特許第6792760号(P6792760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792760
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】火山灰焼結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/00 20060101AFI20201119BHJP
   C04B 35/18 20060101ALI20201119BHJP
   C04B 33/13 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C04B35/00
   C04B35/18
   C04B33/13 A
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-136510(P2016-136510)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2018-8829(P2018-8829A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】599175532
【氏名又は名称】アルバック九州株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591155242
【氏名又は名称】鹿児島県
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(72)【発明者】
【氏名】小池 晋
(72)【発明者】
【氏名】樋高 直人
(72)【発明者】
【氏名】袖山 研一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 幸雄
【審査官】 谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−012435(JP,A)
【文献】 特開昭52−141814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質のX線回折ピークを示す火山灰とリシウム化合物との焼結体であって、
前記焼結体はβ−スポジュメン相を含む
火山灰焼結体。
【請求項2】
平均化学成分が、SiO:60〜61%、Al:16〜17%、Fe、FeO:6〜7%の火山灰とリシウム化合物との焼結体であって、
前記焼結体はβ−スポジュメン相を含む
火山灰焼結体。
【請求項3】
火山灰とリシウム化合物との焼結体であって、
前記焼結体は、X線回折測定結果においてβ−スポジュメン相を示す回折ピークと火山灰を示す回折ピークを有する
火山灰焼結体。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の火山灰焼結体であって、
前記リシウム化合物はペタライトである
火山灰焼結体。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の火山灰焼結体であって、
前記焼結体の線膨張係数が1.0×10−6/℃以上2.5×10−6/℃以下である
火山灰焼結体。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の火山灰焼結体であって、
前記焼結体の開気孔率が0%より大きく9%以下である
火山灰焼結体。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の火山灰焼結体であって、
前記火山灰焼結体は、表面温度が40℃のときの遠赤外線放射率が92〜94%である
火山灰焼結体。
【請求項8】
結晶質のX線回折ピークを示す火山灰を60〜75重量%、リシウム化合物を25〜40重量%混合する工程と、
前記混合物を1035℃以上1140℃以下で焼成する工程と
を有する火山灰焼結体の製造方法。
【請求項9】
平均化学成分が、SiO:60〜61%、Al:16〜17%、Fe、FeO:6〜7%の火山灰を60〜75重量%、リシウム化合物を25〜40重量%混合する工程と、
前記混合物を1035℃以上1140℃以下で焼成する工程と
を有する火山灰焼結体の製造方法。
【請求項10】
火山灰を60〜75重量%、リシウム化合物を25〜40重量%混合する工程と、
前記混合物を1035℃以上1140℃以下で焼成し、X線回折測定結果においてβ−スポジュメン相を示す回折ピークと火山灰を示す回折ピークを有する焼結体を製造する工程と
を有する火山灰焼結体の製造方法。
【請求項11】
請求項8から10のうちいずれか1項に記載の火山灰焼結体の製造方法であって、
前記混合工程は、前記火山灰を70〜75重量%、前記リシウム化合物を25〜30重量%混合する
火山灰焼結体の製造方法。
【請求項12】
請求項8から11のうちいずれか1項に記載の火山灰焼結体の製造方法であって、
前記リシウム化合物はペタライトである
火山灰焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火山灰を利用した火山灰焼結体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火山灰のほとんどは最終処分場にて埋立処分されているのが現状である。そこで近年、このような火山灰を機能焼結体として資源化する技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、火山灰を主材料とし長石、無機質顔料を混合した混合物を加圧成形、焼結することで建材を製造する方法が開示されており、特許文献2には、火山灰に低温焼結を目的に硼酸塩などを添加し成型、焼成することにより磁器を製造する方法が開示されている。
【0003】
一方、肉や野菜等を焼く焼肉用調理プレートとして、多孔質な火成岩などの溶岩を円や四角のプレート状に加工した石焼プレートが知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−53144号公報
【特許文献2】特公平2−1792号公報
【特許文献3】特開2009−189724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の天然素材からなる溶岩プレートは、直火に対して割れやすいという問題点があった。また、素材確保がしづらく製品の大型化が困難であった。更に欠陥(巣)を多く含み脆い素材で有る為、加工歩留りが低く高価な物となっていた。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、従来廃棄物となっていた火山灰を有効利用し、耐熱衝撃性に優れた火山灰焼結体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る火山灰焼結体は、火山灰とリシウム化合物との焼結体であって、上記焼結体はβ−スポジュメン相を含む。
原材料として火山灰にリシウム化合物を混合させた混合物を用い、この混合物を焼成して、線膨張係数が小さいβ−スポジュメン(β−spodumene)相を含む、耐熱衝撃性に優れた焼結体が得られる。焼結体を円板状にし、これを部分的に加熱した場合、火があたっている領域と火があたっていない領域との熱膨張差が小さく割れることがない。
【0008】
リシウム化合物は特に限定されず、典型的にはペタライト(葉長石)である。
【0009】
上記焼結体の線膨張係数は、例えば、1.0×10−6/℃以上2.5×10−6/℃以下である。これにより高い耐熱衝撃性を得ることができる。
【0010】
上記焼結体の開気孔率は、例えば、0%より大きく9%以下が好ましい。これにより、熱応力に耐える強度を有する焼結体が得られる。
【0011】
本発明の一形態に係る火山灰焼結体の製造方法は、火山灰を60〜75重量%、リシウム化合物を25〜40重量%混合する工程を含む。
上記混合物は、1035℃以上1140℃以下で焼成される。
これにより、線膨張係数が小さいβ−スポジュメン(β−spodumene)相を有する、耐熱衝撃性に優れた焼結体を得ることができる。
【0012】
上記混合工程において、上記火山灰を70〜75重量%、上記リシウム化合物を25〜30重量%混合することが望ましく、耐熱衝撃性が更に向上した焼結体を得ることができる。
リシウム化合物としては、ペタライトを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、火山灰を原料とする耐熱衝撃性に優れた焼結体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る加熱プレートを示す斜視図である。
図2】表1に示す実験例の結果の一部をグラフ化した図である。
図3】実験例に係る一実験結果を示す図であり、熱機械分析(TMA)測定結果を示す図である。
図4】焼結体のX線回折結果を示す図である。
図5】加熱試験を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る加熱プレートの製造方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
[焼結体]
【0017】
本実施形態では、火山灰とリシウム化合物を原材料とし、β−スポジュメン相を含む線膨張係数が1.0×10−6/℃以上2.5×10−6/℃以下である焼結体とすることにより、耐熱衝撃性に優れた焼結体が得られた。以下に、実験結果に基づき、比較例とともに本発明の一実施形態に係る火山灰焼結体の特性について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る火山灰焼結体としての加熱プレート1を概略的に示す斜視図である。この加熱プレート1は、例えば直火にかけてプレート上で肉や野菜等を焼く焼肉用プレート等の調理器具として用いることができる。尚、本実施形態においては、調理器具を例にあげたが、これに限定されるものではなく、加熱して使用するものに適用可能である。
表1は、原材料である火山灰とリシウム化合物としてのペタライト(葉長石)の混合比をかえて製造された数種類の加熱プレートの特性を評価した実験結果である。
図2は、表1の実験の結果の一部をグラフ化したものである。
図3は、表1の焼結体から切り出した試料の熱機械分析(TMA)測定結果を示す。
図4は、表1のP20(比較例4)とP30(実施例2)のX線回折結果を示す図である。
図5は、耐熱衝撃性を評価するための加熱試験を説明する図である。
【0019】
【表1】
【0020】
図1に示すように、加熱プレート1は円板状のプレートであり、直径が240mm、厚みが12mmである。
【0021】
表1に示す本実施形態の実験では、原材料となる火山灰とペタライト(LiAlSi10)との組成比をかえて9種類の加熱プレートを製造した。詳細な焼結体の製造方法については後述するが、火山灰とペタライト(葉長石)の混合物と水とアクリル樹脂系バインダを混合しスラリーを調合し、このスラリーを型にいれて成形、乾燥、1110℃で焼成して焼結体としての加熱プレート1を製造した。本実施形態では、火山灰に桜島の火山灰を使用した。また、ペタライトには平均粒径D50が40μmのものを、火山灰には平均粒径D50が201μmのものを用いた。
【0022】
表中、Pはペタライトを示し、Pの後の数字は火山灰とペタライトとの混合物中のペタライトの重量%を示す。例えばP0は、火山灰が100重量%、ペタライトが0重量%の混合物を用いてなるスラリーを成形、乾燥、焼成して製造した加熱プレートを示し、P30は火山灰が70重量%、ペタライトが30重量%の混合物を用いてなるスラリーを成形、乾燥、焼成して製造した加熱プレートを示す。また、表中の×E−6/℃は、×10−6/℃のことであり、以下同様である。
【0023】
表中、P0(比較例1)、P10(比較例2)、P15(比較例3)、P20(比較例4)、P50(比較例5)は比較例に相当し、P25(実施例1)、P30(実施例2)、P35(実施例3)、P40(実施例4)は本発明に係る実施形態に相当する。
【0024】
表1において、線膨張係数は、熱機械分析(TMA)装置(NETZSCH Japan社製)を用いて測定し、300〜500℃の温度範囲の線膨張係数を求めた。
【0025】
開気孔率は、アルキメデス法を用いて測定した。
【0026】
収縮率(重力方向)は、製造工程中の焼成工程の前後で、加熱プレートの厚みがどれだけ変化したかを評価するものである。
【0027】
表1に示す加熱試験結果は、図5に示す加熱試験方法を用いて試験した結果である。
図5に示すように、加熱試験では、水平においた加熱プレート1の略中央部の領域5にガスバーナ4の火があたるように加熱プレート1を加熱し、加熱プレート1が割れるか否かを試験した。表1におけるΔT(℃)は、この加熱試験における、加熱プレート1の火があたる領域5と、そこから100mm離れた領域6との温度差ΔT(℃)を示している。
【0028】
図3は、加熱温度に応じたP0(比較例1)、P20(比較例4)、P30(実施例2)、P40(実施例4)の焼結体から切り出した試料の熱機械分析(TMA)測定結果を示す。
【0029】
表1に示す実験結果より、加熱プレートの線膨張係数が1.0×10−6/℃以上2.5×10−6/℃以下の場合、加熱試験で割れが確認されなかった。詳細には、P0(比較例1)、すなわちペタライトを添加せず、火山灰のみを用いて製造した加熱プレートはΔTが69℃で割れが生じ、P15(比較例3)の加熱プレートはΔTが111℃で割れが生じた。これに対し、P30(実施例2)、P40(実施例4)の加熱プレートはそれぞれΔTが146℃以上、108℃以上となっても割れが生じることはなく、耐熱衝撃性が高い特性を示した。
尚、P50(比較例5)においては、収縮率が小さく多孔質でありしかも表面に白色析出相が生じて均質な焼結体が得られなかった。
【0030】
また、図3に示すように、P30(実施例2)、P40(実施例4)は加熱による変位量の変化が、P0(比較例1)、P20(比較例4)と比較して非常に小さい、すなわち線膨張係数が小さいことがわかる。更に本実施形態の焼結体においてすべての組成で溶岩より線膨張係数が小さいこともわかる。
【0031】
すなわち、P30(実施例2)、P40(実施例4)の加熱プレートを用いて図5に示す加熱試験を行った場合、火があたっている領域5と火があたっていない領域6との温度差が大きくなったとしても、熱膨張差で生じる応力が小さく、割れることがない。
これに対し、P0(比較例1)、P10(比較例2)、P20(比較例4)の加熱プレートに図5に示す加熱試験を行った場合、加熱プレートの線膨張係数の値が大きいため、火があたっている領域5と火があたっていない領域6との熱膨張差が大きくなり、熱膨張差により応力が発生し、加熱プレートの許容応力を超えてしまって割れてしまう。
【0032】
ここで、表1に示すように、実験結果から加熱プレート1の割れが確認されなかったときの線膨張係数は1.0×10−6/℃以上2.5×10−6/℃以下であった。
【0033】
以上のように、加熱プレート1の線膨張係数を1.0×10−6/℃以上2.5×10−6/℃以下とすることにより、耐熱衝撃性に優れた加熱プレートが得られる。
【0034】
また、上述の耐熱衝撃性に優れた加熱プレートはいずれもβ−スポジュメン相を有しており、以下図4を用いて説明する。
図4はX線回折測定装置(株式会社リガク社製)で測定したX線回折結果である。図中、上に図示されるのはP20(比較例4)の、下に図示されるのはP30(実施例2)のX線回折結果であり、それぞれのピーク強度位置が比較できるように上下に図示している。P20(比較例4)には見られないβ−スポジュメン相の回折ピークがP30(実施例2)には認められた。
図4において、ピーク2a、2b、2cがβ−スポジュメン相を示すピークである。ピーク2aは2θ=19.3°、ピーク2bは2θ=22.8°、ピーク2cは2θ=25.6°のピークである。
【0035】
P40(実施例4)の加熱プレートをX線回折測定したところ、P30(実施例2)と同様にβ−スポジュメン相が生成していることが認められた。
従って、線膨張係数の小さいβ―スポジュメン相を有する加熱プレートは耐熱衝撃性に優れた特性を有する。
【0036】
また、溶岩プレートは表面温度が40℃のときの遠赤外線放射率が90%で有るのに対して上述の本実施形態に係る加熱プレートはいずれも92〜94%であり、高い遠赤外線放射特性が確認された。
【0037】
本実施例に係る加熱プレート1は、開気孔率が9%以下であることが望ましい。
開気孔率が9%よりも大きいと、加熱プレート全体の孔が多くなり、強度が落ちてしまう。さらに開気孔率を所定以下とすることで、高い洗浄性が確保される。加熱プレート等に使用する場合、開気孔率の下限はなく、0%よりも大きければよい。
【0038】
以上のように、火山灰とペタライトとの混合物を原材料としてβ−スポジュメン相を有する焼結体を得ることにより2.5×10−6/℃以下という小さい線膨張係数を有する、耐熱衝撃性に優れた焼結体が得られる。
【0039】
次に他の実験例に係る実験結果について説明する。
表2は他の実験例に係る実験結果を示し、表3は更に他の実験例に係る実験結果を示している。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表2は、火山灰70重量%とペタライト30重量%を混合したものを原料とし、焼成温度、火山灰の粒径をかえて製造した加熱プレートの評価結果である。
表中、実施例5〜7及び比較例6は、火山灰の平均粒径D50が175μmのものを用い、焼成温度のピーク温度がそれぞれ1035℃、1085℃、1105℃、1150℃となるように焼結して得た加熱プレートである。また、実施例8は、火山灰の平均粒径D50が201μmのものを用い、焼成温度のピーク温度が1140℃となるように焼結して得た加熱プレートである。
【0043】
表2に示すように、比較例6は溶融してしまい形状が保てず、焼成温度が1150℃以上では、加熱プレートを得ることができなかった。
また、実施例7、8はいずれも加熱試験で割れないという結果を得た。
【0044】
表3は、ペタライトを含まない加熱プレートと、火山灰80重量%とペタライト20重量%を混合したものを原料とし、表1に示した実験例とは火山灰の粒径と焼成温度を異ならせて製造した加熱プレートの実験結果である。
表中、比較例7は火山灰の平均粒径D50が201μmのものを用い、焼成温度のピーク温度が1140℃となるように焼結して得た加熱プレートである。比較例8は火山灰の平均粒径D50が72μmのものを用い、焼成温度のピーク温度が1120℃となるように焼結して得た加熱プレートである。比較例9は火山灰70重量%とペタライト30重量%を混合したものを原料とし、火山灰は平均粒径D50が175μmのものを用い、焼成温度のピーク温度が1085℃となるように焼結して得た加熱プレートである。
【0045】
[加熱プレートの製造方法]
【0046】
次に、上述の加熱プレート1の製造方法について説明する。
上述の耐熱衝撃性に優れた本実施形態に係る加熱プレートは、火山灰を60〜75重量%とリシウム化合物を25〜40重量%とを混合した混合物を1035℃以上1140℃以下で焼成することにより得られる。
【0047】
図6は、加熱プレート1の製造方法を示すフローチャート図であり、以下、図に従って説明する。ここでは、P30(実施例2)の加熱プレートを製造する例をあげるが、これに限定されるものではない。
【0048】
まず、原料となる火山灰とペタライトを調達する(ST101)。
火山灰は、最終処分場から採集した火山灰(平均化学成分 SiO:60〜61%、Al:16〜17%、Fe、FeO:6〜7%)を準備し、ペタライト(カネアツ釉薬製)は平均粒径D50が40μmのものを準備する。
【0049】
次に、火山灰を目開き500μmのステンレス篩で分級し(ST102)、比重差を利用した水洗浄をする(ST103)。
水洗浄工程で底に沈殿した火山灰を熱風乾燥機で60℃で48時間乾燥する(ST104)。
その後、得られた火山灰5kgを乾式ボールミルにて粒度調整し、平均粒径D50が201μmの火山灰粉末を得る(ST105)。基本そのまま使用するが、それより粗い場合は粒度調整工程にて、ボールミル用ポットとして容量10Lのナイロンポット、直径20mmのジルコニアボール13.2kgを用い火山灰を粉砕する。
【0050】
粒度調整した火山灰粉末とペタライトとを、火山灰粉末70重量%、ペタライト30重量%の割合で配合し(ST106)、この配合粉末にアクリル樹脂系バインダ(中京油脂製、セルナWN−405)を配合粉末の重量の1重量%分加え、スラリー濃度が80%となるように水を加えて、スラリーを調合する(ST107)。このスラリーを調合する混合工程では、湿式ボールミルにて、容量20Lのポリプロピレンポット、直径20mmのナイロンボール1kgを用い、粉砕時間12時間として、配合粉末が平均粒径106μmとなるように均一混合し、スラリーを調合する。
【0051】
次に、スラリーを型枠内に振動機にて振動させながら注入し、均密充填成形する(ST108)。型枠にはステンレス製のものを用い、型枠の内外側はフッ素樹脂素材のマスキングテープで養生する。
【0052】
成形工程後、型枠にいれた成形物を熱風乾燥で60℃で48時間乾燥後、型枠から脱型し、成形体を得る(ST109)。
次に、成形体を大気雰囲気中で、常温から300℃まで0.9℃/分、300℃から900℃まで0.5℃/分、900℃から1100℃まで0.3℃/分の速度で段階的に昇温し、1110℃をピーク温度として3時間保持して焼成し、その後1.7℃/分の速度で600℃まで冷却、その後常温まで大気冷却して焼結体を得た(ST110)。
ここで、表1に示す収縮率は、この焼成工程直前の成形体厚みと焼成工程後の焼結体厚みとを比較して求めている。
【0053】
その後、焼結体を直径240mm、厚みが12mmの円板状に研削加工し、加熱プレート1を得る(ST111)。
【0054】
上述の実施形態においては、焼成工程における焼成温度のピーク温度を1110℃としたが、これに限定されず1035℃以上1140℃以下で焼成してもよい。1035℃よりも温度が低いとβ−スポジュメン相が形成されず、耐熱衝撃性に優れた焼結体を得ることができない。また、1140℃よりも高い温度で焼成処理すると溶けて形状が保たれなくなってしまう。
【0055】
以上のように、本実施形態においては、火山灰を原料として、耐熱衝撃性に優れた焼結体を得ることができる。また本実施形態の焼結体は、大量に廃棄されている火山灰が主成分として使用されているため、比較的安価に製造することができる。しかも、加工歩留りの悪い溶岩プレートに比べて量産性があり、歩留りも高く、大型化が可能であり、所望とする品質を安定に確保することができる。
【0056】
尚、上述の実施形態では、リシウム化合物としてペタライトを用いたが、シリア輝石、炭酸リシウム等のLiを含むものを用いることができる。
【0057】
また、上述の実施形態では、火山灰として桜島の火山灰を使用したが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
1…加熱プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6