特許第6792784号(P6792784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792784
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】眼鏡レンズのプリズム検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   G01M11/02 B
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-67245(P2016-67245)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-181232(P2017-181232A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小多 秀明
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/129848(WO,A1)
【文献】 特開2015−125300(JP,A)
【文献】 特開2001−066226(JP,A)
【文献】 特開平06−242408(JP,A)
【文献】 澤ふみ子,第26回 めざせ! 快適なメガネ こんなときどうしよう?,眼科ケア,2009年,vol.11 no.2,90-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00−11/08
G01B 11/00−11/30
G01N 21/88−21/958
G02C 7/00−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
度数を設定した検査対象レンズのレンズ面上においてプリズムの発生していない位置である光学センターに対してマーキングをする一方、前記検査対象レンズを玉型加工した際の外形形状(以下、玉型形状とする)と共に前記検査対象レンズに設定される度数に応じたプリズムの許容範囲に基づいて算出した合格領域として表示面に表示させ、フレームに枠入れする前に前記検査対象レンズを前記表示面上の前記玉型形状に重ねて照合させた際に、前記玉型形状を前記検査対象レンズ内の玉型加工を施す位置に配置させた状態で前記光学センターにおけるマーキングが前記合格領域内に存在する場合に前記検査対象レンズが光学センターの位置について合格であると判定することを特徴とする眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項2】
前記検査対象レンズは単焦点レンズ又はバイフォーカルレンズであることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項3】
前記検査対象レンズは玉型加工する前の丸レンズであることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項4】
前記検査対象レンズが単焦点レンズかつ球面レンズである場合において、前記玉型形状を前記丸レンズ領域からはみ出ることのないように相対的に移動させた際に前記光学センターにおけるマーキングが前記合格領域に含まれる位置が常に存在する場合に前記検査対象レンズが合格であると判定することを特徴とする請求項3に記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項5】
前記検査対象レンズが玉型加工する前の丸レンズであって、かつ非球面レンズである場合には、前記検査対象レンズと前記表示面とは少なくとも2箇所以上の位置に表示されたマーク同士が照合されて前記玉型形状が前記検査対象レンズ内の玉型加工を施す位置に位置決めされることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項6】
前記検査対象レンズは前記玉型加工した玉型レンズであることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項7】
前記合格領域はアイポイント位置を含む領域に設定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項8】
前記検査対象レンズが単焦点レンズ又はバイフォーカルレンズである場合には前記合格領域はアイポイント位置を中心として回転対称となるように設定されることを特徴とする請求項7に記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項9】
前記合格領域は前記検査対象レンズに設定した度数に応じて算出手段によって算出されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項10】
前記表示面は用紙上に印刷されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【請求項11】
前記表示面が表示された前記用紙は前記検査対象レンズと共に製造者側から眼鏡店側に納品されることことを特徴とする請求項10に記載の眼鏡レンズのプリズム検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの光学センターの位置のずれを検査してその合否を判断する眼鏡レンズのプリズム検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズの受発注においては、眼鏡店からの情報発信に基づいてレンズメーカーから所定の加工を施した眼鏡レンズが眼鏡店側に供給される。眼鏡店から発信される情報とは度数のみならず例えば、レンズの基材の指定、コートの指定、玉型に加工する前のいわゆる丸レンズでの納入か、あるいは指定したフレームに枠入れするための玉型に加工したいわゆる玉型レンズでの納入かの情報等を含む。このような情報に基づいて作製される眼鏡レンズでは特殊なプリズム指定のあるレンズを除いて、丸レンズでは幾何中心が度数設定に伴って発生するプリズムのない位置、すなわち光学センターとなるように加工される。また、丸レンズから加工される玉型レンズでは光学センターがレンズの眼の中心位置であるアイポイント位置(累進屈折力レンズでは遠用アイポイント位置)となるように加工される。レンズの幾何中心が光学センターとなっているかどうかは、一般にレンズメーターを使用して測定することとなる。特許文献1はそのような自動レンズメーターの一例である。また、自動レンズメーターでレンズの光学特性を測定する場合においてその測定位置を正確に決定することは非常に難しいため、例えば特許文献2や3に開示されるようなレンズ保持手段がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−194266号公報
【特許文献2】特開2005−99051号公報
【特許文献3】特開2000−292313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリズム指定の無い丸レンズにおいて偏心指定が無ければ幾何中心が光学センターとなるように加工されるものである。また、偏心指定があれば幾何中心とは異なる点として指定されたアイポイントが光学センターとなるように加工されるものである。しかし、実際には加工バラつきが生じてしまうものである。そのためアイポイントにおいてわずかにプリズムが発生するケースがある。但し、その場合でもアイポイントにおけるプリズムについてはレンズに設定した度数に応じて問題のない範囲でISO規格上公差が認められている。そのため、レンズメーカー側ではこの公差の範囲内でレンズを加工し、眼鏡店に納入するようにしている。そして、眼鏡店側では納入された玉型レンズや玉型レンズについてレンズメーターで光学センター位置を測定してその位置に印点し、その点と指定したフレームに対応した玉型形状のアイポイント位置とを照合する。
しかし、眼鏡店によってはその照合作業において度数に関わらず光学センター位置とアイポイント位置の距離に基づいて主観的に判断し、その結果十分公差の範囲内であるにも関わらずレンズメーカーにセンターずれが大きいため許容されるよりも大きなプリズムがついているのではないかと訴えることがある。そのためレンズメーカー側はもちろん、眼鏡店側においても客観的で簡単に光学センター位置が合格範囲であるかそうではないかを判断することができる方法が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、眼鏡レンズの光学センターの位置ずれを客観的に検査して眼鏡レンズの光学センターの位置ずれに関する合否を判断する眼鏡レンズのプリズム検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために手段1では、度数を設定した検査対象レンズのレンズ面上においてプリズムの発生していない位置である光学センターに対してマーキングをする一方、前記検査対象レンズを玉型加工した際の外形形状(以下、玉型形状とする)と共に前記検査対象レンズに設定される度数に応じたプリズムの許容範囲に基づいて算出した合格領域として表示面に表示させ、前記検査対象レンズを前記表示面上の前記玉型形状に重ねて照合させた際に、前記玉型形状を前記検査対象レンズ内の玉型加工を施す位置に配置させた状態で前記光学センターにおけるマーキングが前記合格領域内に存在する場合に前記検査対象レンズが光学センターの位置について合格であると判定するようにした。
【0006】
このような構成では、検査対象レンズのレンズ面上の光学センターに対してマーキングを施し、その後この検査対象レンズの玉型形状と共にこの検査対象レンズに設定される度数に応じたプリズムの合格領域を表示した表示面に対して検査対象レンズを重ねて照合する。そして、照合において玉型形状が検査対象レンズ内の玉型加工を施す位置に配置された状態で光学センターにおけるマーキングが合格領域内に存在するのであれば、それは光学センターが公差内の妥当な位置にあるといえるため自動的に合格範囲であると判定できる。
これによってレンズメーカーであっても眼鏡店であっても照合する人の主観に頼らず客観的に検査対象レンズの光学センターがプリズムの許容範囲にあることを判断することができる。また、メーカー側での検査において合格と判断されたレンズにマーキングをしたままで眼鏡店に納品した場合には、一見して光学センターが許容範囲内にあることがわかるため、眼鏡店側で改めてレンズメーターで光学センターを測定する必要がないため、眼鏡店側の手間が簡略化される。
【0007】
ここに「検査対象レンズ」はアイポイント近傍に屈折力の分布のないレンズがよく、具体的には単焦点レンズ(SVレンズ)、バイフォーカルレンズ(BFレンズ)である。累進屈折力レンズを検査対象レンズとするようにしてもよい。但し、プリズム指定のあるレンズは含まれない。また、レンズ形態としては枠入れのための玉型加工をする前の丸レンズでも玉型加工後の玉型レンズでもよい。また、偏心をつけて加工された丸レンズでもよい。
検査対象レンズの光学センターへ「マーキング」をするとは、例えば剥がしやすいシールを貼ったり、筆やペンで消しやすい塗料や染料を印点することがよい。
「プリズムの許容範囲」とは、レンズの加工時にアイポイント位置に生じたプリズムの量の許容される範囲である。アイポイント位置に生じたプリズムの量がプリズムの許容範囲に含まれていれば、光学センターとアイポイントが一致しておらずプリズムが発生していても実際のレンズの使用上支障のない公差の範囲にあるということになる。許容範囲に基づいて算出しこれを目視可能に表示したものが合格領域となる。許容範囲は、例えばISOの許容範囲に基づいて設定することができる。また、レンズメーカーが独自にISOよりも厳しい許容範囲を設定することも可能である。一例として以下にISOの許容範囲に基づいた許容範囲を説明する。
また、「玉型形状が検査対象レンズ内の玉型加工を施す位置に配置され」とは後述のように玉型形状が検査対象レンズ内において一義的に位置が決まるとは限らないことを意味する。玉型形状が検査対象レンズ内において複数の異なる位置で玉型加工を施すことが可能な場合には光学センターとアイポイントがなるべく近くなるような位置に配置することがよい。
【0008】
以下は、プリズム指定値が0〜2プリズム(本発明ではプリズム指定値は0)の場合のISOの許容範囲の例である。許容範囲は水平方向と垂直方向についてそれぞれ定められている。また、ここにDminとはS度数とS+C度数の絶対値の小さいほうの値である。例えば、
S+1.00D C+0.50D AX180
というプラス乱視度数の例では、
S度数の絶対値は|1|=1、S+C度数の絶対値は|1+0.5|=1.5
なので、両者のうちの小さいほうの値は1となる。あるいは、
S+2.00D C−3.00D AX180
というミックス乱視度数の例では、
S度数の絶対値は|2|=2、S+C度数の絶対値は|2−3|=1
なので、両者のうちの小さいほうの値は1となる。
A.水平方向のプリズムの許容範囲
0.00D≦Dmin≦3.25Dのレンズの場合には0.33プリズム以下。
3.25D<Dmin の場合には偏心量が1mm以内であり、プリズム値では、近似的に0.1×Dminプリズム以内となる。
B.垂直方向のプリズムの許容範囲
0.00D≦Dmin≦5.00D の場合には0.25プリズム以下。
5.00D<Dmin の場合には偏心量が0.5mm以内であり、プリズム値では、近似的に0.05×Dminプリズム以内となる。
表示面にはレンズに設定した度数毎にこのような許容範囲に基づいて算出して合格領域として玉型形状内に表示させる。
合格領域の外郭は以下のプレンティスの式B.から度数毎に求めることができる。求め方としては、アイポイントを中心とした周囲360度方向を、細かな間隔、例えば1度ステップで360点プロットしてそれを結ぶことによって描くようにしたり、方形となる合格領域の4つのコーナーの座標を求めてそれらを直線で結ぶようにしてもよい。
【0009】
次に、プリズム量とセンターずれの関係について説明する。センターずれとは、光学センターが本来あるべき位置(一般には丸レンズにおいては幾何中心を予定する。特殊な場合には偏心させた位置とすることもある)からずれた距離のことである。プリズム量又はセンターずれは近似的にプレンティスの式で求めることができる。プレンティスの式は次の2つの形式で示される。
A.プリズム量(プリズムディオプター)=センターずれの大きさ(mm)・レンズの度数(D)/10
B.センターずれの大きさ(mm)=10・プリズム量(プリズムディオプター)/レンズの度数(D)
この式を用いると、本来光学センターを予定していた位置にプリズムが発生していれば、そのプリズムによって光学センターが本来予定していた位置からどのくらい距離がずれているのかを計算することができる。尚、プレンティスの式以外の方法、例えばスネルの法則に従った計算によりセンターずれを算出することもできる。プリズム指定のないレンズにおいては、アイポイントにおいてレンズの凸面と凹面は本来平行になるが、加工誤差によって平行ではなくなるとその影響でプリズムを生じる。プレンティスの式以外の方法でセンターずれを算出するには、アイポイント位置において周囲各方向に(例えば1度ステップで)許容される最大のプリズムがついた状態を想定してシミュレーションを行い、そのプリズムを生じさせるだけレンズの凸面と凹面の角度が並行から変化したとき、凸面と凹面が並行になる位置を算出し、その位置を光学センターとする。
球面度数のレンズにおいては、プリズムを生じた方向とセンターずれの方向が一致する。但し、度数のプラスマイナスによってセンターずれの向きは反対になる。例えばプラス度数レンズでベースインプリズムを生じると光学センターは鼻側にずれ、マイナス度数レンズでベースインプリズムを生じると光学センターは耳側にずれる。乱視度数のレンズにおいても、生じたプリズムの方向に応じてセンターずれを生じる。
また、レンズの度数が0かあるいはごく弱い場合、わずかなプリズムを生じただけで大きなセンターずれを生じる。逆にいえばレンズの度数がごく弱い場合、センターずれが大きくともそれほど大きなプリズムを生じていることにはならない。そのためこのようなレンズではセンターずれの合格範囲が大きくなる。
【0010】
また、ある位置においてプリズムがある場合に、光学センターがどの方向にどれだけ離れた位置にあるか、つまりセンターずれを生じている場合にどのようにずれているかは図16に基づいて次のように計算される。
プリズムはS方向とS+C方向の合成であると考える。そして、S度数と、S方向(AXで表示された方向)の量を求め、その方向への偏心A(mm)を求める。一方、S+C度数と、S+C方向(AXとは直角方向)のプリズム量を求め、その方向への偏心B(mm)を求め、偏心Aと偏心Bを合成して光学センターのずれ量を決定する。
具体的には例えば次のように計算される。
S+2.00D C−4.00D AX45 で、水平プリズムが0.00P、垂直プリズムが0.56Pとなっている位置を基準位置Oとして光学センターの位置、つまり光学センター移動位置を計算する。
S度数は+2.00DでありS方向のプリズムはAX45なので45度方向となる。90度方向の垂直プリズムの0.56Pを分解すると45度方向は0.40Pとなり、その方向への偏心A(センターずれ成分)はプレンティスの式により2mmとなる。
一方、S+C度数は−2.00Dであり、S+C方向のプリズムは135度方向となる。上記と同様に135度方向に0.40Pとなる。しかし、S+C方向はマイナス度数となっているため、ずれの方向はS+C方向と180度反対の向きとなる。これはプラスレンズとマイナスレンズでプリズムがあった場合のセンターずれの向きが逆になる光学特性に基づくものである。そのため、偏心Bは、315度方向となり、プレンティスの式により2mmとなる。そして、偏心Aと偏心Bを合成すると、0度方向に2.8mmの偏心となる。つまり、基準位置Oからこの方向に2.8mmの位置に光学センターが存在することとなる。
【0011】
また、手段2では、前記検査対象レンズは単焦点レンズ又はバイフォーカルレンズであるようにした。
これらはアイポイント近傍に屈折力の分布のないレンズであり、収差分布がシンプルで許容範囲が計算しやすいからである。
また、手段3では、前記検査対象レンズは玉型加工する前の丸レンズであることを要旨とする。
検査対象レンズが丸レンズであれば、玉型形状を丸レンズに照合させた場合に丸レンズ内の複数の位置において最も光学センターとアイポイントが近い位置を探すことができるため、最適となる枠取りをすることができる。
また、手段4では、前記検査対象レンズが単焦点レンズかつ球面レンズである場合において、前記玉型形状を前記丸レンズ領域からはみ出ることのないように相対的に移動させた際に前記光学センターにおけるマーキングが前記合格領域に含まれる位置が常に存在する場合に前記検査対象レンズが合格であると判定するようにした。
検査対象レンズが丸レンズで単焦点レンズかつ球面レンズであると玉型形状は検査対象レンズとの照合において相対的に移動させてもいたるところの収差の変化がないため、玉型形状は検査対象レンズからはみ出ない限り相対的な移動が可能である。そのため、マーキングを合格領域に含ませ得る場合が増え、合格となる検査対象レンズも増えることとなる。更にマーキングをよりアイポイントに接近させた位置を探索してもっともずれの少ない位置での玉型取りを可能とすることもできる。検査対象レンズはSVレンズでもBFレンズであってもよい。
【0012】
また、手段5では、前記検査対象レンズが玉型加工する前の丸レンズであって、かつ非球面レンズである場合には、前記検査対象レンズと前記表示面とは少なくとも2箇所以上の位置に表示されたマーク同士が照合されて前記玉型形状が前記検査対象レンズ内の玉型加工を施す位置に位置決めされるようにした。
これによって、検査対象レンズを玉型形状に対する正しい位置に速やかに配置させることができ、その位置で検査対象レンズのプリズムについての合否を判定できるため、作業効率が向上する。2箇所以上の位置に表示させるのは1箇所では位置が確定できないからである。このようなマークはアイポイント付近にあると邪魔であるためアイポイントから遠い視認に支障のない位置に配置することがよい。
【0013】
また、手段6では、前記検査対象レンズは前記玉型加工した玉型レンズであるようにした。
検査対象レンズが玉型レンズであれば、玉型形状に対する玉型レンズの位置は一義的に定まるため、照合させるだけで光学センターが合格領域に含まれているかどうかが理解できるので合否判定の速度が速まることとなる。
また、手段7では、前記合格領域はアイポイント位置を含む領域に設定されるようにした。
一般的には光学センターをアイポイント位置に一致させるように加工するわけだから合格領域内にアイポイントを含むように設定することが最も妥当である。このことから、手段1においては合格領域にはアイポイント位置を含まない場合も想定している。
また、手段8では、前記検査対象レンズが単焦点レンズ又はバイフォーカルレンズである場合には前記合格領域はアイポイント位置を中心として回転対称となるように設定されるようにした。
検査対象レンズが単焦点レンズ又はバイフォーカルレンズの場合にはアイポイントの周辺において度数の分布はない、つまり位置によって度数に変化はないため、このように設定することが合格領域として妥当な設定となるためである。
【0014】
また、手段9では、前記合格領域は前記検査対象レンズに設定した度数に応じて算出手段によって算出されるようにした。
プリズムの許容範囲を玉型形状内の合格領域として位置情報に換算するために、算出手段によって算出することで異なる度数のレンズ毎に固有の合格領域として間違いなくかつ迅速にデータとして得ることができる。そして、表示手段、例えばモニターに表示させたり、出力手段、例えば用紙に印刷するようにする。算出手段と表示手段や出力手段は一体化していても別体で構成していてもどちらでもよい。
【0015】
また、手段10では、前記表示面は用紙上に印刷されているようにした。
用紙の形態であれば場所を問わず検査対象レンズのチェックが可能となる。
また、手段11では、前記表示面が表示された前記用紙は前記検査対象レンズと共に製造者側から眼鏡店側に納品されるようにした。
このように製造者(例えばレンズメーカー)側から眼鏡店に検査対象レンズを納入する際に検査対象レンズと用紙をセットで納入すれば、眼鏡店側のチェック作業もスムーズに行われることとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、眼鏡レンズの光学センターの位置ずれを客観的に検査して眼鏡レンズの光学センターの位置ずれに関する合否を簡単に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態の工程を説明するブロック図。
図2】(a)(b)はレンズに乱視度数がない場合の球面レンズであるSVレンズの玉型レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図3】(a)(b)はレンズに乱視度数がない場合の球面レンズであるSVレンズの丸レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図4】(a)(b)はレンズに乱視度数がない場合の球面レンズであるSVレンズの丸レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図5】(a)(b)はレンズに乱視度数がない場合の非球面レンズであるSVレンズの玉型レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図6】(a)(b)はレンズに乱視度数がない場合の非球面レンズであるSVレンズの丸レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図7】(a)(b)はレンズに乱視度数がない場合のBFレンズの玉型レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図8図7(b)に対応しレンズに乱視度数がない場合のBFレンズの丸レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図9】(a)(b)はレンズに乱視度数がない場合のBFレンズの丸レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図10】(a)(b)はレンズに乱視度数がある場合の球面レンズであるSVレンズの玉型レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図11】(a)〜(c)はレンズに乱視度数がある場合の球面レンズであるSVレンズの丸レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図12】(a)(b)はレンズに乱視度数がある場合の球面レンズであるSVレンズの玉型レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図13】(a)(b)はレンズに単性乱視度数がある場合の球面レンズであるSVレンズの玉型レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図14】(a)(b)はレンズに単性乱視度数がある場合の球面レンズであるSVレンズの丸レンズを玉型形状と照合してセンターずれの合否を判断するための説明図。
図15】のぞき眼鏡を使用してチェックをしている状態を説明する説明図。
図16】レンズにプリズムがある場合に、光学センターがどの方向にどれだけ離れた位置にあるかの計算方法を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の眼鏡レンズのプリズム検査方法を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて眼鏡レンズを検査するまでの工程について説明する。
加工工程において、眼鏡店からユーザー(装用者)の眼鏡レンズに関する処方データ(注文データ)を入手し、処方データに基づいてセミフィニッシュトブランクを切削加工して丸レンズを得るようにする。更に、処方データにおいて玉型形状データとアイポイントデータが含まれているならばこれらデータに基づいて丸レンズから玉型レンズを得るようにする。この段階まではレンズメーカーでの工程となる。
次いで、測定・印点工程で、加工工程において得られた丸レンズ又は玉型レンズをレンズメーターで測定し、光学センターを求め印点する。この工程はレンズメーカーで行うこともでき、納品された眼鏡店で行うこともできる。また、丸レンズ又は玉型レンズが非球面レンズである場合にはレンズメーカーで製造する際にカクシマークを刻印する。
【0019】
次いで判定工程で印点した丸レンズ又は玉型レンズをそのレンズ用のチェック用紙に基づいてチェックを行う。チェック用紙には少なくとも当該丸レンズ又は玉型レンズに対応する玉型形状の輪郭とアイポイントと合格領域が表示されている。
チェック用紙は算出手段としてのコンピュータによって作製される。コンピュータは、ユーザーの入力に応じてプログラム実行可能なハードウエア構成を有する情報処理装置であり、その内蔵ハードディスク(メモリ)には、OS(Operation System)や画像処理、入力データに基づいて座標算出等するためのプログラムがあらかじめインストールされている。また、レンズの度数に応じたプリズムの許容範囲のデータ等各種レンズに関するデータが格納されている。各プログラムはコンピュータ内の制御手段としてのCPU(Central Processing Unit:中央制御装置)が呼び出し、その制御の下で各プログラムが実行される。CPUは入力された玉型形状データに基づいて玉型形状の画像を作成する。また、CPUは入力された処方データに基づき、あるいはレンズをレンズメーターで実測して得られたレンズデータに基づいて当該レンズの度数を算出し、そのレンズの度数に対応したプリズムの許容範囲のデータを呼び出して合格領域となるアイポイントの最大ずれ許容位置となる4つのコーナーの座標を計算する。そして、そのコーナーを結んだ領域を合格領域として玉型形状の画像に合成させる。また、CPUは接続されたプリンタに印刷データを出力しチェック用紙を印刷させる。
【0020】
次に具体的な丸レンズ又は玉型レンズとチェック用紙との照合作業について図面に基づいて説明する。
(1)レンズに乱視度数がない場合
以下、(1)のレンズの度数はすべてS+1.00D C+0.00D とする。また、レンズにはプリズム処方はないものとする。プリズム許容量はISO規格に従うものとする。すなわち、
水平方向のプリズム許容量 0.33P センターずれ許容量 3.3mm
垂直方向のプリズム許容量 0.25P センターずれ許容量 2.5mm
ここではR用の玉型を使用した。玉型のサイズは横幅42.0mm、縦幅17.0mmである。アイポイントEPはボクシングセンタBCの鼻側3.0mm、上側2.0mmである。合格領域SEはアイポイントEPを基準として、鼻側3.3mm、上側2.5mmの第1のコーナー、鼻側3.3mm、下側2.5mmの第2のコーナー、耳側3.3mm、上側2.5mmの第3のコーナー、耳側3.3mm、下側2.5mmの第4のコーナーの4箇所のコーナーを結んだ内側領域として画定される。
【0021】
A.SVレンズ(球面レンズである玉型レンズ)
図2(a)に示すように、チェック用紙に印刷された玉型形状の図形1に対してこの玉型形状に対応する玉型レンズ2を照合させる。玉型レンズ2には上記の測定・印点工程で光学センターに印点3が付されている。図2(b)に示すように、玉型レンズ2を図形1に重ねて照合すると印点3は合格領域SE内にあるためこの玉型レンズ2は合格である。
B.SVレンズ(球面レンズである丸レンズ)
図3(a)に示すように、チェック用紙に印刷された玉型形状の図形4に対してこの玉型形状に対応する丸レンズ5を照合させる。丸レンズ5には上記の測定・印点工程で光学センターに印点6が付されている。図3(b)に示すようにこの当初の位相位置では印点6は合格領域SE内にないが、このまま矢印方向に丸レンズ5を自転させれば印点6は移動して合格領域SE内に配置されることとなるため、この丸レンズ5は合格である。このような自転(回転)だけでなく左右上下方向へ移動させることも可能である。左右上下方向へも移動させることで光学センターをよりアイポイントEPに近づけることができ、丸レンズから作製される玉型レンズの光学性能の点から望ましい。
一方、丸レンズ5への印点6が図4(a)に示すような位置であると図4(b)のように重ねても丸レンズ5から玉型形状の図形4がはみ出さないという条件では印点6は合格領域SE内に配置されることはない。そのためこの場合は不合格である。
【0022】
C.SVレンズ(非球面レンズである玉型レンズ;いわゆるASレンズ)
図5(a)に示すように、チェック用紙に印刷された玉型形状の図形7に対してこの玉型形状に対応する玉型レンズ8を照合させる。玉型レンズ8には上記の測定・印点工程で光学センターに印点9が付されている。この場合ではアイポイントEPを中点として、2つのカクシマークSMがレンズの鼻側と耳側にそれぞれ刻印されている。ここではカクシマークSMは玉型形状の図形7と玉型レンズ8のそれぞれアイポイントEPから左右方向に14mmの位置に設定した。ASレンズは場所によって球面のカーブ形状が異なるため球面レンズのように自由には移動はできない。そのため、2箇所のカクシマークSMを照合して位置決めをさせる。図5(b)に示すように、玉型レンズ8を図形7に重ねて照合すると印点9は合格領域SE内にあるためこの玉型レンズ8は合格である。
D.SVレンズ(非球面レンズである丸レンズ;いわゆるASレンズ)
図6(a)に示すように、チェック用紙に印刷された玉型形状の図形10に対してこの玉型形状に対応する丸レンズ11を照合させる。丸レンズ11には上記の測定・印点工程で光学センターに印点12が付されている。C.と同様にカクシマークSMが刻印されている。
このケースではB.のように回転移動・左右上下方向への移動はできないため、合格領域SE内から外れていれば修正できず図b(b)に示すように、この玉型レンズ8は不合格である。
【0023】
E.BFレンズ(台玉が球面レンズであり、小玉が丸くない玉型レンズ)
図7(a)に示すように、チェック用紙に印刷された玉型形状の図形13に対してこの玉型形状に対応する玉型レンズ14を照合させる。台玉レンズ15には上記の測定・印点工程で光学センターに印点16が付されている。小玉17が丸くないため、上記の非球面レンズと同様に自由に移動はできないため、小玉17の形状が照合された位置で印点16が合格領域SE内にあるかどうかで判定する。図7(b)に示すようにこのケースでは合格である。一方、図8図7において印点16位置が異なるケースでありこの場合は丸レンズ18は回転させられないため不合格である。
F.BFレンズ(台玉が球面レンズであり、小玉が丸い丸レンズ)
E.において小玉19の形状が円形であって回転させられるケースである。図9に示すように小玉17が丸いため、小玉19回りで回転させて丸レンズ20内で玉型形状を相対的に移動させることができる。このケースでは当初印点21は合格領域SE内にないが回転させることで合格領域SE内に移動させられるので合格である。このように台玉レンズ15が乱視度数のない球面レンズである場合で、かつ小玉19が真円形状である場合に丸レンズ20を回転させることができる。
【0024】
(2)レンズに乱視度数がある場合
以下、球面レンズのSVレンズについて例示して説明する。ASレンズとBFレンズにおいては上記(1)の場合と同様なので省略する。また、(2)のレンズにはプリズム処方はないものとする。R用の玉型を使用し、玉型のサイズは上記(1)と同じである。
A.乱視軸が水平・垂直のSVレンズ(玉型レンズ)
以下の、3種類のレンズについて合否を検討する。
S+0.50D C+0.50D AX180 プラス度数
S−0.50D C−0.50D AX180 マイナス度数
S+0.50D C−1.50D AX180 ミックス度数
プリズム許容量はISO規格に従うものとする。ISO規格ではこれらのレンズはすべてセンターずれ許容量は同じとなる。すなわち、
水平方向のプリズム許容量 0.33P センターずれ許容量 6.6mm
垂直方向のプリズム許容量 0.25P センターずれ許容量 2.5mm
合格領域SEはアイポイントEPを基準として、鼻側6.6mm、上側2.5mmの第1のコーナー、鼻側6.6mm、下側2.5mmの第2のコーナー、耳側6.6mm、上側2.5mmの第3のコーナー、耳側6.6mm、下側2.5mmの第4のコーナーの4箇所のコーナーを結んだ内側領域として画定される。
【0025】
図10(a)に示すように、チェック用紙に印刷された玉型形状の図形25に対してこれら玉型形状に対応する玉型レンズ26を照合させる。玉型レンズ26には上記の測定・印点工程で光学センターに印点27が付されている。図10(b)に示すように、玉型レンズ2を図形25に重ねて照合すると印点27は合格領域SE内にあるためこの玉型レンズ26は合格である。
B.乱視軸が水平・垂直のSVレンズ(丸レンズ)
A.と同じレンズについて丸レンズの状態での合否を検討した。
図11(a)に示すように、チェック用紙に印刷された玉型形状の図形28に対してこの玉型形状に対応する丸レンズ29を照合させる。丸レンズ29には上記の測定・印点工程で光学センターに印点30が付されている。図11(b)に示すように、この位相位置では印点6は合格領域SE内にない。この場合AX180であるため、180度方向の回転と水平・垂直方向の移動は許容される。ここでは図11(c)に示すように、180度回転させることで印点30は合格領域SE内に配置されることとなるため、この丸レンズ29は合格である。
【0026】
C.乱視軸が斜めのSVレンズ(玉型レンズ)
S+0.50D C+0.50D AX45
のレンズについて検証する。図12(a)に示すようにチェック用紙に印刷された玉型形状の図形31に対してこの玉型形状に対応する玉型レンズ32を照合させる。玉型レンズ32には上記の測定・印点工程で光学センターに印点33が付されている。
乱視軸が斜めの場合にはその角度によってセンターずれ量は異なる。このレンズにおいては、
水平方向のプリズム許容量 0.33P
垂直方向のプリズム許容量 0.25P
である。この場合の合格領域SEは次のように算出できる。
イ.0度方向に水平プリズム0.33Pの場合
S方向(45度)とS+C方向の反対(315度)それぞれ0.23Pに分解される。
45度方向のずれ量4.67mm、315度方向のずれ量2.33mm。
ロ.90度方向に垂直プリズム0.25Pの場合
S方向(45度)とS+C方向(135度)それぞれ0.18Pに分解される。
45度方向のずれ量3.54mm、135度方向のずれ量1.77mm。
ハ.0度方向に水平プリズム0.33Pで、90度方向に垂直プリズム0.25Pの場合
上記イ.のプリズムがついてから、さらにロ.のプリズムがつく形で計算できる。
つまり、
45度方向のずれ量:4.67mm+3.54mm=8.20mm
315度方向のずれ量:2.33mm−1.77mm=0.56mm
(四捨五入の関係で少数第2位の数値が変わる)
ニ.0度方向に水平プリズム0.33Pで、270度方向に垂直プリズム0.25Pの場合 上記イ.のプリズムがついてから、さらにロ.の反対のプリズムがつく形で計算できる。
つまり、45度方向のずれ量1.13mm、315度方向のずれ量4.10mm。
ホ.180度方向に水平プリズム0.33Pで、270度方向に垂直プリズム0.25Pの場合
この場合には上記ハ.の反対側にセンターずれを起こす。つまり225度方向のずれ量8.20mm、135度方向のずれ量0.56mm
ヘ.180度方向に水平プリズム0.33Pで、90度方向に垂直プリズム0.25Pの場合
この場合には上記ニ.の反対側にセンターずれを起こす。つまり、225度方向のずれ量1.13mm、135度方向のずれ量4.10mm。
以上からハ.ニ.ホ.ヘ.の4コーナーが算出できるので、これらの点を結ぶことによって図12(a)のように合格領域SEを描画することができる。図12(b)に示すように、印点33は合格領域SE内に配置されることとなるため、この玉型レンズ32は合格である。
【0027】
D.単性乱視で水平方向の度数が0DのSVレンズ(玉型レンズ)
S+0.00D C+0.50D AX180
のレンズについて検証する。図13(a)に示すようにチェック用紙に印刷された玉型形状の図形35に対してこの玉型形状に対応する玉型レンズ36を照合させる。玉型レンズ36には上記の測定・印点工程で光学センターに印点37が付されている。このようにS度数がない(あるいは極めて小さい)場合には計算上わずかなプリズムで大きなセンターずれを生じることとなる。
水平方向のプリズム許容量 0.33P
垂直方向のプリズム許容量 0.25P
この例では水平方向のプリズムは0であり、また水平方向にセンターずれはない。一方、垂直方向センターずれ許容量5.0mmとなる。
図13(a)に示すように、このようなケースでは水平方向にアイポイントEPから上下5mm離間した水平に延びる直線内が合格領域SEとなる。この例では図13(b)に示すように、印点37は合格領域SEにある。
【0028】
E.単性乱視で垂直方向の度数が0DのSVレンズ(丸レンズ)
S−0.00D C−0.50D AX90
のレンズについて検証する。図14(a)に示すようにチェック用紙に印刷された玉型形状の図形38に対してこの玉型形状に対応する丸レンズ39を照合させる。丸レンズ39には上記の測定・印点工程で光学センターに印点40が付されている。このケースもD.と同様にわずかなプリズムで大きなセンターずれを生じることとなる。
水平方向のプリズム許容量 0.33P
垂直方向のプリズム許容量 0.25P
垂直方向にはどれだけずれても許容以内となる。一方、水平方向センターずれ許容量6.6mmとなる。
この例では、わずかに垂直方向のプリズムがあるため、印点40がアイポイントEPから大きく上側にズレている。仮に40aの位置にあれば合格範囲である。印点40が玉型形状から出てしまっているが、丸レンズ39内に収まっている。垂直方向の度数が0Dであっても、表面と裏面のカーブに微妙な差異があるため、生じた垂直方向のプリズムが小さければ印点40が丸レンズ39内に収まることがある。その場合に玉型加工前の位置決定は可能であるが、玉型加工後の検査ができない。そのような場合に備えて、このようにチェック用紙にアイポイントEPを表す点またはアイポイントEPを囲む半径3〜5mmの円41を印刷しておくとよい。レンズを用紙に印刷された玉型形状にあてがい、レンズと用紙に対して垂直な方向から観察し、レンズのアイポイントEPに印点するか円を描く。その後、レンズに印した点または円を参照して、レンズメーターでプリズム量を測定することができる。
【0029】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・合格領域SEの形状は上記に限定されるものではない。形状の上記のような方形に構成されなければならないわけではない。例えば、すべての方向に対してプリズムの許容量を一定の値とする規格であれば、独自に円形の領域を合格領域SEとするようにしてもよい。また、アイポイントEPが絶対的に合格領域SE内になければいけないわけでもない。
・上記実施の形態においてレンズをチェック用紙に照合する際には例えば、図15に示すように視点を固定するための治具としてののぞき眼鏡45を用いてよい。のぞき眼鏡45重ね合わせたチェック用紙上の玉型形状とレンズに対して垂直な方向から覗き込むことができる。これによってより正確に合否の判定が可能となる。
・上記実施の形態では加工工程では一例としてセミフィニッシュトブランクを加工することを説明したが、型枠で当初からフィニッシュトレンズとしての丸レンズを成形するようにする加工工程であってもよい。
・表示面に表示した合格範囲領域を表す線を検査者がレンズを通して見るが、その位置でレンズが表示面に対して斜めになっている場合は、プリズム効果が生じて線の位置が少しズレて見える。その効果を考慮して線の位置を算出してもよい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0030】
1、4、7、10、13、25、28、31、35、38…玉型形状としての図形、2、8、14、26、32、36…検査対象レンズとしての玉型レンズ、5、11、19、29、39…検査対象レンズとしての丸レンズ、4、7、10、13、18、25、28、31、35、38…玉型形状としての玉型形状の図形、3、6、9、12、16、21、27、30、37、40…マーキングとしての印点、SE…合格領域。
図1
図2
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