(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792671
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】カーボンブラックにより秩序多孔質炭素材料を調製する方法、秩序多孔質炭素材料、及びそれらの応用
(51)【国際特許分類】
B01J 23/745 20060101AFI20201116BHJP
B01J 21/18 20060101ALI20201116BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20201116BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20201116BHJP
C01B 32/00 20170101ALI20201116BHJP
C01C 1/04 20060101ALI20201116BHJP
C25B 3/04 20060101ALI20201116BHJP
C25B 1/00 20060101ALI20201116BHJP
C25B 9/00 20060101ALI20201116BHJP
C25B 15/02 20060101ALI20201116BHJP
C25B 11/06 20060101ALI20201116BHJP
C25B 11/03 20060101ALI20201116BHJP
H01M 4/88 20060101ALN20201116BHJP
H01M 4/86 20060101ALN20201116BHJP
H01M 4/96 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
B01J23/745 M
B01J21/18 M
B01J37/10
B01J35/04 301C
C01B32/00
C01C1/04 E
C25B3/04
C25B1/00 Z
C25B9/00 G
C25B9/00 Z
C25B15/02 302
C25B11/06 Z
C25B11/03
!H01M4/88 C
!H01M4/86 M
!H01M4/96 M
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-112485(P2019-112485)
(22)【出願日】2019年6月18日
(65)【公開番号】特開2020-93247(P2020-93247A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2019年6月18日
(31)【優先権主張番号】201811536510.5
(32)【優先日】2018年12月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503248042
【氏名又は名称】中國科學院長春應用化學研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】徐 維林
(72)【発明者】
【氏名】楊 発
(72)【発明者】
【氏名】畢 一飄
(72)【発明者】
【氏名】阮 明波
(72)【発明者】
【氏名】宋 平
【審査官】
山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−123860(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第105244513(CN,A)
【文献】
特開2017−150057(JP,A)
【文献】
特公昭54−007639(JP,B2)
【文献】
特開2013−023670(JP,A)
【文献】
特表2016−525997(JP,A)
【文献】
特表2018−501177(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第107359386(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C25B11/00−11/18
H01M4/86−4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを濃硝酸に分散させて均一な分散体を得るステップ、
前記分散体を反応容器に置き、一段階水熱法により反応させるステップ、及び
反応混合物を洗浄して乾燥させ、ハニカム状に配列して酸素欠陥に富む秩序多孔質炭素材料を得るステップを含む、カーボンブラックにより秩序多孔質炭素材料を調製し、前記濃硝酸は、質量分率45%〜65%の濃硝酸溶液である方法。
【請求項2】
反応温度は120〜160℃であり、反応時間は4〜8時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応温度は120〜150℃であり、反応時間は5〜6時間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物を洗浄して乾燥させることは、水を加えた後に、回転蒸発させて遠心することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記洗浄と乾燥を3〜5回繰り返して行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カーボンブラックは、BP−2000又はXC−72である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記濃硝酸の使用量は、前記カーボンブラックの使用量1gに対し、80〜100mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
調製して得られた秩序多孔質炭素材料の厚さは3nmであり、かつ濃硝酸の質量分率が65%である場合、酸化度は2.012である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
秩序多孔質炭素材料であって、前記秩序多孔質炭素材料は、ハニカム状に配列し、酸素欠陥に富み、且つ濃硝酸の質量分率が65%である場合、酸化度が2.012である。
【請求項10】
請求項9に記載の秩序多孔質炭素材料を用いて作用電極を調製することを含む、常温常圧で二酸化炭素をギ酸に電気触媒還元する方法。
【請求項11】
プロトン交換膜で仕切られた三電極電解槽において、前記秩序多孔質炭素材料をエタノールおよびナフィオン溶液と混合し、超音波分散させ、カーボンペーパーに均一に塗布することにより、作用電極を作成し、白金シートを対電極として用い、飽和カロメル電極を参照電極として用いるステップ、
陰極槽と陽極槽にそれぞれ電解質溶液を加え、飽和までCO2を導入するステップ、及び
その後、CO2を継続的に導入する条件で、CO2を定電位還元させるステップを含み、
ただし、前記定電位還元の過程における電位制御範囲が−0.38V〜−0.98V vs. RHEであり、電解還元時間が4〜6時間であり、前記電解質溶液がNaHCO3、KHCO3又はNa2SO4溶液である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9に記載の秩序多孔質炭素材料を用いて担持型触媒を調製する、常温常圧で窒素ガスをアンモニアに電気触媒還元する方法。
【請求項13】
塩化第二鉄と前記秩序多孔質炭素材料を水に加えて超音波混合させ、そして回転蒸発によりサンプルを乾燥させ、乾燥済みのサンプルを管式炉に置き、窒素ガスの雰囲気で熱分解して担持型触媒を調製するステップ、
その後、プロトン交換膜で仕切られた三電極電解槽において、調製された担持型触媒をエタノールおよびナフィオン溶液と混合し、超音波分散させ、カーボンペーパーに均一に塗布することにより、作用電極を作成し、白金シートを対電極として用い、飽和カロメル電極を参照電極として用いるステップ、
陰極槽と陽極槽にそれぞれ電解質溶液を加え、飽和までN2を導入するステップ、及び
その後、N2を継続的に導入する条件で、N2を定電位還元させるステップを含み、
ただし、前記定電位還元過程における電位制御範囲が−0.45V〜−0.85V vs. RHEであり、電解還元時間が2〜4時間であり、前記電解質溶液がH2SO4溶液である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料の調製技術分野に関し、具体的には、本発明は安価なカーボンブラックにより秩序多孔質炭素材料を調製する方法、秩序多孔質炭素材料、及びそれらの応用に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質炭素材料は、豊富な細孔構造、大きい比表面積、および高い化学的安定性を有するため、日常生活と触媒工業に広く応用される。例えば、多孔質炭素材料は、有害気体と汚染物の吸着、気体の貯蔵と分離などに応用される。多孔質炭素材料は、触媒担体として、化学工業、エネルギー貯蔵、触媒などの分野においても広く応用されている。既知の多孔質炭素材料は、主に活性炭素(AC)、活性カーボンファイバー(ACF)、カーボンモレキュラーシーブ(CMS)、及びカーボンナノチューブ(CNTs)とグラフェン(GO)などがある。従来、多孔質炭素材料が活性化プロセスを通して得られる場合は多い。ここで、無秩序多孔質炭素材料は、ハードモールド法、ソフトモールド法、デュアルモールド法などにより調製できるが、これらの細孔構造は非貫通のブラインドホールであることが多い。秩序性の多孔質炭素材料は、主に分子篩をテンプレート剤として利用することで得られる。例えば、変調可能な秩序メソ孔炭素材料は、主にメソ孔シリコン材料であるMCM−48、SBA−15をテンプレート剤として合成して得られる。グラファイト構造を有する秩序メソ孔炭素材料は、高温でフレキシブル構造の炭素源を高度な秩序構造を有するグラファイト材料に転化することで得られる。これらのマイクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔の材料は、具体的な応用において異なる機能を示す。例えば、触媒電池分野において、マクロ孔は主に電解質溶液の貯蔵、メソ孔は電解液の伝導、マイクロ孔は電気二重層反応の場所の提供に応用される。しかしながら、ほとんどの場合、それらの孔は、通常互いに連通しなく機能を発揮する。
【0003】
多孔質炭素材料の合成は過去の数年間で大きな成功を収めたが、解決する必要があるいくつかの技術課題が依然として存在する。目下現れる金属触媒活性化、有機エーロゲルの炭素化、及びシリコンナノ粒子によるテンプレート合成などを含む技術は、上記のブラインドホールの問題をうまく解決できる。しかしながら、上記の方法は、いずれも物理的活性化の方法であり、調製過程が複雑であり、調製周期が長く、かつテンプレート剤が繰り返し利用できず、コストが高く、大規模の生産に適さないため、多孔質炭素材料の調製と商業的応用を大きく制限している。また、炭素形成過程においてテンプレート剤を加えることで、秩序細孔構造を形成できるが、これらの方法で調製された炭素材料の黒鉛化程度は常に低く、導電性と安定性も普通の炭素より遥かに劣る。したがって、多孔質炭素材料の異なる分野における応用可能性を広げるために、簡便な、実用的な多孔質炭素材料の調製方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における技術問題を解決し、安価なカーボンブラックにより秩序多孔質炭素材料を調製する方法、秩序多孔質炭素材料、及びそれらの応用を提供する。本発明は、簡単な一段階水熱法により、均一に分布する秩序多孔質炭素材料を調製し、かつ原料が安価で入手しやすく、生産コストが大幅に低下し、大規模な工業化応用に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術問題を解決するために、本発明は、
カーボンブラックを濃硝酸に分散させて均一な分散体を得るステップ、
前記分散体を反応容器に置き、一段階水熱法により反応させるステップ、及び
反応混合物を洗浄して乾燥させ、ハニカム状に配列して酸素欠陥に富む秩序多孔質炭素材料を得るステップを含む、カーボンブラックにより秩序多孔質炭素材料を調製する方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記濃硝酸は、質量分率(または質量含有割合)45%〜65%の濃硝酸である。
【0007】
いくつかの実施形態において、反応温度は120〜160℃であり、反応時間は4〜8時間である。
【0008】
いくつかの実施形態において、反応温度は120〜150℃であり、反応時間は5〜6時間である。
【0009】
いくつかの実施形態において、反応混合物を洗浄して乾燥させることは、水を加えた後に、回転蒸発させて遠心することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、洗浄と乾燥を3〜5回繰り返して行う。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記カーボンブラックは、BP−2000、XC−72、N220、N330、N550、N660、N990、N110、N115、N234、N326、N339、N375、N539、N550又はN880である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記濃硝酸の使用量は、前記カーボンブラックの使用量1gに対し、80〜100mLである。
【0013】
いくつかの実施形態において、調製して得られた秩序多孔質炭素材料の厚さは3nm〜8nmであり、かつ酸化度は1.993〜2.012である。
【0014】
いくつかの実施形態において、調製して得られた秩序多孔質炭素材料の厚さは3nmであり、かつ酸化度は2.012である。
【0015】
本発明は、ハニカム状に配列し、酸素欠陥に富み、且つ酸化度が1.993〜2.012である前記方法により調製された秩序多孔質炭素材料をさらに提供する。
【0016】
本発明は、前記秩序多孔質炭素材料を用いて作用電極を調製することを含む、常温常圧で二酸化炭素をギ酸に電気触媒還元する方法をさらに提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記の常温常圧で二酸化炭素をギ酸に電気触媒還元する方法は、以下のステップ、即ち、
プロトン交換膜で仕切られた三電極電解槽(three−electrode electrolytic cell)において、前記秩序多孔質炭素材料をエタノール及びナフィオン溶液と混合し、超音波分散させ、カーボンペーパーに均一に塗布することにより、作用電極を作成し、白金シートを対電極として用い、飽和カロメル電極を参照電極として用いるステップ、
陰極槽と陽極槽にそれぞれ電解質溶液を加え、飽和までCO
2を導入するステップ、及び
その後、CO
2を継続的に導入する条件で、CO
2を定電位還元させるステップ
を含む。
(ただし、前記定電位還元の過程における電位制御範囲が−0.38V〜−0.98V vs. RHEであり、電解還元時間が4〜6時間であり、前記電解質溶液がNaHCO
3、KHCO
3又はNa
2SO
4溶液である。)
【0018】
本発明は、前記秩序多孔質炭素材料を用いて担持型触媒を調製する、常温常圧で窒素ガスをアンモニアに電気触媒還元する方法をさらに提供する。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記常温常圧で窒素ガスをアンモニアに電気触媒還元する方法は、以下のステップ、即ち、
塩化第二鉄と前記秩序多孔質炭素材料を水に加えて超音波混合させ、そして回転蒸発によりサンプルを乾燥させ、乾燥済みのサンプルを管式炉に置き、窒素ガスの雰囲気で熱分解して担持型触媒を調製するステップ、
その後、プロトン交換膜で仕切られた三電極電解槽において、調製された担持型触媒をエタノールおよびナフィオン溶液と混合し、超音波分散させ、カーボンペーパーに均一に塗布することにより、作用電極を作成し、白金シートを対電極として用い、飽和カロメル電極を参照電極として用いるステップ、
陰極槽と陽極槽にそれぞれ電解質溶液を加え、飽和までN
2を導入するステップ、及び
その後、N
2を継続的に導入する条件で、N
2を定電位還元させるステップ
を含む。
(ただし、前記定電位還元過程における電位制御範囲が−0.45V〜−0.85V vs. RHEであり、電解還元時間が2〜4時間であり、前記電解質溶液がH
2SO
4溶液である。)
【発明の効果】
【0020】
(1)従来技術において、多孔質炭素材料を調製する方法は、テンプレート法を採用することが多いが、調製プロセスが複雑であり、調製周期が長く、かつ原料が繰り返し利用できない。炭素系材料自身がテンプレート剤や助剤のない条件で秩序多孔構造を形成できることは、ほとんど報告されていない。本発明は、初めて簡単な一段階水熱法により、安価なカーボンブラックを原料とし、均一に分布する、ハニカム状の秩序多孔質炭素材料を調製できた。
【0021】
(2)本発明に係る調製方法で調製された秩序多孔質炭素材料は、厚さが3〜8nmに過ぎず、かつ豊富な細孔構造及び酸素含有官能基(主にカルボキシル基)を有し、水相にも有機相にも優れた溶解性を示し、導電性が良い。これにより、材料の触媒作用及び高分子改質の分野に応用することが可能である。そして、このような多孔質材料は、CO
2を電気触媒還元してギ酸を生成する場合に一定の性能を示し、また、担持型触媒として窒素ガスを電気触媒還元してアンモニアを生成する場合にも優れた性能を示す。
【0022】
(3)本発明が提供する調製方法は、原料が安価で入手しやすく、かつプロセスが簡単であり、生産コストが大幅に低下し、大規模な工業化応用に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、添付の図面及び発明を実施するための具体的な形態に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
【
図1】本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の走査型電子顕微鏡図である。
【
図2】本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の透過型電子顕微鏡図である。
【
図3】本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の原子間力顕微鏡図である。
【
図4】本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の電子常磁性共鳴図である。
【
図5】本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の高分解能X線光電子分光である。
【
図6】本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料のラマンスペクトルである。
【
図7】本発明の実施例3で調製された多孔質炭素材料担持型触媒の存在下でN
2を還元する線形走査ボルタモグラムである。
【
図8】本発明の実施例3で調製された多孔質炭素材料担持型触媒の存在下で−0.55VでN
2を還元してNH
3を生成する紫外吸収スペクトルである。
【
図9】本発明の実施例4で調製された多孔質炭素材料の存在下でCO
2を還元する線形走査ボルタモグラムである。
【
図10】本発明の実施例4で調製された多孔質炭素材料の存在下で−0.78VでCO
2を触媒還元してギ酸を生成する核磁気共鳴の検出図である。
【
図11】本発明の実施例2で調製された多孔質炭素材料の透過型電子顕微鏡図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、
カーボンブラックを濃硝酸に分散させて均一な分散体を得るステップ、
前記分散体を反応容器に置き、一段階水熱法により反応させるステップ、及び
反応混合物を洗浄して乾燥させ、ハニカム状に配列して酸素欠陥に富む秩序多孔質炭素材料を得るステップ
を含む、カーボンブラックにより秩序多孔質炭素材料を調製する方法を提供する。
【0026】
前記濃硝酸は、質量分率45%〜65%の濃硝酸であることが好ましい。
【0027】
反応温度は120〜160℃であり、反応時間は4〜8時間であることが好ましい。
【0028】
反応温度は120〜150℃であり、反応時間は5〜6時間であることがより好ましい。
【0029】
反応混合物を洗浄して乾燥させることは、水を加えた後に、回転蒸発させて遠心することを含むことが好ましい。
【0030】
洗浄と乾燥を3〜5回繰り返して行うことが好ましい。
【0031】
本発明が提供する方法で用いられるカーボンブラック原料は、本分野で汎用なカーボンブラックであればよい。例えば、カーボンブラック原料は、BP−2000、XC−72、N220、N330、N550、N660、N990、N110、N115、N234、N326、N339、N375、N539、N550又はN880型のカーボンブラックであってもよい。BP−2000又はXC−72型のカーボンブラックが最も好ましい。
【0032】
前記濃硝酸の使用量は、前記カーボンブラックの使用量1gに対し、80〜100mLであることが好ましい。
【0033】
調製して得られた秩序多孔質炭素材料の厚さが3nm〜8nmであることが好ましく、かつ酸化度(g値)が1.993〜2.012に達する。調製して得られた秩序多孔質炭素材料の厚さが3nmであり、かつ酸化度が2.012に達することがより好ましい。
【0034】
本発明は、ハニカム状に配列し、酸素欠陥に富み、且つ酸化度が1.993〜2.012に達する、前記方法により調製された秩序多孔質炭素材料をさらに提供する。
【0035】
本発明は、前記秩序多孔質炭素材料を用いて作用電極を調製することを含む、常温常圧で二酸化炭素をギ酸に電気触媒還元する方法をさらに提供する。
【0036】
好ましくは、常温常圧で二酸化炭素をギ酸に電気触媒還元する方法は、以下のステップ、即ち、
プロトン交換膜で仕切られた三電極電解槽において、前記秩序多孔質炭素材料をエタノール及びナフィオン溶液と混合し、超音波分散させ、カーボンペーパーに均一に塗布することにより、作用電極を作成し、白金シートを対電極として用い、飽和カロメル電極を参照電極として用いるステップ、
陰極槽と陽極槽にそれぞれ電解質溶液を加え、飽和までCO
2を導入するステップ、及び
その後、CO
2を継続的に導入する条件で、CO
2を定電位還元させるステップ
を含む。
(ただし、前記定電位還元の過程における電位制御範囲が−0.38V〜−0.98V vs. RHEであり、電解還元時間が4〜6時間であり、前記電解質溶液がNaHCO
3、KHCO
3又はNa
2SO
4溶液である。)
【0037】
本発明は、前記秩序多孔質炭素材料を用いて担持型触媒を調製する、常温常圧で窒素ガスをアンモニアに電気触媒還元する方法をさらに提供する。
【0038】
好ましくは、前記常温常圧で窒素ガスをアンモニアに電気触媒還元する方法は、以下のステップ、即ち、
塩化第二鉄と前記秩序多孔質炭素材料を水に加えて超音波混合させ、そして回転蒸発によりサンプルを乾燥させ、乾燥済みのサンプルを管式炉に置き、窒素ガスの雰囲気で熱分解して担持型触媒を調製するステップ、
その後、プロトン交換膜で仕切られた三電極電解槽において、調製された担持型触媒をエタノールおよびナフィオン溶液と混合し、超音波分散させ、カーボンペーパーに均一に塗布することにより、作用電極を作成し、白金シートを対電極として用い、飽和カロメル電極を参照電極として用いるステップ、
陰極槽と陽極槽にそれぞれ電解質溶液を加え、飽和までN
2を導入するステップ、及び
その後、N
2を継続的に導入する条件で、N
2を定電位還元させるステップ
を含む。
(ただし、前記定電位還元過程における電位制御範囲が−0.45V〜−0.85V vs. RHEであり、電解還元時間が2〜4時間であり、前記電解質溶液がH
2SO
4溶液である。)
【実施例】
【0039】
以下、添付の図面に基づいて、本発明を詳しく説明する。
【0040】
実施例1:厚さが3nmである多孔質炭素材料の調製
1gカーボンブラックBP−2000を秤量し、100mLの質量分率65%の濃硝酸を加え、均一に分散する溶液が形成するまで1時間超音波攪拌し、そして水熱反応器に置き、150℃で5時間反応させ、反応器を常温まで冷却した後に、回転蒸発、遠心の方法で、蒸留水で洗浄して乾燥させる操作を3〜5回繰り返し、厚さが3nmである秩序多孔質炭素材料が得られ、酸化度(g値)が2.012であった。
【0041】
図1は、本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の走査型電子顕微鏡図である。この図より、本実施例1で調製された多孔質炭素材料の細孔構造はハニカム状に配列していることが分かる。
【0042】
図2は、本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の透過型電子顕微鏡図である。この図より、本実施例1で調製された多孔質炭素材料は豊富な細孔構造を有し、かつ均一に分布し、構造が秩序的であることが分かる。
【0043】
図3は、本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の原子間力顕微鏡図である。この図より、その平均厚さが3nmであることが分かる。
【0044】
図4は、本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の電子常磁性共鳴図である。この図より、本発明の方法により調製された多孔質炭素材料の酸素化程度は非常に高く、酸素化g値が2.012に達していることが分かる。
【0045】
図5は、本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料の高分解能X線光電子分光である。この図より、本発明の方法により調製された多孔質炭素材料は豊富な酸素含有官能基を有し、その中、カルボキシル基の割合が最も高いことが分かる。
【0046】
図6は、本発明の実施例1で調製された多孔質炭素材料のラマンスペクトルである。この図より、本発明の方法により調製された多孔質炭素材料は、欠陥の程度が非常に高いことが分かる。
【0047】
実施例2:厚さが8nmである多孔質炭素材料の調製
1gカーボンブラックXC−72を秤量し、100mLの質量分率45%の濃硝酸を加え、均一に分散する溶液が形成するまで1時間超音波攪拌し、そして水熱反応器に置き、120℃で6時間反応させ、反応器を常温まで冷却した後に、回転蒸発、遠心の方法で、蒸留水で洗浄して乾燥させる操作を3〜5回繰り返し、厚さが8nmである秩序多孔質炭素材料が得られ、酸化度(g値)が2.005であった。
【0048】
本実施例で調製された炭素材料は、均一に分布する、ハニカム状の秩序多孔質炭素材料であり、CO
2を電気触媒還元してギ酸を生成すること、及び担持型触媒として窒素ガスを電気触媒還元してアンモニアを生成することに用いられる。
【0049】
図11は、本発明では、XC−72を原料として調製した多孔質炭素材料の透過型電子顕微鏡図である。この図より、この方法でXC−72を処理しても、豊富な細孔構造を有する多孔質炭素材料が同様に得られることが分かる。
【0050】
実施例3
多孔質炭素材料の存在下で窒素ガスを電気触媒還元してアンモニアを生成する方法の具体的な手順:7.8mg塩化第二鉄と100mg多孔質炭素材料を秤量し、蒸留水を加えて30分間超音波混合し、そして回転蒸発により乾燥させてサンプルを収集したこと、乾燥済みのサンプルを管式炉に置き、窒素ガスの雰囲気において900℃で1時間熱分解して担持型触媒を調製したこと、その後、プロトン交換膜で仕切られた三電極電解槽において、調製された担持型触媒をエタノール、ナフィオン溶液と混合し、超音波分散させ、カーボンペーパーに均一に塗布したものを作用電極とし、白金シートを対電極とし、飽和カロメル電極を参照電極としたこと、陰極槽と陽極槽にそれぞれ電解質溶液を加え、飽和までN
2を導入したこと、そしてN
2を継続的に導入する条件でN
2を定電位還元させたこと。前記定電位還元の過程における電位制御範囲が−0.45V〜−0.85V vs. RHEであり、電解還元時間が2時間であった。前記電解質溶液がH
2SO
4溶液であった。
【0051】
図7は、本発明の実施例3で調製された多孔質炭素材料担持型触媒の存在下でH
2SO
4溶液においてN
2を還元する線形走査ボルタモグラムである。この図より、N
2に対するこの材料の応答が比較的に大きいことが分かる。
【0052】
図8は、本発明の実施例3で調製された多孔質炭素材料担持型触媒の存在下で−0.55VでN
2を還元してNH
3を生成する紫外吸収スペクトルである。この図より、紫外吸収スペクトルにより、NH
3を確実に検出できた。
【0053】
実施例4
多孔質炭素材料の存在下で二酸化炭素を電気触媒還元してギ酸を生成する具体的な手順:プロトン交換膜で仕切られた三電極電解槽において、実施例1で調製された多孔質炭素材料5mgをエタノール及びナフィオン溶液と混合し、超音波分散させ、カーボンペーパーに均一に塗布したものを作用電極とし、白金シートを対電極とし、飽和カロメル電極を参照電極とし、陰極槽と陽極槽にそれぞれ電解質溶液を加え、飽和までCO
2を導入し、その後、CO
2を継続的に導入する条件でCO
2を定電位還元させた。前記定電位還元の過程における電位制御範囲が−0.38V〜−0.98V vs. RHEであり、電解還元時間が5時間であった。前記電解質溶液がKHCO
3溶液であった。
【0054】
前記電解質溶液はNaHCO
3又はNa
2SO
4溶液に置き換えてもよく、電解時間は4〜6時間内の任意の時間であってもよい。
【0055】
図9は、本発明の実施例4で調製された多孔質炭素材料の存在下でKHCO
3溶液においてCO
2を還元する線形走査ボルタモグラムである。この図より、CO
2に対するこの材料の応答が比較的に大きいことが分かる。
【0056】
図10は、本発明の実施例4で調製された多孔質炭素材料の存在下で−0.78VでCO
2を触媒還元してギ酸を生成する核磁気共鳴の検出図である。この図より、H核磁気共鳴(NMR)(AV 500)により、ギ酸を確実に検出できた。
【0057】
実施例5:厚さが6nmである多孔質炭素材料の調製
1gカーボンブラックN220を秤量し、80mLの質量分率50%の濃硝酸を加え、均一に分散する溶液が形成するまで1時間超音波攪拌し、そして水熱反応器に置き、130℃で8時間反応させ、反応器を常温まで冷却した後に、回転蒸発、遠心の方法で、蒸留水で洗浄して乾燥させる操作を3〜5回繰り返し、厚さが6nmである秩序多孔質炭素材料が得られ、かつ酸化度(g値)が1.993であった。
【0058】
本実施例で調製された炭素材料は、均一に分布する、ハニカム状の秩序多孔質炭素材料であり、CO
2を電気触媒還元してギ酸を生成すること、及び担持型触媒として窒素ガスを電気触媒還元してアンモニアを生成することに用いられる。
【0059】
実施例6:厚さが5nmである多孔質炭素材料の調製
1gカーボンブラックN660を秤量し、80mLの質量分率60%の濃硝酸を加え、均一に分散する溶液が形成するまで1時間超音波攪拌し、そして水熱反応器に置き、160℃で4時間反応させ、反応器を常温まで冷却した後に、回転蒸発、遠心の方法で、蒸留水で洗浄して乾燥させる操作を3〜5回繰り返し、厚さが5nmである秩序多孔質炭素材料が得られ、かつ酸化度(g値)が1.995であった。
【0060】
本実施例で調製された炭素材料は、均一に分布する、ハニカム状の秩序多孔質炭素材料であり、CO
2を電気触媒還元してギ酸を生成すること、及び担持型触媒として窒素ガスを電気触媒還元してアンモニアを生成することに用いられる。
【0061】
上記の実施例に用いられるカーボンブラック原料をN330、N550、N990、N110、N115、N234、N326、N339、N375、N539、N550又はN880型のカーボンブラックに置き換えても、均一に分布する、ハニカム状の秩序多孔質炭素材料が得られ、且ついずれも、CO
2を電気触媒還元してギ酸を生成すること、及び担持型触媒として窒素ガスを電気触媒還元してアンモニアを生成することに用いられる。
【0062】
明らかに、上記の実施例は単に明瞭に説明するために挙げた例であり、実施形態に対する限定ではない。当業者にとって、上記の説明の上で、他の異なる形式の変化又は変動を行ってもよい。ここでは、あらゆる実施形態を挙げる必要も可能性もない。これらによる明らかな変化又は変動も本発明創造の保護範囲内に入る。
【0063】
本願は、2018年12月14日に提出された中国特許出願No.201811536510.5の優先権を主張し、ここに該中国特許出願のすべての内容を援用する。