特許第6792738号(P6792738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6792738-透明クレンジング料 図000006
  • 特許6792738-透明クレンジング料 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6792738
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】透明クレンジング料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20201116BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20201116BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20201116BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20201116BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20201116BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/39
   A61K8/34
   A61K8/02
   A61Q1/14
   A61Q19/10
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-101037(P2020-101037)
(22)【出願日】2020年6月10日
【審査請求日】2020年6月16日
(31)【優先権主張番号】特願2019-149647(P2019-149647)
(32)【優先日】2019年8月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】三譯 秀樹
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−037779(JP,A)
【文献】 特開2000−026238(JP,A)
【文献】 特開2015−231966(JP,A)
【文献】 特開2004−035420(JP,A)
【文献】 特開2010−100587(JP,A)
【文献】 Fancl, Japan,Cleansing Cream,Mintel GNPD,2016年11月,ID#4423183,URL,URL:https://WWW.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)〜(F)を含有する透明クレンジング料。
(A)炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステル
(B)カプリル酸トリグリセリル、ジカプリル酸ペンタグリセリル、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル、カプリン酸トリグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルおよびジカプリン酸ヘキサグリセリルから選ばれる1以上の成分
(C)油剤
(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10から選ばれる1以上の成分
(E)水を13〜47質量%
(F)1,3−ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,2−ペンタンジオール(ペンチレングリコール)から選ばれる1以上の成分を含む抗菌性多価アルコールを〜9.4質量%
【請求項2】
(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10から選ばれる1以上の成分と、(F)1,3−ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,2−ペンタンジオール(ペンチレングリコール)から選ばれる1以上の成分を含む抗菌性多価アルコールを、合計量で7.1〜40.1質量%含有する請求項1に記載の透明クレンジング料。
【請求項3】
次の(A)〜(F)を含有する透明クレンジング料。
(A)炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステルを3〜15質量%
(B)カプリル酸トリグリセリル、ジカプリル酸ペンタグリセリル、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル、カプリン酸トリグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルおよびジカプリン酸ヘキサグリセリルから選ばれる1以上の成分を3〜15質量%
(C)油剤を18〜50質量%
(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10から選ばれる1以上の成分を7〜35質量%
(E)水を13〜47質量%
(F)1,3−ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,2−ペンタンジオール(ペンチレングリコール)から選ばれる1以上の成分を含む抗菌性多価アルコールを〜9.4質量%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、透明クレンジング料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の皮脂汚れや油性のメイクアップ化粧料を落とす目的で、界面活性剤を配合し、界面活性剤の作用でメイク汚れを落とす水性クレンジング料(ウォータータイプのクレンジング料)や、主として油剤等の油性成分を含有し、油性成分の溶解作用で油性メイクアップ化粧料や油性汚れを落とす油性クレンジング料(オイルタイプのクレンジング料)、水と油が乳化して白濁した乳化(多相)タイプのクレンジング料が上市されている。
【0003】
油性クレンジング料は、一般的にリップカラーやファンデーション等の油性メイクアップ化粧料に対するクレンジング性能に優れる反面、フィルムを形成するタイプのマスカラなどを落とす性能は、水性クレンジング料に劣る傾向にあった。また、油性クレンジング料は、すすぎ流しに時間がかかり、油性成分に含まれているオイル分が肌に残ることによるヌルヌル感が嫌われることがあった。
一方、水性クレンジング料は、すすぎ流し性能に優れる反面、ウォータープルーフタイプ等の耐久性(化粧持ち効果)に優れた油性メイクアップ化粧料に対するクレンジング力が劣る点が指摘されている。
さらにまた、水と油が乳化して白濁した乳化(多相)タイプのクレンジング料は、将来的には分離する恐れがあるし、水中油乳化型は、乳化しているためクレンジング性能が低く、油中水乳化型では洗い流し性能が低いことが知られている。
【0004】
本願発明者は、A成分:炭素数14以上22以下の分岐脂肪酸とポリグリセリンとのジエステル、炭素数14以上22以下の不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのジエステルのいずれか、または両方、 B成分:炭素数6以上10以下の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであって、ポリグリセリンの重合度と脂肪酸の結合数の比(=ポリグリセリンの重合度/脂肪酸の結合数)が2.0以上4.0以下のもの、C成分:二価アルコールと分岐脂肪酸のジエステル油、グリセリンと分岐脂肪酸のトリエステル油及びジカルボン酸と分岐脂肪族アルコールのジエステル油からなる群から選ばれる1種または2種以上、D成分:親水性化合物を含有するクレンジングオイルの発明をなした(特許文献1)。このクレンジングオイルは、水が混入した状態でも高い洗浄力を発揮し、クレンジング後の洗い流し性に優れ、油のぬるつきが残りにくい優れたクレンジングオイルである。しかしながら、オイルタイプの油性クレンジング料であるため、フィルムを形成するタイプのメイクアップ化粧料(フィルムタイプマスカラなど)に対するクレンジング力が劣る傾向にあった。
【0005】
透明なクレンジング料は、外観が美しく好まれている。技術的には、油と水を共存させたクレンジング料において、透明であることは、均一な一相状態で安定であることを意味している。乳化していないので、乳化タイプのクレンジング料と比較して、クレンジング性能が高くなることが期待されてきた。
このような中、油と水を共存させた、透明なクレンジング料が、各社から提案されている。
透明な油と水を共存させたクレンジング料としては、例えば、特許文献2、特許文献3に、水が15質量%以下で油の占める割合が高いクレンジング料が開示されている。クレンジング性能としては、油性クレンジング料に近い特徴を持ち、油性メイクアップ化粧料に対するクレンジング性能が高い反面、洗い流し易さは十分ではない。
【0006】
特許文献4、特許文献5には、油剤の配合量が10質量%以下で、水が占める割合が高い透明クレンジング料が開示されている。クレンジング性能としては水性クレンジングに近い特徴を持ち、洗い流し易さに優れる反面、クレンジング効果が十分ではない。
【0007】
特許文献6〜9は、ノニオン性界面活性剤が高配合されるか、又は界面活性助剤として炭素数2〜5の一価アルコール、ブチレングリコールやジプロピレングリコール等の二価アルコール、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、あるいはこれらの化合物誘導体が比較的高配合された透明クレンジング料が開示されている。これらの成分を高配合したクレンジング料は、クレンジング力が高まり、また洗い流し易くなる傾向にあるが、その反面、肌への刺激や乾燥、使用時の眼刺激の懸念があり、さらに皮膚が脱脂されすぎて、洗浄後の保湿実感を損なうという問題がある。
さらに、クレンジング料を均一透明にするためには、水、油のバランス、界面活性剤の選定に加えて、多価アルコールを配合する場合には、その選定と配合量の検討も重要であった。つまり、すべての多価アルコールが配合できる訳ではないため、処方設計者は、透明安定な処方を設計するために多くの労力が必要であった。そして依然として透明性、安定性、クレンジング力、安全性のすべてを満足するものは得られていない。
【0008】
また、水を含むクレンジング料では、組成物の防腐対策が必要である。しかし、近年、化粧料に広く配合されているパラベン等のいわゆる防腐剤の配合は、皮膚刺激を生じることがあるとして消費者に受け入れられなくなりつつある。このためパラベンを含有しない、皮膚や目に安全なクレンジング料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6234533号公報
【特許文献2】特許第4373103号公報
【特許文献3】特許第5410650号公報
【特許文献4】特許第6006152号公報
【特許文献5】特許第6274998号公報
【特許文献6】特許第4658976号公報
【特許文献7】特許第5468314号公報
【特許文献8】特許第6247849号公報
【特許文献9】特許第6294642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
クレンジング料の洗浄効果と、水洗後のクレンジング料に含まれる油の、肌への残留感を低下させるためには、油と水を共存させたタイプのクレンジング料が有効である。しかし、従来技術に述べたような問題に加えて、水と油の両方を含有させると、クレンジング料は、顕著な白濁や分離が生じ、化粧料としての美観や性能が損なわれることが多かった。また、常温で透明なものが得られたとしても、高温や低温の状態に1ヶ月程度保管すると白濁や分離が生じることがあった。
さらにまた、多種多様なタイプのメイクアップ化粧料が上市される中、消費者の選択も多岐に渡り、1つのクレンジング料では十分な化粧落としができなくなってきた。
本願発明は、このような現状に鑑みて、水と油を含有し、パラベンを含有せずに高い防腐性を示し、皮膚や目に安全なクレンジング料であって、広い温度領域で透明かつ安定であり、さらに油性や水性の多種類の異なるタイプのメイクアップ化粧料(例えば、リップカラー、ウォータープルーフタイプマスカラ、フィルムタイプマスカラ)のすべてに対して洗浄力が高く、洗浄後の油成分の残留感が少なく、水で洗い流しやすい、透明なクレンジング料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)次の(A)〜(F)を含有する透明クレンジング料。
(A)炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステル
(B)カプリル酸トリグリセリル、ジカプリル酸ペンタグリセリル、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル、カプリン酸トリグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルおよびジカプリン酸ヘキサグリセリルから選ばれる1以上の成分
(C)油剤
(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10から選ばれる1以上の成分
(E)水を13〜47質量%
(F)抗菌性多価アルコールを0.1〜9.4質量%
(2)(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10から選ばれる1以上の成分と、(F)抗菌性多価アルコールを、合計量で7.1〜40.1質量%含有する(1)に記載の透明クレンジング料。
(3)次の(A)〜(F)を含有する透明クレンジング料。
(A)炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステルを3〜15質量%
(B)カプリル酸トリグリセリル、ジカプリル酸ペンタグリセリル、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル、カプリン酸トリグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルおよびジカプリン酸ヘキサグリセリルから選ばれる1以上の成分を3〜15質量%
(C)油剤を18〜50質量%
(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10から選ばれる1以上の成分を7〜35質量%
(E)水を13〜47質量%
(F)抗菌性多価アルコールを0.1〜9.4質量%
(4)(F)抗菌性多価アルコールが、1,3−ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,2−ペンタンジオール(ペンチレングリコール)から選ばれる1以上の成分である(1)〜(3)のいずれかに記載の透明クレンジング料。
【発明の効果】
【0012】
本願発明により、水と油の両方を含有し、パラベンを含有せず、皮膚や目に低刺激で安全な、透明クレンジング料を得ることができる。本願発明のクレンジング料は、抗菌性多価アルコールを含有するにもかかわらず、5℃〜50℃の幅広い温度帯で分離や白濁が生じずに安定であり、透明・均一である。また、本発明のクレンジング料は、油性タイプのメイクアップ化粧料(例えばリップカラー)、ウォータープルーフタイプのメイクアップ化粧料(例えばウォータープルーフタイプアイライナー)、フィルムタイプのメイクアップ化粧料(例えばフィルムタイプマスカラ)といった異なるタイプのメイクアップ化粧料のいずれに対しても、高いクレンジング力を有している。本発明のクレンジング料のクレンジング力は、消費者の使用場面(水の混入のある、なし)を選ばず、どのような使用場面であっても高いクレンジング力を発揮するため、従来のクレンジング料よりも格段に優れたクレンジング力を発揮する。さらに本発明のクレンジング料は、油分を肌に残さずに水ですっきりと洗い落とすことができる。
そして、本発明のクレンジング料は、細菌が混入しても腐敗しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例21〜27、比較例14の組成で調製したクレンジング料のウォータープルーフタイプアイライナーに対するクレンジング試験結果(洗浄率)を示すグラフである。
図2】実施例21〜27、比較例14の組成で調製したクレンジング料のフィルムタイプマスカラに対するクレンジング試験結果(洗浄率)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の透明なクレンジング料に含有される成分について以下に説明する。
【0015】
(A)成分:炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステル
本願発明のクレンジング料は、(A)成分として炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのジエステルを含有する。(A)成分である炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は炭素数14〜22の不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンのジエステルとしては、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10、ジオレイン酸ポリグリセリル−10等が挙げられる。
(A)成分の炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は炭素数14〜22の不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステルの含有量は、クレンジング料全量に対し1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、3〜15質量%がさらに好ましく、3〜12質量%がより一層好ましい。
ジエステルを構成するポリグリセリンは、平均重合度が5〜15を示すものが好ましい。
【0016】
本発明の(B)成分は、カプリル酸トリグリセリル、ジカプリル酸ペンタグリセリル、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル、カプリン酸トリグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルおよびジカプリン酸ヘキサグリセリルから選ばれる1以上の成分である。(B)成分は、ポリグリセリンと脂肪酸のエステルであって、構成するポリグリセリンの重合度とエステル結合する脂肪酸の結合残基数の比(ポリグリセリン重合度/脂肪酸の結合残基数)が2.5〜3.5を示す。(B)成分としては、カプリル酸トリグリセリル(ポリグリセリン重合度と脂肪酸の結合残基数の比が3.0)、ジカプリル酸ペンタグリセリル(同2.5)、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル(同3.3)、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル(同3.3)、カプリン酸トリグリセリル(同3.0)、ジカプリル酸ヘキサグリセリル(同3.0)、ジカプリン酸ヘキサグリセリル(同3.0)を例示できる。
これらの成分のうち、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル(表示名称;ヘキサカプリル酸ポリグリセリル−20)又はジカプリン酸ヘキサグリセリル(表示名称;ジカプリン酸ポリグリセリル−6)がより好ましく、洗い流し性能を重要視すると、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリルがより好ましい。
(B)成分の含有量は、クレンジング料全量に対して0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、3〜15質量%がさらに好ましく、6〜12質量%がより一層好ましい。
【0017】
本願発明のクレンジング料においては、 (A)成分と(B)成分の含有量の合計は、クレンジング料全量当たり6〜30質量%が好ましく、8〜20質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。
【0018】
(C)成分:油剤
本願発明のクレンジング料にあっては、(C)成分として油剤を含有する。本願発明のクレンジング料において含有する(C)成分の油剤としては、以下のようなものが例示できる。
天然動植物油脂類及び半合成油脂、炭化水素油、エステル油、グリセライド油、シリコーン油、脂溶性ビタミン、高級脂肪酸、動植物や合成の精油成分等。
天然動植物油脂類及び半合成油脂としては、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油(オリーブ果実油)、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、月見草油、トウモロコシ油、菜種油、馬脂、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、メドゥフォーム油、ラノリン等。
炭化水素油としては、ミネラルオイル、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、ワセリン等。
エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、ジカプリリルエーテル、ジイソノナン酸BG、コハク酸ジエチルヘキシル等。
グリセライド油としては、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリテトラデカン酸グリセリル、ジパラメトキシケイ皮酸モノイソオクチル酸グリセリル等。
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン等。
脂溶性ビタミンとしてはトコフェロール等、精油としてはオレンジ果皮油、ローズマリー葉油等。
これらの例示した中でも、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、ジカプリリルエーテル、ジイソノナン酸BG、コハク酸ジエチルヘキシル、ミネラルオイル、アボカド油、メドゥフォーム油、オリーブ果実油、トコフェロール、オレンジ果皮油、ローズマリー葉油が好ましい。なかでもエチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、ジカプリリルエーテル、ジイソノナン酸BG、コハク酸ジエチルヘキシル、ミネラルオイルを油剤として含有することが特に好ましい。
(C)成分の油剤は、単独でもよいが、2以上を組み合わせて含有させることができる。本願発明のクレンジング料は、(C)成分をクレンジング料全量に対して、好ましくは18〜50質量%、さらに好ましくは20〜50質量%、より一層好ましくは25〜50質量%含有する。
【0019】
(D)成分:グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10
本願発明のクレンジング料には、(D)成分としてグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10から選ばれる1以上の成分を含有する。これらの成分は、クレンジング料中で界面活性助剤として作用して、水と油の溶解性を上げてクレンジング料の透明性と安定性に寄与する。
本願発明のクレンジング料は、(D)成分をクレンジング料全量に対し7〜35質量%、好ましくは7〜30質量%、より好ましくは8〜25質量%含有する。この範囲を外れると、透明で温度安定なクレンジング料が得られなくなる恐れがある。
【0020】
(E)成分:水
本願発明のクレンジング料は、洗浄効果と洗い流しの効果を得るために(E)成分として水をクレンジング料全量に対して13〜47質量%含有する。水の含有量が13質量%未満の場合はフィルムタイプのメイクアップ化粧料(例えばフィルムタイプマスカラ)が落としにくくなる恐れがある。水の含有量が47質量%を超えると、ウォータープルーフタイプのメイクアップ化粧料(例えばウォータープルーフタイプアイライナー)等の耐久性(化粧持ち効果)に優れたメイクアップ化粧料に対するクレンジング力が低下する恐れがある。本発明においては、(E)成分の水をクレンジング料全量に対し13〜47質量%の範囲とすると、タイプの異なるメイクアップ化粧料(例えばリップライナー、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラ)のいずれも落とすことができるようになる。
本発明において、(E)成分の水の含有量は、好ましくは13〜47質量%、より好ましくは15〜45質量%である。
【0021】
(F)成分:抗菌性多価アルコール
本願発明のクレンジング料は、(F)成分として抗菌性多価アルコールを含有する。高いクレンジング力と、洗い流し易さを有する透明クレンジング料は、本発明の(A)〜(E)成分を含有する。しかしながら、(E)成分の水を必須成分として含有する場合、細菌汚染により腐敗する場合がある。本発明は、クレンジング料に抗菌性を付与することが、品質設計上、重要である。
(A)〜(E)成分を含有するクレンジング料に、パラベン等を配合することもできる。しかしパラベンを水に溶解させるためには加熱溶解させることになるが、保存状況によって、加熱溶解したパラベン結晶の析出の恐れがある。さらに、クレンジング料はその使用に際し、肌を擦る動作があるので、肌を傷つける恐れのあるパラベンのような固形物の析出は品質を著しく低下させる。さらにまたパラベン等の防腐剤は、目や皮膚への安全性が懸念される成分である。このため本発明のクレンジング料には、安全性が高く、結晶析出のない(F)抗菌性多価アルコールを1以上含有させる。
(F)成分の抗菌性多価アルコールとしては、1,3−ブチレングリコール(以下BG)、ジプロピレングリコール(以下DPG)、1,2−ペンタンジオール(以下ペンチレングリコール)から選ばれる1以上を配合することが好ましい。
(F)成分の抗菌性多価アルコールであるBG、DPG、ペンチレングリコールは、クレンジング料全量に対し合計量で0.1〜9.4質量%、より好ましくは0.1〜9質量%、特に好ましくは5〜9質量%含有する。BG、DPG、ペンチレングリコール以外の抗菌性多価アルコールを配合する場合は、その成分を含めた抗菌性多価アルコールの合計量を0.2〜9.4質量%含有することが好ましく、0.2〜9質量%含有することがより好ましく、5〜9質量%が特に好ましい。
本発明の透明クレンジング料において、(F)成分としてBG、ペンチレングリコール、DPGから選ばれる1以上を含有するとき、(D)成分との含有比率が重要である。前述したとおり、(D)成分は、本発明のクレンジング料中で界面活性助剤として作用し、水と油の溶解性を上げてクレンジング料の透明性と温度安定性に貢献する。一方、(F)成分であるBG、ペンチレングリコールおよびDPGは、(D)成分の示す油剤の溶剤としての機能を代替できず、逆にクレンジング料の白濁や分離を起こす可能性があるため、慎重に含有量を定める必要がある。
(F)成分を、(D)成分と同量以上含有することは好ましくない。
(D)成分と(F)成分は、両成分を質量比で、好ましくは(D):(F)=10:9.4〜100:1、より好ましくは10:9〜100:1、より一層好ましくは10:8〜100:1、特に好ましくは10:7〜100:1となるように含有する。
このように(F)成分を含有させると、(D)成分の含有効果、すなわち水と油を安定に共存させ、透明で温度安定性に優れ、かつ高いクレンジング効果を有した透明クレンジング料となるとともに、組成物に適切な抗菌作用を付与できる。この範囲を外れると、(F)成分により組成物が不安定化し、白濁や分離が生じる恐れが高まる。
【0022】
(任意成分の配合について)
また、本願発明の透明クレンジング料には、化粧料に常用される各種原料を本願発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、香料、着色剤(例えばシアノコバラミン、(クロロフィリン/銅)複合体)、美容成分(例えばローズマリーエキス)等を配合することができる。
【0023】
本願発明の透明クレンジング料は、使用性や使用感を考慮して様々な剤型に設計される。具体的には液状又はジェル状である。
【実施例】
【0024】
《実施例1〜18、比較例1〜13》
以下に本願発明のクレンジング料の実施例1〜18の組成(表1)、比較例1〜13の組成(表2)を示し、この組成のクレンジング料の試験例によって本願発明の特徴と効果をさらに詳細に説明する。
1.クレンジング料の調製
実施例1〜18(表1)、比較例1〜13(表2)の組成のクレンジング料を常法により調製した。
【0025】
2.評価試験方法
次の手法により、実施例および比較例の各クレンジング料を評価した。
<外観観察(透明性)>
(a)調製直後の外観
調製したクレンジング料を直径30mmのスクリューキャップ付透明ガラス瓶(サンプル瓶)に充填し、調製直後と保存期間経過後に、室温(RT、25℃)で、この容器を横から見通して、透明性を目視評価した。
(透明性評価基準)
透明:容器を横から見通して10ポイントの文字が読める
白濁:容器を横から見通して10ポイントの文字が読めない
分離:分離している
【0026】
(b)安定性試験後の外観(安定性)
調製直後の外観状態が透明であった試験試料の入ったサンプル瓶については、安定性試験として5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に1ヶ月間保管した。1ヶ月保管後に、再度上記の透明性基準で外観を目視観察した。
なお調製直後の外観状態が分離していたサンプルについては、安定性試験を実施せず、下記の表1、表2の評価欄に「−」と記載した。
【0027】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>
試験に用いたクレンジング料を0.1%になるように水で希釈し、O/W型乳化組成物を調製した。この乳化組成物中の乳化粒子径をELSZ−1000(大塚電子株式会社製)を用いて動的光散乱法により乳化粒子の粒度分布を測定し、体積基準平均径の測定を行った。この乳化粒子径(体積基準平均径)を洗い流し性の評価指標とした。
なお、クレンジング料希釈液の体積基準平均径と油性分の洗い流しやすさの関係は、あらかじめ予備試験を行い、次のような結果を得ている。
(1)乳化粒子径が300nmを超えると肌に油性感が残る
(2)乳化粒子径が101〜300nmであると素早くすっきりと洗い流すことができる
(3)乳化粒子径が100nm以下であると一層素早くすっきりと洗い流すことができる
なお表中、「−」は、クレンジング料の希釈液の体積基準平均径を測定していない場合を示す。
【0028】
<洗い流しやすさ(官能評価)>
訓練された官能評価員1名が、上腕内側部に本発明のクレンジング料を使用した後の水による洗い流しやすさを評価した。
(評価基準)
○:肌に油性感が残らず洗い流し易い
×:洗い流した後に肌に油性感が残る
【0029】
<クレンジング力評価(官能試験によるメイク汚れの落としやすさの評価)>
口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラの落としやすさ試験を行った。
訓練された官能評価員が、実際に各化粧料を使用して評価した。すなわち官能評価員が洗浄対象の化粧料を使って化粧を行い、1時間後に室内で、評価対象のクレンジング料と手指を使って化粧落としを行った。その後水で洗い流した後、タオルで軽く水滴をふきとり、メイク汚れの落ち具合を目視で観察した。
なお、使用した化粧料は次の通りである。
口紅(リップカラー):モイスチャールージュP#84ビロードレッド
(株式会社ファンケル製)
ウォータープルーフタイプアイライナー:マスターライナー
クリーミィペンシルBK−1
(メイベリンニューヨーク製)
フィルムタイプマスカラ:パーフェクトマスカラr21
(株式会社アテニア製)
(評価基準)
○:メイク汚れがほぼきれいに落ちている
△:メイク汚れがわずかに残っている
×:メイク汚れが明らかに残っている
【0030】
<保存効力試験>
日本薬局方に定める保存効力試験法に基づき、Escherichia coli(大腸菌)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)を用いた保存試験を実施し、抗菌効果を評価した(試験法は日本薬局方に従った)。いずれの菌に対しても保存効力試験で問題がなかった。表には「減少」と表記した。なお保存効力試験で問題と判定する「増加」は1例もなかった。
【0031】
<モニター試験>
20名の女性モニターにより、自宅にてモニター試験(ホームユーステスト)を行った。各モニターには、試験品と同時に配布した化粧品(口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラ、いずれも前記官能試験と同じもの)を用いて朝、化粧をしてもらい、夜に化粧落としをするときに試験品を使用するよう指示した。試験品の使用量、使用回数は特に制限しなかった。評価は自由記述方式で行った。眼刺激性については、眼刺激性が「ある」、「なし」のいずれかを選択させた。モニター試験で「ある」と答えた例は1例もなかった。表には、眼刺激性の項で「なし」と表記した。
【0032】
3.評価結果
下記表1、表2の下段に実施例1〜18、比較例1〜13の評価結果を示す。なお比較例は、試験を実施した「(a)調製直後の外観」、「(b)安定性試験後の外観(安定性)」、「洗い流し性能」について記載した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
実施例1〜18は(A)成分を5〜9.6質量%の範囲で含有し、(B)成分を6.4〜12質量%の範囲で含有し、(C)成分を20〜44質量%の範囲で含有し、(D)成分を10〜20質量%の範囲で含有し、(E)成分を20〜45質量%の範囲で含有し、(F)成分を5〜9質量%の範囲で含有している。
一方、比較例1〜2は(D)成分及び(F)成分を含有せず、比較例3〜7はD成分を含有せず、比較例8〜9、11は(B)成分を含有せず、比較例10、12〜13は(A)成分を含有していない組成である。
【0036】
<外観(透明性)>
(a)調製直後の外観
実施例1〜18のクレンジング料は、すべて外観透明であった。一方比較例1〜13のクレンジング料では、調製直後の外観が透明な試料を得られなかった。このうち比較例1〜3、5の試料は白濁状態であり、この時点で本発明の目的とするクレンジング料ではないと判断できたが、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管する安定性試験を行った。
【0037】
(b)安定性試験後の外観(透明性・分離)
実施例1〜18のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に一月保管後に取り出し透明性を評価したところ、すべてのクレンジング料が透明性を保っていた。一方、比較例1〜3、及び比較例5のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃のいずれの温度領域でも、1ヶ月保管後分離していた。
実施例1〜18の組成と比較例3〜7の組成を対比すると、比較例3〜7の組成は、実施例1〜18における(D)成分の多価アルコールであるグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンに代えて多価アルコールのBG又はDPGを含有させた組成である。しかしこの組成は、調製直後からクレンジング料に白濁又は分離が生じている。すなわち、水と油と界面活性剤のクレンジング料の透明化には、実施例1〜18の組成の通り、多価アルコールである(D)成分のグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンの含有が必須である、ということが明らかとなった。
また、水と油と界面活性剤が存在するクレンジング料において、多価アルコールであってもBG、DPGの含有だけでは、白濁や分離が生じており、組成物の透明化と安定化に寄与しないことがわかった(比較例3〜7の調製直後の外観評価参照)。
さらにまた、比較例1〜7は(A)、(B)、(C)、(E)成分を含有し(D)成分を含有しない組成である。このうち比較例1、2はBG又はDPGを含有しない組成である。一方比較例3〜7組成はBG又はDPGを含有する組成である。この組成の調製直後の外観評価結果を対比すると、比較例1、2、3、5は白濁にとどまるが、比較例4、6、7は調製直後から分離している。
一方、実施例1〜18はBG又はDPGを含有しているにもかかわらず、調製直後の透明性と保存安定性試験において、白濁も分離も生じていない。すなわち、透明性と保存安定性に優れていることが明らかとなった。実施例においては、(D)成分と(F)成分は、両成分の質量比が(D):(F)=10:9〜20:5の範囲にあった。
【0038】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定>
実施例1〜14、および18のクレンジング料について測定した希釈液乳化粒子径の体積基準平均径を表1に示した。最小値は66.7nm(実施例9)、最大値は244.2nm(実施例12)であった。測定した15例中半数の8例(実施例2、3、4、5、9、10、11、18)が、「乳化粒子径が100nm以下であると一層素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価であった。また残りの7例(実施例1、6、7、8、12、13、14)も「乳化粒子径が101〜300nmであると素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価となった。
【0039】
<洗い流しやすさ(官能評価)>
官能評価員の評価結果を表1に示す。
実施例1〜18のすべてのクレンジング料が「○評価:肌に油性感が残らず洗い流し易い」の評価であった。洗い流しやすさ(官能評価)の結果は、体積基準平均径の測定結果の判定と一致した。
【0040】
<クレンジング力評価(官能評価によるメイク汚れの落としやすさの評価)>
口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラの落としやすさ評価結果を表1に示す。
実施例1〜18のクレンジング料すべてが「○」評価であり、「メイク汚れがほぼきれいに落ちている」の評価となることが確認できた。
【0041】
<保存効力試験>
日本薬局方の基準に基づく試験により、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌のいずれの菌種においても「減少」であり、問題なしと判定された。
【0042】
<モニター試験>
実施例9、実施例10、実施例13、実施例14のクレンジング料を、20名の女性モニターに渡して、自宅にてモニター試験(ホームユーステスト)を行ったところ、クレンジング力に対して全く不満はみられず、意見欄にはフィルムタイプマスカラ、ウォータープルーフタイプアイライナー、ファンデーション、口紅のいずれも良く落ちた、と非常に高い評価であった。また皮膚や目に対する刺激を感じたとの報告は一例もなかった。
【0043】
市場には様々なタイプのメイクアップ化粧料があり、その選択は消費者の嗜好に任されている。本発明の透明クレンジング料は、水があらかじめ安定に配合されていることから、消費者がどのようなタイプのメイクアップ化粧料を選択して使用していても、また消費者がどのような使用場面(水の混入の恐れの高い風呂場/水の混入する恐れのない室内)でクレンジング行為(化粧落とし)を行っても、常に安定して優れたクレンジング効果を得ることができる。特に従来技術では、落としにくいアイメイクに対しては、それを落とす専用のクレンジング料で化粧を落とし、顔全体は別のクレンジング料で化粧落としをするなど煩雑な化粧行動をとらざるをえなかった。しかしながら、本発明のクレンジング料であれば、1つのクレンジング料で、タイプの異なるメイクアップ化粧料全てを落とすことができる。このようなクレンジング効果は、従来技術のクレンジング料では考えられなかったものであり、それを達成した本願発明は画期的である。
また、本発明のクレンジング料は、抗菌性多価アルコールを配合しているにもかかわらず、透明な外観で安定しており、また目や肌に低刺激であるため、安全性が高い。
【0044】
《実施例19〜27・比較例14〜15》
本発明の(E)成分である水の最適な配合量について詳細に検討を行った。実施例19〜27、比較例14〜15(表3)の組成に基づいて比較検討を行った試験とその結果を示し詳細に説明する
【0045】
1.クレンジング料の調製
実施例19〜27、比較例14〜15(表3)の組成のクレンジング料を常法により調製した。
【0046】
2.評価試験方法
実施例1〜18・比較例1〜13のクレンジング料で行った試験と同じ試験法により各クレンジング料を評価した。
試験項目は、「<外観観察(透明性)>、(a)調製直後の外観、(b)安定性試験後の外観(安定性)」、「<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>」、「<洗い流しやすさ(官能評価)>」、「<クレンジング力評価(官能評価によるメイク汚れの落としやすさの評価)>」について実施した。
【0047】
3.評価結果
下記表3の下段に評価結果を示す。
【0048】
【表3】
【0049】
実施例19〜27は、(A)成分を7〜9.6質量%、(B)成分を6.4〜9質量%、(C)成分を23.4〜44質量%、(D)成分を8〜25質量%、(E)成分を15〜44.99質量%、(F)成分を5〜8質量%含有する透明クレンジング料の組成である。
一方、比較例14は(A)成分9.6質量%、(B)成分6.4質量%、(C)成分44質量%、(D)成分25質量%、(F)成分5質量%、(E)成分を10質量%含有する。また、比較例15は(A)成分9.6質量%、(B)成分6.4質量%、(C)成分20質量%、(D)成分9質量%、(F)成分5質量%、(E)成分を50質量%含有する。
【0050】
<外観観察(透明性)>
(a)調製直後の外観
実施例19〜27のクレンジング料は、すべて外観透明であった。また比較例14のクレンジング料も透明であった。一方比較例15は、調製直後外観が白濁し不透明となった。実施例19〜27、比較例14の試料に対し、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管する安定性試験をおこなった。
【0051】
(b)安定性試験後の外観(安定性)
実施例19〜27のクレンジング料、比較例14のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管した後1ヶ月後に取り出し透明性を評価したところすべて透明性を保っていた。
【0052】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>
実施例19〜27のクレンジング料、比較例14のクレンジング料について測定した乳化粒子径の体積基準平均径を表3に示した。測定した実施例9例中の2例(実施例21、25)が、「乳化粒子径が100nm以下であると一層素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価であった。また残りの実施例7例(実施例19、20、22、23、24、26、27)と比較例14も「乳化粒子径が101〜300nmであると素早くすっきりと洗い流すことができる」の評価となる乳化粒子の体積基準平均径を示した。
【0053】
<洗い流しやすさ(官能評価)>
官能評価員の評価結果を表3に示す。
実施例19〜27のすべてのクレンジング料及び比較例14が「○評価:肌に油性感が残らず洗い流し易い」の評価であった。洗い流しやすさ(官能評価)の結果は、体積基準平均径の測定結果の判定と一致した。
【0054】
<クレンジング力評価(官能評価によるメイク汚れの落としやすさの評価)>
口紅、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラの落としやすさ評価結果を表3に示す。
実施例19〜27のクレンジング料すべてが「○」評価であり、ほぼきれいにメイク汚れを落とすことが確認できた。しかし比較例14のクレンジング料はフィルムタイプのマスカラの汚れを落とすことができず、この試験は「×」評価であった。
【0055】
以上の試験結果から次のように結論付けることができた。
すなわち、比較例14のクレンジング料がフィルムタイプマスカラを落とすことができないことから、フィルムタイプのマスカラ汚れを落とすためには、(E)成分である水の含有量は、10質量%を超える必要があることが分かった。
また比較例15が調製直後に白濁することから、クレンジング料が白濁などを生じさせないためには、(E)成分である水の含有量は、50質量%未満でなければならないものと考えられた。
一方、実施例19〜27が、調製直後透明で保存試験後も透明であること、官能評価での洗い流しやすさ及び官能評価による洗浄効果が「〇」評価であることから、(E)成分の水の含有量が15〜44.99質量%の範囲であるための効果であるものと考えられた。
【0056】
《ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラに対する洗浄力の定量評価試験》
実施例21〜27、比較例14の組成のクレンジング料の、ウォータープルーフタイプアイライナー、フィルムタイプマスカラに対する洗浄力を正確に測定するため、定量的な洗浄力測定を行った(結果は図1図2参照)。
<試験方法>
本試験においては、色差によりメイクアップ化粧料の洗浄率を求め、クレンジング力を評価した。
(メイクアップ化粧料の洗浄率の計算式)
色彩色差計(装置名:CM−2600d、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、メイクアップ化粧料(以下「メイク」と略記)を塗布する前の白色人工皮革の色彩値1、メイクアップ化粧料を塗布した後の試験検体の色彩値2、および試験サンプルによりクレンジングした後の試験検体の色彩値3を測定し、この測定値から色差(ΔEa;塗布前後の色差、ΔEb;クレンジング前後の色差)を求め、さらに下記計算式によりメイク洗浄率(%)を求めた。
なお、ΔE=(ΔL+Δa+Δb1/2である。
メイク洗浄率(%)=ΔEb/ΔEa×100
メイク洗浄率(%)の数値が高いほどクレンジング力が高いと判定できる。
具体的には、下記のとおり行った。
【0057】
<クレンジング力評価方法>
(1)あらかじめ色彩値1を測定済みの3cm×6cmの白色人工皮革の直径1cm枠内に、ウォータープルーフタイプアイライナー又はフィルムタイプマスカラ0.005gを塗布し30分乾燥させた。これを試験検体とした。
ウォータープルーフタイプアイライナーとして、メイベリンニューヨーク マスターライナー クリーミィペンシルBK−1を用いた。またフィルムタイプマスカラとして、アテニア パーフェクトマスカラr21を用いた。
(2)作製した試験検体の色彩値2を色彩色差計(装置名:CM−2600d、コニカミ
ノルタ株式会社製)を用いて測定した。
(3)上記(1)で作製した試験検体に、試験サンプル0.1mlを滴下し、指で1秒間
に1回の速度で20回擦った。
(4)試験検体を水で十分に洗い流し、乾燥させた。
(5)乾燥後の試験検体の色彩値3を、色彩色差計を用いて測定した。
(6)前記メイク洗浄率の計算式に従って、ウォータープルーフタイプアイライナー又はフィルムタイプマスカラ洗浄率(%)を求めた。
【0058】
・クレンジング力の測定試験結果
ウォータープルーフタイプアイライナー又はフィルムタイプマスカラに対するクレンジング力の試験結果を図1及び図2に示す。
図1に示す通り、ウォータープルーフタイプアイライナーに対して、実施例21〜27、比較例14のクレンジング料は、いずれも80%以上の高いクレンジング性能を有していた。
一方、フィルムを形成するフィルムタイプマスカラに対しては、実施例と比較例とでクレンジング力に大きく違いが認められた。すなわち、図2に示すように実施例21〜27はフィルムを形成するフィルムタイプマスカラに対しても、80%以上の洗浄効果を発揮し、強いクレンジング効果を示した。比較例14は、フィルムタイプマスカラに対して、洗浄力が極めて低く10%以下の洗浄力しか示さなかった。この試験結果は、官能試験結果に良く一致していた。
【0059】
以上の通り、実施例21〜27、比較例14を用いた試験から本発明のクレンジング料において、フィルムタイプマスカラを洗浄するためには、(E)成分の水の含有量が、クレンジング料全量に対して10質量%を超える必要があることが明らかとなった。また保存による透明安定性を保つためには(E)成分の水の最適含有量が13〜47質量%、より好ましくは15〜45質量%の範囲にあると判断できた。
【0060】
《(F)成分の最大含有量の検討(比較例16〜31による検討)》
本発明の(F)成分である抗菌性多価アルコールの最大含有量を確認するため比較例16〜31(表4)の組成に基づいて検討を行った。試験結果を示し説明する。
【0061】
1.クレンジング料の調製
比較例16〜31(表4の組成)のクレンジング料を常法により調製した。
【0062】
比較例16〜29は、(A)〜(E)成分の含有量が、本発明のクレンジング料に適した含量の範囲になるように調整し、(F)成分の抗菌性多価アルコールの含有量を、10〜30質量%に調整した組成である。なお抗菌性多価アルコールの含有量を高めるにあたって、(C)成分のエチルヘキサン酸セチル及び(D)成分のグリセリン、(E)成分の水の含有量を許容される範囲で適宜増減させて調製した。
また、比較例30、31は、(A)〜(D)成分の含有量が、本発明のクレンジング料の組成に基づく適切な含有量としたが、(E)成分の水の含有量を10質量%と減量し、(F)成分のBG又はDPGを30質量%に増量した組成になるように調整している。このようにして抗菌性多価アルコールの含有量を変化させた。
【0063】
2.評価試験方法
各試験試料について、前記した実施例1〜18・比較例1〜13のクレンジング料の評価試験と同じ試験手法により評価した。
なお評価試験項目は、「<外観観察(透明性)>、(a)調製直後の外観、(b)安定性試験後の外観(安定性)」、「<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>」について実施した。
【0064】
3.評価結果
下記表4の下段に評価結果を示す。
【0065】
【表4】
【0066】
<外観観察(透明性)>
(a)調製直後の外観
比較例19の組成のクレンジング料のみが、透明なクレンジング料となった。一方、比較例16〜18、比較例20〜31の組成のクレンジング料は、調製直後の外観が白濁し不透明となった。このため比較例19以外は、不合格と判定し、透明な外観を持つ比較例19の試料のみを、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管する安定性試験をおこなった。
【0067】
(b)安定性試験後の外観(安定性)
安定性試験に付した比較例19のクレンジング料は、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温室に保管した後1ヶ月後に取り出し透明性を評価した。5℃、25℃の温度では透明性を保っていたが、40℃、50℃の温度条件では分離が発生した。このため比較例19は、目的とする安定性をクリアできず、不合格と判定した。
【0068】
<洗い流し性能(乳化粒子の体積基準平均径の測定)>
調製直後透明な比較例19のクレンジング料についてのみ測定した。希釈液の乳化粒子径の体積基準平均径は、表4に示す通り51.2nmであった。
【0069】
以上、比較例16〜31の組成のクレンジング料を調製し、(F)成分である抗菌性多価アルコールの最大含有量の限界を確認するため試験を行った。しかし、(F)成分である抗菌性多価アルコールを10質量%以上含有させることは、困難であった。すなわち本発明の目的である、透明で保存安定性の高いクレンジング料を調製するためには、(F)成分である抗菌性多価アルコールを10質量%以上含有させることは、好ましくないものと判断した。
【要約】
【課題】水と油を含有する皮膚や目に安全なクレンジング料であって、異なるタイプのメイクアップ化粧料に対して洗浄力が高く、洗浄後の油成分の残留感が少なく、水で洗い流しやすい、温度安定な透明クレンジング料を提供すること。
【解決手段】次の(A)〜(F)を含有する透明クレンジング料。
(A)炭素数14〜22の分岐脂肪酸および/又は不飽和脂肪酸と、ポリグリセリンとのジエステル
(B)カプリル酸トリグリセリル、ジカプリル酸ペンタグリセリル、ヘキサカプリル酸エイコサグリセリル、ヘキサカプリン酸エイコサグリセリル、カプリン酸トリグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルおよびジカプリン酸ヘキサグリセリルから選ばれる1以上の成分
(C)油剤
(D)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン−3、ポリグリセリン−4、ポリグリセリン−5、ポリグリセリン−6およびポリグリセリン−10から選ばれる1以上の成分
(E)水を13〜47質量%
(F)抗菌性多価アルコールを0.1〜9.4質量%
【選択図】なし
図1
図2