(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照してワイヤボンディング装置10の構成について説明する。
図1は、ワイヤボンディング装置10の構成を示す図である。このワイヤボンディング装置10は、第一ボンディング点P1と第二ボンディング点P2との間をワイヤ50で接続する装置であり、一般に、第一ボンディング点P1は、半導体チップ110のパッド112上に設定されており、第二ボンディング点P2は、半導体チップ110をマウントしたリードフレーム120のリード122上に設定されている。
【0025】
ワイヤボンディング装置10は、ボンディングヘッド16と、半導体チップ110をマウントしたリードフレーム120(以下、両者をまとめる場合は「被実装体」という)が載置されるステージ20と、を備えている。ボンディングヘッド16は、さらに、超音波ホーンとして機能するボンディングアーム14と、当該ボンディングアーム14の先端に取り付けられたキャピラリ12と、を備えている。ボンディングアーム14は、ボンディングヘッド16から水平方向に突出するアームで、その内部には超音波振動子が組み込まれている。ワイヤボンディング装置10に設けられた超音波発振器(図示せず)を用いて、この超音波振動子に電圧を印加することで、ボンディングアーム14の先端に位置するキャピラリ12に超音波振動を付与できる。
【0026】
キャピラリ12は、ステージ20と上下に対向するように、ボンディングアーム14の先端に取り付けられている。キャピラリ12には、軸方向に貫通する貫通孔(以下「ホール40」と呼ぶ、
図1では図示せず)が形成されており、このホール40に金線などのワイヤ50が挿通される。キャピラリ12は、使用するワイヤ50の種類や、要求される圧着ボール60の形状等に応じて、適宜、交換される。
【0027】
キャピラリ12の近傍には、放電電極22が配置されている。放電電極22は、ワイヤ50の先端に、当該ワイヤ50が溶融して成るフリーエアーボール(以下「FAB52」という)を形成するために設けられている。この放電電極22とワイヤの先端との間に高電圧を印加して、放電を生じさせると、その放電エネルギによりワイヤ50の先端部が溶融する。そして、この溶融によりワイヤ50の先端に、FAB52が形成される。
【0028】
キャピラリ12の上方には、クランパ21が配されている。クランパ21は、ワイヤ50の両側に配された一対の把持部材を有しており、この把持部材を接近/離間させることで、ワイヤ50を挟んだり、開放したりする。
【0029】
ボンディングアーム14は、図示しない昇降機構を介してボンディングヘッド16に取り付けられている。また、ボンディングヘッド16は、XYテーブル18に設置されており、水平方向の移動が可能となっている。そして、ボンディングヘッド16の水平移動およびボンディングアーム14の垂直移動に伴い、キャピラリ12が、被実装体に対して水平方向および垂直方向に相対移動できる。つまり、昇降機構およびXYテーブル18は、キャピラリ12を、被実装体に対して相対移動させる移動機構として機能する。なお、本例では、キャピラリ12を移動させているが、キャピラリ12ではなく、ステージ20を移動させる構成としてもよい。
【0030】
ステージ20は、半導体チップ110がマウントされたリードフレーム120である被実装体が載置される。このステージ20には、リードフレーム120を加熱するヒータ(図示せず)が内蔵されている。ワイヤボンディングの実行時には、このヒータにより、リードフレーム120が、加熱される。
【0031】
制御部24は、ワイヤボンディング装置10の各部の駆動を制御する。制御部24は、例えば、各種データを記憶するメモリと、各種演算を行なうCPUと、を備えている。制御部24のメモリに記憶されるデータとしては、ボンディング処理を実行するための制御プログラムや、後述するキャピラリ12の移動シーケンスを生成するために必要なデータ等が含まれる。
【0032】
制御部24は、具体的には、XYテーブル18および昇降機構を駆動制御することでキャピラリ12の被実装体に対する位置を制御する。また、制御部24は、ボンディング処理の進行状況に応じて、クランパ21の開閉制御、放電電圧の印加制御、ステージ20のヒータの駆動制御も行なう。また、制御部24は、キャピラリ12の移動シーケンス(XYテーブル18および昇降機構の駆動シーケンス)を生成する生成部としても機能する。移動シーケンスを生成するために、制御部24のメモリには、キャピラリ12の形状に関する情報、後述する圧着ボール60の目標形状に関する情報等が記憶されているが、これについては、後述する。
【0033】
図2は、キャピラリ12の先端部の一例を示す図である。キャピラリ12には、その軸方向に貫通する貫通孔であるホール40が形成されている。このホール40内にはワイヤ50が挿通される。したがって、ホール40の直径(ホール径H)は、ワイヤ50の直径(ワイヤ径φ)よりも大きい(H>φ)。ホール40の下端は、円錐状に広がっている。この円錐状に広がるテーパー面は、チャンファー面42と呼ばれる。また、この円錐状の空間のうち最大直径(すなわち最下端の直径)は、チャンファー径CDと呼ばれる。
【0034】
キャピラリ12の下端面は、FAB52を押圧するフェース面44となる。このフェース面44は、フラットな水平面でもよいし、外側に近づくにつれ上方にすすむような傾斜面でもよい。フェース面44の幅、すなわち、ホール40下端の内周縁からキャピラリ12下端の外周縁までの距離を、以下では、「フェース幅W」と呼ぶ。フェース幅Wは、キャピラリ12の外径をTとした場合、W=(T−CD)/2である。
【0035】
図3は、ワイヤボンディング装置10により形成されるワイヤループのイメージ図である。半導体チップ110には、複数のパッド112が配設されており、リードフレーム120には、複数のリード122が配設されている。ワイヤボンディング装置10は、このパッド112上に位置する第一ボンディング点P1と、リード122上に位置する第二ボンディング点P2と、をワイヤ50で接続する。
【0036】
第一ボンディング点P1には、ワイヤ50の一端をパッド112に押し付けて形成される第一ボンド部54が形成されており、この第一ボンド部54から引き出されたワイヤ50が、第二ボンディング点P2まで延びる。第二ボンディング点P2には、ワイヤ50の他端をリード122に押し付けて形成される第二ボンド部58が形成されている。ここで、第二ボンド部58は、通常、ワイヤ50をリード122に押し当てて潰したステッチボンドである。
【0037】
半導体装置を薄型化するためには、このワイヤループの高さ、特に、パッド112の上面からワイヤループの最上点さまでの垂直方向距離、すなわち、ループ高さHLを低減することが必要となる。本明細書では、このループ高さHLを低減するために、第一ボンド部54を特殊な工程で形成している。これについて、従来技術と比較して説明する。なお、以下の説明では、第一ボンディング点P1からみて、第二ボンディング点P2に近づく方向を「フォワード方向」と呼び、第二ボンディング点P2から離れる方向を「リバース方向」と呼ぶ。
【0038】
はじめに、従来の第一ボンド部54の形成について簡単に説明する。
図9は、従来の第一ボンド部54形成の流れを示すイメージ図である。第一ボンド部54を形成する場合は、まず、半導体チップ110のパッド112上に位置する第一ボンディング点P1に、圧着ボール60を形成する。具体的には、まず、
図9(a)に示すように、ワイヤ50の先端にFAB52を形成する。続いて、
図9(b)に示すように、キャピラリ12を第一ボンディング点P1に向かって下降させ、キャピラリ12のフェース面44でFAB52を第一ボンディング点P1に押圧する。なお、この押圧の際には、ボンディングアーム14を介してキャピラリ12に振動を付与してもよい。この押圧に伴い、FAB52は、扁平に変形し、パッド112上に扁平円板状の圧着ボール60が形成される。また、FAB52を構成する材料の一部は、キャピラリ12のホール40内に充填される。このホール40内に充填された材料は、圧着ボール60よりも小径かつワイヤ50よりも大径の円柱部62を構成する。そして、この押圧により、第一ボンディング点P1には、扁平円板状の圧着ボール60の上に円柱部62が載った第一ボンド部54が形成される。
【0039】
第一ボンド部54が形成されれば、制御部24は、キャピラリ12を、移動させて、ワイヤ50を、第二ボンディング点P2に向けてルーピングさせる。具体的には、制御部24は、
図9(b)の矢印で示すように、キャピラリ12を、上方、リバース方向、上方に移動させ、ワイヤ50に曲げ癖をつけた上で、キャピラリ12を第二ボンディング点P2へと移動させる。そして、第二ボンディング点P2において、キャピラリ12をリード122に押し付けることで、ワイヤ50が押しつぶされた第二ボンド部58(ステッチボンド)が形成される。第二ボンド部58が形成されれば、制御部24は、キャピラリ12を上方に移動させた後、クランパ21を閉鎖した状態で、キャピラリ12を更に上方向に移動させ、ワイヤ50を引きちぎる。
【0040】
以上の手順で形成された第一ボンド部54周辺は、
図9(c)のように、ワイヤ50が、第一ボンド部54の上端から上方に延びた後、緩やかな円弧を描いて、斜め下方向に延びる形状となる。この場合、ループ高さHLは、圧着ボール60の厚みと、円柱部62の厚みと、円柱部62から略U字状に引き出されるワイヤ50の高さと、の合計となる。このループ高さHLは、比較的高く、ワイヤ径φの2倍〜4倍であった。かかる大きなループ高さHLは、半導体装置の薄型化、ひいては、半導体装置の小型化、薄型化、高集積化を阻害していた。
【0041】
そこで、従来から、ループ高さHLをより低減でき得る低ループ化技術が検討されている。例えば、
図10に示すように、第一ボンディング点P1において、圧着ボール60を形成した後、当該圧着ボール60の上でワイヤ50を折り返した後、この折り返したワイヤをキャピラリ12で押圧する技術が従来、提案されている。具体的には、制御部24は、圧着ボール60および円柱部62が形成されれば、キャピラリ12を、
図10(a)の矢印で示すように、上方、リバース方向、下方、上方へと移動させた後、再び、フォワード方向に移動させ、その地点で一度、再度、下方へと移動させる。これにより、圧着ボール60の上でワイヤ50が折り返される。そして、以降は、通常のルーピング動作と同様に、キャピラリ12を、上方、リバース方向、上方へと移動させて、曲げ癖をつけた後、第二ボンディング点P2へと移動させる。
【0042】
かかる技術によれば、ワイヤ50が、第一ボンド部54から垂直に立ち上がらず、略水平方向に延びるため、
図9で示した技術に比べて、ループ高さHLを低減できる。しかし、この技術では、円柱部62を、横に倒し、この横に倒れた円柱部62の上にワイヤ50が載っている。この円柱部62およびワイヤ50は、キャピラリ12により押圧されるものの、単純に押圧しただけでは、その高さを十分に低減することは難しい。特に、円柱部62は、圧着ボール60の形成による加工硬化により、他の部分に比べて硬くなっている。かかる円柱部62は、キャピラリ12で押圧するだけは、厚みを十分に低減することは難しい。その結果、
図10の技術によるループ高さHLは、圧着ボール60の厚みBtとワイヤ径φとの合計程度になることが多く、例えば、ワイヤ径が18μm、圧着ボール60の厚みBtが7μの場合、
図10の技術によるループ高さHLは、25μm程度となっていた。
【0043】
本明細書で開示するワイヤボンディング装置10では、ループ高さHLをより低減する。具体的には、本装置では、圧着ボール60および円柱部62を形成後、キャピラリ12を上方に移動させることなく、そのまま水平移動させることで、円柱部62をキャピラリ12で削り、これにより低ループ化を図る。これについて、
図4〜
図6を参照して説明する。
図4は、第一ボンド部54形成時のキャピラリ12の移動軌跡を示す図である。また、
図5、
図6は、第一ボンド部54を形成する際のキャピラリ12およびワイヤ50の動きを示す図である。なお、
図5、
図6の各図に付されたアルファベットa〜lは、
図4に示す軌跡a〜mに対応している。
【0044】
第一ボンド部54を形成する場合、制御部24は、まず、クランパ21を開放しておき、その状態で、XYテーブル18および昇降機構を駆動制御して、キャピラリ12を、第一ボンディング点P1の真上に移動させる。続いて、制御部24は、放電電極22とワイヤ50の先端との間に高電圧を印加して、放電を生じさせ、ワイヤ50の先端にFAB52を形成する。
【0045】
FAB52が形成されれば、制御部24は、キャピラリ12を第一ボンディング点P1に向かって下降させる。このとき、パッド112の上面からキャピラリ12の下端までの距離(以下「圧着高さH1」という)は、圧着ボール60の厚みBtの目標値に基づいて決められる。
【0046】
図4における軌跡aは、このキャピラリ12を圧着高さH1まで下降する際の軌跡を示している。また、
図5の上段左端は、この軌跡aにおけるキャピラリ12およびワイヤ50の様子を示している。また、この下降時、キャピラリ12には、ボンディングアーム14を介して超音波振動が付与されてもよい。
【0047】
キャピラリ12の下降に伴い、FAB52が、キャピラリ12のフェース面44で押圧され、扁平化する。また、FAB52を構成する材料の一部は、キャピラリ12のホール40内に充填される。結果として、第一ボンディング点P1には、
図5の上段左端に示す通り、扁平円板状の圧着ボール60と、当該圧着ボール60の上に載った円柱部62と、が形成される。この圧着ボール60および円柱部62を形成する工程・処理が、第一工程・第一処理である。
【0048】
圧着ボール60が形成されれば、続いて、制御部24は、キャピラリ12を、圧着高さH1において水平移動させて、円柱部62をキャピラリ12で削り取らせる。具体的には、制御部24は、
図4の軌跡bで示すように、キャピラリ12を上昇させることなく、換言すれば、キャピラリ12のホール40内に円柱部62が存在する状態のまま、キャピラリ12をリバース方向に水平移動させる。
図5の上段中央は、このときの様子を示す図である。この場合、当然ながら、ホール40の内周面と円柱部62とが干渉することになる。キャピラリ12が円柱部62に干渉しながら水平移動することで、円柱部62がキャピラリ12により削られる。削られた円柱部62の材料は、
図5の上段中央において、濃墨ハッチングで示すように、一部は、横方向に逃げていき、一部は、ホール40の内部に逃げていく。いずれにしても、キャピラリ12が、圧着ボール60形成後に上昇することなく水平移動することで、円柱部62が削り取られる。この円柱部62を削り取る工程・処理が、第二工程・第二処理に該当する。
【0049】
ここで、このキャピラリ12の水平移動の距離(軌跡bの移動距離)は、特に限定されない。ただし、この第二工程(軌跡b)は、円柱部62を削ることを目的とするため、当該第二工程では、キャピラリ12を、円柱部62の直径以上、水平移動させることが望ましい。また、キャピラリ12の水平移動の方向は、円柱部62を削り取れるのであれば、リバース方向でもよいし、フォワード方向でもよい。また、キャピラリ12は、円柱部62を削り取れるのであれば、リバース方向およびフォワード方向に1回以上進退してもよい。また、この削り取り動作を円滑に行なうため、軌跡bの移動中も、キャピラリ12に超音波振動を付与してもよい。
【0050】
第二工程が終われば、続いて、制御部24は、圧着高さH1より高い移動高さH2においてキャピラリ12をフォワード方向に移動させるとともに、当該移動の途中でキャピラリ12を昇降させる踏み付け動作を1回以上繰り返させる第三工程(第三処理)を実行する。軌跡c〜軌跡kは、この第三工程におけるキャピラリ12の移動軌跡を示している。また、
図5の上段右端から
図6の下段中央は、この第三工程の様子を示している。
【0051】
具体的に説明すると、円柱部62が削り取れれば、制御部24は、キャピラリ12を上方に移動(軌跡c)させた後、フォワード側に所定距離、移動(軌跡d)させる。これにより、
図5の上段右端、および、下段左端に示すように、ワイヤ50が、フォワード側に折り返され、圧着ボール60の上に載る。この状態になれば、制御部24は、キャピラリ12を、下方に移動(軌跡e)させ、
図5の下段中央に示す通り、圧着ボール60の上のワイヤ50をキャピラリ12のフェース面44で踏みつける。これにより、踏み潰されたワイヤ50の材料の一部は、キャピラリ12の外側に逃げ、他の一部は、キャピラリ12のホール40の内部に逃げる。その一方で、フェース面44の真下における第一ボンド部54の厚みは、大幅に低減される。
【0052】
ここで、この折り返されたワイヤ部分には、円柱部62を構成していた材料(濃墨ハッチング箇所)が含まれる。円柱部62は、既述したとおり、他の箇所に比べて、硬くなっている。そのため、もともとの円柱部62は、キャピラリ12で踏みつけただけでは、変形しにくく、厚みも低減されにくい。しかし、この時点で、円柱部62は、キャピラリ12により削られ、破壊されている。そのため、キャピラリ12で踏みつけることで、容易に変形し、厚みも低減される。
【0053】
なお、ワイヤ50をフェース面44で踏みつける際、キャピラリ12に超音波振動を付与してもよい。いずれにしても、このように、キャピラリ12を、一時的に下降させる動作(軌跡e,h,kの動作)を、以下では、「踏み付け動作」と呼ぶ。
【0054】
制御部24は、この踏み付け動作を、ワイヤ50が圧着ボール60のフォワード側端部に到達するまで、水平位置を変えながら複数回繰り返す。本例では、制御部24は、踏み付け動作を、3回行っている。
図4の軌跡e、
図5の下段中央は、1回目の踏み付け動作を示している。また、
図4の軌跡h、
図5の下段左は、2回目の踏み付け動作を示し、
図4の軌跡k、
図6の下段中央は、3回目の踏み付け動作を示している。
図5、
図6から明らかなとおり、ワイヤ50が圧着ボール60のフォワード側端部に到達するまで、踏み付け動作を繰り返すことで、第一ボンド部54の厚みを薄く保ったまま、ワイヤ50を、圧着ボール60のフォワード側端部から引き出すことができる。
【0055】
ここで、この踏み付け動作を行なう回数、および、水平間隔(軌跡d,g,jの距離)は、ホール40よりリバース側にあるフェース面44で、圧着ボール60の上に載るワイヤ50全体を満遍なく踏みつけられるように設定されることが望ましい。
【0056】
また、移動高さH2は、ワイヤ50の折り返しが可能な範囲で設定される。すなわち、ワイヤ径φに比べて移動高さH2が過度に小さいと、ワイヤ50が倒れにくく、ワイヤ50を折り返せない。一方で、移動高さH2が必要以上に大きいと、その分、余計な時間がかかる。そこで、使用するワイヤ50の径や材質に応じた移動高さH2の適した値を、予め実験などにより求めておき、制御部24に記憶しておくことが望ましい。
【0057】
踏み付け時におけるキャピラリ12の高さ、すなわち、踏み付け高さH3は、圧着高さH1とほぼ同じであることが望ましい。ただし、実際には、キャピラリ12に踏みつけられるワイヤ50からの抵抗力などにより、H3=H1とすることは難しく、実際には、H3<H1となる。踏み付け高さH3と圧着高さH1との差分ΔHは、第一ボンド部54の厚みに大きく影響する。そのため、使用するワイヤ50の径や材料ごとに差分ΔHの適した値も、予め実験などにより求めておき、制御部24に記憶しておくことが望ましい。
【0058】
第三工程が完了すれば、制御部24は、ワイヤ50を第二ボンディング点P2へと引き出すルーピング動作を実行する。具体的には、制御部24は、最後の踏み付け動作が完了すれば、踏み付け高さH3において、キャピラリ12をフォワード方向に移動(
図4の軌跡l)させた後、上方に移動(
図4の軌跡m)させて、ワイヤ50に曲げ癖をつける。その後、制御部24は、キャピラリ12を、第二ボンディング点P2に向かって斜め下方向に移動させる。
【0059】
キャピラリ12が第二ボンディング点P2に到達すれば、制御部24は、キャピラリ12を、第二ボンディング点P2に向かって下降させ、ワイヤ50をリード122に押し付ける。このとき、必要であれば、キャピラリ12に超音波振動を付与する。この押し付けにより、第二ボンディング点P2(リード122)には、第二ボンド部58となるステッチボンドが形成される。この状態になれば、制御部24は、キャピラリ12を、僅かに上昇させた後、クランパ21を閉鎖する。そして、クランパ21を閉鎖した状態で、キャピラリ12を横移動させることで、ワイヤ50を引きちぎる。
【0060】
以上の説明で明らかなとおり、本明細書で開示するワイヤボンディング装置10では、圧着ボール60および円柱部62を形成後、キャピラリ12を圧着高さH1で水平移動させることで、圧着ボール60の上に位置する円柱部62を削り取っている。さらに、円柱部62を削り取った後、圧着ボール60の上に折り重なるワイヤ50を、キャピラリ12で踏みつけている。これにより、第一ボンド部54の厚みを大幅に低減でき、ひいては、ワイヤループのループ高さHLを大幅に低減できる。
【0061】
図7は、本明細書で開示するワイヤボンディング装置10によるワイヤボンディングの実験結果を示す表である。実験では、φ=18μmの金線ワイヤを用いて、ワイヤループを30回形成し、各ワイヤループの、圧着ボール60の厚みBt、ループ高さHL、および、プル強度を計測した。
【0062】
図7に示すように、本明細書に開示の技術によれば、圧着ボール60の厚みBtは、6.6μm〜7.2μm(平均6.9μm)であり、ループ高さHLは、19.8μm〜21.5μm(平均20.5μm)となっている。一方、
図10に示した従来技術におけるループ高さHLは、既述したとおり、圧着ボール60の厚みとワイヤ径との合計値程度であり、φ=18μmの場合、25μm前後である。つまり、本明細書に開示の技術によれば、
図10に示した従来技術に比べて、ループ高さHLを約20%も低減できている。また、ワイヤループのプル強度は、
図7に示す通り、2.0gf〜2.4gfであり、低ループでありながら、十分な強度を有していることが分かる。
【0063】
図8は、本明細書に開示の技術で形成された第一ボンド部54の一例を示す画像である。
図8に示すように、本例の第一ボンド部54では、扁平円板状の圧着ボール60の上に、所定間隔で圧着ボール60に向かって押し潰されたワイヤ50の一部が載っている。また、ワイヤ50は、圧着ボール60のフォワード側端部からほぼ水平に引き出されており、ループ高さHLは、ワイヤ径φの1.1〜1.2倍程度に抑えられていることが分かる。
【0064】
次に、制御部24によるキャピラリ12の移動シーケンスの自動生成の流れについて説明する。既述したとおり、制御部24は、キャピラリ12の移動シーケンスを自動生成する。この移動シーケンスの自動生成のため、オペレータは、予め、少なくとも、キャピラリ12のサイズ情報、ワイヤ情報、圧着ボール60のサイズ情報を入力する。ここで、キャピラリ12のサイズ情報としては、キャピラリ12先端部の各部の寸法値、すなわち、ホール径H、チャンファー径CD、外径T、フェース幅W等が含まれる。また、こうした各部の寸法値に替えて、オペレータは、キャピラリ12の識別情報(例えば型番)のみを入力するようにしてもよい。この場合、制御部24は、予め、複数種類のキャピラリ12の寸法値を識別情報と対応付けて記憶しておき、オペレータから入力された識別情報に基づいて、実際に使用するキャピラリ12の寸法値を特定する。
【0065】
ワイヤ情報としては、使用するワイヤの径および材質などが含まれる。また、圧着ボール60のサイズ情報としては、形成したい圧着ボール60の直径Dおよび厚みBtの目標値が含まれる。なお、圧着ボール60の直径Dおよび厚みBtの目標値は、制御部24が、他の情報に基づいて、自動的に算出するようにしてもよい。例えば、制御部24は、使用するキャピラリ12の形状およびワイヤの径ごとに、形成可能な圧着ボール60の直径Dおよび厚みBtを記憶しておき、オペレータから入力されたキャピラリ12のサイズ情報およびワイヤ情報から、圧着ボール60の直径Dおよび厚みBtを自動的に特定してもよい。
【0066】
また、制御部24は、シーケンスの生成に先立って、第一ボンディング点P1および第二ボンディング点P2の位置情報、すなわち、半導体チップ110のパッド112およびリードフレーム120のリードの位置情報も取得する。こうした位置情報は、オペレータが入力してもよいし、制御部24において、自動的に取得してもよい。すなわち、例えば、ボンディングアーム14の近傍に、当該ボンディングアーム14とともに移動するカメラを設けておき、制御部24は、当該カメラで撮像して得られた画像に基づいて、第一ボンディング点P1および第二ボンディング点P2の位置を算出してもよい。
【0067】
これらの情報が取得できれば、制御部24は、各移動軌跡ごとのキャピラリ12の移動位置を算出する。ここでは、特に、第一ボンド部54形成のための軌跡b〜kにおける移動位置の算出について説明する。制御部24は、キャピラリ12の移動位置を算出するために、高さH1〜H3、および、水平移動量Lb,L1〜L3などを算出する。
【0068】
具体的には、制御部24は、第一工程(圧着ボール60および円柱部62の形成時)における、パッド112上面からキャピラリ12の下端までの距離である圧着高さH1を、圧着ボール60の厚みBtから算出する。また、制御部24は、第三工程において、キャピラリ12を水平移動させる際の高さである移動高さH2を、ワイヤ50の種類(径、材質など)に基づいて決定する。さらに、制御部24は、第三工程において、ワイヤ50をキャピラリ12で踏みつける際の高さである踏み付け高さH3を、圧着高さH1およびワイヤ50の種類(径、材質)に基づいて決定する。すなわち、踏み付け高さH3は、圧着高さH1に、ワイヤ50の種類などによって決まる余裕分ΔHを付加した値となる。
【0069】
さらに、制御部24は、円柱部62の最大直径(すなわちチャンファー径CD)に基づいて、第二工程における水平移動距離Lbを決定する。また、制御部24は、第三工程における踏み付け動作の回数N、および、踏み付け動作の水平間隔L1〜LNを、キャピラリ12の形状および圧着ボール60の形状に基づいて算出する。これらの値N,L1〜LNは、圧着ボール60の上に載るワイヤ50が、キャピラリ12のフェース面44で、満遍なく踏み付け出来るように設定される。
【0070】
各軌跡の高さH1〜H3、水平移動量Lb,L1〜LNが算出できれば、制御部24は、これらの値と、第一ボンディング点P1、第二ボンディング点P2の位置情報などを組み合わせて、キャピラリ12の移動シーケンスを生成する。
【0071】
以上の説明から明らかなとおり、本明細書で開示するワイヤボンディング装置10によれば、ループ高さHLを低減したワイヤループを形成できる。また、本明細書で開示するワイヤボンディング装置10によれば、こうした低ループを実現できるキャピラリ12の移動シーケンスが、キャピラリ12の形状情報、ワイヤ情報、圧着ボール60の形状情報に基づいて自動的に生成できる。これにより、オペレータの手間を軽減できる。
【0072】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、少なくとも、圧着ボール60および円柱部62を形成する第一処理(第一工程)と、円柱部62を削るためにキャピラリ12を水平移動させる第二処理(第二工程)と、キャピラリ12をフォワード方向に移動させる途中で1回以上、踏み付け動作を行なう第三処理(第三工程)と、を実行させる制御部24を有するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。