【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発 先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の方向において、前記第2の電極の両端のうちの少なくとも一方の端は、前記第1の電極の端よりも前記半導体基板の端側に配置されている、請求項1に記載の光電変換装置。
前記第3の電極は、前記第2の方向における前記半導体基板の端部において、前記第1の方向に離間して配置された前記第2の電極間に配置されている、請求項1に記載の光電変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0032】
[実施の形態1]
図1A〜
図1Cは、それぞれ、実施の形態1による光電変換装置の第1から第3の平面図である。
図2は、
図1A〜
図1Cに示す線II−II間における光電変換装置の断面図である。
図3は、
図1A〜
図1Cに示す線III−III間における光電変換装置の断面図である。なお、
図1Aは、光入射側と反対側から見た光電変換装置のp型拡散層、n型拡散層および電極の平面図である。
図1Bは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の導電接着層および非接続領域の平面図である。
図1Cは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の配線、絶縁性基板の平面図である。この図では、絶縁性基板81は、透過しており、配線が見えている。また、
図1A〜
図1C、
図2および
図3においては、x軸、y軸およびz軸を規定する。
【0033】
図1A〜
図1C、
図2および
図3を参照して、実施の形態1による光電変換装置10は、半導体基板1と、反射防止膜2と、パッシベーション膜3と、電極4〜6と、導電性接着層7と、配線基板8と、非接続領域15,16とを備える。
【0034】
半導体基板1は、例えば、n型単結晶シリコン基板からなり、100〜200μmの厚さを有する。また、半導体基板1は、例えば、(100)の面方位および1〜10Ωcmの比抵抗を有する。そして、半導体基板1は、光入射側の表面にテクスチャ構造を有する。
【0035】
半導体基板1は、光入射側の表面と反対側の表面(テクスチャ構造が形成された面と反対側の面)側にp型拡散層11およびn型拡散層12を有する。p型拡散層11は、x−y平面においてn型拡散層12を取り囲むように配置される。
【0036】
p型拡散層11は、y軸方向に離間して配置された複数のp型拡散層を含む領域を有する。n型拡散層12は、y軸方向に複数のp型拡散層と交互に配置された複数のn型拡散層を含む領域を有する。
【0037】
p型拡散層11は、x軸方向において、n型拡散層12の両端よりも半導体基板1の端側へ延びて配置されている。
【0038】
p型拡散層11は、p型不純物として、例えば、ボロン(B)を含む。ボロンの濃度は、例えば、1×10
19cm
−3〜1×10
20cm
−3である。また、p型拡散層11の深さは、例えば、0.1μm〜0.5μmである。
【0039】
n型拡散層12は、n型不純物として、例えば、リン(P)を含む。リンの濃度は、例えば、1×10
19cm
−3〜1×10
20cm
−3である。また、n型拡散層12の深さは、例えば、0.1μm〜0.5μmである。
【0040】
反射防止膜2は、半導体基板1の光入射側の表面に配置される。反射防止膜2は、例えば、酸化シリコンおよびシリコンナイトライドの積層構造からなる。この場合、酸化シリコンが半導体基板1に接して配置され、シリコンナイトライドが酸化シリコンに接して配置される。そして、反射防止膜2は、例えば、100〜1000nmの膜厚を有する。
【0041】
パッシベーション層3は、半導体基板1の光入射側の表面と反対の表面側においてp型拡散層11およびn型拡散層12に接してp型拡散層11およびn型拡散層12上に配置される。なお、
図1A〜
図1Cにおいては、パッシベーション膜3が図示されていないが、実際には、パッシベーション膜3は、p型拡散層11およびn型拡散層12上に配置されている。
【0042】
パッシベーション膜3は、酸化シリコン、窒化シリコンおよびアルミナ等からなる。そして、パッシベーション膜3は、例えば、50nm〜100nmの膜厚を有する。
【0043】
電極4は、パッシベーション膜3に設けられた複数の開口を介してp型拡散層11およびパッシベーション膜3に接して配置される。そして、電極4は、y軸方向に離間して配置され、x軸方向に配置された複数の電極40を含む。複数の電極40は、x軸方向において所定の間隔で離間してp型拡散層11上に配列される(
図1A,3参照)。なお、電極4は、x軸方向に離間して配列された複数の電極40からなっていてもよく、x軸方向に繋がった1つの電極からなっていてもよい。
【0044】
x軸方向において、電極4は、電極5よりも半導体基板1の端部側まで延びて配置されている。そして、電極4は、半導体基板1の端部から1mm以内まで延びていることが好ましい。
【0045】
電極5は、パッシベーション膜3に設けられた複数の開口を介してn型拡散層12およびパッシベーション膜3に接して配置される。そして、電極5は、y軸方向に離間して配置され、x軸方向に配置された複数の電極50を含む。複数の電極50は、x軸方向において所定の間隔で離間してn型拡散層12上に配列される(
図1A,
図2参照)。なお、電極5は、x軸方向に離間して配列された複数の電極50からなっていてもよく、x軸方向に繋がった1つの電極からなっていてもよい。
【0046】
電極6は、x軸方向におけるn型拡散層12の両端側において、x軸方向におけるn型拡散層12の延長線上であって、y軸方向において隣接する電極4間に配置される(
図1A,
図2参照)。そして、電極6は、パッシベーション膜3に設けられた開口を介してp型拡散層11およびパッシベーション膜3に接して配置される。電極6の端部は、半導体基板1の端部から1mm以内に配置されることが好ましい。
【0047】
電極4〜6の各々は、例えば、銀からなり、100〜3000nmの厚さを有する。電極6の幅は、電極5の幅よりも狭い。
【0048】
導電性接着層7は、x軸方向における電極4,5の両端部上に電極4,5に接して配置され、電極6上に電極6に接して配置される。(
図1B参照)。そして、電極4,6上の導電性接着層7は、配線基板8の配線82と電気的に接続され、電極5上の導電性接着層7は、配線基板の配線83と電気的に接続される(
図1B,
図2,3参照)。そして、導電性接着層7は、例えば、低融点はんだ、導電性接着剤および導電性ペースト等からなる。
【0049】
配線基板8は、絶縁性基板81と、配線82,83とを含む。配線82,83は、絶縁性基板81上に配置される。配線82,83は、櫛形の平面形状を有する(
図1C参照)。そして、配線82は、y軸方向に延び、導電性接着層7によって電極4,6に電気的に接続される。また、配線83は、y軸方向に延び、導電性接着層7によって電極5に電気的に接続される。
【0050】
配線82が導電性接着層7によって電極4に電気的に接続される場合、例えば、x軸方向において隣り合う2つの電極40と2箇所で導電性接着層7によって接続される(
図1B,
図1C参照)。また、配線83が導電性接着層7によって電極5に電気的に接続される場合、例えば、x軸方向において隣り合う2つの電極50と2箇所で導電性接着層7によって接続される(
図1B,
図1C参照)。
【0051】
絶縁性基板81は、絶縁性材料からなり、例えば、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、およびポリイミド等のフィルムからなる。
【0052】
配線82,83の各々は、導電性材料からなり、例えば、アルミニウム、銅、銀、スズおよび亜鉛等を積層した導電材料からなる。
【0053】
非接続領域15は、y軸方向の隣り合う電極4間において電極5と配線82との間に配置される(
図1B,
図2参照)。非接続領域15は、y軸方向の隣り合う電極4間において配線82が電極5と電気的に接続されるのを妨げる。そして、非接続領域15は、電極5の表面の一部に形成された絶縁層を含んでいることが好ましい。この場合、絶縁層は、絶縁性の樹脂または窒化シリコン等の無機物からなる。
【0054】
非接続領域16は、y軸方向の隣り合う電極5間において電極4と配線83との間に配置される(
図1B,
図3参照)。非接続領域16は、y軸方向の隣り合う電極5間において配線83が電極4と電気的に接続されるのを妨げる。そして、非接続領域16は、電極4の表面の一部に形成された絶縁層を含んでいることが好ましい。この場合、絶縁層は、絶縁性の樹脂または窒化シリコン等の無機物からなる。
【0055】
上述したように、電極4,6は、導電性接着層7によって配線基板8の配線82に電気的に接続されており、電極5は、導電性接着層7によって配線基板8の配線83に電気的に接続されているが、電極4,6と配線82との電気的な接続および電極5と配線83との電気的な接続は、圧着等の電気的に接続が取れる方法であればよい。
【0056】
なお、
図1Aにおいては、電極4、電極5およびn型拡散層12は、y軸方向において、複数配置されているが、その数は、限定されない。
【0057】
また、
図1Aにおいては、電極6は、y軸方向において、複数配置されているが、電極6は、y軸方向において、少なくとも1つ配置されていればよく、その数は、限定されない。
【0058】
更に、
図1Cにおいては、配線82,83の各々は、x軸方向において、複数配置されているが、配線82,83の各々の数は、限定されない。
【0059】
図4から
図6は、それぞれ、
図1A〜
図1C、
図2および
図3に示す光電変換装置10の製造工程を示す第1から第3の工程図である。なお、
図4から
図6に示す工程図は、
図1A〜
図1Cに示す線II−II間における断面図を用いて示されている。
【0060】
図4を参照して、光電変換装置10の製造が開始されると、半導体基板1’を準備する(
図4の工程(a))。なお、半導体基板1’は、半導体基板1と同じ面方位、比抵抗、導電型および厚さを有する。
【0061】
そして、半導体基板1’の一方の面に保護膜20を形成する(
図4の工程(b))。保護膜20は、例えば、酸化シリコンおよび窒化シリコンからなり、例えば、スパッタリングによって形成される。
【0062】
その後、保護膜20が形成された半導体基板1’をNaOHおよびKOH等のアルカリ溶液(例えば、KOH:1〜5wt%、イソプロピルアルコール:1〜10wt%の水溶液)を用いてエッチングする。これによって、保護膜20が形成された半導体基板1’の面と反対側の表面が異方性エッチングされ、ピラミッド形状のテクスチャ構造が形成される。そして、保護膜20を除去することによって半導体基板1が得られる(
図4の工程(c)参照)。
【0063】
引き続いて、半導体基板1のテクスチャ構造が形成された表面に反射防止膜2を形成する(
図4の工程(d))。より具体的には、例えば、スパッタリング法によって、酸化シリコンおよびシリコンナイトライドを半導体基板1上に順次堆積することによって反射防止膜2を形成する。
【0064】
工程(d)の後、半導体基板1のテクスチャ構造が形成された表面と反対側の表面(=裏面)の一部にBSG(Boron Silicate Glass)膜21を形成する(
図4の工程(e))。この場合、BSG膜21の膜厚は、例えば、300〜1000nmである。
【0065】
その後、BSG膜21を850〜900℃で熱処理することによって、BSG膜21からボロン(B)を半導体基板1へ拡散させ、残ったBSG膜21をフッ化水素水溶液によって除去する。これによって、p型拡散層11が半導体基板1の裏面側に形成される(
図5の工程(f))。
【0066】
引き続いて、半導体基板1の裏面の一部にPSG(Phosphorus Silicate Glass)膜22を形成する(
図5の工程(g))。この場合、PSG膜22の膜厚は、例えば、300〜1000nmである。
【0067】
その後、PSG膜22を850〜900℃で熱処理することによって、PSG膜22からリン(P)を半導体基板1へ拡散させ、残ったPSG膜22をフッ化水素水溶液によって除去する。これによって、n型拡散層12が半導体基板1の裏面側に形成される(
図5の工程(h))。
【0068】
そして、パッシベーション膜3をp型拡散層11およびn型拡散層12上に形成する(
図5の工程(i))。この場合、例えば、スパッタリング法によって酸化シリコンを形成することによってパッシベーション膜3をp型拡散層11およびn型拡散層12上に形成する。
【0069】
次に、レジストをパッシベーション膜3上に塗布し、フォトリソグラフィを用いてレジストをパターンニングし、そのパターンニングしたレジストをマスクとしてパッシベーション膜3をエッチングすることによって開口23をパッシベーション膜3に形成する(
図6の工程(j))。
【0070】
その後、例えば、蒸着法によって金属(例えば、銀)を、開口23を有するパッシベーション膜3の全面に形成し、その形成した金属(例えば、銀)をレジストとフォトリソグラフィを用いてパターンニングすることによって電極5,6を形成する(
図6の工程(k))。なお、
図6の工程(k)には、図示されていないが、電極4も、電極5,6と同時に形成される。
【0071】
工程(k)の後、導電性接着層7として低融点はんだペーストを印刷等により電極5,6上の複数箇所にドット状に形成する(
図6の工程(l))。なお、この時、導電性接着層7として低融点はんだペーストが電極4上にもドット状に形成される。
【0072】
次に、150μm程度の絶縁性の配線基板81を用意し、配線82,83がそれぞれ電極4,6および電極5と略直交するようにし、所定の位置で電気的接続が取れるように位置を調整して半導体基板1と配線基板8とを貼り合わせる。そして、貼り合わせた半導体基板1および配線基板8に両面から圧力を印加して加熱等することにより、電気的に接合する。これによって、光電変換装置10が完成する(
図6の工程(m))。
【0073】
なお、配線基板8は、絶縁性基板81の全面に銅等の金属を形成し、その形成した金属の一部をエッチングなどにより除去してパターニングすることによって形成される。
【0074】
光電変換装置10においては、半導体基板1の一方の表面において、y軸方向に離間して配置された複数のp型拡散層を含むp型拡散層11がn型拡散層12の周囲を囲むように配置されている。
【0075】
また、光電変換装置10においては、複数のp型拡散層11上に配置され、x軸方向を長さ方向とする複数の電極40と、複数のn型拡散層12上に配置され、x軸方向を長さ方向とする複数の電極50とが配置されている。
【0076】
更に、光電変換装置10においては、x軸方向におけるn型拡散層12の両端と、x軸方向における半導体基板1の端との間に配置された複数の電極6が設けられている。
【0077】
更に、光電変換装置10においては、y軸方向において隣り合う電極4間に配置され、電極5との電気的な接続を妨げる非接続領域15と、y軸方向において隣り合う電極5間に配置され、電極4との電気的な接続を妨げる非接続領域16とが形成されている。
【0078】
そして、配線基板8は、y軸方向に配置された配線82,83を含み、配線82が電極4,6に電気的に接続され、配線83が電極5に電気的に接続されている。
【0079】
また、電極4は、x軸方向において、電極5よりも半導体基板1の端部側へ延伸されて配置されており、電極6は、x軸方向における電極5の延長線上であって、y軸方向において隣り合う電極4間に配置され、配線82に電気的に接続されている。
【0080】
更に、電極4は、電極5を取り囲むように連続しておらず、x軸方向において配列された複数の電極50からなる。このために、パターニングによって配線の切れ等の影響を受にくい。また、電極50は、単純な形状であるので、パターニングマスクを容易に作製できる。
【0081】
更に、電極4が半導体基板1の端部に向かって延長されているので、この部分で発生したキャリアを、より収集することが可能となる。また、半導体基板の端部において、電極4が電極5を取り囲んで連続している場合に比べ、半導体基板の端部付近の形状変化の影響を受けにくく、パターニングマスクの設計、およびパターニングの位置合わせが容易になり、パターニングの不良を減少できる。
【0082】
更に、y軸方向における電極4間に、電極6を設けることで、この部分で発生したキャリアを、より収集することができる。電極6を独立して設けることで、パターニングの形状の安定性が更に増すとともに、位置合わせの容易性が増し、電極6の形状が多少変化しても、キャリアの収集を良好に行うことができる。
【0083】
更に、電極と配線が平行に設けられた場合、電極5と接触せずに電極6を配線82と接続することは、比較的、困難であるが、y軸方向を長さ方向として、複数の配線82を設け、電極4間に独立した電極6を設けることによって、電極6を配線82と接続することができる。特に、半導体基板1の端部で良好な電極6と配線82との接続が得られる。その結果、光電変換装置10において、安定した特性が得られる。また、光電変換装置10の歩留まりが向上する。更に、光電変換装置10を長期に使用した時の特性の低下が減少し、信頼性を向上できる。
【0084】
上記においては、半導体基板1は、n型単結晶シリコン基板からなると説明したが、実施の形態1においては、これに限らず、半導体基板1は、n型多結晶シリコン基板、p型単結晶シリコン基板およびp型多結晶シリコン基板のいずれかからなっていてもよい。
【0085】
半導体基板1がp型単結晶シリコン基板またはp型多結晶シリコン基板からなる場合、上記の説明におけるp型拡散層11およびn型拡散層12を相互に入れ替えればよい。
【0086】
また、上記においては、電極6は、x軸方向におけるn型拡散層12の両端側においてn型拡散層12と半導体基板1の端部との間に配置されると説明したが、実施の形態1においては、これに限らず、電極6は、x軸方向におけるn型拡散層12の両端の少なくとも一方の端部側において、n型拡散層12の少なくとも一方の端部と半導体基板1の端部との間に配置されていればよい。
【0087】
更に、光電変換装置10においては、p型拡散層11は、x軸方向に離間して配列された複数のp型拡散層からなり、n型拡散層12は、x軸方向に離間して配列された複数のn型拡散層からなっていてもよい。
【0088】
[実施の形態2]
図7Aから
図7Cは、それぞれ、実施の形態2による光電変換装置の第1から第3の平面図である。
図8は、
図7A〜
図7Cに示す線VIII−VIII間における光電変換装置の断面図である。
図9は、
図7A〜
図7Cに示す線IX−IX間における光電変換装置の断面図である。なお、
図7Aは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の第1非晶質半導体層、第2非晶質半導体層および電極の平面図である。
図7Bは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の導電接着層および非接続領域の平面図である。
図7Cは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の配線、絶縁性基板の平面図である。この図では、絶縁性基板81は、透過しており、配線が見えている。また、
図7A〜
図7C、
図8および
図9においては、x軸、y軸およびz軸を規定する。
【0089】
図7A〜
図7C、
図8および
図9を参照して、実施の形態2による光電変換装置10Aは、
図1A〜
図1C、
図2および
図3に示す光電変換装置10の半導体基板1を半導体基板1Aに代え、パッシベーション膜3を複数の第1非晶質半導体層31および複数の第2非晶質半導体層32に代えたものであり、その他は、光電変換装置10と同じである。
【0090】
半導体基板1Aは、例えば、n型単結晶シリコン基板からなり、100〜200μmの厚さを有する。また、半導体基板1Aは、例えば、(100)の面方位および1〜10Ωcmの比抵抗を有する。そして、半導体基板1Aは、光入射側の表面にテクスチャ構造を有する。
【0091】
複数の第1非晶質半導体層31は、半導体基板1Aの光入射側の表面と反対側の表面に離間して配置される。この場合、複数の第1非晶質半導体層31は、x−y平面において複数の第2非晶質半導体層32の周囲を囲むように配置される。そして、複数の第1非晶質半導体層31の各々は、i型非晶質半導体層311と、p型非晶質半導体層312とを含む。
【0092】
i型非晶質半導体層311は、半導体基板1Aに接して半導体基板1A上に配置される。i型非晶質半導体層311は、例えば、i型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイドおよびi型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる。そして、i型非晶質半導体層311は、例えば、5〜30nmの膜厚を有する。
【0093】
「i型」とは、完全な真性の状態だけでなく、十分に低濃度(n型不純物濃度が1×10
15個/cm
3未満、かつp型不純物濃度が1×10
15個/cm
3未満)であればn型またはp型の不純物が混入された状態のものも含む意味である。
【0094】
また、この発明の実施の形態において、「非晶質シリコン」には、シリコン原子の未結合手(ダングリングボンド)が水素で終端されていない非晶質シリコンだけでなく、水素化非晶質シリコンなどのシリコン原子の未結合手が水素等で終端されたものも含まれるものとする。
【0095】
p型非晶質半導体層312は、i型非晶質半導体層311に接してi型非晶質半導体層311上に配置される。p型非晶質半導体層312は、例えば、p型非晶質シリコン、p型非晶質シリコンカーバイド、p型非晶質シリコンナイトライド、p型非晶質シリコンオキサイドおよびp型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる。そして、p型非晶質半導体層312は、例えば、5〜30nmの膜厚を有する。
【0096】
p型非晶質半導体層312に含まれるp型不純物としては、例えば、ボロン(B)を用いることができる。また、この発明の実施の形態において、「p型」とは、p型不純物濃度が1×10
15個/cm
3以上の状態を意味する。
【0097】
複数の第2非晶質半導体層32は、半導体基板1Aの光入射側の表面と反対側の表面において、第1非晶質半導体層31の幅方向(y軸方向)に複数の第1非晶質半導体層31と交互に配置される。そして、複数の第2非晶質半導体層32の各々は、i型非晶質半導体層321と、n型非晶質半導体層322とを含む。
【0098】
i型非晶質半導体層321は、半導体基板1Aに接して半導体基板1A上に配置される。i型非晶質半導体層321は、例えば、i型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイドおよびi型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる。そして、i型非晶質半導体層321は、例えば、5〜30nmの膜厚を有する。
【0099】
n型非晶質半導体層322は、i型非晶質半導体層321に接してi型非晶質半導体層321上に配置される。n型非晶質半導体層322は、例えば、n型非晶質シリコン、n型非晶質シリコンカーバイド、n型非晶質シリコンナイトライド、n型非晶質シリコンオキサイドおよびn型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる。そして、n型非晶質半導体層322は、例えば、5〜30nmの膜厚を有する。
【0100】
なお、n型非晶質半導体層322に含まれるn型不純物としては、例えば、リン(P)を用いることができる。また、この発明の実施の形態において、「n型」とは、n型不純物濃度が1×10
15個/cm
3以上の状態を意味する。
【0101】
電極4,5,6の設置、および配線基板8との接続は、実施の形態1と同様に実施することができる。
【0103】
図10を参照して、光電変換装置10Aの製造が開始されると、
図4に示す工程(a)〜工程(d)と同じ工程が順次実行される。これによって、半導体基板1Aが得られ(
図10の工程(c))、反射防止膜2が半導体基板1Aの光入射側の表面に形成される(
図10の工程(d))。
【0104】
工程(d)の後、半導体基板1Aのテクスチャ構造が形成された表面と反対側の表面にi型非晶質半導体層24およびp型非晶質半導体層25を順次形成する(
図10の工程(e))。i型非晶質半導体層24およびp型非晶質半導体層25の形成方法は、特に限定されないが、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法が用いられる。
【0105】
i型非晶質半導体層24がi型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイドおよびi型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる場合、プラズマCVD法を用いてi型非晶質半導体層24を形成するときの条件は、公知であるので、その公知の条件を用いてi型非晶質半導体層24を形成できる。
【0106】
また、p型非晶質半導体層25がp型非晶質シリコン、p型非晶質シリコンカーバイド、p型非晶質シリコンナイトライド、p型非晶質シリコンオキサイドおよびp型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる場合、プラズマCVD法を用いてp型非晶質半導体層25を形成するときの条件は、公知であるので、その公知の条件を用いてp型非晶質半導体層25を形成できる。
【0107】
工程(e)の後、p型非晶質半導体層25上にエッチングペースト26を塗布する(
図11の工程(f))。ここで、エッチングペースト26としては、i型非晶質半導体層24およびp型非晶質半導体層25の積層体をエッチングすることができるものであれば、特に限定されない。
【0108】
次に、エッチングペースト26を加熱することによってi型非晶質半導体層24およびp型非晶質半導体層25の積層体の一部を厚さ方向にエッチングする(
図11の工程(g))。これによって、半導体基板1Aの裏面(テクスチャ構造が形成された面と反対側の表面)の一部を露出させる。また、i型非晶質半導体層311およびp型非晶質半導体層312を含む複数の第1非晶質半導体層31が形成される。
【0109】
そして、半導体基板1Aの裏面の露出面およびp型非晶質半導体層312に接するようにi型非晶質半導体層27を形成し、その後、i型非晶質半導体層27の全面に接するようにn型非晶質半導体層28を形成する(
図11の工程(h))。i型非晶質半導体層27およびn型非晶質半導体層28の形成方法は、特に限定されないが、例えば、プラズマCVD法が用いられる。
【0110】
i型非晶質半導体層27がi型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイドおよびi型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる場合、プラズマCVD法を用いてi型非晶質半導体層27を形成するときの条件は、公知であるので、その公知の条件を用いてi型非晶質半導体層27を形成できる。
【0111】
また、n型非晶質半導体層28がn型非晶質シリコン、n型非晶質シリコンカーバイド、n型非晶質シリコンナイトライド、n型非晶質シリコンオキサイドおよびn型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる場合、プラズマCVD法を用いてn型非晶質半導体層28を形成するときの条件は、公知であるので、その公知の条件を用いてn型非晶質半導体層28を形成できる。
【0112】
工程(h)の後、n型非晶質半導体層28上にエッチングマスク29を塗布する(
図11の工程(i))。エッチングマスク29としては、i型非晶質半導体層27およびn型非晶質半導体層28の積層体をエッチングする際にマスクとして機能することができるものであれば、特に限定されない。
【0113】
次に、エッチングマスク29をマスクとして用いてエッチングを行い、i型非晶質半導体層27およびn型非晶質半導体層28の積層体の一部を厚さ方向にエッチングし、その後、エッチングマスク29を除去する。これによって、p型非晶質半導体層312の表面の一部を露出させる(
図12の工程(j))。また、i型非晶質半導体層321およびn型非晶質半導体層322を含む複数の第2非晶質半導体層32が形成される。
【0114】
そして、p型非晶質半導体層312上に電極6を形成し、n型非晶質半導体層322上に電極5を形成する(
図12の工程(k))。なお、工程(k)には図示されていないが、電極5,6の形成と同時に、電極4がp型非晶質半導体層312上に形成される。ここで、電極4〜6は、メタルマスク等によるマスクを用いてスパッタリングまたは蒸着で形成することができる。メタルマスクは、電極を形成したい場所が開口されており、メタルマスクの機械的強度を維持するために、開口と開口していない部分との比率、最小開口幅、および形状等の制限があるので、開口は、矩形等の単純な形が望ましい。また、開口が様々な場所にあるよりも、開口が配列している方が、機械的強度を維持し易い。また、このようにして形成した電極4〜6は、開口幅と形成条件により、膜厚が周辺部から中心部に向かって厚くなる場合がある。
【0115】
工程(k)の後、導電性接着層7として低融点はんだペーストを印刷等により電極4〜6上の複数箇所にドット状に形成する(
図12の工程(l))。
【0116】
次に、150μm程度の絶縁性基板81を用意し、配線82,83がそれぞれ電極4,6および電極5と略直交するようにし、所定の位置で電気的接続が取れるように位置を調整して半導体基板1Aと配線基板8とを貼り合わせる。そして、貼り合わせた半導体基板1Aおよび配線基板8に両面から圧力を印加して加熱等することにより、電気的に接合する。これによって、光電変換装置10Aが完成する(
図12の工程(m))。
【0117】
光電変換装置10Aにおいても、上述した光電変換装置10と同じ効果が得られる。
【0118】
なお、光電変換装置10Aにおいては、第1非晶質半導体層31は、x軸方向に離間して配列された複数の第1非晶質半導体層からなり、第2非晶質半導体層32は、x軸方向に離間して配列された複数の第2非晶質半導体層からなっていてもよい。
【0119】
実施の形態2におけるその他の説明は、実施の形態1における説明と同じである。
【0120】
[実施の形態3]
図13Aから
図13Cは、それぞれ、実施の形態3による光電変換装置の第1から第3の平面図である。なお、
図13Aは、光入射側と反対側から見た光電変換装置のp型拡散層、n型拡散層および電極の平面図である。
図13Bは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の導電接着層および非接続領域の平面図である。
図13Cは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の配線、絶縁性基板の平面図である。この図では、絶縁性基板81は、透過しており、配線が見えている。また、
図13A〜
図13Cにおいては、x軸、y軸およびz軸を規定する。
【0121】
図13A〜
図13Cを参照して、実施の形態3による光電変換装置10Bは、
図1A〜
図1C、
図2および
図3に示す光電変換装置10の電極6を電極6Aに代えたものであり、その他は、光電変換装置10と同じである。
【0122】
電極6Aは、x軸方向におけるn型拡散層12の両端側においてn型拡散層12と半導体基板1の端部との間に配置される。そして、電極6Aは、好ましくは、x軸方向におけるn型拡散層12の延長線上に配置される。
【0123】
電極6Aは、電極61,62を含む。電極61,62の各々は、上述した電極6と同じサイズおよび厚さを有し、電極6と同じ材料からなる。
【0124】
電極61,62の各々は、導電性接着層7によって配線82に接続される。
【0125】
光電変換装置10Bにおいては、電極6Aは、2つの電極61,62を含み、y軸方向において隣り合う電極4間に配置されるので、半導体基板1の端部に近い領域において、より多くのキャリアを収集できる。その結果、光電変換装置10Bにおいては、光電変換装置10よりも特性を向上できる。
【0126】
光電変換装置10Bは、
図4から
図6に示す工程(a)〜工程(m)に従って製造される。
【0127】
なお、実施の形態3による光電変換装置は、光電変換装置10から光電変換装置10Bへの変更と同じ変更を
図7A〜
図7C、
図8および
図9に示す光電変換装置10Aに適用した光電変換装置であってもよい。
【0128】
上記においては、電極6Aは、x軸方向におけるn型拡散層12の両端側においてn型拡散層12と半導体基板1の端部との間に配置されると説明したが、実施の形態3においては、これに限らず、電極6Aは、x軸方向におけるn型拡散層12の両端の少なくとも一方の端部側において、n型拡散層12の少なくとも一方の端部と半導体基板1の端部との間に配置されていればよい。
【0129】
実施の形態3におけるその他の説明は、実施の形態1,2における説明と同じである。
【0130】
[実施の形態4]
図14Aから
図14Cは、それぞれ、実施の形態4による光電変換装置の第1から第3の平面図である。なお、
図14Aは、光入射側と反対側から見た光電変換装置のp型拡散層、n型拡散層および電極の平面図である。
図14Bは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の導電接着層および非接続領域の平面図である。
図14Cは、光入射側と反対側から見た光電変換装置の配線、絶縁性基板の平面図である。この図では、絶縁性基板81は、透過しており、配線が見えている。また、
図14A〜
図14Cにおいては、x軸、y軸およびz軸を規定する。
【0131】
図14A〜
図14Cを参照して、実施の形態4による光電変換装置10Cは、
図1A〜
図1C、
図2および
図3に示す光電変換装置10の電極6を電極6Bに代えたものであり、その他は、光電変換装置10と同じである。
【0132】
電極6Bは、x軸方向におけるn型拡散層12の両端側においてn型拡散層12と半導体基板1の端部との間に配置される。そして、電極6Bは、好ましくは、x軸方向におけるn型拡散層12の延長線上に配置される。
【0133】
電極6Bは、y軸方向における長さ(=幅)が電極6の幅よりも広く、電極5の幅と実質的に同一である。ここで、電極6Bの幅が電極5の幅と実質的に同一であるとは、y軸方向における主要な部分の概略の幅であって、目視により、同一とみなすことができる程度の同一性を言う。こうすることによって、例えば、メタルマスクによる製膜で電極を形成する場合も、メタルマスクの強度設計の制限を受けにくく、より、電極幅や電極の形状について、最適な電極設計が可能となるためである。
【0134】
電極6Bは、上述した電極6と同じ厚さを有し、電極6と同じ材料からなる。そして、電極6Bは、導電性接着層7によって配線82に接続される。
【0135】
光電変換装置10Cにおいては、電極6Bは、幅が電極6よりも広く、y軸方向において隣り合う電極4間に配置されるので、半導体基板1の端部に近い領域において、より多くのキャリアを収集できる。その結果、光電変換装置10Cにおいては、光電変換装置10よりも特性を向上できる。
【0136】
光電変換装置10Cは、
図4から
図6に示す工程(a)〜工程(m)に従って製造される。
【0137】
なお、実施の形態4による光電変換装置は、光電変換装置10から光電変換装置10Cへの変更と同じ変更を
図7A〜
図7C、
図8および
図9に示す光電変換装置10Aに適用した光電変換装置であってもよい。
【0138】
上記においては、電極6Bは、x軸方向におけるn型拡散層12の両端側においてn型拡散層12と半導体基板1の端部との間に配置されると説明したが、実施の形態4においては、これに限らず、電極6Bは、x軸方向におけるn型拡散層12の両端の少なくとも一方の端部側において、n型拡散層12の少なくとも一方の端部と半導体基板1の端部との間に配置されていればよい。
【0139】
実施の形態4におけるその他の説明は、実施の形態1,2における説明と同じである。
【0140】
[実施の形態5]
図15は、実施の形態5による太陽電池ストリングの平面図である。なお、
図15は、光入射側から見た太陽電池ストリングの平面図である。
【0141】
図15を参照して、実施の形態5による太陽電池ストリング100は、配線基板110と、複数の太陽電池120とを備える。
【0142】
複数の太陽電池120は、例えば、4行×6列に配線基板110上に配置される。そして、複数の太陽電池120は、例えば、電気的に直列に接続される。
【0143】
複数の太陽電池120の各々は、上述した光電変換装置10,10B,10Cのうち、半導体基板1と、反射防止膜2と、電極4〜6(または6A,6B)とを備える構成、または上述した光電変換装置10Aのうち、半導体基板1Aと、複数の第1非晶質半導体層31と、複数の第2非晶質半導体層32と、電極4〜6(または6A,6B)とを備える構成からなる。
【0144】
図16は、
図15に示す配線基板110の平面図である。
図16を参照して、配線基板110は、絶縁性基板111と、配線112〜114とを備える。
【0145】
絶縁性基板111としては、絶縁性の基材を用いることができ、例えば、ポリエステル、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミドなどのフィルムを用いることができる。そして、絶縁性基板111は、絶縁性基板81と同じ厚さを有する。
【0146】
配線112は、複数の配線1121と、配線1122とを含む。複数の配線1121は、相互に並列に配置され、一方端が配線1122に接続されるとともに、配線1122から一方方向に突出する。
【0147】
配線113は、配線1131と、複数の配線1132と、複数の配線1133とを含む。複数の配線1132は、相互に並列に配置され、複数の配線1133は、相互に並列に配置される。
【0148】
複数の配線1132は、一方端が配線1131に接続され、配線1131から一方方向突出する。
【0149】
複数の配線1133は、一方端が配線1131に接続され、配線1131から複数の配線1132の突出方向と反対方向へ突出する。
【0150】
配線114は、複数の配線1141と、配線1142とを含む。複数の配線1141は、相互に並列に配置され、一方端が配線1142に接続されるとともに、配線1142から一方方向に突出する。
【0151】
配線基板110は、2個の配線112と、18個の配線113と、5個の配線114とを絶縁性基板111上に配置した構成からなる。この場合、配線112,113間においては、配線112の複数の配線1121は、配線113の複数の配線1132と噛み合うように配置される。また、隣接する2つの配線113間においては、一方の配線113の複数の配線1132が他方の配線113の複数の配線1133と噛み合うように配置される。更に、配線113,114間においては、配線113の複数の配線1132または複数の配線1133が配線114の複数の配線1141と噛み合うように配置される。
【0152】
その結果、24個の太陽電池120を配線基板110上に4行×6列に配置することによって、24個の太陽電池120は、電気的に直列に接続される。
【0153】
配線112〜114の各々は、導電性材料からなり、例えば、銅、銀メッキ銅、錫メッキ銅等からなる。
【0154】
なお、配線1131、および複数の配線1132,1133,1141は、例えば、絶縁性基板111の表面の全面に金属膜などの導電膜を形成した後に、その一部をエッチングなどにより除去してパターニングすることによって形成することができる。
【0155】
こうして得られた、配線基板付き裏面接合型太陽電池ストリング100を、例えば、従来から公知の方法により樹脂等によって封止することによって、太陽電池モジュールを作製することができる。
【0156】
このように接続した太陽電池ストリング100を封止材であるEVA(エチレンビニルアセテート)フィルムで挟み込み、更に、このEVAフィルムを表面保護層であるガラス板とアクリル樹脂等で形成された裏面フィルムとで挟む。EVAフィルム間に入った気泡を減圧して抜き(ラミネート)、加熱(キュア)すると、EVAが硬化して裏面接合型太陽電池が封止される。その後、その外周にフレームであるアルミニウム枠を嵌め込み、外部に伸びる一対の外部端子に端子ボックスを接続して、太陽電池モジュールが完成する。
【0157】
このような構成の太陽電池モジュールについても、太陽電池モジュールを構成する個々の裏面接合型太陽電池(太陽電池120)において、特性向上効果が発現するため、太陽電池モジュールの特性は、相乗的に向上し、また、太陽電池モジュールを構成する裏面接合型太陽電池(太陽電池120)同士の接続もそれぞれ容易となるため、太陽電池モジュールの作製も容易となるとともに、信頼性が向上する。
【0159】
(実施例1)
実施例1は、実施の形態2に従って、光電変換装置を作製し、その特性の評価を行った。作製について以下に具体的に説明する。
【0160】
まず、156mmのn型のバルクシリコンから150μmの厚さのウェーハを切り出し、ウェーハ表面のダメージ層を除去するためのエッチングと、厚さを調整するためのエッチングとを行った。これらのエッチングされたウェーハの片面に保護膜を形成する。保護膜としてシリコン窒化膜を形成した。保護膜が形成されたウェーハを、KOH:1〜5wt%、イソプロピルアルコール:1〜10wt%の水溶液を用いてウェットエッチングを行った。エッチング後に保護膜を除去した。
【0161】
引き続いて、半導体基板1Aの受光面に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とからなる反射防止膜2を形成した。まず、半導体基板1Aの表面を熱酸化して半導体基板1Aの受光面に酸化膜を形成し、その後、受光面の酸化膜上にシリコン窒化膜を形成することにより反射防止膜2を形成した。
【0162】
次に、i型非晶質半導体層311として、実質的に真性で、水素を含有する非晶質シリコン膜をプラズマCVD装置によって5nm形成した。プラズマCVD装置が備える反応室に導入される反応ガスは、シランガス、水素ガスを用いた。そして、半導体基板1Aの温度を200℃、水素ガス流量を100sccm、シランガス(SiH
4)流量を40sccm、反応室内の圧力を100Pa、高周波(13.56MHz)電力の密度を10mW/cm
2に設定して成膜した。
【0163】
続いて、i型非晶質半導体層311上に、p型非晶質半導体層312を10nm形成した。
【0164】
p型非晶質半導体層312は、プラズマCVD法を用いて形成した。プラズマCVD装置が備える反応室に導入される反応ガスは、シランガス、水素ガス、及び水素希釈されたジボラン(B
2H
6)ガス(ジボラン濃度は、2%)を用いた。そして、水素ガス流量を100sccm、シランガス流量を40sccm、ジボランガス流量を40sccm、半導体基板1Aの温度を200℃、反応室内の圧力を100Pa、高周波(13.56MHz)電力の密度を10mW/cm
2に設定して成膜した。
【0165】
p型非晶質半導体層312上に市販のエッチングペースト26をスクリーン印刷にて塗布する。次に、エッチングペースト26を200℃に10分間、加熱することによって、i型非晶質半導体層24およびp型非晶質半導体層25の積層体の一部を厚さ方向にエッチングした。エッチングされたシリコン膜、およびエッチングペースト26の固溶物は、超音波洗浄槽に10分間、浸漬することで除去した。これにより、
図11の工程(g)に示すように、半導体基板1Aの裏面の一部を露出させた。
【0166】
次に、i型非晶質半導体層27として、実質的に真性で、水素を含有する非晶質シリコン膜をプラズマCVD装置によって5nm形成した。プラズマCVD装置が備える反応室に導入される反応ガスは、シランガス、水素ガスを用いた。そして、半導体基板1Aの温度を200℃、水素ガス流量を100sccm、シランガス(SiH
4)流量を40sccm、反応室内の圧力を100Pa、高周波(13.56MHz)電力の密度を10mW/cm
2に設定して成膜した。
【0167】
続いて、i型非晶質半導体層27上に、n型非晶質半導体層28を10nm形成した。
【0168】
n型非晶質半導体層28は、プラズマCVDを用いて形成した。プラズマCVD装置が備える反応室に導入される反応ガスは、シランガス、水素ガス、及び水素で希釈されたホスフィン(PH
3)ガス(ホスフィン濃度は、例えば、1%)を用いた。そして、半導体基板1Aの温度を170℃、水素ガス流量を100sccm、シランガス流量を40sccm、ホスフィンガス流量を40sccm、反応室内の圧力を40Pa、高周波(13.56MHz)電力の密度を8.33mW/cm
2に設定して成膜した。
【0169】
次に、
図11の工程(i)に示すように、n型非晶質半導体層28上に市販のレジスト剤からなるエッチングマスク29をスクリーン印刷にて塗布し、十分乾燥させた。次に、エッチングマスク29をマスクとして、1%のKOH液に浸漬した。エッチングを行うことによって、i型非晶質半導体層27およびn型非晶質半導体層28の積層体の一部を厚さ方向にエッチングし、p型非晶質半導体層312を一部露出させた。その後、エッチングマスク29をSPM洗浄液にて除去した。
【0170】
次に、n型非晶質半導体層322の形成後、n型非晶質半導体層322およびp型非晶質半導体層312上に、それぞれ、電極5および電極4,6を形成した。
【0171】
このようなパターンを作製するために、電極5と電極6のメタルマスクと電極4のメタルマスクを作製した。
【0172】
まず、電極5および電極6として、メタルマスクを半導体基板1A上に配置し、スパッタリング法によって銀電極を200nmの厚さで形成した。その後、電極4として、スパッタリング法によって銀電極を200nmの厚さで形成した。
【0173】
メタルマスクのパターンは、以下の通りとした。
【0174】
電極5の幅を300μmとし、電極4の幅を800μmとし、繰り返しピッチを1.5mmとした。電極5の外縁部の端部は、半導体基板1Aの端部より、1000μm、電極4の外縁部の端部は、半導体基板1Aの端部より、500μm、内側とした。電極6の位置は、電極4の端から200μmを空けて設置し、幅を200μmとし、長さを300μmとした。非開口部の幅は、かねがね、200μmとなった。メタルマスクの厚さは、機械的強度を鑑みて、200μmとした。また、機械的強度を鑑みて、開口は、長手方向に約10mmごとに分割し、200μmの非開口部を設けた。
【0175】
引き続き、
図12の工程(l)に示すように、電極5の一部に非接続領域15を形成するために、スクリーン印刷にて、市販の絶縁性の樹脂を塗布した。次に、電極4の一部に非接続領域16を同様に形成した。
【0176】
次に、電極5、電極4および電極6上に導電性接着剤7として、市販の主成分がビスマス、および、スズよりなる低融点半田を印刷によって形成した。
【0177】
次に、
図12の工程(m)に示すように、配線基板8を用意し、電極4および電極5がそれぞれ配線82,83と略直交するようにし、所定の位置で電気的接続が取れるように、位置を調整し、半導体基板1Aと配線基板8と貼り合わせた。
【0178】
次に、貼り合わせた半導体基板1Aと配線基板8とに両面から圧力をかけて、200度、10分間、加熱することにより、電気的に接合を行った。このようにして、配線基板付き裏面接合太陽電池を20枚作製した。
【0179】
以上のように作製した裏面接合型太陽電池の外縁部を目視、および光学顕微鏡で観察した。その結果、基板の端部において、電極4および電極6が奇麗にパターニングされていた。
【0180】
その後、半導体基板1Aを市販のガラス、PET樹脂よりなるバックシート、EVAに挟んで、ラミネートし、モジュールを作製した。
【0181】
(実施例2)
図13Aに示すパターンにて、電極6Aを作製した以外は、実施例1と同等とした。このようなパターンを作製するために、電極5と電極6Aの一部のメタルマスクと電極4と
電極6Aの一部のメタルマスクを作製した。
【0182】
まず、電極5および電極6Aの一部は、メタルマスクを半導体基板1A上に配置し、スパッタ法によって銀電極を200nmの厚さで形成した。その後、電極4および電極6Aの一部をスパッタ法によって銀電極を200nmの厚さで形成した。このようにして、配線基板付き裏面接合太陽電池を20枚作製した。その他は、実施例1と同様に作製した。
【0183】
以上のように作製した裏面接合型太陽電池の外縁部を目視、および光学顕微鏡で観察した。その結果、基板の端部において、電極4および電極6Aが奇麗にパターニングされていた。
【0184】
(実施例3)
図14Aに示すパターンにて、電極6Bを作製した以外は、実施例1と同等とした。電極5および電極4,6Bとして、一括のメタルマスクを半導体基板1A上に配置し、スパッタリング法によって銀電極を200nmの厚さで形成した。
【0185】
このようにして、配線基板付き裏面接合太陽電池100を20枚作製した。その他は、実施例1と同様に作製した。
【0186】
以上のように作製した裏面接合型太陽電池の外縁部を目視、および光学顕微鏡で観察した。その結果、基板の端部において、電極4および電極6Bが奇麗にパターニングされていた。
【0187】
(比較例1)
比較例1として、電極6(または6Aまたは6B)および非接続領域15,16を設けず、電極4が電極5を取り囲むように、半導体基板1Aの外縁部500μm以内になるように電極4,5を作製した。
【0188】
次に、配線基板8を用意し、電極4,5がそれぞれ配線82,83と略並行になるようにし、所定の位置で電気的接続が取れるように位置を調整し、半導体基板1Aと配線基板8とを貼り合わせた。
【0189】
次に、貼り合わせた半導体基板1Aと配線基板8とに両面から圧力をかけて、200度に10分間、加熱する等により、電気的に接合を行った。このようにして、配線基板付き裏面接合太陽電池を20枚作製した。その他は、実施例1と同様に作製した。
【0190】
以上のように作製した裏面接合型太陽電池の外縁部を目視、および光学顕微鏡で観察した。その結果、基板の端部において、一部、電極のはみ出しが見られた。また、パターニング不良により、電極が切れている箇所がある基板が見られた。
【0191】
ソーラーシュミレータを用いて、作製した光電変換装置の変換効率を測定し、平均値を算出したところ、実施例1の変換効率に対して、実施例2の変換効率は、1.01であり、実施例3の変換効率は、1.01であり、比較例1の変換効率は、0.93であった。実施例1,2,3は、比較例1よりも、優れた特性を有していることが分かった。
【0192】
比較例は、明らかに、1枚、電極の形成不良とみられる絶縁不良による特性低下が発生したが、実施例1〜3は、全数、良好な接続が得られた。
【0193】
また、作製した光電変換装置を温度85℃、湿度85%の高温高湿槽に1か月放置した後に、再度、ソーラーシュミレータを用いて、変換効率を測定したところ、実施例1の変換効率に対して、実施例2の変換効率は、0.99であり、実施例2の変換効率は、1.01であり、比較例1の変換効率は、0.91であった。実施例1〜3は、比較例1よりも、優れた特性を有していることが分かった。
【0194】
この発明の実施の形態においては、y軸方向は、「第1の方向」を構成し、x軸方向は、「第2の方向」を構成する。
【0195】
また、この発明の実施の形態においては、y軸方向に配置された複数のn型拡散層12または複数の第2非晶質半導体層32は、「複数の第1の半導体層」を構成し、y軸方向に配置された複数のp型拡散層11または複数の第1非晶質半導体層31は、「複数の第2の半導体層」を構成する。
【0196】
更に、この発明の実施の形態においては、x軸方向に配置された複数の電極50は、「複数の第1の電極」を構成し、x軸方向に配置された複数の電極40は、「複数の第2の電極」を構成する。
【0197】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えれるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。