(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
なお、本発明において靴底とは、靴の着用者の足裏よりも地面側に配置される靴の構成部品を指し、靴の中底及び靴の本底を含む。従って、以下の靴底1の説明は、特に断りがない限り、中底1A及び本底1Bに共通するものである。
以下の靴底1の説明は、特に断りがない限り、中底1A及び本底1Bに共通するものである。
【0014】
(靴底の第1の実施形態)
図1は、本発明に係る靴底の第1の実施形態を示す平面図である。図中の大きな円は、小さな円の部分を拡大して示している。
【0015】
第1の実施形態は、シート状の積層体2によって形成された靴底1(中底1A、本底1B)を例示している。図中、11は前足部(爪先部)、12は中足部(土踏まず部)、13は後足部(踵部)である。
【0016】
積層体2は、熱可塑性樹脂を延伸して得られた線条体3を用いて布状体4を形成し(布状体形成工程)、次いで、得られた布状体4を複数枚積層し(積層工程)、次いで、加熱圧縮し(加熱圧縮工程)、さらに冷却圧縮する(冷却圧縮工程)ことによって、一体化されて形成されている。
【0017】
ここで、前記線条体3としては、布状体4を形成し得るものであれば任意であり、例えばテープ、ヤーン、スプリットヤーン、モノフィラメント、マルチフィラメント等を用いることができる。
【0018】
また、線条体3を構成する熱可塑性樹脂としては、延伸効果の大きい樹脂、一般には結晶性樹脂が使用され、具体的には、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等を用いることができる。
【0019】
中でも加工性と経済性、さらには比重の小ささから高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体が好ましい。
【0020】
前記布状体4は、線条体3を用いて形成されたシート状体である。布状体4は、
図1に示したように経糸3A及び緯糸3Bによって織成された織布が一般的に形成されている。
【0021】
このようにして形成された積層体2は、所望のサイズ及び所望の形状に合わせて裁断される。裁断後は、必要に応じて、足裏の表面形状等に合わせて湾曲させ靴底1が形付けされる。
【0022】
本発明者が確認したところ、このようなシート状の積層体2を使用した本発明に係る靴底1は、従来の靴底と同様に屈曲性が良好でありながらも、踏み出し時に足指を背屈させ、
図2(a)に示すように前足部11を屈曲させた状態(実線で示す状態)としてから、元のフラットな状態(1点鎖線で示す状態)に戻る際の戻りが早い(戻り弾性が高い)ことにより、踏み出し動作における足のwindlass(ウィンドラス)機構を補助し、より強い推進力を生み出すことができることを見出した。
【0023】
windlass機構とは、
図3に示すように、足指が背屈するように踏み出し動作を行った際、足指の背屈に伴って、足指から踵にかけて形成されている足底筋膜(足底腱膜)が踵から足先側に向けて図中A方向に巻き上げられる結果、足指の付け根部から踵にかけて形成される足のアーチが、図中の1点鎖線の状態(平常時)から太実線に示すようにB方向に大きく湾曲して挙上するように働くことである。挙上したアーチには元に戻ろうとする力が働き、これによって足指が伸びて元に戻る際に地面を強くキックし、足が前に進むための推進力となる。このwindlass機構は、裸足時に比べて、足甲が固定される靴の着用時には減退すると言われている。
【0024】
従来の靴底は、踏み出し時に足指を背屈させた際に柔軟に追従して屈曲できるように、前足部が適度な屈曲性を示すように形成されている。このため、元のフラットな状態に戻る際の戻りが緩慢な(戻り弾性が低い)ものであった。その結果、従来の靴底は、足のwindlass機構を補助できず、足指が背屈した状態から元に戻る際のキック力を十分に働かせることができなかった。しかし、本発明に係る靴底1は、足指を背屈させて踏み出す際、従来の靴底と同様に柔軟に追従して屈曲可能でありながらも、屈曲状態からの戻り弾性が高い。このため、windlass機構によって挙上したアーチが元に戻ろうとして背屈した足指が元の状態に伸びようとする力を靴底1の高い戻り弾性が補助する。これにより、足指は元の状態に素早く且つ強く戻ることができるようになり、その結果、強いキック力を発揮し、強い推進力を生み出すことができるようになるという格別な効果が得られる。
【0025】
さらに、本発明者は、このようなシート状の積層体2を使用した靴底1は、
図2(b)に示すように、着地時や足裏全体で踏みつけた時に起こる中足部12から後足部13にかけて地面側に撓む状態(実線で示す状態)から元のフラットな状態(1点鎖線で示す状態)まで復元する力も強い(復元力が高い)ことを見出した。
【0026】
従来の靴底は、柔軟であるがゆえに、着地時等に撓んだ状態から元のフラットな状態まで復元する力が弱い(復元力が低い)ものであった。しかし、この靴底1は、戻り弾性が高いことにより、着地時等に起こる撓みからの復元力も高いという、従来の靴底には見られなかった新たな効果を備えている。靴底1は、着地時や足裏全体で踏みつけた際の撓みからの復元力が高いことにより、着地から次の動作に移行する際の俊敏な動作が可能となるという格別な効果が得られる。このため、本発明に係る靴底1によれば、特に運動競技で重要な動き出しの速さ、俊敏性を高めることができる。
【0027】
また、運動時、靴底には足の長さ方向の動きのみならず、足幅方向の動き(捩れ)も発生するが、本発明に係る靴底1は、このような足幅方向の捩れに対しても同様に高い戻り弾性と復元力を発揮することができるため、足の前進方向のみならず横方向への動きに対しても強い推進力と高い俊敏性を発揮することができる。
【0028】
さらに、積層体2は熱可塑性樹脂のみで構成されていることから比重が低く軽量であり、機械的強度も高い。このため、この靴底1は、靴底として通常要求される剛性を備えた従来一般の靴底と同等の剛性で比較した場合、より薄く形成することができ、軽量で屈曲性も良好である。従って、本発明に係る靴底1によれば、薄くなることで、靴の着用者の足との一体感が高まり、地面の感触等が足裏で知覚できる感覚(足裏感覚)が得られ、履き心地が良好であるといった格別な効果も得られる。
【0029】
特にサッカー等のように足の動きを主体とする競技では、靴を介して地面やボール等の感触がある程度足裏で知覚できる足裏感覚が求められる。このような足裏感覚は従来の靴底では得ることが困難であった。しかし、本発明に係る靴底1によれば、足裏形状に良く馴染んで一体感も良好となることから、足裏感覚にも優れるといった格別な効果も得られる。
【0030】
しかも、本発明に係る靴底1は、積層体2に熱可塑性樹脂を延伸して得られた線条体が使用されているため、割れ、折れ等が起き難く、繰り返しの屈曲性に優れる等、高い耐久性も有する。
【0031】
また、以下に例示する第2、第3及び第4の実施形態に示すように、靴底1には、部分的に剛性を高めるための工夫を容易に施すこともできる。
【0032】
この靴底1を中底1Aとして使用する場合は、その片面又は両面に、他の靴部品との接着性を良好にするため、不織布又はクレープ紙を貼り合せるようにしてもよい。また、同様の目的で、不織布やクレープ紙に代えて研摩等によって粗面加工してもよい。
【0033】
(靴底の第2の実施形態)
図4は、本発明に係る靴底の第2の実施形態を示す平面図、
図5は、
図4中の(v)−(v)線に沿う断面図である。
図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、詳細な説明は省略する。
【0034】
第2の実施形態は、リブ14を有する靴底1(中底1A、本底1B)を例示している。このリブ14は、中足部12に、靴底1の長さ方向(
図3中の上下方向)に沿って延びるように配置されている。この第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、リブ14によって靴底1の剛性を部分的に高めることができる効果が得られる。
【0035】
リブ14は、積層体2を例えばプレス成形することによって形成されている。リブ14の断面形状は、
図5に示すように、靴底1の一方の面に略三角形状に突出するように形成する他、半球状、台形状、矩形状等に突出するように形成してもよい。リブ14の平面形状は、長さ方向に亘って同一幅で形成するものに限らず、例えば後足部13側から前足部11側に向けて左右に広がるように形成することもできる。また、リブ14は直線状に延びるように形成するものに限らず、平面視でわずかに湾曲するように形成することもできる。さらに、リブの高さについても必要に応じて、高さを漸次変えて形成することもできる。
【0036】
リブ14は、靴底1の上面と下面のいずれに突出するものでもよいが、特にこの靴底1を中底1Aとして使用する場合は、
図5に示すように、リブ14が突出する面が下面(足裏が載る面と反対側の面)となるように形成すると、着用者の足裏に違和感を与えることがない。
【0037】
リブ14の本数は複数でもよい。
図6に示す靴底1は、中足部12に3本のリブ14を並設した態様を示している。また、複数本のリブ14は、並設する態様に限らず、図示しないが、平面視で例えばX字状等に交差させてもよい。
【0038】
リブ14を複数本設ける場合、所望の本数、所望の形状、所望の突出高さで形成することにより、靴底1の中足部12に所望の剛性を付与することができるため、使用者の好みに応じた特性を有する靴底1を容易に形成することができる。
【0039】
図6に示す靴底1は、前足部11にもリブ15を形成している。このリブ15は、リブ14と同様にプレス成形することによって、前足部11の幅方向に沿って所定の間隔をおいて複数本並設されている。このリブ15は、踏み出し時に足指を背屈させて前足部11を屈曲させる際の屈曲部位を規制し、靴底1の屈曲動作を円滑に案内する。しかも、リブ15は幅方向に延びているため、前足部11の幅方向の剛性を高めることもできる。このため、前足部11の幅方向の捩れを抑制でき、歩行時や走行時の足の動きをさらに安定させる効果もある。
【0040】
このリブ15も、リブ14と同様、本数や形状は特に問わず、図示するもの以外に、靴底1の大きさや必要とされる剛性等に応じて様々な本数、形状に形成することができる。また、複数本のリブ15は平行に形成されるものに限らない。さらに、リブ15は、本底1Bの幅方向に対して斜めとなるように形成してもよい。
【0041】
なお、中足部12に形成したリブ14は、後足部13まで延長してもよい。
【0042】
(靴底の第3の実施形態)
図7、
図8は、本発明に係る靴底の第3の実施形態を示す分解斜視図である。
図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、詳細な説明は省略する。
【0043】
第3の実施形態は、積層体2を構成する布状体4の積層枚数を部分的に異ならせることによって、剛性を部分的に高めるようにした靴底1(中底1A、本底1B)を例示している。この第3の実施形態によっても、第1の実施形態の効果に加え、靴底1の剛性を部分的に高めることができる効果が得られる。
【0044】
図7は、前足部11、中足部12及び後足部13が一体に形成された大積層体21の中足部12に対応する部位のみに、大積層体21よりも小さい小積層体22を設けた靴底1を示している。本態様では、すなわち、この小積層体である積層シートが、靴底より小さい形状に形成されることになる。
大積層体21と小積層体22は、いずれも複数枚の布状体4を積層し、加熱圧縮することによって形成された積層体2である。従って、靴底1における布状体4の積層枚数は、大積層体21と小積層体22とが積層されている中足部12において部分的に多くなるため、中足部12の剛性を部分的に高めることができる。
【0045】
大積層体21と小積層体22は、両者を別々の積層体2として形成した後に重ね合わせ、再度加熱圧縮することによって一体化してもよいし、両者を別々の積層体2として形成した後に接着剤等によって接着することによって一体化してもよい。
【0046】
一方、
図8は、布状体4を部分的に多く積層して形成した積層体2を使用した靴底1を示している。ここでは、2枚の大布状体41、41における中足部12に対応する部位の間に、大布状体41よりも小さい1枚の小布状体42を挟むようにしている。しかし、小布状体42は、積層体2の表面に配置されるようにしてもよい。
【0047】
大布状体4は前足部11、中足部12及び後足部13が一体に形成されているが、小布状体42は靴底1における中足部12に対応する部位のみに形成されている。そして、これら大布状体41と小布状体42を積層した後、加熱圧縮して一体化することによって積層体2が形成されている。これによっても、靴底1における布状体4の積層枚数は中足部12において部分的に多くなるため、中足部12の剛性を部分的に高めることができる。
【0048】
なお、
図7、
図8では、小積層体22及び小布状体42を中足部12の形状に合わせて形成したが、これに限定されず、例えば矩形状等の任意の形状であってもよい。また、中足部12以外にも要求に応じて任意の部位に、上記同様の方法によって部分的に剛性を高めるようにすることができる。
すなわち、小積層体22である靴の構成部品は、靴底1の前足部11、中足部12又は後足部13の何れか1箇所又は2以上の個所に設けられてもよいし、あるいは前足部11、中足部12又は後足部13の2以上の箇所に跨って設けられてもよい。
【0049】
(靴底の第4の実施形態)
図9は、本発明に係る靴底の第4の実施形態を示す平面図である。図中の大きな円は、小さな円の部分を拡大して示している。
図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、詳細な説明は省略する。
【0050】
第4の実施形態は、布状体4の線条体3の打ち込み本数を布状体4内で部分的に異ならせた積層体2を使用することによって、剛性を部分的に高めるようにした靴底1(中底1A、本底1B)を例示している。この第4の実施形態によっても、第1の実施形態の効果に加え、靴底1の剛性を部分的に高めることができる効果が得られる。
【0051】
この靴底1は、中足部12の布状体4の経糸3A、緯糸3Bよりなる線条体3の経糸3Bの打ち込み本数を、前足部11の布状体4の線条体3の打ち込み本数よりも多くしたものである。布状体4は、線条体3の打ち込み本数が多い程、強度が高くなって剛性が高まるため、この靴底1によれば、中足部12の剛性を部分的に高めることができる。
【0052】
線条体3の打ち込み本数を以上のように変化させた布状体4は、積層体2を構成する複数枚の布状体4の全てでもよいし、複数枚の布状体4のうちの一部の布状体4のみであってもよい。
【0053】
具体的な打ち込み本数は、線条体3の太さや必要とされる剛性に応じて適宜調整できる。
【0054】
また、線条体3の打ち込み本数の調整は、中足部12に限らず、要求に応じて任意の部位に対して行うことができる。
【0055】
なお、靴底1の剛性を部分的に高める場合、以上の第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態の各構成のうちのいずれか2種以上の構成を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0056】
(靴底の第5の実施形態)
図10は、本発明に係る靴底の第5の実施形態を示す分解斜視図である。
図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、詳細な説明は省略する。
【0057】
第1〜第4の実施形態に示す靴底1は、中底1A、本底1Bを問わずに使用される例を示しているが、第5の実施形態の靴底1は、本底1Bとして使用される場合の一例を示している。
【0058】
本底1Bは、積層体2を含む複数の層が積層されてなる積層構造を有している。本底1Bは、積層体2の層とミッドソール5の層とアウトソール6の層の3層からなり、最上層に積層体2を使用している。この積層体2は、上述した第1〜第4の実施形態に示したいずれの積層体2を使用することもできる。
【0059】
ミッドソール5は、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)等の発泡合成樹脂によって形成されている。アウトソール6は、例えばゴム等の耐摩耗性、防滑性を有する素材によって形成されている。
【0060】
これら積層体2、ミッドソール5、アウトソール6は、接着剤によって接着一体化されて本底1Bを形成している。また、加熱によって融着させて一体化することによって本底1Bを形成してもよい。さらに、積層体2にミッドソール5の層とアウトソール6の層を順次射出成形することによって一体化してもよい。
【0061】
この本底1Bは、第1の実施形態の効果に加え、ミッドソール5が発揮する良好なクッション性によって、ランニングシューズ、ウォーキングシューズ等の本底として好適に使用することができる効果が得られる。
【0062】
ここでは3層の積層構造を例示したが、積層数は特に限定されない。また、この本底1Bは、積層体2を最上層に積層するものに限らず、中間の層に積層してもよい。さらに、積層構造を構成する複数層のうちの2層以上に積層体2を使用してもよい。
【0063】
(靴底の第6の実施形態)
図11は、本発明に係る靴底の第6の実施形態を示す底面図である。
図12は、
図11中の(xii)−(xii)線に沿う断面図である。
図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、詳細な説明は省略する。
【0064】
第6の実施形態の靴底1も本底1Bとして使用される場合の一例を示している。
【0065】
本実施形態に示す本底1Bは、積層体2の底面(地面と接する面)に適宜数のスパイク16が突設されたものである。この本底1Bによれば、第1の実施形態の効果に加え、例えばサッカーシューズやラグビーシューズ等のフィールド競技用の運動靴の本底として好ましく使用することができる効果が得られる。
【0066】
スパイク16は、
図12に示すように、積層体2を部分的に底面側に凸、その反対面側に凹となるように、例えばプレス成形することによって一体に突出形成されている。スパイク16の形状は任意であり、図示する形状に限らない。
【0067】
このスパイク16の突出側とは反対面側の凹部には充填材161を充填することが好ましい。これにより、長期使用による摩耗等によってスパイク16の先端に穴が開いたとしても、充填材161によってスパイク16としての機能を維持することができる。充填材161としては、適度な弾性を有し、クッション材として機能し得る材質が好ましく、例えばゴムが挙げられる。ゴムによって接地時の突き上げを緩和する効果も得られる。
【0068】
この他、図示しないが、スパイク16は、本底1Bを形成する積層体2の底面側に、後加工として、ポリアミドやポリウレタン等の合成樹脂を射出成形することによって形成することもできる。このとき、射出成形される合成樹脂と積層体2との一体化を良好にするために、積層体2の少なくとも底面側に、射出成形される合成樹脂と積層体2の両方と接着性が良好となる合成樹脂を、フィルムや塗布等の形で積層しておくことが好ましい。
【0069】
さらに、図示しないが、スパイク16は本底1Bの底面にねじ止めすることによって取り付けてもよい。この場合、本底1Bに雌ねじ穴とナットを設けておき、スパイク16から突出するねじ軸を螺合させることによって、スパイク16を本底1Bに着脱可能に取り付けることができる。
【0070】
なお、第6の実施形態に示す本底1Bには、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態の各構成のうちのいずれか2種以上の構成を適宜適用してもよい。
【0071】
(靴底の第7の実施形態)
図13は、本発明に係る靴底の第7の実施形態を示す底面図である。
図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、詳細な説明は省略する。
【0072】
第7の実施形態の靴底1も本底1Bとして使用される場合の一例を示している。
【0073】
本実施形態に示す本底1Bは、積層体2の底面(地面と接する面)に適宜の数及び形状の滑り止め17が突設されたものである。この本底1Bによれば、第1の実施形態の効果に加え、例えばランニングシューズやウォーキングシューズ等の本底として好ましく使用することができる効果が得られる。
【0074】
滑り止め17は、積層体2の底面側に、例えばポリウレタン等の軟質の合成樹脂を射出成形することによって形成することができる。このとき、スパイク16の場合と同様に、積層体2の少なくとも底面側に、射出成形される合成樹脂と積層体2の両方と接着性が良好となる合成樹脂をフィルムや塗布等の形で積層しておくことが好ましい。また、この他、別途形成した滑り止め17を、積層体2の底面側に接着剤によって接着してもよい。
【0075】
なお、第7の実施形態に示す本底1Bには、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態の各構成のうちのいずれか2種以上の構成を適宜適用してもよい。
【0076】
(靴底の第8の実施形態)
図14は、本発明に係る靴底の第8の実施形態を示す斜視図である。
図1、
図11、
図12と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、詳細な説明は省略する。
【0077】
第8の実施形態の靴底1も本底として使用される場合の一例を示している。
【0078】
本実施形態に示す本底1Bは、後足部に積層体2からなるカウンター18を一体に形成したものである。カウンター18は、主として靴の踵部の型崩れを防ぐと共に、足の踵を保護するための芯材となる部位である。本実施形態に示すカウンター18は、本底1Bを形成する積層体2を例えばプレス成形することによって、本底1Bの後足部に一体に形成されている。
【0079】
この本底1Bによれば、第1の実施形態の効果に加え、カウンター18によって足の踵をホールドする効果を高め、スポーツ競技のような激しい動きを伴う際の足の安定性を向上させることができる効果が得られる。
【0080】
すなわち、靴の中の踵は、踏み出しや着地の際に靴の中で常に動いている。例えば着地時について見ると、踵がやや内側に倒れながら変形するプロネーションと呼ばれる現象が起こっている。一般的な靴のカウンターは、専ら靴の踵部を保形するために比較的硬質な合成樹脂によって形成されているため、靴の中の踵の動きに追随し難い構造となっている。このため踵の動きに追随しながらホールドする機能は不十分であり、靴の中の足の安定性を高める観点からは課題があった。
【0081】
しかし、このように積層体2によって形成されたカウンター18を備えた本底1Bは、カウンター18が踵の動きに追随して容易に屈曲変形することができる。しかも、積層体2からなるカウンター18は、上述したように高い戻り弾性を有するため、踵の動きに追随して変形した後、迅速に元の形状に復元しようとする。このとき、踵が靴の中で元の位置に戻ろうとする動きを、カウンター18の高い戻り弾性によって補助する。このため、踵をホールドする効果を高めることができ、靴の中の足の安定性をより高めることができる。
【0082】
また、着地時のプロネーションによって変形した踵がカウンター18の戻り弾性に補助されて迅速に元に戻ることができることにより、着地後に次の踏み出し動作に迅速に移行することができ、より俊敏な動作が可能となる。
【0083】
さらに、カウンター18は、踵の動きに追随して容易に変形することができるため、踵の動きによってカウンター18の部位以外の甲被の部分が変形してしまうことを抑制できる。このため、甲被のフィット感を向上させることでき、甲被の変形によって生じた隙間から靴内に砂等が侵入することを抑制することができる。もちろん、積層体2自体が有する剛性によってカウンター本来の靴の踵部の保形性も維持できる。
【0084】
なお、カウンター18を有する本底1Bは、スパイク16を有するものに限定されない。
【0085】
(積層体の構成)
次に、積層体2の具体的な構成について説明する。
【0086】
積層体2は、熱可塑性樹脂を延伸して得られた線条体3を用いて形成された布状体4を複数枚積層し、これを加熱圧縮することによって一体化されて形成されている。
【0087】
線条体3は、前述のように、例えばテープ、ヤーン等を用いることができ、線条体3は必要に応じて撚糸されるが、テープ、ヤーン等の扁平な線条体とすることが好ましく、特にテープ状線条体であるフラットヤーンを使用することが好ましい。
【0088】
布状体4を複数枚積層し、加熱圧縮することによって一体化したシート状の積層体2を得る際には、線条体3の一部分を溶融することが好ましい。
【0089】
線条体3は、低融点樹脂成分と高融点樹脂成分を含んでいることが好ましい。後述する加熱時に、低融点樹脂成分が溶融し、高融点樹脂成分が溶融しない程度の温度で加熱することにより、このうちの低融点樹脂成分が接着成分となり、高融点樹脂成分は強化繊維となる。
【0090】
低融点樹脂成分と高融点樹脂成分は、線条体3を構成する樹脂中に本来的に含まれている低融点樹脂成分と高融点樹脂成分であってもよいし、線条体3に意図的に低融点樹脂成分の部位と高融点樹脂成分の部位とを形成したものであってもよい。前者の場合では、
図15(a)に示すように、線条体3は基層31のみの単層とすることができる。後者の場合では、
図15(b)(c)に示すように、線条体3は基層31の片面又は両面に基層31よりも融点の低い熱可塑性樹脂からなる表面層32が積層された積層構造とすることができる。また、後者の場合は、
図15(d)に示すように、基層31よりも融点の低い熱可塑性樹脂からなる表面層32が基層31を覆う芯鞘構造であってもよく、
図15(e)に示すように、基層31より融点の低い熱可塑性樹脂33を分散させた海島構造であってもよい。
【0091】
また、積層体2を構成する線条体3が、高融点樹脂成分である基層31と低融点樹脂成分である表面層32や海島構造の熱可塑性樹脂33とを含むものである場合、表面層32や熱可塑性樹脂33には、基層31よりも低融点の熱可塑性樹脂が用いられる。基層31を構成する樹脂成分と表面層32や海島構造の熱可塑性樹脂33の樹脂成分は同種の樹脂成分であることが好ましい。後述する加熱圧縮時に、線条体3によって構成される布状体4同士の接着をより強固に行うことができるからである。同種の樹脂成分とは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなど、同種の成分から構成された樹脂を指す。
【0092】
線条体3には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。具体的には、有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、有機金属塩系等の滑剤;含臭素系有機系、リン酸系、メラミンシアヌレート系、三酸化アンチモン等の難燃剤;低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等の延伸助剤;有機顔料;無機顔料;無機充填剤;有機充填剤;金属イオン系等の無機抗菌剤、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0093】
線条体3として積層構造が使用される場合、その成形材料となる積層フィルムを成形する手段としては、予め基層31となるフィルムと表面層32となるフィルムを形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段や、基層31となるフィルムの表面に表面層32となる熱可塑性樹脂をコーティングする方法、予め形成した基層31となるフィルムに表面層32を押出ラミネートする方法、あるいは、多層共押出法によって積層フィルムとして押出成形する方法等の公知の手段から適宜選択して用いることができる。成形の容易さやコスト面、並びに、製品の各層間の接着性の点では、多層共押出法によって基層31と表面層32の積層構造を一段で得る方法が好ましい。
【0094】
また、延伸して線条体3とする手段としては、例えば一軸延伸を採用することができる。この場合、基層31となるフィルムを一軸方向に延伸した後、表面層32となる熱可塑性樹脂を積層し、これをテープ状にスリットしてもよく、あるいは、基層31と表面層32とが積層された積層フィルムをスリットする前、又は、スリットした後、一軸方向に延伸することによって得ることもできる。
【0095】
延伸方法は特に限定されるものではなく、熱ロール、熱板、熱風炉、温水、熱油、蒸気、赤外線照射等の公知の加熱方法を用い、一段もしくは多段延伸によって行うことができる。
【0096】
線条体3の太さは目的に応じて任意に選定することができるが、一般的には、50〜10000デシテックス(dt)の範囲が望ましい。
【0097】
布状体4は、線条体3を用いて形成されたシート状体で、
図1、
図9に示したように経糸3A及び緯糸3Bによって織成された織布が一般的に使用できる他、布状体4は、多数の線条体を一方向に並設し、その上に任意の角度方向に交差するように多数の線条体を並設して、その交点をホットメルト剤等の接着剤を用いて、あるいは熱融着によって接合した交差結合布(ソフ)とすることもできる。この他、布状体4は、多数の線条体3を一方向に並設し、その上に任意の角度方向に交差するように多数の線条体3を並設して、ステッチング糸で連結した多軸繊維基材とすることもできる。布状体4は編物でもよい。
【0098】
布状体4を複数枚積層し、加熱圧縮して、一体化したシート状の積層体2を得る際、複数の布状体4間に接着用フィルムを介在させ、該接着用フィルムの一部分又は全部を溶融することによって製造することができ、好ましくは該接着用フィルムの一部分を溶融することによって製造することができる。
【0099】
接着用フィルムとしては、樹脂フィルムが好適に用いられる。樹脂フィルムは、線条体3を構成する樹脂と同種の樹脂成分を含むことが好ましい。接着用フィルムは、溶融させる樹脂として低融点樹脂成分と、溶融させない樹脂として高融点樹脂成分を含むことができる。例えば、低融点樹脂中に、高融点樹脂の微粒子を分散させたもの等を好ましく用いることができる。
【0100】
さらに、布状体4を複数枚積層し、加熱圧縮することによって一体化したシート状の積層体2を得る際、線条体3の一部分を溶融し、且つ複数の布状体4間に接着用フィルムを介在させ、該接着用フィルムの一部分又は全部を溶融することが好ましく、該接着用フィルムの一部分を溶融することがより好ましい。
【0101】
積層体2は、このような布状体4を複数枚積層し、これを加熱圧縮することによって一体化されて形成されている。その具体的な製法は特に限定されるものではないが、以下に一例を説明する。
【0102】
積層体2は、布状体形成工程で線条体3を用いて布状体4を形成し、次いで、得られた布状体4を積層工程で複数枚積層する。そして、これらを加熱圧縮工程で加熱圧縮後、冷却圧縮工程で冷却圧縮することにより、所望の靴底の材料となる積層体2を形成することができる。
【0103】
布状体形成工程では、線条体3を用いて布状体4を形成する。布状体4を織布とする場合、織り方は特に限定されないが、例えば平織、綾織、斜紋織、畦織、二重織等に織成することができる。
【0104】
積層工程では、このようにして得られた布状体4を複数枚積層する。積層枚数は、積層体2にある程度の機械的強度を付与する観点から2枚以上とされる。積層枚数の上限は、最終製品である靴底1(中底、本底)が所望の厚みや剛性となるように任意に設定される。
【0105】
なお、積層される布状体4の各々は同一のものに限らず、線条体3の種類や幅や厚みや延伸倍率、打ち込み本数、織り方等を異ならせた布状体4同士を積層するようにしてもよい。また、
図8に示したように小布状体42を介在させる場合は、この積層工程において大布状体41と小布状体42とを積層することができる。
【0106】
加熱圧縮工程では、複数枚積層した布状体4の積層物を加熱及び圧縮する。この加熱圧縮工程は、布状体4を加熱した後に、加熱された布状体4に対して圧縮を行うようにしてもよいし、加熱と圧縮を同時に行うようにしてもよい。
【0107】
加熱条件は、一体化したシート状の積層体2が得られる条件であれば格別限定されないが、線条体3の一部分が溶融するように行うことが好ましい。
図15(b)〜(e)で示した線条体3を用いると、線条体3の基層31が溶融せず、表面層32や海島構造の熱可塑性樹脂33のように基層31より融点の低い部分が溶融する程度の温度範囲で行うことにより、線条体3の一部分が溶融するように加熱圧縮することが容易であるために好ましい。上記温度範囲で圧縮することで、基層31は溶融しないが、表面層32や海島構造の熱可塑性樹脂33は基層31よりも融点が低いため、この表面層32や熱可塑性樹脂33が溶融し、隣接する布状体4、4間を強固に接着する。
【0108】
このように基層31とこの基層31よりも融点が低い表面層32や海島構造の熱可塑性樹脂33を含む線条体3を使用した布状体4で構成された積層体2は、線条体3における高融点樹脂成分である基層31が強化繊維となり、低融点樹脂成分である表面層32や海島構造の熱可塑性樹脂33が接着成分となることにより、高い曲げ弾性率を有し、耐衝撃性に優れると共に、隣接する布状体4、4間が強固に接着された積層体2を形成することができる。
【0109】
また、上述した接着用フィルムを布状体4間に介在させる場合は、加熱条件は、接着用フィルムの一部分を溶融するように行う。これにより、隣接する布状体4、4間を強固に接着することができる。このとき、接着用フィルムの一部分を溶融するに際して、さらに線条体3の一部分を溶融させるように加熱条件を設定することによって、隣接する布状体4、4間をさらに強固に接着することができる。
【0110】
圧縮時の圧力や圧縮時間は、布状体4を構成している線条体3に使用されている樹脂や、布状体4の厚み等によって異なるが、一例を挙げれば、圧力は0.5MPa〜30MPa、圧縮時間は数秒〜20分とすることができる。
【0111】
冷却圧縮工程では、加熱圧縮工程で加熱圧縮された積層物を冷却条件下で圧縮する。ここで冷却とは、加熱圧縮工程における温度条件よりも低い温度で行うことであり、例えば10〜60℃とすることができる。冷却圧縮工程によって、加熱により溶融した表面層32や海島構造の熱可塑性樹脂33が硬化し、各布状体4が強固に硬化した積層体2を得ることができる。
【0112】
圧縮時の圧力や圧縮時間は、布状体4を構成している線条体3に使用されている樹脂や、布状体4の厚み等によって異なるが、一例を挙げれば、圧力は0.5MPa〜30MPa、圧縮時間は数秒〜20分とすることができる。
【0113】
加熱圧縮工程及び冷却圧縮工程において用いられる圧縮手段は特に問わず、油圧プレス機、ロールプレス機、ダブルベルトプレス機等の適宜公知の装置を用いることができる。
【0114】
最終的に得られる積層体2は、この冷却圧縮工程を経ることによって所望の厚みに形成される。
【0115】
このようにして形成された積層体2は、靴底1(中底1A、本底1B)の使用目的に応じて所望のサイズ及び所望の形状に合わせて裁断される。裁断後は、必要に応じて、足裏の表面形状等に合わせて湾曲するように形付けされる。
【0116】
(靴の実施形態)
本発明に係る靴は、上述した積層体2を使用した靴底1を中底1Aと本底1Bのいずれか一方又は両方に備える。
図16は、積層体2を使用した中底1Aと積層体2を使用した本底1Bを備えた靴100を示している。この靴100は、本底1Bに甲被7及び中底1Aが接着され、さらに中敷き8が装着されることによって形成されている。この靴100は、積層体2を使用した靴底1を備えるため、第1の実施形態に示す靴底1が発揮する効果が得られる。
【0117】
中底1Aと中敷き8との間には、必要に応じて図示しない緩衝材をさらに装着してもよい。また、
図16では、積層体2を使用した本底1Bとして
図11、
図12の第6の実施形態に示す本底1Bを使用したが、これに限定されない。
【実施例】
【0118】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0119】
(実施例1)
高融点樹脂成分としてポリプロピレン(MFR=0.4g/10分、重量平均分子量Mw=630,000、融解ピーク温度164℃)と、低融点樹脂成分としてプロピレン−エチレンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、重量平均分子量Mw=220,000、融解ピーク温度125℃)とを用いて、インフレーション成形法によって、低融点樹脂成分を両外層とし、高融点樹脂成分を中間層とした3層フィルム(層厚み比1/8/1)を得た。
【0120】
高融点樹脂成分(ポリプロピレン)と、低融点樹脂成分(プロピレン−エチレンランダム共重合体)は、何れもポリオレフィンであり、同種の樹脂成分である。
【0121】
得られたフィルムを、レザー(razor)でスリットした。次いで、温度110〜120℃の熱板上で7倍に延伸した後、温度145℃の熱風循環式オーブン内で10%の弛緩熱処理を行い、糸巾4.5mm、繊度1700dtのフラットヤーンを得た。
【0122】
得られたフラットヤーンを、スルーザー織機を用いて、経糸15本/25.4mm、緯糸15本/25.4mmの綾織に織成することによって布状体を得た。
【0123】
一方、低融点樹脂成分としてプロピレン−エチレンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、重量平均分子量Mw=220,000、融解ピーク温度125℃)と、高融点樹脂成分としてポリプロピレン(MFR=1.9g/10分、重量平均分子量Mw=500,000、融解ピーク温度161℃)とを、重量比率として、低融点樹脂成分:高融点樹脂成分=80:20で混合して、インフレーション成形法によって接着用フィルムを得た。
【0124】
得られた布状体4枚と、得られた接着用フィルム3枚を、布状体/接着用フィルム/布状体/接着用フィルム/布状体/接着用フィルム/布状体となるように交互に積層して積層物を得た。
【0125】
得られた積層物を、油圧式プレス機でプレス温度145℃、圧力5MPaで2分間加熱プレスした後、油圧式プレス機でプレス温度25℃、圧力5MPaで2分間冷却プレスして積層体を得た。
【0126】
得られた積層体の片面に、目付重量30g/m
2のPETスパンレース不織布と、厚み30μmのEMA(エチレン−アクリル酸メチル共重合体)フィルムを、積層体/EMAフィルム/不織布の順に積層し、油圧式プレス機でプレス温度125℃、圧力0.5MPaで1分間プレスした後、油圧式プレス機でプレス温度25℃、圧力0.5MPaで1分間プレスして厚さ1.3mmの積層体シートを得た。
【0127】
得られた積層体シートを足裏形状に打抜いた後、130℃に加熱し、アルミ型を用いて、
図6に示すように、前足部の巾方向に沿ってリブを4本、中足部の長さ方向に沿ってリブを3本プレス成形し、中底(1)を得た。
【0128】
(実施例2)
実施例1において、布状体5枚と接着用フィルム4枚を布状体/接着用フィルム/布状体/接着用フィルム/布状体/接着用フィルム/布状体/接着用フィルム/布状体となるように交互に積層した以外は実施例1と同様にして、厚さ1.6mmの中底(2)を得た。
【0129】
(比較例1)
厚さ2mmのパルプボードを足裏形状に打抜くことによって中底(3)を得た。
【0130】
<評価方法>
実施例1、2で得られた中底(1)(2)及び比較例1で得られた中底(3)を用いて、26.5cmのフットサル用靴を製造し、以下の評価方法に基づき俊敏性の効果を評価した。
【0131】
試技者に当該靴を履かせ、片足を前、反対の足を後に歩幅程度に開いて静止した状態から、前進するために蹴り出した際の前足における垂直方向の床反力Fzを、キスラー(株)製フォースプレート9281Bを用いて測定した。Fz値の上昇が緩やかになる点をMP関節屈曲時と看なし、MP関節屈曲から離床するまでの時間を測定した。なお、MP関節とは、つま先を地面につけて踵を上げた時に屈曲する部位である。
【0132】
試技者1名あたり5回の試技を行い、MP関節屈曲から離床までの測定時間の平均値を求めた。その結果を表1及び
図17に示す。
は熱可塑性樹脂のみで構成されていることから比重が低く軽量であり、機械的強度も高い。このため、この靴底1は、靴底として通常要求される剛性を備えた従来一般の靴底と同等の剛性で比較した場合、より薄く形成することができ、軽量で屈曲性も良好である。従って、本発明に係る靴底1によれば、薄くなることで、靴の着用者の足との一体感が高まり、地面の感触等が足裏で知覚できる感覚(足裏感覚)が得られ、履き心地が良好であるといった格別な効果も得られる。
【0133】
【表1】
【0134】
<評価>
表1又は
図17より、実施例1、2の中底(1)(2)を用いた靴の場合、比較例1の中底(3)を用いた靴の場合と比較して、MP関節屈曲から離床するまでの時間を短縮でき、俊敏性を向上できることがわかる。
【0135】
(実施例3)
実施例1において、布状体3枚と接着用フィルム2枚を布状体/接着用フィルム/布状体/接着用フィルム/布状体となるように交互に積層した以外は実施例1と同様にして、厚さ1.0mmの中底(4)を得た。
【0136】
<評価方法>
実施例3で得られた中底(4)及び比較例1で得られた(3)を用いて、26.5cmのランニング用靴を製造し、体育館内での20m全力疾走における走行タイムと垂直跳びにおける跳躍距離を評価した。その結果を表2及び表3に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
<評価>
表2及び表3より、実施例3の中底(4)を用いた靴の場合、比較例1の中底(3)を用いた靴の場合と比較して、走行タイム及び跳躍距離の何れにおいても優れており、キック力及び推進力を向上できることがわかる。
【0140】
なお、以上の実施例は積層体を靴の中底に用いた場合であるが、実施例2で得られた厚さ1.6mmの積層体シートは、靴の本底としても使用可能である。従って、この積層体シートを本底形状に打ち抜いて靴を製造することにより、上記実施例1〜3と同様の俊敏性、キック力及び推進力の向上効果が得られることがわかる。