(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の部分制御対象のむだ時間から前記第2の部分制御対象のむだ時間を引いた差分の時間、前記第2の部分制御対象の測定点に対する目標値又は操作量を遅らせる第2のむだ時間差補償器
をさらに備える請求項1乃至4のいずれかに記載の制御装置。
前記第2の制御器に入力する目標値に対して、前記第1の部分制御対象の測定点に対する目標値と前記第2の部分制御対象の測定点を最終的に整定させる最終目標値の比を乗じて、前記第2の制御器に入力する請求項1乃至6のいずれかに記載の制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態における制御系のブロック図である。
【
図2】従来の制御法による平均温度と多点間の温度差のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図3A】本実施の形態における態様2(構成1+2)におけるシミュレーション結果を示すグラフ(1)である。
【
図3B】本実施の形態における態様2におけるシミュレーション結果を示すグラフ(2)である。
【
図4A】本実施の形態における態様3(構成1+2+3)におけるシミュレーション結果を示すグラフ(1)である。
【
図4B】本実施の形態における態様3におけるシミュレーション結果を示すグラフ(2)である。
【
図5A】本実施の形態における態様4(構成1+2+3+4)におけるシミュレーション結果を示すグラフ(1)である。
【
図5B】本実施の形態における態様4におけるシミュレーション結果を示すグラフ(2)である。
【
図6A】本実施の形態における態様5(構成1+2+3+4+5)で異なる目標値におけるシミュレーション結果を示すグラフ(1)である。
【
図6B】本実施の形態における態様5で異なる目標値におけるシミュレーション結果を示すグラフ(2)である。
【
図7A】本実施の形態における態様5で同一目標値におけるシミュレーション結果を示すグラフ(1)である。
【
図7B】本実施の形態における態様5で同一目標値におけるシミュレーション結果を示すグラフ(2)である。
【
図8A】本実施の形態における態様6(構成1+3)におけるシミュレーション結果を示すグラフ(1)である。
【
図8B】本実施の形態における態様6におけるシミュレーション結果を示すグラフ(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
1.本実施の形態の基本構成
まず、本実施の形態の基本構成について説明する。本実施の形態では、多点温度制御などの多入出力制御系(多入出力制御システム)において、入力に対して測定値(例えば、温度)の立ち上がりが比較的遅い点(この点に対する制御系を、以下スローモード(Slow mode)とも称する)に着目し、その出力に上記測定点以外の測定点(この点に対する制御系を、以下ファストモード(Fast mode)とも称する)を追従させる。このような構成を基本構成とし、多点間の温度差とともに平均温度の過渡特性を所望の特性に制御する。また、PID制御器設計時にむだ時間を考慮することなく設計可能な制御装置及び設計方法を提案する。更に、多点の目標値が異なる場合であっても、立ち上がりの温度比率(目標値に対する測定温度の比率)を均等にし、ほぼ同じタイミングで各点を目標値に到達させる。
【0016】
なお、本実施の形態は温度を制御する例を用いて説明するが、温度以外の物理量を制御してもよい。また、制御する温度は、測定点で測定(検出)される例を用いて説明するが、測定点で測定された温度に基づいて求められる測定点以外の温度、又は、測定点で測定された物理量に基づいて求められる温度を制御してもよい。換言すると、制御する物理量は、測定点で直接測定される必要はない。
【0017】
2.制御装置の構成例
図1は、本実施の形態における多入出力制御系のブロック図である。本実施の形態における制御装置10は、制御対象1の複数の測定点における各物理量を制御する。制御装置10は、例えば、第1のPID制御器(第1の制御器)11と、第1のむだ時間差補償器12と、第1のむだ時間補償器13と、第2のむだ時間差補償器14と、フィードフォワ―ド補償器(FF補償器)15と、第2のPID制御器(第2の制御器)16と、第2のむだ時間補償器17と、目標値調整器18とを備える。なお、後述するように、第1のむだ時間差補償器12、第1のむだ時間補償器13、第2のむだ時間差補償器14、FF補償器15、第2のむだ時間補償器17、及び、目標値調整器18は適宜省略することができる。
【0018】
制御対象1は、複数の測定点と各測定点に対応する複数の入力を有する。制御対象1は、第1の部分制御対象1Aと第2の部分制御対象1Bとに分けて図示されている。第1の部分制御対象1Aは、複数の測定点のうち入力に対する応答が他の測定点での応答に比べて遅い測定点(第1測定点)を出力とし、第1測定点に対応する入力を入力とする。第2の部分制御対象1Bは、複数の測定点のうち第1の部分制御対象1Aの測定点以外の測定点(第2測定点)を出力とし、該測定点に対応する入力を入力とする。第2の部分制御対象1Bの出力は、換言すれば、入力に対する応答が比較的速い測定点である。なお、第1の部分制御対象1A及び第2の部分制御対象1Bはそれぞれ、外乱を受ける場合がある。また、第1の部分制御対象1Aは、第2の部分制御対象1Bの入力等からの干渉を受ける場合があり、逆も同じである。
【0019】
第1のPID制御器11は、第1の部分制御対象1Aに対してPID制御を行う。第2のPID制御器16は、第2の部分制御対象1Bに対してPID制御を行う。第1のPID制御器11及び第2のPID制御器16の設計手法は、従来の手法を用いることができる。なお、PID制御以外の他の制御法を用いてもよい。
【0020】
以下、本実施の形態における各構成例を、
図1を参照して説明する。
【0021】
(構成1)
本実施の形態は、上述の基本構成で述べたように、スローモードの出力にファストモードの出力を追従させる構成を有する。例えば、第2の部分制御対象1Bの目標値SV2を、第1の部分制御対象1Aの出力PV1に基づいて定め、第2のPID制御器16に与える。なお、第1の部分制御対象1Aの出力PV1をそのまま第2の部分制御対象1Bの目標値SV2としてもよいが、後述するように、第1のむだ時間補償器13、第2のむだ時間差補償器14、及び/又は、目標値調整器18により、第1の部分制御対象1Aの出力PV1に基づいて第2の部分制御対象1Bの目標値SV2を求めることができる。
図1に示すように、ブロック線図の左側(信号の上流側。マスタと呼ぶ場合もある)にスローモードを配置し、右側(信号の下流側。スレーブと呼ぶ場合もある)にファストモードを配置する。
【0022】
このような構成により、スローモードとファストモードの2点間の温度差を零に近づけるような制御が可能となる。
【0023】
(構成2)
本実施の形態は、スローモードの出力PV1に対して第1の部分制御対象1Aの時間遅れを補償してファストモードにおける目標値SV2を求める構成(第1のむだ時間補償器13)を有する。
【0024】
スローモードの出力(第1の部分制御対象1Aの出力PV1)をそのままファストモードにおける目標値SV2とした場合、ファストモードの応答は、スローモードにおける時間遅れに加えて、ファストモードの時間遅れ分(むだ時間分)遅れて出力される。本実施の形態の第1のむだ時間補償器13は、第1の部分制御対象1Aの出力PV1から、第1の部分制御対象1Aのむだ時間成分を除去する。換言すると、第1のむだ時間補償器13からの出力は、スローモードの遅れ無し出力である。なお、多入出力制御系に干渉項が存在する場合、目標値SV2が定常偏差を持ち、その結果、ファストモードの出力PV2にも定常偏差が生じる。そこで、第1のむだ時間補償器13では、干渉項や外乱信号をそれに含む信号を出力する。
【0025】
具体的には、第1のむだ時間補償器13は、Smith法の制御構造を応用して実現することができる。例えば、第1のむだ時間補償器13は、第1の部分制御対象1Aのむだ時間成分を含む第1の部分制御対象1Aのモデル(第1のモデル)と、第1の部分制御対象1Aのむだ時間成分を除いた第1の部分制御対象1Aのモデル(第2のモデル)を有する。例えば、第1のモデルには第1の部分制御対象1Aに対する操作量MV1を入力し、第1のモデルの出力を得る。また、例えば、第2のモデルには第1のPID制御器11からの出力を入力し、第2のモデルの出力を得る。第1のむだ時間補償器13は、例えば、第1の部分制御対象1Aの出力PV1から第1のモデルの出力を減算して、干渉項と外乱に相当する成分を求める。さらに、第1のむだ時間補償器13は、減算結果に第2のモデルの出力を加算して出力する。なお、上述の加算及び減算の順序が逆でもよいことはいうまでもない。第2のむだ時間補償器17は第1のむだ時間補償器13と同様に、第2の部分制御対象1Bに対する上記第1のモデルと第2のモデルを有し、同様の処理を行うように構成することができる。
【0026】
なお、第1のむだ時間補償器13からの出力を、第1の部分制御対象1Aに対するフィードバックループにおけるフィードバックとしてもよい。また、第2の部分制御対象1Bの出力に対しても、第2のむだ時間補償器17より第2の部分制御対象1Bの時間遅れを補償して、第2の部分制御対象1Bに対するフィードバックループにおけるフィードバックとしてもよい。
【0027】
このような構成により、ファストモードの出力が、スローモードの時間遅れとファストモードの時間遅れの双方を含むことを回避できる。また、外乱や干渉項を同定あるいは推定せずとも、ファストモードの出力での定常偏差を少なく又は零にできる。
(構成3)
【0028】
本実施の形態は、ファストモードにおける目標値応答について、第2のPID制御器16とFF補償器15を有する構成とする。
【0029】
FF補償器15は、第2の部分制御対象1Bの逆特性を有する。第2の部分制御対象1Bの目標値SV2をFF補償器15と第2のPID制御器16に与え、FF補償器15の出力と第2のPID制御器16の出力を加算して第2の部分制御対象1Bに与える。
【0030】
このような構成により、ファストモード自身の追従性を改善できる。換言すると、ファストモード自身の持つ動特性の遅れを改善し、スローモードの出力に対してほぼ遅れなく追従可能となる。これにより、スローモードとファストモードの温度差をより小さくすることが可能である。
【0031】
(構成4)
本実施の形態は、スローモードとファストモードの間のむだ時間差を補償する構成(第1のむだ時間差補償器12、第2のむだ時間差補償器14)を有する。
【0032】
スローモードの第1の部分制御対象1Aとファストモードの第2の部分制御対象1Bは、各々のむだ時間に差がある。したがって、第1のむだ時間補償器13からの遅れ無し出力をファストモードにおける目標値SV2とした場合、第1の部分制御対象1Aの出力PV1は第1の部分制御対象1Aのむだ時間分(L1とする)だけ遅れて出力されるのに対して、第2の部分制御対象1Bの出力PV2は第2の部分制御対象1Bのむだ時間分(L2とする)だけ遅れて出力される。その結果、両モードの出力にはむだ時間差分だけ時間差が生じる。これにより、同じ時間でみると温度差が生じる。
【0033】
本実施の形態の第1のむだ時間差補償器12は、第2の部分制御対象1Bのむだ時間が第1の部分制御対象1Aのむだ時間より長い場合(L2>L1)、第1の部分制御対象1Aの操作量を遅らせる。第1のむだ時間差補償器12は、例えば第2の部分制御対象1Bのむだ時間から第1の部分制御対象1Aのむだ時間を引いた差分(L2−L1)の時間だけ遅らせる。第2のむだ時間差補償器14は、第1の部分制御対象1Aのむだ時間が第2の部分制御対象1Bのむだ時間より長い場合(L1>L2)、第2の部分制御対象1Bの目標値又は操作量を遅らせる。第2のむだ時間差補償器14は、例えば第1の部分制御対象1Aのむだ時間から第2の部分制御対象1Bのむだ時間を引いた差分(L1−L2)の時間だけ遅らせる。
【0034】
なお、第2の部分制御対象1Bのむだ時間が第1の部分制御対象1Aのむだ時間より長い場合、第1のむだ時間差補償器12を有効にし、第1の部分制御対象1Aのむだ時間が第2の部分制御対象1Bのむだ時間より長い場合、第2のむだ時間差補償器14を有効にする切り替え部(図示せず)をさらに有しても良い。
【0035】
このような構成により、ファストモードの出力波形の形状がスローモードの出力波形の形状に一致しても、両出力にむだ時間差分だけ時間的にずれが生じ、出力の差(例えば、温度差)が一致しないという状況を改善できる。換言すると、応答波形の形状はスローモードの波形に一致させ、時間軸ではむだ時間の長いモードに一致させることで、両者の温度差の最小化を図ることが可能となる。
【0036】
(構成5)
本実施の形態は、スローモードとファストモードにおける目標値が異なる場合でも、各モードにおける目標値の比を用いてファストモードにおける目標値を適切に設定する構成(目標値調整器18)を有する。
【0037】
目標値調整器18は、スローモードにおける目標値r1とファストモードにおける目標値r2の比(r2/r1)を入力される信号に乗じて出力する。ここでのファストモードにおける目標値r2とは、スローモードの出力に応じて動的に設定される目標値SV2ではなく、ファストモードの出力PVを最終的に到達させたい本来の目標値(本明細書において、最終目標値と称する)である。ここでのスローモードにおける目標値r1は、上述の目標値SV1と同じであるが、便宜上r1と記す。
【0038】
このような構成により、温度差の制御に加え、多点間の温度の比を直接制御することができる。より具体的には、多点の目標値が異なる場合にも、スローモードの応答に対してファストモードの応答をそれらの比率を一定に制御しながら異なる目標値に追従させることができる。また、多点での目標値への到達時間を一致させ、またその応答の傾き(レート)を直接的に制御することができる。
【0039】
上述の構成1を基本構成とし、構成2乃至構成5を適宜組み合わせることができる。例えば本実施の形態の制御装置10は、以下の各態様のように構成することができるが、この組み合わせのみに限定されるものではない。
【0040】
(態様1)
制御装置10は上述の構成1で構成してもよい。換言すると、制御装置10は、第1のPID制御器11と第2のPID制御器16を備える。第2の部分制御対象1Bの目標値として第1の部分制御対象1Aの出力を用いる。
【0041】
(態様2)
制御装置10は、上述の構成1と構成2で構成してもよい。換言すると、制御装置10は、第1のPID制御器11と、第2のPID制御器16と、第1のむだ時間補償器13を備える。制御装置10は、第2のむだ時間補償器17をさらに備えても良い。第2の部分制御対象1Bの目標値として、第1のむだ時間補償器13の出力を用いる。
【0042】
(態様3)
制御装置10は、上述の構成1〜構成3で構成してもよい。換言すると、制御装置10は、第1のPID制御器11と、第2のPID制御器16と、第1のむだ時間補償器13と、FF補償器15を備える。制御装置10は、第2のむだ時間補償器17をさらに備えても良い。第2の部分制御対象1Bの目標値として、第1のむだ時間補償器13の出力を用いる。
【0043】
(態様4)
制御装置10は、上述の構成1〜構成4で構成してもよい。換言すると、制御装置10は、第1のPID制御器11と、第2のPID制御器16と、第1のむだ時間補償器13と、FF補償器15と、第1のむだ時間差補償器12と、第2のむだ時間差補償器14を備える。制御装置10は、第2のむだ時間補償器17をさらに備えても良い。第2の部分制御対象1Bの目標値として、第2のむだ時間差補償器14の出力を用いる。
【0044】
(態様5)
制御装置10は、上述の構成1〜構成5で構成してもよい。換言すると、制御装置10は、第1のPID制御器11と、第2のPID制御器16と、第1のむだ時間補償器13と、FF補償器15と、第1のむだ時間差補償器12と、第2のむだ時間差補償器14と目標値調整器18を備える。制御装置10は、第2のむだ時間補償器17をさらに備えても良い。第2の部分制御対象1Bの目標値として、目標値調整器18の出力を用いる。
【0045】
(態様6)
制御装置10は、上述の構成1と構成3で構成してもよい。換言すると、制御装置10は、第1のPID制御器11と、第2のPID制御器16と、FF補償器15を備える。第2の部分制御対象1Bの目標値として第1の部分制御対象1Aの出力を用いる。
【0046】
(態様7)
制御装置10は、上述の構成1と構成5で構成してもよい。換言すると、制御装置10は、第1のPID制御器11と、第2のPID制御器16と、目標値調整器18を備える。第2の部分制御対象1Bの目標値として、目標値調整器18の出力を用いる。
【0047】
(態様8)
上述の態様1、態様2、及び、態様6に対して、構成4を更に付加してもよい。この場合、第2の部分制御対象1Bの目標値として、第2のむだ時間差補償器14の出力を用いる。
【0048】
(態様9)
上述の態様1、態様2、態様6、及び、態様8に対して、構成5を更に付加してもよい。第2の部分制御対象1Bの目標値として、目標値調整器18の出力を用いる。
【0049】
3.シミュレーション結果
次に、2入出力温度制御でのシミュレーション結果を示す。
図2は、従来の制御法による平均温度と多点間の温度差のシミュレーション結果を示す。図では、多点制御、特許文献1に示す方法及び特許文献2に示す方法について、制御対象の2点の平均温度21と各点間の温度差22の結果を示している。図中、多点制御における結果を実線で示し、符号にaを付している。また、特許文献1に示す方法における結果を破線で示し、符号にbを付している。特許文献2に示す方法における結果を一点鎖線で示し、符号にcを付している。図より、多点制御、特許文献1に示す方法、及び特許文献2に示す方法での最大温度差は、それぞれ約68℃、約18℃、約25℃である。
【0050】
図3A及び
図3Bは、上述の態様2(構成1+2)におけるシミュレーション結果を示す。換言すると、干渉項と外乱成分を含む、スローモードの遅れ無し出力(第1のむだ時間補償器13の出力)をファストモードにおける目標値SV2としたシミュレーション結果を示す。
図3Aの上段は各モードにおける目標値SV1、SV2と出力PV1、PV2を示す。同図下段は各モードの制御入力MV1、MV2を示す。
図3Bの上段は、各点の平均温度の目標値31、平均温度32、各点間の温度差の目標値41、及び、各点間の温度差42を示す。同図下段は制御入力を表している。
図3B上段より、最大温度差(各点間の最大温度差)は約25℃であり、従来法と同等程度であることがわかる。また、目標値からの行き過ぎ量や整定時間といった動特性も改善されていることが確認できる。さらに、干渉があるにもかかわらず定常偏差は零となっている。
【0051】
図4A及び
図4Bは、上述の態様3(構成1+2+3)におけるシミュレーション結果を示す。換言すると、ファストモードにFF補償器15を導入した場合のシミュレーション結果を示す。
図4A上段より、FF補償器15によりファストモードの応答性、特に行き過ぎ量が低減し、その結果最大温度差が約15℃まで改善されたことがわかる。
【0052】
図5A及び
図5Bは、上述の態様4(構成1+2+3+4)におけるシミュレーション結果を示す。換言すると、スローモードとファストモードの制御対象のむだ時間の差を補償したシミュレーション結果を示す。なお、この例では、両モードのむだ時間の差は0.5秒であり、スローモードの方がファストモードに比べ、むだ時間が長い。
図5A上段に示すように、
図4A上段に示す態様3に対して、ファストモードの出力PV2の立ち上がりが0.5秒遅れる。このように、ファストモードの出力PV2の立ち上がりとスローモードの出力PV1の立ち上がりが一致し、特に立ち上がり部分での両モードの温度差が更に小さくなることがわかる。
図5B上段を見ても、温度差が小さくなっていることが確認できる。この例では最大温度差も12℃に改善された結果となる。
【0053】
図6A及び
図6Bは、上述の態様5(構成1+2+3+4+5)で異なる目標値におけるシミュレーション結果を示す。換言すると、上述の構成1から構成5の全てを含む制御装置10での異なる目標値におけるシミュレーション結果である。この例では、目標値としてスローモードにおける目標値r1を100℃、ファストモードにおける目標値r2を200℃とした例を示す。態様5では、各目標値に対する温度の比が制御されており、
図6A上段より、目標値への到達時間も温度の比の制御に応じてほぼ同一となっていることが確認できる。また、
図6B上段の温度差も、定常状態で100℃(目標値の差)に制御されていることが確認できる。
【0054】
図7A及び
図7Bは、上述の態様5で同一目標値におけるシミュレーション結果を示す。換言すると、上述の構成1から構成5の全てを含む制御装置10での同一目標値におけるシミュレーション結果を示す。
図7Bより、平均温度特性では過渡特性(行き過ぎ量及び整定時間)も改善されており、また最大温度差は12℃であり、従来法より優れた効果を奏することが確認できる。
【0055】
図8A及び
図8Bは、上述の態様6(構成1+3)におけるシミュレーション結果を示す。換言すると、ファストモードにFF補償器15を導入し、2自由度制御を適用した場合のシミュレーション結果を示す。従来の多点PID制御器に対して、応答が改善されることは確認できる。ただし、むだ時間分の遅れが生じるため応答が遅れる。
4.3点以上の制御
【0056】
上述の実施の形態では、主に2つの測定点(2点)を制御する例を用いて説明したが、本実施の形態は3点以上を制御する場合にも適用可能である。3点以上の制御の場合には、例えば入力に対する応答が最も遅い点に対する制御系をスローモードとし、それ以外の点に対する各制御系をファストモードとして信号の下流側に並列に配置してもよい。この場合、応答が最も遅いスローモードの出力をファストモードのすべての制御系における目標値としてもよい。なお、応答が最も遅い点に対する制御系をスローモードとする以外に、入力に対する応答が他の測定点に対して相対的に遅い点のひとつに対する制御系をスローモードとしてもよい。また、目標値と出力の偏差が大きいモードをマスタと捉え上流に配置し、その出力をそれ以外のモードへの目標値とした構造にしてもよい。