(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、ラジアルラインスロットアレイアンテナ等の平板状アンテナが、電波送受信用アンテナとして用いられる。
【0003】
このような電波送受信用アンテナはガラス基板と、ガラス基板上に設けられたパターンを含むメタル層を有する積層基板からなる。
【0004】
このような積層基板は、ガラス基板に対してスパッタリング、蒸着、電解メッキ、または無電解メッキを施してメタル層を形成し、このメタル層に対してエッチング処理を施すことにより得られる。
【0005】
またガラス基板に対してメタル箔を粘着層を介して接着し、このメタル箔に対してエッチング処理等を施すことによりパターンを含むメタル層を形成することも考えられている。
【0006】
ところで、一般にメタル層の表面粗さを小さくすることにより、メタル層の導体損失を抑えることができると考えられており、この場合は、電波送受信用アンテナの性能を高めることができる。
【0007】
しかしながら、現在、メタル層の表面粗さを確実に小さくする技術は開発されていない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
以下、図面を参照して第1の実施の形態について説明する。
図1(a)〜(g)乃至
図3は第1の実施の形態を示す図であり、このうち
図1(a)〜(g)は、電波送受信用アンテナの製造方法を示す工程図、
図2は電波送受信用アンテナを示す側断面図、
図3は電波送受信用アンテナを示す平面図である。
【0016】
図2および
図3に示すように、電波送受信用アンテナ10は、例えばラジアルラインスロットアレイアンテナ等の平板状アンテナからなる。
【0017】
このような電波送受信用アンテナ10は、ガラス基板11と、ガラス基板11表面に粘着層12を介して設けられたパターン13pを含むメタル層13と、メタル層13に設けられた屈折層14と、屈折層14上に設けられたガラス基板15とを備えている。
【0018】
また、ガラス基板11の裏面には導波層16が設けられている。
【0019】
上述のように、このような構成からなる電波送受信用アンテナ10は、例えば放送受信用アンテナ、衛星通信用アンテナ等の電波送受信用アンテナとして用いられる。
【0020】
また
図2および
図3に示すように、電波送受信用アンテナ10のメタル層13には、電波を伝搬するためのスロット状の開口を構成するパターン13pが形成されている。メタル層13に形成されたパターン13pは、メタル層13に対して島状の孤立領域を形成するパターンではない。
【0021】
ここで、「パターン13pが島状の孤立領域を形成する」とは、メタル層13に形成されたパターンが島状に閉じた領域を形成することをいい、パターンに囲まれた孤立領域が他の領域と連続しないことをいう。
【0022】
さらにまた、メタル層13上には例えばITO(Indium Tin Oxide)等の酸化防止膜18が設けられている。さらに酸化防止膜18上には、上述のように屈折層14が設けられている。この屈折層14は誘電体または可変誘導率誘電体を含み、例えばガラス基板15側から受信される電波を屈折させて、この電波を適切な方向に向かせてメタル層13に通したり、メタル層13側から送られる電波を屈折させてガラス基板15側から送信するものである。
【0023】
次に各構成部材について更に詳述する。ガラス基板11、15としては、1.1mm以下の厚みをもつ石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス、強化ガラスを用いることができる。このうち、非誘電率が低い石英ガラスを用いることが好ましい。
【0024】
また、ガラス基板11、15の形状としては、G4、G5サイズ(730mm×920mm)、あるいはG8サイズ(2500mm×2200mm)のものを用いることができ、また多面付けされたガラス基板を用いることもできる。
【0025】
また粘着層12としては、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーンゴム系接着剤、プラスチック系接着剤を用いることができる。この場合、液状接着剤およびシート状接着剤のいずれを用いることができる。
【0026】
液状接着剤を用いた場合、コーター機を利用して接着剤を均一に塗布することができ、また接着剤の厚みを調整できる。
【0027】
シート状接着剤を用いた場合、シート状接着剤をガラス基板11上に貼合すれば良いので、粘着層12を容易に形成することができる。
【0028】
また、高周波帯の電波を送受信する場合は、粘着層12として、適正な低比誘電率、適正な誘電正接をもつものを用いる。
【0029】
一般に、絶縁体(誘電体)に電界を加えた際に誘電分極が生じるが、誘電分極が生じて絶縁体の中で電界が変化する程度を「比誘電率」という。
【0030】
また誘電正接とは、絶縁体(誘電体)内での電気エネルギー損失の度合いを表す数値をいう。
【0031】
次にメタル層13としては、金、銀、銅、NiTi等の金属を用いることができるが、コストと抵抗値を考慮すると、銅(Cu)を用いることが好ましい。このようなメタル層13としては、例えば圧延銅からなる銅箔13を用いることができる。
またメタル層13は、1.5〜10μmの厚みをもつ。
【0032】
また、メタル層13の表面粗さは、アンテナとしての機能を発揮するためRmaxが100nm以下となっていることが好ましい。このため後述のようにメタル層13の表面に対して研磨作業が施される。
【0033】
次に電波送受信用アンテナの製造方法について、
図1(a)〜(g)により説明する。
まず、ガラス基板11を準備し(
図1(a))、このガラス基板11上に粘着層12を設ける(
図1(b))。
【0034】
この場合、粘着層12は、液状接着剤をコーター機でガラス基板11上に塗布するか、またはシート状接着剤をガラス基板11上に貼合することにより形成される。
【0035】
次に
図1(c)に示すように、圧延銅からなるメタル層13を、ガラス基板11上に粘着層12を介して接着する。このことにより、ガラス基板11と、ガラス基板11上に粘着層12を介して接着されたメタル層13とを備えた積層基板10Aが得られる。
【0036】
次に
図1(d)に示すように、積層基板10Aのメタル層13に対して研磨装置20を用いて物理的な研磨作業が施される。この場合、研磨装置20としては研磨粒子を用いないポリッシュ(バフ研磨)装置、あるいは研磨剤および研磨液を用いる研磨装置を用いることができる。
【0037】
なお、メタル層13に対して研磨装置20を用いて物理的な研磨作業を施す代わりに、メタル層13に対して、化学薬品を用いて化学的な研磨作業を施してもよい。
【0038】
このように積層基板10Aのメタル層13に対して研磨作業を施すことにより、メタル層13の表面粗さを例えば、研磨前のRZ=5.0μm〜1.0μmを研磨後のRZ=0.5μm〜0.05μmまで、1/10以下に低下させることができる。ここで、RZとは、十点平均粗さを表し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメータ(μm)で表したものをいう。
【0039】
また研磨されるメタル層13はガラス基板11上に保持されており、かつパターンが形成される前のメタル層13なので、メタル層13表面に大きな段差もなく、かつガラス基板11により堅固に保持されているため、メタル層13の表面を容易かつ確実に研磨することができる。このことによりメタル層13の表面粗さを所望の値となるよう小さく定めることができる。
【0040】
また、このようにメタル層13の表面粗さを小さく抑えて、メタル層13の導体損失を抑えて、電波送受信用アンテナ10のアンテナとしての性能を向上させることができる。
【0041】
次にメタル層13上にパターン形成を行うため、所望パターンを有するレジスト24が設けられる(
図1(e))。
【0042】
次に
図1(f)に示すように、積層基板10Aのメタル層13に対してエッチング処理が施され、メタル層13の所望部位25が除去される。この所望部位25は後述するようにメタル層13のパターン13pとなる部位である。
【0043】
メタル層13に対するエッチング処理としては、wetエッチングを用いることができ、この場合、エッチング液としてはエッチングレートが速い塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0044】
その後、積層基板10Aに対して加熱処理を施す。この加熱処理は、ガラス基板11上に設けられた粘着層12を硬化させるキュア工程からなり、粘着層12のガラス転位温度以上に積層基板10Aを加工する処理である。
【0045】
次に
図1(g)に示すように、薬液供給部30から薬液31をレジスト24に噴出し、薬液31によりレジスト24を溶解し、メタル層13上から除去する。このようにしてエッチング処理により除去された所望部位25からメタル層13のパターン13pを形成することができる。
このとき、メタル層13のパターン13p部分には、粘着層12が露出している。
【0046】
次にメタル層13上および粘着層12上に酸化防止膜18が設けられる(
図1(h))。
【0047】
その後、酸化防止膜18上にTFT液晶からなる屈折層14が設けられ、屈折層14上にガラス基板15が設けられる。
【0048】
次に、ガラス基板11の裏面に導波層16が設けられ、このようにして
図2に示す電波送受信用アンテナ10が得られる。
【0049】
以上のように、本実施の形態によれば、メタル層13の表面に対して研磨作業を施すことにより、メタル層13の表面粗さを小さく抑えることができ、このことによりメタル層13の導体損失を抑えて、電波送受信用アンテナ10のアンテナとしての性能を向上させることができる。
【0050】
<第2の実施の形態>
次に
図4により、第2の実施の形態について説明する。
図1(d)において、ガラス基板11上に粘着層12を介してメタル層13を設け、このメタル層13に対して研磨装置20を用いて研磨作業を施した例を示したが、これに限らず、ガラス基板11上にスパッタリングを施して形成された銅製のスパッタリング層、ガラス基板11上に蒸着された銅製の蒸着層、あるいはガラス基板11上に銅製の電解メッキ層を設け、これらスパッタリング層、蒸着層あるいは電解メッキ層をメタル層13として用いて積層基板10Aを構成してもよい。
【0051】
そしてガラス基板11上に形成されたメタル層13に対して、研磨装置20を用いて研磨作業が施される。
【0052】
<第3の実施の形態>
次に、
図5により第3の実施の形態について説明する。
図1(d)において、ガラス基板11上に粘着層12を介してメタル層13を設け、このメタル層13に対して研磨装置20を用いて研磨作業を施した例を示したが、これに限らず樹脂フィルムからなる柔軟性基板11上に薄膜のメタル層13を設けて積層体10Aを構成してもよい。
【0053】
このように構成された積層基板10Aは柔軟構造をもち、支持ローラ22外周に巻付けられる。支持ローラ22外周には研磨ローラ21が設けられ、積層基板10Aが支持ローラ22の外周を走行する間、積層基板10Aのメタル層13が研磨ローラ21により研磨される。