【実施例】
【0024】
《実施例1〜18、比較例1〜13》
以下に本願発明のクレンジング料の実施例1〜18の組成(表1)、比較例1〜13の組成(表2)を示し、この組成のクレンジング料の試験例によって本願発明の特徴と効果をさらに詳細に説明する。
1.クレンジング料の調製
実施例1〜18(表1)、比較例1〜13(表2)の組成のクレンジング料を常法により調製した。
【0025】
2.評価試験方法
次の手法により、実施例および比較例の各クレンジング料を評価した。
<外観観察(透明性)>
(a)調製直後の外観
調製したクレンジング料を直径30mmのスクリューキャップ付透明ガラス瓶(サンプル瓶)に充填し、調製直後と保存期間経過後に、室温(RT、25℃)で、この容器を横から見通して、透明性を目視評価した。
(透明性評価基準)
透明:容器を横から見通して10ポイントの文字が読める
白濁:容器を横から見通して10ポイントの文字が読めない
分離:分離している
【0026】
(b)安定性試験後の外観(安定性)
調製直後の外観状態が透明であった試験試料の入ったサンプル瓶については、安定性試験として5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に1ヶ月間保管した。1ヶ月保管後に、再度上記の透明性基準で外観を目視観察した。
なお調製直後の外観状態が分離していたサンプルについては、安定性試験を実施せず、下記の表1、表2の評価欄に「−」と記載した。
【0027】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>
試験に用いたクレンジング料を0.1%になるように水で希釈し、O/W型乳化組成物を調製した。この乳化組成物中の乳化粒子径をELSZ−1000(大塚電子株式会社製)を用いて動的光散乱法により乳化粒子の粒度分布を測定し、体積基準平均径の測定を行った。この乳化粒子径(体積基準平均径)を洗い流し性の評価指標とした。
なお、クレンジング料希釈液の体積基準平均径と油性分の洗い流しやすさの関係は、あらかじめ予備試験を行い、次のような結果を得ている。
(1)乳化粒子径が300nmを超えると肌に油性感が残る
(2)乳化粒子径が101〜300nmであると素早くすっきりと洗い流すことができる
(3)乳化粒子径が100nm以下であると一層素早くすっきりと洗い流すことができる
なお表中、「−」は、クレンジング料の希釈液の体積基準平均径を測定していない場合を示す。
【0028】
<洗い流しやすさ(官能評価)>
訓練された官能評価員1名が、上腕内側部に本発明のクレンジング料を使用した後の水による洗い流しやすさを評価した。
(評価基準)
○:肌に油性感が残らず洗い流し易い
×:洗い流した後に肌に油性感が残る
【0029】
<クレンジング力評価(官能試験によるメイク汚れの落としやすさの評価)>
口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラの落としやすさ試験を行った。
訓練された官能評価員が、実際に各化粧料を使用して評価した。すなわち官能評価員が洗浄対象の化粧料を使って化粧を行い、1時間後に室内で、評価対象のクレンジング料と手指を使って化粧落としを行った。その後水で洗い流した後、タオルで軽く水滴をふきとり、メイク汚れの落ち具合を目視で観察した。
なお、使用した化粧料は次の通りである。
口紅(リップカラー):モイスチャールージュP#84ビロードレッド
(株式会社ファンケル製)
ウォータープルーフタイプアイライナー:マスターライナー
クリーミィペンシルBK−1
(メイベリンニューヨーク製)
フィルムタイプマスカラ:パーフェクトマスカラr21
(株式会社アテニア製)
(評価基準)
○:メイク汚れがほぼきれいに落ちている
△:メイク汚れがわずかに残っている
×:メイク汚れが明らかに残っている
【0030】
<保存効力試験>
日本薬局方に定める保存効力試験法に基づき、Escherichia coli(大腸菌)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)を用いた保存試験を実施し、抗菌効果を評価した(試験法は日本薬局方に従った)。いずれの菌に対しても保存効力試験で問題がなかった。表には「減少」と表記した。なお保存効力試験で問題と判定する「増加」は1例もなかった。
【0031】
<モニター試験>
20名の女性モニターにより、自宅にてモニター試験(ホームユーステスト)を行った。各モニターには、試験品と同時に配布した化粧品(口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラ、いずれも前記官能試験と同じもの)を用いて朝、化粧をしてもらい、夜に化粧落としをするときに試験品を使用するよう指示した。試験品の使用量、使用回数は特に制限しなかった。評価は自由記述方式で行った。眼刺激性については、眼刺激性が「ある」、「なし」のいずれかを選択させた。モニター試験で「ある」と答えた例は1例もなかった。表には、眼刺激性の項で「なし」と表記した。
【0032】
3.評価結果
下記表1、表2の下段に実施例1〜18、比較例1〜13の評価結果を示す。なお比較例は、試験を実施した「(a)調製直後の外観」、「(b)安定性試験後の外観(安定性)」、「洗い流し性能」について記載した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
実施例1〜18は(A)成分を5〜9.6質量%の範囲で含有し、(B)成分を6.4〜12質量%の範囲で含有し、(C)成分を20〜44質量%の範囲で含有し、(D)成分を10〜20質量%の範囲で含有し、(E)成分を20〜45質量%の範囲で含有し、(F)成分を5〜9質量%の範囲で含有している。
一方、比較例1〜2は(D)成分及び(F)成分を含有せず、比較例3〜7はD成分を含有せず、比較例8〜9、11は(B)成分を含有せず、比較例10、12〜13は(A)成分を含有していない組成である。
【0036】
<外観(透明性)>
(a)調製直後の外観
実施例1〜18のクレンジング料は、すべて外観透明であった。一方比較例1〜13のクレンジング料では、調製直後の外観が透明な試料を得られなかった。このうち比較例1〜3、5の試料は白濁状態であり、この時点で本発明の目的とするクレンジング料ではないと判断できたが、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管する安定性試験を行った。
【0037】
(b)安定性試験後の外観(透明性・分離)
実施例1〜18のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に一月保管後に取り出し透明性を評価したところ、すべてのクレンジング料が透明性を保っていた。一方、比較例1〜3、及び比較例5のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃のいずれの温度領域でも、1ヶ月保管後分離していた。
実施例1〜18の組成と比較例3〜7の組成を対比すると、比較例3〜7の組成は、実施例1〜18における(D)成分の多価アルコールであるグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンに代えて多価アルコールのBG又はDPGを含有させた組成である。しかしこの組成は、調製直後からクレンジング料に白濁又は分離が生じている。すなわち、水と油と界面活性剤のクレンジング料の透明化には、実施例1〜18の組成の通り、多価アルコールである(D)成分のグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンの含有が必須である、ということが明らかとなった。
また、水と油と界面活性剤が存在するクレンジング料において、多価アルコールであってもBG、DPGの含有だけでは、白濁や分離が生じており、組成物の透明化と安定化に寄与しないことがわかった(比較例3〜7の調製直後の外観評価参照)。
さらにまた、比較例1〜7は(A)、(B)、(C)、(E)成分を含有し(D)成分を含有しない組成である。このうち比較例1、2はBG又はDPGを含有しない組成である。一方比較例3〜7組成はBG又はDPGを含有する組成である。この組成の調製直後の外観評価結果を対比すると、比較例1、2、3、5は白濁にとどまるが、比較例4、6、7は調製直後から分離している。
一方、実施例1〜18はBG又はDPGを含有しているにもかかわらず、調製直後の透明性と保存安定性試験において、白濁も分離も生じていない。すなわち、透明性と保存安定性に優れていることが明らかとなった。実施例においては、(D)成分と(F)成分は、両成分の質量比が(D):(F)=10:9〜20:5の範囲にあった。
【0038】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定>
実施例1〜14、および18のクレンジング料について測定した希釈液乳化粒子径の体積基準平均径を表1に示した。最小値は66.7nm(実施例9)、最大値は244.2nm(実施例12)であった。測定した15例中半数の8例(実施例2、3、4、5、9、10、11、18)が、「乳化粒子径が100nm以下であると一層素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価であった。また残りの7例(実施例1、6、7、8、12、13、14)も「乳化粒子径が101〜300nmであると素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価となった。
【0039】
<洗い流しやすさ(官能評価)>
官能評価員の評価結果を表1に示す。
実施例1〜18のすべてのクレンジング料が「○評価:肌に油性感が残らず洗い流し易い」の評価であった。洗い流しやすさ(官能評価)の結果は、体積基準平均径の測定結果の判定と一致した。
【0040】
<クレンジング力評価(官能評価によるメイク汚れの落としやすさの評価)>
口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラの落としやすさ評価結果を表1に示す。
実施例1〜18のクレンジング料すべてが「○」評価であり、「メイク汚れがほぼきれいに落ちている」の評価となることが確認できた。
【0041】
<保存効力試験>
日本薬局方の基準に基づく試験により、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌のいずれの菌種においても「減少」であり、問題なしと判定された。
【0042】
<モニター試験>
実施例9、実施例10、実施例13、実施例14のクレンジング料を、20名の女性モニターに渡して、自宅にてモニター試験(ホームユーステスト)を行ったところ、クレンジング力に対して全く不満はみられず、意見欄にはフィルムタイプマスカラ、ウォータープルーフタイプアイライナー、ファンデーション、口紅のいずれも良く落ちた、と非常に高い評価であった。また皮膚や目に対する刺激を感じたとの報告は一例もなかった。
【0043】
市場には様々なタイプのメイクアップ化粧料があり、その選択は消費者の嗜好に任されている。本発明の透明クレンジング料は、水があらかじめ安定に配合されていることから、消費者がどのようなタイプのメイクアップ化粧料を選択して使用していても、また消費者がどのような使用場面(水の混入の恐れの高い風呂場/水の混入する恐れのない室内)でクレンジング行為(化粧落とし)を行っても、常に安定して優れたクレンジング効果を得ることができる。特に従来技術では、落としにくいアイメイクに対しては、それを落とす専用のクレンジング料で化粧を落とし、顔全体は別のクレンジング料で化粧落としをするなど煩雑な化粧行動をとらざるをえなかった。しかしながら、本発明のクレンジング料であれば、1つのクレンジング料で、タイプの異なるメイクアップ化粧料全てを落とすことができる。このようなクレンジング効果は、従来技術のクレンジング料では考えられなかったものであり、それを達成した本願発明は画期的である。
また、本発明のクレンジング料は、抗菌性多価アルコールを配合しているにもかかわらず、透明な外観で安定しており、また目や肌に低刺激であるため、安全性が高い。
【0044】
《実施例19〜27・比較例14〜15》
本発明の(E)成分である水の最適な配合量について詳細に検討を行った。実施例19〜27、比較例14〜15(表3)の組成に基づいて比較検討を行った試験とその結果を示し詳細に説明する
【0045】
1.クレンジング料の調製
実施例19〜27、比較例14〜15(表3)の組成のクレンジング料を常法により調製した。
【0046】
2.評価試験方法
実施例1〜18・比較例1〜13のクレンジング料で行った試験と同じ試験法により各クレンジング料を評価した。
試験項目は、「<外観観察(透明性)>、(a)調製直後の外観、(b)安定性試験後の外観(安定性)」、「<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>」、「<洗い流しやすさ(官能評価)>」、「<クレンジング力評価(官能評価によるメイク汚れの落としやすさの評価)>」について実施した。
【0047】
3.評価結果
下記表3の下段に評価結果を示す。
【0048】
【表3】
【0049】
実施例19〜27は、(A)成分を7〜9.6質量%、(B)成分を6.4〜9質量%、(C)成分を23.4〜44質量%、(D)成分を8〜25質量%、(E)成分を15〜44.99質量%、(F)成分を5〜8質量%含有する透明クレンジング料の組成である。
一方、比較例14は(A)成分9.6質量%、(B)成分6.4質量%、(C)成分44質量%、(D)成分25質量%、(F)成分5質量%、(E)成分を10質量%含有する。また、比較例15は(A)成分9.6質量%、(B)成分6.4質量%、(C)成分20質量%、(D)成分9質量%、(F)成分5質量%、(E)成分を50質量%含有する。
【0050】
<外観観察(透明性)>
(a)調製直後の外観
実施例19〜27のクレンジング料は、すべて外観透明であった。また比較例14のクレンジング料も透明であった。一方比較例15は、調製直後外観が白濁し不透明となった。実施例19〜27、比較例14の試料に対し、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管する安定性試験をおこなった。
【0051】
(b)安定性試験後の外観(安定性)
実施例19〜27のクレンジング料、比較例14のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管した後1ヶ月後に取り出し透明性を評価したところすべて透明性を保っていた。
【0052】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>
実施例19〜27のクレンジング料、比較例14のクレンジング料について測定した乳化粒子径の体積基準平均径を表3に示した。測定した実施例9例中の2例(実施例21、25)が、「乳化粒子径が100nm以下であると一層素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価であった。また残りの実施例7例(実施例19、20、22、23、24、26、27)と比較例14も「乳化粒子径が101〜300nmであると素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価となる乳化粒子の体積基準平均径を示した。
【0053】
<洗い流しやすさ(官能評価)>
官能評価員の評価結果を表3に示す。
実施例19〜27のすべてのクレンジング料及び比較例14が「○評価:肌に油性感が残らず洗い流し易い」の評価であった。洗い流しやすさ(官能評価)の結果は、体積基準平均径の測定結果の判定と一致した。
【0054】
<クレンジング力評価(官能評価によるメイク汚れの落としやすさの評価)>
口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラの落としやすさ評価結果を表3に示す。
実施例19〜27のクレンジング料すべてが「○」評価であり、ほぼきれいにメイク汚れを落とすことが確認できた。しかし比較例14のクレンジング料はフィルムタイプのマスカラの汚れを落とすことができず、この試験は「×」評価であった。
【0055】
以上の試験結果から次のように結論付けることができた。
すなわち、比較例14のクレンジング料がフィルムタイプマスカラを落とすことができないことから、フィルムタイプのマスカラ汚れを落とすためには、(E)成分である水の含有量は、10質量%を超える必要があることが分かった。
また比較例15が調製直後に白濁することから、クレンジング料が白濁などを生じさせないためには、(E)成分である水の含有量は、50質量%未満でなければならないものと考えられた。
一方、実施例19〜27が、調製直後透明で保存試験後も透明であること、官能評価での洗い流しやすさ及び官能評価による洗浄効果が「〇」評価であることから、(E)成分の水の含有量が15〜44.99質量%の範囲であるための効果であるものと考えられた。
【0056】
《ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラに対する洗浄力の定量評価試験》
実施例21〜27、比較例14の組成のクレンジング料の、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラに対する洗浄力を正確に測定するため、定量的な洗浄力測定を行った(結果は
図1、
図2参照)。
<試験方法>
本試験においては、色差によりメイクアップ化粧料の洗浄率を求め、クレンジング力を評価した。
(メイクアップ化粧料の洗浄率の計算式)
色彩色差計(装置名:CM−2600d、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、メイクアップ化粧料(以下「メイク」と略記)を塗布する前の白色人工皮革の色彩値1、メイクアップ化粧料を塗布した後の試験検体の色彩値2、および試験サンプルによりクレンジングした後の試験検体の色彩値3を測定し、この測定値から色差(ΔEa;塗布前後の色差、ΔEb;クレンジング前後の色差)を求め、さらに下記計算式によりメイク洗浄率(%)を求めた。
なお、ΔE=(ΔL
2+Δa
2+Δb
2)
1/2である。
メイク洗浄率(%)=ΔEb/ΔEa×100
メイク洗浄率(%)の数値が高いほどクレンジング力が高いと判定できる。
具体的には、下記のとおり行った。
【0057】
<クレンジング力評価方法>
(1)あらかじめ色彩値1を測定済みの3cm×6cmの白色人工皮革の直径1cm枠内に、ウォータープルーフタイプアイライナー又はフィルムタイプマスカラ0.005gを塗布し30分乾燥させた。これを試験検体とした。
ウォータープルーフタイプアイライナーとして、メイベリンニューヨーク マスターライナー クリーミィペンシルBK−1を用いた。またフィルムタイプマスカラとして、アテニア パーフェクトマスカラr21を用いた。
(2)作製した試験検体の色彩値2を色彩色差計(装置名:CM−2600d、コニカミ
ノルタ株式会社製)を用いて測定した。
(3)上記(1)で作製した試験検体に、試験サンプル0.1mlを滴下し、指で1秒間
に1回の速度で20回擦った。
(4)試験検体を水で十分に洗い流し、乾燥させた。
(5)乾燥後の試験検体の色彩値3を、色彩色差計を用いて測定した。
(6)前記メイク洗浄率の計算式に従って、ウォータープルーフタイプアイライナー又はフィルムタイプマスカラ洗浄率(%)を求めた。
【0058】
・クレンジング力の測定試験結果
ウォータープルーフタイプアイライナー又はフィルムタイプマスカラに対するクレンジング力の試験結果を
図1及び
図2に示す。
図1に示す通り、ウォータープルーフタイプアイライナーに対して、実施例21〜27、比較例14のクレンジング料は、いずれも80%以上の高いクレンジング性能を有していた。
一方、フィルムを形成するフィルムタイプマスカラに対しては、実施例と比較例とでクレンジング力に大きく違いが認められた。すなわち、
図2に示すように実施例21〜27はフィルムを形成するフィルムタイプマスカラに対しても、80%以上の洗浄効果を発揮し、強いクレンジング効果を示した。比較例14は、フィルムタイプマスカラに対して、洗浄力が極めて低く10%以下の洗浄力しか示さなかった。この試験結果は、官能試験結果に良く一致していた。
【0059】
以上の通り、実施例21〜27、比較例14を用いた試験から本発明のクレンジング料において、フィルムタイプマスカラを洗浄するためには、(E)成分の水の含有量が、クレンジング料全量に対して10質量%を超える必要があることが明らかとなった。また保存による透明安定性を保つためには(E)成分の水の最適含有量が13〜47質量%、より好ましくは15〜45質量%の範囲にあると判断できた。
【0060】
《(F)成分の最大含有量の検討(比較例16〜31による検討)》
本発明の(F)成分である抗菌性多価アルコールの最大含有量を確認するため比較例16〜31(表4)の組成に基づいて検討を行った。試験結果を示し説明する。
【0061】
1.クレンジング料の調製
比較例16〜31(表4の組成)のクレンジング料を常法により調製した。
【0062】
比較例16〜29は、(A)〜(E)成分の含有量が、本発明のクレンジング料に適した含量の範囲になるように調整し、(F)成分の抗菌性多価アルコールの含有量を、10〜30質量%に調整した組成である。なお抗菌性多価アルコールの含有量を高めるにあたって、(C)成分のエチルヘキサン酸セチル及び(D)成分のグリセリン、(E)成分の水の含有量を許容される範囲で適宜増減させて調製した。
また、比較例30、31は、(A)〜(D)成分の含有量が、本発明のクレンジング料の組成に基づく適切な含有量としたが、(E)成分の水の含有量を10質量%と減量し、(F)成分のBG又はDPGを30質量%に増量した組成になるように調整している。このようにして抗菌性多価アルコールの含有量を変化させた。
【0063】
2.評価試験方法
各試験試料について、前記した実施例1〜18・比較例1〜13のクレンジング料の評価試験と同じ試験手法により評価した。
なお評価試験項目は、「<外観観察(透明性)>、(a)調製直後の外観、(b)安定性試験後の外観(安定性)」、「<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>」について実施した。
【0064】
3.評価結果
下記表4の下段に評価結果を示す。
【0065】
【表4】
【0066】
<外観観察(透明性)>
(a)調製直後の外観
比較例19の組成のクレンジング料のみが、透明なクレンジング料となった。一方、比較例16〜18、比較例20〜31の組成のクレンジング料は、調製直後の外観が白濁し不透明となった。このため比較例19以外は、不合格と判定し、透明な外観を持つ比較例19の試料のみを、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管する安定性試験をおこなった。
【0067】
(b)安定性試験後の外観(安定性)
安定性試験に付した比較例19のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管した後1ヶ月後に取り出し透明性を評価した。5℃、25℃の温度では透明性を保っていたが、40℃、50℃の温度条件では分離が発生した。このため比較例19は、目的とする安定性をクリアできず、不合格と判定した。
【0068】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>
調製直後透明な比較例19のクレンジング料についてのみ測定した。希釈液の乳化粒子径の体積基準平均径は、表4に示す通り51.2nmであった。
【0069】
以上、比較例16〜31の組成のクレンジング料を調製し、(F)成分である抗菌性多価アルコールの最大含有量の限界を確認するため試験を行った。しかし、(F)成分である抗菌性多価アルコールを10質量%以上含有させることは、困難であった。すなわち本発明の目的である、透明で保存安定性の高いクレンジング料を調製するためには、(F)成分である抗菌性多価アルコールを10質量%以上含有させることは、好ましくないものと判断した。