特許第6792868号(P6792868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パディ研究所の特許一覧

<>
  • 特許6792868-弾丸暗渠形成装置 図000002
  • 特許6792868-弾丸暗渠形成装置 図000003
  • 特許6792868-弾丸暗渠形成装置 図000004
  • 特許6792868-弾丸暗渠形成装置 図000005
  • 特許6792868-弾丸暗渠形成装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792868
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】弾丸暗渠形成装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 11/02 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   E02B11/02 302Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-16596(P2017-16596)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-123574(P2018-123574A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】596029085
【氏名又は名称】株式会社パディ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 恒雄
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−060928(JP,U)
【文献】 特開2006−022586(JP,A)
【文献】 実開昭51−133794(JP,U)
【文献】 米国特許第04127073(US,A)
【文献】 実開昭54−142602(JP,U)
【文献】 特開2005−325554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な作業機の後部に、上下方向に移動可能に設けられる弾丸暗渠形成装置において、該弾丸暗渠形成装置は、下端に弾丸を設けた溝形成用のブレードを有し、該ブレードは、溝形成方向先端の上下方向中間部に、溝形成方向前方に突出した中間突出部が設けられ、該中間突出部より上部側には、上方が溝形成方向後方に向かって傾斜した上部後傾部を設けるとともに、前記ブレードを鉛直方向に地中に挿入した弾丸暗渠形成状態で、圃場の地表面側の作土より下方の心土中に挿入される中間突出部より下部側には、下方が溝形成方向後方に向かって傾斜した下部後傾部を設けたことを特徴とする弾丸暗渠形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾丸暗渠形成装置に関し、詳しくは、圃場などにおける排水性を向上させるために設けられる弾丸暗渠を形成するための弾丸暗渠形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圃場などの排水性を向上させるため、地中に弾丸暗渠を形成することが行われている。弾丸暗渠を形成する装置としては、一般的に、下端に弾丸を設けた溝形成用ブレード(チゼル)を地中に進入させた状態で、ブルドーザなどの作業機で牽引又は押動するものが知られている。また、弾丸暗渠の形成と同時に、溝形成用ブレードで形成した溝内に籾殻などの疎水材を投入するものも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−325554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、溝形成用ブレードは、特許文献1にも記載されているように、ブレード上部からブレード下部に向かって後方に傾斜した形状に形成されており、弾丸暗渠形成時にブレード先端が地中に埋もれた大きな石に接触した際に、ブレードが下方に引き込まれないようにしている。しかし、圃場の地面付近に大量の藁や根が残っている場合、先鋭化したブレード先端で切断できるようにしているものの、切断できなかったときには、これらの藁や根がブレード先端にまつわりつき、藁や根がブレード先端部に溜まってしまうと、ブレードによる溝の形成が困難になってしまう。
【0005】
そこで本発明は、地中に埋まっている石や地面付近の藁や根による悪影響を回避してブレードによる溝の形成を円滑に行うことができる構造を有する弾丸暗渠形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の弾丸暗渠形成装置は、走行可能な作業機の後部に、上下方向に移動可能に設けられる弾丸暗渠形成装置において、該弾丸暗渠形成装置は、下端に弾丸を設けた溝形成用のブレードを有し、該ブレードは、溝形成方向先端の上下方向中間部に、溝形成方向前方に突出した中間突出部が設けられ、該中間突出部より上部側には、上方が溝形成方向後方に向かって傾斜した上部後傾部を設けるとともに、前記ブレードを鉛直方向に地中に挿入した弾丸暗渠形成状態で、圃場の地表面側の作土より下方の心土中に挿入される中間突出部より下部側には、下方が溝形成方向後方に向かって傾斜した下部後傾部を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の弾丸暗渠形成装置によれば、圃場の地面付近に大量の藁や根が残っていても、上部後傾部によってこれらを排除することができ、地中に埋もれた石に接触した場合は、下部後傾部によってブレードが下方に引き込まれることを防止できる。したがって、様々な状態の圃場に効率よく弾丸暗渠を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の弾丸暗渠形成装置の一形態例を示す側面図である。
図2】弾丸暗渠形成装置をブルドーザの後部に装着して弾丸暗渠を形成している作業中の状態を示す側面図である。
図3】弾丸暗渠形成装置の平面図である。
図4】弾丸暗渠形成装置の背面図である。
図5】弾丸暗渠形成装置の他の形態例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至図4は、本発明の弾丸暗渠形成装置の一形態例を示すもので、本形態例に示す弾丸暗渠形成装置11は、走行可能な作業機であるブルドーザ12の後部に装着して圃場13の心土13a中に3本の弾丸暗渠14を同時に形成する構成を有している。
【0010】
弾丸暗渠形成装置11は、ブルドーザ12の後部に、平行リンク構造を有する取付フレーム15を介して装着されるものであって、等間隔に配置された3枚のブレード16と,各ブレード16の下端にチェーン17aを介してそれぞれ設けられた弾丸17とを有している。ブルドーザ12の後部に設けられた取付フレーム15は、左右一対のシリンダ18によってブレード16を昇降可能に支持しており、シリンダ18を最も伸長させたときに、図1に想像線で示すように、ブレード16を地表面より上方に上昇させた待機状態にでき、適度に伸縮させた状態で、図1に実線で示すように、ブレード16を地中に挿入した弾丸暗渠形成状態にできるように形成されている。また、レーザ光を使用した制御手段(図示せず)によってシリンダ18を伸縮させることにより、弾丸17をあらかじめ設定された上下方向位置に保持するようにしている。
【0011】
ブレード16は、取付フレーム15の後部側下端部に設けられた支持部材15aに上端部が固定された板状の部材であって、この板状の部材の板面が、鉛直方向かつ溝形成方向に対して平行な方向を向くように配置されており、ブレード16の溝形成方向前端縁は、土砂の切り裂き効果を高めるために先鋭化されている。
【0012】
ブレード16における溝形成方向先端の上下方向中間部には、溝形成方向前方に突出した中間突出部16aが設けられ、この中間突出部16aより上部側には、上方が溝形成方向後方に向かって傾斜した上部後傾部16bが設けられるとともに、中間突出部16aより下部側には、下方が溝形成方向後方に向かって傾斜した下部後傾部16cが設けられている。
【0013】
弾丸暗渠形成時には、中間突出部16aの上下方向位置が、圃場13の地表面側で、通常の水田で耕される部分、通常は地表面から10〜15cmの耕起深を有する作土13bと、作土13bより下方の前記心土13aとの境界13cの付近、通常は、境界13cより僅かに上方に位置させ、上部後傾部16bが作土13bの部分に位置し、下部後傾部16cが心土13aの中に挿入された状態で弾丸暗渠14を形成するように設定されている。
【0014】
このように、作土13bの部分に、上部が後方に傾斜した上部後傾部16bを位置させることにより、作土13bの中や作土13bの上に存在する根や藁などを上方に持ち上げて左右に振り分けることができる。これにより、ブレード16の前端部に根や藁などが引っ掛かってブレード16に纏わり付くことを防止でき、ブレード16を安定した状態で前進させることができる。また、心土13aの部分に、下部が後方に傾斜した下部後傾部16cを位置させることにより、心土13aの中に存在する比較的大きな石が下部後傾部16cに接触しても、ブレード16が下方に引き込まれることがなくなる。
【0015】
上部後傾部16bや下部後傾部16cの後傾角度は、圃場の状態に応じて任意に設定することができるが、通常は、上部後傾部16bの後傾角度は、30〜50度の範囲、好ましくは40度であり、下部後傾部16cの後傾角度は、40〜60度の範囲、好ましくは45度である。
【0016】
したがって、作土13bの部分に根や藁が大量に存在したり、心土13aの中に大量の石が存在したりする圃場においても、弾丸暗渠を安定した状態で効率よく形成することができ、作土13bの上面が荒れて大きな凹凸を形成することもなくなる。また、3枚のブレード16を等間隔で設けているので、3本の弾丸暗渠を同時に形成することができる。
【0017】
さらに、本形態例に示す弾丸暗渠形成装置では、ブレード16を固定した支持部材15aの一側端に、弾丸暗渠の形成位置を指示するための形成位置指示器19が設けられている。この形成位置指示器19は、支持部材15aの一側端に設けられた溝形成方向に対して平行な回動軸19aにより、支持部材15aに対して起伏可能に設けられており、図3及び図4に示すように、形成位置指示器19を側方に倒すことにより、図示しないガイド溝やラインに形成位置指示器19の先端に設けられている指示部材19bを沿わせることよって形成中の弾丸暗渠の位置を指示することができ、あるいは、指示部材19bによって、次に形成する弾丸暗渠の位置を指示するためのガイド溝を、弾丸暗渠形成と同時に圃場上面の所定位置に形成することができる。
【0018】
また、形成位置指示器19を上方に立ち上げることにより、圃場隅部の弾丸暗渠形成時の邪魔になることがなく、弾丸暗渠形成時以外のブルドーザ12の走行に悪影響を与えることもなくなる。
【0019】
図5は、本発明の弾丸暗渠形成装置の他の形態例を示している。なお、以下の説明において、前記形態例に示した弾丸暗渠形成装置の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0020】
この弾丸暗渠形成装置におけるブレード21は、前記形態例に示したブレード16と同様に、ブレード21における溝形成方向先端の上下方向中間部には、溝形成方向前方に突出した中間突出部21aが設けられ、この中間突出部21aより上部側には、上方が溝形成方向後方に向かって傾斜した上部後傾部21bが設けられるとともに、中間突出部21aより下部側には、下方が溝形成方向後方に向かって傾斜した下部後傾部21cが設けられており、弾丸暗渠形成時には、中間突出部21aが、圃場13の作土13bと心土13aとの境界13cの部分に、上部後傾部21bが作土13bの部分に、下部後傾部16cが心土13aの部分に、それぞれ位置するようにして弾丸暗渠14を形成する。
【0021】
なお、本発明において、1台の走行可能な作業機に装着するブレードの数は任意であり、1枚でもよく、作業機の前後いずれにも適宜な取付部材を介して装着することもでき、作業機の性能や構造などに応じて適宜決定することができる。また、ブレード下端に設けられる弾丸の構造も任意であり、ブレードの溝形成方向後部側の形状も任意である。さらに、ブレードを地中に挿入する手段も、作業機の種類やブレードの枚数に応じて適宜選択することができ、ブレードの上部側を軸にして下部側を前後方向に回動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0022】
11…弾丸暗渠形成装置、12…ブルドーザ、13…圃場、13a…心土、13b…作土、13c…境界、14…弾丸暗渠、15…取付フレーム、15a…支持部材、16…ブレード、16a…中間突出部、16b…上部後傾部、16c…下部後傾部、17…弾丸、17a…チェーン、18…シリンダ、19…形成位置指示器、19a…回動軸、19b…指示部材、21…ブレード、21a…中間突出部、21b…上部後傾部、21c…下部後傾部
図1
図2
図3
図4
図5