(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のセレン含有水処理方法は、樹脂基材に硫黄含有官能基が結合している吸着材と、セレン含有水とを接触させるセレン含有水接触工程、セレン含有水に接触させた吸着材と塩基性溶液とを接触させる塩基処理工程、及び塩基性溶液に接触させた吸着材と酸性溶液とを接触させる酸処理工程とを含む。硫黄含有官能基を有する吸着材にセレンを吸着させ、この吸着材と塩基性溶液を接触させることにより、塩基性溶液中にセレンを溶離させつつセレンの少なくとも一部を析出回収することが可能となり、さらに、セレンを溶離させた後の吸着材に酸性溶液を接触させることにより、吸着材を再生することができる。
【0015】
1.セレン含有水接触工程
セレン含有水接触工程では、樹脂基材に硫黄含有官能基が結合している吸着材と、セレン含有水とを接触させる。これにより、セレン含有水中のセレンが吸着材に捕捉される。
【0016】
前記吸着材における硫黄含有官能基は、硫黄原子を1個以上5個以下有する官能基であり、好ましくは硫黄原子を1個有する基である。また硫黄含有官能基において、硫黄原子は、−2価の状態で含まれていることが好ましい。硫黄含有官能基としては、メルカプト基(−SH)及び/又はチオカルボニル基(−CS−)を含む基であることが好ましく、メルカプト基を含む基であることがさらに好ましい。硫黄含有官能基はさらにアミノ基(−NH
2)及び/又は−NR
1−を含んでいてもよい。なおR
1は水素原子又は1価の炭化水素基を表す。
具体的には、メルカプト基(−SH)、ジチオカルボキシアミノ基(−NR
1−CS
2H)及びアミノチオカルボキシアミノ基(−NH−CS−NH
2)よりなる群から選ばれる1種が好ましく、メルカプト基であることが特に好ましい。硫黄含有官能基がこれらの基であると、セレン含有水中のセレンが吸着材に効率良く捕捉されるとともに、塩基処理及び酸処理によるセレンの溶離・吸着材の再生も容易である。
前記R
1で表される炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
【0017】
前記硫黄含有官能基は、樹脂基材の主鎖(好ましくはビニル重合体骨格)に直接結合していてもよく、2価の炭化水素基を介して樹脂基材の主鎖に結合していてもよく、2価の炭化水素基を介して樹脂基材の主鎖に結合していることが好ましい。具体的には、式(1)で表される基が樹脂基材の主鎖に結合していることが好ましい。硫黄含有官能基が共有結合により樹脂基材に結合しているため、塩基処理によるセレンの溶離・析出及び酸処理による吸着材の再生が可能となる。
【0019】
[式(1)中、L
1は単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R
sは、硫黄含有官能基を表す。*は結合手を表す。]
【0020】
L
1で表される炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基等のアルキレン基;フェニレン基、トルイレン基、メシチレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;及び、アルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基;が挙げられる。前記アルキレン基としては、メチレン基が好ましく、前記アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
中でも、アリーレン基又はアルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基が好ましく、アリーレン基とアリーレン基とを組み合わせた基がより好ましく、結合手から、アリーレン基とアルキレン基がこの順で配置されている炭化水素基がさらに好ましい。前記L
1で表される炭化水素基の炭素数は、1〜15であることが好ましく、より好ましくは5〜10であり、さらに好ましくは6〜8である。
L
1は、2価の炭化水素基であることが好ましい。
【0021】
樹脂基材に硫黄含有官能基を導入する方法としては、樹脂基材を製造した後に必要に応じて架橋剤を導入し、硫黄含有官能基を付加する方法、及び樹脂基材を製造する際に硫黄含有官能基を有するモノマー(好ましくは、式(1)で表される基と重合性基とを有するモノマー)と樹脂基材を形成するモノマーとを共重合する方法が挙げられる。中でも、樹脂基材を製造した後に架橋剤を導入し、硫黄含有官能基を付加する方法が好ましい。
【0022】
前記吸着材における樹脂基材は、非水溶性の樹脂であることが好ましく、天然高分子、合成高分子のいずれも用いることができる。天然高分子としては、タンパク質、核酸、脂質、セルロース等の多糖類、天然ゴム等が挙げられる。また、合成高分子としては、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
中でも、合成高分子が好ましく、スチレン樹脂がより好ましい。
【0023】
前記スチレン樹脂は、単官能又は多官能スチレン系モノマーの(共)重合体であり、原料モノマーとして、必要に応じて(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー等の他のモノマーを含んでいてもよい。
【0024】
前記単官能スチレン系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。また、前記多官能スチレン系モノマーとしては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン等が挙げられ、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0025】
前記スチレン樹脂において、多官能スチレン系モノマーに由来する構造単位は、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0026】
また前記スチレン樹脂において、他のモノマーに由来する構造単位は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であり、0質量%であることが最も好ましい。
【0027】
前記吸着材において、樹脂基材に対する硫黄含有官能基の導入量は、例えば、下記式によって計算される導入率で1mEq/g−dry以上であることが好ましく、より好ましくは3mEq/g−dry以上であり、10mEq/g−dry以下であることが好ましく、より好ましくは7mEq/g−dry以下、さらに好ましくは5mEq/g−dry以下である。
導入率(mEq/g−dry)=[硫黄含有官能基導入量(mEq)/吸着材の乾燥質量(g−dry)]×100
ただし、硫黄含有官能基導入量は、1mol/L塩酸と乾燥質量1gの吸着材とを接触させてH型に変換した後に、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液中に吸着材を浸積して60℃で2時間維持し、消費された水酸化ナトリウムのモル数を意味するものとする。消費された水酸化ナトリウムのモル数は、0.1mol/L塩酸で中和滴定することにより求めることができる。
【0028】
前記吸着材は、ゲル型であってもポーラス型であってもよく、ポーラス型であることが好ましい。なお、一般的に「ハイポーラス型」或いは「マクロポーラス型」と呼ばれる樹脂についても、本発明においては「ポ−ラス型」に含まれる意味で用いることとする。
【0029】
吸着材の形状としては、粒状、繊維状が好ましく、粒状(好ましくは球状)がより好ましい。
吸着材の形状が繊維状の場合、吸着材の短径は、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、1mm以下であることが好ましく、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。吸着材の長径は、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは30μm以上であり、3mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下である。また、吸着材樹脂のアスペクト比(長径/短径)は、1以上、5以下であることが好ましく、1以上、3以下であることがより好ましい。
吸着材の形状が粒状の場合、吸着材の平均粒子径は、100μm以上であることが好ましく、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上、特に好ましくは400μm以上であり、1500μm以下であることが好ましく、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは800μm以下、特に好ましくは600μm以下である。
【0030】
セレン含有水と吸着材とを接触させる方法としては、例えば、吸着材をカラムに充填し、このカラムにセレン含有水を通液する方法;及びセレン含有水と吸着材とを混合した後、吸着材を分離する方法;が好ましい。
【0031】
吸着材をカラムに充填し、このカラムにセレン含有水を通液することで吸着材とセレン含有水を接触させる場合、前記カラムにおける充填体積は、1mL以上であることが好ましく、より好ましくは3mL以上、さらに好ましくは5mL以上である。また、50L以上であってもよく、より好ましくは70L以上、さらに好ましくは90L以上であってもよい。上限は特に限定されないが、例えば20,000L以下であることが好ましく、より好ましくは15,000L以下、さらに好ましくは10,000L以下でもよい。
また、カラムの充填層高(L)と直径(D)の比(L/D)は、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは1以上であり、20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下である。
【0032】
通液する際の空間速度(SV)は、0.1h
-1以上であることが好ましく、より好ましくは1h
-1以上、さらに好ましくは2h
-1以上であり、100h
-1以下であることが好ましく、より好ましくは50h
-1以下、さらに好ましくは30h
-1以下、特に好ましくは20h
-1以下である。
なお空間速度(SV)は、通液する液体の1時間あたりの流量を吸着材の体積で除することで算出できる。
【0033】
吸着材をカラムに充填してセレン含有水を通液する場合、セレン含有水の体積は、吸着材の体積に対して、好ましくは30倍以上、より好ましくは50倍以上、さらに好ましくは70倍以上であっても、セレン含有水中のセレン濃度を高度に低減できる。セレン含有水の体積は、吸着材の体積に対して、250倍以下であることが好ましく、より好ましくは200倍以下である。
【0034】
セレン含有水と吸着材とを混合した後、吸着材を分離することで吸着材とセレン含有水とを接触させる場合、好ましくは10分以上、より好ましくは1時間以上攪拌しておくことが好ましい。撹拌時間は、長いほど好ましいが、例えば100時間以下、さらには50時間以下であってもよい。
【0035】
セレン含有水と吸着材とを混合する場合、吸着材は、接触させるセレン含有水100質量部に対して、5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下であっても、セレン含有水中のセレン濃度を高度に低減できる。吸着材は、セレン含有水100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上である。
【0036】
セレン含有水を吸着材と接触させる際、温度は、5℃以上であることが好ましく、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上であり、50℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは35℃以下である。
【0037】
セレン含有水を吸着材と接触させて得られる処理水中のセレン濃度は、1mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mg/L以下、さらに好ましくは0.1mg/L以下であり、0mg/Lであることが最も好ましいが、場合によっては0.001mg/L以上となることも許容される。
【0038】
吸着材に対するセレン吸着量は、吸着材の乾燥重量に対して、0.1mg/g−dry resin以上であることが好ましく、より好ましくは1mg/g−dry resin以上、さらに好ましくは2mg/g−dry resin以上、特に好ましくは3mg/g−dry resin以上であり、吸着量は多いほど好ましいが、例えば10mg/g−dry resin以下、さらには5mg/g−dry resin以下となる場合があってもよい。
【0039】
セレン含有水接触工程に供されるセレン含有水のpHは、例えば7以下であることが好ましく、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下であり、−2以上であることが好ましく、より好ましくは0以上である。pHがこの範囲にあると、セレンの除去効率が良好である。
【0040】
セレン含有水のpHを調整するため、セレン含有水接触工程に先立って、セレン含有水のpHを調整するpH調整工程を設けてもよい。pHの調整は、水酸化ナトリウム、塩酸又は硫酸を用いて行うことができ、水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを調整することが好ましい。
【0041】
また、吸着材とセレン含有水を接触させている際の平衡pHは、例えば7以下であることが好ましく、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下であり、−2以上であることが好ましく、より好ましくは0以上である。pHがこの範囲にあると、セレンの除去効率が良好である。
【0042】
セレン含有水接触工程に供されるセレン含有水は、少なくともセレンを含有しており、特に、4価のセレンを含有する。なお、通常、水中において、4価のセレンは亜セレン酸イオン(SeO
32-)の形態で存在しており、6価のセレンはセレン酸イオン(SeO
42-)の形態で存在している。セレンの濃度(特に4価のセレンの濃度)は、質量基準で、1mg/L以上であってもよく、好ましくは5mg/L以上、より好ましくは10mg/L以上であってもよい。また、セレンの濃度(特に4価のセレンの濃度)は、質量基準で、100mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは50mg/L以下、さらに好ましくは30mg/L以下である。
【0043】
前記セレン含有水は、セレン(亜セレン酸イオン又はセレン酸イオン、好ましくはセレン酸イオン)以外の共存イオンをさらに含有していてもよい。共存イオンとしては、無機酸若しくは有機酸の共役塩基又は金属イオンが挙げられる。
【0044】
前記無機酸又は有機酸の共役塩基としては、塩化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、亜硫酸イオン、硫酸イオン及び炭酸イオン等の無機酸の共役塩基;ギ酸イオン、酢酸イオン等の有機酸の共役塩基が挙げられる。中でも、無機酸の共役塩基が好ましく、塩化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン又は硫酸イオンがより好ましく、塩化物イオン又は硫酸イオンが特に好ましい。
【0045】
無機酸又は有機酸の共役塩基を含む場合、無機酸又は有機酸の共役塩基の濃度は、前記セレン含有水中、質量基準で、1,000mg/L以上であることが好ましく、より好ましくは3,000mg/L以上、さらに好ましくは4,000mg/L以上であり、10,000mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは7,000mg/L以下、さらに好ましくは5,000mg/L以下である。
【0046】
特に、本発明で用いる吸着材は、硫黄含有官能基を有しているため、共存イオンとして硫酸イオン等の4価のセレン(亜セレン酸イオン)と競合しやすいイオンを含有していても、4価のセレンを効率よく吸着・除去することができる。
【0047】
また、前記金属イオンとしては、Na、K等のアルカリ金属のイオン;Mg、Ca等のアルカリ土類金属のイオン;Al、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Pd、W、Tl、Bi等の金属のイオン;及びSb、Te等の半金属のイオン等が挙げられる。中でも、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオンがより好ましく、ナトリウムイオンが特に好ましい。金属イオンを含む場合、金属イオンの濃度は、前記セレン含有水中、質量基準で、10mg/L以上であってもよく、より好ましくは100mg/L以上、さらに好ましくは1,000mg/L以上であってもよく、10,000mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは7,000mg/L以下、さらに好ましくは5,000mg/L以下である。
【0048】
2.塩基処理工程
本発明の処理方法は、前記セレン含有水接触工程の後に、セレン含有水に接触させた吸着材と塩基性溶液とを接触させる工程を含む。前記吸着材は上記硫黄含有官能基を有するため、吸着材に捕捉されたセレンが塩基性溶液中に溶離され、セレンの少なくとも一部を塩基性溶液中に析出させ回収することができる。
【0049】
前記塩基性溶液に含まれる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましい。
塩基性溶液において、塩基の濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは1mol/L以上であり、2mol/L以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mol/L以下である。
【0050】
前記塩基性溶液の溶媒は、水であることが好ましい。
前記塩基性溶液のpHは、12以上であることが好ましく、より好ましくは12.5以上、さらに好ましくは13以上である。
【0051】
また、塩基性溶液の体積は、吸着材の体積に対して0.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは1倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上であり、50倍以下であることが好ましく、より好ましくは20倍以下、さらに好ましくは10倍以下、特に好ましくは5倍以下である。
【0052】
吸着材がカラムに充填されている場合、塩基性溶液を通液する際の空間速度(SV)は、0.1h
-1以上であることが好ましく、より好ましくは1h
-1以上、さらに好ましくは1.5h
-1以上であり、50h
-1以下であることが好ましく、より好ましくは20h
-1以下、さらに好ましくは10h
-1以下、特に好ましくは5h
-1以下である。
【0053】
塩基性溶液と吸着材とを混合することで接触させる場合、好ましくは10分以上、より好ましくは1時間以上攪拌しておくことが好ましい。撹拌時間は、長いほど好ましいが、例えば100時間以下、さらには50時間以下であってもよい。
【0054】
吸着材と塩基性溶液とを接触させる際の他の条件は、吸着材とセレン含有水とを接触する際の条件と同様の条件を採用することができる。
【0055】
吸着材を塩基性溶液と接触させる前、或いは接触させた後に、水で洗浄しておくことが好ましい。吸着材を塩基性溶液と接触させる前に水で洗浄することで、吸着材のpHを高めておくことができ、塩基処理工程を容易に行うことができる。また、吸着材を塩基性溶液と接触させた後に水で洗浄することで、吸着材のpHを下げておくことができ、後述する酸処理工程を容易に行うことができる。洗浄水の体積は、吸着材の体積に対して、1倍以上であることが好ましく、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上であり、50倍以下であってもよく、さらには30倍以下、特に20倍以下であってもよい。
【0056】
吸着材がカラムに充填されている場合、洗浄水を通液する際の空間速度(SV)は、0.1h
-1以上であることが好ましく、より好ましくは1h
-1以上、さらに好ましくは5h
-1以上であり、100h
-1以下であることが好ましく、より好ましくは50h
-1以下、さらに好ましくは30h
-1以下、特に好ましくは20h
-1以下である。
【0057】
洗浄水と吸着材とを混合することで洗浄する場合、好ましくは10分以上、より好ましくは1時間以上攪拌しておくことが好ましい。撹拌時間は、長いほど好ましいが、例えば100時間以下、さらには50時間以下であってもよい。
【0058】
吸着材を洗浄する際の他の条件は、吸着材とセレン含有水とを接触する際の条件と同様の条件を採用することができる。
【0059】
3.酸処理工程
本発明の処理方法は、前記セレン含有水接触工程の後に、塩基性溶液に接触させた吸着材と、酸性溶液を接触させる工程を含むことが好ましい。これにより、吸着材のセレン捕捉能を再生することができる。
【0060】
前記酸性溶液に含まれる酸としては、無機酸及び有機酸のいずれでもよく、無機酸の水溶液がより好ましい。無機酸としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸及び炭酸が挙げられ、有機酸としては、ギ酸及び酢酸が挙げられる。また、酸性溶液としては、吸着材と接触させた後のセレン含有水を使用してもよい。
【0061】
前記酸性溶液の溶媒は、水であることが好ましい。
また前記酸性溶液のpHは、2以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは0以下である。
【0062】
また、酸性溶液の量は、吸着材に対して、体積基準で、0.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは1倍以上、さらに好ましくは2倍以上である。
【0063】
吸着材がカラムに充填されている場合、酸性溶液を通液する際の空間速度(SV)は、0.1h
-1以上であることが好ましく、より好ましくは1h
-1以上、さらに好ましくは1.5h
-1以上であり、50h
-1以下であることが好ましく、より好ましくは20h
-1以下、さらに好ましくは10h
-1以下、特に好ましくは5h
-1以下である。
【0064】
酸性溶液と吸着材とを混合することで接触させる場合、好ましくは10分以上、より好ましくは1時間以上攪拌しておくことが好ましい。撹拌時間は、長いほど好ましいが、例えば100時間以下、さらには50時間以下であってもよい。
【0065】
吸着材と酸性溶液とを接触させる際の他の条件は、吸着材とセレン含有水とを接触する際の条件と同様の条件を採用することができる。
【0066】
吸着材を酸性溶液と接触させた後、水で洗浄しておいてもよい。洗浄の条件としては、吸着材を塩基性溶液と接触させた後の洗浄の条件と同様の条件を採用することができる。
【0067】
さらに、吸着材と酸性溶液とを接触させた後、吸着材を水で洗浄する前に、静置しておくことが好ましい。静置する時間は、30分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、3時間以下であることが好ましく、2時間以下であることがより好ましい。また、静置温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、例えば50℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
【0068】
本発明の処理方法を用いることで、セレン含有水中のセレン(特に4価のセレン)を高効率で除去することが可能であるとともに、吸着したセレンの溶離及び吸着材の再生も高効率で行うことが可能である。このため本発明の処理方法は、乾式複写機の感光ドラムや特殊ガラス、顔料、ゴム合成の化学薬品、触媒等の製造の際や、非鉄金属の精錬や卑金属の精錬、石炭及び石油の燃焼、半導体製造の際等に排出されるセレン含有水からのセレンの除去・回収に好適に用いられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0070】
実施例1
セレン含有水(1)の調整
イオン交換水に亜セレン酸及び硫酸ナトリウムを添加し、硫酸イオンと4価のセレンを含むセレン含有水(1)を作製した。得られたセレン含有水(1)において、ICP−AESにより測定されたセレン濃度は10mg/Lであり、陰イオンクロマトグラフィにより測定された硫酸イオン濃度は4,670mg/Lであった。
【0071】
吸着材
吸着材として、下記の構造単位を有する吸着材(1)(中部キレスト社製「キレスパールCH400」、ポーラス型、球状)を用いた。吸着材(1)における硫黄含有官能基の導入率は、3.9mEq/g−dryであった。また、前記吸着材の体積平均粒子径は566μmであった。
【0072】
【化3】
【0073】
pHの違いによる4価セレン吸着試験
前記セレン含有水にHClまたはNaOHを添加して、表1に示すpHに調整した。pHを調整したセレン含有水100%に対して吸着材を0.25%添加し18.5時間撹拌後、pHを測定し平衡pHとした。また、吸着材添加前後のセレン濃度をICP−AESで測定しセレン吸着量を算出した。吸着材の乾燥重量あたりの吸着量を表1及び
図1に示す。
【0074】
比較例1
吸着材としてスチレン系樹脂の強塩基性I型イオン交換樹脂(オルガノ社製、「アンバージェット4400」、官能基:トリメチルアンモニウムクロリド、ゲル型、調和平均径0.53〜0.63mm)を用いること以外は上記実施例1と同様に試験を行った。結果を表1及び
図1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1及び
図1より、吸着材に含まれる官能基がトリメチルアンモニウムクロリドである場合にはpHに関わらず4価のセレンの吸着が十分でない一方(比較例1)、硫黄含有官能基を有する吸着材を用いると、硫酸イオンを高濃度で含有するセレン含有水(1)から4価のセレンを良好に吸着でき、特に、pHが小さくなるほど吸着性が向上することが明らかになった(実施例1)。
【0077】
実施例2
セレン含有水(2)の調製
イオン交換水に亜セレン酸、硫酸ナトリウム及び塩酸を添加し、硫酸イオンと塩化物イオンと4価のセレンを含むセレン含有水を作製した。得られたセレン含有水(2)にいおて、ICP−AESにより測定されたセレン濃度は10mg/Lであり、陰イオンクロマトグラフィにより測定された硫酸イオン濃度は4,670mg/L、塩化物イオン濃度は2,300mg/Lであった。また、セレン含有水(2)のpHは1.47であった。
【0078】
吸着材として上記吸着材(1)(中部キレスト社製 商品名「キレスパールCH400」)を直径1.5cmのカラムに14.5mL充填した。このカラムにセレン含有水(2)をSV=5h
−1で通液し、カラム出口のセレン濃度をICP−AESで測定して破過曲線を求めた。その結果を表2及び
図2に示す。
【0079】
比較例2
吸着材としてスチレン系樹脂の強塩基性I型イオン交換樹脂(オルガノ社製「アンバージェット4400」、官能基:トリメチルアンモニウムクロリド、ゲル型、調和平均径0.53〜0.63mm)を用いること以外は実施例2と同様に試験を行った。結果を表2及び
図2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2及び
図2より、吸着材に含まれる官能基がトリメチルアンモニウムクロリドである場合には、通液開始と同時に出口からセレンが漏れ始めた一方、硫黄含有官能基を有する吸着材を用いると、セレン除去性能が極めて高く、Bed Volumeが70以下の範囲ではセレンの濃度が0.1mg/L以下に抑制されていることを確認した。
【0082】
実施例3
実施例2と同様の方法でセレンを吸着したカラムに、2N水酸化ナトリウム水溶液を空間速度(SV)=2.5h
-1で10Bed Volume(mL/mL−resin)通液し、カラム出口から出てきた溶離液を回収した。
【0083】
溶離液中には褐色の物質が析出しており、これを孔径0.1μmの親水性PTFEのメンブレンフィルターに集め60℃で15分乾燥した。回収した褐色析出物質をSEM−EDXで分析を行った。
図3に示すように、セレンは71.77質量%検出される一方、酸素の検出量は0.40質量%であり、セレンと酸素のモル比(セレン:酸素)は97:3であることから、前記褐色析出物質はセレン酸(H
2SeO
4)や亜セレン酸(H
2SeO
3)に由来するものではないことが判明した(なお酸素、炭素及びフッ素は、親水性PTFEメンブレンフィルターに由来すると推測される)。また、褐色析出物質は硝酸に溶解せず、セレン酸(H
2SeO
4)や亜セレン酸(H
2SeO
3)とは異なる挙動を示した。これより、本発明の処理方法によれば、容易にセレンを溶離回収することが可能であることが明らかになった。
なお吸着材に含まれる官能基がトリメチルアンモニウムクロリドである場合には、6価のセレンを吸着することができ塩基性溶液にて溶離することができるものの、この場合には、セレンは塩基性溶液中に溶け込み析出は認められない。このことから、今回析出した褐色物質は、吸着された4価セレンが塩基処理工程で還元され0価セレンとして析出したものと考えられる。
【0084】
実施例4
繰り返し試験
実施例2と同様の方法で、カラムにセレン含有水(2)を通液した(1回目)。次いで、表3に示す条件で塩基性溶液としての2N水酸化ナトリウム水溶液、イオン交換水、酸性溶液としての2N塩酸を通液し、1.5時間静置した後、表3に示す条件でイオン交換水を通液して、カラムの溶離再生を行った。溶離再生したカラムに、再度実施例2と同様の手順でセレン含有水(2)を通液した(2回目)。その後、さらに前記手順でカラムの溶離再生を行うとともに、実施例2と同様の手順でセレン含有水(2)の通液を行った(3回目)。
【0085】
【表3】
【0086】
1回目〜3回目のセレン含有水接触の際のカラム出口の濃度をそれぞれICP−AESで測定して破過曲線を求めた。その結果を表4及び
図4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
図4より、カラムの溶離再生を行うことによって、カラムのセレン保持性能(セレン除去性能)は、セレン含有水通液前と同程度まで回復することが明らかになった。また、2、3回目のセレン含有水通液の際に、1回目のセレン含有水通液の際よりもセレン濃度が抑制されているのは、1回目の通液の前には溶離再生処理を行わなかったのに対し、2、3回目の通液の前には溶離再生処理を行ったことにより、カラムのセレン保持性能が高められるトリートメント効果があったためと考えられる。
【0089】
実施例5
鉄(III)98mg/L、カルシウム(II)14mg/L、Se(IV)5mg/Lを含み、pH1.5である水溶液100質量部に上記吸着材(1)を5質量部添加し、室温にて18時間攪拌した。攪拌後の水溶液における各イオンの濃度は、鉄(III)98mg/L、カルシウム(II)14mg/L、Se(IV)0.4mg/Lであった。
【0090】
実施例6
Al(III)108mg/L、Se(IV)5mg/Lを含み、pH1.5である水溶液100質量部に上記吸着材(1)を5質量部添加し、室温にて18時間攪拌した。攪拌後の水溶液における各イオンの濃度は、Al(III)107mg/L、Se(IV)0.4mg/Lであった。
【0091】
実施例5、6より、本発明の方法によれば、他の共存イオンの存在に関わらず、吸着材に4価のセレンを保持させることが可能であることが明らかになった。