【文献】
松本亜里沙,アスファルト舗装切断水の物理化学特性とその有効利用に関する検討,地盤工学研究発表会講演集,2015年,p.1207-1208
【文献】
塩田 耕司,建設汚泥リサイクルシステムの開発,五洋建設株式会社技術年報,五洋建設株式会社技術研究所,2002年,Vol.32,p86-90
【文献】
松本亜里沙,アスファルト舗装切断水の水質特性と凝集による改質効果,土木学会年次学術講演会講演概要集,日本,土木学会,2015年,p629-630,URL,library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2015/70-05/70-05-0315.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した舗装道路切断水の処理方法及び処理装置について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る切断水処理装置の概略構成図である。
図1に示すように、切断水処理装置1は、撹拌分離槽(分離部)11と、凝集剤添加装置(凝集剤添加部)12と、上澄み液浄化槽13と、造粒器(造粒部、養生部)14と、ナノバブル発生器15と、pH調整器16と、ポリマー添加装置(ポリマー添加部)17と、セメント添加装置(セメント添加部)18と、セメント貯留槽19と、を備えている。
【0020】
切断水処理装置1は、アスファルト舗装された舗装道路などの道路の切断に際に発生する切断水を処理する。道路を切断する際には、舗装切断機2及び冷却装置3が用いられる。舗装切断機2は、切断機本体21と、切断刃22とを備えている。冷却装置3は、冷却水貯留槽31及び噴射ノズル32を備えている。道路を切断する際には、舗装切断機2の切断機本体21によって切断刃22を回転させて道路を切断する。このとき、冷却装置3は、冷却水貯留槽31に貯留された貯留水を冷却水W1として噴射ノズル32から噴出する。冷却装置3は、噴射ノズル32から冷却水W1を噴出することにより、切断刃22を冷却する。
【0021】
撹拌分離槽11には、舗装切断機2による道路を切断する際に、舗装切断機2の切断刃22に冷却水W1を噴出することによって発生する切断水W2が導入される。撹拌分離槽11には図示しない撹拌羽根が設けられている。撹拌分離槽11に導入された切断水W2は、撹拌羽根を作動させることによって撹拌される。撹拌された切断水は、その後静置されることにより、上澄み液W3と泥土D1とに分離される。
【0022】
撹拌分離槽11の上方には、凝集剤添加装置12が配置されている。凝集剤添加装置12は、撹拌分離槽11で撹拌された切断水W2に凝集剤C1を添加する。撹拌分離槽11では、撹拌された切断水に凝集剤C1を添加した後、切断水W2が静置される。切断水W2に凝集剤C1を添加することにより、切断水W2の上澄み液W3と泥土D1とへの分離が促進される。なお、凝集剤は、切断水W2を撹拌する前、あるいは切断水W2の撹拌中に切断水W2に添加してもよい。
【0023】
撹拌分離槽11における側面には、上澄み液排出ゲート11Aが設けられている。上澄み液排出ゲート11Aは、開口部と、開口部を開閉する扉部材を備えている。扉部材は、上下方向に移動可能である。扉部材が最上方に位置するときには、開口部が完全に閉鎖している。また、扉部材を下降させると、開口部が上方から徐々に開放され、開放された開口部から上澄み液W3が上澄み液浄化槽13に導入される。
【0024】
撹拌分離槽11における底面には、泥土排出ゲート11Bが設けられている。泥土排出ゲート11Bは、開口部と、この開口部を閉塞する蓋部材とを備えている。泥土排出ゲートにおける開口部は、送泥管11Cを介して造粒器14に接続されている。撹拌分離槽11内の泥土は、蓋部材を開放することによって泥土排出ゲート11Bの開口部から落下し、送泥管11Cを介して造粒器14に供給される。
【0025】
上澄み液W3が導入された上澄み液浄化槽13では、上澄み液W3の浄化を行う。上澄み液浄化槽13には、ナノバブル発生器15及びpH調整器16が設けられている。ナノバブル発生器15は、上澄み液浄化槽13に導入された上澄み液W3にナノバブルを発生させる。pH調整器16は、上澄み液浄化槽13に導入された上澄み液W3のpHを調整する。上澄み液W3は、ナノバブル発生器15によるナノバブルの発生及びpH調整器16によるpH調整によって浄化される。浄化された上澄み液W3は、排出水W4として切断水処理装置1の外部に排出される。排出水W4の一部は、冷却水貯留槽31に導入され、舗装切断機2の冷却水W1として再利用される。また、その他の排出水W4は、そのまま排水される。
【0026】
造粒器14には、撹拌分離槽11で分離された泥土D1が導入される。また、造粒器14の上方には、ポリマー添加装置17及びセメント添加装置18が配置されている。ポリマー添加装置17は、泥土D1にポリマーP1を添加する。また、セメント添加装置18は、セメント貯留槽19に貯留されているセメントS1を泥土D1に添加する。セメントS1としては、例えば高炉セメントが用いられる。
【0027】
造粒器14において泥土D1に対してポリマーP1及びセメントS1を添加したら、造粒器14では、作業員が操作するミキサーによって撹拌される。こうして、ポリマーP1及びセメントS1が添加された泥土D1が撹拌されることによって、混合物D2が製造される。
【0028】
造粒器14内における混合物D2は、所定時間、例えば1〜2時間養生することによって、造粒に適する程度に固化して造粒可能となる。なお、さらに固化が進むと、造粒が困難となってしまうので、混合物D2がある程度固化したタイミングで造粒を行う。また、混合物D2にはポリマーP1が添加されていることにより、混合物D2が造粒に適する程度に固化するまでの時間を短くすることができる。そのため、混合物D2を造粒する際の管理の手間を軽減することができる。
【0029】
混合物D2から粒状体として造粒された造粒土D3の一部は、切断された道路に路盤材(混合路盤材)として埋め戻される。また、造粒土D3の他の一部は、そのまま廃棄される。
【0030】
次に、舗装道路切断水の処理方法について説明する。
図2は、舗装道路切断水の処理の手順を示すフローチャートである。切断水の処理では、舗装道路、例えばアスファルト舗装の道路の切断(ステップS11)が行われる際に、舗装切断機2の切断刃22に冷却水W1を噴出することによって発生する切断水W2の処理を行う。ここで発生した切断水W2は、切断水処理装置1における撹拌分離槽11に導入される(ステップS12)。切断水処理装置1に切断水W2が導入されたら、撹拌分離槽11に対して、凝集剤添加装置12によって凝集剤C1を添加して撹拌する(ステップS13)。
【0031】
ここで添加される凝集剤C1は、例えば無機系凝集剤であり、さらに言えば鉄系の凝集剤である。凝集剤C1の成分は、例えば二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カリウム、酸化鉄(II)、二酸化チタン、酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムである。切断水W2に凝集剤C1を添加したら、切断水W2を撹拌する。切断水W2の撹拌が済んだら、撹拌分離槽11内で切断水W2を所定時間、ここでは約30分間静置する。切断水W2の静置時間は、約30分以外の時間でもよく、適宜設定することができる。
【0032】
撹拌分離槽11内で静置された切断水W2は、上澄み液W3と泥土D1とに分離される(ステップS14)。切断水W2に凝集剤C1が添加されていることにより、切断水W2を上澄み液W3と泥土D1とに分離する際にかかる時間を短くすることができる。また、上澄み液W3と泥土D1との確実な分離を促進することができる。
【0033】
上澄み液W3と泥土D1とが分離されたら、泥土D1と分離された上澄み液W3(ステップS14:上澄み液)は、上澄み液排出ゲート11Aを開放することにより、上澄み液浄化槽13へと排出される。上澄み液排出ゲート11Aは、扉部材の開放高さを調整可能とされている。このため、扉部材の上端部を上澄み液W3と泥土D1との界面に位置させることにより、上澄み液W3のみを上澄み液浄化槽13に対して容易に排出することができる。
【0034】
上澄み液浄化槽13に排出された上澄み液W3には、上澄み液浄化槽13内において浄化処理を行う(ステップS21)。浄化処理としては、ナノバブル処理及びpH調整を行う。ナノバブル装置では、ナノバブル発生器15によって上澄み液浄化槽13内の上澄み液W3にナノバブルを例えば10分間発生させる。なお、ナノバブルにかけてマイクロバブルを発生させてもよいし、マイクロバブルとナノバブルとの両方を発生させてもよい。
【0035】
さらに、上澄み液浄化槽13内における上澄み液W3に対して、pH調整器16によってpH調整が行われる。pH調整は、上澄み液W3に中和剤(pH調整剤)を添加したり、冷却水を加水したりすることによって行われる。こうして浄化された上澄み液を冷却水として利用するか否かを決定する(ステップS22)。上澄み液を冷却水として利用するか否かは、例えば冷却水の残量、供給状況、上澄み液W3の浄化度合等によって適宜決定される。
【0036】
浄化された上澄み液を冷却水として利用する場合には(ステップS22:YES)、浄化された上澄み液を冷却水貯留槽31へと移送する(ステップS23)。こうして、浄化された上澄み液を冷却水W1として再利用する(ステップS24)。また、浄化された上澄み液を冷却水として利用しない場合(ステップS22:NO)には、そのまま排水する(ステップS25)。こうして、切断水の処理を終了する。
【0037】
一方、上澄み液W3と分離された泥土D1(ステップS14:泥土)は、泥土排出ゲート11Bを開放することにより、造粒器14へと排出される。泥土D1は、泥土排出ゲート11Bの蓋部材を開放することにより、自重で造粒器14に落下して撹拌分離槽11から排出される。泥土D1の排出は、上澄み液W3の排出が終了した後に行うことにより、泥土D1のみを造粒器14に排出することができる。
【0038】
なお、上澄み液W3のpH値や浮遊物質量(Suspended Solids、以下「SS」という)が、所定の基準を満たす場合には、ステップS21における浄化処理を省略してもよい。例えば、上澄み液W3を冷却水W1として再利用する場合には、冷却水W1としてのpH値やSSを満たしていれば、浄化処理を省略してもよい。また、上澄み液W3のpH値やSSが、切断対象の舗装道路が設けられている自治体が定める基準を満たす場合などには、浄化処理を省略してもよい。
【0039】
造粒器14に排出された泥土D1には、ポリマーP1及びセメントS1が添加されて(ステップS31)混合物D2が製造される。ポリマーP1は、ポリマー添加装置17によって添加され、セメントS1は、セメント添加装置18によって添加される。添加されるポリマーP1としては、水性ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂、水溶性ポリマー、液状ポリマーなどを挙げることができる。ポリマーP1は、ここでは混合物D2の0.31%添加されているが、例えば0.1%〜0.5%の範囲で適宜添加されてもよいし、これらの量を外れた範囲で添加されていてもよい。
【0040】
また、添加されるセメントとしては、普通セメント、早強セメント、ポルトランドセメント、混合セメントなどを例示することができる。また、ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどを挙げることができる。また、混合セメントとしては、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどを挙げることができる。セメントとしては、高炉セメントを添加するのが好適である。また、セメントを例えば混合物D2の湿潤重量における40〜60%の範囲の何れかの割合、例えば50%で添加するのが好適である。なお、必要に応じPS灰を添加してもよい。
【0041】
続いて、泥土D1にポリマー及びセメントを添加した混合物D2を撹拌して混合する。混合物D2の撹拌は、例えば作業者が手で持って操作するミキサーを用いることができる。例えば、造粒器14の底部にミキサーを設けて、このミキサーによって混合物D2を撹拌することができる。ところが、混合物D2は最終的に固化するため、造粒器14の底部に設けられたミキサーで撹拌する場合、ミキサーの洗浄手間がかかることが懸念される。これに対して、作業者が手で持って操作するミキサーを用いることにより、最終的に固化する混合物D2を撹拌した場合でも、ミキサーを容易に洗浄することができる。撹拌混合が済んだら、所定時間静置して養生し、混合物D2とする。養生を行う際の静置時間は、混合物D2が造粒に適する程度に固化する時間とすることができ、例えば1〜2時間程度とすることができる。
【0042】
また、養生は気中養生とするよりも、密閉養生とするのが好適である。養生として、混合物D2を密閉養生することにより、造粒される造粒土D3の粒土の粒径を大きくすることが容易になる。
【0043】
1〜2時間程度の養生を行ったら、ある程度固化した混合物D2を造粒して(ステップS32)造粒土D3を製造する。混合物D2の造粒は、ある程度固化した混合物D2を撹拌することによって行われる。造粒作業を行うにあたり、例えば作業員は、養生を行っている時間を計測し、養生を行った時間が1〜2時間が経過した時点で造粒作業を行う。造粒作業は、例えば作業員がミキサー等によってある程度固化した混合物D2を撹拌することによって行われる。
【0044】
続いて、製造した造粒土D3を路盤材として利用するか否かを決定する(ステップS33)。造粒土D3を路盤材として利用するか否かは、例えば路盤材の残量、供給状況、造粒土D3の汚染度合等によって適宜決定される。
【0045】
その結果、造粒土D3を路盤材として利用する場合(ステップS33:YES)には、造粒土D3は、路盤材として再利用される(ステップS34)。具体的には、造粒土D3を路盤材、例えば再生クラッシャラン(RC−40)に混合して混合土(混合路盤材)を製造する。なお、路盤材は、再生クラッシャラン(RC−40)に限定されず、他の路盤材をとしてもよい。この混合土(混合路盤材)を道路に埋め戻す。こうして、造粒土D3が路盤材として再利用される。また、造粒土D3を路盤材として利用しない場合(ステップS33:NO)には、造粒土D3を廃棄する(ステップS35)。こうして、切断水の処理を終了する。
【0046】
このように、上記の切断水の処理方法では、道路の切断の際に発生した切断水を処理することにより、切断水の廃棄による環境上の問題を抑制することができる。また、浄化された切断水を冷却水に用いたり、泥土を造粒して路盤材として利用したりするなど、切断水を処理することによって得られる材料を再利用することができる。
【0047】
また、泥土を再利用するにあたり、泥土の造粒のためにセメントを添加している。このため、泥土を造粒した際に、大きな粒状体を製造することができる。したがって、路盤材としての再利用に利用できる大きさの造粒土を製造することができる。また、泥土を造粒する際に、セメントともにポリマーも添加している。このため、泥土に添加されたセメントの水和反応が促進され、泥土が固化する際の見掛けの含水比が急激に減少するので、泥土を短時間で固化させることができる。したがって、泥土を造粒するタイミングを失する可能性を低くすることができる。
【0048】
また、造粒土D3とするために泥土D1に添加されるセメントS1として、高炉セメントが用いられている。このため、造粒土D3に含まれる六価クロムを少なくすることができる。したがって、造粒土D3を路盤材として使用する際、あるいは造粒土D3を廃棄する際の環境に対する影響を小さくすることができる。
【0049】
次に、上記の切断水の処理方法の過程における個別の工程に関する実験及びその結果等についてさらに説明する。
【0050】
[切断水への凝集剤添加(ステップS13)に関する実験]
切断水W2に凝集剤C1を添加した場合、凝集剤C1を添加しない場合と比較して、上澄み液W3と泥土D1との分離が短時間で進み、しかも上澄み液W3と泥土D1との分離を確実に行うことができる。本発明者らは、凝集剤C1を添加した場合と添加しない場合との双方における上澄み液W3と泥土D1との分離状況について実験を行った。その実験について説明する。
【0051】
実験では、凝集剤を添加しない切断水と、凝集剤を添加した切断水のそれぞれについて静置し、時間の経過に伴う上澄み液と泥土との分離状況について観察した。この実験では、凝集剤を添加した切断水について1例の実験を行い、凝集剤を添加した切断水についてcase1〜case17の17例の実験を行った。その結果を
図3に示す。
図3において、横軸は、切断水を静置した時間、縦軸は、初期高さに対する沈下量の割合を示している。初期高さは、泥土と上澄み液とが分離する前の切断水の高さであり、時間経過しても大きく変化はしない高さである。沈下量は、泥土と上澄み液とが分離することにより、沈下した泥土が占める高さであり、泥土の沈下(界面の低下)に伴って大きくなる。このため、時間が経過した沈下量が大きくなることにより、初期高さに対する沈下量の割合も大きくなる。
【0052】
図3に示すように、30分が経過した時点において、凝集剤C1を添加していない切断水W2では、初期高さに対する沈下量の割合が、case1〜case17における凝集剤C1を添加した切断水W2のいずれにおける初期高さに対する沈下量の割合を下回っていた。この結果から、切断水W2に凝集剤C1を添加することにより、切断水W2を上澄み液W3と泥土D1とに分離する際にかかる時間を短くできることがわかった。
【0053】
また、
図3に示すように、凝集剤C1を添加していない切断水W2では、60分が経過するまで初期高さに対する沈下量の割合が徐々に増加していった。この結果から、凝集剤C1を添加しない切断水W2では、60分を経過した時点では、上澄み液W3と泥土D1との分離が済んでいなかった。一方、切断水W2に凝集剤C1を添加したcase1〜case17では、case9を除いて、いずれも30分の経過時において初期高さに対する沈下量の割合の変化がほぼ見られなくなっていた。このため、30分を経過した時点で実験を終了した。また、case9においても、60分の経過時には、初期高さに対する沈下量の割合の変化がほぼ見られなくなっていた。この結果から、凝集剤C1を添加することにより、上澄み液W3と泥土D1との確実な分離を促進できることが分かった。
【0054】
さらに、本発明者らは、凝集剤C1を添加する前の切断水W2のpH値と、切断水W2に凝集剤C1を添加して泥土D1と分離された上澄み液W3のpH値とを計測した。この実験は、切断水a〜切断水dの4種類の切断水を用いて行った。また、切断水aについては複数回の実験を行った。その結果を
図4(A)に示す。
【0055】
また、凝集剤C1を添加する前の切断水W2のSSと、切断水W2に凝集剤C1を添加して泥土D1と分離された上澄み液W3のSSとを計測した。この実験は、切断水cを用いて4回行った。その結果を
図4(B)に示す。なお、
図4(A)(B)には、日本国内における一自治体で定めるpH値とSSの排水基準値を示す。
【0056】
図4(A)に示すように、凝集剤を添加した上澄み液のpH値は、切断水a〜切断水dのいずれにおいても、凝集剤を添加する前の切断水のpH値より低くなった。特に、切断水a,bについては、いずれも一自治体で定める排水基準を満たす結果となった。切断水c,dでは、排水基準には到達しないものの、pH値の低下は見られた。
【0057】
図4(B)に示すように、上澄み液のSSについては、4回の実験のいずれにおいても、凝集剤を添加する前の切断水のSSより減少する結果となった。これらの実験結果から、切断水に凝集剤を添加することにより、pH値及びSSのいずれをも低下させられることが分かった。
【0058】
また、切断水W2に添加する凝集剤についても実験を行った。実験には、
図5に示す8種類の凝集剤を用いた。
図5に示す凝集剤A〜凝集剤Hのうち、凝集剤A及び凝集剤Fは鉄系の凝集剤である。また、凝集剤C、凝集剤D、及び凝集剤Eはアルミ系の凝集剤である。また、その他の凝集剤は無機系の凝集剤である。実験では、切断水にこれらの凝集剤をそれぞれ添加し、所定時間経過後における凝集性及び界面の状態を判定することによって行った。その結果を
図5に示す。
【0059】
凝集性の判定において、○は「明確に確認できる。そして比較的大きい。」○※1は「明確に確認できる。しかし大きくはない。」、△は「フロックは少しだけ確認できる。」、×は「確認できない。」をそれぞれ意味する。また、界面の状態の判定において、◎は「界面が確認できてかつ顕著に沈降する。」、○は「界面が確認できてかつ沈降する。」、△は「界面は確認できるがほとんど沈降しない。」、△※1は「上澄み液が少しできた。」×は「界面がほとんど認められない。」を意味する。
【0060】
図5に示すように、鉄系の凝集剤である凝集剤A、凝集剤Hを用いて上澄み液と泥土との分離を行った場合に、凝集性は、「○」、界面の状態は「◎」といずれもが良い判定となった。また、凝集剤A、凝集剤H以外の凝集剤を用いた場合には、界面の状態が「◎」となる例はなかった。また、凝集性が「○」となった凝集剤は、凝集剤A、凝集剤F、のほか凝集剤B、凝集剤C、凝集剤Gがあった。しかし、凝集剤Bでは、界面の状態が「△」と良くなった。凝集剤Cは、凝集性が「○」判定であるが、凝集性が大きいといえない結果であった。凝集剤Gは、界面の状態が「○」ではあるが、鉄系の凝集剤A、凝集剤Fよりも評価は劣るものであった。このため、凝集剤としては、鉄系の凝集剤が好適に用いられることがわかった。
【0061】
[上澄み液の浄化(ステップS21)に関する実験]
上澄み液浄化槽13において、上澄み液W3は、ナノバブル発生器15によってナノバブルを発生させることによって浄化される。本発明者らは、上澄み液にナノバブルを発生させることによる浄化についての実験を行った。実験では、
図4(B)に結果を示す実験で得られた上澄み液にナノバブルを発生させて、ナノバブルを発生させた後のSSを計測した。その結果を
図6に示す。
【0062】
図6に示すように、4回の実験のいずれにおいても、ナノバブルを発生させる前の上澄み液では、切断水の状態からはSSが低下していたものの、一自治体で定める基準値にまでは到達していなかった。これに対して、4回の実験のいずれにおいても、上澄み液にナノバブルを発生させることにより、SSが一自治体で定める基準値以下となった。この結果から、ナノバブルを発生させることにより、SSを一自治体で定める基準値以下まで低下させられることがわかった。
【0063】
[ポリマー・セメントの添加(ステップS31)に関する実験]
造粒器14においては、泥土D1にポリマー及びセメントが添加されて、混合物D2とされる。この混合物D2を養生して固化した後に造粒して造粒土D3とする。ここで、本発明者らは、ポリマー及びセメントを添加することなく造粒器14によって泥土を造粒した場合の造粒土(以下「直接造粒土」という)の粒度分布を測定した。また、ポリマー及びセメントを添加して造粒器14によって泥土を造粒した場合の造粒土の粒度分布を測定した。その結果を
図7に示す。
【0064】
図7に示すように、直接造粒土A,Bの粒度分布は、粒径が小さい範囲に多くなり、非常に細かく、直接造粒土は粒径が非常に小さい砂状のものが多くなった。また、造粒土A〜造粒土Lの粒度分布は、いずれも粒径が大きい範囲に多くなり、大きな粒状のものが多くなった。また、
図7には、路盤材としての再生クラッシャーラン(RC−40)の粒度分布の範囲を示す。再生クラッシャーラン(RC−40)の粒度分布は、おおよそ領域Xの範囲に収まっている。これに対して、造粒土A〜Lの粒度分布は、この領域Xの内側またはその近傍に位置している。この結果から、造粒土A〜Lは、直接造粒土A,Bよりも路盤材として好適に用いられることがわかった。
【0065】
また、本発明者らは、ポリマーを添加した際の効果を確認するため、ポリマーを添加した混合物と、ポリマーを添加していない非添加混合物とを生成し、両者について造粒に適した固さとなるまでの時間を計測した。その結果、ポリマーを添加していない非添加混合物は、造粒に適した固さとなるまでおよそ百数十時間を費やした。このため、混合物を造粒するまでの長時間を要することとなった。これに対して、ポリマーを添加した混合物では、ポリマーが混合物中のセメントの水和反応を促進する。このため、ポリマーを添加した混合物は、見掛けの含水比が急激に減少し、およそ1〜2時間程度で造粒に適した固さとなる。したがって、混合物の造粒を短時間で行うことができる。
【0066】
また、混合物は、時間が経過すると固化が進み、混合物が造粒に適した固さとなっている状態は、短時間、例えば1時間程度である。このため、非添加混合物では、百数十時間待機した後の1時間程度の間に混合物を造粒しなければならず、造粒のタイミングを失する可能性が高くなる。一方のポリマーを添加した混合物では、1〜2時間の養生の後1時間程度の間に造粒を行えばよいので、造粒のタイミングを失する可能性を低くすることができる。したがって、混合物を容易に造粒することができる。
【0067】
また、泥土D1にセメントを添加することにより、造粒土D3にフッ素や六価クロムが混入する懸念があり、環境に影響を及ぼす可能性がある。そこで、本発明者らは、泥土に添加するセメントの種類及び添加割合を変えて造粒土を製造し、製造された造粒土のフッ素及び六価クロムの濃度を計測する実験を行った。泥土に添加するセメントとして、早強セメントと高炉セメントとを用いた。また、混合物のポリマーを添加したものとポリマーを添加していないものとを用いた。また、case1〜5については、共通の泥土を用い、case6のみ異なる泥土を用いた。その結果を
図8に示す。なお、
図8には、一自治体におけるフッ素及び六価クロムの濃度の環境基準を示す。
【0068】
図8に示すように、case1〜6の全てにおいて、フッ素については、環境基準を下回る結果となった。また、早強セメントを添加したcase1〜3では、いずれも六価クロムが環境基準を上回る結果となった。また、高炉セメントを30%添加し、さらにPS灰を添加したcase5でも六価クロムが環境基準を上回る結果となった。これらの結果に対して、高炉セメントを50%添加したcase4,6では、いずれも六価クロムが環境基準を下回る結果となった。この結果から、高炉セメントを50%添加した混合物において、六価クロムについての環境基準を満たす造粒土を製造できることが分かった。
【0069】
[路盤材としての利用(ステップS34)に関する実験]
造粒器14で造粒された造粒土D3は、再生クラッシャラン(RC−40)と混合されて混合土となる。この混合土は、路盤材(混合路盤材)として使用される。本発明者らは、造粒器14で造粒された造粒土を再生クラッシャランに混合して得られた混合土の粒度分布、含水比、及びCBR(California Bearing Ratio)を計測した。その結果として、路盤材の粒度分布については
図9、含水比については
図10、CBRについては
図11にそれぞれ示す。
【0070】
図9には、高炉セメントを添加して製造した造粒土を再生クラッシャランに混合した混合土(以下、「第1混合土」という)の粒度分布と、早強セメントを添加して製造した造粒土を再生クラッシャランに混合した混合土(以下、「第2混合土」という)の粒度分布とを示す。なお、第1混合土における高炉セメントの混合割合及び第2混合土における早強セメントの混合割合はいずれも12%である。また、
図9には、再生クラッシャラン(RC−40)の粒度分布が収まる領域Xの範囲も示している。
【0071】
図9に示すように、第1混合土と第2混合土との粒度分布を比較すると、両者はほぼ同じ粒度分布となった。また、第1混合土と第2混合土との粒度分布は、再生クラッシャランの粒度分布に範囲Xにほぼ収まる結果となった。この結果から、第1混合土及び第2混合土のいずれについても、路盤材としての粒度分布を満たすことがわかった。
【0072】
図10は、第1混合土の含水比と乾燥密度との関係を示すグラフである。第1混合土の含水比及び乾燥密度を求めるにあたり、第1混合土から供試体を作成し、突き固めによる締固め試験を行った。その結果、
図10に示すように、第1混合土の最大乾燥密度ρ
d,maxは1.77g/cm
3、最適含水比w
qptは18.0%であった。なお、
図10には、第1混合土の飽和度一定曲線(100%、90%、80%を合わせて示す)。また、第1混合土の湿潤密度ρ
Sは2.73g/cm
3である。
【0073】
図11は、第1混合土及び第2混合土のCBRと乾燥密度との関係を示すグラフである。なお、
図11には、路盤材としての利用に適するCBRを合わせて表示している。例えば、上層路床の路盤材としては、CBR10%以上の混合土が適している。また、下層路盤の路盤材としては、CBR30%以上、上層路盤の路盤材としては、CBR80%以上の混合土がそれぞれ適している。
【0074】
CBRは、CBR試験により求めた。CBR試験では、第1混合土及び第2混合土からそれぞれ供試体を突き固めによって作成し、貫入試験を行うことで行った。供試体を作成するにあたり、最大乾燥密度となるまでは、突き固め回数が増加するほど乾燥密度が増加する。
【0075】
図11に示すように、第1混合土及び第2混合土は、突き固め回数が少なく、乾燥密度が低い状態では、CBRが低かったが、乾燥密度の増加に伴い、CBRが増加した。第1混合土では、乾燥密度が約1.65g/cm
3では、CBRは約70%となり、下層路盤や上層路床としては十分用いることができるCBRとなった。また、乾燥密度が約1.74g/cm
3となったときには、CBRが約225%となり、上層路盤として用いるのに十分なCBRを得ることができた。
【0076】
また、第2混合土では、乾燥密度が1.62g/cm
3のときにCBRは約55%であり、下層路盤や上層路床としては十分用いることができるCBRとなった。また、乾燥密度が約1.63g/cm
3のときにCBRは約80%であり、上層路盤として用いるのに十分なCBRを得ることができた。
【0077】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、切断水処理装置1の一部を自動化してもよいし、全部を自動化してもよい。具体的には、撹拌分離槽11に導入された切断水W2の重量又は体積などを計測し、切断水W2が撹拌分離槽11に所定量導入された時点で切断水W2の導入を停止するとともに、凝集剤添加装置12によって凝集剤を自動的に切断水W2に添加するようにしてもよい。
【0078】
また、上澄み液浄化槽13に導入される上澄み液W3の重量又は体積などを計測し、上澄み水W3が上澄み液浄化槽13に所定量導入された時点で上澄み水W3の導入を停止するとともに、ナノバブル発生器15でナノバブルを発生させるようにしてもよい。また、上澄み液浄化槽13内の上澄み液W3のpH値を計測し、pH値が高すぎる場合にpH調整剤によってpH値を調整するようにしてもよい。
【0079】
また、造粒器14において泥土D1にポリマーP1及びセメントS1を添加して養生し、混合物D2を製造しているが、造粒器のほかに設けられた養生部で混合物D2を製造し、製造した混合物D2を造粒器14に移動させるようにしてもよい。また、造粒器14において混合物D2を撹拌して造粒する際には、作業員が養生時間を計測し、1〜2時間の養生時間が経過した後、作業員が混合物D2を撹拌している。これに対して、例えば、養生時間を計測するタイマと、タイマの経過に基づいて混合物D2を撹拌するミキサーを設けてもよい。あるいは、タイマに代えて、混合物D2の固化状態(固さ)を計測し、所定の固さとなった時点で撹拌して造粒するようにしてもよい。