特許第6792871号(P6792871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人 中央大学の特許一覧

<>
  • 特許6792871-壁面吸着装置及び壁面移動装置 図000002
  • 特許6792871-壁面吸着装置及び壁面移動装置 図000003
  • 特許6792871-壁面吸着装置及び壁面移動装置 図000004
  • 特許6792871-壁面吸着装置及び壁面移動装置 図000005
  • 特許6792871-壁面吸着装置及び壁面移動装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792871
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】壁面吸着装置及び壁面移動装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 57/02 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   B62D57/02 M
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-28305(P2017-28305)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-131165(P2018-131165A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】山口 智大
(72)【発明者】
【氏名】天川 貴文
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−319973(JP,A)
【文献】 特開平10−249296(JP,A)
【文献】 特開昭62−279176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に吸着可能な壁面吸着装置であって、
前記壁面と対向する凹部空間を区画する、隔壁と、
前記凹部空間の空気を連続して吸引することが可能な、吸引部と、
前記凹部空間の周縁部において前記隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置されると共に前記凹部空間の周縁部の外側に向かって延在し、可撓性を有する、スカートと
前記凹部空間の内部圧力又は前記壁面の凹凸部若しくは段差部を検知する、検知手段と、を備え、
前記検知手段の検知結果に応じて、前記壁面に対する吸着力を変化させることが可能とされたことを特徴とする、壁面吸着装置。
【請求項2】
前記凹部空間の周縁部において前記隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置された、ブラシをさらに備える、請求項1に記載の壁面吸着装置。
【請求項3】
前記隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置された、摩擦調整部材をさらに備える、請求項1又は2に記載の壁面吸着装置。
【請求項4】
前記摩擦調整部材は、ゴム部材、スポンジゴム部材及びボール軸受のうちの少なくとも1種類を含む、請求項3に記載の壁面吸着装置。
【請求項5】
前記凹部空間の周縁部において前記隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置された、ブラシと、
前記隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置された、摩擦調整部材とをさらに備え、
前記ブラシ及び/又は前記摩擦調整部材は、前記壁面に対して近接及び離間する方向に移動可能とされた、請求項1〜4のいずれか一項に記載の壁面吸着装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記スカートにおける前記壁面と対向する部分に、全周に亘って連続的又は間欠的に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の壁面吸着装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の壁面吸着装置を備えることを特徴とする、壁面移動装置。
【請求項8】
前記壁面吸着装置に設けられた走行手段をさらに備える、請求項に記載の壁面移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面吸着装置及び壁面移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直壁、傾斜壁、天井又は床などの壁面に吸着可能な、壁面吸着装置が知られている。壁面吸着装置は、壁面と対向する凹部空間を区画する、隔壁と、凹部空間の空気を連続して吸引することが可能な、吸引部とを備えることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−159243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような従来の壁面吸着装置は、壁面が例えば湾曲している等平坦でない場合に、吸着力を得にくい場合があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、平坦でない壁面に対して安定した吸着力を得やすい、壁面吸着装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような壁面吸着装置によって平坦でない壁面上を安定して移動しやすい、壁面移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る壁面吸着装置は、
壁面に吸着可能な壁面吸着装置であって、
前記壁面と対向する凹部空間を区画する、隔壁と、
前記凹部空間の空気を連続して吸引することが可能な、吸引部と、
前記凹部空間の周縁部において前記隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置されると共に前記凹部空間の周縁部の外側に向かって延在し、可撓性を有する、スカートと
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る壁面吸着装置は、前記凹部空間の周縁部において前記隔壁又はスカートに全周に亘って連続的又は間欠的に配置された、ブラシをさらに備えることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る壁面吸着装置は、前記隔壁又はスカートに全周に亘って連続的又は間欠的に配置された、摩擦調整部材をさらに備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る壁面吸着装置では、前記摩擦調整部材は、ゴム部材、スポンジゴム部材及びボール軸受のうちの少なくとも1種類を含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る壁面吸着装置では、
前記凹部空間の周縁部において前記隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置された、ブラシと、
前記隔壁に全周に亘って連続的又は間欠的に配置された、摩擦調整部材とをさらに備え、
前記ブラシ及び/又は前記摩擦調整部材は、前記壁面に対して近接及び離間する方向に移動可能とされていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る壁面吸着装置は、
前記凹部空間の内部圧力又は前記壁面の凹凸部若しくは段差部を検知する、検知手段をさらに備え、
前記検知手段の検知結果に応じて、前記壁面に対する吸着力を変化させることが可能とされていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る壁面吸着装置では、前記検知手段は、前記スカートにおける前記壁面と対向する部分に、全周に亘って連続的又は間欠的に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る壁面移動装置は、本発明に係る壁面吸着装置を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る壁面移動装置は、前記壁面吸着装置に設けられた走行手段をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平坦でない壁面に対して安定した吸着力を得やすい、壁面吸着装置を提供することができる。また、本発明によれば、そのような壁面吸着装置によって平坦でない壁面上を安定して移動しやすい、壁面移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る壁面吸着装置及び壁面移動装置を模式的に示す上面図である。
図2図1に示す壁面吸着装置及び壁面移動装置の底面図である。
図3図1のA−Aに沿う一部断面側面図である。
図4図1に示す壁面吸着装置及び壁面移動装置が凸状に湾曲した壁面に吸着した状態を、図3に準じて示す一部断面側面図である。
図5図1に示す壁面吸着装置及び壁面移動装置が凹状に湾曲した壁面に吸着した状態を、図3に準じて示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る壁面吸着装置及び壁面移動装置について、詳細に例示説明する。なお、本明細書において、「壁面」とは、建造物の壁に限らず任意の物体の面(被吸着面)であってよく、その全体としての傾斜角度も垂直に限定されず、水平も含めた任意の傾斜角度であってよい。すなわち、壁面は、例えば垂直壁、傾斜壁、天井又は床などであってよい。また、本明細書において、壁面吸着装置の「上面」とは、該壁面吸着装置を壁面に吸着させたときに見える面を意味する。
【0018】
図4図5に示すように、本実施形態に係る壁面吸着装置1は、壁面2に吸着可能に構成されている。本実施形態に係る壁面吸着装置1は、図1図3に示すように、壁面2と対向する凹部空間3を区画する、隔壁4と、凹部空間3の空気を連続して吸引することが可能な、吸引部5とを備えている。また、本実施形態に係る壁面移動装置6は、壁面吸着装置1を備え、壁面2上を移動可能に構成されている。本例では、壁面移動装置6は、壁面吸着装置1に設けられた走行手段7をさらに備えている。
【0019】
本例では、隔壁4は、壁面吸着装置1の中心軸線Oを中心とする上面視円形状をなす外形を有する、天壁4aと、天壁4aの外周縁に全周に亘って連続的に設けられると共に壁面2に向けて延びる、周壁4bとを有している。本例では、周壁4bは、天壁4aの外周縁から壁面2に向けて天壁4aと垂直に延びており、その周方向で一定となる高さを有している。天壁4aは、例えば平面視略矩形状でもよく、隔壁4の形状は適宜変更が可能である。また、隔壁4は、例えば合成樹脂部材及び/又は金属部材などで構成することができ、壁面吸着装置1を壁面2に吸着させるのに必要な凹部空間3の負圧状態(負の内部圧力)を維持できる剛性を有していればよい。
【0020】
図1図3に示すように、壁面吸着装置1は、凹部空間3の周縁部において隔壁4に全周に亘って連続的に配置されると共に凹部空間3の周縁部の外側(本例では径方向外側)に向かって延在し、可撓性を有する、スカート8を備えている。なお、スカート8は、凹部空間3の周縁部において隔壁4に全周に亘って連続的に配置することが好ましいが、凹部空間3の周縁部において隔壁4に全周に亘って間欠的に配置してもよい。また、本例では、スカート8は、隔壁4の周壁4bの外周面に配置されているが、例えば、周壁4bの内周面に配置してもよいし、天壁4aの上面に配置してもよい。さらに、スカート8は、隔壁4に直接連結して配置してもよいし、間接的に連結して配置してもよい。例えば、後述するブラシ9及び/又は摩擦調整部材10が周壁4bの外周面に全周に亘って連続的に配置されている場合等には、スカート8は、周壁4bの外周面に直接連結して配置するのではなく、周壁4b(の外周面)に配置されたブラシ9及び/又は摩擦調整部材10の外周面に、すなわち、周壁4b(の外周面)に間接的に連結して配置してもよい。スカート8は、例えばゴム及び/又は軟質の合成樹脂などで構成することができ、図4図5に示すように、例えば壁面2が湾曲している場合に、隔壁4から径方向外側に延在する部分が壁面2にほぼ沿って湾曲等できる可撓性を有していればよい。スカート8によれば、凹部空間3の周縁部において隔壁4と壁面2との間に形成される隙間Gを通じた空気の流れを抑制することができる。したがって、壁面吸着装置1によれば、壁面2が例えば湾曲している場合や凹凸部又は段差部を有している場合などのような、平坦でない壁面2に対して、安定した吸着力を容易に得ることができる。
【0021】
また、本例では、壁面吸着装置1は、図2図3に示すように、凹部空間3の周縁部において隔壁4に全周に亘って連続的に配置された、ブラシ9をさらに備えている。本例では、ブラシ9は、壁面2に向けて延びる多数の毛状体(例えば合成樹脂製又は天然の毛など)で構成することができ、壁面2が例えば微小な凹凸部(図4図5参照)又は段差部(図示省略)を有している場合に、前記凹凸部又は段差部に追従するように変形することで、前述した隔壁4と壁面2との隙間Gを通じた空気の流れを抑制できる柔軟性を有していればよい。また、ブラシ9は、凹部空間3の周縁部において隔壁4に全周に亘って連続的に配置することが好ましいが、凹部空間3の周縁部において隔壁4に全周に亘って間欠的に配置してもよい。さらに、ブラシ9は、本例では、隔壁4に後述する移動手段を介して間接的に連結して配置されているが、そのような移動手段を介さずに隔壁4に直接連結して配置してもよい。本例ではブラシ9は、隔壁4の周壁4bの内周面に配置されているが、例えば、周壁4bの外周面に配置してもよい。また、例えばブラシ9をスカート8に配置することで、ブラシ9を隔壁4にスカート8を介して間接的に連結して配置してもよい。このように、ブラシ9は隔壁4に直接的又は間接的に連結して配置することができる。なお、ブラシ9を設けない構成としてもよい。ブラシ9は、壁面2に段差部、特には隙間や溝による大きな段差部がある場合に、隔壁4と壁面2との間の隙間Gを通じた空気の流れを抑制するのに、特に有効に機能する。
【0022】
ブラシ9は、本例では、図4図5において二点鎖線矢印で示すように、壁面2に対して近接及び離間する方向に移動可能とされている。具体的には、ブラシ9は、図示しない移動手段を介して隔壁4に連結されており、当該移動手段によって、壁面2に対して近接する方向に移動することで壁面2と接触する一方、壁面2に対して離間する方向に移動することで壁面2から離脱することができる。このように、本例では、ブラシ9を必要なときだけ使用できるようになっている。なお、本例では、ブラシ9は、図2に示すように、周方向に複数個(本例では9個)に分割され、個々に壁面2に対して近接及び離間する方向に移動可能とされている。このようにブラシ9を複数個に分割することで、壁面2が例えば湾曲している場合の、壁面2への追従性を向上させている。なお、ブラシ9は、このような分割を必須とするものではなく、環状をなす1個の部材で構成してもよい。
【0023】
また、本例では、壁面吸着装置1は、図2図3に示すように、隔壁4に全周に亘って間欠的に配置された、摩擦調整部材10をさらに備えている。なお、摩擦調整部材10は、隔壁4に全周に亘って連続的に配置してもよい。本例では、摩擦調整部材10は、ボール軸受で構成されている。摩擦調整部材10は、壁面2との摩擦力を調整できれば、このようなボール軸受に限られず、例えば、ゴム部材、スポンジゴム部材及びボール軸受のうちの少なくとも1種類を含むものとすることができる。ゴム部材又はスポンジゴム部材等の壁面2に対して大きい摩擦力を有する摩擦調整部材10を用いることで、壁面吸着装置1を壁面2に対して動き難くすることができ、また、ボール軸受等の壁面2に対して小さい摩擦力を有する摩擦調整部材10を用いることで、壁面吸着装置1を壁面2に対してスムーズに動けるようにすることができる。本例では、摩擦調整部材10としてのボール軸受を隔壁4に全周に亘って配置しているが、例えば、当該ボール軸受の径方向内側に、ゴム部材を隔壁4に全周に亘って配置し、さらに当該ゴム部材の径方向内側に、スポンジゴム部材を隔壁4に全周に亘って配置してもよい。また、ゴム部材、スポンジゴム部材及びボール軸受を周方向に交互に配置してもよい。さらに、摩擦調整部材10は、本例では、隔壁4の天壁4aに後述する移動手段を介して間接的に連結して配置されているが、そのような移動手段を介さずに隔壁4の天壁4aに直接連結して配置してもよい。本例では摩擦調整部材10は、隔壁4の周壁4bの径方向内側に配置されているが、例えば、周壁4bの径方向外側に配置してもよい。例えば摩擦調整部材10をスカート8に配置することで、摩擦調整部材10を隔壁4にスカート8を介して間接的に連結して配置してもよい。このように、摩擦調整部材10は隔壁4に直接的又は間接的に連結して配置することができる。なお、摩擦調整部材10を設けない構成としてもよい。摩擦調整部材10は、特に壁面吸着装置1で壁面移動装置6を構成する場合に、壁面2の材質、形状及び/又は傾斜角度等に応じた摩擦力の適正化を図るのに、特に有効に機能する。
【0024】
摩擦調整部材10は、本例では、図4図5において二点鎖線矢印で示すように、壁面2に対して近接及び離間する方向に移動可能とされている。具体的には、摩擦調整部材10は、図示しない移動手段を介して隔壁4の天壁4aに連結されており、当該移動手段によって、壁面2に対して近接する方向に移動することで壁面2と接触する一方、壁面2に対して離間する方向に移動することで壁面2から離脱することができる。このように、本例では、摩擦調整部材10を必要なときだけ使用できるようになっている。なお、本例では、摩擦調整部材10は、図2に示すように、周方向に複数個(本例では9個)に分割され、個々に壁面2に対して近接及び離間する方向に移動可能とされている。このように摩擦調整部材10を複数個に分割することで、壁面2が例えば湾曲している場合の、壁面2への追従性を向上させている。なお、摩擦調整部材10は、このような分割を必須とするものではなく、環状をなす1個の部材で構成してもよい。
【0025】
なお、スカート8、ブラシ9、摩擦調整部材10は、いずれか少なくとも2つを周方向に交互に配置してもよい。
【0026】
吸引部5は、例えば遠心ファンで構成することができる。吸引部5は、本例では、隔壁4の外側(天壁4aの外側面)に設けられているが、隔壁4の内側(天壁4aの内側面)に設けてもよく、その配置は適宜変更が可能である。本例では、吸引部5は、天壁4aに設けられた排気口4cを通じて、凹部空間3の空気を連続して排出するように構成されている。なお、本例では排気口4cは天壁4aの中央(中心軸線O)を中心とし、円形をなしているが、その形状及び配置は適宜変更が可能である。このように、吸引部5によって凹部空間3内の空気を連続して吸引することにより、凹部空間3の負圧状態を維持し、壁面2への吸着力を維持することができる。
【0027】
本例では、走行手段7は、3方向に配置されたオムニホイール11で構成されており、それにより、壁面2に沿う全方向への移動が可能とされている。これら3つの走行手段7は、それぞれ、図示しないモータによって駆動軸線Xを中心に回転駆動されるようになっている。3つの駆動軸線Xは、図2に示すように、底面から視たときに、周方向に120°ずつ、ずらして配置されている。また、本例では、走行手段7は、図3図5に示すように、走行手段7の接地面が、隔壁4の径方向内側に向かうに従い壁面2から離れるように、傾くに従って壁面2から離れる方向に移動(図4参照)する一方、走行手段7の接地面が、隔壁4の径方向外側に向かうに従い壁面2から離れるように、傾くに従って壁面2に接近する方向に移動(図5参照)するように、リンクを介して隔壁4の天壁4aに連結されている。したがって、図4に示すように壁面2が凸状に湾曲している場合には、当該湾曲に起因する、壁面2と隔壁4の周壁4bとの隙間Gの増大を抑制でき、また、図5に示すように壁面2が凹状に湾曲している場合には、当該湾曲に起因する、壁面2への隔壁4の周壁4bの引っ掛かりの発生を抑制できる。なお、走行手段7は、このようなリンクを介して隔壁4に連結した構成に限定されない。
【0028】
走行手段7としては、オムニホイール11に代えて、例えばメカナムホイールなどを用いてもよい。また、好ましくは全方向移動が可能な範囲で、走行手段7の数や配置を適宜変更してもよい。さらに、走行手段7は、全方向移動を可能とするものに限られず、例えば、4輪自動車のように、操舵可能な車輪を含むものであってもよいし、クローラなどであってもよい。また、走行手段7は、走行面(壁面2)の凹凸部又は段差部に追従するよう、例えばスポンジなどの弾性体で構成してもよい。また、走行手段7は、隔壁4の内側に設けられていてもよいし、隔壁4の外側に設けられていてもよい。また、走行手段7は、隔壁4の周壁4bにできるだけ近づけて配置することが望ましい。このような配置により、隔壁4の周壁4bを、壁面2の凹凸部や段差部に引っ掛かりにくくすることができる。なお、走行手段7は、壁面吸着装置1に連結され、例えば、壁面吸着装置1を牽引可能なものであってもよい。
【0029】
また、壁面移動装置6は、走行手段7を有していなくてもよい。例えば、壁面移動装置6は、複数の壁面吸着装置1を備え、当該複数の壁面吸着装置1は、列(例えば一文字状の列又は十文字状の列など)をなすように又は環状に連結されており、各壁面吸着装置1の壁面2に対する吸着力又は摩擦力と、壁面吸着装置1同士の間の間隔とを変化させることによって、移動することが可能に構成されていてもよい。この場合、例えば、壁面吸着装置1同士を伸縮動作可能な伸縮手段によって連結し、当該伸縮手段によって壁面吸着装置1同士の間の間隔を変化させる構成とすることができる。また、各壁面吸着装置1の壁面2に対する吸着力は、例えば吸引部5の吸引力(例えば遠心ファンの出力)を調整することで変化させることができる。また、各壁面吸着装置1の壁面2に対する摩擦力は、例えば、前述したように摩擦調整部材10を移動手段によって壁面2に対して近接及び離間する方向に移動させることにより、変化させることができる。
【0030】
このように複数の壁面吸着装置1で構成した壁面移動装置(図示省略)は、例えば、以下の要領で移動させることができる。まず、或る壁面吸着装置1について、吸着力又は摩擦力を低減させると共に後方側の伸縮手段を伸長させることにより前進させた後に、吸着力又は摩擦力を増加させることにより停止させると共に後方側の伸縮手段を収縮させるという周期で作動させるものとし、例えばすべての伸縮手段が収縮した状態から、進行方向最前方の壁面吸着装置1から進行方向最後方の壁面吸着装置1にかけて(複数の壁面吸着装置1を環状に連結している場合には右回りと左回りの両方に)、位相を適宜(例えば1/2周期)遅らせながら作動させることで、壁面移動装置を前進させることができる。なお、複数の壁面吸着装置1で構成した壁面移動装置は、隣接するスカート8が互いに連結した構成(複数の壁面吸着装置1を環状に連結している場合にはスカート8を環状に連結した構成)としてもよい。
【0031】
また、壁面吸着装置1は、凹部空間3の内部圧力又は壁面2の凹凸部若しくは段差部を検知する、検知手段(図示省略)をさらに備え、当該検知手段の検知結果に応じて、壁面2に対する吸着力を変化させることが可能とされていてもよい。このような検知手段は、隔壁4における凹部空間3に面した部分、又はスカート8に配置(例えば、スカート8における壁面2と対向する部分、すなわちスカート8の下部に、全周に亘って連続的又は間欠的に配置)することが好ましいが、その他の部分に配置してもよい。前記検知手段は、接触式、非接触式のいずれでもよく、圧力センサ(大気圧センサなど)、変位センサ(触針式、レーザー式など)、画像センサ(カメラ)など、任意の形式のものを用いることができる。なお、凹部空間3の内部圧力を検知する場合には、例えば、隔壁4における凹部空間3に面した部分に圧力センサを配置してもよいし、凹部空間3に連通する別室を設け、当該別室に圧力センサを配置してもよいし、スカート8の下部に圧力センサを配置してもよい。
【0032】
単一の壁面吸着装置1で構成される壁面移動装置6は、例えば、当該壁面吸着装置1の凹部空間3の内部圧力を前記検知手段で検知し、当該内部圧力が低下しすぎたときに、当該壁面吸着装置1の壁面2に対する吸着力を増加させるように構成することができる。また、前述したように複数の壁面吸着装置1で壁面移動装置を構成した場合には、壁面移動装置は、当該複数の壁面吸着装置1のうちの少なくとも1つが、前記検知手段をさらに備え、当該検知手段の検知結果に応じて、壁面2に対する当該複数の壁面吸着装置1のうちのいずれか少なくとも1つの吸着力を変化させることが可能とされていてもよい。例えば、或る壁面吸着装置1の凹部空間3の内部圧力を前記検知手段で検知し、当該内部圧力が低下しすぎたときに、当該壁面吸着装置1又は他の壁面吸着装置1の壁面2に対する吸着力を増加させるように構成することができる。前記検知手段は、複数の壁面吸着装置1の全部に設けてもよいし、一部のみに設けてもよい。
【0033】
このような凹部空間3の内部圧力に代えて、壁面2の凹凸部若しくは段差部を検知する場合には、壁面2の凹凸部若しくは段差部が大きいほど凹部空間3の内部圧力が低下しやすいと考えられるので、壁面2の凹凸部若しくは段差部が大きいほど、壁面吸着装置1の吸着力を増加させるように構成することができる。また、この場合、前記検知手段は、壁面吸着装置1の移動方向のできるだけ前方に設けることが好ましく、このような配置により、前記検知手段の後方に位置する凹部空間3の内部圧力の低下を予め予測し、早期のタイミングで当該凹部空間3の内部圧力を増加させることが可能となる。例えば、単一の壁面吸着装置1で構成される壁面移動装置6の場合では、スカート8(好ましくはスカート8の外周縁部)に前記検知手段を配置(好ましくはスカート8の下部に全周に亘って連続的又は間欠的に配置)することが好ましい。また、複数の壁面吸着装置1を列をなすように連結して構成した壁面移動装置の場合では、壁面移動装置の移動方向前端(例えば、最前部の壁面吸着装置1のスカート8における前方部分)に前記検知手段を配置(好ましくはスカート8の下部に配置)することが好ましい。また、複数の壁面吸着装置1を環状をなすように連結して構成した壁面移動装置の場合では、壁面移動装置の外周縁部(例えば、各壁面吸着装置1のスカート8における、壁面移動装置の外周縁部に位置する部分、又は、前述したようにスカート8を環状に連結した場合におけるその連結したスカートの外周縁部分及び/又は内周縁部分)に前記検知手段を配置(好ましくはスカート8の下部に配置)することが好ましい。
【0034】
単一の壁面吸着装置1で構成した壁面移動装置6、又は複数の壁面吸着装置1で構成した壁面移動装置によれば、例えば、ビルの窓部分を含む壁面、ダムの堤体の壁面、航空機の機体外面など、様々な材質、構造、曲率及び/又は傾斜の、平坦でない壁面2上を、安定して容易に移動することができる。また、検査用センサ・ツール及び/又は清掃用ツールなどを適宜搭載することで、様々な壁面の検査(画像等のデータの取得、診断、要修理箇所へのマーキングなど)及び/又は清掃などを容易に実現することができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前述したところは本発明の実施形態の一例を示したにすぎず、発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変更を加えてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 壁面吸着装置
2 壁面
3 凹部空間
4 隔壁
4a 天壁
4b 周壁
4c 排気口
5 吸引部
6 壁面移動装置
7 走行手段
8 スカート
9 ブラシ
10 摩擦調整部材
11 オムニホイール
G 隙間
O 中心軸線
X 駆動軸線
図1
図2
図3
図4
図5