【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、独立請求項1に記載の振動溶着装置、独立請求項6に記載の振動溶着装置の使用、独立請求項7に記載の振動溶着装置によって少なくとも二つの細長い部品を接続する方法、及び独立請求項9に記載の振動溶着装置の製造方法によって解決される。本発明の有利な実施態様及びさらなる展開は、以下の詳細な説明、添付図面、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0016】
機械的に連結された複数の振動子を有する本発明の振動溶着装置は、以下の特徴を備える。装置は少なくとも三つの振動ユニットを備え、振動ユニットは各々少なくとも一対の対向配置された電磁石コイルからなり、各一対の電磁石コイルは、その間に配置されたバネ支承された振動子を第一振動方向に線形振動させ、装置はさらに、溶着対象の部品を移動させることが可能で、且つ全ての振動ユニットに対して機械的に接続されている細長いツールを有し、振動溶着の過程において、二つの部品が部品の長手方向とは異なる振動、特に長手方向に対して横方向の振動によって互いに溶着されるように、振動ユニットは、各振動ユニットの第一振動方向がツールの長手軸に対して略横方向となるように、細長いツールに対して配置されている。
【0017】
好ましくはU字型若しくはL字型形状の細長い部品を振動溶着する際、振動溶着の技術分野では公知の複数の振動ユニット、この場合少なくとも三つの振動ユニットを、その振動方向が、溶着対象の細長い部品の長手方向に対して略直角となるように配置すると有利であることが証明された。この配置により、複数の振動ユニットが、溶着対象の部品の長手軸に対して横方向に相対的な振動を発生する。少なくとも三つの振動ユニットが、共通のツール、若しくは対応するツールと振動ユニットとの間の連結エレメントによって、互いに機械的に連結されているので、振動ユニットの振幅、周波数等の振動特性を、好ましく互いに調和させることができる。その結果、互いに機械的に連結された、好ましくは機械的に二回連結された(下記参照)、この複数の振動ユニット若しくは振動ヘッドは、機械的に連結された複数の振動子を形成する。この構成により、互いに接続されるべき部品が、長手方向ではない振動にもかかわらず、高い信頼性をもって互いに接続されるように、少なくとも三つの振動ユニット若しくは振動ヘッドの均等な横方向の振動が、接続対象の部品へとツールによって伝達される。さらに、少なくとも三つの振動ユニットの使用により、例えば可動部品のぐらつきを十分に低減できるように、互いに接続されるべき部品を長手方向に十分に延在させることができることが分かった。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも三つの振動ユニットは、バネ支承された状態で共通のブリッジに固定される。
【0019】
また好ましくは、少なくとも三つの振動ユニット若しくは振動ヘッド(下記参照)は、共通のブリッジ上で、ツール若しくは振動ヘッドを接続する部品の長手方向にわたって均等に分布するように配置されている。このように均等に分布配置することにより、ツールに接続可能な部品の長手方向の略全長にわたって、ツールの長手軸に対して略横方向の振動をツールによって均等に伝達させることができる。
【0020】
振動のための公知の振動ユニットは、上述の対向配置された少なくとも一対の電磁石コイルと、この一対のコイル間に配置されたバネ支承された振動子とからなる。この振動子は、電磁石コイル間を好ましく橋渡しするブリッジに対してバネパッケージによって支承される。振動子のブリッジとは反対側では、振動子に上方ツールが直接若しくは連結エレメントによって固定される。少なくとも三つの振動ユニットの振動を調和させるために、ただ一つの共通ブリッジによって各振動ユニットを互いに接続することが有利であることが証明された。同様に(下記参照)、複数の振動ヘッドを、ただ一つの振動ヘッドとして機能させるために、互いに機械的に連結する。この共通のブリッジは、共通でなければ各振動ユニット毎に個別に設けられるものであるが、共通ブリッジとすることにより、全ての振動ユニット及びそれに固定されるバネパッケージのために同時に基板となる。この基板は、そもそもは各振動ユニットの個別の振動質量が、合計すると一つの合計振動質量となる各ブリッジの質量の恩恵を受ける。
【0021】
各振動ユニット若しくは振動ヘッドの振動を好ましく意図的に調和、安定化、及び統合して全体的振動とすることに加え、この全体的振動を、ツール上に均等に分布配置した振動ユニット若しくは振動ヘッドによって、部品へと意図的に伝達する。このため、ツールの長手方向長さに応じて、振動ユニット若しくは振動ヘッドを横方向に均等に互いに離間して好ましく配置する。この配置により、均等な振動を支援し、部品のぐらつきを低減するために、機械的に連結された振動ユニット若しくは振動ヘッドが、ツールの長手方向領域全体にわたって横方向の振動を確実に伝達する。
【0022】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、複数の振動ユニットのうちの一つをマスター振動ユニットとし、残りの振動ユニットを各々マスター振動ユニットに対するスレーブ振動ユニットとし、全ての振動ユニットを同期操作することができる。
【0023】
このような複数の振動ユニットの調和制御はEP 1 772 253 B1によって知られており、このようなマスター/スレーブ制御の実施態様についてこの文献を特に参照する。
【0024】
上述のように複数の振動ユニット及び/又は振動ヘッドを機械的に連結し、よって同期させることに加えて、好ましくはこれらを電気的に連結する。このためにマスター/スレーブ回路を利用する。このマスター/スレーブ回路は、複数の振動ユニット及び/又は振動ヘッドの調和操作のセキュリティーレベルを追加するものとなる。このようにして、溶着工程中に加工対象物がぐらつく潜在的に残存する傾向を低減する。
【0025】
別の実施態様によれば、振動溶着装置が、機械的に連結された複数の振動子を形成する少なくとも三つの振動ヘッドを有することも好ましい。これら振動ヘッドは、各々対向配置された少なくとも一対の電磁石コイルを備え、このコイル間には振動子が配置されている。この振動子は常に、バネパッケージによってブリッジへと振動可能に固定されている。この好ましい実施態様は、複数の振動ヘッドのブリッジが互いに機械的に連結され、さらに振動ヘッドが細長いツールによって互いに連結されることをさらに特徴とする。
【0026】
上述の複数の振動ユニットの組み合わせと同様に、ユニットとして利用可能な現存の振動ヘッドを互いに連結することも好ましい。本発明の発想に対応して、少なくとも三つの振動ヘッドを好ましくは二方の側で機械的に連結する。この場合、一方の連結側では、これらの振動ヘッドの各ブリッジを機械的に連結する。他方の連結側は、振動ヘッドを連結するツール、若しくはツールと振動ヘッドとの間に配置される連結エレメントによって形成される。
【0027】
ただ一つの振動ヘッドとして機能する物理的ユニットは、ツールをネジ止めする共通の基板によって、若しくはツール自体によって、ブリッジを互いに連結することによって、及び/又は振動ユニットを互いに連結することによって、N個の振動ヘッドから創出される。その結果、ただ一つの共振周波数及び振動方向となる。すると、ツールの重量がN個の振動板にわたって均等に分布しているかどうかはもはや問題ではなくなる。なぜなら振動ユニットの全体質量が新たな振動質量を形成するからである。従って、複数の振動ヘッドをこのように機械的に接続することにより、複数の振動ヘッドを確実に同相で、さらには同じ振幅で振動させることができる。
【0028】
振動ヘッドの質量関連の寸法を、振動方向に対して横方向よりも、振動方向により長く形成することにより、振動ヘッドは一層良く、つまり少ないエネルギー消費で、ぐらつかずに、振動することがわかった。上述の振動溶着装置の別のデザインの好ましい別の実施態様によれば、複数の振動ユニット若しくは複数の振動ヘッドが、略矩形の輪郭で、辺長比がA/B≧1.0である(1が下限である)機械的全体ユニットを形成する。これに関して、振動装置のデザイン及び人間工学的な選択肢の観点から、できる限り大きい辺長比を選択することがさらに好ましい。
【0029】
ここでA及びBは、全体ユニットの質量に実質的に影響を与える全体ユニットの辺長を示す。装置をカバーするハウジング部分のみでは、全体ユニットの質量には実質的に影響を与えないと考えられる。代わりに、連結されたブリッジ、基板、ツール、振動ユニット等が実質的に全体質量に影響を与える。ここで辺Aは、振動ユニット又は振動ヘッドの第一振動方向に略平行であり、辺Bはツールの長手軸に略平行である。
【0030】
上述寸法の全体ユニットのサイズ及び配置によれば、互いに連結された複数の振動ユニット若しくは振動ヘッドの振動挙動を機械的に支援することができることがわかった。特に、複数の振動ユニット若しくは振動ヘッドを互いに機械的に接続させ、単一の振動ヘッドとして機能させることができる。これについて、全体ユニットの辺長比のサイズが特に関連する。辺長比が大きいほど、システム全体が第一方向、つまり辺Aに平行に振動する傾向が高くなる。全体ユニットの構造の影響により、好ましくは互いに接続された振動ユニット若しくは振動ヘッドが、同じ周波数、位相、及び振幅で確実に調和振動する。
【0031】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、合計振動質量を有する接続された振動ユニット若しくは振動ヘッドの略矩形の輪郭は、辺長比がA/B≧2.0である。
【0032】
本発明の振動溶着装置の別の好ましい実施態様によれば、部品を収容するためのツールは、長さが少なくとも1m、好ましくは≧2mである。このツールの長さは、横方向に振動し、細長いツールに機械的に連結される複数の振動ヘッド若しくは振動ユニットの組み合わせが、ツール若しくは部品長さに対して横方向の安定した振動溶着を支援することを明確に示している。
【0033】
本発明はまた、短辺に対する長辺の辺長比が1よりも大きい、上述の実施態様の一つによる振動溶着装置の、少なくとも二つの細長い部品の溶着への使用を含み、溶着振動は、互いに接続されるべき部品の短辺に略平行な向きである。
【0034】
さらに本発明は、振動溶着によって、特に上述の実施態様の一つによる振動溶着装置によって、少なくとも二つの細長い部品を接続する方法を含む。本発明の振動溶着方法は、振動溶着装置の、互いに機械的に連結された少なくとも三つの振動ユニット若しくは互いに機械的に接続された少なくとも三つの振動ヘッドに対して機械的に接続されたツールに、細長い部品を固定する工程と、第一振動方向が、部品の長手軸とは異なる方向、好ましくは部品の長手軸に対して横方向となるように、振動ユニット若しくは振動ヘッドに接続されたツールによって部品の振動を発生させる工程と、第一の部品と第二の部品とを互いに押し付け合うことによって、前記少なくとも二つの部品を接続する工程とを含む。
【0035】
これに関して、細長い部品が、その長さにも関わらず、長手軸に対して横方向である信頼性の高い横方向振動を発生して、別の部品と接続するように、互いに連結した複数の振動ユニット若しくは振動ヘッドの振動を、細長い部品へと伝達することが有利であることが証明された。これは特に、複数の振動ユニット若しくは複数の振動ヘッドを互いに機械的に連結することにより生じる。好ましくは、第一の連結は、ツール、若しくはツールとともに使用して、ツールに加えて各振動ユニット若しくは振動ヘッドへと同時に接続する連結エレメントによって行なう。これと組み合わせて、ブリッジによって振動ユニット若しくは振動ヘッドを互いに接続することも好ましい。これに対応して、細長い部品が別の部品に接続するように、横方向の振動を伝達するのに十分な長手方向領域にわたって細長い部品をカバーする振動ヘッドとして機能する配置が生じる。さらに、上記の記載から、振動ユニット若しくは振動ヘッドは、好ましくは二回、つまりツール側とブリッジ側で、互いに機械的に連結されるということになる。
【0036】
本発明によれば、振動を発生するコイルは好ましくは電源から電力を得て、これに連結された振動ユニットは単一の振動ユニットとして機能する。
【0037】
複数の振動ユニットを機械的に連結することに加えて、振動溶着法はさらに、少なくとも一つの振動ユニットをマスター振動ユニットとして制御する、若しくは少なくとも一つの振動ヘッドをマスター振動ヘッドとして制御する工程と、マスター振動ユニット若しくはマスター振動ヘッドに対して、残りの全ての振動ユニットスレーブ振動ユニットとして制御する、若しくは残りの全ての振動ヘッドをスレーブ振動ヘッドとして制御する工程とを含む。この好ましい手順に基づいて、振動ユニット及び/又は振動ヘッドを物理的に連結することによって機械的に調和させることに加えて、電子的連結(上記参照)を行うことが好ましい。マスター/スレーブ制御による電子的連結により、好ましくは複数の振動ユニット及び/又は振動ヘッドの同期操作がさらに支援される。
【0038】
本発明はさらに、振動溶着装置の製造方法を含み、この方法は、各々対向配置された一対の電磁石コイルからなり、該一対の電磁石コイル間にバネ支承された振動子を配置した、少なくとも三つの振動ユニット若しくは振動ヘッドを用意する工程(H1)と、少なくとも三つの振動ユニット若しくは振動ヘッドを、溶着対象の部品を移動させることができる細長いツールによって接続する工程(H2)とを含み、細長いツールは、振動ユニット若しくは振動ヘッドの第一振動方向が、前記細長いツールの長手軸以外の方向となるように、少なくとも三つの振動ユニット若しくは振動ヘッドに対して配置される。
【0039】
この製造方法に関して、さらに好ましくは、少なくとも三つの振動ユニットを平行配置で、共通のブリッジに固定する。別の変更例によれば、少なくとも三つの振動ヘッドを、平行配置で、それぞれのブリッジによって互いに機械的に連結することが好ましい。これによれば、互いに組み合わせた複数の振動ユニット若しくは振動ヘッドが、単一の振動ヘッドとして機能するという、上述の効果を得ることができる。
【0040】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、この製造方法はさらに、振動ユニット若しくは振動ヘッドを接続して、略矩形の輪郭で、辺長比がA/B≧1.0である機械的全体ユニットを形成する工程を含み、ここでAは振動ユニット若しくは振動ヘッドの第一振動方向に対して平行であり、Bはツールの長手軸に対して平行である。
【0041】
本発明の好ましい実施態様を、以下の添付図面を参照してより詳細に説明する。