域内で通用する仮想通貨(ポイント)である。もちろん、ある電力需要者自身が生産する産物をインセンティブとしてもよい。
【0023】
例えば、電力需要者51cが提供するインセンティブは、自社スタジアムで有料配布される“アイドルTシャツ”であってもよいし、スタジアムで開催されるイベントの“入場割引クーポン”であってもよい。また、電力需要者51dが提供するインセンティブは、自社工場が生産する“◎◎県産チーズ”であってもよい。1人のプロシューマが融通する電力量は、大小様々であるが、例えば対価が数百円等のケースでは、電力需要者は、対価としてわざわざ小額の通貨とともに小額のインセンティブを準備するのも煩雑であり、個人のプロシューマもまた、実物としてのインセンティブのみに興味を有する場合が多い。このような場合、インセンティブのみが対価の決済に使用される。
【0024】
(プロシューマに対する評価)
スタジアム等の電力需要者にとって評価が高いプロシューマと、そうではないプロシューマが存在する。当然のことながら、電力需要者は、所定の契約期間において少しでも多くの電力量を融通してくれるプロシューマを高く評価する。したがって、契約において定められた融通されるべき電力量が大きいほど、プロシューマに対してより価値の大きいインセンティブが渡される。但し、契約終了時点において、約束した電力量を融通できないことが判明した場合、そのプロシューマに対するインセンティブの価値は下げられる。
【0025】
(融通される電力量の制御)
電力需要者にとって、プロシューマが契約で定めた電力量を契約終了時点までに確実に融通してくれることが最大の関心事である。そこで、本実施形態では、プロシューマは、契約期間の途中で数回に分けて電力を融通することとする。そして、個々の融通のタイミングにおいて、電力融通管理装置は、約束した累積融通電力量を契約終了時点において達成するために、そのタイミングにおいて融通すべき電力量をプロシューマに案内する。電力融通管理装置は、このような案内によって、プロシューマが実際に融通する電力量を制御する(詳細後記)。
【0026】
(電力融通管理装置)
図2に沿って、電力融通管理装置1の構成を説明する。電力融通管理装置1は、一般的なコンピュータである。電力融通管理装置1は、中央制御(中央演算)装置11、入力装置12、出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15、及び、通信装置16を備える。これらはバスで接続されている。補助記憶装置15は、電力需給情報31、契約情報32及び累積融通電力量情報33を格納している。主記憶装置14における電力需要者対応処理部21、プロシューマ対応処理部22、プロシューマ送電情報取得部23及び目標管理部24は、プログラムである。以降の説明において、“○○部は”と動作主体を記した場合、それは、中央制御装置11が主記憶装置14から○○部を実行することを意味する。
【0027】
(電力需給情報)
図3に沿って、電力需給情報31を説明する。電力需給情報31は、将来の電力需要(又は発電がそれを上回った場合の電力供給)の予測であるともいえる。電力需給情報31においては、電力取引主体ID欄101に記憶されている電力取引主体IDに関連付けて、電力取引主体名欄102には電力取引主体名が、電力融通期間欄103には電力融通期間が、過不足欄104には過不足が、電力量欄105には電力量が、取引希望単価欄106には取引希望単価が、インセンティブ名欄107にはインセンティブ名が、インセンティブ単価欄108にはインセンティブ単価が記憶されている。
【0028】
電力取引主体ID欄101の電力取引主体IDは、電力取引主体を一意に特定する識別子である。
電力取引主体名欄102の電力取引主体名は、電力取引主体の氏名又は名称である。
電力融通期間欄103の電力融通期間は、電力の余剰又は不足が発生する期間である。
過不足欄104の過不足は、“余剰”又は“不足”の何れかである。“余剰”は、その電力融通期間において、電力取引主体に電力の余剰が発生していることを示す。“不足”は、その電力融通期間において、電力取引主体に電力の不足が発生していることを示す。つまり、“余剰”は、そのレコードの電力取引主体がプロシューマとなり得ることを示し、“不足”は、そのレコードの電力取引主体が電力需要者となり得ることを示す。
【0029】
電力量欄105の電力量は、その電力融通期間において1人のプロシューマが供給できる1日当たりの電力量、又は、その電力融通期間において1社の電力需要者が1人のプロシューマから受け取ることを希望する合計の電力量電力量である。
取引希望単価欄106の取引希望単価は、電力取引主体が希望する電力の販売単価又は購入単価である。
インセンティブ名欄107のインセンティブ名は、電力需要者が電力の対価としてプロシューマに支払う(贈呈する)インセンティブの名称である。インセンティブ名は、過不足が“不足”であるレコードのみに記憶される。
インセンティブ単価欄108のインセンティブ単価は、インセンティブの単価である。インセンティブ単価は、過不足が“不足”であるレコードのみに記憶される。
【0030】
電力需給情報31(
図3)を全体的に見ると、例えば以下のことがわかる。
・日立○子は、毎日10時00分〜16時00分の期間に余剰電力量8kWh/日を発生させ、それを20円/kWhで販売する準備がある(レコード141)。
・横浜◎男は、平日12時00分〜14時00分の期間に余剰電力量6kWh/日を発生させ、それを19円/kWhで販売する準備がある(レコード142)。
なお、レコード141及び142のような情報は、電力融通管理装置1がプロシューマから登録を受けることによって取得してもよいし、わざわざ登録を受けるまでもなく、過去のデータの統計値を記憶してもよい(詳細後記)。
【0031】
・(株)○○ドームは、2016年7月1日〜2016年12月31日の期間に大量の電力量(例えば数万kWh)を受け入れようとしている。(株)○○ドームは、必要とする合計電力量を小口に分割し、複数のプロシューマから収集しようとしている。個人のプロシューマが契約しやすいように、(株)○○ドームは、1人のプロシューマからその期間に融通を受ける電力量を“100kWh”、“80kWh”、“60kWh”及び“50kWh”に変化させたうえで、4種のプランを用意している。取引(購入)希望単価は、何れのプランにおいても22円/kWhである(レコード143〜146)。
【0032】
・(株)○○ドームは、融通を受ける電力量が大きい順に、インセンティブとして、入場割引クーポン(1,000円相当)、アイドルTシャツ(500円相当)、アイドルボールペン(200円相当)及びアイドルワッペン(100円相当)を用意している。
【0033】
・(株)◎◎食品は、2016年11月1日〜2017年10月31日の期間に、◎◎県産の食料を生産する工場を稼働させるために大量の電力量(例えば数万kWh)を必要としている。(株)○○ドームと同様に(株)◎◎食品もまた、1人のプロシューマからその期間に融通を受ける電力量を“100kWh”、“80kWh”、“60kWh”及び“50kWh”に変化させたうえで、4種のプランを用意している。取引(購入)希望単価は、何れのプランにおいても20円/kWhである(レコード147〜150)。
・(株)◎◎食品は、融通を受ける電力量が大きい順に、インセンティブとして、◎◎県産牛肉(2,000円相当)、◎◎県産チーズ(600円相当)、◎◎県産バター(300円相当)及び◎◎県産キャンデー(100円相当)を用意している。
【0034】
電力需給情報31を記憶する電力融通管理装置1の運営者が、電力需給情報31の取引希望価格(欄106)を入手できるか否かが問題になる。取引希望価格は、電力取引主体にとって、守秘義務契約を締結していない先に対して積極的に開示しにくい情報である。そこで、電力需給情報31は、取引希望単価欄106を有していなくてもよい。電力融通管理装置1は、プロシューマ又は電力需要者から会員登録又は応募情報を受け付ける都度、電力需給情報31の新たなレコードを作成する。なお、電力需給情報31は、地域ごとに作成される。地域とは、例えば都道府県、市町村であり、その粒度の大きさは任意である。
図3は、“◎◎県”における電力需給情報31の例である。
【0035】
(契約情報)
図4に沿って、契約情報32を説明する。契約情報32においては、契約ID欄111に記憶された契約IDに関連付けて、プロシューマID欄112にはプロシューマIDが、電力需要者ID欄113には電力需要者IDが、契約開始時点欄114には契約開始時点が、契約終了時点欄115には契約終了時点が、融通時点決定権者欄116には、融通時点決定権者が、取引単価欄117には取引単価が、最終受渡電力量欄118には最終受渡電力量が、契約開始時点インセンティブ名欄119には契約開始時点インセンティブ名が、契約終了時点インセンティブ名欄120には契約終了時点インセンティブ名が、配送確認欄121には配送フラグが、摘要欄133には摘要が記憶されている。
【0036】
契約ID欄111の契約IDは、契約を一意に特定する識別子である。本実施形態においては、契約は、1人のプロシューマ及び1社の電力需要者との間で締結される。
プロシューマID欄112のプロシューマIDは、その契約のプロシューマである電力取引主体を一意に特定する識別子である。
電力需要者ID欄113の電力需要者IDは、その契約の電力需要者である電力取引主体を一意に特定する識別子である。
契約開始時点欄114の契約開始時点は、契約期間の始期の年月日である。なお、契約期間は、電力需要者の電力融通期間(
図3の欄103)の一部である。
契約終了時点欄115の契約開始時点は、契約期間の終期の年月日である。
【0037】
融通時点決定権者欄116の融通時点決定権者は、“供給者”又は“需要者”の何れかである。契約期間においてプロシューマは、複数の回数に分けて電力需要者に電力を融通する。例えば、プロシューマは、太陽光発電の昼間の余剰分を蓄電設備に貯めて、夜間電力系統57に出力する。“供給者”は、個々の融通のタイミングをプロシューマが決定できることを示し、“需要者”は、個々の融通のタイミングを電力需要者が決定できることを示す。
取引単価欄117の取引単価は、プロシューマ及び電力需要者が合意した電力量の単価である。なお、前記同様の理由により、当該欄は必須ではない。
【0038】
最終受渡電力量欄118の最終受渡電力量は、契約期間にプロシューマが電力需要者に融通することを約した合計電力量であり、前記した各プランの電力量(
図3のレコード143〜150の欄105)の何れかである。
【0039】
契約開始時点インセンティブ名欄120の契約開始時点インセンティブ名は、契約の内容が遵守されることを条件に、電力需要者がプロシューマに贈呈することを契約開始時点に約したインセンティブの名称である。
契約終了時点インセンティブ名欄121の契約終了時点インセンティブ名は、契約の内容が実際に遵守されたか否かに対する評価に基づき、電力需要者がプロシューマに贈呈することを契約終了時点に決定したインセンティブの名称である。契約終了時点インセンティブ名は、契約終了時点に記憶される。
配送確認欄121の配送フラグ“済”は、プロシューマに対するインセンティブの配送手配が終了したことを示す。配送フラグもまた、契約終了時点に記憶される。
摘要欄122の摘要は、任意の備忘的な情報である。
【0040】
電力融通管理装置1の目標管理部24(
図2)は、契約が締結される都度、契約情報32の新たなレコードを作成する。そして、目標管理部24は、各電力管理装置51(
図1)から情報を入手し、電力決済単位である1時間当たり2度(毎時0分及び30分)、累積融通電力量の値を更新する。説明を容易にするために、
図4では時系列で変化して行くレコードを1枚の紙面に表現している。例えば、同じ契約“AG01”についてのレコード161及び165は、実際には同時に表示されることはない。各レコード間の“隙間”は、このことを示している。
【0041】
契約情報32(
図4)を全体的に見ると、例えば以下のことがわかる。
・レコード161及び165について
(株)○○ドーム(CC01)は、2016年12月31日24時00分に終了する年忘れアイドルコンサートを予定している。2016年10月10日、(株)○○ドームが将来的に日立○子(PS01)から電力の融通を受けることが決まった。このとき、最終受渡電力量として、80kWhが約され、契約開始時点インセンティブとして“アイドルTシャツ”が一応決定された(レコード161)。その後、
図4からは直接わからないが、2016年12月31日24時00分までの期間に、日立○子は、複数回(複数日)に分けて実際に合計80kWhの電力量を融通した。その結果、日立○子は、契約開始時点に決定された“アイドルTシャツ”を予定通り受け取ることになった(レコード165)。
【0042】
・レコード162及び166について
(株)○○ドーム(CC01)は、2016年12月31日24時00分に終了する年忘れアイドルコンサートを予定している。2016年11月10日、(株)○○ドームが将来的に横浜◎男(PS02)から電力の融通を受けることが決まった。このとき、最終受渡電力量として、60kWhが約され、契約開始時点インセンティブとして“アイドルボールペン”が一応決定された(レコード162)。“アイドルボールペン”の価値は、日立○子の例の“アイドルTシャツ”よりも小さい。これは、横浜◎男の契約開始時点が、日立○子の契約開始時点よりも遅いことに起因する。
【0043】
その後、
図4からは直接わからないが、2016年12月31日24時00分までの期間に、横浜◎男は、複数回に分けて実際には合計50kWhの電力量しか融通できなかった(最終受渡電力量に対して未達)。前記した日立○子の例と異なり、(株)○○ドームは、この融通量に対して高い評価を与えていない。その結果、横浜◎男は、契約開始時点に決定された“アイドルボールペン”を受け取ることはできず、価値がより小さい“アイドルワッペン”を受け取ることになった(レコード166)。
【0044】
・レコード163及び167について
(株)◎◎食品(CC02)は、2016年11月1日から2017年10月31の期間に、自社工場の生産ラインを稼働させる。2016年11月1日、(株)◎◎食品が将来的に日立○子(PS01)から電力の融通を受けることが決まった。このとき、最終受渡電力量として、80kWhが約され、契約開始時点インセンティブとして“◎◎県産チーズ”が一応決定された(レコード163)。その後、
図4からは直接わからないが、2017年10月31日までの間に、日立○子は、複数回に分けて実際に合計80kWhの電力量を融通した。その結果、日立○子は、契約開始時点に決定された“◎◎県産チーズ”を予定通り受け取ることになった(レコード167)。
【0045】
・レコード164及び168について
(株)◎◎食品(CC02)は、2016年11月1日から2017年10月31の期間に、自社工場の生産ラインを稼働させる。2016年11月1日、(株)◎◎食品が将来的に横浜◎男(PS02)から電力の融通を受けることが決まった。このとき、最終受渡電力量として、60kWhが約され、契約開始時点インセンティブとして“◎◎県産バター”が一応決定された(レコード164)。
【0046】
その後、
図4からは直接わからないが、2017年10月31日までの間に、横浜◎男は、複数回に分けて実際には合計50kWhの電力量しか融通できなかった(最終受渡電力量に対して未達)。前記した日立○子の例と異なり、(株)◎◎食品は、この融通量に対して高い評価を与えていない。その結果、横浜◎男は、契約開始時点に決定された“◎◎県産バター”を受け取ることはできず、価値がより小さい“◎◎県産チーズ”を受け取ることになった(レコード168)。
【0047】
(累積融通電力量情報)
図5(a)に沿って、累積融通電力量情報33を説明する。累積融通電力量情報33の構成は、契約情報32(
図4)の構成に類似している。契約情報32から、融通時点決定権者欄116、取引単価欄117、契約開始時点インセンティブ名欄119、契約終了時点インセンティブ名欄120及び配送確認欄121を削除し、新たに累積融通電力量欄(
図5(a)の欄137)を設けると、累積融通電力量情報33が完成する。電力融通管理装置1は、プロシューマの電力管理装置51a及び51bから定期的に(例えば毎時0分及び30分の2度)融通された電力量を取得する。そして電力融通管理装置1は、契約開始時点からの累積受渡電力量を算出し、累積融通電力量欄137に記憶されている累積融通電力量を定期的に更新する。
【0048】
(融通進捗グラフ)
図5(b)に沿って融通進捗グラフ172を説明する。電力融通管理装置1は、累積融通電力量情報33の各レコードの過去の履歴に基づいて、融通進捗グラフ172を作成する。融通進捗グラフ172は、横軸に契約期間の各時点を有し縦軸に累積融通電力量を有する座標平面に描画された、各時点における累積融通電力量の折れ線グラフである。目標線173は、原点と、座標値が“(契約終了時点,最終受渡電力量)”である目標点174とを結ぶ線分である。電力融通管理装置1は、
図5(a)の各レコードを、融通進捗グラフ173として可視化する。
図5(b)に記載した融通進捗グラフ172は、例えば
図5(a)のレコード171の時系列の履歴をグラフ化したものである。
【0049】
契約期間2016年10月10日〜2016年12月31は、12週を有する。そこで、電力融通管理装置1は、目標線173を12の区間に等分し、1区間当たりの縦軸の高さ175を求める。この高さ175が、1週間当たりの日立○子の目標到達平均電力量である。電力融通管理装置1は、融通進捗グラフ172が目標線173の下側にある場合、現時点における、融通進捗グラフ172と目標線173との高低差176を求める。この高低差176が、現時点における目標到達必要電力量である。
【0050】
(処理手順)
図5及び
図6に沿って、処理手順を説明する。
図5及び
図6は、プロシューマの端末装置2a、電力需要者の端末装置2c及び電力融通管理装置1が連携して行う処理手順である。なお、
図5及び
図6の端末装置2aは、
図1の端末装置2a及び2bを代表している。同様に、
図5及び
図6の端末装置2cは、
図1の端末装置2c及び2dを代表している。
【0051】
ステップS201において、電力融通管理装置1の電力需要者対応処理部21は、登録サイトを表示する。登録サイト(図示せず)とは、電力融通管理装置1の運営者のポータルサイトである。具体的には、電力需要者対応処理部21は、ネットワーク3を介して端末装置2cの出力装置に登録サイトの画面を表示する。登録サイトには、“あなたの地域のプロシューマにご当地の産物を渡して電力を融通してもらいませんか?”等の案内文言が表示されている。
【0052】
ステップS202において、端末装置2cは、会員登録を受け付ける。具体的には、第1に、端末装置2cは、電力需要者が端末装置2cの入力装置から、以下の(1)〜(5)の情報(募集情報)を入力するのを受け付ける。
(1)電力需要者の名称及び住所
(2)電力を受け入れることが可能な期間(電力融通期間)
(3)電力融通期間において、1人のプロシューマから受け入れる電力量の複数のプラン(例えば、“100kWh”、“80kWh”、・・・)
(4)複数のプランごとのインセンティブ及びその価値(これらを“募集条件”と呼ぶ)
(5)電力の取引希望単価、及び、個々の融通タイミング(但し、必須ではない)
第2に、端末装置2cは、募集情報を、電力融通管理装置1に送信する。すると、電力融通管理装置1の電力需要者対応処理部21は、募集情報を受信する。
【0053】
ステップS203において、電力需要者対応処理部21は、電力需給情報31(
図3)のレコードを作成する。具体的には、第1に、電力需要者対応処理部21は、電力需給情報31の新たなレコードをプランの数だけ作成する。
第2に、電力需要者対応処理部21は、募集情報を使用して、新たなレコードの各欄を埋める。このとき作成されるレコードの例が、
図3のレコード143〜146及び147〜150である。
【0054】
ステップS204において、電力融通管理装置1のプロシューマ対応処理部22は、登録サイトを表示する。具体的には、プロシューマ対応処理部22は、ネットワーク3を介して端末装置2aの出力装置に登録サイトの画面を表示する。登録サイトには、“あなたの地域の電力需要者に電力を融通して、ご当地の産物を入手してみませんか?” 等の案内文言が表示されている。
【0055】
ステップS205において、端末装置2aは、応募情報を受け付ける。具体的には、第1に、端末装置2aは、プロシューマが端末装置2aの入力装置から、以下の(11)を応募情報として入力するのを受け付ける。なお、端末装置2aは、プロシューマが望む場合は、以下の(12)〜(14)を応募情報として受け付ける。このように、以下の(12)〜(14)の入力を任意としたのは、一般的に個人のプロシューマは、(12)〜(14)を日常的に管理していることが稀だからである。
(11)プロシューマの氏名(本名でなくてもよい)
(12)プロシューマの住所、及び、電力を供給できる期間(電力融通期間)
(13)融通機会1回当たりに供給できる電力量
(14)電力の取引希望単価、及び、個々の融通タイミング(但し、必須ではない)
第2に、端末装置2aは、応募情報を、電力融通管理装置1に送信する。すると、電力融通管理装置1のプロシューマ対応処理部22は、応募情報を受信する。
【0056】
ステップS206において、電力融通管理装置1のプロシューマ対応処理部22は、電力需給情報31(
図3)のレコードを作成する。具体的には、第1に、プロシューマ対応処理部22は、電力需給情報31の新たなレコードを作成する。
第2に、プロシューマ対応処理部22は、応募情報を使用して、新たなレコードの各欄を埋める。このとき作成されるレコードの例が、
図3のレコード141及び142である。
【0057】
前記した(12)〜(14)をプロシューマが開示しない場合がある。すると、プロシューマ対応処理部22は、ステップS205の“第2”において受信した情報だけでは、
図3のレコード141及び142の太線内を埋めることはできない。そこで、プロシューマ対応処理部22は、太線内に過去の統計値を記憶する。過去の統計値とは、例えば、ある地域のある季節における日中の太陽光発電量(家庭1件1日当たり○kWh)、電力消費設備が消費する電力量(家庭1件1日当たり◎kWh)等である。プロシューマ対応処理部22は、官公庁等の外部サーバからこのような統計値を取得してもよいし、他のプロシューマの実績値(例えば累積融通電力量情報33)に基づいてこのような統計値を推定してもよい。
【0058】
電力需要者対応処理部21及びプロシューマ対応処理部22は、ステップS201〜S206の処理を、多くの電力需要者及びプロシューマについて繰り返す。すると、
図3に示すような多くのレコードを有する電力需給情報31が作成される。
【0059】
ステップS207において、プロシューマ対応処理部22は、サービスサイトを表示する。具体的には、プロシューマ対応処理部22は、プロシューマからの要求に応じて、ネットワーク3を介して端末装置2aの出力装置にサービスサイトの画面を表示する。サービスサイトには、複数の電力需要者の候補を示すアイコンが表示されている。アイコンは、そのプロシューマの地域の産物が図案化されたものであることが好ましい。当該アイコンは、例えば、“2016年7月1日〜12月31日の期間に、○○ドームに100kWh融通すると入場割引クーポン1,000円分がもらえます。80kWh融通すると500円相当のアイドルTシャツがもらえます。”のような案内文言にリンクされている。
【0060】
なお、プロシューマ対応処理部22は、以下の条件1〜条件4の全部又は一部を満たす電力需要者の候補を決定し、決定した電力需要者の候補を、募集条件を含む募集情報とともにサービスサイトに表示(公開)しプロシューマを募集する。ある電力需要者の複数のプランが以下の条件を満たす場合、プロシューマ対応処理部22は、複数のプランを表示する。
(条件1)電力需要者の住所が所定の基準を満たす程度にプロシューマの住所(又はプロシューマの端末装置2aの現時点の位置)の近傍にあること。
【0061】
(条件2)プロシューマが電力を供給できる将来の時点又は期間において、電力需要者が電力を受け入れることが可能であること。つまり、
図3の電力需給情報31において、プロシューマの電力融通期間の少なくとも一部が、電力需要者の電力融通期間の少なくとも一部と重複していること。なお、プロシューマ対応処理部22は、この重複期間が長い順に、電力需要者に優先順位を付してもよい。
【0062】
(条件3)
図3の電力需給情報31において、プロシューマが1回(1日)当たりに融通できる電力量(欄105)の、電力需要者が電力融通期間内に1人のプロシューマから受け入れる合計電力量(欄105)に対する比率が所定の範囲内であること。当該所定の範囲は、例えば、“10%以上20%以下”のように上限閾値及び下限閾値で表示される。当該比率がこの範囲よりも小さい場合、プロシューマは電力の融通をあまりにも多くの回数繰り返すうちに、契約期間の途中で疲れて動機を失ってしまう。当該比率がこの範囲よりも大きい場合、目標に向かい少しずつ融通する電力量を積み上げて行く動機が却って失われる。
(条件4)電力需要者の取引希望単価が、プロシューマの取引希望単価以上であること。なお、この条件は必須ではない。
【0063】
ステップS208において、プロシューマ対応処理部22は、電力需要者の選択を受け付ける。具体的には、第1に、プロシューマ対応処理部22は、プロシューマが端末装置2aの入力装置を介して、複数のアイコンのうちから1つを押下するのを受け付ける。
第2に、プロシューマ対応処理部22は、電力需給情報31を参照し、押下されたアイコンの電力需要者についてのレコードを取得する。そして、プロシューマ対応処理部22は、端末装置2aの出力装置に、取得したレコードの情報を任意の態様で表示する。特に、インセンティブ名は、インセンティブの特徴を充分に示す写真及び説明文言のページにリンクするように設定されていることが望ましい。
【0064】
第3に、プロシューマ対応処理部22は、プロシューマが画面上の“この電力需要者と契約する”ボタンを押下するのを受け付ける。この段階で、プロシューマ対応処理部22は、ある電力需要者に対して電力を供給するプロシューマを決定し、その結果、両者間に契約が締結されたことになる。プロシューマ対応処理部22は、端末装置2aの出力装置に、“あなたは、(株)○○ドームさまに対して、電力を融通することになりました”のような確認文言を表示する。
【0065】
第4に、プロシューマ対応処理部22は、電力需給情報31(
図3)を参照したうえで融通シナリオを作成する。いま、日立○子(
図3のレコード141)と(株)○○ドーム(
図3のレコード144)との間で契約が締結されたとする。このとき、プロシューマ対応処理部22は、端末装置2aの出力装置に、融通シナリオ“2016年12月31日までに、8kWh/日を10回融通することを目標としましょう”を表示する。プロシューマが契約内容の目標値として、例えば“80kWh” (
図3のレコード144)を選択した場合、プロシューマ対応処理部22は、例えば前記のように“8kWh/日を10回”を融通シナリオ中で提案する。プロシューマは、この提案を変更することができる。このときプロシューマは、融通の回数と1回当たりに融通する電力量との積が、契約内容の目標値になるように、自身の融通能力を考慮したうえで変更する。プロシューマ対応処理部22は、当該変更後の値(○kWh/日を◎回)を受け付け、電力需要者ID及びプロシューマIDに関連付けて補助記憶装置15に記憶する。
【0066】
ステップS209において、電力融通管理装置1の目標管理部24は、契約情報32(
図4)のレコードを作成する。具体的には、第1に、目標管理部24は、契約情報32の新たなレコードを作成する。
第2に、目標管理部24は、電力需給情報31(
図3)における、プロシューマのレコード、及び、プロシューマが選択した電力需要者のレコードに記載されている情報を使用して、新たなレコードの各欄を埋める。このとき作成されるレコードの例が、
図4のレコード161である。このとき、作成されるレコードの契約終了時点インセンティブ名欄120及び配送確認欄121は、空欄である。
図5のステップS209の後、
図6のステップS210に続く。
【0067】
ステップS210において、目標管理部24は、契約期間が開始したか否かを判断する。具体的には、目標管理部24は、ある契約の契約開始時点(
図4の欄114)が到来した場合(ステップS210“Yes”)、ステップS211に進み、それ以外の場合(ステップS210“No”)、そのまま待機する。
【0068】
ステップS211において、目標管理部24は、蓄電量を問い合わせる。具体的には、目標管理部24は、端末装置2aに蓄電量を問い合わせる。蓄電量とは、その時点でプロシューマの蓄電設備55aに蓄電されている電力量であり、その時点でプロシューマが電力需要者に対して融通可能な電力量である。前記したように、ステップS210のタイミングは、電力需要者又はプロシューマの何れかが予め決定しておくことができる。両者からそのような指定がない場合、目標管理部24は、任意の周期で(例えば毎日午前9時00分)ステップS211を開始する。
【0069】
ステップS212において、端末装置2aは、蓄電量を送信する。具体的には、端末装置2aは、電力管理装置52aにアクセスして蓄電設備55aのその時点での(データとしての)蓄電量を取得し、電力融通管理装置1に送信する。すると、電力融通管理装置1の目標管理部24は、蓄電量を受信する。
【0070】
ステップS213において、電力融通管理装置1の目標管理部24は、融通電力量を決定する。分かり易さのため、引き続き電力需要者は“(株)○○ドーム”であり、プロシューマは“日立○子”であるとして説明を続ける。目標管理部24は、以下のルールに則って今回の融通電力量を決定する。
(ルール1)ステップS212において受信した蓄電量が所定の閾値(例えば、プロシューマが、自身のために常時維持すべき最小限の蓄電量を定めている場合は、その値)未満である場合、目標管理部24は、今回の融通決定量を、“0kWh”とする。なお、ルール1は必須ではない(オプションである)。
【0071】
(ルール2)ステップS212において受信した蓄電量が所定の閾値以上であり、かつ、
図5(b)において現時点における累積融通電力量が目標線173の水準未満である場合、目標管理部24は、今回の融通決定量を現時点の高低差176(目標到達必要電力量)とする。但し、高低差176がステップS212において受信した蓄電量より大きい場合、目標管理部24は、今回の融通決定量を、ステップS212において受信した蓄電量とする。
【0072】
(ルール3)ステップS212において受信した蓄電量が所定の閾値以上であり、かつ、
図5(b)において現時点における累積融通電力量が目標線173の水準以上である場合、目標管理部24は、今回の融通決定量を、所定の電力量(例えば
図3のレコード141の電力量“8kWh”)とする。
(ルール4)目標管理部24が、プロシューマが同じ水準の電力量を融通し続けることを端末装置2aから受け付けている場合は、目標管理部24は、今回の融通決定量を、
図5(b)における高さ175(目標到達平均電力量)とする。
分かり易さのため、ここで決定された今回の融通電力量が“8kWh”であったとして、以降の説明を続ける。
【0073】
ステップS214において、端末装置2aは、電力を融通する。具体的には、端末装置2aは、プロシューマの電力管理装置52aに対し“蓄電設備55aの蓄電量のうち8kWhを、(株)○○ドームの蓄電設備55cに送電する”旨の指示を送る。
ステップS215において、端末装置2cは、蓄電する。具体的には、端末装置2cは、電力需要者の電力管理装置52cに対し“日立○子から送電される8kWhを蓄電設備55cに蓄電する”旨の指示を送る。
【0074】
ステップS216において、端末装置2cは、蓄電完了通知を送信する。具体的には、端末装置2cは、蓄電が完了した旨の通知(蓄電完了通知)を電力融通管理装置1に送信する。蓄電完了通知には、逆潮流で電力系統57へ送電された電力を蓄電設備55cが実際に受け取って蓄電した蓄電量(“送電電力量”と呼ぶ)が含まれている。
ステップS217において、電力融通管理装置1のプロシューマ送電情報取得部23は、端末装置2cから、蓄電完了通知を受信する。
【0075】
ステップS218において、目標管理部24は、契約期間が終了したか否かを判断する。具体的には、目標管理部24は、ある契約の契約終了時点(
図4の欄115)が到来した場合(ステップS218“Yes”)、ステップS219に進み、それ以外の場合(ステップS218“No”)、ステップS211に戻る。
【0076】
ステップS210〜S218の処理は、契約情報32(
図4)に登録されているすべてのプロシューマについて繰り返される。そして、実際に電力の融通が行われる都度、目標管理部24は、累積融通電力量情報33(
図5(a))の各レコードの累積融通電力量の値を、送電電力量の和として更新して行く。目標管理部24は、ステップS217を経由する都度、更新後の累積融通電力量を、プロシューマの端末装置2aに表示する。
【0077】
ステップS219において、目標管理部24は、評価を行う。ステップS219は、何れかの契約の契約終了時点が到来することを契機として開始される。いま、契約情報32(
図4)のレコード161の契約が終了した(2016年12月31日24時00分になった)とする。すると、目標管理部24は、日立○子(PS01)に対する評価を行う。具体的には、目標管理部24は、累積融通電力量情報33(
図5(a))のレコード171の累積融通電力量(実績値)W
2を最終受渡電力量(契約値)W
1と比較する。そして、目標管理部24は、比較結果に応じて、プロシューマに対する評価を取得する。
【0078】
例えば、“W
1≦W
2”である場合、評価は“優”である。“p≦W
2<W
1”である場合、評価は“良”である。“W
2<p”である場合、評価は“可”である。pは、0<p<W
1となるような任意の数である。
【0079】
ステップS220において、目標管理部24は、インセンティブを決定する。具体的には、目標管理部24は、日立○子に対する総合評価“優”に対応する“アイドルTシャツ”(500円)を契約終了時点インセンティブとして決定する。なお、総合評価“良”には、“アイドルボールペン”(200円)が対応し、総合評価“可”には、“アイドルワッペン”(100円)が対応している。この段階で決定されたインセンティブが当初予定されていたインセンティブとは異なる場合がある。この場合、目標管理部24は、プロシューマの端末装置2aに変更後のインセンティブを表示する。
【0080】
ステップS221において、目標管理部24は、インセンティブを配送する。具体的には、第1に、目標管理部24は、配送会社の配送用サーバ(図示せず)に対して配送情報を送信する。配送情報には、インセンティブ名“アイドルTシャツ”、(株)○○ドームのインセンティブ保管用倉庫の住所、及び、日立○子の住所が含まれている。補助記憶装置15は、電力取引主体IDに関連付けて、住所を記憶しているものとする。すると、配送会社は、倉庫において“アイドルTシャツ”を受け取り、それを日立○子に配送する。
第2に、目標管理部24は、契約情報32(
図4)のレコード161のコピーを作成し、それをレコード165として記憶する。そして、目標管理部24は、レコード165の契約終了時点インセンティブ名欄120に“アイドルTシャツ”を記憶し、配送確認欄121に配送フラグ“済”を記憶する。
【0081】
ステップS222において、端末装置2aは、インセンティブを受け取る。具体的には、日立○子の端末装置2aは、“アイドルTシャツ”に添付されているバーコード等を読取り、受領を確認する。その後、処理手順を終了する。
【0082】
(天候不順)
プロシューマの発電設備は、太陽光発電設備に限定されない。しかしながら、プロシューマが自然エネルギーを使用する発電設備しか有さない場合、その発電量は、天候に左右される。そこで、電力融通管理装置1の目標管理部24は、最終受渡電力量が収集できる可能性が小さくなった時点で、以下の施策を実行する。“可能性が小さくなった時点”とは、例えば、“
図5(a)において、その時点にける累積融通電力量が、その時点にける目標線173の水準の50%を下回った時点”である。
【0083】
(施策1)目標管理部24は、契約済の他のプロシューマの端末装置に対して、“電力需要者は、契約上の最終受入電力量を増加させる用意がある”旨のメッセージを送信する。
(施策2)目標管理部24は、契約を未だ締結していないプロシューマの候補の端末装置に対して、新規契約を促すメッセージを送信する。この候補は、電力需給情報31(
図3)に登録されているプロシューマのうち契約情報32(
図4)に登録のない者である。
【0084】
(画面例)
電力融通管理装置1が、プロシューマの端末装置2aに表示する画面の例は以下の通りである。
・電力需要者選択画面(
図8(a))
プロシューマ対応処理部22は、ステップS207においてサービスサイトを表示する。
図8(a)の電力需要者選択画面は、そのサービスサイトの遷移画面である。プロシューマ対応処理部22は、画面上に地域の地図を表示し、電力需給情報31(
図3)の電力需要者の位置を円301等で表示し、円の内側に、必要な電力量を表示する。プロシューマが、ある円を押下すると、画面の下側に、その電力需要者のインセンティブの写真302が表示される。
【0085】
・電力需要者検索画面(
図8(b))
図8(b)の電力需要者検索画面もまた、サービスサイトの遷移画面である。プロシューマ対応処理部22は、プロシューマが検索欄311に検索語を入力するのを受ける。そして、プロシューマ対応処理部22は、入力された検索語に基づいて電力需給情報31(
図3)を検索し、該当した電力需要者のアイコン又は写真312a、312b、・・・をインセンティブのカテゴリ(イベント系、食品系、・・・、等)ごとに表示する。
図8(b)の“By presents”等は、カテゴリを示すタグである。
【0086】
・電力需要者検索結果表示画面(
図8(c))
図8(c)の電力需要者検索結果表示画面もまた、サービスサイトの遷移画面である。プロシューマ対応処理部22は、多くの電力需要者のアイコン又は写真321を検索結果として整列して表示する。
【0087】
・融通可能電力量表示画面(
図8(d))
契約締結後、任意のタイミングで、目標管理部24は、
図8(d)の融通可能電力量表示画面を表示する。目標管理部24は、蓄電量欄331にプロシューマの現時点の蓄電量を表示し、車両蓄電量欄332にプロシューマの車両の現時点の蓄電量(車両蓄電量)を表示し、予想消費電力量欄333に翌日の予想消費電力量を表示する。目標管理部24は、以下の式を用いて融通可能電力量を算出し、算出結果を融通可能電力量欄334に表示する。
融通可能電力量=蓄電量+車両蓄電量−翌日の予想消費電力量−所定の安全マージン
【0088】
・電力融通画面(
図9(a)及び
図8(b))
契約締結後、任意のタイミングで、目標管理部24は、
図9(a)の電力融通画面を表示する。目標管理部24は、電力需要者の写真又はアイコン341、電力需要者の現時点での必要電力量342、電力需要者の現時点での蓄電量343、及び、電力需要者の過去又は将来における蓄電量の実績又は予想を示すグラフ345を表示する。スライダ344が押下されると、グラフ345は、左右に移動(横軸の時点が変化)する。
【0089】
目標管理部24は、融通決定欄346を表示する。融通決定欄346には、1人1回当たりの融通される電力量“20kWh”が表示され、融通がその通りに行われた場合にプロシューマが受け取るインセンティブの価値“5ポイント”が表示される。融通決定欄346の中央の融通ボタン347が押下されると融通が実行される。なお、スライダ348が押下されると、融通される電力量の値及びインセンティブの価値が増減する。
【0090】
図9(a)において、融通決定欄346の“5ポイント”が押下されると、同じ価値を有する実物のインセンティブが“5ポイント”に代替して表示される。
図9(b)においては、その実物のインセンティブ(ナイトゲーム招待券)の写真349が表示されている。
【0091】
・融通中止画面(
図9(c))
前記したように、目標管理部24が周期的にプロシューマに対して蓄電量を問い合わせた後、実際の融通が行われる。プロシューマがこのような問い合わせ及び融通を一時的に中止したい場合、目標管理部24は、
図9(c)の融通中止画面を表示する。画面下側の融通中止ボタン350が押下されると、目標管理部24は以降の問い合わせを中止する。
【0092】
・融通確認画面(
図10(a)、
図10(b)及び
図10(c))
図10(a)の融通確認画面は、
図9(b)と基本的に同じである。いま、プロシューマが融通ボタン347押下すると、次の瞬間、蓄電量343の図案が動的に変化する(
図10(b)参照)。さらに次の瞬間、蓄電量343の値が、融通された分“20kWh”だけ増加する。その後、インセンティブを取得したことを示す写真及び案内文351が表示される(
図10(c)参照)。
【0093】
・インセンティブ管理画面(
図10(d))
契約締結後、任意のタイミングで、目標管理部24は、
図10(d)のインセンティブ管理画面を表示する。本実施形態における実物のインセンティブの価値に応じて、その地域内で通用する仮想通貨(ポイント)をインセンティブに交換することができる。
図10(d)のポイント残高361は、現時点でのプロシューマのポイントの残高である。目標管理部24は、プロシューマの要求があると、交換候補のインセンティブの写真362を表示する。プロシューマが、写真362を選択したうえでポイント交換ボタン363を押下すると、目標管理部24は、ポイント残高361の値を選択されたインセンティブの価値の分だけ減算して再表示する。そして、目標管理部24は、配送用サーバに対して、選択されたインセンティブをプロシューマに配送する旨の指示を送信する。
【0094】
(本実施形態の効果)
本実施形態の電力融通管理装置の効果は以下の通りである。
(1)電力融通管理装置は、プロシューマが電力需要者に対して電力量を融通する動機を維持することができる。
(2)電力融通管理装置は、将来の期間において電力を供給できるプロシューマを募集する。したがって、プロシューマが将来に亘って電力量を融通する動機を維持することができる。
(3)電力融通管理装置は、融通機会ごとに、プロシューマに対して目標とする合計融通電力量に達するための、今回の融通電力量を知らせることができる。
(4)電力融通管理装置は、契約の相手方となり得る電力需要者をプロシューマに知らせることができる。
【0095】
(5)電力融通管理装置は、契約締結時にプロシューマに対して、1回当たりに融通すべき電力量を知らせることができる。
(6)電力融通管理装置は、電力供給量の累積値を表示する。したがって、プロシューマの動機が維持されやすい。
(7)電力融通管理装置は、プロシューマに、電力需要者の複数の候補を表示する。したがって、プロシューマにとって、電力需要者を選択する際の納得感がある。
(8)電力融通管理装置は、電力の融通が実際に行われる前にインセンティブが誤配送されることを回避できる。
(9)電力融通管理装置は、電力を融通するタイミングを電力需要者又はプロシューマに決定させる。したがって、設備保守等の自由度が増す。
【0096】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0097】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。