(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792824
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】板ガラスの製造方法及び板ガラスの折割装置
(51)【国際特許分類】
C03B 33/033 20060101AFI20201119BHJP
C03B 33/037 20060101ALI20201119BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20201119BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20201119BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20201119BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20201119BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20201119BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20201119BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20201119BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
C03B33/033
C03B33/037
B28D5/00 Z
B28D7/04
B26F3/00 A
G02F1/13 101
H05B33/14 A
H05B33/02
H05B33/04
G09F9/00 338
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-51155(P2017-51155)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-154514(P2018-154514A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】山木 茂
(72)【発明者】
【氏名】中津 広之
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝好
【審査官】
小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/073477(WO,A1)
【文献】
特開2001−163642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/033
B26F 3/00
B28D 5/00
B28D 7/04
C03B 33/037
G02F 1/13
G09F 9/00
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面に形成されたスクライブ線を境界とする製品部及び非製品部を有する板ガラスを配置する配置工程と、
前記板ガラスのうち、前記製品部の前記第一主面を第一押圧部材で押圧し、前記非製品部の前記第一主面を第二押圧部材で押圧した状態で、前記スクライブ線に対応する位置で、前記板ガラスの第二主面の側から前記板ガラスに折割部材を押し込むことにより、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを折り割る折割工程と、
前記折割工程後に、前記非製品部に吸着部材の吸着面を吸着させる吸着工程と、
前記吸着工程後に、前記非製品部を除去するために前記非製品部を前記吸着部材により移動させる移動工程とを備えた板ガラスの製造方法であって、
前記吸着工程で、前記折割部材の押し込み状態を維持することにより、前記製品部及び前記非製品部に互いの切断端面が離れるように傾斜部を形成すると共に、前記吸着部材の前記吸着面が前記非製品部の前記傾斜部に沿うように前記吸着部材を傾斜させた状態で、前記吸着面を前記非製品部に吸着させることを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記吸着工程で、前記吸着部材を、前記吸着面の垂線に沿うように接近させて吸着させることを特徴とする請求項1に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記移動工程で、前記吸着部材を、前記吸着面の垂線に沿うように移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記吸着部材が、前記第二押圧部材よりも前記製品部の側に配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記吸着部材の前記吸着面の傾斜角度が、変更可能であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記吸着部材は、前記スクライブ線と垂直かつ前記板ガラスの前記第一主面と平行な方向に並べて複数配置され、
前記吸着部材のうちで前記製品部からの距離が最も近い前記吸着部材を傾斜させることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項7】
第一主面に形成されたスクライブ線を境界とする製品部及び非製品部を有する板ガラスを、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを折り割る板ガラスの折割装置であって、
前記板ガラスを配置する配置機構と、
前記製品部の前記第一主面を押圧する第一押圧部材と、
前記非製品部の前記第一主面を押圧する第二押圧部材と、
前記スクライブ線に対応する位置で、前記板ガラスの第二主面の側から前記板ガラスに押し込んだ状態を維持することにより、折り割られた前記板ガラスの前記製品部及び前記非製品部に互いの切断端面が離れるように傾斜部を形成する折割部材と、
折り割られた前記板ガラスの前記非製品部を除去するために、前記非製品部を吸着すると共に移動させる吸着部材とを備え、
前記吸着部材が前記非製品部を吸着する際に、前記吸着部材の吸着面が前記非製品部の前記傾斜部に沿うように傾斜していることを特徴とする板ガラスの折割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの製造方法及び板ガラスの折割装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板や、有機EL照明用のカバーガラスに代表されるように、各種分野で板ガラスが利用される。板ガラスの製造工程では、大面積の板ガラス(マザーガラス)から小面積の板ガラスを切り出したり、板ガラスの辺に沿う縁部をトリミングしたりする折割(割断)工程が含まれる。
【0003】
折割工程では、折り割る対象となる板ガラスの製品部と非製品部との境界において、板ガラスの第一主面(例えば上面)にスクライブ線を形成した後、そのスクライブ線を中心とした曲げ応力を作用させて板ガラスをスクライブ線に沿って折り割る。
【0004】
そして、この折割工程後に、非製品部に吸着パッド等の吸着部材を吸着させることにより、非製品部を取り除く。取り除かれた非製品部は、例えば、吸着部材により廃棄用の搬送路に受け渡され、廃棄口まで移送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/073477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、折割工程後に、非製品部に吸着部材を吸着させる際に、非製品部が製品部に接触して製品部に欠けが生じる場合があった。これは、次のような理由によるものである。折割工程では、板ガラスにスクライブ線を中心とした曲げ応力を作用させるために、スクライブ線に対応する位置で、板ガラスの第二主面の側から板ガラスに折割部材を押し込み、板ガラスが折り割られた後も非製品部に吸着部材を吸着させるまで、折割部材の押込み状態を維持する。そのため、非製品部に吸着部材を吸着させるまで、製品部及び非製品部に互いの切断端面が離れるような状態になっている。しかし、従来では、非製品部に吸着部材を吸着させる際に、非製品部が、吸着部材に押されて湾曲し、製品部に接触する場合があり、これにより、製品部に欠けが生じるのである。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、板ガラスの折割工程後に、非製品部に吸着部材を吸着させる際に、製品部に欠けが生じる事態を回避することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために創案された本発明に係る板ガラスの製造方法は、第一主面に形成されたスクライブ線を境界とする製品部及び非製品部を有する板ガラスを配置する配置工程と、前記板ガラスのうち、前記製品部の前記第一主面を第一押圧部材で押圧し、前記非製品部の前記第一主面を第二押圧部材で押圧した状態で、前記スクライブ線に対応する位置で、前記板ガラスの第二主面の側から前記板ガラスに折割部材を押し込むことにより、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを折り割る折割工程と、前記折割工程後に、前記非製品部に吸着部材の吸着面を吸着させる吸着工程と、前記吸着工程後に、前記非製品部を除去するために前記非製品部を前記吸着部材により移動させる移動工程とを備えた板ガラスの製造方法であって、前記吸着工程で、前記折割部材の押し込み状態を維持することにより、前記製品部及び前記非製品部に互いの切断端面が離れるように傾斜部を形成すると共に、前記吸着部材の前記吸着面が前記非製品部の前記傾斜部に沿うように吸着部材を傾斜させたことを特徴とする。ここで、「傾斜部に沿うように」とは、厳密に傾斜部に沿っている場合だけでなく、傾斜部から多少ずれている場合も含む(以下、同様)。好ましい吸着部材の傾斜角度は、後述する。
【0009】
この構成によれば、吸着部材の吸着部を、非製品部の傾斜部に沿うように傾斜させたため、非製品部に吸着部材を吸着させる際に、非製品部が吸着部材に押されて湾曲することが抑制され、非製品部が製品部に接触して製品部に欠けが生じることを抑制できる。
【0010】
上記の構成において、前記吸着工程で、前記吸着部材を、前記吸着面の垂線に沿うように接近させて吸着させてもよい。ここで、「垂線に沿うように」とは、厳密に垂線に沿う場合のみだけでなく、垂線から多少ずれている場合も含むものとする(以下、同様)。
【0011】
この構成であれば、非製品部に吸着部材を吸着させる際に、非製品部が吸着部材に押されて湾曲することがさらに抑制され、非製品部が製品部に接触して製品部に欠けが生じることをさらに抑制できる。
【0012】
上記の構成において、前記移動工程で、前記吸着部材を、前記吸着面の垂線に沿うように移動させてもよい。
【0013】
この構成であれば、非製品部を吸着部材により移動させる際に、非製品部が、製品部に接触する可能性を低減できる。
【0014】
上記の構成において、前記吸着部材が、前記第二押圧部材よりも前記製品部の側に配設されていてもよい。
【0015】
この構成であれば、吸着部材を、製品部のより近くに配設可能となる。製品部の近くに配設された吸着部材ほど、非製品部が製品部に接触する原因となり易い。そのため、吸着部材の吸着面が傾斜していることによる上述した効果がより有効となり得る。
【0016】
上記の構成において、前記吸着部材の前記吸着面の傾斜角度が、変更可能であってもよい。
【0017】
ここで、非製品部の寸法等に応じ、折割部材の押し込み状態や第一押圧部材及び第2押圧部材の位置が変更される。この折割り条件の変更に伴い、非製品部の傾斜部の傾斜角度も変化する。吸着部材の吸着面の傾斜角度が変更可能であれば、折割り条件が変更されても、吸着部材の吸着面を非製品部の傾斜部と平行となるように傾斜させることが可能となる。
【0018】
上記の構成において、前記吸着部材を、前記スクライブ線と垂直かつ前記板ガラスの前記第一主面と平行な方向に並べて複数配置し、前記吸着部材のうちで前記製品部からの距離が最も近い前記吸着部材を傾斜させてもよい。
【0019】
製品部からの距離が近くなるほど、非製品部の勾配が大きくなる。このため、製品部からの距離が最も近い吸着部材を傾斜させれば、吸着面が傾斜していることによる上述した効果がより有効となり得る。
【0020】
また、前記課題を解決するために創案された本発明に係る板ガラスの折割装置は、第一主面に形成されたスクライブ線を境界とする製品部及び非製品部を有する板ガラスを、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを折り割る板ガラスの折割装置であって、前記板ガラスを配置する配置機構と、前記製品部の前記第一主面を押圧する第一押圧部材と、前記非製品部の前記第一主面を押圧する第二押圧部材と、前記スクライブ線に対応する位置で、前記板ガラスの第二主面の側から前記板ガラスに押し込むと共に、折り割られた前記板ガラスの前記製品部及び前記非製品部に互いの切断端面が離れるように傾斜部を形成する折割部材と、折り割られた前記板ガラスの前記非製品部を除去するために、前記非製品部を吸着すると共に移動させる吸着部材とを備え、前記吸着部材の前記吸着面が前記非製品部の前記傾斜部に沿うように傾斜していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、冒頭の板ガラスの製造方法で説明した作用及び効果と、実質的に同様の作用及び効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、板ガラスの折割工程後に、非製品部に吸着部材を吸着させる際に、製品部に欠けが生じる事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る板ガラスの折割装置を示す概略側面図である。
【
図2】板ガラスの折割装置の要部の一例を示す概略側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る板ガラスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】板ガラスの折割装置の動作を示す概略側面図である。
【
図5】板ガラスの折割装置の動作を示す概略側面図である。
【
図6】板ガラスの折割装置の動作を示す概略側面図である。
【
図7】板ガラスの折割装置の動作を示す概略側面図である。
【
図8】板ガラスの折割装置の動作を示す概略側面図である。
【
図9】板ガラスの折割装置の動作を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る板ガラスの折割装置1を示す概略側面図である。折割装置1は、板ガラスGをスクライブ線Sに沿って折り割るものである。
【0026】
板ガラスGは水平姿勢で配置され、スクライブ線Sが形成された第一主面G1が上面、第二主面G2が下面とされる。板ガラスGは、スクライブ線Sを境界として製品部Gaと非製品部Gbとに区画される。
【0027】
板ガラスGの製品部Gaの厚みは、例えば、2mm以下であり、好ましくは0.2mm〜0.7mmである。非製品部Gbの図での横方向の寸法は、例えば、30mm〜200mmの範囲で変更される。非製品部Gbには、製品部Gaよりも板厚の大きい厚肉部(不図示)が含まれている場合がある。非製品部Gbの厚肉部は、例えば、オーバーフローダウンドロー法やフロート法などを用いて板ガラスGを成形したときに生じ得る。
【0028】
なお、本実施形態では、便宜上、製品部Gaの側を前側とすると共に非製品部Gbの側を後側とする。
【0029】
折割装置1は、配置機構2と、押圧機構3と、移動機構4と、折割機構5とを備えている。
【0030】
配置機構2は、板ガラスGを上方に配置する第一載置台2aと第二載置台2bで構成される。なお、本実施形態では、配置機構2は、載置台であるが、板ガラスGを上方に配置できればよく、例えば、例えばベルトコンベア、ローラコンベア、ロボットハンド等の搬送機構であってもよい。
【0031】
押圧機構3は、第一載置台2aの上で製品部Gaの第一主面G1を押圧する第一押圧部材3aを上下方向に昇降可能に備えている。第一押圧部材3aは、ゴム(弾性部材)から構成されている。ゴムは、板ガラスGの第二主面G2に倣って弾性変形するので、板ガラスGの微妙な動き(変形を含む)にも追従する。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴムなどが使用できる。なお、弾性部材はゴムに限定されず、スポンジなどであってもよい。
【0032】
移動機構4は、上下方向及び横方向に移動可能な移動部4aを備えている。移動部4aは、第二載置台2bの上で非製品部Gbの第一主面G1を押圧する第二押圧部材4bを有する。移動部4aに対し、第二押圧部材4bは上下方向に昇降可能である。
【0033】
第二押圧部材4bは、第一押圧部材3aと同様に、ゴム(弾性部材)から構成されている。
【0034】
また、移動部4aは、折り割られた板ガラスGの非製品部Gbに吸着する吸着部材4cを有する。本実施形態では、吸着部材4cは、吸着パッドであり、スクライブ線Sに沿って一列に並べて複数配置されている。また、吸着部材4cの吸着面4d(吸着部)は、吸着部材4cの先端面であり、非製品部Gbの第一主面G1と接触する。吸着部材4cの吸着面4dが、その前側が後側よりも板ガラスGから離隔するように、傾斜している。詳述すれば、吸着部材4cの吸着面4dは、その前側が後側よりも高位置となるように、水平面に対して傾斜している。また、吸着部材4cは、第二押圧部材4bよりも前側に配設されている。
【0035】
移動部4aに対し、吸着部材4cは、鉛直方向に対して後側に傾斜した方向に沿って移動(昇降)可能である。例えば
図2に示すように、吸着部材4cは、シリンダ機構6のシリンダロッド6aに設けられる。シリンダ機構6のシリンダ6bには、複数のボルト穴6cが設けられており、シリンダ6bは、移動部4aの壁部4eに設けられた円弧状の長穴4fを介し、ボルト穴6cに螺合するボルト(不図示)によって壁部4eに固定される。長穴4fに対するボルト穴6cの位置を変更することにより、シリンダ機構6の中心軸Aの鉛直方向に対する傾斜角度αを変更することができる。これにより、吸着部材4cの吸着面4dの水平面Hに対する傾斜角度βを変更することができる。なお、シリンダ機構6の中心軸Aは、吸着部材4cの吸着面4dの垂線である。
【0036】
吸着部材4を傾斜させる角度βは、折割り前の板ガラスGの第1主面G1の法線と吸着部材4cの吸着面4dの垂線がなす角度αで、1〜30°が好ましく、1.5〜15°がより好ましく、2〜10°が最も好ましい。吸着部材4cは、例えば硬度が30〜90のウレタン製である。なお、本実施形態のシリンダ機構6は、傾斜角度α=0°とすることが可能であり、その場合、中心軸Aは、鉛直方向に沿う。
【0037】
折割機構5は、折割空間Bに配置されている。折割機構5は、スクライブ線Sの直下位置で板ガラスGの第二主面G2を押し上げる折割部材5aを鉛直方向に沿って昇降可能に備えている。折割部材5aの第二主面G2と対向する面は、スクライブ線Sの両側に跨る平面部5bと、平面部5bの両側で第二主面G2から離れるように下方傾斜した一対の傾斜部5cとを有する。本実施形態では、折割部材5aの第二主面G2と対向する面は、断面形状が等脚台形状をなす。平面部5bの図での横方向の寸法は、3〜15mmであることが好ましい。平面部5bは水平面であることが好ましい。平面部5bと傾斜部5cとのなす角θは、30〜50°であることが好ましい。
【0038】
第一押圧部材3a、第二押圧部材4b及び折割部材5aは、スクライブ線Sに沿う方向に延びた長尺体である。本実施形態では、第一押圧部材3a、第二押圧部材4b及び折割部材5aは、板ガラスGの全幅に亘って連続的に接触する。なお、本実施形態では、第一押圧部材3a、第二押圧部材4b及び折割部材5aは、板ガラスGの全幅よりも長いが、これらの部材3a,4b,5aの少なくとも一つが、板ガラスGの全幅と同じ長さであってもよいし、短い長さであってもよい。また、第一押圧部材3a、第二押圧部材4b及び折割部材5aの少なくとも一つが、幅方向で板ガラスGと断続的に接触してもよい。
【0039】
次に、以上のように構成された折割装置1を用いた本実施形態に係る板ガラスの製造方法を説明する。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係る板ガラスの製造方法は、スクライブ線形成工程S1と、配置工程S2と、折割工程S3と、吸着工程S4と、移動工程S5とを備える。
【0041】
まず、スクライブ線形成工程S1では、板ガラスGの第一主面G1において、製品部Gaと非製品部Gbとの境界に対して、ホイールカッターによる押圧やレーザーの照射等によりスクライブ線Sを形成する。本実施形態では、板ガラスGは、矩形状であり、対向する一組の辺(二辺のみ)や各辺(四辺)に平行にスクライブ線Sを形成する。スクライブ線Sの内側が製品部Ga、スクライブ線Sの外側が非製品部Gbとなる。
【0042】
そして、配置工程S2では、
図1に示すように、スクライブ線Sが形成された板ガラスGを、第一主面G1を上方に向けた状態で、配置機構2に配置する。
【0043】
その後、折割工程S3で、
図4に示すように、板ガラスGの第一主面G1の上方に退避していた第一押圧部材3aを下降させ、第一押圧部材3aで製品部Gaの第一主面G1の第一主面G1を押圧する。また、板ガラスGの第一主面G1の上方に退避していた移動部4aを下降させ所定位置に配置し、更に、移動部4aに対して第二押圧部材4bを下降させ、第二押圧部材4bで非製品部Gbの第一主面G1を押圧する。すなわち、ゴムからなる第一押圧部材3aで製品部Gaの第一主面G1が保持され、ゴムからなる第二押圧部材4bで非製品部Gbの第一主面G1が保持される。
【0044】
この状態から、板ガラスGの下方に退避していた折割部材5aを上昇させ、
図5に示すように、スクライブ線Sの直下位置で、板ガラスGの第二主面G2を上方に押し上げる。換言すると、スクライブ線Sに対応する位置で、板ガラスGの第二主面G2の側から板ガラスGに折割部材5aを押し込む。これにより、スクライブ線Sを中心とする曲げ応力を板ガラスGに作用させる。この際、スクライブ線Sの両側に跨るように、折割部材5aの平面部5bが板ガラスGの第二主面G2と接触する。折割部材5aの上昇量は、板ガラスGの搬送面(第一載置台2a及び第二載置台2bの上面)を零基準として上方に、例えば2mm〜30mmである。折割部材5aの上昇量は、非製品部Gbの大きさや板厚によって変化させてもよいし、変化させなくてもよい。
【0045】
板ガラスGに曲げ応力を作用させると、
図5に示すように、スクライブ線Sに沿って板ガラスGが折り割られ、製品部Gaと非製品部Gbとが分離される。この際、スクライブ線Sの直下方位置で板ガラスGの第二主面G2が平面部5bによって押し上げられて四点曲げのような荷重態様となる。これにより、スクライブ線Sのクラックが真っ直ぐ(垂直)に進展しやすくなる。その結果、製品部Gaの切断端面Ga1の後加工を省略又は少なくすることができる。
【0046】
製品部Gaと非製品部Gbとが分離された後も、折割部材5aは上昇状態(押し込み状態)を維持する。つまり、折割部材5aを押し込んだままの状態にする。このとき、製品部Gaの切断端面Ga1と非製品部Gbの切断端面Gb1との間は折割部材5aの平面部5bによって押し広げられ、製品部Gaの切断端面Ga1と非製品部Gbの切断端面Gb1とが互いに離れた状態となる。また、製品部Gaに傾斜部Ga2が形成されると共に、非製品部Gbに傾斜部Gb2が形成される。製品部Gaの傾斜部Ga2と非製品部Gbの傾斜部Gb2は、配置工程S2の板ガラスGに対して上方に傾斜した状態である。
【0047】
この状態で、吸着工程S4では、
図6に示すように、非製品部Gbの第一主面G1の上方の所定位置に配置されたままの移動部4aに対して、吸着部材4cを下降させる。そして、吸着部材4cで非製品部Gbの第一主面G1を吸着保持する。換言すると、吸着部材4cの吸着面4dを、その垂線(中心軸A)に沿うように非製品部Gbの第一主面G1に接近させて吸着させる。
【0048】
吸着部材4cの吸着面4dは、非製品部Gbの傾斜部Gb2を吸着する。そして、吸着部材4cの吸着面4dは、非製品部Gbの傾斜部Gb2の第一主面G1に沿うように傾斜している。なお、吸着部材4cが非製品部Gbに接近する方向は、折割部材5aの押込方向(鉛直方向)に対して後側に傾斜している。
【0049】
非製品部Gbの第一主面G1上における吸着部材4cの最も前側の吸着位置と、非製品部Gbの第一主面G1の前側端との距離は、30mm以内が好ましく、20mm以内がより好ましく、15mm以内が最も好ましい。
【0050】
移動工程S5では、
図7に示すように、吸着部材4cの吸着保持の後、移動部4aに対して第二押圧部材4bを上昇させる。その後、
図8に示すように、移動部4aに対して、非製品部Gbを吸着した状態で吸着部材4cを上昇させる。詳述すると、吸着部材4cの吸着面4dを、その垂線(中心軸A)に沿うように移動させる。この際、吸着部材4cの移動方向は、折割部材5aの押込方向(鉛直方向)に対して後側に傾斜している。
【0051】
次に、
図9に示すように、吸着部材4cが非製品部Gbを吸着保持した状態で、移動部4aが斜め後側に上昇する。これらの動作により、第二載置台2b上から非製品部Gbが除去される。また、移動部4aが斜め後側に上昇を開始すると同時又は後に折割部材5aは下降して待機位置に戻る。
【0052】
第二載置台2b上から取り除かれた非製品部Gbは、移動部4aの移動により、廃棄用の搬送路上に移動させられる。そこで、吸着部材4cの吸着保持が解除され、非製品部Gbは搬送路により廃棄場所に搬送されることになる。
【0053】
以上のように構成された本実施形態の製造方法では、以下の効果を享受できる。
【0054】
吸着部材4cの吸着面4dを、非製品部Gbの傾斜部Gb2に沿うように傾斜させたため、非製品部Gbに吸着部材4cを吸着させる際に、非製品部Gbが吸着部材4cに押されて湾曲することが抑制され、非製品部Gbが製品部Gaに接触して製品部Gaに欠けが生じることを抑制できる。
【0055】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。例えば、吸着部材4cは、スクライブ線Sと垂直かつ板ガラスGの第一主面G1と平行な方向にも並べて複数配置されてもよい。この場合、吸着部材4cは、スクライブ線Sに沿って複数列に並べて配置される。これにより、幅が広い非製品部Gbも吸着して除去できる。
【0056】
折割部材5aの押し込み時、幅が広い非製品部Gbでは、製品部Gaに近くなるに従って勾配が大きくなる。このため、吸着部材4cを複数列に並べて配置する場合、最前列に配置された吸着部材4cの吸着面4dを傾斜させれば、非製品部Gbの湾曲を抑制する効果が顕著となる。このため、製品部Gaからの距離が最も近い吸着部材4cを傾斜させることが好ましい。また、残りの吸着部材4cは、傾斜させないことが好ましい。
【0057】
また、上記実施形態では、吸着部材4cは、吸着パッドから構成されていたが、吸着部材4cは、負圧を利用するものに限定されず、例えば、静電チャックのように、静電気等を利用するものであってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、水平姿勢の板ガラスGに対して折割り等の一連の処理を行ったが、これに限定されず、縦姿勢や傾斜姿勢に配置された板ガラスGに対して折割り等の一連の処理を行ってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、吸着工程S4で吸着部材4cを非製品部Gbに接近させる際に、吸着部材4cを吸着面4dの垂線に沿って移動させていたが、上下方向(折割り前の板ガラスGの第1主面G1の法線方向)に移動させてもよい。非製品部Gbの湾曲をさらに抑制する観点では、吸着部材4cの移動方向を傾斜させることが好ましく、吸着面4dの垂線と吸着部材4cの移動方向が一致することがより好ましい。
【0060】
また、上記実施形態では、移動工程S5で、移動部4aに対して吸着部材4cを上昇させてから、移動部4aを移動させていたが、移動部4aに対して吸着部材4cを上昇させずに、移動部4aを上昇移動させてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、移動部4aに対して吸着部材4cを上昇させる際、及び、移動部4aを移動させる際のいずれでも、吸着面4dの垂線に沿って移動させていたが、上下方向(折割り前の板ガラスGの第1主面G1の法線方向)に移動させてもよい。非製品部Gbが製品部Gaと接触する可能性を低減する観点では、吸着部材4c及び移動部4aの移動方向を傾斜させることが好ましく、吸着面4dの垂線と吸着部材4cの移動方向が一致することがより好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、移動部4aが、第二押圧部材4bを備えていたが、第二押圧部材4bは移動部4aとは別に配設されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、第一押圧部材3aと第二押圧部材4bが共にゴムから構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、第一押圧部材3aと第二押圧部材4bが共にブラシ状部材で構成されていてもよいし、第一押圧部材3aと第二押圧部材4bのいずれか一方がブラシ状部材で構成されていてもよい。ブラシの毛は弾性を有し、製品部Gaの第一主面G1に倣って撓む。すなわち、ブラシの毛は、板ガラスGの微妙な動き(変形を含む)にも追従する。ブラシの毛は、例えば、ナイロンなどの樹脂製繊維から形成される。
【符号の説明】
【0064】
1 折割装置
2 配置機構
3a 第一押圧部材
4b 第二押圧部材
4c 吸着部材
4d 吸着面(吸着部)
5a 折割部材
A 中心軸(吸着面の垂線)
G 板ガラス
G1 第一主面
G2 第二主面
Ga 製品部
Ga1 切断端面
Ga2 傾斜部
Gb 非製品部
Gb1 切断端面
Gb2 傾斜部
S2 配置工程
S3 折割工程
S4 吸着工程
S5 移動工程
α 傾斜角度
β 傾斜角度