【実施例】
【0018】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0019】
実施例1
(1)角化歯肉と非角化歯肉におけるKeratin1(K1)とKeratin10 (K10)の発現解析
(A)定量性RT-PCR
Wistar系ラットをイソフル(登録商標)2.0 %の吸引麻酔で全身麻酔を施し、頸椎脱臼により屠殺した。口腔粘膜をヨード(イソジン(登録商標))にて染色し、実体顕微鏡下で角化歯肉と非角化歯肉を分離し採取した。採取した角化歯肉と非角化歯肉からそれぞれmRNAを回収し、定量性RT-PCRによりKeratin1(K1)、Keratin10(K10)の遺伝子発現量を確認した。用いたプライマーは以下のとおりである。内部標準遺伝子として、Ribosomal protein S29 (rat)遺伝子(配列番号1、2)を用いた。得られた結果を
図1に示す。
S29 sense:AAGGACATAGGCTTCATTAAGTTG(配列番号1)
S29 anti-sense:AGGGTAGACAGTTGGTTTCAT(配列番号2)
K1 sense:TGCTCAGATTAGGCTTATTTCC(配列番号3)
K1 anti-sense:GCTCTTCGTGGTTCTTCTTC(配列番号4)
K10 sense:ATCAAGGAGTGGTACGAGAA(配列番号5)
K10 anti-sense:AGCAGGACATTGGCATTG(配列番号6)
【0020】
(B)免疫組織化学染色
また、採取した角化歯肉と非角化歯肉からSuper Cryoembedding Medium(SECTION-LAB Co. Ltd.)を用いて凍結包埋し、凍結切片を作製した。1次抗体としてK1(ab8068,1:10,Abcam)、K10(ab9026,1:50,Abcam)を使用し、2次抗体としてAlex Fluor(登録商標)488 goat anti-mouse IgG[H+L](Life technologies
TM)又はAlex Fluor(登録商標)488 goat anti-rabbit IgG[H+L](Life technologies
TM)を使用して免疫組織化学染色を行った。得られた結果を
図1に示す。
【0021】
(2)角化歯肉と非角化歯肉における間葉系線維芽細胞の採取とその性質
(A)定量性RT-PCR
上記(1)と同様にして、ラット口腔粘膜から角化歯肉と非角化歯肉を採取した。10%ウシ胎仔血清(Fetal bovine serum; FBS,Life technologies
TM)、2mM L-glutamine(Life technologies
TM)、100 units/mL penicillin(SIGMA)含有High Glucose Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(D-MEM)培地(Life technologies
TM)を用い、Out Growth法にて約20日間培養し、角化歯肉と非角化歯肉における線維芽細胞を分離して採取した。採取した角化歯肉と非角化歯肉からそれぞれmRNAを回収し、定量性RT-PCRにより各遺伝子の発現量を確認した。用いたプライマーは以下のとおりである。内部標準遺伝子として、Ribosomal protein S18 (rat)遺伝子(配列番号7、8)を用いた。得られた結果を
図2に示す。
S18 sense:CTTCGCTATCACTGCCATT(配列番号7)
S18 anti-sense:CGTCCTTCTGTCTGTTCAAG(配列番号8)
Col1a1 sense:GACAATTTCACATGGACTTTGG(配列番号9)
Col1a1 anti-sense:ACGTTCAGTTGGTCAAAGATAA(配列番号10)
Fibronectin sense:TGTCCTCCTTCCATCTTCTTA(配列番号11)
Fibronectin anti-sense:CCCTGAGCATCTTGAGTG(配列番号12)
Tenascin C sense:TTCTCAGTGCTCAGTGGAT(配列番号13)
Tenascin C anti-sense:GATGTTGATGCGGTGTGT(配列番号14)
【0022】
(B)細胞接着能の評価
線維芽細胞培養培地を用いて、角化歯肉または歯槽粘膜由来線維芽細胞を96 well plateに5.0×10
3個/wellの濃度で播種し、培養後30分後の接着細胞数をCellTiter 96 Aqueous(登録商標) One Solutionを用いて測定することにより、細胞接着能を評価した。得られた結果を
図3に示す。
【0023】
(C)細胞増殖能の評価
線維芽細胞培養培地を用いて、角化歯肉または歯槽粘膜由来線維芽細胞を96 well plateに5.0×10
3個/wellの濃度で播種し、培養後3日目の生細胞数をCellTiter 96 Aqueous(登録商標) One Solutionを用いて測定することにより、細胞増殖能を評価した。得られた結果を
図3に示す。
【0024】
(D)細胞遊走能の評価
24 well plate用Boyden chamber(poresize 8 μm:BD)に5×10
4個/wellの濃度で線維芽細胞を播種した。培養24 時間後にフィルター下面に遊走した細胞を4’,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI:Life technologies
TM)にて染色し、蛍光顕微鏡(Biozero BZ-X700,株式会社キーエンス)下でランダムに4箇所を選択し、細胞数をカウントすることにより、細胞遊走能を評価した。得られた結果を
図3に示す。
【0025】
(3)角化歯肉と非角化歯肉におけるLamα3、Lamβ3及びLamγ2の発現解析
(A)免疫組織化学染色
角化歯肉と非角化歯肉の部位を確認するため、ラット上顎組織を4 % paraformaldehyde(PFA)で固定後、ギ酸・クエン酸ナトリウム水溶液(22.5 %ギ酸,10 %(W/V)クエン酸ナトリウム)を用いて脱灰した。通常の方法に従ってパラフィン包埋し、厚さ5 μmの切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行い、組織学的に評価した。また、LAMα3の発現を確認するため、上記と同様の方法で作製したパラフィン切片を用い、1次抗体として、LAMα3(bs-1969R,1:50,Bioss)を使用し、2次抗体として、Alex Fluor(登録商標) 488 goat anti-mouse IgG[H+L](Life technologies
TM)もしくはAlex Fluor(登録商標) 488 goat anti-rabbit IgG[H+L](Life technologies
TM)を使用して、免疫組織化学染色を行った。得られた結果を
図4に示す。
【0026】
(B)定量性RT-PCR
上記と同様にして、採取した角化歯肉と非角化歯肉からそれぞれmRNAを回収し、定量性RT-PCRにより各遺伝子の発現量を確認した。用いたプライマーは以下のとおりである。内部標準遺伝子として、Ribosomal protein S29 (rat)遺伝子(配列番号1、2)を用いた。得られた結果を
図4に示す。
Lamα3 sense:TACCACCTCTGAACACCAA(配列番号15)
Lamα3 anti-sense:AAGAGCCAGGAAGGAGTC(配列番号16)
Lamβ3 sense:GGCGTGTGCTGTACTATG(配列番号17)
Lamβ3 anti-sense:CAGACTATGCTATCAATGGTATCC(配列番号18)
Lamγ2 sense:AGTCCTGCTGCTATGTCA(配列番号19)
Lamγ2 anti-sense:CCATTACTACTGTCTCACTATGC(配列番号20)
【0027】
(4)Laminin332が上皮細胞の角化に与える影響の確認
(A)定量性RT-PCR
上部chamberである24 well plate用Thin Cert 細胞培養インサート(株式会社グライナー・ジャパン)に5×10
5個/wellのTR146(DSファーマバイオメディカル株式会社)から購入したヒト口腔扁平上皮癌(頸部リンパ節)細胞を播種し、上皮細胞培養培地(10 % FBS,2 mM L-glutamine(DSファーマバイオメディカル株式会社)含有F-12 Nutrient Mixture(Ham‘s F-12)培地(Life technologies
TM))にて1日間培養した。下部chamberにも、上皮細胞培養培地を加えた。TR146が細胞培養インサートに接着したのを確認した後、上部chamberには培地を加えず、下部chamberに0、300および1000 ng/mLのrecombinant human Laminin332(rhLAM332)(株式会社リプロセル)含有上皮細胞培養培地を加え、4日毎に培地交換を行い、20日間培養した。その後、上部chamberの細胞からtotal RNAを回収し、定量性RT-PCRによりK1とK10の遺伝子発現量を確認した。用いたプライマーは以下のとおりである。内部標準遺伝子として、Ribosomal protein S29 (human)遺伝子(配列番号21、22)を用いた。得られた結果を
図5に示す。
S29 sense:TCTCGCTCTTGTCGTGTCTGTTC(配列番号21)
S29 anti-sense:ACACTGGCGGCACATATTGAGG(配列番号22)
K1 sense:CTTACTCTACCTTGCTCCTACT(配列番号23)
K1 anti-sense:AAATCTCCCACCACCTCC(配列番号24)
K10 sense:ACACCGCACAGAACCACCACTC(配列番号25)
K10 anti-sense:GGCAGGCACAGGTCTTGATGAAC(配列番号26)
【0028】
(B)免疫組織化学染色
上部chamberのメンブレンと一緒に、4 % paraformaldehyde(PFA)で固定後、通常の方法に従ってパラフィン包埋し、厚さ5 μmの切片を作製した。1次抗体としてK1(ab8068,1:10,Abcam)、K10(ab9026,1:50,Abcam)を使用し、2次抗体としてAlex Fluor(登録商標) 488 goat anti-mouse IgG[H+L](Life technologies
TM)又はAlex Fluor(登録商標) 488 goat anti-rabbit IgG[H+L](Life technologies
TM)を使用して、免疫組織化学染色を行った。得られた結果を
図5に示す。
【0029】
実施例2
(1)角化歯肉由来と非角化歯肉由来の間葉系線維芽細胞が角化に与える影響の確認
(A)定量性RT-PCR
実施例1の(2)と同様にして、角化歯肉と非角化歯肉における間葉系線維芽細胞を分離して採取した。上皮細胞と線維芽細胞の共培養実験を行うため、上部chamberであるThin Cert 細胞培養インサートに1×10
5個/wellの角化歯肉または歯槽粘膜由来線維芽細胞を播種し、線維芽細胞培養培地にて1日間培養した。線維芽細胞が細胞培養インサートに接着したのを確認した後、5×10
5個/wellのTR146を播種し、さらに1日間培養した。TR146が細胞培養インサートに接着したのを確認した後、上部chamberには培地を加えず、下部chamberにのみ上皮細胞培養培地を加え、4日毎に培地交換を行い、28日間培養した。その後、total RNAを回収し、定量性RT-PCRにより各遺伝子の発現量を確認した。用いたプライマーは以下のとおりである。内部標準遺伝子として、Ribosomal protein S29 (human)遺伝子(配列番号19、20)を用いた。Keratin1(K1)とKeratin10(K10)のプライマーは、配列番号23〜26のものを用いた。得られた結果を
図6に示す。
Lamα3 sense:AGTCTGAATGGTTGTCCTGA(配列番号:27)
Lamα3 anti-sense:TGGTTTGTGTCCTAATTGAAGAA(配列番号:28)
Lamβ3 sense:GACAGTTACACTTGACAGACA(配列番号:29)
Lamβ3 anti-sense:CCAGCTTCCTTGACTTGAG(配列番号:30)
Lamγ2 sense:TCTGTGCTGATGGCTACT(配列番号:31)
Lamγ2 anti-sense:CGGCTGTGTTGTGGATAC(配列番号:32)
【0030】
(B)免疫組織化学染色
実施例1と同様にして、1次抗体としてLAMα3(bs-1969R,1:50,Bioss)、K1(ab8068,1:10,Abcam)、K10(ab9026,1:50,Abcam)を使用し、2次抗体として、Alex Fluor(登録商標) 488 goat anti-mouse IgG[H+L](Life technologies
TM)もしくはAlex Fluor(登録商標) 488 goat anti-rabbit IgG[H+L](Life technologies
TM)を使用して、免疫組織化学染色を行った。得られた結果を
図6に示す。