特許第6792695号(P6792695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792695
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】カーペット基布用不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 27/02 20060101AFI20201116BHJP
   D04H 3/105 20120101ALI20201116BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20201116BHJP
【FI】
   A47G27/02 101Z
   D04H3/105
   D04H3/011
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-501970(P2019-501970)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(65)【公表番号】特表2019-527098(P2019-527098A)
(43)【公表日】2019年9月26日
(86)【国際出願番号】KR2017014819
(87)【国際公開番号】WO2018124566
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年1月15日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0179842
(32)【優先日】2016年12月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウ−ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒ−ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ヒョク−ジン
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−255135(JP,A)
【文献】 特開2014−037661(JP,A)
【文献】 特表平09−507535(JP,A)
【文献】 特開2010−007190(JP,A)
【文献】 特開2009−066327(JP,A)
【文献】 特開平07−142155(JP,A)
【文献】 特開2003−293255(JP,A)
【文献】 特許第4034520(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/02
D04H 3/00〜 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形断面の延伸されたポリエステルフィラメント繊維を製造する工程、
前記フィラメント繊維をウェブ形態に集積し、クリンプ加工してクリンプ数が20〜40個/インチに形成されるようにし、カレンダリングしてウェブを形成する工程及び
前記ウェブをニードルパンチする工程を含み、
該ニードルパンチする工程は、300〜400stroke rpmの条件で行う第1工程と、600〜800stroke rpmの条件で行う第2工程とを含むカーペット基布用不織布の製造方法。
【請求項2】
前記クリンプ加工は、前記の延伸されたフィラメント繊維が前記ウェブを形成するためのコンベアネットに積まれると同時に、100〜150℃で30〜60秒間前記の延伸されたフィラメントを処理する請求項1に記載のカーペット基布用不織布の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法で製造され、単糸繊度が4〜7デニールのポリエステルフィラメント繊維を含み、引抜き強さが2.0〜3.0gf(Loop type tufting後loopを引っ張る強度)であるカーペット基布用不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペット製造のためのタフティング(tufting)工程で基布に植え込まれるビーシーエフ(BCF,bulked continuous filament)糸の固定性が向上したカーペット基布用不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットは、ホテル、オフィス、家庭および自動車等において、装飾だけでなく快適性の提供、遮音等の目的で使用されている。
カーペット用の布は、不織布にBCF糸を植え込むタフティング工程と、タフティングされた不織布の裏面にPVC、PE、EVA又はSBR等のコーティング液をコーティングして硬化させるバックコーティング工程とを含む製造過程を経て作られる。
作られたカーペット用の布を、正方形(例えば、50cm×50cm)に切断するとホテル、オフィス、家庭等で使用されるタイルカーペットになり、自動車の床の形に成形すると自動車用フロアマットになる。
カーペット基布用不織布の機能は、BCF糸を固定することである。
タフティング工程において、基布は針(needle)で最小160,000hole/m2の孔(hole)が開けられる。基布は、このような物理的損傷にもBCF糸の配列形態を維持し、高温環境の後加工時に形態の変形があってはならない。
タフティング工程の近年の傾向は、高密度化、パターンの多様化、低いデニールのBCF糸の使用である。例えば、極細糸をBCF糸に使用してタフティング密度を高めること、Multi level条件でBCF糸の高さが3種類以上になるようにすること、多様な色のBCF糸の使用による針の動きが大きくなること等のような傾向があるが、これによってタフティング難易度が高くなっており、それによる基布の毀損を防止するために、不織布とBCF糸の摩擦係数を高めて不織布におけるBCF糸の固定能力を向上させる必要がある。
【0003】
一方、既存のカーペット基布用不織布は、延伸工程を経て潜在応力を有するフィラメントが、熱的または化学的接着方法によって不織布に製造される。不織布の後のカーペット製造のための後加工工程で、加熱によってフィラメントが有する残留応力が解消され高い収縮率が表れるが、それによってカーペット完成品の形態が変形するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記問題点を解決するために、本発明は、カーペット基布用不織布の製造方法を改善してBCF糸の固定能力が向上したカーペット基布用不織布の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、円形断面の延伸したポリエステルフィラメント繊維を製造する工程、前記フィラメント繊維をウェブ形態に集積し、クリンプ加工し、カレンダリングしてウェブを形成する工程及び前記ウェブをニードルパンチする工程を含むカーペット基布用不織布の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、延伸したポリエステルフィラメントのウェブをクリンプ(crimp)加工し、ニードルパンチして製造することにより、延伸したポリエステルフィラメントの残留応力が解消されて成形性が向上し、ポリエステルフィラメントの交絡によってカーペットにおけるBCF糸の固定能力の向上が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、延伸したフィラメントをウェブ形態にし、クリンプ加工、カレンダリングし、ニードルパンチすることを含むカーペット基布用不織布の製造方法である。
本発明のフィラメントは、融点が250℃以上のポリエステルを溶融して紡糸口金を通じて吐出させてフィラメントに成形し、高圧の空気延伸装置を用いて紡糸速度が4,500〜5,000m/minになるように延伸して製造された、4〜7デニールの低い繊度の円形断面のフィラメント繊維を使用することができる。
【0008】
本発明において、繊度が4デニール未満であると、タフティングを行う際に繊維が損傷してBCF糸を固定する能力が低下する場合があり、7デニールを超えると、摩擦係数が低くなって引抜き強さの向上が難しくなることがある。
前記フィラメント繊維をコンベア上にウェブの形態で積んだ後、熱を加えてクリンプ加工しフィラメントの屈曲性を付与することができる。
クリンプ加工は、合成繊維フィラメントを熱処理して細い屈曲を作る加工方法であり、糸が縮れて伸縮性を有する。
本発明では、延伸したフィラメントがコンベアネットに積まれると同時に100〜150℃で30〜60秒間延伸されたフィラメントを処理することができる。
【0009】
延伸されたフィラメントの残留応力がクリンプ加工過程で熱が加えられて解消され収縮率が低下するが、これによって形態安定性を向上させることができる。また、不織布を構成するフィラメントにクリンプが付与され摩擦係数が高くなり、最終的にBCF糸の固定能力を向上させることができる。
前記クリンプ加工で、ポリエステルフィラメント繊維のクリンプ数は20〜40個/インチにすることが好ましい。このとき、クリンプ数が20個/インチ未満の場合は、フィラメント間の接触点が少なくなってカレンダリング、ニードルパンチ後に不織布の強度と伸び率が低くなり、タフティング後にBCF糸を固定する力が弱くなる。クリンプ数が40個/インチを超えと、接触点が非常に多くなりフィラメント間の過多接触によりニードルパンチをする際にフィラメントが毀損することがあり、不織布の摩擦係数が非常に高いため、タフティングする際に繊度が低いBCF糸の毀損が発生するかもしれない。
【0010】
その後、クリンプ加工されたウェブをカレンダリングロールに通過させて厚さを調整し、ニードルパンチを行ってフィラメント間に交絡が形成された不織布を製造することができる。
本発明のカレンダリングは、所定の温度(130〜150℃)及び圧力を加えて不織布の厚さを減らして0.35〜0.50mmの厚さになるようにするが、これによる密度の増加によりフィラメントが交絡できる量が増える。
前記ニードルパンチは、2工程で実施することが好ましい。1工程(Pre−punching)では条件を300〜400stroke rpm(stroke rpm:コンベアネットを通過する間、針で不織布を結合する速度)にしてフィラメントの一部を交絡させてウェブの形態を形成し、2工程(Main punching)で条件を600〜800stroke rpmにしてフィラメントを全体的に交絡させてカーペット基布用不織布を製造することができる。
【0011】
前記のように製造されたカーペット基布用不織布は、クリンプ加工によって、延伸されたフィラメントで配向された非結晶領域の潜在応力が解消されるため、その後の工程で熱による収縮率が減り、屈曲が形成されてフィラメントの交絡点が増えるため、ニードルパンチで引張強度と引裂張力とを増大させることができる。
【実施例】
【0012】
以下、本発明を下記の実施例と比較例によってより詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためだけのものであり、本発明が下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想から外れない範囲内で置換および均等な他実施例に変更できることは本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者において明白なことである。
【0013】
<実施例1>
融点が260℃の繊維用ポリエチレンテレフタレート(PET)を押出機にて288℃で溶融させて紡糸口金の毛細孔を通じて吐出させる。吐出されたPETを冷却風を利用して固化させた後、延伸装置を用いて延伸しながら紡糸速度が5,000m/minになるように紡糸し、繊度が6デニールの円形断面のフィラメント繊維を製造した。
前記フィラメント繊維をコンベアネット(net)上にウェブの形態に積み、同時に、積まれたフィラメントに130℃で60秒間熱を加えて下記表1のクリンプ数が形成されるようにクリンプ加工を施した。
その後、加熱されたカレンダリングロールを通過させるカレンダリングを行って平滑性と適正な厚さを付与した。
続いて、下記表1の条件で1工程および2工程のニードルパンチを行ってフィラメントが交絡され、単位面積当りの重量が120g/m2のカーペット基布用不織布を製造した。
【0014】
<実施例2〜4>
前記実施例1で下記表1の条件でクリンプ加工及びニードルパンチを行ったことを除いては、実施例1と同じ方法を用いてカーペット基布用不織布を製造した。
【0015】
<比較例1〜4>
前記実施例1で下記表1の条件でクリンプ加工及びニードルパンチを行ったことを除いては、実施例1と同じ方法を用いてカーペット基布用不織布を製造した。
【表1】
前記実施例及び比較例に対して、下記の評価方法で評価し、その結果を下記表2に表した。
【0016】
<評価方法>
1.引張強度(kgf/5cm)及び伸び率(%)
KS K 0521法を用いた。横×縦=5cm×5cmの大きさの試片をインストロン社の測定装備を用いて上/下5cm×5cmジグに噛ませた後、引張速度200mm/minで測定する。
【0017】
2.成形性能
不織布の裏面にPVC液を塗布し、乾燥した後に横×縦=50cm×50cmの大きさの試片に2cm間隔の格子模様を描く。その後、予熱板で前記不織布を180℃で3分間予熱し、下板は陰刻に、上板は陽刻になっている20cm×20cmの正方形の大きさの金型を用いて成形する。成形した後に不織布において破れた部位の格子模様を数えて破れた部分の広さを求める。
例)破れた部位の個数=2個=2×2=4
【0018】
3.引抜き強さ(gf)
タフティングする際に、幅方向に1インチに針数10個、長さ方向に1インチに針数13個の条件で、800rpmの速度でLoop type tuftingを施す。タフティングをした後に測定するループの隣り合う片方のループを切断し、反対側に10個のループ間隔を置いて、ループを切断する。インストロンを用いて測定するループを不織布と垂直の方向に引っ張ったときに表れる強度ピーク10個の平均を求める。試片数は3個とする。
【表2】
【0019】
表2の結果から、不織布を構成するフィラメントのクリンプ数が少ない場合(比較例1)には、タフティングが不可能になるが、これは実施例1と比較すると接触点の数が少なく、摩擦係数の向上が微々であったためであると判断される。また、フィラメントのクリンプ数が多い場合(比較例)には、機械的強度が向上するが、不織布が硬くなり成形性が低下することが確認できる。
さらに、ニードルパンチが多すぎる合(比較例4)には、タフティングが不可能になるが、これはフィラメントの損傷によるものであることが確認できる。ニードルパンチが少なすぎる場合(比較例2)には、機械的強度向上せず、これにより成形性能が低下することが確認できる。

【産業上の利用可能性】
【0020】
以上から、本発明にかかる不織布は、カーペット製造過程で成形性が向上すると同時に、引抜き強さも向上することが確認できるため、カーペットの生産性と品質の向上に寄与することができる。