(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させる姿勢制御用アクチュエータを設けた2自由度機構のリンク作動装置において、
前記各姿勢制御用アクチュエータを制御するコントローラが設けられ、このコントローラに、前記各姿勢制御用アクチュエータに指令を出力する姿勢制御手段、および前記先端側のリンクハブに作用する荷重を推定する荷重推定手段が設けられると共に、前記荷重推定手段は、前記各姿勢制御用アクチュエータに作用するトルク変化量より、前記先端側のリンクハブに作用する衝突を検知する衝突検知機能を有し、
前記荷重推定手段の衝突検知により前記各姿勢制御用アクチュエータの動作をオフにして自由とする衝突対応制御手段を備えたことを特徴とするリンク作動装置。
請求項1に記載のリンク作動装置において、前記姿勢制御用アクチュエータのそれぞれがトルク検出手段を有し、これらのトルク検出手段の検出信号から、前記荷重推定手段による荷重の推定を行うリンク作動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のパラレルリンク機構など、従来のリンク作動装置は、いずれもパラレルリンク機構の先端に作用する力を検出するには高価なセンサを取り付ける必要があった。
医療機器等のように、人との協調作業に用いられるリンク作動装置では、誤って人の手や腕等が干渉した場合に、即座に自由に逃げられるようにすることが安全上で求められ、そのためには、リンク作動装置の先端に作用する力を検出して対処する必要がある。また医療機器や産業機器では、作業を精度良く行うために、リンク作動装置の先端に作用する力を検出可能とすることが求められる。
【0005】
この発明の目的は、上記課題を解消し、装置先端に作用する様々な方向からの外力を、簡易で安価な構成で検出でき、装置全体の安全性の向上が図れ、人との協調作業に用いることができるリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させる姿勢制御用アクチュエータを設けたリンク作動装置において、
前記各姿勢制御用アクチュエータを制御するコントローラが設けられ、このコントローラに、前記各姿勢制御用アクチュエータに指令を出力する姿勢制御手段、および前記先端側のリンクハブに作用する荷重を推定する荷重推定手段が設けられると共に、前記荷重推定手段は、前記各姿勢制御用アクチュエータに作用するトルク変化量より、前記先端側のリンクハブに作用する衝突を検知する衝突検知機能を有し、
前記荷重推定手段の衝突検知により前記各姿勢制御用アクチュエータの動作をオフにして自由とする衝突対応制御手段を備えた。
【0007】
この構成によれば、基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、3組以上のリンク機構とで、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、先端側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。各姿勢制御用アクチュエータの動作を制御することで、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させることができる。
【0008】
このような構成のリンク作動装置において、前記姿勢制御用アクチュエータのそれぞれがトルク検出手段を有し、これらのトルク検出手段の検出信号から、前記荷重推定手段による荷重の推定を行ってもよい。各姿勢制御用アクチュエータにトルク検出手段を設け、このトルク検出手段の検出信号から先端側のリンクハブに作用する荷重を推定する荷重推定手段を設けたため、別のセンサを先端側のリンクハブ等の可動部分に設けることなく荷重を推定することができる。先端側のリンクハブの荷重は、前記各リンク機構を介して前記各姿勢制御用アクチュエータに伝わるため、各姿勢制御用アクチュエータのトルクから先端側のリンクハブの荷重を計算できる。前記姿勢制御用アクチュエータのトルクを検出するトルク検出手段は、この姿勢制御用アクチュエータに印加する電流を検出するセンサ等の簡単な検出手段で構成できる。
このように、姿勢制御用アクチュエータにトルク検出手段を設け、別のセンサを先端側のリンクハブ等の可動部分に設けることなく、先端側のリンクハブに作用する荷重を推定するようにしたため、装置全体のコンパクト化やコスト低減に繋がる。
また、上記構成のリンク作動装置は、その可動範囲内において特異点がなく全方向にスムーズに動ける構成であるため、先端側のリンクハブに様々な方向から荷重が作用した場合でも姿勢制御用アクチュエータに確実にトルクが伝達され、正確に荷重を推定することができる。
【0009】
この発明において、前記3組以上のリンク機構は、これらリンク機構が並ぶ周方向に等間隔に配置し、前記リンク機構の全てに対して前記姿勢制御用アクチュエータを設けても良い。
このように3組以上のリンク機構を等間隔に配置し、リンク機構全てに姿勢制御用アクチュエータを設けることで、各姿勢制御用アクチュエータに対してバランス良くトルクが伝達される。そのため、前記姿勢制御用アクチュエータに設けられたトルク検出手段の検出信号を用いてより正確に荷重を推定できるようになる。
【0010】
この発明のリンク作動装置は、前記基本構成において、前記3組以上のリンク機構に対して前記姿勢制御用アクチュエータを設けている。
リンク機構を3組とすると、リンク機構同士の干渉も少なくなり、作動範囲が大きくなるだけでなく、部品点数も少ないため、コスト低減に繋がる。また、リンク機構が3組であり、これら3組のリンク機構に対して前記姿勢制御用アクチュエータが設けられていると、バランス良くトルク伝達が行える。そのため、装置先端に作用する荷重を各姿勢制御用アクチュエータのトルク検出手段から求めるにつき、計算が行い易く、より正確に荷重を推定できるようになる。
【0011】
この発明において、前記荷重推定手段は、前記トルク検出手段により検出されるトルク変化量より、前記先端側のリンクハブに作用する衝突を検知する機能を有するようにしても良い。
先端側のリンクハブまたはこれに搭載しているものが何かに衝突すると、姿勢制御用アクチュエータに作用するトルクが急激に変化する。そのため、このトルク変動量により様々な方向に対する衝突を検知することができる。このように前記荷重推定手段に衝突検知機能を設けた構成により、リンク作動装置が人や物に接触した場合でも、それを検知して装置を停止させるなどの措置を採れるようになり、安全性が向上する。
【0012】
この発明のリンク作動装置は、前記荷重推定手段が、前記トルク検出手段のそれぞれのトルク値から、前記先端側のリンクハブに作用する荷重値と荷重が作用する方向を検知する機能を有する。
事前に先端に作用する荷重に対する各姿勢制御用アクチュエータに作用するトルクを測定し、各姿勢制御用アクチュエータに作用するトルクと先端に作用する荷重との関係を定めたテーブル等を作成しておいたり、機構解析により各姿勢制御用アクチュエータに作用するトルクから先端に作用する荷重を算出する計算式を立てておけば、トルク検出手段が検出するトルク値から先端側の荷重を推定できるようになる。先端に作用する荷重が精度良く検出されると、先端側のリンクハブに取付けられたエンドエフェクタ等による作業が精度良く行える。
【発明の効果】
【0013】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させる姿勢制御用アクチュエータを設けたリンク作動装置において、前記各姿勢制御用アクチュエータを制御するコントローラが設けられ、このコントローラに、前記各姿勢制御用アクチュエータに指令を出力する姿勢制御手段、および前記先端側のリンクハブに作用する荷重を推定する荷重推定手段が設けられると共に、前記荷重推定手段は、前記各姿勢制御用アクチュエータに作用するトルク変化量より、前記先端側のリンクハブに作用する衝突を検知する衝突検知機能を有し、前記荷重推定手段の衝突検知により前記各姿勢制御用アクチュエータの動作をオフにして自由とする衝突対応制御手段を備えたため、装置先端に作用する様々な方向からの外力を、簡易で安価な構成で検出でき、装置全体の安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の第1の実施形態を
図1〜
図7と共に説明する。このリンク作動装置1は、パラレルリンク機構9と、このパラレルリンク機構9を作動させる姿勢制御用アクチュエータ10と、この姿勢制御用アクチュエータを制御してパラレルリンク機構9の姿勢を変更させるコントローラ3(
図2)とで構成される。
【0016】
図1はリンク作動装置の正面図、
図4、
図5はリンク作動装置の互いに異なる状態を示す斜視図である。パラレルリンク機構9は、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13を3組の個別のリンク機構14を介して姿勢変更可能に連結したものである。なお、
図1では、1組のリンク機構14のみが示されている。前記3組のリンク機構14は、この実施形態では、これらリンク機構14が並ぶ周方向に等間隔に配置され、前記リンク機構14の全てに対して前記姿勢制御用アクチュエータ10が設けられている。前記3組のリンク機構14の並びの内部空間が、パラレルリンク機構9の内部空間Sとなる。なお、リンク機構14の数は、4組以上であっても良い。
【0017】
各個別のリンク機構14は、基端側の端部リンク部材15、先端側の端部リンク部材16、および中央リンク部材17で構成され、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材15,16はL字状をなし、一端がそれぞれ基端側のリンクハブ12および先端側のリンクハブ13に回転自在に連結されている。中央リンク部材17は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材15,16の他端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0018】
パラレルリンク機構9は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造であって、リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の各回転対偶、および端部リンク部材15,16と中央リンク部材17の各回転対偶の中心軸が、基端側と先端側においてそれぞれの球面リンク中心PA,PB(
図3)で交差している。また、基端側と先端側において、リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の各回転対偶とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じであり、端部リンク部材15,16と中央リンク部材17の各回転対偶とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材15,16と中央リンク部材17との各回転対偶の中心軸は、ある交差角γ(
図1)を持っていてもよいし、平行であってもよい。
【0019】
図2は基端側のリンクハブ12、基端側の端部リンク部材15等の断面図にコントローラ3の概念構成のブロックを加えた図である。同図に、基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15の各回転対偶の中心軸O1と、球面リンク中心PAとの関係が示されている。先端側のリンクハブ13および先端側の端部リンク部材16の形状ならびに位置関係も
図2と同様である(図示せず)。図の例では、リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16との各回転対偶の中心軸O1と、端部リンク部材15,16と中央リンク部材17との各回転対偶の中心軸O2とが成す角度αが90°とされているが、前記角度αは90°以外であっても良い。
【0020】
3組のリンク機構14は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、
図3に示すように、各リンク部材15,16,17を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材17の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。
図3は、一組のリンク機構14を直線で表現した図である。この実施形態のパラレルリンク機構9は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ12および基端側の端部リンク部材15と、先端側のリンクハブ13および先端側の端部リンク部材16との位置関係が、中央リンク部材17の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。各中央リンク部材17の中央部は、共通の軌道円D上に位置している。
【0021】
基端側のリンクハブ12と先端側のリンクハブ13と3組のリンク機構14とで、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ12に対して先端側のリンクハブ13を、回転が2自由度で姿勢変更自在とした機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の可動範囲を広くとれる。
【0022】
例えば、球面リンク中心PA,PBを通り、リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の各回転対偶の中心軸O1(
図2)と直角に交わる直線をリンクハブ12,13の中心軸QA,QBとした場合、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBとの折れ角θ(
図3)の最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の旋回角φ(
図3)を0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。
【0023】
基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢変更は、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBとの交点Oを回転中心として行われる。
図4は、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBが同一線上にある状態を示し、
図5は、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが或る作動角をとった状態を示す。姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離L(
図3)は変化しない。
【0024】
このパラレルリンク機構9において、各リンク機構14におけるリンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の回転対偶の中心軸O1(
図2)の角度および球面リンク中心PA,PBからの長さが互いに等しく、かつ各リンク機構14のリンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の回転対偶の中心軸O1、および、端部リンク部材15,16と中央リンク17の回転対偶の中心軸O2が、基端側および先端側において球面リンク中心PA,PBと交差し、かつ基端側の端部リンク部材15と先端側の端部リンク部材16の幾何学的形状が等しく、かつ中央リンク部材17についても基端側の先端側とで形状が等しいとき、中央リンク部材17の対称面に対して、中央リンク部材17と端部リンク部材15,16との角度位置関係を基端側と先端側とで同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ12および基端側の端部リンク部材15と、先端側のリンクハブ13および先端側の端部リンク部材16とは同じに動く。
【0025】
図1に示すように、基端側のリンクハブ12は、前記ベース部材6と、このベース部材6と一体に設けられた3個の回転軸連結部材21とで構成される。ベース部材6は中央部に円形の貫通孔6a(
図2)を有し、この貫通孔6aの周囲に3個の回転軸連結部材21が円周方向に等間隔で配置されている。貫通孔6aの中心は、基端側のリンクハブ中心軸QA上に位置する。各回転軸連結部材21には、軸心がリンクハブ中心軸QAと交差する回転軸22が軸受23により回転自在に連結されている。軸受23は、スペーサ24と共に前記回転軸連結部材21に設置されている。前記回転軸22に、基端側の端部リンク部材15の一端が、ナット22cで止め付けて連結される。
【0026】
回転軸22は、減速機構52の出力軸に同軸上に配置される。また、減速機構52の出力軸には、この減速機構52の出力軸と一体に回転するように、スペーサ28を介して基端側の端部リンク部材15の一端がボルト29で連結される。ボルト29は、基端側の端部リンク部材15の一端に形成された切欠き部25内から止め付けられている。
基端側の端部リンク部材15の他端には切欠き部26が設けられ、この切欠き部26内に配置された中央リンク部材17の一端に、回転自在に連結する回転軸35が連結される。
【0027】
図1,
図4,
図5に示すように、先端側のリンクハブ13は、平板状の先端部材40と、この先端部材40の底面に円周方向等配で設けられた3個の回転軸連結部材41とで構成される。先端部材40には、このリンク作動装置1の用途に応じて作業機となるエンドエフェクタ(図示せず)が取付けられる。各回転軸連結部材41が配置される円周の中心は、先端側のリンクハブ中心軸QB上に位置する。各回転軸連結部材41は、軸心がリンクハブ中心軸QBと交差する回転軸42(
図4)が回転自在に連結されている。この先端側のリンクハブ13の回転軸42に、先端側の端部リンク部材16の一端が連結される。先端側の端部リンク部材16の他端には、中央リンク部材17の他端に回転自在に連結された回転軸45が連結される。先端側のリンクハブ13の回転軸42および中央リンク部材17の回転軸45も、前記回転軸35と同じ形状であり、かつ2個の軸受(図示せず)を介して回転軸連結部材41および中央リンク部材17の他端にそれぞれ回転自在に連結されている。
【0028】
リンク作動装置1の姿勢制御用アクチュエータ10は、減速機構52を備えたロータリアクチュエータであり、具体的には減速機構付きのサーボモータであり、基端側のリンクハブ12のベース部材6の上面に、前記回転軸22と同軸上に設置されている。姿勢制御用アクチュエータ10と減速機構52は一体に設けられ、モータ固定部材53により減速機構52がベース部材6に固定されている。この例では、3組のリンク機構14の全てに姿勢制御用アクチュエータ10が設けられている。なお、3組のリンク機構14のうち少なくとも2組に姿勢制御用アクチュエータ10を設ければ、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢を確定することができる。
【0029】
図2において、コントローラ3は、リンク作動装置1のパラレルリンク機構9を制御する装置であり、上位の制御手段(図示せず)または手入力の操作手段(図示せず)から与えられた姿勢変更先の指令に従って、各姿勢制御用アクチュエータ10に回転角度の指令を出力する姿勢制御手段4が設けられている。コントローラ3への変更先の姿勢指令は、例えば前記旋回角φ(
図3)と折れ角θで与えられるが、姿勢制御手段4は、与えられた旋回角φと折れ角θの指令を、所定の演算式に従って各姿勢制御用アクチュエータ10の回転角度の指令に変換し、各姿勢制御用アクチュエータ10に出力する。また、姿勢制御手段4は、各姿勢制御用アクチュエータ10に設けられた回転角度検出器(図示せず)の検出信号を用いてサーボ機構(図示せず)によりフィードバック制御を行う。パラレルリンク機構9に前記エンドエフェクタ(図示せず)を設ける場合は、このエンドエフェクタの制御についても、コントローラ3により行う。
【0030】
このコントローラ3に、前記先端側のリンクハブ13(
図1)に作用する荷重を推定する荷重推定手段5が設けられている。前記姿勢制御用アクチュエータ10は、それぞれがトルク検出手段8を有し、これらのトルク検出手段8の検出信号から、前記荷重推定手段5による前記先端側のリンクハブ13の作用荷重の推定を行う。トルク検出手段8は、例えば、各姿勢制御用アクチュエータ10に流れる電流を検出する電流センサ等からなる。
【0031】
荷重推定手段5による先端側のリンクハブ13の作用荷重の推定は、必ずしも数値として推定しなくても良く、例えば衝突が生じたか否かの判定を行える程度の段階的な推定であっても良い。
図6は、衝突検知の例を示し、縦軸に各トルク検出手段8が検出したトルクの値を、横軸に時間の経過をそれぞれ示す。同図の例では、姿勢制御用アクチュエータ10の加速時のトルク値を示しており、各姿勢制御用アクチュエータ10のトルク値は次第に上昇しているが、時刻t1の時点で急激に上昇している。荷重推定手段5は、このような各トルク検出手段8により検出されるトルクの単位時間当たりの変化量であるトルク変化量(同図ではトルク変化曲線の勾配で表れる)から、先端側のリンクハブ13が衝突をしたことを検知するようにしても良い。この衝突検知では、トルク変化量は、例えば閾値を超えたか否かが分かれば良い。この衝突検知において、荷重推定手段5は、各トルク検出手段8の検出値のうち、いずれか一つのトルク検出手段8の検出値が閾値を超えていると衝突と判定するようにしても良く、また各トルク検出手段8の検出値から、定められた規則に従って総合的に判断して衝突と判定するようにしても良い。
【0032】
前記荷重推定手段5が上記のように衝突検知機能を有するものである場合、前記コントーラ3またはその前記前記姿勢制御手段4に、前記荷重推定手段5による衝突検知によって、各姿勢制御用アクチュエータ10の動作をサーボオフ等によって自由とする衝突対応制御手段(図示せず)を設けても良い。このようにサーボオフ等によって自由にパラレルリンク機構9が自由に移動できるようにすることで、安全性が向上する。
【0033】
この実施形態では、荷重推定手段5は、上記衝突検知の機能の他に、前記トルク検出手段8のそれぞれのトルク値から、前記先端側のリンクハブ13に作用する荷重値と荷重が作用する方向の検知を可能としている。
この例では、具体的には、事前に先端側のリンクハブ13に作用する荷重に対する各姿勢制御用アクチュエータ10に作用するトルクを測定し、その測定結果を用いて、各姿勢制御用アクチュエータ10に作用するトルクT1,T2,T3と先端側のリンクハブ13に作用する荷重との関係を定めたテーブル7(
図7)を作成しておき、前記各トルクT1,T2,T3の検出値を前記テーブル7と照合して作用力と方向を求めるようにしている。テーブル7における方向は、例えば、
図3に示す先端側のリンクハブ13の旋回角φである。
【0034】
荷重推定手段5は、
図7のテーブル7を用いる代わりに、機構解析により各姿勢制御用アクチュエータ10に作用するトルクから先端側のリンクハブ13に作用する荷重を算出する計算式を備えておき、トルク検出手段8が検出するトルク値T1,T2,T3から先端側のリンクハブ13に作用する荷重を推定するようにしても良い。
【0035】
この構成のリンク作動装置1によると、上記のように、基端側のリンクハブ12と、先端側のリンクハブ13と、3組以上のリンク機構14とで、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、先端側のリンクハブ13の可動範囲を広くとれる。各姿勢制御用アクチュエータ10の動作を制御することで、基端側のリンクハブ12に対して先端側のリンクハブ13の姿勢を任意に変更させることができる。
【0036】
このような構成のリンク作動装置1において、姿勢制御用アクチュエータ10にトルク検出手段8を設け、このトルク検出手段8の検出信号から先端側のリンクハブ13に作用する荷重を推定する荷重推定手段5を設けたため、別のセンサを先端側のリンクハブ13等の可動部分に設けることなく荷重を推定することができる。先端側のリンクハブ13の荷重は、前記各リンク機構14を介して前記各姿勢制御用アクチュエータ10に伝わるため、各姿勢制御用アクチュエータ10のトルクから先端側のリンクハブ13の荷重を計算できる。前記トルク検出手段8は、姿勢制御用アクチュエータ10に印加する電流を検出するセンサ等の簡単な検出手段で構成できる。
【0037】
このように、姿勢制御用アクチュエータ10にトルク検出手段8を設け、別のセンサを先端側のリンクハブ13等の可動部分に設けることなく、先端側のリンクハブ13に作用する荷重を推定するようにしたため、装置全体のコンパクト化やコスト低減に繋がる。
また、上記構成のリンク作動装置1は、その可動範囲内において特異点がなく全方向にスムーズに動ける構成であるため、先端側のリンクハブ13に様々な方向から荷重が作用した場合でも姿勢制御用アクチュエータ10に確実にトルクが伝達され、正確に荷重を推定することができる。
【0038】
この実施形態では、前記3組以上のリンク機構14を等間隔に配置し、これらリンク機構14の全てに姿勢制御用アクチュエータ10を設けたため、各姿勢制御用アクチュエータ10に対してバランス良くトルクが伝達される。そのため、前記姿勢制御用アクチュエータ10に設けられたトルク検出手段8の検出信号を用いて正確に荷重を推定できるようになる。また、リンク機構14は3組としたため、リンク機構14の相互の干渉も少なくなり、作動範囲が大きくなるだけでなく、部品点数も少なくなって、コスト低減に繋がる。
【0039】
また、前記荷重推定手段5は、前記トルク検出手段8により検出されるトルク変化量より、前記先端側のリンクハブ13に作用する衝突を検知する機能を有する。
先端側のリンクハブ13に搭載しているもの、例えばエンドエフェクタ(図示せず)が何かに衝突すると、姿勢制御用アクチュエータ10に作用するトルクが急激に変化する(図 参照)。そのため、このトルク変動量により様々な方向に対する衝突を検知することができる。このように前記荷重推定手段5に衝突検知機能を設けた構成により、リンク作動装置1が人や物に接触した場合でも、それを検知して装置を停止させるなどの措置をと採れるようになり、安全性が向上する。
【0040】
前記荷重推定手段5は、さらに、前記トルク検出手段8のそれぞれのトルク値から、前記先端側のリンクハブ13に作用する荷重値と荷重が作用する方向の検知する機能を有する。前述のようにテーブル7等を作成しておいたり、計算式を立てておけば、トルク検出手段8が検出するトルク値から先端側の荷重を推定できるようになる。先端に作用する荷重が精度良く検出されると、先端側のリンクハブ13に取付けられたエンドエフェクタ等による作業が精度良く行える。
【0041】
図8,
図9は、他の実施形態を示す。特に説明する事項の他は、
図1〜
図7に示す第1の実施形態と同様であるので、重複する説明を省略する。この実施形態では、
図8、
図9に示すように先端側のリンクハブ13が多角形状に形成され、基端側のリンクハブ12は、ベース部材6上にスペーサ65を介して多角形状の基端側のリンクハブ12を設置した構成とされている。先端側のリンクハブ13にエンドエフェクタ(図示せず)が設置されている。また、姿勢制御用アクチュエータ10が
図9のように接続されている。
【0042】
パラレルリンク機構9の3組のリンク機構14の全てに、基端側の端部リンク部材15を回動させて基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢を任意に変更させる姿勢制御用アクチュエータ10と、この姿勢制御用アクチュエータ10の動作量を基端側の端部リンク部材15に減速して伝達する減速機構71とが設けられている。姿勢制御用アクチュエータ10はロータリアクチュエータ、より詳しくは減速機52付きのサーボモータであって、モータ固定部材53によりベース部材6に固定されている。減速機構71は、姿勢制御用アクチュエータ10の減速機52と、歯車式の減速部73とでなる。以下では、減速機構71に平歯車を使用しているが、その他の機構(例えば、かさ歯車やウォーム機構)でも良い。
【0043】
歯車式の減速部73は、姿勢制御用アクチュエータ10の出力軸にカップリング75を介して回転伝達可能に連結された小歯車76と、基端側の端部リンク部材15に固定され前記小歯車76と噛み合う大歯車77とで構成されている。図示例では、小歯車76および大歯車77は平歯車であり、大歯車77は、扇形の周面にのみ歯が形成された扇形歯車である。大歯車77は小歯車76よりもピッチ円半径が大きく、姿勢制御用アクチュエータ10の出力軸の回転が基端側の端部リンク部材15へ、減速して伝達される。
【0044】
この実施形態のようにパラレルリンク機構9および姿勢制御用アクチュエータ10を構成した場合も、コントローラ3の荷重推定手段5によって、前記第1の実施形態と同様に、装置先端に作用する様々な方向からの外力を、簡易で安価な構成で検出でき、装置全体の安全性の向上を図ることができる。
【0045】
図10,
図11は、さらに他の実施形態を示す。特に説明する事項の他は、
図1〜
図7に示す第1の実施形態と同様であるので、重複する説明を省略する。この実施形態では、基端側のリンクハブ12および先端側のリンクハブ13は、その中心部にそれぞれ貫通孔が形成されて外形が球面状をしたドーナツ形状をしている。これら基端側のリンクハブ12および先端側のリンクハブ13の外周面の円周方向に等間隔の位置に、基端側の端部リンク部材15および先端側の端部リンク部材16がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0046】
図11は、基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15の回転対偶部、および基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17の回転対偶部を示す断面図である。基端側のリンクハブ12は、外周部に半径方向の軸孔81が円周方向3箇所に形成され、各軸孔81内に設けた二つの軸受82により軸部材83がそれぞれ回転自在に支持されている。軸部材83の中心は、基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15との回転対偶の中心軸と一致している。軸部材83の外側端部は基端側のリンクハブ12から突出し、その突出ねじ部83aに基端側の端部リンク部材15が結合され、ナット94によって締付け固定されている。
【0047】
前記軸受82は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記軸孔81の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部材83の外周に嵌合している。外輪は止め輪85によって抜け止めされている。また、内輪と基端側の端部リンク部材15の間には間座86が介在し、ナット84の締付力が基端側の端部リンク部材15および間座86を介して内輪に伝達されて、軸受82に所定の予圧を付与している。
【0048】
基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17の回転対偶部は、中央リンク部材17の両端に形成された連通孔88に二つの軸受89が設けられ、これら軸受89により、基端側の端部リンク部材15の先端の軸部90が回転自在に支持されている。軸受89は、間座91を介して、ナット92によって締付け固定されている。
【0049】
前記軸受89は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記連通孔88の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部90の外周に嵌合している。外輪は止め輪93によって抜け止めされている。軸部90の先端ねじ部90aに螺着したナット92の締付力が間座91を介して内輪に伝達されて、軸受89に所定の予圧を付与している。なお、
図11では後述するかさ歯車57は省略している。
【0050】
以上、基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15の回転対偶部、および基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17の回転対偶部について説明したが、先端側のリンクハブ13と先端側の端部リンク部材16の回転対偶部、および先端側の端部リンク部材16と中央リンク部材17の回転対偶部も同じ構成である(図示省略)。
【0051】
このように、各リンク機構14における4つの回転対偶部、つまり、基端側のリンクハブ12と基端側の端部リンク部材15の回転対偶部、先端側のリンクハブ13と先端側の端部リンク部材16の回転対偶部、基端側の端部リンク部材15と中央リンク部材17と回転対偶部、および先端側の端部リンク部材16と中央リンク部材17の回転対偶部に、軸受82,89を設けた構造とすることにより、各回転対偶での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0052】
図10において、ベース部材6の上面にスペーサ65を介して基端側のリンクハブ12が固定されている。ベース部材6の下面には前記姿勢制御用アクチュエータ10が垂下状態で取付けられている。姿勢制御用アクチュエータ10の数は、リンク機構14と同数の3個である。姿勢制御用アクチュエータ10はロータリアクチュエータからなり、その出力軸に取付けたかさ歯車56と基端側のリンクハブ12の軸部材83(
図5)に取付けた扇形のかさ歯車57とが噛み合っている。
なお、この例では、リンク機構14と同数の姿勢制御用アクチュエータ10が設けられているが、3組のリンク機構14のうち少なくとも2組に姿勢制御用アクチュエータ10が設けられていれば、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢を確定することができる。
【0053】
このパラレルリンク機構9では、各姿勢制御用アクチュエータ10を回転駆動させることで、その回転が一対のかさ歯車56,57を介して軸部材83に伝達されて、基端側のリンクハブ12に対する基端側の端部リンク部材15の角度が変更する。それにより、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の位置および姿勢が決まる。ここでは、かさ歯車56,57を用いて基端側の端部リンク部材15の角度を変更しているが、その他の機構(例えば、平歯車やウォーム機構)でも良い。
【0054】
この実施形態のようにパラレルリンク機構9および姿勢制御用アクチュエータ10を構成した場合も、コントローラ3の荷重推定手段5によって、前記第1の実施形態と同様に、装置先端に作用する様々な方向からの外力を、簡易で安価な構成で検出でき、装置全体の安全性の向上を図ることができる。
【0055】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。