(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792801
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】細長部材の保持構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20201119BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20201119BHJP
F16L 3/137 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
H02G3/30
B60R16/02 623C
F16L3/137
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-131044(P2017-131044)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-17145(P2019-17145A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康弘
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−125523(JP,A)
【文献】
特開平8−291881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
B60R 16/02
F16L 3/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長部材と、
前記細長部材に巻き付け固定される結束バンドと、
前記細長部材の延在方向に長い形状をなす保持部を有し、前記細長部材に外装される外装部材とを備え、
前記保持部は、
前記延在方向に延びる平面状をなしており、外部に露出する平坦面と、
前記平坦面に開口して設けられ、前記結束バンドを受け入れる規制溝と、
前記平坦面に開口して設けられ、前記規制溝と連通しており、前記細長部材を受け入れる電線受入溝と、を備え、
前記電線受入溝の内径は、前記結束バンドの外径よりも小さい径となっており、
前記結束バンドが前記規制溝の内壁に係止されることで前記細長部材の前記外装部材に対する変位が規制されている、細長部材の保持構造。
【請求項2】
前記細長部材が電線であり、
前記外装部材が、前記電線を保持するハウジングである、請求項1に記載の細長部材の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、細長部材の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線と、この電線に外装されるコルゲートチューブなどの外装部材とを備え、自動車の車両に配策されるワイヤーハーネスが知られている。このようなワイヤーハーネスにおいて、外装部材に対して電線を固定するために、外装部材に保持部材を組み付け、電線と保持部材とを結束バンドで結束する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−181961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、電線と保持部材とが共に束ねられているため、保持部材に対する電線の動きがほとんど許容されない状態となり、保持部材が組み付けられている外装部材に対する電線の動きもほとんど許容されない状態となる。このため、電線が接続される相手側部品の製造公差や、相手側部品とワイヤーハーネスとの組付公差を吸収できず、ワイヤーハーネスと相手側部品とが適正に組み付けられなくなってしまうおそれがある。また、結束バンドが電線に対して全周にわたって接触していないため、電線に強い引っ張り力が加わった場合に、電線の結束位置がずれてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される細長部材の保持構造は、細長部材と、前記細長部材に巻き付け固定される結束バンドと、前記細長部材に外装される外装部材とを備え、前記外装部材が、前記結束バンドを受け入れる規制溝を有し、前記結束バンドが前記規制溝の内壁に係止されることで前記細長部材の前記外装部材に対する変位が規制されている。
【0006】
上記の構成によれば、結束バンドと規制溝の内壁との間に、一定のクリアランスを設定することによって、電線が接続される相手側部品の製造公差や、相手側部品とワイヤーハーネスとの組付公差を吸収することができる。また、結束バンドを細長部材の全周にわたって接触させることができるから、細長部材に引っ張り力が加えられた場合であっても、細長部材に対する結束バンドの巻き付け位置がずれてしまうことを抑制できる。
【0007】
上記の構成において、前記細長部材が電線であり、前記外装部材が、前記電線を保持するハウジングであっても構わない。
【発明の効果】
【0008】
本明細書によって開示される技術によれば、公差を吸収でき、また、細長部材に対する結束バンドの巻き付け位置がずれてしまうことを抑制できる細長部材の保持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】ハウジングが組み付けられた電線に結束バンドを巻き付ける工程を示す斜視図
【
図7】ハウジングが組み付けられた電線に結束バンドを巻き付ける工程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態を、
図1〜
図7を参照しつつ説明する。本実施形態の細長部材の保持構造は、車両に搭載される機器のケースCに組み付けられるワイヤーハーネス1の一部である。ワイヤーハーネス1は、電線11(細長部材に該当)を備える端子付き電線10と、電線11に巻き付け固定される結束バンド20と、電線11に外装されるハウジング30(外装部材に該当)とを備えている。
【0011】
端子付き電線10は、
図4に示すように、電線11の端末に端子金具12が接続された一般的な構成のものである。端子金具12は、電線11の端末に圧着される圧着部13と、この圧着部13から連なる接続部14とを備えている。なお、
図4、
図5および
図7では、端子付き電線10について、断面を詳細に示さず、全体を模式的に示している。
【0012】
結束バンド20は、合成樹脂製であって、
図1および
図5に示すように、細長い帯状のバンド部21と、このバンド部21の一端に設けられたヘッド部22とを備える周知の構成の部材である。バンド部21の一面には、詳細に図示しないが、鋸歯状の係止突起が多数並んで配置されている。一方、ヘッド部22には、バンド部21を挿通可能なバンド挿通孔23が設けられている。このバンド挿通孔23の内面には、詳細に図示しないが、係止片が設けられており、係止突起が係止片に引っかかることによって、バンド部21は、ヘッド部22に対して挿し込み方向へは変位できるが、引き抜き方向へは変位不能となっている。
【0013】
バンド部21をヘッド部22に挿通させて、内側に電線11が挿通されるようにループ状とし、締め付けると、結束バンド20が電線11に対して解除不能に巻き付け固定される。
【0014】
ハウジング30は、合成樹脂製であって、
図1に示すように、ハウジング本体31と、このハウジング本体31から連なる保持部41とを備えている。
【0015】
ハウジング本体31は、
図4に示すように、厚みのある円板状の基壁部32と、この基壁部32の周縁から基壁部32に対して垂直に延びる円筒状の筒部33とを備えている。基壁部32は、円板の中心位置に、電線11を挿通可能な電線挿通孔34を有している。筒部33の内部には、電線11と筒部33の内壁面との間をシールするゴム栓35と、このゴム栓35の抜け止めのためのリテーナ36とが収容されている。ハウジング本体31は、外周面に、全周にわたって延びるシール装着溝37を有しており、ここには、ハウジング本体31と、相手側である機器のケースCとの間をシールするためのシールリング38が嵌め付けられている。
【0016】
保持部41は、
図1に示すように、基壁部32において筒部33とは反対側の面から延びる、半円柱状の部分であって、基壁部32と同心に配置されている。この保持部41の外面は、基壁部32と平行な半円形の端面42と、この端面42の周縁のうち半円の直径をなす部分から基壁部32まで延びる平坦面43と、半円の円弧をなす部分から基壁部32まで延びる弧面44とを有している(
図2、
図3を併せて参照)。
【0017】
保持部41は、
図2に示すように、内部に電線11を受け入れる電線受入溝45と、内部に結束バンド20のバンド部21を受け入れる規制溝46とを有している。
【0018】
電線受入溝45は、
図2、
図6および
図7に示すように、平坦面43から凹むハーフパイプ状の溝であって、電線挿通孔34の孔縁から端面42まで延びる溝内面45Aによって区画されている。
【0019】
規制溝46は、
図2、
図4、
図6および
図7に示すように、溝内面45Aから外側に向かって(弧面44に向かって)凹む溝であって、
図4および
図5に示すように、端面42と平行で、互いに向かい合って配置される一対の溝側面46A(内壁に該当)と、一対の溝側面46A間を連結し、弧面44の湾曲形状に倣うように湾曲しながら延びる溝底面46Bとで区画されている。また、規制溝46は、両端に、それぞれ平坦面43に開口する開口部47A、47Bを有している。規制溝46の幅(一対の溝側面46A間の距離)は、バンド部21の幅よりもわずかに大きくなっている。また、規制溝46の深さ(溝内面45Aと溝底面46Bとの距離)は、バンド部21の厚みよりも大きくなっている。
【0020】
ハウジング30と結束バンド20とを端子付き電線10に組み付ける手順は、例えば以下のようである。
【0021】
まず、
図6に示すように、電線11を電線挿通孔34に挿通して、ハウジング30を端子付き電線10に組み付ける。電線11において、端子金具12に接続されている端末に近い部分は、電線受入溝45に嵌まり込んでいる。
【0022】
次に、
図6および
図7に示すように、規制溝46の一方の開口部47Aから、結束バンド20のバンド部21を挿入し、先端部が電線11の周りをまわって反対側の開口部47Bから導出されるようにする。続いて、バンド部21をヘッド部22に挿入して結束バンド20をループ状とし、電線11に密着状態で巻き付くように締め付けて固定する。結束バンド20は、電線11に対して変位できない程度に締め付けられていればよい。ハウジング30において、基壁部32と平坦面43とで区画される空間は、
図3に示すように、収容空間48となっており、この収容空間48の内部にヘッド部22が配置される。なお、余ったバンド部21の先端部は、使用時に邪魔にならないように切断される。
【0023】
結束バンド20が電線11に巻き付け固定された状態では、
図4および
図5に示すように、バンド部21が規制溝46の内部に嵌まり込んでいる。電線11がハウジング30に対して電線11の延び方向に沿う方向に変位しようとすると、バンド部21が溝側面46Aに突き当たり、電線11のそれ以上の変位が規制される。
【0024】
ワイヤーハーネス1が機器のケースCに組み付けられる際には、
図3に示すように、ケースCに設けられた取付孔Hにハウジング本体31が嵌合される。端子金具12の接続部14が、ケースCの内部に配置された機器の相手側端子に対して、ボルトにより接続される。ここで、機器の製造公差や、ケースCとワイヤーハーネス1との組付公差などによって、接続部14と相手側端子との位置にわずかにずれが生じることがある。
【0025】
上述したように、規制溝46の幅(一対の溝側面46A間の距離)は、バンド部21の幅よりもわずかに大きくなっており、バンド部21と溝側面46Aとの間には、わずかな隙間があるから、この隙間の大きさ分だけ、ハウジング30に対する端子付き電線10の動きが許容されている。これにより、製造公差や組付公差を吸収して接続部14と相手側端子とを確実に接続することができる。
【0026】
以上のように本実施形態によれば、ワイヤーハーネス1は、電線11と、電線11に巻き付け固定される結束バンド20と、電線11に外装されるハウジング30とを備え、ハウジング30が、結束バンド20を受け入れる規制溝46を有し、結束バンド20が規制溝46の溝側面46Aに係止されることで電線11のハウジング30に対する変位が規制されている。
【0027】
上記の構成によれば、結束バンド20と溝側面46Aとの間に、一定のクリアランスを設定することによって、機器の製造公差や、ケースCとワイヤーハーネス1との組付公差を吸収することができる。また、結束バンド20を電線11の全周にわたって接触させることができるから、電線11に強い引っ張り力が加えられた場合であっても、電線11に対する結束バンド20の巻き付け位置がずれてしまうことを抑制できる。
【0028】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)条実施形態では、電線11に対して1本の結束バンド20が巻き付け固定されていたが、細長部材に巻き付け固定される結束バンドは2本以上であっても構わない。
【0029】
(2)上記実施形態では、細長部材が電線であったが、細長部材は細長い部材であれば、種類、材質等に特に制限はなく、例えば、紐、合成樹脂製のチューブ、金属棒材などであっても構わない。
【0030】
(3)上記実施形態では、外装部材がハウジングであったが、外装部材は細長部材に外装される部材であれば、種類、材質等に特に制限はなく、例えば、合成樹脂製のチューブ、金属パイプ、シールドシェルなどであっても構わない。
【符号の説明】
【0031】
1…ワイヤーハーネス(細長部材の保持構造)
22…電線(細長部材)
20…結束バンド
30…ハウジング(外装部材)
46…規制溝
46A…溝側面(内壁)