特許第6792787号(P6792787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792787
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】車両のカウル構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   B62D25/08 H
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-26892(P2017-26892)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-131091(P2018-131091A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 稔
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−263002(JP,A)
【文献】 特開2008−56106(JP,A)
【文献】 特開2009−90745(JP,A)
【文献】 特開2011−173448(JP,A)
【文献】 特開2010−167943(JP,A)
【文献】 特開2009−67329(JP,A)
【文献】 特開2012−25284(JP,A)
【文献】 特開2010−168036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08,25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの下側に配置されており、外気導入用開口を有するカウルルーバと、エンジンルームの天井部を構成しており、前記カウルルーバを下方から支えてそのカウルルーバと共に車幅方向に延びる横長空間を形成するカウルパネルと、前記カウルルーバの外気導入用開口と連通する前記横長空間の一部と、前記エンジンルームと連通する前記横長空間の他部とを仕切る遮蔽板と、前記カウルルーバの車幅方向端部から前記横長空間内への雨水及び異物の流入を防ぐ流入防止壁とを備える車両のカウル構造であって、
前記遮蔽板は、前記横長空間の車幅方向における両端部に設けられて、それらの遮蔽板間の空間が前記カウルルーバの外気導入用開口と連通しており、
少なくとも一方の前記遮蔽板が前記流入防止壁の一部である防水壁を構成しており、
前記遮蔽板の上端を上側から覆うように前記流入防止壁が設けられている車両のカウル構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のカウル構造であって、
前記流入防止壁は、前記遮蔽板の上端を上側から覆う庇状部と、その庇状部の端縁位置で下方に張り出し、前記遮蔽板に平行に設けられたフランジ部とを備えている車両のカウル構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のカウル構造であって、
前記流入防止壁が前記カウルルーバの内壁に連結されており、
前記遮蔽板の下端が前記カウルパネルに当接している車両のカウル構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両のカウル構造であって、
前記遮蔽板には、その遮蔽板に対して前記カウルルーバ、及び流入防止壁を介して衝突荷重が加わったときに、前記遮蔽板が折れ曲がるための脆弱部が設けられている車両のカウル構造。
【請求項5】
請求項4に記載された車両のカウル構造であって、
前記遮蔽板は、前記カウルパネルに取付けられた支持部材により高さ方向における途中位置が支持されており、
前記遮蔽板の脆弱部は、前記支持部材により支持された前記遮蔽板の途中位置よりも高い位置に設けられている車両のカウル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルルーバと、カウルパネルと、カウルルーバ内の遮蔽板、流入防止壁とを備える車両のカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した車両のカウル構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のカウル構造では、図7に示すように、外気導入用開口101を有するカウルルーバ100と、エンジンルーム(図示省略)の天井部を構成しており、カウルルーバ100を下方から支えるカウルパネル104とを備えている。そして、カウルルーバ100とカウルパネル104とにより車幅方向(左右方向)に延びる横長空間(図番省略)が形成されている。前記横長空間は車幅方向における略中央位置で遮熱板105により左右に仕切られている。
【0003】
即ち、遮熱板105の左側が外気導入用開口101から流入した外気を車室内に導く外気導入空間Sfとなる。なお、カウルパネル104の縦壁部には、外気導入空間Sf内の位置に空気ダクト用の開口部106が設けられている。また、遮熱板105の右側はエンジンルームと連通する空間Seであり、その空間Se内にワイパーの駆動機構(図示省略)が収納されている。さらに、前記横長空間の右端部には、ワイパーの駆動機構に対して雨水が掛かるのを防止する雨樋(図示省略)が横長空間を塞ぐように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−56106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両のカウル構造では、横長空間の中央位置に遮熱板105が設けられており、その遮熱板105の左側に外気導入空間Sfが設けられている。ここで、遮熱板105の右側の空間Seにはワイパーの駆動機構が設けられているため、遮熱板105を右方向に寄せるのには限界がある。即ち、外気導入空間Sfを広くするのは難しい。このため、車室側(開口部106)から外気導入空間Sf内の空気が吸引されると、カウルルーバ100の外気導入用開口101から流入する外気の流速が大きくなる。これにより、カウルルーバ100の外気導入用開口101から異物が吸引され易くなる。また、遮熱板105と前記雨樋とが個別に設けられているため、遮熱板105と雨樋との設置スペースが大きくなる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、遮蔽板(例えば、遮熱板)と流入防止壁(例えば、雨樋)の設置スペースをコンパクトにすること。さらに、カウルルーバの外気導入用開口から外気導入空間内に異物が吸引され難くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、フロントガラスの下側に配置されており、外気導入用開口を有するカウルルーバと、エンジンルームの天井部を構成しており、前記カウルルーバを下方から支えてそのカウルルーバと共に車幅方向に延びる横長空間を形成するカウルパネルと、前記カウルルーバの外気導入用開口と連通する前記横長空間の一部と、前記エンジンルームと連通する前記横長空間の他部とを仕切る遮蔽板と、前記カウルルーバの車幅方向端部から前記横長空間内への雨水及び異物の流入を防ぐ流入防止壁とを備える車両のカウル構造であって、前記遮蔽板は、前記横長空間の車幅方向における両端部に設けられて、それらの遮蔽板間の空間が前記カウルルーバの外気導入用開口と連通しており、少なくとも一方の前記遮蔽板が前記流入防止壁の一部である防水壁を構成しており、前記遮蔽板の上端を上側から覆うように前記流入防止壁が設けられている。
【0008】
本発明によると、少なくとも一方の遮蔽板が流入防止壁の一部である防水壁を構成しており、前記遮蔽板の上端を上側から覆うように前記流入防止壁が設けられている。即ち、遮蔽板が流入防止壁の縦壁として働き、流入防止壁が庇部として働くようになる。このため、前記遮蔽板と流入防止壁とを個別に設ける場合と比較して前記遮蔽板と流入防止壁との設置スペースをコンパクトにできる。また、前記遮蔽板は横長空間の車幅方向における両端部に設けられて、それらの前記遮蔽板間の空間がカウルルーバの外気導入用開口と連通している。このため、カウルルーバの外気導入用開口と連通する空間(外気導入空間)を前記横長空間のほぼ全体の容積に等しくでき、前記外気導入空間を従来よりも十分に大きくできる。このため、車室側から外気導入空間内の空気が吸引される際、カウルルーバの外気導入用開口から流入する外気の流速が小さくなる。この結果、カウルルーバの外気導入用開口から外気導入空間内に異物が吸引され難くなる。
【0010】
請求項2の発明によると、流入防止壁は、遮蔽板の上端を上側から覆う庇状部と、その庇状部の端縁位置で下方に張り出し、前記遮蔽板に平行に設けられたフランジ部とを備えている。このため、例えば、カウルルーバを介して流入防止壁、及び遮蔽板に対して衝突荷重が加わる際に、流入防止壁が遮蔽板から外れ難くなる。したがって、カウルルーバ、流入防止壁、及び遮蔽板により衝突荷重を吸収できるようになる。
【0011】
請求項3の発明によると、前記流入防止壁が前記カウルルーバの内壁に連結されており、前記遮蔽板の下端が前記カウルパネルに当接している。このため、流入防止壁と遮蔽板とによりカウルルーバとカウルパネルとにより形成された横長空間に端部を効果的に塞げ、横長空間への水掛かりを防止できる。
【0012】
請求項4の発明によると、遮蔽板には、その遮蔽板に対してカウルルーバ、及び流入防止壁を介して衝突荷重が加わったときに、前記遮蔽板が折れ曲がるための脆弱部が設けられている。このため、前記遮蔽板が確実に脆弱部の位置で折れ曲がるようになる。
【0013】
請求項5の発明によると、遮蔽板は、カウルパネルに取付けられた支持部材により高さ方向における途中位置が支持されており、前記遮蔽板の脆弱部は、前記支持部材により支持された前記遮蔽板の途中位置よりも高い位置に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、遮蔽板と流入防止壁との設置スペースがコンパクトになる。さらに、カウルルーバの外気導入用開口から外気導入空間内に異物が吸引され難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係るカウル構造を備える車両を右前方から見た斜視図である。
図2図1に示す模式斜視図からフェンダパネル、エンジンフード等を取外した状態の模式斜視図である。
図3】車両のカウル構造を表す縦断面図(図1のIII-III矢視縦断面図)である。
図4】車両のカウル構造の構成部材であるカウルルーバの全体斜視図である。
図5】カウルルーバとカウルパネルとからなる横長空間内を表す正面図である。
図6】雨樋と遮熱板とを表す正面図(図5のVI矢視拡大図)である。
図7】従来の車両のカウル構造を構成するカウルルーバとカウルパネルとの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
以下、図1から図6に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のカウル構造について説明する。本実施形態に係る車両のカウル構造は、カウルルーバとカウルフロントパネル等とから構成される空間内に設置される遮熱板、及び雨樋の構造に関するものである。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、カウル構造を備える車両の前後左右及び上下に対応している。
【0017】
<車両10の前部構造の概要について>
車両10のカウル構造について説明する前に、車両10の前部構造の概要について説明する。車両10のボディの左右両側には、図1に示すように、フロントドア12の前側にフロントピラー14が立設されており、左右のフロントピラー14によってルーフパネル(図示省略)の前部が支持されている。フロントピラー14は、フロントドア12のベルトラインBRよりも下側のピラー支柱部14dがフェンダパネル15によって覆われている。そして、前記フェンダパネル15よりも上側に位置するフロントピラー14の意匠部14eがフェンダパネル15の意匠面15eと連続するように構成されている。左右のフロントピラー14の意匠部14e等とルーフパネル(図示省略)とによって囲まれた位置には、フロントガラス20が設けられている。
【0018】
左右のフェンダパネル15の間には、図1に示すように、車両10のエンジンルームERを開閉可能に構成されたエンジンフード17が設けられている。そして、エンジンフード17は、そのエンジンフード17の後部がカウルルーバ30の前部を覆えるように設けられている。カウルルーバ30は、フロントガラス20から流下した水を車両10の車幅方向両端部まで導くとともに、外気導入機能を持った車体外装部品である。カウルルーバ30は、図3に示すように、そのカウルルーバ30の後端縁30bがフロントガラス20の下端縁20dに対して車幅方向全体に亘って面一に接続されている。
【0019】
左右のフロントピラー14のピラー支柱部14d間には、図2図3に示すように、エンジンルームERと車室R内とを仕切るダッシュパネル43が車幅方向(左右方向)に延びる縦壁状に設けられている。前記ダッシュパネル43の上端部は、図3に示すように、ほぼ水平な状態で前方に曲げられており、その上端部がエンジンルームERの後部の天井部43fを構成している。そして、ダッシュパネル43の天井部43fの前端縁にフロントガラス20を支持するカウルパネル50の後端縁50bが固定されている。
【0020】
<カウルパネル50について>
カウルパネル50は、図2に示すように、車幅方向に延びるパネルであり、車幅方向における両端部(左右端部)がエンジンルームERの上部側壁を構成するアッパメンバ19に固定されている。ここで、アッパメンバ19上には、エンジンフード17を上下回動可能に支持するフードヒンジ17hが設置されている。そして、アッパメンバ19、フードヒンジ17h等が、図5等に示すように、フェンダパネル15によって覆われている。
【0021】
カウルパネル50は、図3に示すように、エンジンルームERの天井部となる水平部50tと、その水平部50tの前端位置に設けられた縦壁部50wとを備えている。カウルパネル50の縦壁部50wには、図5に示すように、左端部近傍に車室R内に空気を取り入れるため開口部50eが形成されている。また、図3に示すように、縦壁部50wの上端位置が前方に曲げられることで、その縦壁部50wの前側には棚部50uが設けられている。さらに、前記棚部50uの前端位置が斜め下方に曲げられることでフランジ部50fが形成されている。そして、カウルパネル50のフランジ部50fの位置でフロントガラス20の下部(下辺)が裏側から支えられている。カウルパネル50、及びダッシュパネル43は車室Rの内側からインストルメントパネル45等によって覆われている。
【0022】
<カウルフロントパネル53について>
カウルパネル50の縦壁部50wの下部前側には、同じくエンジンルームERの天井部を構成するカウルフロントパネル53が固定されている。カウルフロントパネル53は、カウルパネル50と共に車幅方向に延びるパネルであり、図3に示すように、後側段差壁部53dと天井壁部53tと前側傾斜壁部53wとにより断面略U字形に形成されている。そして、カウルフロントパネル53の前側傾斜壁部53wの上端位置にカウルルーバ30を支えるフランジ状のルーバ支持部53fが車幅方向に延びるように設けられている。
【0023】
<カウルルーバ30について>
カウルルーバ30は、図3図4に示すように、車両前後方向における途中部分に山部31を備えており、その山部31が車幅方向に延びるように形成されている。そして、カウルルーバ30の山部31の前側に同じく車幅方向に延びる溝部33が形成されている。カウルルーバ30の山部31と溝部33との間には、溝部33の後側壁部を構成する縦壁部32が設けられている。カウルルーバ30の山部31の後側は、フロントガラス20側が低くなるように緩やかに傾斜しており、そのカウルルーバ30の後端縁30bが、上記したように、フロントガラス20の下端縁20dに面一な状態で接続されている。
【0024】
カウルルーバ30の溝部33を構成する前側壁部34は傾斜面状に形成されており、図3図4に示すように、その前側壁部34の上端位置にフランジ部34fが車幅方向に延びるように形成されている。そして、カウルルーバ30のフランジ部34fの上に、図3に示すように、エンジンフード17とカウルルーバ30間をシールするウエザストリップ37が設けられている。カウルルーバ30は、そのカウルルーバ30の溝部33の底板33bがカウルフロントパネル53のルーバ支持部53f上に載置されている。そして、カウルルーバ30の溝部33の底板33bとカウルフロントパネル53のルーバ支持部53f間がスポンジ状のシール材(図示省略)によって車幅方向における全体に亘ってシールされている。即ち、図3に示すように、カウルルーバ30と、カウルフロントパネル53と、カウルパネル50の縦壁部50w、棚部50uとにより、車幅方向に延びる横長空間Sが形成されるようになる。
【0025】
カウルルーバ30とカウルフロントパネル53等とにより形成された横長空間Sには、図5に示すように、中央よりも右側に左右のワイパー24を駆動させる駆動機構25が設置されている。駆動機構25は、モータ25mの回転力を受けて左右のワイパー24を駆動させる機構であり、カウルフロントパネル53上に設けられた受け部53zに固定されている。また、カウルルーバ30の右端と略中央部とには、図4に示すように、左右のワイパー24の回転中心軸24jがそれぞれ通されるワイパー用開口部30eが形成されている。さらに、カウルルーバ30の中央に位置するワイパー用開口部30eに対して左側の位置には、細かい角形開口の集合体である外気導入用開口38が設けられている。
【0026】
<カウル構造について>
カウルルーバ30とカウルフロントパネル53等とにより形成された横長空間Sには、図5に示すように、左端部と右端部とに遮熱板60が設けられている。遮熱板60は、左右のアッパメンバ19等を伝ってカウルルーバ30の位置まで上昇したエンジンルームER内の空気と、カウルルーバ30の外気導入用開口38(図4参照)から流入した外気とが混ざらないようにするための仕切り板である。遮熱板60は、横長空間Sの断面形状に合わせて成形されており、前記横長空間Sの左端部と右端部とを塞げるように構成されている。このように、遮熱板60が本発明の遮蔽板に相当する。
【0027】
即ち、カウルルーバ30とカウルフロントパネル53等とにより形成された横長空間Sのうちで、左側の遮熱板60から右側の遮熱板60までの空間がカウルルーバ30の外気導入用開口38と連通する外気導入空間Sfとなる。そして、カウルルーバ30の外気導入用開口38から流入した外気は外気導入空間Sf、及びカウルパネル50の開口部50eを通って車室R内に導かれる。また、左側の遮熱板60に対して左側の前記横長空間Sと、右側の遮熱板60に対して右側の前記横長空間SとがエンジンルームERと連通するエンジンルーム連通空間Seとなる。即ち、エンジンルームER内の空気は遮熱板60に遮られて外気導入空間Sf内の外気と混ざることがない。
【0028】
右側の遮熱板60の上側には、図5図6に示すように、庇状の雨樋70が設けられている。そして、前記雨樋70と右側の遮熱板60とが外気導入空間Sf内に設置されたワイパー24の駆動機構25に対する水掛かりを防止する防水壁として働くようになる。即ち、右側の遮熱板60が防水壁として働く雨樋70の一部を構成している。
【0029】
左右の遮熱板60は、図6に示すように、遮熱板本体部62とシール材64とから構成されている。遮熱板本体部62は、例えば、プラスチックを素材とした段ボールシートにより構成されている。そして、遮熱板本体部62の中央位置がカウルフロントパネル53上の受け台67に固定された支持部材65によって支持されている。また、遮熱板本体部62には、前記中央位置よりも上側に車両前後方向に延びるスリット状の切り込み部62sが形成されている。これにより、遮熱板本体部62が上方からの衝突荷重を受けることで途中から折れ曲がるようになる。即ち、スリット状の切り込み部62sが本発明の脆弱部に相当する。
【0030】
遮熱板60のシール材64は、図6に示すように、遮熱板本体部62の端縁から外側方向に一定幅で張り出すように形成されたシート状の部材であり、遮熱板本体部62の切り込み部62sも塞げるように構成されている。シール材64は、遮熱板60が支持部材65によってカウルフロントパネル53の受け台67に固定された状態で、雨樋70の下面、カウルルーバ30の内壁面、及びカウルフロントパネル53の上面に弾性変形した状態で接触するように構成されている。
【0031】
雨樋70は、図6に示すように、車幅方向外側(右側)が低くなるように傾斜した庇状部71と、庇状部71の右側で下方に曲げられたフランジ部71fと、庇状部71の左側で上方に曲げられた縦壁部71uとから構成されている。そして、雨樋70のフランジ部71fが遮熱板60に対してほぼ平行に保持されている。雨樋70は、庇状部71が連結部材72によりカウルルーバ30の内壁である天井支持部39に連結されることで、前記横長空間Sの天井位置に保持されている。即ち、雨樋70が発明の流入防止壁に相当する。
【0032】
<カウル構造の働きについて>
車両10のフェンダパネル15とエンジンフード17間からカウルルーバ30の右端部に入り込んだ雨水は、雨樋70及び遮熱板60によって遮られる。これにより、カウルルーバ30とカウルフロントパネル53等とにより形成された横長空間S(外気導入空間Sf)内に設置されたワイパー24の駆動機構25に対する水掛かりが防止される。また、遮熱板60が前記横長空間Sの左端部と右端部とを塞げるように構成されている。このため、左側の遮熱板60から右側の遮熱板60までの広い空間が外気導入空間Sfとなる。このため、車室R内から外気導入空間Sf内の空気が吸引される際、カウルルーバ30の外気導入用開口38から流入する外気の流速を小さくできる。この結果、カウルルーバ30の外気導入用開口38から外気導入空間Sf内に異物が吸引され難くなる。
【0033】
<本実施形態に係る車両10のカウル構造の長所について>
本実施形態に係る車両10のカウル構造によると、遮熱板60が雨樋70の一部を構成しているため、遮熱板60と雨樋70とを個別に設ける場合と比較して遮熱板60と雨樋70との設置スペースをコンパクトにできる。また、遮熱板60は横長空間Sの車幅方向における両端部に設けられているため、それらの遮熱板60間の空間がカウルルーバ30の外気導入用開口38と連通している。このため、カウルルーバ30の外気導入用開口38と連通する空間(外気導入空間Sf)を横長空間Sのほぼ全体の容積に等しくでき、前記外気導入空間Sfを従来よりも十分に大きくできる。このため、車室R側から外気導入空間Sf内の空気が吸引される際、カウルルーバ30の外気導入用開口38から流入する外気の流速を小さくできる。この結果、カウルルーバ30の外気導入用開口38から外気導入空間Sf内に異物が吸引され難くなる。
【0034】
また、雨樋70は、遮熱板60の上端を上側から覆う庇状部71と、その庇状部71の端縁位置で下方に張り出すフランジ部71fを備えている。このため、カウルルーバ30を介して雨樋70、及び遮熱板60に対して衝突荷重が加わる際に、雨樋70が遮熱板60から外れ難くなる。また、遮熱板60の遮熱板本体部62には、スリット状の切り込み部62s(脆弱部)が設けられているため、衝突荷重により遮熱板60が切り込み部62sの位置で折れ曲がり、衝突荷重を吸収できるようになる。
【0035】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、カウルルーバ30の右側のみに遮熱板60と雨樋70とを設ける例を示したが、カウルルーバ30の左側にも遮熱板60と雨樋70とを設けることは可能である。また、本実施形態では、遮熱板60と雨樋70とが別部品である例を示したが、遮熱板60と雨樋70とを一体に成形することも可能である。また、本実施形態では、遮熱板60の脆弱部をスリット状の切り込み部62sにより構成する例を示した。しかし、遮熱板60の脆弱部を折り曲げ線、あるいは薄肉部等により構成したり、強度の低い材質を使用して形成することも可能である。また、本実施形態では、遮蔽板の一例として遮熱板60を例示し、流入防止壁の一例として雨樋70を例示したが、遮蔽板として遮熱板60以外のものを使用し、流入防止壁として雨樋70以外のものを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10・・・・車両
20・・・・フロントガラス
30・・・・カウルルーバ
38・・・・外気導入用開口
39・・・・天井支持部(内壁)
50・・・・カウルパネル
53・・・・カウルフロントパネル(カウルパネル)
60・・・・遮熱板(遮蔽板)
62s・・・切り込み部(脆弱部)
64・・・・シール材
65・・・・支持部材
70・・・・雨樋(流入防止壁)
71f・・・フランジ部
71・・・・庇状部
ER・・・・エンジンルーム
S・・・・・横長空間
Se・・・・エンジンルーム連通空間(横長空間の他部)
Sf・・・・外気導入空間(外気導入用開口と連通する横長空間の一部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7