【文献】
DIBLEY, Michael et al.,An ontology framework for intelligent sensor-based building monitoring,Automation in Construction [online],Elsevier B.V.,2012年 7月28日,pp.1-14,[検索日:2019.02.19], 検索源:Science Direct
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検索結果出力部は、評価規則に基づいて、前記データ検索部による検索結果を重要度順にソートし、前記検索キーワードに合致する前記空間データ、前記設備データおよび前記計測データを関連づけて重要度順に出力する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のデータ管理装置。
前記検索結果出力部は、前記出力形式が前記空間マップの場合には、前記空間データに基づいて前記計測データを複数のグループに分類し、グラフ生成規則を参照して、各グループごとに対応する前記空間データを含む前記空間マップを生成し、生成した空間マップ上に、同一グループに属する前記計測データを含む前記時系列グラフを重畳させる請求項11に記載のデータ管理装置。
前記検索結果出力部は、前記出力形式が前記系統マップの場合には、前記設備データに基づいて前記計測データを複数のグループに分類し、グラフ生成規則を参照して、各グループごとに対応する前記設備データを含む前記系統マップを生成し、生成した系統マップ上に、同一グループに属する前記計測データを含む前記時系列グラフを重畳させる請求項11に記載のデータ管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下では、建物内の保全設備の保全作業を行う目的に使用可能なデータ管理装置およびデータ管理方法について主に説明する。データ管理装置が管理するデータは、保全対象の保全設備が設置されている建物の空間に関する空間データと、保全設備に関する設備データと、保全設備の稼働状況を計測した計測データとを含んでいる。
【0008】
図1は一実施形態によるデータ管理装置1を備えたデータ管理システム2の概略構成を示すブロック図である。
図1のデータ管理システム2は、データ管理装置1と、外部記憶装置3と、センサ4と、クライアント端末5と、管理者端末6とを備えている。
【0009】
外部記憶装置3は、データ管理装置1に内蔵させてもよいが、以下では、外部記憶装置3がデータ管理装置1とは別個に設けられる例を説明する。データ管理装置1と外部記憶装置3は、専用線で接続されていてもよいし、ネットワーク7を介して接続されていてもよい。例えば、外部記憶装置3は、インターネットに接続されたクラウド環境に設けられてもよい。
【0010】
センサ4、クライアント端末5および管理者端末6は、ネットワーク7を介して、データ管理装置1に接続されている。クライアント端末5は、建物内の各種設備の保全作業を行う各保全作業者が携帯することを想定している。よって、クライアント端末5は、1台だけとは限らない。クライアント端末5は、ネットワーク7を介して、データ管理装置1に対して、保全作業に関する種々の検索要求を送信するとともに、検索要求に応じた検索結果データをデータ管理装置1から受信する。
【0011】
データ管理装置1は、クライアント端末5からの検索要求に応じて、知識グラフデータを検索して、検索結果データを出力する。より詳細には、データ管理装置1は、検索結果データを、ネットワーク7を介してクライアント端末5に送信し、検索結果データを受信したクライアント端末5は、その表示画面に検索結果を表示する。本実施形態では、クライアント端末5の表示画面に表示される検索結果情報をデータ管理装置1にて生成する例を説明する。
【0012】
センサ4は、後述するように、建物内の各種設備の稼働状態等を検出するためのものである。本実施形態では、複数種類のセンサ4が建物内の各所に設置されている。センサ4は、計測データをネットワーク7経由でデータ管理装置1に送信する。計測データの送信には、MQTT、Fluentd、XMPPなどの公知のプロトコルを用いてもよいし、CoAPやHTTP2.0などの軽量プロトコルに配送手順を独自に実装したものを用いてもよい。
【0013】
管理者端末6は、空間データや設備データなどの追加更新を行う端末であり、データ管理装置1に対してネットワーク7経由で、更新した空間データや設備データ等を送信する。管理者端末6は、例えばDBMS(Database Management System)の機能を利用してデータの送受信を行う。なお、管理者端末6の機能をデータ管理装置1に内蔵させてもよい。
【0014】
データ管理装置1は、知識グラフデータ生成部11と、検索情報入力部12と、データ検索部13と、検索結果出力部14とを備えている。この他、データ管理装置1は、データ処理部15と、プロセッサ16と、通信インタフェース部17と、記憶制御部18とを備えている。
【0015】
知識グラフデータ生成部11は、空間データ、設備データおよび計測データをオントロジ変換規則に従って関連づけた知識グラフデータを生成する。知識グラフデータは、オントロジデータとも呼ばれる。知識グラフデータ生成部11は、これら3種類のデータに加えて、保全作業の関心事象であるインシデントについてのインシデントデータを含めた4種類のデータをオントロジ変換規則に従って関連付けた知識グラフデータを生成してもよい。生成された知識グラフデータは、外部記憶装置3に記憶される。
【0016】
検索情報入力部12は、インシデントを表す文字列を含む検索キーワードを入力する。
データ検索部13は、検索情報入力部12で入力された検索キーワードに基づいて、知識グラフデータを検索する。より具体的には、データ検索部13は、検索キーワードに合致するデータを、知識グラフデータの中から抽出する。検索情報入力部12は、後述するように、検索結果出力部14における出力形式を入力してもよい。また、検索情報入力部12は、検索キーワードの代わりに、あらかじめ決められた文字列のリストから選択することで検索キーワードを入力してもよい。
【0017】
また、検索結果出力部14は、データ検索部13の検索結果に基づいて、検索キーワードに合致する空間データ、設備データおよび計測データを関連づけて出力する。計測データが特徴量データを含んでおり、検索情報入力部12にてインシデントと特徴量とを表す文字列を含む検索キーワードが入力された場合には、検索結果出力部14は、この検索キーワードに合致する空間データ、設備データおよび計測データを関連づけて出力する。ここで、特徴量データとは、計測データが持つ特徴を表すデータである。
【0018】
さらに、検索結果出力部14は、検索情報入力部12にて出力形式が入力された場合には、その出力形式に従って、検索キーワードに合致する空間データ、設備データおよび計測データに基づいて、時系列グラフ、空間マップおよび系統マップの少なくとも一つを生成して出力してもよい。
【0019】
検索結果出力部14は、評価規則に基づいて、データ検索部13による検索結果を重要度順にソートし、検索キーワードに合致する空間データ、設備データおよび計測データを重要度順に出力してもよい。ここで、評価規則とは、データ検索部13による検索結果に対して重要度を付与する規則を定義したものである。評価規則の一具体例は、出現頻度が高いデータほど、重要度が高いという規則である。設備データの重要度を最も高くした評価規則を適用した場合、出現頻度が最も高い備データが最上位に出力される。
【0020】
データ処理部15は、プロセッサ16からの指示の下で、知識グラフデータ生成部11、検索情報入力部12、データ検索部13、および検索結果出力部14との間で、各種データの送受を含めたデータ処理を行う。記憶制御部18は、プロセッサ16やデータ処理部15の要求に応じて、外部記憶装置3との間で、データの送受を行う。
【0021】
外部記憶装置3は、知識グラフデータを記憶する知識グラフ記憶部21と、オントロジ変換規則を記憶する規則情報記憶部22と、履歴データ記憶部23とを有する。規則情報記憶部22は、オントロジ変換規則だけでなく、種々の規則を記憶してもよい。例えば、規則情報記憶部22は、計測データに含まれる特徴量を抽出する際の特徴量規則、データ検索部13が検索を行う際の評価規則、検索結果出力部14がグラフを生成するためのグラフ生成規則などを記憶してもよい。ここで、グラフ生成規則とは、検索結果出力部14が検索結果をグラフやマップで表示する際の規則を定義したものである。履歴データ記憶部23は、クライアント端末5から送信されてきた検索要求や、データ検索部13の検索結果や、検索結果出力部14の出力(閲覧)情報などの履歴情報を記憶する。
【0022】
この他、外部記憶装置3は、空間データを記憶する空間データ記憶部24と、設備データを記憶する設備データ記憶部25と、計測データを記憶する計測データ記憶部26とを有していてもよい。これらに加えて、外部記憶装置3は、特徴量データを記憶する特徴量記憶部27と、インシデントデータを記憶するインシデント記憶部28とを有していてもよい。
【0023】
図2は空間データを説明する図、
図3は
図2に対応する空間データのデータ構造の一例を示す図である。
図2は、建物が3階建てのオフィスビルで、屋上を含めて各階のフロア内の各部屋に空間を設定する例を示している。空間は、空気調和機(エアコンディショナ、以下、空調と呼ぶ)の制御ゾーンに合わせて区分けされている。
【0024】
図2の例では、例えば1階には3つの部屋があり、そのうちの2つの小さい部屋はそれぞれ別個の空間NW、NEとし、1つの大きな部屋は2つの空間SW、SEとしている。
2階と3階も同様に4つずつの空間に分けて、屋上は1つの空間としている。
【0025】
空間データは、
図3に示すように、空間を識別するIDと、建物の識別情報と、フロアの識別情報と、空間(スペース)の識別情報とを対応づけたCSV(Comma-Separated Value)形式のデータである。なお、空間データのデータ構造およびデータ形式は、上述したものに限定されない。例えば、建物空間情報を表現する標準的なデータモデルであるBIM(Building Information Modeling)や,IFC(Industry Foundation Classes)などを採用してもよい。
【0026】
図4は建物内の空気調和機の設置状況の一例を示す図、
図5は
図4に対応する設備データのデータ構造の一例を示す図である。
図4および
図5では、ビルマルチ型空調を想定している。
【0027】
図4の例では、3つの空調系統があり、各系統は、1台の室外機と3台の室内機を有する。各系統は、例えば、対応するフロアに設けられている。
【0028】
設備データは、
図5に示すように、個々の室外機または室内機を識別するIDと、系統の識別情報と、個々の室外機または室内機の名称と、対応するセンサ4の計測対象と、個々の室外機または室内機の設置場所とを対応づけたCSV形式のデータである。なお、設備データのデータ構造およびデータ形式は、上述したものに限定されない。例えば、設備属性情報を表現する標準的なデータモデルであるCOBie(Construction Operations Building Information Exchange)などを採用してもよい。
【0029】
図6は計測データのデータ構造の一例を示す図である。
図6の計測データは、特定のフロアにおける特定の空間に設置される特定の室内機の温度と湿度を単位時間(例えば1分)ごとに記録した例を示している。より具体的には、
図6の計測データは、室内機のIDと、計測した日時と、室内温度と、室内湿度とを対応づけたCSV形式のデータである。
【0030】
空気調和機は、周囲の室内温度や室内湿度に応じて、最適な空調制御を行うことが期待されている。よって、空気調和機の室内温度や室内湿度を計測して、空気調和機が正常に動作しているか否かを確認することができる。一方、室外機の動作をモニタする場合には、室内に給気される空気の温度(給気温度)と、室内から排気される空気の温度(排気温度)とを計測データとして計測すればよい。
【0031】
上述したように、計測データの中に特徴量データを含めることができる。一般に計測データはデータ量が膨大になるため、計測データの中で特徴的な値や特定の計測時間について注意を喚起する目的で特徴量データが設けられる。特徴量データを設けることで、設備の稼働状態や計測データの時間変化の把握が容易になる。
【0032】
図7は特徴量データのデータ構造の一例を示す図である。
図7の特徴量データは、特定のセンサ4のIDと、計測開始日時と、計測終了日時と、センサ4の設置場所および計測対象情報と、計測手法と、セグメント数と、アルファベット数と、値と、頻度とを対応づけたCSV形式のデータである。
【0033】
特徴量として、ある計測期間内の平均値や、閾値との比較結果などの統計量を指定する。あるいは、公知の近似化手法を適用して文字列に変換した近似データを指定してもよい。近似化手法の一つにSAX(Symbolic Aggregate approXimation)法がある。SAX法は、時系列データを指定されたセグメント数で計測対象期間を分割し、各セグメント内でのデータの平均値を算出した後、指定されたアルファベット数で、正規分布の各面積が均等になるように分割し、各分割区間に対して文字列(例えばアルファベット)を割り当てる。なお、特徴量データの具体的な算出方法、データ構造およびデータ形式は、上述したものに限定されない。
図7の計測手法では、統計量、およびSAXを指定している。
【0034】
図8はインシデントデータのデータ構造の一例を示す図である。
図8のインシデントデータは、個々の室内機または室外機のIDと、計測日時と、個々の室内機または室外機の名称と、保全作業者名と、インシデント名とを対応づけたCSV形式のデータである。インシデントとは、保全作業の関心事象であり、
図8の例では、温湿度不良か喚起不良のいずれかである。インシデントは、個々の保全作業に依存するものである。なお、インシデントデータを設けることは必須ではない。
【0035】
次に、知識グラフデータ生成部11が生成する知識グラフデータ、すなわちオントロジデータについて説明する。オントロジとは、概念間の関係を体系化することを指す。オントロジのモデルでは、一般にRDF(Resource Description Framework)を利用するが、これに限定されるものではない。RDFは、ウェブ上にあるリソースを記述するためのフレームワークであり、W3C(World Wide Web Consortium)により規格化されている。
RDFのモデルでは、主語(subject)、述語(predicate)、目的語(object)の3つの要素でリソースに関する関係情報を表現する。主語は、記述対象のリソースである。述語は、主語の特徴や目的語との関係を示す。目的語は、主語と関係のある物や述語の値である。これら3つの要素で表現されたリソースに関する関係情報をトリプルと呼ぶ。トリプルの集合は、一般にRDFグラフと呼ばれる。主語と述語はノードとして表現され、述語はリンクとして表現される。
【0036】
図9は本実施形態における知識グラフデータ(オントロジデータ)の一例を示す図である。
図9の各ノードは、クラスとも呼ばれる。各ノード間をリンクで繋ぐことで、保全作業に関する一つの知識グラフデータが形成される。
図9の知識グラフデータは、空間データに関する空間データ層31と、設備データに関する設備データ層32と、計測データに関する計測データ層33と、特徴量データに関する特徴量データ層34と、インシデントデータに関するインシデントデータ層35とを有する。
【0037】
空間データ層31は、建物に関するノード"Building"と、フロアに関するノード"Floor"と、部屋に関するノード"Room"とを有し、各ノードが順にリンク"contains"で接続されている。
【0038】
設備データ層32は、設備全体に関するノード"System"と、個々の設備に関するノード"Device"と、個々のセンサ4に関するノード"Sensor"と、各センサ4の計測特性に関するノード"MeasurementProperty"とを有する。また、設備データ層32は、ノード"System"からノード"Device"に向かうリンク"hasSubsystem"と、ノード"Device"から空間データ層31のノード"Room"に向かうリンク"hasLocation"と、ノード"Device"からノード"Sensor"に向かうリンク"hasSubsystem"と、ノード"Sensor"からノード"MeasurementProperty"に向かうリンク"measures"とを有する。
【0039】
計測データ層33は、計測に関するノード"Measurement"と、計測値に関するノード"MeasurementValue"とを有する。ノード"Measurement"からノード"MeasurementValue"に向かうリンク"hasValue"と、設備データ層32のノード"Sensor"に向かうリンク"measuredBy"とを有する。
【0040】
特徴量データ層34は、特徴量に関するノード"Annotation"と、特徴量の計測主体に関するノード"Annotator"と、特徴量データに関するノード"AnnotationValue"と、特徴量の計測特性に関するノード"AnnotationProperty"とを有する。また、特徴量データは、ノード"Annotation"からノード"AnnotationValue"に向かうリンク"hasValue"と、ノード"Annotation"からノード"Annotator"に向かうリンク"annotatedBy"と、ノード"Annotation"からノード"AnnotationProperty"に向かうリンク"annotatedProperty"と、ノード"Annotation"から計測データ層33のノード"Measurement"に向かうリンク"derivedFrom"とを有する。
【0041】
インシデントデータ層35は、インシデントに関するノード"Incident"と、インシデントデータに関するノード"IncidentValue"と、インシデントの保全作業者に関するノード"Operator"と、インシデント特性に関するノード"IncidentProperty"とを有する。また、インシデントデータ層35は、ノード"Incident"からノード"IncidentValue"に向かうリンク"hasValue"と、ノード"Incident"からノード"Operator"に向かうリンク"reportedBy"と、ノード"Incident"からノード"IncidentProperty"に向かうリンク"reportedProperty"と、ノード"Incident"から設備データ層32のノード"Device"に向かうリンク"happenedAt"とを有する。なお、知識グラフデータの具体的な体系、データ構造およびデータ形式は、上述したものに限定されない。
【0042】
図1の知識グラフデータ生成部11は、
図3の空間データ、
図5の設備データ、
図6の計測データ、
図7の特徴量データ、および
図8のインシデントデータを参照して、
図9の知識グラフデータを生成する。
【0043】
図10は、空間データ、設備データ、計測データ、特徴量データおよびインシデントデータを参照して知識グラフデータを生成する様子を矢印で示した図である。このように、知識グラフデータは、空間データ、設備データ、計測データ、特徴量データおよびインシデントデータを用いて生成される。これはすなわち、知識グラフデータは、設備データ、計測データ、特徴量データ、およびインシデントデータをオントロジ変換規則に従って関連づけたデータであることを意味する。
【0044】
なお、本実施形態における知識グラフデータにおいて、特徴量データとインシデントデータの少なくとも一方は、省略してもよい。すなわち、本実施形態における知識グラフデータは、少なくとも、空間データ、設備データおよび計測データをオントロジ変換規則に従って関連づけたデータであればよい。
【0045】
図11Aおよび
図11Bは知識グラフデータ生成部11の処理手順の一例を示すフローチャートである。知識グラフデータ生成部11は、管理者端末6またはセンサ4からネットワーク7で受信したデータに基づいて、
図11Aおよび
図11Bの処理を行って、知識グラフデータ(オントロジデータ)を生成する。
【0046】
まず、受信データが空間データか、設備データか、計測データかを判別する(ステップS1)。空間データであれば、ステップS2〜S7の処理を行う。設備データであれば、ステップS11〜S19の処理を行う。計測データであれば、ステップS31〜S41の処理を行う。なお、受信したデータがインシデントデータを含む場合は、設備データの処理を行う。また、受信したデータが特徴量データを含む場合は、計測データの処理を行う。
【0047】
図11Aおよび
図11Bのフローチャートでは、設備データの中にインシデントデータが含まれている例を示すが、設備データとは別個にインシデントデータを取り扱ってもよく、この場合、ステップS1では、受信データが空間データか、設備データか、計測データか、インシデントデータかを判別することになる。そして、受信データがインシデントデータの場合には、
図11Aおよび
図11Bでは不図示のインシデントデータの処理を行って、インシデントクラスを外部記憶装置に登録する。
図11Aでは、後述するように、設備データの処理の中で、インシデントクラスを外部記憶装置に登録する。
【0048】
以下では、空間データは建築CADデータ形式として広く採用されているIFCを利用し、設備データはCOBieを利用する例を説明する。
【0049】
受信したデータが空間データの場合、最初に空間データに対応する空間クラスを決定し(ステップS2)、次に空間クラスに関連付けられている設備プロパティを特定し(ステップS3)、空間データに対応する空間インスタンスを生成する(ステップS4)。ここで、空間インスタンスとは、空間データに含まれる個々のデータである。
【0050】
次に、同一の空間インスタンスがすでに知識グラフデータに登録済みか否かを判定し(ステップS5)、すでに登録済みである場合は、重複を回避するために重複した登録は行わない。登録済みでなければ、知識グラフデータに新たな空間インスタンスを登録する(ステップS6)。
【0051】
次に、受信したすべての空間データが知識グラフデータに登録されたか否かを判定し(ステップS7)、まだ登録されていない空間データがあれば、ステップS2以降の処理を繰り返す。受信したすべての空間データの知識グラフデータへの登録が終了すると、空間データについての登録処理を終了する。
【0052】
ステップS1で設備データと判別された場合、設備データに対応する設備クラスを決定し(ステップS11)、次に設備クラスに関連づけられている設備プロパティを特定し(ステップS12)、設備データに対応する設備インスタンスを生成する(ステップS13)。次に、設備データに対応するインシデントデータを特定し、インシデント・インスタンスに追加する(ステップS14)。
【0053】
次に、対応する空間インスタンスがすでに知識グラフデータに登録済みか否かを判定し(ステップS15)、まだ登録していなければ、対応する空間インスタンスを生成して、知識グラフデータに登録する(ステップS16)。
【0054】
ステップS15ですでに空間インスタンスが登録済みと判定された場合、あるいはステップS16の登録処理が終了した場合、ステップS13で生成した設備インスタンスがすでに知識グラフデータに登録済みか否かを判定する(ステップS17)。まだ登録されていなければ、知識グラフデータに登録する(ステップS18)。
【0055】
ステップS17ですでに設備インスタンスが登録済みと判定された場合、あるいはステップS18の処理が終了した場合、受信したすべての設備データの知識グラフデータへの登録が終了したか否かを判定し(ステップS19)、まだ等速されていない設備データがあれば、ステップS11以降の処理を繰り返す。受信したすべての設備データの知識グラフデータへの登録が終了すると、設備データについての登録処理を終了する。
【0056】
ステップS1で計測データと判別された場合、
図11Bに示す計測データに対応する計測クラスを特定する(ステップS21)。ここで、計測データは、日時、計測値、および単位を対応づけたCSV形式のデータとする。計測データは、ssn:ObservationValueの計測インスタンスとして生成し、日時、計測値、および単位をそれぞれ、プロパティnumericValue, unit, timeとして記憶する(ステップS22、S23)。
【0057】
次に、計測データに対して特徴量抽出を行う(ステップS24)。特徴量として、所定期間を対象として、外れ値、上下限値、平均値を算出する。あるいは、SAXと呼ばれる近似手法などを用いて、時間変化を記号化してもよい。
【0058】
次に、対応する設備インスタンスが知識グラフデータに登録済みか否かを判定し(ステップS25)、まだ登録していなければ、知識グラフデータに登録する(ステップS26)。ステップS25で登録済みと判定された場合、あるいはステップS26の処理が終了した場合、対応する空間インスタンスが知識グラフデータに登録済みか否かを判定し(ステップS27)、まだ登録していなければ、知識グラフデータに登録する(ステップS28)。ステップS27で登録済みと判定された場合、あるいはステップS28の処理が終了した場合、計測インスタンスが知識グラフデータに登録済みか否かを判定し(ステップS29)、まだ登録していなければ、知識グラフデータに登録する(ステップS30)。
【0059】
次に、受信したすべての計測データが知識グラフデータに登録されたか否かを判定し(ステップS31)、まだ、登録されていない計測データがあれば、ステップS21以降の処理を繰り返し、すべての計測データが登録済みであれば、計測データの処理を終了する。
【0060】
図12はデータ検索部13の処理手順の一例を示すフローチャートである。データ検索部13は、クライアント端末5からネットワーク7を経由して検索要求を受信する。検索要求は、検索キーワードのみでもよいし、検索対象の指定と検索キーワードの組合せでもよい。検索要求が検索対象の指定と検索キーワードの組合せである場合、検索対象は、特定のインシデント、特定のセンサ4、特定の空間、特定の設備の少なくとも一つの指定である。検索対象の指定がなく、検索キーワードのみが与えられる場合は、すべての検索対象に対して検索を行う。
【0061】
データ検索部13は、検索キーワードがインシデントデータに対する検索か否かを判定する(ステップS41)。インシデントデータに対する検索であれば、検索キーワードをインシデントデータに対して指定して、検索式を生成する(ステップS42)。
【0062】
検索式の生成には、例えば、検索言語SPARQL(SPARQL Protocol and RDF Query Language)が使用される。SPARQLは、RDFグラフに対する検索式を記述したW3C標準の言語であり、SQLに似た構文を持っている。RDFグラフを構成する主語、述語、目的語のトリプルに関するパターンの組合せを検索条件として与えることにより、これらのパターンに合致する部分グラフを取得する。
【0063】
図13は検索キーワードをインシデントデータに対して指定する検索式の一例を示す図である。
図13の検索式は、空間データに関する記述d1と、設備データに関する記述d2と、計測データに関する記述d3と、インシデントデータに関する記述d4とを含んでいる。記述d4には、温湿度不良のセンサ4がインシデントとして記述されている。
【0064】
図12のステップS41で、検索キーワードがインシデントデータでないと判定されると、計測データ中の特徴量データに対する検索か否かを判定する(ステップS43)。計測データの特徴量データに対する検索であると判定されると、検索キーワードを計測データ中の特徴量データに対して指定して、検索式を生成する(ステップS44)。
【0065】
図14は検索キーワードを計測データ中の特徴量データに対して指定する検索式の一例を示す図である。
図14の検索式は、空間データに関する記述d5と、設備データに関する記述d6と、計測データに関する記述d7と、特徴量データに関する記述d8と、インシデントデータに関する記述d9とを含んでいる。記述d7は、特徴量が"abcba"であるセンサ4を検索することを記述している。
【0066】
図12のステップS43で、検索キーワードが計測データ中の特徴量データでないと判定されると、空間データに対する検索か否かを判定する(ステップS45)。空間データに対する検索であると判定されると、検索キーワードを空間データに対して指定して、検索式を生成する(ステップS46)。
【0067】
図15は検索キーワードを空間データに対して指定する検索式の一例を示す図である。
図15の検索式は、空間データに関する記述d10と、設備データに関する記述d11と、計測データに関する記述d12と、インシデントデータに関する記述d13とを含んでいる。記述d10では、部屋として「建物A−1F−SW」を指定することを記述している。また、記述d11では、2015年8月1日の8時から9時までのデータを取得することを記述している。
図15の検索式による検索結果は、検索式で指定された設備、設置場所、センサ4、計測日時、計測値、単位、およびインシデントが対応づけられて出力される。
【0068】
図12のステップS45で、検索キーワードが空間データでないと判定されると、設備データに対する検索か否かを判定する(ステップS47)。設備データに対する検索であると判定されると、検索キーワードを設備データに対して指定して、検索式を生成する(ステップS48)。
【0069】
図16は検索キーワードを設備データに対して指定する検索式の一例を示す図である。
図16の検索式は、空間データに関する記述d14と、設備データに関する記述d15と、計測データに関する記述d16と、インシデントデータに関する記述d17とを含んでいる。記述d15では、「系統1−室内機1−SW−室内温度」を計測するセンサ4を指定することを記述している。
【0070】
図12のステップS47で、検索キーワードが設備データでないと判定されると、任意の検索式を生成する(ステップS49)。例えば、ステップS42、S44、S46、S48の検索式のいずれかで検索されたデータを検索結果として取得する検索式を生成する。すなわち、ステップS42、S44、S46、S48の検索式の論理和の条件の検索式を生成してもよい。
【0071】
次に、ステップS42、S44、S46、S48、S49で生成した検索式を用いて、知識グラフデータに対して検索を実行する(ステップS50)。次に、評価規則を参照して、検索結果の重要度を算出する(ステップS51)。そして、履歴データを参照して、重要度に重み付けを行う(ステップS52)。例えば、出現頻度の多いデータに対応する重要度の重み係数を大きくする。次に、すべての検索結果に対して重要度を算出したか否かを判定する(ステップS53)。まだ、算出していない重要度があればステップS51以降の処理を繰り返す。ステップS53で、すべての検索結果に対する重要度の算出が終了したと判定された場合は、検索結果を重要度の高い順に並べ替えて出力する(ステップS54)。
【0072】
図17は検索結果出力部14の処理手順の一例を示すフローチャートである。検索結果出力部14は、クライアント端末5が送信した検索要求に対応する検索結果をデータ検索部13から取得する(ステップS61)。検索結果は、検索キーワードに対応するオントロジデータである。検索結果のオントロジデータには、例えば、空間データ、設備データ、計測データ、およびインシデントデータの4種類のデータを関連付けたデータである。
検索式の与え方によって、検索結果に含まれるオントロジデータ中の関連付けられるデータの数が相違する。
【0073】
検索結果出力部14は、検索結果のオントロジデータを参照して、時系列グラフと、空間マップと、系統マップとを生成することができる。
図17は、時系列グラフを生成する処理(ステップS62〜S64)と、空間マップを生成する処理(ステップS65〜S68)と、系統マップを生成する処理(ステップS69〜S72)とを有する。これらの生成順序は、任意に変更して構わない。時系列グラフ、空間マップ、および系統マップの描画には、R言語やJavaScript言語などのグラフ描画ライブラリが利用される。
【0074】
時系列グラフを生成する場合、ステップS61で取得した検索結果のオントロジデータに含まれる、計測データ中の特徴量データを参照して、時系列グラフを生成するための期間とプロット値を決定する(ステップS62)。次に、グラフ生成規則を参照し、時系列グラフの描画コマンドを生成する(ステップS63)。次に、すべての計測データに対して時系列グラフの描画コマンドを生成したか否かを判定する(ステップS64)。まだ、生成していない計測データがあれば、ステップS62以降の処理を繰り返す。
【0075】
ステップS64で時系列グラフの描画コマンドの生成が終了したと判定されると、空間マップの生成を行う。まず、空間データとの関連付けに着目し、計測データをクラスタリングする(ステップS65)。次に、グラフ生成規則を参照して、空間マップを描画するコマンドを生成する(ステップS66)。次に、空間マップの上に重畳されるべき時系列グラフの描画コマンドを生成する(ステップS67)。次に、すべてのクラスタに対して空間マップを描画したか否かを判定する(ステップS68)。まだ描画していないクラスタがあれば、ステップS66以降の処理を繰り返す。
【0076】
ステップS68ですべてのクラスタに対して空間マップを描画したと判定されると、設備データとの関連付けに着目し、計測データをクラスタリングする(ステップS69)。
次に、グラフ生成規則を参照して、系統マップを描画するコマンドを生成する(ステップS70)。次に、系統マップ上に重畳させて、時系列グラフの描画コマンドを生成する(ステップS71)。次に、すべてのクラスタに対して系統マップを描画したか否かを判定する(ステップS72)。まだ描画していないクラスタがあれば、ステップS70以降の処理を繰り返す。
【0077】
ステップS72ですべてのクラスタに対して系統マップを描画したと判定されると、生成した描画コマンド一式をクライアント端末5に送信する(ステップS73)。クライアント端末5は、描画コマンド一式を受信すると、保全作業者の指示に従って、時系列グラフ、空間マップまたは系統マップを描画する。
【0078】
図18は検索要求を行ったクライアント端末5の初期画面例を示す図である。表示画面の上側には、場所を選択するボタンB1と、設備を選択するボタンB2と、インシデントを選択するボタンB3と、キーワードを入力するボタンB4と、現在位置を取得するボタンB5とが設けられている。保全作業者は、これらのボタンB1〜B5を任意に操作して、所望の情報を選択あるいは入力することができる。より具体的には、ボタンB1〜B3については、予め用意した情報から任意の情報を選択でき、ボタンB4については任意の情報を入力できる。また、ボタンB5を押下すると、GPSセンサ4(Global Positioning System)等を用いて、あるいはネットワーク7を介してサーバにアクセスするなどして、現在位置を取得する。ボタンB1〜B5で選択あるいは入力された情報は、検索キーワードの文字列に含められて、ネットワーク7経由で、データ管理装置1内の検索情報入力部12に送られる。
【0079】
図19はインシデントを選択するボタンB3から「空調」を選択した場合の時系列グラフの表示画面の一例を示す図である。
図19では、現在位置である系統1の室内機1F−SWについての室内湿度の時系列グラフと、室内温度の時系列グラフと、給気温度の時系列グラフとを表示する例を示している。
図19の時系列グラフを表示するにあたって、計測データに含まれる特徴量データを参照し、プロットする期間および値を決定する必要がある。
【0080】
図20は空間マップの表示画面の一例を示す図である。
図20では、3つのフロアの空間マップと、各フロア内の特定の部屋の時系列グラフとを合成して表示する例を示している。
【0081】
図21は系統マップの表示画面の一例を示す図である。
図21では、3つの系統の詳細な設備構成と、各設備構成内のいくつかのセンサ4の時系列グラフとを合成して表示する例を示している。
【0082】
図19の時系列グラフ、
図20の空間マップ、および
図21の系統マップは、任意の順番で順次にクライアント端末5の表示画面に表示してもよいし、保全作業者が予めクライアント端末5にて任意の出力形式を選択してもよい。後者の場合、検索キーワードに出力形式の情報を含めてデータ管理装置1に送信し、データ管理装置1は、選択された出力形式に合致する検索結果データを生成することになる。
【0083】
このように、本実施形態では、空間データ、設備データおよび計測データをオントロジ変換規則に従って関連づけた知識グラフデータを生成し、インシデントを表す文字列を含む検索キーワードに基づいて知識グラフデータを検索し、検索キーワードに合致する空間データ、設備データおよび計測データを関連づけて出力する。これにより、建物内の保全設備の保全作業を行う保全作業者は、保全設備に異常があるか否かを、簡易かつ迅速に判断できる。特に、保全作業者は、空間データ、設備データおよび計測データを関連づけてモニタリングできるため、すべての保全設備を網羅的に漏れなく点検できる。また、計測データ中に特徴量データが含まれる場合は、特徴量データを考慮に入れて、検索結果を出力できる。また、特定のインシデントに関するインシデントデータを空間データ、設備データおよび計測データと関連づけて出力できるため、不良や異常などの判断を迅速かつ正確に行うことができる。
【0084】
上述した実施形態で説明したデータ管理装置の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、データ管理装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0085】
また、データ管理装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。