(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合対は、前記シフト支持部に支持された係合ピンと、前記可動掴線部又は前記作動部に軸支されたフックとの対により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の掴線器。
前記係合対は、前記シフト支持部に軸支されたフックと、前記可動掴線部又は前記作動部に固定された係合ピンとの対により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の掴線器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図11に示した掴線器100のロック構造において、ネジ軸107は、作動部104の揺動方向へ螺進退する構成となっている。したがって、固定掴線部102及び可動掴線部103の間への線状体150の出し入れに伴う作動部104の振れ幅に応じて、ネジ軸107を大きく螺進退させる必要がある。
【0007】
また、安定したロック状態を形成できる十分な力を得るためには、ロック位置は、作動部104の支点から離れているほど効果的である。しかし、支点からの距離が大きいほど、作動部104の振れ幅も大きくなるので、それに合わせてネジ軸107の移動量も大きくする必要があり、作業効率は著しく低下する。
【0008】
そこで、本発明は、掴持対象の線状体の径の大きさに関わらず、作業効率を低下させることなく、ロック及びその解除操作を行うことができる掴線器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の掴線器は、線状体を挟むように掴持する掴線器であって、前記線状体の一側面に充てがわれる固定掴線部が一体に設けられた本体と、前記本体に回動操作可能に軸支された作動部と、前記作動部に取り付けられており、前記作動部の回動に伴って、前記線状体の他側面側から前記固定掴線部に対向して離接可能な可動掴線部と、前記可動掴線部及び前記作動部の何れか一方と前記固定掴線部との間で互いに係合可能な対を構成し、少なくとも一方が係合相手に対して離接方向へシフト可能なシフト機構を有している係合対とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の掴線器は、上記構成に加えて、前記シフト機構は、前記離接方向へ螺進退できるように前記固定掴線部に螺設されたネジ部と、前記ネジ部の軸回りに回転自在に設けられ、前記係合対の一方を支持しながら、螺進退する前記ネジ部と一体となって前記離接方向へシフト可能なシフト支持部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の掴線器は、上記構成に加えて、前記係合対は、前記シフト支持部に支持された係合ピンと、前記可動掴線部又は前記作動部に軸支されたフックとの対により構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の掴線器は、上記構成に加えて、前記係合対は、前記シフト支持部に軸支されたフックと、前記可動掴線部又は前記作動部に固定された係合ピンとの対により構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の掴線器は、上記構成に加えて、前記シフト機構は、前記離接方向へ螺進退できるように前記可動掴線部及び前記作動部の何れか一方に螺設されたネジ部と、前記ネジ部の軸回りに回動自在に設けられ、前記係合対の一方を支持しながら、螺進退する前記ネジ部と一体となって前記離接方向へシフト可能なシフト支持部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の掴線器は、上記構成に加えて、前記係合対は、前記シフト支持部に支持された係合ピンと、前記固定掴線部に軸支されたフックとの対により構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の掴線器は、上記構成に加えて、前記係合対は、前記シフト支持部に軸支されたフックと、前記固定掴線部に固定された係合ピンとの対により構成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の掴線器は、上記構成に加えて、前記フックは、前記作動部の回動面と平行な面内で回動可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、可動掴線部及び作動部の何れか一方と固定掴線部との間に構成された係合対によって、両者の離間を阻止し、線状体の掴持状態を安定させることができる。また、係合対の少なくとも一方が係合相手に対して離接する方向へシフト可能に構成されているので、係合対による係合状態を強化することが可能であり、更に安定的に掴持状態を維持することが可能となる。
【0018】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、固定掴線部に対して螺進退可能に設けられたネジ部によりシフト機構が構成されているので、位置合わせの微調整が可能であることに加えて、少ない移動量で大きな力を発生させることができる。これにより、取り回しが容易であり、係合状態を安定的に維持することが可能である。
【0019】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、固定掴線部側で係合ピンを僅かにシフトさせるだけでフックの掛け外しができるので、短い時間で作業を行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、固定掴線部側でフックを僅かにシフトさせるだけで、係合ピンに対してフックの掛け外しができるので、短い時間で作業を行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、可動掴線部又は作動部に対して螺進退可能に設けられたネジ部によりシフト機構が構成されているので、位置合わせの微調整が可能であることに加えて、少ない移動量で大きな力を発生させることができる。これにより、取り回しが容易であり、係合状態を安定的に維持することが可能である。
【0022】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、可動掴線部又は作動部側で係合ピンを僅かにシフトさせるだけでフックの掛け外しができるので、短い時間で作業を行うことが可能となる。
【0023】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、可動掴線部又は作動部側でフックを僅かにシフトさせるだけで、係合ピンに対してフックの掛け外しができるので、短い時間で作業を行うことが可能となる。
【0024】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、作動部の回動面とフックの回動面とが平行な関係にあるので、両者の回動軸を共用することができ、部品点数の少ないコンパクトな設計が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る掴線器について図を用いて説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる掴線器1の全体斜視図である。
【0028】
略平板型の本体2の上方には、掴持対象の線状体である電線(図示せず)の上方の一側面に充てがわれる固定掴線部4が一体に設けられている。固定掴線部4の下方には、作動部8が支軸9によって揺動可能に軸支されている。作動部8の下方の揺動端には操作部10が支軸11により軸支されている。このような操作部10を前後動させることによって、作動部8の揺動操作が行われる。操作部10は、本体2の後方に延びているガイド穴2aに摺動可能に貫通配置されており、このガイド穴2aに沿って前後に操作される。作動部8の中間位置には、電線の下方の他側面から充てがわれる可動掴線部6が、固定掴線部4と対向するようにして支軸7によって軸支されている。作動部8は操作部10による揺動操作によって可動掴線部6を上下動させるカム機構を構成しており、固定掴線部4に対する可動掴線部6の位置を変化させて電線を掴持することができる。このような構造により、操作部10を後方へ引き付ける力が作用している間は、可動掴線部6を固定掴線部4側へ押し付ける力が生じる。
【0029】
ところで、このような形態の掴線器1では、操作部10を後方へ引き付ける力が消失又は減少すると、可動掴線部6を固定掴線部4側へ押し付けるための十分な力が失われ、電線を掴持することができなくなる。このような事象に対応するために、本実施の形態にかかる掴線器1は、可動掴線部6を固定掴線部4側へ固定するロック構造を備えている。これにより、操作部10に加わっていた力が消失しても、掴持状態を安定して維持することができる。
【0030】
具体的には、このロック構造は、ネジ部12及びシフト支持部14を含むシフト機構と、係合ピン16及びフック18による係合対との組み合わせによって構成されている。係合対の一方の構成であるフック18は、可動掴線部6を作動部8に対して軸支している支軸7を共通の軸として、作動部8の回動面と平行な面内で回動可能に軸支されている。そして、係合対の他方の構成である係合ピン16は、シフト支持部14と一体に設けられている。次に、このロック構造の動作について
図2を用いて説明する。
【0031】
図2は、
図1の掴線器1の動作説明図である。
図2に示すように、フック18には、周縁の一部に切り欠き19が形成されており、支軸7を中心に回動することにより係合ピン16と係合可能である。板状のフック18が係合ピン16から外されている状態では、少なくとも電線を収容可能な程度の回動範囲においては、作動部8の回動に規制はなく、固定掴線部4に対して可動掴線部6を自由に回動させることができる。電線を固定掴線部4と可動掴線部6との間に掴持した後、フック18を係合ピン16に係合させると、開方向への作動部8の回動は規制される。このように、単にフック18を係合ピン16に係合させただけの状態を、ここでは、仮のロック状態と呼ぶこととする。この仮のロック状態であっても、固定掴線部4と可動掴線部6の側方は、フック18によってカバーされるので、掴持した電線の脱落を防止することができるが、本実施の形態にかかる掴線器1では、さらに、シフト機構の作用によって、フック18を完全なロック状態にすることができる。次に、このシフト機構について、
図3を用いて詳しく説明する。
【0032】
図3は、
図1のA−A線で切断した掴線器1の断面図を示している。ここでは、説明の便宜のため、端面のみを表している。
【0033】
固定掴線部4には、ネジ軸12aが上下方向(固定掴線部4に対する可動掴線部6の離接方向)に向けて螺設されている。ネジ軸12aは、上方のノブ12bを掴んで回転操作することができる。ネジ軸12aには係合ピン16を支持する断面L字型のシフト支持部14が、軸回りに回転自在となるように設けられている。係合ピン16は、ガイドのために固定掴線部4に形成された、上下に延びる長孔4b内に、先端を嵌入させるようにして配置されている。
【0034】
上記構成により、ノブ12bを回転操作してネジ軸12aを上下動させると、係合ピン16を長孔4bの形成されている範囲内で上下に移動させることができる。これら、ネジ軸12a、ノブ12b、シフト支持部14及び固定掴線部4のネジ穴4aによってシフト機構が構成されている。
【0035】
このように、フック18を僅かな角度だけ回動させると、可動掴線部6の開放と仮のロック状態とを素早く切り替えることが可能である。
【0036】
さらに、この仮のロック状態から、係合ピン16が上昇するようにノブ12bを回転操作すると、係合ピン16とフック18との係合状態が強化され、完全なロック状態となる。この完全なロック状態を形成するためのノブ12bの回転操作は、係合ピン16と切り欠き19(
図2参照)との隙間を詰めるだけの僅かな回転で足りる。
【0037】
なお、ここでは、固定掴線部4に、係合ピン16の先端をガイドするための長孔4bが形成されている構成を例として示したが、この長孔4bは必須の構造ではない。
【0038】
ただし、この長孔4bが形成されていると、シフト支持部14をシフトさせる際に動きが安定するだけでなく、ノブ12bを不用意に回し過ぎることによってネジ軸12aが固定掴線部4から脱落してしまうことを防止できる。
【0039】
また、長孔4b内に係合ピン16の先端を嵌入させるように配置できるので、フック18の厚さ方向の全域で係合ピン16を係合させることが可能である。したがって、シフト動作時に、係合ピン16の先端がフック18から外れてしまうような不十分な係合も防止できる。
【0040】
以上のように、本実施の形態にかかる係合対のロック操作では、フック18の回動による素早い係合と、ネジ軸12aの僅かな締め込み動作により完了するので、効率よく作業を行うことが可能である。続いて、掴線器1の、シフト機構及び係合対からなるロック機構のバリエーションについて、
図4、5を用いて説明する。
【0041】
図4は、シフト機構が固定掴線部4に設けられている構成について、複数の変形例を示している。固定掴線部4側にシフト機構を有する構成のうち、
図4(a)、(b)はシフト機構に係合ピン16a、16bが組み合わされた構成を示している。これに対して、
図4(c)、(d)はシフト機構にフック18c、18dが組み合わされた構成を示している。ここでは、説明の便宜のため、シフト機構及び係合対を模式的に表している。具体的には、係合ピン16a、16b、16c、16dは白丸、フック18a、18b、18c、18dは鉤型の矢印で係合方向を表している。また、シフト方向は、固定掴線部4と可動掴線部6の離間する方向に沿って描かれた短い矢印で表されている。フック18a、18b、18c、18dの回動の支点7a、7b、7c、7dは、鉤型の矢印の端部に黒丸で表されている。
【0042】
図4(a)は、他の変形例に対する比較のために
図1の構成を模式的に表したものである。
図1において係合ピン16、フック18、支軸7として示した構成は、
図4(a)では、係合ピン16a、フック18a、支点7aとして表されている。また、
図1に示したシフト機構としてのシフト支持部14については、そのシフト方向のみを矢印で表し、具体的な構成の図示は省略している。
【0043】
フック18aは可動掴線部6側に設けられ、固定掴線部4側に係合ピン16aが設けられている。シフト機構には係合ピン16aが組み合わされているので、係合後に係合ピン16aを可動掴線部6から離間させる向きへシフトさせると、フック18aを完全なロック状態にすることができる。
【0044】
なお、ここでは、フック18aの支点7aは、可動掴線部6を作動部8に軸支している支軸7を共用した
図1の掴線器1と同様の構成を示しており、作動部8の揺動面と平行な面内で回動する構成となっている。しかし、
図1の支軸7と
図4(a)の支点7aとが一致している必要はなく、
図1において可動掴線部6を作動部8に対して回動可能に軸支している支軸7とは別の構成(具体的な構成については図示せず。)に支点7aが設けられていても構わない。
【0045】
図4(b)は、作動部8にフック18bが軸支された構成を示している。係合ピン16bは、
図4(a)と同様に、固定掴線部4上にシフト可能に設けられている。
【0046】
このような構成では、可動掴線部6の傾きに影響を与えないので、フック18bの軸支位置は作動部8の上で自由に選択できる。すなわち、
図4(a)の構成よりも大きな回転モーメントを作動部8に生じさせるような軸支位置を、可動掴線部6に影響を与えることなく、自由に選択することができる。したがって、同じシフト動作であっても、より大きな力でロック状態を安定させることが可能となる。
【0047】
また、フック18bの回転半径が大きい方ほど視認性が向上するので、遠隔位置からの操作も容易になる。
【0048】
図4(c)は、固定掴線部4にフック18cが軸支された構成を示している。係合ピン16cは、可動掴線部6側に設けられている。
図4(a)、(b)とは異なり、フック18cの支点7cがシフト機構と組み合わされており、係合ピン16cは固定である。具体的には、
図1に示したシフト支持部14にフック18cを軸支することで構成できる。
【0049】
図4(d)は、固定掴線部4にフック18dが軸支されている構成において
図4(c)と同様であるが、係合ピン16dが作動部8上に設けられている構成で異なっている。可動掴線部6の動きに影響を及ぼさない係合ピン16dの位置を作動部8上で自由に選択できるので、
図4(b)の構成と同様に、同じシフト動作に対して、より大きな力でロック状態を安定させることが可能となる。
【0050】
図5は、シフト機構が可動掴線部6又は作動部8に設けられている構成について、複数の変形例を示している。可動掴線部6又は作動部8側にシフト機構を有する構成のうち、
図5(a)、(b)はシフト機構にフック18e、18fが組み合わされた構成を示し、
図5(c)、(d)はシフト機構に係合ピン16g、16hが組み合わされた構成を示している。ここでは、
図4の場合と同様に、説明の便宜のため、シフト機構及び係合対を模式的に表している。具体的には、係合ピン16e、16f、16g、16hは白丸、フック18e、18f、18g、18hは鉤型の矢印、シフト方向は、固定掴線部4と可動掴線部6の離間方向に沿って描かれた短い矢印、フック18e、18f、18g、18hの回動の支点7e、7f、7g、7hは黒丸で表されている。
【0051】
図5(a)は、固定掴線部4に係合ピン16eが固定され、可動掴線部6上の支点7eにフック18eが揺動可能に軸支されている構成を表している。フック18eは可動掴線部6上で、固定掴線部4に対する離接方向へシフト可能に軸支されている。このような構成では、係合ピン16eと仮係合可能な位置までシフト操作により支点7eを移動させておき、フック18eを係合させた後、係合ピン16eから離間する方向へシフトさせることにより、完全なロック状態を形成することができる。
【0052】
図5(b)は、固定掴線部4に係合ピン16fが固定されている構成においては、
図5(a)と同様であるが、フック18fがシフト可能に作動部8上に設けられている点において異なっている。
図4(b)の構成と同様に、可動掴線部6よりも固定掴線部4から離れた作動部8上にフック18fの支点7fがあるので、その分だけフック18fの回動半径は大きくなる。したがって、同様の理由により、遠隔位置から操作を行う場合に有利である。また、可動掴線部6の動きに影響を及ぼさないような支点7fを、作動部8上で自由に選択できる。
【0053】
図5(c)は、可動掴線部6に係合ピン16gが固定され、固定掴線部4にフック18gが揺動可能に軸支されている構成を表している。フック18gは、固定掴線部4上で、可動掴線部6に対する離接方向へシフト可能に軸支されている。
図5(a)の構成と比較すると、固定掴線部4及び可動掴線部6に対する配置が逆の関係になっているが、ロック時の挟持力には大差はない。フック18gの垂下位置に一致するように係合ピン16gが配置されていると、重力に任せてフック18gを垂下させた状態で、係合ピン16gのシフト機構のみを操作して係合及びロック状態の締め込みを行うことができる。
【0054】
図5(d)は、固定掴線部4にフック18hが軸支されている点において
図5(c)と同様であるが、係合ピン16hが作動部8上に設けられている点において異なっている。ロックのために要する締め込みの力が大きくなるなど、フック18hの回動半径が大きい
図5(b)の構成と同様の効果が得られる。
【0055】
なお、
図4、
図5に示した変形例では、何れも後方から前方へ向けて係合する構成となっているが、前方から後方へ向けて係合する構成でも構わない。
【0056】
また、
図1の係合ピン16及びフック18からなる係合対や、
図4、5に示した係合対では、一方のみにシフト機構が設けられている構成を示した。しかし、係合対の構成(係合ピン、フック)の両方にシフト機構が設けられていても構わない。
【0057】
また、
図1では、ネジ軸12aに対して回動自在に、且つ、軸方向へ一体にシフト支持部14が設けられたシフト機構の構成を例として示した。しかし、ネジ軸12aとシフト支持部14とを送りネジ構造によるシフト機構として構成しても構わない。
【0058】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態にかかる掴線器21の全体斜視図である。本実施の形態にかかる掴線器21は、係合対を除いて、第1の実施の形態にかかる掴線器1と略同じ構成となっている。よって、第1の実施の形態において
図1に示した掴線器1と同一の構成については、同一の符号を付して説明をする。
【0059】
図6の掴線器21では、ノブ12bの回転操作によって螺進退するネジ部12と一体となってシフトするシフト部24(シフト機構)が設けられている。このシフト部24とネジ部12のネジ軸12aとの連結構造は、第1の実施の形態において示した、
図1のシフト支持部14とネジ軸12aとの連結構造と同様である。この連結構造の詳細についてはB−B断面を示した
図8を用いて後述する。
【0060】
シフト部24は、ネジ軸12aと直接連結された固定片27と、この固定片27に対して揺動可能にヒンジ結合された揺動片25とから構成されている。一方、可動掴線部6側には、
図6のY方向に向けて係合爪28が突設されている。上記シフト部24の揺動片25には、係合爪28が係合できる係合穴26が形成されている。本実施の形態においては、これら揺動片25と係合爪28とによって係合対が構成されている。
【0061】
図7に、
図6の掴線器21の動作説明図を示す。
図7では、シフト部24の揺動片25が略水平位置まで持ち上げられた様子が示されている。このように、揺動片25を持ち上げて、固定掴線部4と可動掴線部6との間の側方(Y方向)を開放することにより、電線の出し入れが可能な状態が形成される。揺動片25を回動操作するだけで電線の収容口を開閉できるので、作業効率の向上が図られる。そして、係合爪28が揺動片25の係合穴26に嵌入された状態でネジ部12のノブ12bを僅かに回転操作するだけで、ロック及びロックの解除が可能である。ここでも、第1の実施の形態と同様に、単に揺動片25を係合爪28に係合させただけの状態を、仮のロック状態と呼ぶこととする。そして、シフト機構により揺動片25をシフトさせて係合爪28と共に可動掴線部6を固定掴線部4側に引き寄せた状態を、完全なロック状態として区別する。次に、このシフト機構について、
図8を用いて詳しく説明する。
【0062】
図8に、
図6のB−B線で切断した掴線器21の断面図を示す。ここでは、説明の便宜のため、端面のみを表している。
【0063】
固定掴線部4に対してネジ軸12aが上下方向(固定掴線部4に対する可動掴線部6の離接方向)に向けて螺設されている。ネジ部12は、上方のノブ12bを掴んで回転操作することができる。これらの構成は
図1の掴線器1と同様である。
【0064】
本実施の形態の掴線器21では、シフト部24の固定片27側がネジ軸12aに対して回動自在に連結されている。そして、この固定片27に対して、係合対の一方の構成する揺動片25がヒンジ結合されている。
【0065】
このように構成されているので、電線を収容した後、係合爪28に係合した揺動片25を、ネジ軸12aと共に上昇させると、可動掴線部6が持ち上がって、掴持された電線を締め上げるようにロックすることができる。
図8から見て取れるように、ロックに必要な移動量は、揺動片25の係合穴26と係合爪28との間の隙間を詰める程度の僅かな量であり、ロック作業に多くの時間を要しない。続いて、掴線器21の、シフト機構及び係合対からなるロック機構のバリエーションについて、
図9、10を用いて説明する。
【0066】
図9は、シフト機構が固定掴線部4に設けられている構成について、複数の変形例を示している。固定掴線部4側にシフト機構を有する構成のうち、
図9(a)、(b)はシフト機構に係合爪28a、28bが組み合わされた構成を示し、
図9(c)、(d)はシフト機構に揺動片25c、25dが組み合わされた構成を示している。ここでも第1の実施の形態において
図4を用いて示したのと同様に、説明の便宜のため、シフト機構及び係合対を模式的に表している。具体的には、係合爪28a、28b、28c、28dは白丸、揺動片25a、25b、25c、25dは鉤型の矢印で係合方向を表している。また、シフト方向は、固定掴線部4と可動掴線部6の離間する方向に沿って描かれた短い矢印で表されている。揺動片25a、25b、25c、25dのそれぞれとヒンジ結合された支点27a、27b、27c、27dは黒丸で表されている。
【0067】
図9(a)は、揺動片25aが作動部8上の支点27aに軸支されている。この揺動片25aは、作動部8の揺動面と交差する方向(
図6に示したYZ平面に平行な方向)に揺動可能である。
図8においてネジ軸12a及びノブ12bからなるネジ部12として示したようなシフト機構は、ここでは、係合爪28aと組み合わせて構成されているものとする(図示省略)。この係合爪28a側が係合相手の揺動片25aを引き寄せることにより、完全なロック状態を形成できる構成となっている。
【0068】
図9(b)は、作動部8上の支点27bに揺動片25bが軸支された構成を示している。揺動片25bは、
図9(a)と同様に、固定掴線部4上にシフト可能に設けられている。可動掴線部6を軸支する位置よりも回動モーメントが大きい位置を揺動片25bの支点(ヒンジ部)として選択することができるので、揺動片25bのシフトによるロックの力は、
図9(a)の構成よりも大きくなる。
【0069】
また、揺動片25bの回動半径が大きい方が、視認が容易であり、遠隔操作用のヤットコなどで把持する部分も大型に構成できるので、遠隔位置から操作を行う場合は、
図9(b)の構成の方が適している。
【0070】
図9(c)は、他の変形例に対する比較のために
図6の構成を模式的に表したものである。係合爪28cは、可動掴線部6側に設けられている。
図9(a)、(b)とは異なり、揺動片25cの支点27cがシフト機構上に設けられており、係合爪28cは固定である。
【0071】
図9(d)は、固定掴線部4上の支点27dに揺動片25dが軸支されている点において
図9(c)と同様であるが、係合爪28dが作動部8上に設けられている点において異なっている。ロックによる挟持固定力を大きく設定できるなど、揺動片25dの回動半径が大きい
図9(b)の構成と同様の効果が得られる。
【0072】
図10は、シフト機構が可動掴線部6又は作動部8に設けられている構成について、複数の変形例を示している。
図10(a)、(b)はシフト機構に揺動片25e、25fが組み合わされた構成を示し、
図10(c)、(d)はシフト機構に係合爪28g、28hが組み合わされた構成を示している。ここでも、第1の実施の形態において
図4を用いて示したのと同様に、説明の便宜のため、シフト機構及び係合対を模式的に表している。具体的には、係合爪28e、28f、28g、28hは白丸、揺動片25e、25f、25g、25hは鉤型の矢印で係合方向を表している。また、シフト方向は、固定掴線部4と可動掴線部6の離間する方向に沿って描かれた短い矢印で表されている。揺動片25e、25f、25g、25hのそれぞれとヒンジ結合された支点27e、27f、27g、27hは黒丸で表されている。
【0073】
図10(a)は、固定掴線部4に係合爪28eが固定され、可動掴線部6上の支点27eに揺動片25eが揺動可能に軸支されている構成を表している。揺動片25eは可動掴線部6上で、固定掴線部4に対する離接方向へシフト可能に構成されている。このような構成では、係合爪28eに仮係合可能な位置までシフト操作により支点27eを移動させておき、揺動片25eを係合させた後、係合爪28eから離間する方向へシフトさせることにより、完全なロック状態を形成することができる。
【0074】
図10(b)は、固定掴線部4に係合爪28fが固定されている構成においては、
図10(a)と同様であるが、揺動片25fがシフト可能に作動部8上に設けられている点において異なっている。
図9(b)の構成と同様に、可動掴線部6よりも固定掴線部4から離れた作動部8上に揺動片25fの支点27fがあるので、その分だけ揺動片25fの回動半径は大きくなる。したがって、同様の理由により、遠隔位置から操作を行う場合に有利である。
【0075】
図10(c)は、可動掴線部6に係合爪28gが固定され、固定掴線部4上の支点27gに揺動片25gが揺動可能に軸支されている構成を表している。揺動片25gは、固定掴線部4上で、可動掴線部6に対する離接方向へシフト可能に軸支されている。
図10(a)の構成と比較すると、固定掴線部4及び可動掴線部6に対する配置が逆の関係になっているが、ロック時の挟持力には大差はない。揺動片25gを垂下させた状態で係合爪28gのシフト機構のみを操作して係合及びロック状態の締め込みを行うことができる。
【0076】
図10(d)は、固定掴線部4に揺動片25hが軸支されている点において
図10(c)と同様であるが、係合爪28hが作動部8上に設けられている点において異なっている。ロックによる挟持固定力を大きく設定できるなど、揺動片25fの回動半径が大きい
図10(b)の構成と同様の効果が得られる。
【0077】
なお、上記の各実施の形態に示した構成は本発明を表す例の一部であり、以下のような変形例も含まれる。
【0078】
上記の第1の実施の形態では、係合対の一方であるフック18が、作動部8の回動面と平行な面内で回動可能である構成を例として示した。また、第2の実施の形態では、係合対の一方である揺動片25が、作動部8の回動面と直交する方向に回動可能である構成を例として示した。しかし、これらの揺動方向に限らず、作動部8の回動面に対して直交又は平行以外の面に沿って、回動又は揺動する係合構造であっても構わない。
【0079】
また、上記の各実施の形態では、ネジ部12のネジ軸12aに対して回動自在に設けられている構造を、ネジ軸12aの螺進退と共にシフトさせるシフト機構を例として示した。しかし、ネジ軸12a上に配置したナット部材を、係合対象の一方と一体化して、送りネジ機構によりシフト機構を構成しても構わない。