(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792826
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法、波長変換部材の製造方法およびガラスアセンブリ
(51)【国際特許分類】
C03B 33/023 20060101AFI20201119BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20201119BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
C03B33/023
H01L21/78 Q
G02B5/20
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-146637(P2017-146637)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-26505(P2019-26505A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】岩越 智也
(72)【発明者】
【氏名】國本 知道
【審査官】
永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−77219(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/057454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B33/02−33/037
H01L21/78−21/86
G02B5/20−5/28
H01L33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の製造方法であって、
第一貫通孔を有する第一枠状体に張設された粘着テープに貼着された状態で分割予定線に沿って分割可能な矩形状の元ガラス板を準備する準備工程と、
前記第一枠状体を保持した状態で前記粘着テープを引き伸ばし、前記元ガラス板を相互間に隙間を有する複数のガラス板に分割する分割工程と、
矩形状の第二貫通孔を有する前記第二枠状体に、前記複数のガラス板を前記隙間がある状態で保持した前記粘着テープを張設する張設工程と、
前記粘着テープを前記第一枠状体から分離する分離工程とを備えていることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記第二貫通孔が、前記複数のガラス板の配列領域の形状に倣った矩形状であることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記第一貫通孔が円形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記第二貫通孔が正方形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記第二貫通孔の隅部がR形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス板と前記第二貫通孔のR形状をなす隅部との最小距離をL1、前記ガラス板と前記第二貫通孔の直線状をなす辺部との最小距離をL2とした場合に、L1<L2という関係が成立することを特徴とする請求項5に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス板と前記第二貫通孔の直線状をなす辺部との最小距離L2が、1mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項6に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記第二枠状体に貼着される前記粘着テープが円形状であり、
前記粘着テープの直径が、前記第二貫通孔の対角線寸法以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項9】
前記粘着テープの外周縁が、前記第二枠状体の外周縁よりも内側に位置することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項10】
前記準備工程が、前記元ガラス板を前記分割予定線に沿って切断する工程を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項11】
前記準備工程が、前記元ガラス板に前記分割予定線に沿って切込みを形成する工程を含み、前記分離工程で前記切込みを伸展させて前記元ガラス板を切断することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項12】
板状の波長変換部材の製造方法であって、
第一貫通孔を有する第一枠状体に張設された粘着テープに貼着された状態で分割予定線に沿って分割可能な矩形板状の元波長変換部材を準備する準備工程と、
前記第一枠状体を保持した状態で前記粘着テープを引き伸ばし、前記元波長変換部材を相互間に隙間を有する複数の波長変換部材に分割する分割工程と、
矩形状の第二貫通孔を有する前記第二枠状体に、前記複数の波長変換部材を前記隙間がある状態で保持した前記粘着テープを張設する張設工程と、
前記粘着テープを前記第一枠状体から分離する分離工程とを備えていることを特徴とする波長変換部材の製造方法。
【請求項13】
矩形状の領域に配列された複数のガラス板と、前記複数のガラス板を支持する支持体とを備えたガラスアセンブリであって、
前記支持体が、矩形状の貫通孔を有する枠状体と、前記枠状体に張設された粘着テープとを備え、前記複数のガラス板が、相互間に隙間がある状態で前記粘着テープに貼着されていることを特徴とするガラスアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法、波長変換部材の製造方法およびガラスアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体含有ガラス板は、例えば、光源から発せられる光の色を変換するための波長変換部材(発光色変換部材)等に用いられる。
【0003】
この種の蛍光体含有ガラス板に代表される各種ガラス板は、例えば特許文献1に開示されているように、矩形状の大きな元ガラス板を複数のガラス板に分割して製造される場合がある。詳細には、同文献では、分割された複数のガラス板(同文献ではセグメント)を矩形状の領域に配列した状態で粘着テープに貼着し、各ガラス板に対して欠陥検査を行うことが開示されている。粘着テープは、枠状体の円形状の貫通孔を覆うように枠状体に張設されており、貫通孔内の粘着テープ上で分割された複数のガラス板が互いに密着した状態で保持されている(同文献の
図2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−164371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、枠状体の粘着テープ上で複数のガラス板が互いに密着した状態であると、各ガラス板に対してピックアップ(粘着テープからの分離)等の製造関連処理を行う際に、隣接するガラス板同士が互いに干渉するなどして、ガラス板の端部が欠ける、端部が引っかかってピックアップが失敗する等の処理不良を招くおそれがある。
【0006】
このような問題は、板状の波長変換部材を対象とする場合にも同様に生じ得る。
【0007】
本発明は、枠状体の粘着テープに貼着された複数のガラス板又は波長変換部材に対して確実に製造関連処理を行うことを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラス板の製造方法であって、第一貫通孔を有する第一枠状体に張設された粘着テープに貼着された状態で分割予定線に沿って分割可能な矩形状の元ガラス板を準備する準備工程と、第一枠状体を保持した状態で粘着テープを引き伸ばし、元ガラス板を相互間に隙間を有する複数のガラス板に分割する分割工程と、矩形状の第二貫通孔を有する第二枠状体に、複数のガラス板を隙間がある状態で保持した粘着テープを張設する張設工程と、粘着テープを第一枠状体から分離する分離工程とを備えていることを特徴とする。ここで、準備工程における「分割可能な元ガラス板」には、分割予定線に沿ってフルカット(全厚みに亘って切断)された状態のものと、分割予定線に沿ってハーフカット(全厚みの途中まで切断)された状態のものとが含まれる。このような構成によれば、粘着テープの引き伸ばしにより、第二枠状体に張設された粘着テープには、相互間に隙間が形成された複数のガラス板が保持される。従って、第二枠状体に張設された粘着テープに保持された各ガラス板に対してピックアップ等の製造関連処理を確実に行うことができる。
【0009】
上記の構成において、第二貫通孔が、複数のガラス板の配列領域の形状に倣った矩形状であることが好ましい。ここで、複数のガラス板が矩形状の領域に配列された状態で枠状体の貫通孔が円形状であると、貫通孔内でガラス板が貼着されていない粘着テープの余白部分(ガラス板の配列領域と貫通孔の間に形成される部分)が必然的に大きくなってしまう。この粘着テープの余白部分は、ガラス板の保持に寄与しないばかりでなく粘着テープと枠状体の接合面積の拡大にも寄与しないため、無駄な部分となる。従って、粘着テープの無駄を可及的に小さくするという観点からは、粘着テープの余白部分を小さくすることが望ましい。すなわち、複数のガラス板は、元ガラス板に対応した矩形状の領域(厳密には元ガラス板よりも僅かに広い矩形状の領域)に配列されるが、上記の構成のように、第二枠状体の第二貫通孔を複数のガラス板の配列領域の形状に倣った矩形状とすれば、第二貫通孔内でガラス板が貼着されていない粘着テープの余白部分を小さくしつつ、第二貫通孔内の粘着テープ上で全てのガラス板を効率良く保持することができる。
【0010】
上記の構成において、第一貫通孔が円形状であることが好ましい。このようにすれば、第一貫通孔の中心からその周縁までの距離が同じになるので、第一枠状体に張設された粘着テープを均等に引き伸ばしやすくなる。従って、元ガラス板を複数のガラス板に分割しやすく、また分割された複数のガラス板の隙間が均等に開き整列状態も綺麗になる。
【0011】
上記の構成において、第二貫通孔が正方形状であることが好ましい。このようにすれば、第二貫通孔の各辺において粘着テープの伸び量が概ね等しくなるので、第二枠状体に張設された粘着テープに撓みや皺が生じにくく、分割された複数のガラス板の整列状態を維持しやすくなる。
【0012】
上記の構成において、第二貫通孔の隅部がR形状であることが好ましい。このようにすれば、第二貫通孔の隅部がガラス板側に接近するので、第二貫通孔内における粘着テープの余白部分を小さくすることができる。また、第二貫通孔の対角に位置する一組の隅部間を結ぶ線分(対角線)は、第二貫通孔の最長部であり、使用可能な粘着テープの最小サイズを決める主たる部分となる。従って、隅部をR形状として第二貫通孔の対角線寸法を短くすることで、粘着テープの使用量を少なくすることができる。
【0013】
上記の構成において、ガラス板と第二貫通孔のR形状をなす隅部との最小距離をL1、ガラス板と第二貫通孔の直線状をなす辺部との最小距離をL2とした場合に、L1<L2という関係が成立することが好ましい。特に、最小距離L2が、1mm以上50mm以下であることが好ましい。このようにすれば、第二貫通孔内でガラス板を貼着しない粘着テープの余白部分を極めて小さくすることができる。
【0014】
上記の構成において、第二枠状体に貼着される粘着テープが円形状であり、粘着テープの直径が第二貫通孔の対角線寸法以上であることが好ましい。このようにすれば、第二貫通孔全体を円形状の粘着テープで覆うことができるので、円形状の粘着テープを問題なく利用することができる。
【0015】
上記の構成において、粘着テープの外周縁が、第二枠状体の外周縁よりも内側に位置することが好ましい。このようにすれば、粘着テープが、第二枠状体の外周縁よりも外側に食み出すことがないので、第二枠状体の外周縁に触れても粘着テープに由来する接着剤が付着しない。従って、第二枠状体の外周縁にロボット等の装置を接触させ、ガラス板と共に第二枠状体を搬送したり位置決めしたりしやすくなる。
【0016】
上記の構成において、準備工程が、元ガラス板を分割予定線に沿って切断する工程を含むようにしても良い。
【0017】
上記の構成において、準備工程が、元ガラス板に分割予定線に沿って切込みを形成する工程を含み、分離工程で切込みを伸展させて元ガラス板を切断するようにしても良い。
【0018】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、板状の波長変換部材の製造方法であって、第一貫通孔を有する第一枠状体に張設された粘着テープに貼着された状態で分割予定線に沿って分割可能な矩形板状の元波長変換部材を準備する準備工程と、第一枠状体を保持した状態で粘着テープを引き伸ばし、元波長変換部材を相互間に隙間を有する複数の波長変換部材に分割する分割工程と、矩形状の第二貫通孔を有する第二枠状体に、複数の波長変換部材を隙間がある状態で保持した粘着テープを張設する張設工程と、粘着テープを第一枠状体から分離する分離工程とを備えていることを特徴とする。このような構成によれば、上記のガラス板の場合に説明した対応する構成と同様の作用効果を享受することができる。
【0019】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、矩形状の領域に配列された複数のガラス板と、複数のガラス板を支持する支持体とを備えたガラスアセンブリであって、支持体が、矩形状の貫通孔を有する枠状体と、枠状体に張設された粘着テープとを備え、複数のガラス板が、相互間に隙間がある状態で前記粘着テープに貼着されていることを特徴とする。このような構成によれば、ガラスアセンブリの状態で、相互間に隙間が形成された複数のガラス板が粘着テープに保持されるため、各ガラス板に対してピックアップ等の製造関連処理を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明によれば、枠状体の粘着テープ上に貼着された複数のガラス板又は波長変換部材に対して確実に製造関連処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】ガラス板の製造方法の準備工程を説明するための断面図である。
【
図5】ガラス板の製造方法の分割工程の第一段階を説明するための断面図である。
【
図6】ガラス板の製造方法の分割工程の第二段階を説明するための断面図である。
【
図7】ガラス板の製造方法の張替工程の第一段階(張設工程)を説明するための断面図である。
【
図8】ガラス板の製造方法の張替工程の第二段階(分離工程)を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態に係るガラスアセンブリ及びガラス板の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るガラスアセンブリ1は、矩形状の領域Zに配列された複数のガラス板2と、複数のガラス板2を支持する支持体3とを備えている。
【0024】
支持体3は、矩形状の貫通孔4を有する枠状体5と、枠状体5に張設された粘着テープ6とを備えており、貫通孔4内の粘着テープ6には複数のガラス板2が相互間に隙間Sがある状態で貼着されている。
【0025】
枠状体5は、例えば樹脂又は金属製の板材で形成される。枠状体5の中心部に設けられた貫通孔4は正方形状とされ、貫通孔4の四つの隅部4cはR形状とされている。枠状体5の中心は、貫通孔4の中心と一致又は略一致していることが好ましい。枠状体5の厚みは、0.5mm以上、1mm以上であることが好ましく、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下であることが好ましい。貫通孔4の一辺は、矩形状の領域Zに配列された複数のガラス板2の一辺の長さの1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上であることが好ましく、2.0倍以下、1.9倍以下、1.8倍以下、1.7倍以下であることが好ましい。隅部4cのR形状の曲率半径は、8mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上であることが好ましく、50mm以下、40mm以下、35mm以下であることが好ましい。
【0026】
ここで、枠状体5の外周縁7の形状は特に限定されるものではないが、ロボット等の装置による位置決めや把持用に枠状体5の外周縁7に直線状の辺部(外辺部)7sを設けても良い。この場合、外辺部7sは、これと対向する貫通孔4の直線状の辺部(内辺部)4sと平行であることが好ましい。すなわち、支持体3に着目すると、支持体3は、板状のワーク(例えば、蛍光体を含む、セラミック、ガラス、シリコン、及びこれらの組み合わせ)を貼着する粘着テープ6と、粘着テープ6の縁部を支持する枠状体5とを備えたワーク支持体であって、ワークは少なくとも一部に直線状の辺部を有し、枠状体5は、内側にワーク載置時にワーク辺部に平行となる直線状の内辺部4sを有し、枠状体5の外側に直線状の外辺部7sを有し、内辺部4sと外辺部7sが平行であることが好ましい。
【0027】
粘着テープ6は、例えば伸縮性を有する透明UVテープで形成される。粘着テープ6の厚みは、500μm以下、350μm以下、200μm以下、100μm以下、85μm以下であることが好ましい。
【0028】
粘着テープ6は点線Xで示すように円形状であり、その縁部が枠状体5に貼着されて接合部8を形成している。粘着テープ6は貫通孔4の全面を覆うように枠状体5に張設されていることが好ましい。この場合、接合部8は貫通孔4の全周囲を囲むように形成されていることが好ましい。なお、粘着テープ6の形状は特に限定されず、貫通孔4の全面又は略全面を覆うことができる形状であれば、例えば矩形状(正方形や長方形)等の多角形状や楕円形状等であっても良い。
【0029】
粘着テープ6は、厚み方向に対向する第一主表面6a及び第二主表面6bを有し、第一主表面6aが粘着面とされ、第二主表面6bが非粘着面とされている。ガラス板2及び枠状体5は、接着面である第一主表面6a(
図2では上面)に共に貼着されている。ここで、ガラス板2の主表面のうち粘着テープ6に接着する面は片面だけであるため、裏表の区別があるガラス板を扱うことができる。
【0030】
複数のガラス板2の配列領域Zは正方形状であり、各ガラス板2は矩形状(図示例は正方形状であるが、長方形状でも良い)である。正方形状の配列領域Zの直線状の辺部は、これと対向する正方形状の貫通孔4の直線状の辺部4sと平行である。配列領域Zの中心は、貫通孔4の中心と一致又は略一致していることが好ましい。ガラス板2の厚みは、0.05mm以上、0.1mm以上、0.15mm以上であることが好ましく、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.5mm以下であることが好ましい。隣接するガラス板2の相互間に形成される隙間Sは、0.02mm以上、0.03mm以上、0.04mm以上、0.05mm以上であることが好ましく、1mm以下、0.8mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下であることが好ましい。
【0031】
ガラス板2は、例えば、蛍光体含有ガラス板であり、入射光の波長の一部を別の波長に変換する無機波長変換部材の一例である。この種の無機波長変換部材は、例えば、ガラス粉末と無機蛍光体粉末とを含む混合物を加圧或いは成型したインゴットを焼成した後にそのインゴットをスライスしたり、ガラス粉末と無機蛍光体粉末とを含む混合物をヘラ等を用いてテーブル等の平面上にシート状に引き伸ばした後に焼成したりすることで得られる。ガラス粉末としては、例えば、ZnO−B
2O
3−SiO
2系ガラス粉末、SiO
2−B
2O
3−RO系ガラス粉末(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種)、SiO
2−TiO
2−Nb
2O
5−R’
2O系ガラス粉末(R’は、Li、Na及びKからなる群から選択される少なくとも一種)およびSnO−P
2O
5系ガラス粉末からなる群から選択される一種のガラス粉末が用いられる。無機蛍光体粉末としては、酸化物(YAG粉末等のガーネット系粉末を含む)、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物(ハロリン酸塩化物粉末等)およびアルミン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の無機蛍光体粉末が用いられる。具体的には、青色の励起光を照射すると黄色の蛍光を発する無機蛍光体粉末としては、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、La
3Si
6N
11:Ce、Ca−α−サイアロン:Eu、Li
2SrSiO
4:Eu等が挙げられる。
【0032】
ガラス板2と貫通孔4のR形状をなす隅部4cとの最小距離をL1、ガラス板2と貫通孔4の直線状をなす辺部4sとの最小距離をL2とした場合、L1<L2という関係が成立することが好ましい。L2は、1mm以上、2mm以上、3mm以上、5mm以上、10mm以上であることが好ましく、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、15mm以下であることが好ましい。L1及びL2は、1mm以上であることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、粘着テープ6が円形状であるが、粘着テープ6の直径L3は貫通孔4の対角線寸法(貫通孔4の最長寸法)L4以上とされており、貫通孔4全面が粘着テープ6で覆われている。L3/L4は、0.6以上、0.65以上、0.7以上、0.8以上であることが好ましく、0.98以下、0.95以下、0.92以下であることが好ましい。また、粘着テープ6の外周縁(
図1の点線X)は、枠状体5の外周縁7よりも内側に位置しており、粘着テープ6が枠状体5の外側に食み出していない。
【0034】
ここで、接合部8の最小幅は、1mm以上、2mm以上、3mm以上、5mm以上であることが好ましく、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下であることが好ましい。また、枠状体5の中心を通り貫通孔4の直線状をなす辺部4sに垂直な直線上の縁幅の寸法は、20mm以上、25mm以上、30mm以上、40mm以上、50mm以上であることが好ましく、130mm以下、120mm以下、110mm以下、100mm以下であることが好ましい。また、枠状体5の中心を通り貫通孔4の対角線上の縁幅の寸法は、25mm以上、30mm以上、35mm以上であることが好ましく、80m以下、70mm以下、65mm以下、60mm以下であることが好ましい。
【0035】
次に、本実施形態に係るガラス板の製造方法を説明する。本製造方法は、上述したガラスアセンブリ1を製造する工程を含む。以下では、説明の便宜上、ガラスアセンブリ1の構成として説明した支持体3を第二支持体、貫通孔4を第二貫通孔、枠状体5を第二枠状体、接合部8を第二接合部と呼ぶ。
【0036】
本実施形態に係るガラス板の製造方法は、準備工程と、分割工程と、張替工程(張設工程と分離工程を含む)とを、この順に備えている。
【0037】
準備工程では、
図3及び
図4に示すように、矩形状の元ガラス板21を準備する。元ガラス板21は、第一貫通孔22を有する第一枠状体23に張設された粘着テープ6に貼着された状態とされる。元ガラス板21の厚みやガラス組成は、ガラス板2と同様である。
【0038】
第一枠状体23は例えば樹脂又は金属製の板材であり、その中心部に設けられた第一貫通孔22は、矩形状等であっても良いが、本実施形態では円形状である。第一貫通孔22の中心は、第一枠状体23の中心と一致又は略一致していることが好ましい。元ガラス板21の中心は、第一貫通孔22の中心と一致又は略一致していることが好ましい。第一枠状体23の厚みは、0.5mm以上、1mm以上であることが好ましく、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下であることが好ましい。第一枠状体23の外周縁形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では、第一枠状体23の外径寸法は、第二枠状体5の外径寸法と略一致している。もちろん、第一枠状体23の外周縁形状と、第二枠状体5の外周縁形状とが完全に一致していても良い。
【0039】
粘着テープ6は点線Yで示すように円形状であり、その縁部が第一枠状体23に貼着されて第一接合部25を形成している。粘着テープ6は第一貫通孔22の全面を覆うように第一枠状体23に張設されていることが好ましく、第一接合部25は第一貫通孔22の全周囲を囲むように形成されていることが好ましい。第一接合部25の幅は、1mm以上、2mm以上、3mm以上、5mm以上であることが好ましく、25mm以下、20mm以下、15mm以下であることが好ましい。
【0040】
図4に拡大して示すように、本実施形態では、元ガラス板21は、碁盤目状の分割予定線24に沿ってフルカットされ、分割予定線24に沿って分割可能な状態とされている。この状態、すなわち、後述する分割工程において粘着テープ6が引き伸ばされる前において、隣接するガラス板2の相互間は、実質的に隙間のない状態であれば良い。すなわち、ガラス板2の相互間の距離は、例えば、0mm超0.02mm未満(好ましくは0.01mm以下)であっても良い。
【0041】
元ガラス板21をフルカットする方法としては、例えば、元ガラス板21を分割予定線24に沿って一度にフルカットしても良いし、元ガラス板21に分割予定線24に沿って切込み(例えば筋状の直線溝)を形成してハーフカットした後にその切込みに応力(例えば、曲げ応力や熱応力)を作用させてフルカットしても良い。元ガラス板21をハーフカット又はフルカットする切断手段としては、例えばダイシングソー、レーザー、スクライバー等を用いることができる。ハーフカットされたガラスを完全に分断する分断手段としては、例えばブレイカー(折割装置)やレーザー等を用いることができる。元ガラス板21をハーフカットする場合、元ガラス板2は、粘着テープ6に貼着される前にハーフカットされても良いし、粘着テープ6に貼着された後にハーフカットされても良い。元ガラス板21をフルカットする場合、元ガラス板2は、粘着テープ6に貼着された後にフルカットされることが好ましい。なお、準備工程では元ガラス板21に切込みを形成したハーフカットの状態としておき、後述の分離工程における粘着テープ6の引き伸ばしによって切込みを伸展させ、元ガラス板21をフルカットするようにしても良い。
【0042】
本実施形態では、粘着テープ6の粘着面からなる第一主表面6a(
図4では上面)に元ガラス板21及び第一枠状体23が共に貼着されている。なお、粘着テープ6の第二主表面6bは非粘着面である。
【0043】
図5〜
図8に示すように、分割工程および張替工程ではエキスパンダー31を用いる。エキスパンダー31は、中空部を有する円筒状の固定テーブル32と、固定テーブル32の中空部で昇降可能な円柱状の昇降テーブル33と、ワークを固定テーブル32に押圧する円筒状の押圧部材34とを備えている。
【0044】
図5に示すように、分割工程では、まず、エキスパンダー31に、第一枠状体23の粘着テープ6に貼着された元ガラス板21を配置する。詳細には、粘着テープ6を下側、第一枠状体23及び元ガラス板21を上側とした状態で、固定テーブル32上に第一枠状体23を位置させ、昇降テーブル33上に第一貫通孔22内の粘着テープ6及び元ガラス板21を位置させる。この状態で、押圧部材34で第一枠状体23を固定テーブル32に押圧し、第一枠状体23を固定テーブル32上で保持する。なお、昇降テーブル33の直径L5は、第一貫通孔22の直径L6よりも小さい。従って、昇降テーブル33は、第一貫通孔22内を通過可能である。また、固定テーブル32に吸着機構を設け、第一枠状体23を吸着保持しても良い。この場合、押圧部材34は適宜省略することができる。
【0045】
次に、
図6に示すように、第一枠状体23を固定テーブル32上で保持した状態のまま、昇降テーブル33を上昇させ、固定テーブル32と昇降テーブル33の間に高低差を設ける。この高低差を利用して第一貫通孔22内の粘着テープ6を引き伸ばす。これにより、昇降テーブル33上の粘着テープ6が、昇降テーブル33の中心からその外周縁にかけて放射状に引き伸ばされて拡張する。この粘着テープ6の拡張に伴って、複数のガラス板2は、隣接する相互間に隙間Sが形成された状態で分割される。
【0046】
図7に示すように、張替工程では、まず、昇降テーブル33で粘着テープ6を引き伸ばした状態のまま、固定テーブル32よりも高位に位置する昇降テーブル33上の粘着テープ6に第二枠状体5を押圧して貼着し、第二枠状体5と粘着テープ6の第二接合部8を形成する(張設工程)。これにより、正方形状の第二貫通孔4を有する第二枠状体5に、複数のガラス板2を相互間に隙間Sがある状態で保持した粘着テープ6が張設される。なお、第二貫通孔4の対角線寸法L4は、昇降テーブル33の直径L5よりも小さい。すなわち、第二貫通孔4の対角線寸法L4は、第一貫通孔22の直径L6よりも小さい。従って、第二貫通孔4は、第一貫通孔22よりも開口面積が小さい。L4/L6は、0.6以上、0.65以上、0.7以上、0.75以上、0.8以上であることが好ましく、0.95以下、0.90以下であることが好ましい。(第二貫通孔4の開口面積)/(第一貫通孔22の開口面積)は、0.25以上、0.35以上、0.45以上であることが好ましく、0.65以下、0.6以下であることが好ましい。
【0047】
次に、
図8に示すように、第一枠状体23から第二枠状体5に至るまでの区間(好ましは第二枠状体5の近傍)において、カッター35で不要な粘着テープ6を昇降テーブル33の周囲に沿って円形状に切断する(分離工程)。これにより、第二枠状体5に貼着された粘着テープ6が第一枠状体23から分離され、ガラスアセンブリ1(
図1及び
図2を参照)を得ることができる。
【0048】
そして、本製造方法では、ガラスアセンブリ1を用いて各ガラス板2に対して欠陥検査、成膜、寸法検査、保管用サンプル採取等の所定の処理が行われた後、各ガラス板2が粘着テープ6上からロボット等によりピックアップされる。これにより、個々に独立したガラス板2を得ることができる。
【0049】
以上のような構成を備えたガラスアセンブリ1及びガラス板の製造方法によれば、相互間に隙間Sが形成された複数のガラス板2が粘着テープ6に保持されるため、各ガラス板2に対してピックアップ(粘着テープ6からの分離)等の製造関連処理を確実に行うことができる。また、複数のガラス板2は正方形状の配列領域Zに配列されているので、枠状体5の貫通孔4をこの配列領域Zの形状に倣った正方形状とすれば、貫通孔4内における無駄な粘着テープ6の余白部分(配列領域Zと貫通孔4の間に形成される部分)を小さくしつつ、貫通孔4内の粘着テープ6上で全てのガラス板2を効率良く保持することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
複数のガラス板2が配列される領域Z(又は元ガラス板21)は長方形状であっても良い。この場合、枠状体5の貫通孔4は、配列領域Zに倣った長方形状(例えば、配列領域Zを拡大した相似形をなす長方形状)であることが好ましい。なお、厳密な相似形でなくても良く、例えば隅部の形状は異なっていても良い。
【0052】
貫通孔4の隅部4cにおいて、貫通孔4が粘着テープ6で覆われていなくても良い。換言すれば、粘着テープ6の外周縁が、貫通孔4の隅部4cよりも内側に位置していても良い。
【0053】
波長変換部材として、蛍光体含有ガラス板を例示したが、本発明はその他の板状波長変換部材に適用し得る。具体的には、波長変換部材は、蛍光体を含有する無機セラミックス板や、蛍光体を含有しないガラス板の表面に蛍光体を含有する樹脂等を積層して成る積層体であっても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 ガラスアセンブリ
2 ガラス板
3 支持体
4 貫通孔(第二貫通孔)
4c 隅部
5 枠状体(第二枠状体)
6 粘着テープ
8 接合部(第二接合部)
21 元ガラス板
22 第一貫通孔
23 第一枠状体
24 分割予定線
25 第一接合部
31 エキスパンダー
32 固定テーブル
33 昇降テーブル
34 押圧部材
35 カッター
S 隙間
Z ガラス板の配列領域