特許第6792821号(P6792821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792821ガラス供給管の支持構造、板ガラス製造装置、板ガラス製造方法、及びガラス供給管の予熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792821
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ガラス供給管の支持構造、板ガラス製造装置、板ガラス製造方法、及びガラス供給管の予熱方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/235 20060101AFI20201119BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C03B5/235
   C03B17/06
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-242208(P2016-242208)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-95519(P2018-95519A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】金谷 仁
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069979(JP,A)
【文献】 特開2002−087826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/235
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に構成される本体部と、前記本体部の各端部に設けられ、通電加熱を行う通電加熱部を有するガラス供給管と、
前記通電加熱部を支持する支持部材と
前記ガラス供給管を収容する長尺状のケーシングと、を備える、ガラス供給管の支持構造であって、
前記通電加熱部と前記支持部材との間に絶縁部材を備え、
前記本体部は、前記端部が前記ケーシングから突出した状態で前記ケーシングに収容されることを特徴とする、ガラス供給管の支持構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記ケーシングに固定されてなる、請求項1に記載のガラス供給管の支持構造。
【請求項3】
前記通電加熱部と前記支持部材とを繋ぐ連結部材を備え、
前記絶縁部材は、前記連結部材の中途部に設けられてなる、請求項1又は2に記載のガラス供給管の支持構造。
【請求項4】
前記支持部材は、前記ケーシングの外面に設けられる支柱と、前記通電加熱部の加熱による前記ガラス供給管の膨張に伴う前記通電加熱部の変位を許容するように、前記連結部材をスライド可能に支持するスライド支持部と、を備える、請求項に記載のガラス供給管の支持構造。
【請求項5】
前記連結部材を前記スライド支持部に固定する固定部材を備える、請求項4に記載のガラス供給管の支持構造。
【請求項6】
前記スライド支持部は、前記連結部材の一部が挿通される孔を含み、
前記孔は、前記ケーシングの長手方向に沿う長孔である、請求項4又は5に記載のガラス供給管の支持構造。
【請求項7】
前記通電加熱部は、フランジ部及び電極部を含み、
前記支持部材は、前記電極部を支持するように構成されてなる、請求項1から6のいずれか一項に記載のガラス供給管の支持構造。
【請求項8】
通電加熱を行う通電加熱部を有するガラス供給管と、前記通電加熱部を支持する支持部材とを備える、ガラス供給管の支持構造であって、
前記通電加熱部と前記支持部材との間に絶縁部材を備え、
前記支持部材は、前記ガラス供給管が配置される建屋の天井に固定されてなることを特徴とする、ガラス供給管の支持構造。
【請求項9】
ガラス原料を溶解して溶融ガラスを生成する溶解槽と、前記溶融ガラスを板ガラスに成形する成形槽と、溶解槽から成形槽へと溶融ガラスを移送するガラス供給路と、を備える板ガラス製造装置において、
前記ガラス供給路は、複数のガラス供給管を接続してなり、
請求項1から8のいずれか一項に記載のガラス供給管の支持構造をさらに備えることを特徴とする、板ガラス製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の板ガラス製造装置により前記板ガラスを製造する方法であって、
前記複数のガラス供給管を分離した状態で、前記ガラス供給管を前記通電加熱部により通電加熱する予熱工程と、
予熱工程後に、前記ガラス供給管を接続して前記ガラス供給路を形成する工程と、
前記ガラス供給路により前記溶融ガラスを前記成形槽に移送し、前記成形槽により前記溶融ガラスを前記板ガラスとして成形する工程と、を備え、
前記予熱工程は、前記ガラス供給管を前記支持部材により支持し、かつ前記絶縁部材により前記ガラス供給管と前記支持部材とを絶縁した状態で、前記通電加熱部により前記ガラス供給管を通電加熱することを特徴とする、板ガラス製造方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載のガラス供給管の支持構造によって前記ガラス供給管を予熱する方法であって、
前記ガラス供給管を前記通電加熱部により通電加熱する予熱工程を備え、
前記予熱工程は、前記ガラス供給管を前記支持部材により支持し、かつ前記絶縁部材により前記ガラス供給管と前記支持部材とを絶縁した状態で、前記通電加熱部により前記ガラス供給管を通電加熱することを特徴とする、ガラス供給管の予熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスを移送するガラス供給管を支持する構造、このガラス供給管を使用する板ガラス製造装置及び板ガラス製造方法、並びにガラス供給管の予熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に代表されるように、各種分野に利用される板ガラスには、表面欠陥やうねりに対して厳しい製品品位が要求されるのが実情である。
【0003】
このような要求を満たすために、板ガラスの製造方法としてダウンドロー法が広く利用されている。このダウンドロー法としては、オーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法が公知である。
【0004】
オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、一枚の板ガラスを連続成形するというものである。また、スロットダウンドロー法は、溶融ガラスが供給される成形体の底壁にスロット状の開口部が形成され、この開口部を通じて溶融ガラスを流下させることにより一枚の板ガラスを連続成形するというものである。
【0005】
特にオーバーフローダウンドロー法では、成形された板ガラスの表裏両面が、成形過程において、成形体の如何なる部位とも接触せずに成形されるので、非常に平面度がよく傷等の欠陥のない火造り面となる。
【0006】
オーバーフローダウンドロー法を用いる板ガラス製造装置としては、特許文献1に開示されるように、成形体を内部に有する成形槽と、成形槽の下方に設置される徐冷炉と、徐冷炉の下方に設けられる冷却部及び切断部とを備えたものがある。この板ガラス製造装置は、成形体の頂部から溶融ガラスを溢れさせると共に、その下端部で融合させることで板ガラス(ガラスリボン)を成形し、この板ガラスを徐冷炉に通過させてその内部歪みを除去し、冷却部で室温まで冷却した後に、切断部で所定寸法に切断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−197185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の板ガラス製造装置では、成形槽の上流側に配置されるガラス溶解槽において、ガラス原料を溶解させて溶融ガラスとし、この溶融ガラスを下流側の成形槽に供給する。溶解槽と成形槽との間には、溶融ガラスを成形槽に移送するためのガラス供給路が設けられる。このガラス供給路は、例えば白金等の金属により構成される複数のガラス供給管を接続してなる。
【0009】
ガラス供給路によって移送される溶融ガラスは、たとえば1600℃以上の高温となることから、板ガラス製造装置の操業にあたり、溶融ガラスを移送することができるように、事前にガラス供給管を加熱(予熱)する必要がある。この場合において、各ガラス供給管を連結したままの状態(ガラス供給路の状態)で加熱すると、各ガラス供給管の膨張により、その連結部分が変形及び損傷するおそれがある。このため、ガラス供給路の加熱は、各ガラス供給管を分離させた状態で行うことが望ましい。
【0010】
この場合、予熱を好適に行うことができるように、そして予熱終了後に容易に接続することができるように、各ガラス供給管を好適に支持することが必要になる。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたものであり、ガラス供給管を好適に支持しながら予熱工程を実行することが可能なガラス供給管の支持構造、板ガラス製造装置、板ガラス製造方法、及びガラス供給管の予熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、通電加熱を行う通電加熱部を有するガラス供給管と、前記通電加熱部を支持する支持部材と、を備える、ガラス供給管の支持構造であって、前記通電加熱部と前記支持部材との間に絶縁部材を備えることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、支持部材によってガラス供給管の通電加熱部を支持しながら、当該通電加熱部の通電によってガラス供給管を加熱することにより、ガラス供給管の予熱工程を好適に実行できる。さらに、支持部材と通電加熱部との間に絶縁部材が配されることにより、支持部材から他の設備への漏電を確実に防止するとともに、ガラス供給管を効率良く加熱することが可能になる。
【0014】
上記構成の支持構造において、前記支持部材は、前記ガラス供給管を収容する長尺状のケーシングに固定されることが望ましい。予熱工程が終了すると、複数のガラス供給管を接続することにより溶融ガラスを移送可能なガラス供給路が構成される。支持部材をケーシングに固定することにより、ガラス供給管とケーシングとを連結することができるため、ガラス供給路を構成する際に、ガラス供給管及びケーシングの位置合わせを容易に行うことができる。
【0015】
本発明に係るガラス供給管の支持構造は、前記通電加熱部と前記支持部材とを繋ぐ連結部材を備え、前記絶縁部材は、前記連結部材の中途部に設けられてなることが望ましい。このように、絶縁部材を有する連結部材によって前記支持部材と前記通電加熱部を連結することにより、ガラス供給管の予熱工程を好適に行うことができる。
【0016】
前記支持部材は、前記ケーシングの外面に設けられる支柱と、前記通電加熱部の加熱による前記ガラス供給管の膨張に伴う前記通電加熱部の変位を許容するように、前記連結部材をスライド可能に支持するスライド支持部と、を備えることが望ましい。
【0017】
予熱工程において加熱されるガラス供給管は、温度の上昇とともに膨張する。上記の構成により、スライド支持部は、ガラス供給管の膨張に伴う通電加熱部の変位に応じて連結部材を移動(スライド)させることができる。したがって、ガラス供給管の膨張による通電加熱部及び連結部材の変形及び損傷を確実に防止できる。
【0018】
本発明に係るガラス供給管の支持構造は、前記連結部材を前記スライド支持部に固定する固定部材を備え得る。予熱工程が完了した場合に、この固定部材によって連結部材をスライド支持部に固定することで、ガラス供給管とケーシングとを一体に連結できる。これにより、予熱工程後に、ガラス供給路を構成する場合におけるガラス供給管及びケーシングの位置決めを容易に行うことができる。
【0019】
上記構成のガラス供給管の支持構造において、前記スライド支持部は、前記連結部材の一部が挿通される孔を含み、前記孔は、前記ケーシングの長手方向に沿う長孔であることが望ましい。これにより、スライド支持部は、連結部材をこの長孔に沿って好適にスライドさせることができる。
【0020】
上記構成のガラス供給管の支持構造において、前記ガラス供給管は、筒状に構成される本体部を備え、前記通電加熱部は、前記本体部の各端部に設けられるフランジ部及び電極部を含み、前記本体部は、前記端部が前記ケーシングから突出した状態で前記ケーシングに収容されており、前記支持部材は、前記電極部を支持するように構成されてなることが望ましい。
【0021】
これによれば、本体部をケーシングにより支持することで、ガラス供給管を確実に保持できる。本体部の端部はケーシングから突出していることから、通電加熱によりガラス供給管が膨張する際に、端部の変位をケーシングが阻害することはない。また、本体部の端部は、ケーシングに阻害されることなく変位することから、その膨張の際に、ケーシング内で本体部の膨張が阻害されることもない。このため、長手方向の膨張による本体部の損傷をも効果的に防止できる。
【0022】
上記の構成に限らず、前記支持部材は、前記ガラス供給管が配置される建屋の天井に固定されてもよい。支持部材を建屋の天井に固定することで、ガラス供給管を好適に支持した状態で、その予熱工程を確実に実行できる。
【0023】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス原料を溶解して溶融ガラスを生成する溶解槽と、前記溶融ガラスを板ガラスに成形する成形槽と、溶解槽から成形槽へと溶融ガラスを移送するガラス供給路と、を備える板ガラス製造装置において、前記ガラス供給路は、複数のガラス供給管を接続してなり、上記いずれかのガラス供給管の支持構造をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
上記の構成に係る板ガラス製造装置によれば、支持部材によってガラス供給管の通電加熱部を支持しながら、当該通電加熱部の通電によってガラス供給管を加熱することにより、ガラス供給管の予熱工程を好適に実行できる。さらに、支持部材と通電加熱部との間に絶縁部材が配されることにより、支持部材から他の設備への漏電を確実に防止するとともに、ガラス供給管を効率良く加熱することが可能になる。
【0025】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、上記の板ガラス製造装置により前記板ガラスを製造する方法であって、前記複数のガラス供給管を分離した状態で、前記ガラス供給管を前記通電加熱部により通電加熱する予熱工程と、予熱工程後に、前記ガラス供給管を接続して前記ガラス供給路を形成する工程と、前記ガラス供給路により前記溶融ガラスを前記成形槽に移送し、前記成形槽により前記溶融ガラスを前記板ガラスとして成形する工程と、を備え、前記予熱工程は、前記ガラス供給管を前記支持部材により支持し、かつ前記絶縁部材により前記ガラス供給管と前記支持部材とを絶縁した状態で、前記通電加熱部により前記ガラス供給管を通電加熱することを特徴とする。
【0026】
本方法によれば、支持部材によってガラス供給管の通電加熱部を支持しながら、当該通電加熱部の通電によってガラス供給管を加熱することにより、ガラス供給管の予熱工程を好適に実行できる。さらに、絶縁部材によって支持部材と通電加熱部とを絶縁することで、支持部材から他の設備への漏電を確実に防止するとともに、ガラス供給管を効率良く加熱することが可能になる。
【0027】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、上記のガラス供給管の支持構造によって前記ガラス供給管を予熱する方法であって、前記ガラス供給管を前記通電加熱部により通電加熱する予熱工程を備え、前記予熱工程は、前記ガラス供給管を前記支持部材により支持し、かつ前記絶縁部材により前記ガラス供給管と前記支持部材とを絶縁した状態で、前記通電加熱部により前記ガラス供給管を通電加熱することを特徴とする。
【0028】
かかる構成によれば、支持部材によってガラス供給管の通電加熱部を支持しながら、当該通電加熱部の通電によってガラス供給管を加熱することにより、ガラス供給管の予熱工程を好適に実行できる。さらに、絶縁部材によって支持部材と通電加熱部とを絶縁することで、支持部材から他の設備への漏電を確実に防止するとともに、ガラス供給管を効率良く加熱することが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ガラス供給管を好適に支持しながら予熱工程を実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】板ガラス製造装置の全体構成を示す側面図である。
図2】第一実施形態に係るガラス供給管の支持構造を示す側面図である。
図3】ガラス供給管の支持構造の一部を示す平面図である。
図4】ガラス供給管の予熱方法における一工程を示す部分拡大側面図である。
図5】ガラス供給管の予熱方法における一工程を示す部分拡大側面図である。
図6】第二実施形態に係るガラス供給管の支持構造を示す側面図である。
図7】ガラス供給管の予熱方法における一工程を示す部分拡大側面図である。
図8】ガラス供給管の予熱方法における一工程を示す部分拡大側面図である。
図9】ガラス供給管の予熱方法における一工程を示す部分拡大側面図である。
図10】第三実施形態に係るガラス供給管の支持構造を示す正面図である。
図11】同実施形態に係るガラス供給管の支持構造を示す側面図である。
図12】第四実施形態に係るガラス供給管の支持構造を示す正面図である。
図13】同実施形態に係るガラス供給管の支持構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1乃至図5は、本発明に係る板ガラス製造装置及び板ガラス製造方法の第一実施形態を示す。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る板ガラス製造装置は、上流側から順に、溶解槽1と、清澄槽2と、均質化槽(攪拌槽)3と、状態調整槽4と、成形槽5と、各槽1〜5を連結するガラス供給路6a〜6dとを備える。この他、板ガラス製造装置は、成形槽5により成形された板ガラスGRを徐冷する徐冷炉(図示せず)及び徐冷後に板ガラスGRを切断する切断装置(図示せず)を備え得る。
【0033】
溶解槽1は、投入されたガラス原料を溶解して溶融ガラスGMを生成する溶解工程を行うための容器である。溶解槽1は、ガラス供給路6aを介して清澄槽2に接続されている。清澄槽2は、溶解槽1から供給された溶融ガラスGMを清澄剤等の作用により脱泡する清澄工程を行うための容器である。清澄槽2は、ガラス供給路6bを介して均質化槽3に接続されている。
【0034】
均質化槽3は、清澄された溶融ガラスGMを攪拌翼等により攪拌し、均一化する均質化工程を行うための容器である。均質化槽3は、ガラス供給路6cを介して状態調整槽4に接続されている。状態調整槽4は、溶融ガラスGMを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器である。状態調整槽4は、ガラス供給路6dを介して成形槽5に接続されている。
【0035】
成形槽5は、溶融ガラスGMを所望の形状に成形するための容器である。本実施形態では、成形槽5は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGMを板状に成形する。詳細には、成形槽5は、断面形状(図1の紙面と直交する断面形状)が略楔形状を成しており、この成形槽5の上部には、オーバーフロー溝(図示せず)が形成されている。
【0036】
成形槽5は、ガラス供給路6dによって溶融ガラスGMがオーバーフロー溝に供給された後、溶融ガラスGMをオーバーフロー溝から溢れ出させて、成形槽5の両側の側壁面(紙面の表裏面側に位置する側面)に沿って流下させる。成形槽5は、流下させた溶融ガラスGMを側壁面の下端部で融合させ、板ガラスGRに成形する。
【0037】
成形された板ガラスGRは、例えば、厚みが0.01〜10mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。なお、成形槽5は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0038】
ガラス供給路6a〜6dは、複数のガラス供給管7と、ガラス供給管7を収容する長尺状のケーシング8と、ガラス供給管7とケーシング8とを繋ぐ各連結部材9a,9bとを備える。本実施形態では、ケーシング8と各連結部材9a,9bとによってガラス供給管7を支持する構造(支持構造)が構成される。
【0039】
ガラス供給管7は、白金又は白金合金により構成される。図2に示すように、ガラス供給管7は、溶融ガラスGMを移送する長尺状の本体部10と、本体部10の端部に設けられる通電加熱部11a,11bとを備える。本体部10は、筒状(例えば円筒状)に構成されるが、この形状に限定されない。本体部10は、ケーシング8よりも長く構成される。このため、本体部10の各端部は、ケーシング8と端部から長手方向に突出している。
【0040】
通電加熱部11a,11bは、本体部10の内部の溶融ガラスGMを通電加熱する第一通電加熱部11aと、本体部10の他端部を加熱する第二通電加熱部11bとを含む。各通電加熱部11a,11bは、本体部10の端部における外周面を囲むように構成されるフランジ部12と、このフランジ部12の上部に一体に構成される電極部13とを有する。各通電加熱部11a,11bは、電極部13に所定の電圧を印加することで本体部10を直接的に通電加熱する。
【0041】
フランジ部12は、円板状に構成されるが、この形状に限定されない。電極部13は、フランジ部12と一体に構成される第一の部分13aと、この第一の部分13aの端部に一体に構成される第二の部分13bとを有する。第一の部分13aは、フランジ部12の上部から上方に突出する矩形状の板部である。第二の部分13bは、第一の部分13aに対して直角に繋がる矩形状の板部である。第二の部分13bは、第一の部分13aの上端部から略水平方向又は本体部10の長手方向に沿って突出する。第二の部分13bは、当該第二の部分を上下方向に貫通する孔13cを有する。
【0042】
ケーシング8は、鋼その他の金属により円筒体として構成されるが、この形状に限定されない。ケーシング8は、ガラス供給管7の本体部10を囲むように配される断熱材(例えば耐火煉瓦)14を収容する。ケーシング8は、板ガラス製造装置が配置される工場等の建屋内において、図示しない架台等により位置変更可能に支持されている。
【0043】
図2に示すように、ケーシング8は、ガラス供給管7を支持するための部材(以下「支持部材」という)15a,15bを備える。各支持部材15a,15bは、第一通電加熱部11aに対応する第一支持部材15aと、第二通電加熱部11bに対応する第二支持部材15bとを含む。各支持部材15a,15bは、ケーシング8の上部外面から上方に突出する支柱16と、各連結部材9a,9bの一端部が連結されるスライド支持部17とを備える。
【0044】
支柱16は、鋼その他の金属により長尺状に構成される。支柱16は、その一端部(下端部)が溶接等の手段によりケーシング8の外面に固定されてなる。支柱16は、ケーシング8の上部において、ケーシング8の半径方向に沿って上方に突出する。支柱16は、電極部13の第一の部分13aよりも長く構成される。したがって、支柱16は、電極部13の位置よりも高い位置でスライド支持部17を支持する。
【0045】
図3は、スライド支持部17の平面図を示す。図2図3に示すように、スライド支持部17は、支柱16の上端部から水平方向又はケーシング8の長手方向(筒心方向)に沿って突出する。スライド支持部17は、その突出方向に沿って長く構成される孔(以下「長孔」という)17aを有する。長孔17aは、スライド支持部17を上下方向に貫通する。この長孔17aには、各連結部材9a,9bの一部が挿通され得る。
【0046】
各連結部材9a,9bは、第一通電加熱部11aと第一支持部材15aとを連結する第一連結部材9aと、第二通電加熱部11bと第二支持部材15bとを連結する第二連結部材9bとを含む。各連結部材9a,9bは、スライド支持部17に連結される第一連結部18と、各通電加熱部11a,11bに連結される第二連結部19と、当該連結部材9a,9bの中途部に設けられる絶縁部材20とを備える。第一連結部18は、第一固定部材21によってスライド支持部17に固定され、第二連結部19は、第二固定部材22によって各通電加熱部11a,11bに固定されている。
【0047】
第一連結部18は、金属製のねじ部材により構成される。第一連結部18の一端部(上端部)は、各支持部材15a,15bのスライド支持部17に固定され得る。第一連結部18の他端部は、絶縁部材20と一体に形成される。
【0048】
第一固定部材21は、一対のナット21a,21bを含む。各ナット21a,21bは、第一連結部18に螺合されている。各ナット21a,21bは、第一連結部18がスライド支持部17の長孔17aに挿通された状態において、スライド支持部17を挟むように締結されることで、第一連結部18を当該スライド支持部17に固定する。
【0049】
第二連結部19は、第一連結部18と同様に、金属製のねじ部材により構成される。第二連結部19の一端部(上端部)は、第一連結部18の他端部と接触することなく、絶縁部材20と一体に形成される。第二連結部19の他端部(下端部)は、各通電加熱部11a,11bにおける電極部13の第二の部分13bに貫通形成された孔13cに挿通されるとともに、第二固定部材22によって当該第二の部分13bに固定される。
【0050】
第二固定部材22は、一対のナット22a,22bを含む。各ナット22a,22bは、第二連結部19に螺合されている。各ナット22a,22bは、第二連結部19の一部が電極部13の第二の部分13bの孔13cに挿通された状態において、当該第二の部分13bを挟むように締結されることで、第二連結部19を当該第二の部分13bに固定する。
【0051】
絶縁部材20は、例えば、合成ゴムその他の各種材料により直方体状又は円柱状に構成されるが、これに限定されるものではない。絶縁部材20は、第一連結部18の下端部と、第二連結部19の上端部とを接触させることなく離間した状態で、当該第一連結部18及び第二連結部19と一体に成形される。このように、絶縁部材20は、第一連結部18及び第二連結部19により各支持部材15a,15bと電極部13とを繋いだ状態で、当該各支持部材15a,15bと電極部13との間に介在する。
【0052】
以下、上記構成の板ガラス製造装置を使用して板ガラスを製造する方法について説明する。
【0053】
本方法は、溶解槽1にて原料ガラスを溶解させ(溶解工程)、溶融ガラスGMを得た後、この溶融ガラスGMに対し、順に清澄槽2による清澄工程、均質化槽3による均質化工程、及び状態調整槽4による状態調整工程を実施する。その後、この溶融ガラスGMを成形槽5に移送し、成形槽5による成形工程により溶融ガラスGMから板ガラスGRを成形する。その後、徐冷により板ガラスGRの内部歪みが除去される(徐冷工程)。その後、板ガラスGRは、下流側の工程により、所定寸法に切断され(切断工程)、あるいはロール状に巻き取られる(巻取工程)。
【0054】
以上のような一連の工程を実行するにあたり、事前にガラス供給路6a〜6d及び他の構成要素(成形槽5等)を加熱する必要がある(以下「予熱工程」という)。予熱工程は、各ガラス供給路6a〜6dを、その構成要素であるガラス供給管7に分離した状態で、各ガラス供給管7に対して実行される。各ガラス供給管7は、各通電加熱部11a,11bの加熱により膨張するため、この膨張を許容するように各支持部材15a,15bに支持されることが望ましい。本実施形態では、ケーシング8に設けられた各支持部材15a,15bに、ガラス供給管7の膨張を許容する手段が設けられている。
【0055】
以下、ガラス供給管7の予熱工程(予熱方法)について、図4及び図5を参照しながら詳細に説明する。なお、各連結部材9a,9b、各通電加熱部11a,11b、各支持部材15a,15bは同じ構成であるため、以下では、第一連結部材9a、第一通電加熱部11a、及び第一支持部材15aの動作について説明する(後述する第二実施形態の図7乃至図9において同じ)。
【0056】
予熱工程を実行するにあたり、事前に第一固定部材21による第一連結部材9aの固定を解除しておく。すなわち、図4において実線で示すように、一対のナット21a,21bのうち、下側に位置するナット21bを緩め、スライド支持部17の下面から下方に離間させる。このとき、上側のナット21aは操作されない。この状態において、スライド支持部17は、その上面によって上側のナット21aをスライド(摺動)可能に支持する。この態様により、第一支持部材15aは、本体部10の膨張に伴う第一通電加熱部11aの変位を許容するようにガラス供給管7を支持する。なお、第二固定部材22は、一対のナット22a,22bを締結することにより、第一連結部材9aの第二連結部19を電極部13の第二の部分13bに固定している。
【0057】
この状態で電極部13に電圧を印加し、加熱を開始する。ガラス供給管7の本体部10は、図4において二点鎖線で示すように、加熱に応じて膨張する。この膨張により、第一通電加熱部11aは、第一支持部材15aから離れるようにその位置を変える。第一固定部材21による締結が解除されていることから、第一連結部材9aは、二点鎖線で示すように、第一通電加熱部11aの位置の変化に応じて移動する。このとき、第一固定部材21における上側のナット21aは、スライド支持部17の長孔17aの方向に沿って当該スライド支持部17の上面をスライド(摺動)する。加熱中において、第一支持部材15aと電極部13とが第一連結部材9aの絶縁部材20によって絶縁されるため、第一支持部材15aが通電されることはない。
【0058】
なお、この加熱により、ケーシング8もその長手方向に膨張する。ケーシング8とガラス供給管7との間に断熱材14が介在することから、ケーシング8の膨張量(膨張長さ)ΔL2は、本体部10の膨張量(膨張長さ)ΔL1よりも小さい(図4参照)。
【0059】
本体部10が十分に加熱されると、図5において二点鎖線及び実線で示すように、緩めていた第一固定部材21における下側のナット21bを締め付ける。これにより下側のナット21aは、スライド支持部17の下面に当接する。これにより、一対のナット21a,21bによってスライド支持部17を挟み、第一連結部材9aをスライド支持部17に固定する。その後、ガラス供給管7は、予熱が完了した他のガラス供給管7に接続される。複数のガラス供給管7を接続することにより、ガラス供給路6a〜6dが構成される(ガラス供給管形成工程)。
【0060】
その後、ガラス供給路6a〜6dを、対応する他の構成要素(溶解槽1、清澄槽2、均質化槽3、状態調整槽4、及び成形槽5)に接続し、板ガラス製造装置を組み立てる(板ガラス製造装置の組立工程)。板ガラス製造方法は、上記の予熱工程後に、既述の溶解工程、清澄工程、均質化工程、状態調整工程、及び成形工程を実行する。
【0061】
以上説明した本実施形態によれば、各支持部材15a,15bによってガラス供給管7の各通電加熱部11a,11bを支持しながら、当該通電加熱部11a,11bの通電によってガラス供給管7を加熱することにより、ガラス供給管7の予熱工程(方法)を好適に実行できる。さらに、各支持部材15a,15bと各通電加熱部11a,11bとの間に絶縁部材20を設けることにより、各支持部材15a,15bからケーシング8を通じて他の設備に通電(漏電)することを確実に防止できる。これにより、ガラス供給管7を効率良く加熱することが可能になる。
【0062】
図6乃至図9は、ガラス供給管の支持構造に係る第二実施形態を示す。本実施形態において、ガラス供給管7の第一通電加熱部11a及び第二通電加熱部11bは、フランジ部12と、このフランジ部12の下部に設けられる電極部13とを備える。電極部13は、フランジ部12の下部から下方に突出する矩形状の板部である。電極部13は、各連結部材9a,9bを固定するための孔13cを有する。孔13cは、各連結部材9a,9bを挿通可能な円形に構成される。孔13cは、本体部10の長手方向に沿って電極部13を貫通する。
【0063】
図6に示すように、第一支持部材15a及び第二支持部材15bは、ケーシング8の下部に設けられる支柱16を有する。この構成に限らず、各支持部材15a,15bは、ケーシング8の下部に設けられる板部材であってもよい。支柱16は、各連結部材9a,9bを固定するための孔16aを有する。孔16aは、各連結部材9a,9bを挿通可能な円形に構成される。孔16aは、水平方向又は本体部10の長手方向に沿って支柱16を貫通する。
【0064】
図6に示すように、各連結部材9a,9bは、第一実施形態と同様に、第一連結部18、第二連結部19、及び絶縁部材20を有する。各連結部材9a,9bは、上記の第一実施形態において、上下方向に沿うように設けられていたが、本実施形態では、水平方向又はガラス供給管7における本体部10の長手方向に沿うように配される。各連結部材9a,9bの第一連結部18は、第一固定部材21に係る一対のナット21a,21bによって、各支持部材15a,15bに固定されている。各連結部材9a,9bの第二連結部19は、第二固定部材22に係る一対のナット22a,22bによって電極部13に固定される。
【0065】
本実施形態における他の構成は、第一実施形態と同じである。第一実施形態と共通する本実施形態の構成要素には、共通の符号を付している(以下、第三実施形態、第四実施形態において同じ)。
【0066】
以下、本実施形態に係るガラス供給管7の予熱方法について図7乃至図9を参照しながら説明する。本実施形態では、ガラス供給管7を予熱する場合、所定の時間が経過する度に、第一固定部材21による第一連結部18の固定の解除及び再度の固定と、第二固定部材22による第二連結部19の固定の解除及び再度の固定とを繰り返し行う。
【0067】
具体的には、予熱工程の実施にあたり、当初は第一連結部18を第一固定部材21により第一通電加熱部11aの電極部13に固定したままの状態にしておく(図7参照)。この状態のままで第一通電加熱部11aにより本体部10を所定時間加熱した後、第一固定部材21による第一連結部18の固定、及び第二固定部材22による第二連結部19の固定を一旦解除する。具体的には、図8に示すように、一対のナット21a,21bのうち、一方のナット21aを緩めて支柱16から離間させる。このとき、他方のナット21bは操作されず、支柱16に接触したままの状態である。
【0068】
これにより、第一固定部材21による規制が解除され、本体部10はその長手方向に膨張する。このとき、第一通電加熱部11aは、図8において二点鎖線で示すように、本体部10の膨張に応じて第一支持部材15aから離間するように変位する。
【0069】
図9に示すように、第一連結部材9aは、第一通電加熱部11aの変位に応じて移動する。第一連結部材9aの第一連結部18は、支柱16の孔16aに支持されながら摺動(スライド)する。すなわち、本実施形態において、支柱16の孔16aは、本体部10の膨張に伴う第一通電加熱部11aの変位を許容するように、第一連結部材9aをスライド可能に支持するスライド支持部として機能する。
【0070】
第一連結部材9aの移動により、第一固定部材21における一方のナット21aは、支柱16に接近するように移動し、他方のナット21bは、支柱16から離間するように移動する(図9において実線で示す)。その後、他方のナット21bを図9の二点鎖線で示すように締める。これにより、一対のナット21a,21bによって支柱16を挟み、第一連結部材9aを支柱16に固定する。この固定後、さらに本体部10の加熱を継続するとともに、所定時間経過後に、上記のような第一連結部材9aの支柱16に対する固定の解除と再度の固定とを繰り返す。
【0071】
以上のように、本実施形態では、本体部10の加熱中において、定期的に各支持部材15a,15bに対する各連結部材9a,9bの固定解除と再固定とを繰り返す。これにより、ガラス供給管7を支持しながら、本体部10の膨張による各通電加熱部11a,11bの変位を許容でき、各通電加熱部11a,11bの破損を防止できる。よって、ガラス供給管7の予熱工程を好適に実行できる。
【0072】
図10及び図11は、ガラス供給管の支持構造に係る第三実施形態を示す。本実施形態において、ガラス供給管7は、本体部10の各端部に第一通電加熱部11a及び第二通電加熱部11bを有する。第一通電加熱部11a側の支持構造と第二通電加熱部11b側の支持構造とは同じ構造であるため、以下、第一通電加熱部11a側の支持構造について説明する。
【0073】
本実施形態において、ガラス供給管7の第一通電加熱部11aは、第一支持部材15aによって支持されている。また、ケーシング8は、長手方向の一端部が一対の支持部材23によって支持される。支持部材23は、複数対に構成されてケーシング8を支持し得る。各支持部材15a,23は、板ガラス製造装置が配置される工場等における建屋の天井Cに固定される。
【0074】
ガラス供給管7の第一支持部材15aは、第一連結部材9aを介して第一通電加熱部11aの電極部13に連結される。ケーシング8の支持部材23は、一対の連結部材24を介して、当該ケーシング8に連結される。連結部材24は、支持部材23の数に応じて複数対に構成され得る。
【0075】
第一支持部材15aに連結される第一連結部材9aは、当該第一支持部材15aに連結される第一連結部18と、第一通電加熱部11aの電極部13に連結される第二連結部19と、第一連結部18と第二連結部19との間に介在する絶縁部材20とを備える。第一連結部18及び第二連結部19は、ワイヤ等の可撓性を有する線状部材により構成される。第一連結部18の一端部(上端部)は、支持部材15aに連結される。第一連結部18の他端部(下端部)は、絶縁部材20と一体に構成される。第二連結部19の一端部(上端部)は、絶縁部材20と一体に構成される。第二連結部19の他端部(下端部)は、第一通電加熱部11aの電極部13に固定される。これにより、第一通電加熱部11aの電極部13は、第一連結部材9aを介して第一支持部材15aに支持される。
【0076】
ケーシング8に連結される連結部材24は、ワイヤ等の可撓性を有する線状部材により構成される。各連結部材24は、一端部(上端部)が支持部材23に固定され、他端部(下端部)がケーシング8に固定されてなる。
【0077】
ケーシング8の外面には、当該ケーシング8を支持部材23に連結するための一対の突起部25が設けられる。各突起部25は、ケーシング8の外面から横方向(水平方向)に突出する。各突起部25には、連結部材24の下端部が連結される。これにより、ケーシング8は、連結部材24を介して、天井Cに固定される支持部材23に支持される。
【0078】
本実施形態においてガラス供給管7を予熱する場合、加熱により、ガラス供給管7の本体部10はその長手方向に膨張する。第一通電加熱部11aは、本体部10の膨張に応じて変位する。この場合、第一支持部材15aは、第一連結部材9aが変形することにより、第一通電加熱部11aの変位を許容する。このため、本体部10の膨張によって第一通電加熱部11aが変形及び損傷することはない。これにより、ガラス供給管7の予熱工程を好適に実行できる。また、予熱工程中にケーシング8も膨張することとなるが、支持部材23は、連結部材24の変形により当該ケーシング8の膨張を許容する。これにより、予熱工程中における第一通電加熱部11aの変形及び損傷が防止される。
【0079】
予熱工程終了後に、板ガラス製造装置を組み立てるとともに、溶解工程、清澄工程、均質化工程、状態調整工程、成形工程等を経て、板ガラスGRが製造される。
【0080】
図12及び図13は、ガラス供給管の支持構造に係る第四実施形態を示す。上記の第三実施形態では、一個の第一支持部材15aによってガラス供給管7の各通電加熱部11a11bを支持するとともに、一対の支持部材23によってケーシング8を支持する構成を例示したが、本実施形態では、複数(例えば三個)の支持部材15a〜15cによって各通電加熱部11a,11bを支持する。このように複数の支持部材15a〜15cを用いることにより、各通電加熱部11a,11bの支持箇所における荷重を分散することができ、各通電加熱部11a,11bの変形や破損を好適に抑制できる。
【0081】
以下、各通電加熱部11aを支持する支持部材15a〜15cを、順に第一支持部材15a、第二支持部材15b、及び第三支持部材15cという。本実施形態においても、第一通電加熱部11a側の支持構造と、第二通電加熱部11b側の支持構造とは同じ構成であるため、以下では、第一通電加熱部11a側の支持構造について説明する。
【0082】
第一通電加熱部11aは、第一支持部材15aに連結される電極部13の他、第二支持部材15b及び第三支持部材15cに連結される一対の突起部26を有する。各突起部26は、フランジ部12の側部から横方向(水平方向)に突出してなる。
【0083】
第一支持部材15aは、中途部に絶縁部材20を有する第一連結部材9aを介して第一通電加熱部11aの電極部13に連結される。第一連結部材9aは、第三実施形態において例示したものと同じ構成を有する。同様に第二支持部材15b及び第三支持部材15cは、第一連結部材9aと同じ構成を有する第二連結部材9b及び第三連結部材9cを介して、各突起部26に連結される。
【0084】
本実施形態においてガラス供給管7を予熱するには、第一実施形態と同様に、ガラス供給路6a〜6dをガラス供給管7に分離させ、第一通電加熱部11aを、各連結部材9a〜9cを介して各支持部材15a〜15cにより支持した状態で、当該第一通電加熱部11aにより本体部10を通電加熱する。
【0085】
通電加熱により、ガラス供給管7の本体部10はその長手方向に膨張する。第一通電加熱部11aは、本体部10の膨張に応じて変位する。この場合において、各支持部材15a〜15cは、各連結部材9a〜9cの変形により、各通電加熱部11は、可撓性を有することから、各通電加熱部11a,11bの変位を規制することはない。このため、本体部10の膨張によって各通電加熱部11a,11bが変形及び損傷することはない。これにより、ガラス供給管7の予熱工程を好適に実行できる。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0087】
上記の第一実施形態及び第二実施形態では、異なる構成のガラス供給管7及びその支持構造を例示したが、これらを適宜組み合わせてガラス供給路6a〜6dを構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 溶解槽
5 成形槽
6a ガラス供給路
6b ガラス供給路
6c ガラス供給路
6d ガラス供給路
7 ガラス供給管
8 ケーシング
9a 連結部材
9b 連結部材
11a 通電加熱部
11b 通電加熱部
15a 支持部材
15b 支持部材
15c 支持部材
16 支柱
17 スライド支持部
17a 長孔
20 絶縁部材
21 固定部材
C 建屋の天井
GM 溶融ガラス
GR 板ガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13