特許第6792906号(P6792906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792906エアロゾル生成装置並びにこれを動作させる方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792906
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】エアロゾル生成装置並びにこれを動作させる方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/50 20200101AFI20201119BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20201119BHJP
【FI】
   A24F40/50
   A24F47/00
【請求項の数】32
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2019-567485(P2019-567485)
(86)(22)【出願日】2018年1月26日
(86)【国際出願番号】JP2018002454
(87)【国際公開番号】WO2019146063
(87)【国際公開日】20190801
【審査請求日】2020年4月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 剛志
(72)【発明者】
【氏名】水口 一真
(72)【発明者】
【氏名】辻 将之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 創
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0359263(US,A1)
【文献】 特表2017−501805(JP,A)
【文献】 特表2016−524777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/50
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、
前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、
前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正し、
エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値が閾値以上の場合は、又は既定の電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値の変化量が閾値以上の場合は、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正しない
よう構成される制御部と、を備える、
エアロゾル生成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記負荷がエアロゾルを生成する前の前記センサの出力値と室温との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される、
請求項1に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記負荷の温度が室温であると判断される既定の条件が成立した場合に、前記負荷がエアロゾルを生成する前の前記センサの出力値と室温との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される、
請求項2に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項4】
前記既定の条件は、前回のエアロゾル生成から既定の時間が経過したことである、
請求項3に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項5】
前記負荷と前記エアロゾル源を貯留する貯留部を備えるカートリッジ又は前記負荷と前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材を備えるエアロゾル発生物品と、
前記カートリッジの脱着又は前記エアロゾル発生物品の挿抜を可能にする接続部と、
を備え、
前記既定の条件は、前記接続部に前記カートリッジが装着されてから又は前記エアロゾル発生物品が挿入されてから既定の時間が経過したことである、
請求項3に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項6】
前記センサは、前記電源の温度、前記制御部の温度、前記エアロゾル生成装置の内部の温度及び前記エアロゾル生成装置の周囲の温度のうちいずれか1つを出力するよう構成され、
前記既定の条件は、前記センサが出力する温度が室温になったこと、または前記センサが出力する温度と室温の差分の絶対値が既定の閾値以下となったことである、
請求項3に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記電源から前記負荷への給電を制御し、
前記既定の条件が満たされた場合、前記センサの出力値と該出力値に対応する温度の推定値を対応付けるまで前記負荷がエアロゾルを生成しないよう制御するよう構成される、
請求項3から6のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記負荷の温度を前記負荷がエアロゾルを生成可能な温度まで昇温させるために必要な電力より小さな既定電力を、前記電源から前記負荷へ給電するように制御し、
前記既定電力を前記負荷へ給電している間の前記センサの出力値に基づき、前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される、
請求項2から7のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項9】
前記既定電力は、前記負荷の温度を前記センサの分解能以上に昇温させない電力である、
請求項8に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項10】
前記既定電力は、前記負荷の温度を昇温させない電力である、
請求項8又は9に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記電源から前記負荷への給電を制御し、
エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値とエアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される、
請求項1に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記電源から前記負荷への給電を制御し、
エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電され、且つ室温以外の値で定常状態になった時の前記センサの出力値と、エアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される、
請求項1に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項13】
前記負荷の温度と電気抵抗値は比例し、
前記制御部は、記憶された前記温度−抵抗値特性の切片を較正するよう構成される、
請求項1から12のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項14】
前記負荷の温度と電気抵抗値は比例し、
前記負荷の種類毎に、前記負荷の電気抵抗値と前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の一方を格納するデータベースを備え、
前記制御部は、
前記センサの出力値と前記データベースに基づき、前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の一方を較正し、
前記センサの出力値と前記較正された前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の一方に基づき、前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の他方を較正するよう構成される、
請求項1から13のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項15】
前記データベースは、前記負荷の種類毎に、室温又はエアロゾル生成が生じる温度における前記負荷の電気抵抗値と前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の他方を格納する、
請求気14に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項16】
前記負荷の温度と電気抵抗値は比例し、
前記制御部は、前記センサの出力値と該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係と、前記負荷又は前記負荷を備えるカートリッジに関する情報とに基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性の傾きと切片を較正するよう構成される、
請求項1から13のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記負荷又は前記カートリッジに関する情報を、外部端末との通信,前記負荷の識別情報,前記カートリッジ又は前記カートリッジのパッケージの識別情報,及びユーザ入力のうち少なくとも1つから取得するよう構成される、
請求項16に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項18】
前記負荷の温度と電気抵抗値は比例し、
前記制御部は、前記負荷がエアロゾルを生成する前の前記センサの出力値と室温との間の対応関係と、エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された時の前記センサの出力値とエアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係とに基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性の傾きと切片を較正するよう構成される、
請求項1から13のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項19】
電源と、
前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、
前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、
前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正し、
エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された時の前記センサの出力値が閾値以上の場合は、又は既定の電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値の変化量が閾値以上の場合は、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正しない
ように構成される制御部と、を備える、
エアロゾル生成装置。
【請求項20】
電源と、
前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、
前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、
前記負荷と前記エアロゾル源を貯留する貯留部を備えるカートリッジ又は前記負荷と前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材を備えるエアロゾル発生物品と、
前記カートリッジの脱着又は前記エアロゾル発生物品の挿抜を可能にする接続部と、
前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正し、
前記接続部からの前記カートリッジの取り外し又は前記エアロゾル発生物品の抜き取りを検知した場合のみ、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正する
よう構成される制御部と、を備える、
エアロゾル生成装置。
【請求項21】
電源と、
前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、
前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、
前記負荷と前記エアロゾル源を貯留する貯留部を備えるカートリッジ又は前記負荷と前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材を備えるエアロゾル発生物品と、
前記カートリッジの脱着又は前記エアロゾル発生物品の挿抜を可能にする接続部と、
前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正し、
記憶された前記温度−抵抗値特性の較正に先立ち、前記較正を行うべきか否かを、既定の条件に基づき判断し、
前記接続部から取り外された前記カートリッジ又は抜き取られた前記エアロゾル発生物品の抵抗値を記憶する
よう構成される制御部と、を備え、
前記既定の条件は、前記制御部が記憶した抵抗値と前記接続部へ新たに装着された前記カートリッジの抵抗値又は挿入された前記エアロゾル発生物品の抵抗値が異なることである、
エアロゾル生成装置。
【請求項22】
前記既定の条件は、前記負荷への給電を継続している間に、前記接続部に装着された前記カートリッジの抵抗値の変化速度又は挿入された前記エアロゾル発生物品の抵抗値の変化速度が既定の閾値未満になることである、
請求項21に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項23】
電源と、
前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、
前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、
前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正し、
記憶された前記温度−抵抗値特性の較正に先立ち、前記較正を行うべきか否かを、既定の条件に基づき判断する
よう構成される制御部と、を備え、
前記既定の条件は、前記センサの出力値と該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係から、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正しなければ前記負荷の温度を実際の値よりも過小に推定することになると判断されることである、
エアロゾル生成装置。
【請求項24】
電源と、
前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、
前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、
前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正し、
記憶された前記温度−抵抗値特性の較正に先立ち、前記較正を行うべきか否かを、既定の条件に基づき判断する
よう構成される制御部と、を備え、
前記既定の条件は、前記センサの出力値が既定の閾値よりも小さいことである、
エアロゾル生成装置。
【請求項25】
電源と、
前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、
前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、
前記負荷と前記エアロゾル源を貯留する貯留部を備えるカートリッジ又は前記負荷と前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材を備えるエアロゾル発生物品と、
前記カートリッジの脱着又は前記エアロゾル発生物品の挿抜を可能にする接続部と、
前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正し、
前記センサの出力値から既定値を減算した値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正する
よう構成される制御部と、を備え、
前記センサは前記カートリッジ又は前記エアロゾル発生物品に含まれない、
エアロゾル生成装置。
【請求項26】
前記負荷が前記エアロゾル源を霧化するために用いられる第1回路と、
前記負荷の抵抗値に関する値を検出するために用いられ、前記第1回路と並列接続され、且つ前記第1回路よりも電気抵抗値が大きい第2回路と、を備える、
請求項1から25のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項27】
前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路を備え、
前記センサは、少なくとも、前記回路のうち前記負荷の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧の値を出力し、
前記制御部は、前記回路の全体に印加される電圧の値と前記センサの出力値に基づいて、前記負荷の電気抵抗値を導出するように構成される、
請求項1から25のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項28】
前記電源の出力電圧を変換して、前記回路の全体に印加するように出力する変換部を含み、
前記制御部は、前記負荷の電気抵抗値を導出する場合には、前記変換部が前記回路の全体に一定電圧を印加するように制御するよう構成される、
請求項27に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項29】
エアロゾル生成装置を動作させる方法であって、
温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷への給電による発熱によって、エアロゾル源を霧化するステップと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、メモリに記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するステップと
を含み、
エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値が閾値以上の場合は、又は既定の電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値の変化量が閾値以上の場合は、記憶された前記温度−抵抗値特性が較正されない、方法。
【請求項30】
電源と、
前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、
前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、
前記温度−抵抗値特性に基づき既定の制御を実行するように構成された制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、前記既定の制御に関する値を較正し、
エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値が閾値以上の場合は、又は既定の電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値の変化量が閾値以上の場合は、前記既定の制御に関する値を較正しない
ように構成される、
エアロゾル生成装置。
【請求項31】
エアロゾル生成装置を動作させる方法であって、
温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷への給電による発熱によって、エアロゾル源を霧化するステップと、
前記温度−抵抗値特性に基づき既定の制御を実行するステップと、
前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、前記既定の制御に関する値を較正するステップと
を含み、
エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値が閾値以上の場合は、又は既定の電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値の変化量が閾値以上の場合は、前記既定の制御に関する値が較正されない、方法。
【請求項32】
プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、請求項29又は31に記載の方法を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザが吸引するエアロゾルを生成するエアロゾル生成装置並びにこれを動作させる方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電子たばこ、加熱式たばこ、ネブライザーなどの、ユーザが吸引するエアロゾルを生成するためのエアロゾル生成装置においては、霧化されることでエアロゾルとなるエアロゾル源が不足しているときにユーザが吸引を行うと、ユーザに対して十分なエアロゾルを供給できない。加えて、電子たばこや加熱式たばこの場合、意図しない香喫味を有するエアロゾルが放出され得るという問題が生じる。
【0003】
この問題に対する解決策として、特許文献1には、エアロゾル源を加熱するヒータの温度を維持するために必要な電力に基づいてエアロゾル源の存在を検知する技術が開示されている。特許文献2には、エアロゾル生成回路に加えてシャント回路を有するエアロゾル生成装置が開示されている。特許文献3には、エアロゾル源を貯留するカートリッジが有する情報を電源側で読み取り、この情報に基づいて制御を行う技術が開示されている。特許文献4から12もまた、上記の問題を解決するための又は上記の問題の解決に寄与する可能性がある種々の技術を開示している。
【0004】
しかしながら、従来の技術は、エアロゾル源の不足を検知するために電流計及び電圧計を含む構成要素を必要とするので、装置のコスト、重量、サイズなどが増大する。また、従来の技術は、装置の構成要素の誤差によって変動しやすいパラメータを用いるので、エアロゾル源の不足に関する検知精度が低い。また、カートリッジが交換された後にエアロゾル源の不足をより精度良く検知する技術の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2797446号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1412829号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/138560号
【特許文献4】欧州特許出願公開第2471392号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2257195号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2654469号明細書
【特許文献7】国際公開第2015/100361号
【特許文献8】特表2017−503520号明細書
【特許文献9】国際公開第2017/084818号
【特許文献10】欧州特許出願公開第2399636号明細書
【特許文献11】特表2016−531549号明細書
【特許文献12】国際公開第2016/143079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものである。
【0007】
本開示が解決しようとする第1の課題は、必要とされる構成要素の数が少なく且つエアロゾル源の不足に関する検知精度が高い、エアロゾル生成装置並びにそれを動作させる方法及びプログラムを提供することである。
【0008】
本開示が解決しようとする第2の課題は、エアロゾル源の不足に関する検知精度に対して構成要素の製品誤差が与える影響を抑制する、エアロゾル生成装置及びエアロゾル生成装置の製造方法を提供することである。
【0009】
本開示が解決しようとする第3の課題は、カートリッジが交換された後にエアロゾル源の不足をより精度良く検知することができる、エアロゾル生成装置並びにそれを動作させる方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した第1の課題を解決するため、本開示の第1の実施形態によれば、電源と、エアロゾル源を貯留する貯留部又は前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材と、前記電源からの給電による発熱で前記貯留部から供給される又は前記エアロゾル基材に保持された前記エアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する負荷と、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路と、前記回路の全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、前記回路のうち前記負荷の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧の値である第2電圧値と、に基づき、前記貯留部から供給可能な又は前記エアロゾル基材に保持された前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定するよう構成される制御部と、を備える、エアロゾル生成装置が提供される。
【0011】
一実施形態において、前記制御部は、前記第1電圧値が一定になるように制御されている間の前記第2電圧値が第1条件を複数回満たす場合、又は前記第1電圧値と前記第2電圧値から導出される前記負荷の電気抵抗値が第2条件を複数回満たす場合に、前記エアロゾル源が不足していると判定するよう構成される。
【0012】
一実施形態において、前記制御部は、前記第1条件が連続して複数回満たされた場合、又は前記第2条件が連続して複数回満たされた場合に、前記エアロゾル源が不足していると判定するように構成される。
【0013】
一実施形態において、前記制御部は、前記第1条件が満たされた回数、又は前記第2条件が満たされた回数を記憶し、前記第1条件が満たされない場合、又は前記第2条件が満たされない場合は、前記回数を減らすよう構成される。
【0014】
一実施形態において、前記制御部は、前記第1条件が満たされない場合、又は前記第2条件が満たされない場合は、前記回数を初期値に戻すよう構成される。
【0015】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記貯留部を含むカートリッジ又は前記エアロゾル基材を含むエアロゾル発生物品の脱着を可能にし、且つ前記カートリッジ又は前記エアロゾル発生物品の脱着の検出を可能にする接続部を備える。前記制御部は、前記第1条件が満たされた回数、又は前記第2条件が満たされた回数を記憶し、前記接続部への前記カートリッジ又は前記エアロゾル発生物品の装着を契機に、前記回数を減らすよう構成される。
【0016】
一実施形態において、前記カートリッジ又は前記エアロゾル発生物品の識別情報又は使用履歴は既定の方法で取得することが可能である。前記制御部は、前記接続部に装着された前記カートリッジ又は前記エアロゾル発生物品の前記識別情報又は前記使用履歴に基づき、前記積回数を減らすか否かを判断するように構成される。
【0017】
一実施形態において、前記制御部は、前記第1条件が満たされた回数、又は前記第2条件が満たされた回数を記憶し、前記回数と既定の閾値との比較に基づき、前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定し、エアロゾルの生成に対する要求の時系列的な変化が既定の正常な変化に合致せずに、前記第1条件又は前記第2条件が満たされた場合、前記回数を増加させないか、前記回数の増加量を減らすか、又は前記既定の閾値を増加させるよう構成される。
【0018】
一実施形態において、前記制御部は、前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づく第1基準及び該第1基準と異なる第2基準を用いて、前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定し、前記第1基準が複数回満たされた場合、又は前記第2基準が該複数回よりも少ない回数満たされた場合に、前記エアロゾル源が不足していると判定するよう構成される。
【0019】
一実施形態において、前記第2基準は、前記第1基準よりも満たしにくい。
【0020】
一実施形態において、前記第1基準は、前記第1電圧値が一定になるように制御されている間の前記第2電圧値が第1閾値を満たすか否か、又は前記第1電圧値と前記第2電圧値から導出される前記負荷の電気抵抗値が第2閾値を満たすか否かである。前記第2基準は、前記第2電圧値が前記第1閾値よりも大きな閾値を満たすか否か、又は前記負荷の電気抵抗値が前記第2閾値よりも大きな閾値を満たすか否かである。
【0021】
一実施形態において、前記制御部は、前記第2基準が満たされたか否かを前記第1基準が満たされたか否かよりも前に判定するよう構成される。
【0022】
一実施形態において、前記制御部は、前記第2基準が満たされ且つ前記エアロゾル源が不足していると判定された場合、前記第1基準が満たされたか否かを判定せずに、前記電源から前記負荷への給電の停止又はユーザへの通知の少なくとも一方を行うよう構成される。
【0023】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記電源の出力電圧を変換して、前記回路の全体に印加されるように出力する変換部を備える。前記制御部は、前記変換部を制御するよう構成される。
【0024】
一実施形態において、前記制御部は、前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定する際、一定電圧を出力するように前記変換部を制御するよう構成される。
【0025】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記第2電圧値を出力するセンサを備える。前記制御部は、前記一定電圧の値である前記第1電圧値と前記センサから出力される前記第2電圧値に基づき、前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定するよう構成される。
【0026】
一実施形態において、前記制御部は、前記センサから出力される前記第2電圧値と既定の閾値との比較に基づいて、前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定するよう構成される。
【0027】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記第1電圧値と前記第2電圧値をそれぞれ出力する第1センサと第2センサを備える。前記制御部は、前記第1センサ及び前記第2センサからの出力の値から導出される前記負荷の電気抵抗値と、既定の閾値との比較から、前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定するよう構成される。
【0028】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記負荷と直列に接続される、既知の電気抵抗値を有する既知抵抗を備える。前記第2電圧値は、前記負荷又は前記既知抵抗に印加される電圧の値である。
【0029】
一実施形態において、前記既知抵抗は、前記負荷より大きな電気抵抗値を有する。エアロゾル生成装置は、参照電圧と増幅した前記負荷に印加される電圧の比較に基づき、前記第2電圧値を出力するセンサを備える。
【0030】
また、本開示の第1の実施形態によれば、エアロゾル生成装置を動作させる方法であって、電源から温度に応じて電気抵抗値が変化する負荷への給電による発熱によって、エアロゾル源を霧化するステップと、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路の全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、前記回路のうち前記負荷の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧の値である第2電圧値と、に基づき、エアロゾルを生成するために供給可能な前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定するステップとを含む方法が提供される。
【0031】
また、本開示の第1の実施形態によれば、電源と、エアロゾル源を貯留する貯留部又は前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材と、前記電源からの給電による発熱で前記貯留部から供給される又は前記エアロゾル基材に保持された前記エアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する負荷と、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路と、前記回路の全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、前記回路のうち前記負荷の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧の値である第2電圧値と、に基づいて、前記貯留部が貯留する又は前記エアロゾル基材が保持する前記エアロゾル源の残量を推定するよう構成される制御部と、を備える、エアロゾル生成装置が提供される。
【0032】
また、本開示の第1の実施形態によれば、エアロゾル生成装置を動作させる方法であって、電源から温度に応じて電気抵抗値が変化する負荷への給電による発熱によって、エアロゾル源を霧化するステップと、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路の全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、前記回路のうち前記負荷の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧の値である第2電圧値と、に基づき、前記エアロゾル源の残量を推定するステップとを含む方法が提供される。
【0033】
また、本開示の第1の実施形態によれば、電源と、エアロゾル源を貯留する貯留部又は前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材と、前記電源からの給電による発熱で前記貯留部から供給される又は前記エアロゾル基材に保持された前記エアロゾル源を霧化する負荷と、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路と、前記回路全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、前記回路の一部に印加される電圧の値である第2電圧値とに基づき、前記貯留部から前記負荷へ供給可能な又は前記エアロゾル基材に保持された前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定するように構成される制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1電圧値をメモリから、前記第2電圧値をセンサから、それぞれ取得するよう構成される、エアロゾル生成装置が提供される。
【0034】
また、本開示の第1の実施形態によれば、エアロゾル生成装置を動作させる方法であって、電源から負荷への給電による発熱によって、エアロゾル源を霧化するステップと、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路の全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、前記回路の一部に印加される電圧の値である第2電圧値とに基づき、エアロゾルを生成するために供給可能な前記エアロゾル源が不足しているか否かを判定するステップとを含み、前記第1電圧値はメモリから、前記第2電圧値はセンサから、それぞれ取得される、方法が提供される。
【0035】
また、本開示の第1の実施形態によれば、電源と、エアロゾル源を貯留する貯留部又は前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材と、前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化する負荷と、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路と、前記回路全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、前記回路の一部に印加される電圧の値である第2電圧値とに基づき、前記貯留部が貯留する又は前記エアロゾル基材に保持された前記エアロゾル源の残量を推定するように構成される制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1電圧値をメモリから、前記第2電圧値をセンサから、それぞれ取得するよう構成される、エアロゾル生成装置が提供される。
【0036】
また、本開示の第1の実施形態によれば、エアロゾル生成装置を動作させる方法であって、電源から負荷への給電による発熱によって、エアロゾル源を霧化するステップと、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路の全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、前記回路の一部に印加される電圧の値である第2電圧値とに基づき、前記エアロゾル源の残量を推定するステップとを含み、前記第1電圧値はメモリから、前記第2電圧値はセンサから、それぞれ取得される、方法が提供される。
【0037】
また、本開示の第1の実施形態によれば、プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、上述の方法のいずれかを実行させる、プログラムが提供される。
【0038】
上述した第2の課題を解決するため、本開示の第2の実施形態によれば、電源と、前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する負荷と、前記負荷が前記エアロゾル源を霧化するために用いられる第1回路と、前記負荷の温度変化によって変わる電圧を検出するために用いられ、前記第1回路と並列接続され、且つ前記第1回路よりも電気抵抗値が大きい第2回路と、前記第2回路と前記負荷に印加される電圧の値を取得する取得部と、前記負荷の温度変化によって変わる電圧の値を出力するセンサと、を備える、エアロゾル生成装置が提供される。
【0039】
一実施形態において、前記第2回路は、前記負荷と直列に接続される、既知の電気抵抗値を有する既知抵抗を含む。前記センサは、前記負荷の温度変化によって変わる電圧の値として、前記負荷又は前記既知抵抗に印加される電圧の値を出力する。
【0040】
一実施形態において、前記既知抵抗は、前記負荷よりも大きな電気抵抗値を有し、前記センサは、前記負荷に印加される電圧の値を出力する。
【0041】
一実施形態において、参照電圧の値と増幅された前記負荷に印加される電圧の値との間の比較に基づいて、前記負荷の温度変化によって変わる電圧の値が求められる。
【0042】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記電源の出力電圧を変換して、前記第2回路と前記負荷に印加するように出力する変換部を備える。前記取得部は、電流が前記第2回路に貫流している間に、前記変換部の出力電圧の目標値を取得する。
【0043】
一実施形態において、前記変換部は、前記第1回路及び前記第2回路が接続されるノードのうち高電圧側のノードと、前記電源との間に接続される。
【0044】
一実施形態において、前記変換部は、入力される電圧を降圧して出力することが可能なスイッチング・レギュレータである。
【0045】
一実施形態において、前記エアロゾル源を貯留する貯留部及び前記負荷は、接続部を介して前記エアロゾル生成装置に脱着可能なカートリッジに含まれる。前記センサは、前記カートリッジに含まれない。
【0046】
一実施形態において、前記第2回路は、前記負荷と直列に接続される、既知の電気抵抗値を有する既知抵抗を含む。前記エアロゾル源を貯留する貯留部及び前記負荷は、接続部を介して前記エアロゾル生成装置に脱着可能なカートリッジに含まれる。前記センサは、前記負荷の温度変化によって変わる電圧の値として、前記負荷及び前記接続部に印加される電圧の値を出力する。
【0047】
一実施形態において、前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材は、前記エアロゾル生成装置に挿抜可能なエアロゾル発生物品に含まれる。前記センサは、前記エアロゾル発生物品に含まれない。
【0048】
一実施形態において、前記既知抵抗は、電流が前記第2回路を貫流している状態を電流が前記第2回路を貫流していない状態から区別することを可能にする大きさを有する電流が、前記第2回路を貫流するような電気抵抗値を有する。
【0049】
一実施形態において、前記既知抵抗は、電流が前記第2回路を貫流している状態を電流が前記第2回路を貫流していない状態から区別することを可能にする大きさを有する電流が、前記電源の電圧が放電終止電圧である場合に前記第2回路を貫流するような電気抵抗値を有する。
【0050】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記電源の出力電圧を変換して、前記第2回路と前記負荷に印加するように出力する変換部を備える。前記既知抵抗は、電流が前記第2回路を貫流している状態を電流が前記第2回路を貫流していない状態から区別することを可能にする大きさを有する電流が、前記変換部の出力電圧が前記第2回路と前記負荷に印加されている場合に前記第2回路を貫流するような電気抵抗値を有する。
【0051】
一実施形態において、前記既知抵抗は、電流が前記第2回路を貫流している状態を電流が前記第2回路を貫流していない状態から区別することを可能にする大きさを有する電流が、前記負荷の温度が前記エアロゾル源の不足時のみに到達可能な温度である場合に前記第2回路を貫流するような電気抵抗値を有する。
【0052】
一実施形態において、前記既知抵抗は、電流が前記第2回路を貫流している間に、前記負荷へ前記負荷の保温に必要な電力のみが給電されるような電気抵抗値を有する。
【0053】
一実施形態において、前記既知抵抗は、電流が前記第2回路を貫流している間に、前記負荷がエアロゾルを生成しないような電気抵抗値を有する。
【0054】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記第1回路の電気的導通を断接する第1開閉器と、前記第2回路の電気的導通を断接する第2開閉器と、前記第1開閉器が、前記第2開閉器よりも長いオン時間でスイッチングされるように、前記第1開閉器と第2開閉器を制御するよう構成される制御部と、を備える。
【0055】
一実施形態において、前記第2開閉器のオン時間は、前記制御部が達成可能な最小時間である。
【0056】
また、本開示の第2の実施形態によれば、エアロゾル生成装置の製造方法であって、電源を配置するステップと、前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する負荷を配置するステップと、前記負荷が前記エアロゾル源を霧化するために用いられる第1回路を形成するステップと、前記負荷の温度変化によって変わる電圧を検出するために用いられ、前記第1回路と並列接続され、且つ前記第1回路よりも電気抵抗値が大きい第2回路を形成するステップと、前記第2回路と前記負荷に印加される電圧の値を取得する取得部を配置するステップと、前記負荷の温度変化によって変わる電圧の値を出力するセンサを配置するステップとを含む、方法が提供される。
【0057】
上述した第3の課題を解決するため、本開示の第3の実施形態によれば、電源と、前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される制御部と、を備える、エアロゾル生成装置が提供される。
【0058】
一実施形態において、前記制御部は、前記負荷がエアロゾルを生成する前の前記センサの出力値と室温との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される。
【0059】
一実施形態において、前記制御部は、前記負荷の温度が室温であると判断される既定の条件が成立した場合に、前記負荷がエアロゾルを生成する前の前記センサの出力値と室温との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される。
【0060】
一実施形態において、前記既定の条件は、前回のエアロゾル生成から既定の時間が経過したことである。
【0061】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記負荷と前記エアロゾル源を貯留する貯留部を含むカートリッジ又は前記負荷と前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材を含むエアロゾル発生物品と、前記カートリッジの脱着又は前記エアロゾル発生物品の挿抜を可能にする接続部とを備える。前記既定の条件は、前記接続部に前記カートリッジが装着されてから又は前記エアロゾル発生物品が挿入されてから既定の時間が経過したことである。
【0062】
一実施形態において、前記センサは、前記電源の温度、前記制御部の温度、前記エアロゾル生成装置の内部の温度及び前記エアロゾル生成装置の周囲の温度のうちいずれか1つを出力するよう構成される。前記既定の条件は、前記センサが出力する温度が室温になったこと、または前記センサが出力する温度と室温の差分の絶対値が既定の閾値以下となったことであってもよい。
【0063】
一実施形態において、前記制御部は、前記電源から前記負荷への給電を制御し、前記既定の条件が満たされた場合、前記センサの出力値と該出力値に対応する温度の推定値を対応付けるまで前記負荷がエアロゾルを生成しないよう制御するよう構成される。
【0064】
一実施形態において、前記制御部は、前記負荷の温度を前記負荷がエアロゾルを生成可能な温度まで昇温させるために必要な電力より小さな既定電力を、前記電源から前記負荷へ給電するように制御し、前記既定電力を前記負荷へ給電している間の前記センサの出力値に基づき、前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される。
【0065】
一実施形態において、前記既定電力は、前記負荷の温度を前記センサの分解能以上に昇温させない電力である。
【0066】
一実施形態において、前記既定電力は、前記負荷の温度を昇温させない電力である。
【0067】
一実施形態において、前記制御部は、前記電源から前記負荷への給電を制御し、エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値とエアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される。
【0068】
一実施形態において、前記制御部は、エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値が閾値以上の場合は、又は既定の電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値の変化量が閾値以上の場合は、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正しないよう構成される。
【0069】
一実施形態において、前記制御部は、前記電源から前記負荷への給電を制御し、エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電され、且つ室温以外の値で定常状態になった時の前記センサの出力値と、エアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される。
【0070】
一実施形態において、前記負荷の温度と電気抵抗値は比例し、前記制御部は、記憶された前記温度−抵抗値特性の切片を較正するよう構成される。
【0071】
一実施形態において、前記負荷の温度と電気抵抗値は比例する。エアロゾル生成装置は、前記負荷の種類毎に、前記負荷の電気抵抗値と前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の一方を格納するデータベースを備える。前記制御部は、前記センサの出力値と前記データベースに基づき、前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の一方を較正し、前記センサの出力値と前記較正された前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の一方に基づき、前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の他方を較正するよう構成される。
【0072】
一実施形態において、前記データベースは、前記負荷の種類毎に、室温又はエアロゾル生成が生じる温度における前記負荷の電気抵抗値と前記温度−抵抗値特性の傾きと切片の他方を格納する。
【0073】
一実施形態において、前記負荷の温度と電気抵抗値は比例する。前記制御部は、前記センサの出力値と該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係と、前記負荷又は前記負荷を備えるカートリッジに関する情報とに基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性の傾きと切片を較正するよう構成される。
【0074】
一実施形態において、前記制御部は、前記負荷又は前記カートリッジに関する情報を、外部端末との通信,前記負荷の識別情報,前記カートリッジ又は前記カートリッジのパッケージの識別情報,及びユーザ入力のうち少なくとも1つから取得するよう構成される。
【0075】
一実施形態において、前記負荷の温度と電気抵抗値は比例する。前記制御部は、前記負荷がエアロゾルを生成する前の前記センサの出力値と室温との間の対応関係と、エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された時の前記センサの出力値とエアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係とに基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性の傾きと切片を較正するよう構成される。
【0076】
一実施形態において、前記制御部は、エアロゾル生成に十分な電力が前記負荷に給電された時の前記センサの出力値が閾値以上の場合は、又は既定の電力が前記負荷に給電された際の前記センサの出力値の変化量が閾値以上の場合は、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正しないように構成される。
【0077】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記負荷と前記エアロゾル源を貯留する貯留部を備えるカートリッジ又は前記負荷と前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材を備えるエアロゾル発生物品と、前記カートリッジの脱着又は前記エアロゾル発生物品の挿抜を可能にする接続部と、を備える。前記制御部は、前記接続部からの前記カートリッジの取り外し又は前記エアロゾル発生物品の抜き取りを検知した場合のみ、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するよう構成される。
【0078】
一実施形態において、前記制御部は、記憶された前記温度−抵抗値特性の較正に先立ち、前記較正を行うべきか否かを、既定の条件に基づき判断するよう構成される。
【0079】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記負荷と前記エアロゾル源を貯留する貯留部を備えるカートリッジ又は前記負荷と前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材を備えるエアロゾル発生物品と、前記カートリッジの脱着又は前記エアロゾル発生物品の挿抜を可能にする接続部と、を備える。前記制御部は、前記接続部から取り外された前記カートリッジ又は抜き取られた前記エアロゾル発生物品の抵抗値を記憶するよう構成される。前記既定の条件は、前記制御部が記憶した抵抗値と前記接続部へ新たに装着された前記カートリッジの抵抗値又は挿入された前記エアロゾル発生物品の抵抗値が異なることである。
【0080】
一実施形態において、前記既定の条件は、前記負荷への給電を継続している間に、前記接続部に装着された前記カートリッジの抵抗値の変化速度又は挿入された前記エアロゾル発生物品の抵抗値の変化速度が既定の閾値未満になることである。
【0081】
一実施形態において、前記既定の条件は、前記センサの出力値と該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係から、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正しなければ前記負荷の温度を実際の値よりも過小に推定することになると判断されることである。
【0082】
一実施形態において、前記既定の条件は、前記センサの出力値が既定の閾値よりも小さいことである。
【0083】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記負荷と前記エアロゾル源を貯留する貯留部を備えるカートリッジ又は前記負荷と前記エアロゾル源を保持するエアロゾル基材を備えるエアロゾル発生物品と、前記カートリッジの脱着又は前記エアロゾル発生物品の挿抜を可能にする接続部と、を備える。前記センサは前記カートリッジ又は前記エアロゾル発生物品に含まれない。前記制御部は、前記センサの出力値から既定値を減算した値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するように構成される。
【0084】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記負荷が前記エアロゾル源を霧化するために用いられる第1回路と、前記負荷の抵抗値に関する値を検出するために用いられ、前記第1回路と並列接続され、且つ前記第1回路よりも電気抵抗値が大きい第2回路と、を備える。
【0085】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記電源と前記負荷を電気的に接続する回路を備える。前記センサは、少なくとも、前記回路のうち前記負荷の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧の値を出力する。前記制御部は、前記回路の全体に印加される電圧の値と前記センサの出力値に基づいて、前記負荷の電気抵抗値を導出するように構成される。
【0086】
一実施形態において、エアロゾル生成装置は、前記電源の出力電圧を変換して、前記回路の全体に印加するように出力する変換部を備える。前記制御部は、前記負荷の電気抵抗値を導出する場合には、前記変換部が前記回路の全体に一定電圧を印加するように制御するよう構成される。
【0087】
また、本開示の第3の実施形態によれば、エアロゾル生成装置を動作させる方法であって、温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷への給電による発熱によって、エアロゾル源を霧化するステップと、前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、メモリに記憶された前記温度−抵抗値特性を較正するステップとを含む方法が提供される。
【0088】
また、本開示の第3の実施形態によれば、電源と、前記電源からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷と、前記温度−抵抗値特性を記憶するメモリと、前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサと、前記温度−抵抗値特性に基づき既定の制御を実行するように構成された制御部と、を備え、前記制御部は、前記センサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、前記既定の制御に関する値を較正するように構成される、エアロゾル生成装置が提供される。
【0089】
また、本開示の第3の実施形態によれば、エアロゾル生成装置を動作させる方法であって、温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷への給電による発熱によって、エアロゾル源を霧化するステップと、前記温度−抵抗値特性に基づき既定の制御を実行するステップと、前記負荷の抵抗値に関する値を出力するセンサの出力値と、該出力値に対応する前記負荷の温度の推定値との間の対応関係に基づき、前記既定の制御に関する値を較正するステップとを含む方法が提供される。
【0090】
また、本開示の第3の実施形態によれば、プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、上記の方法を実行させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0091】
本開示の第1の実施形態によれば、必要とされる構成要素の数が少なく且つエアロゾル源の不足に関する検知精度が高い、エアロゾル生成装置並びにそれを動作させる方法及びプログラムを提供することができる。
【0092】
本開示の第2の実施形態によれば、エアロゾル源の不足に関する検知精度に対して構成要素の製品誤差が与える影響を抑制する、エアロゾル生成装置を提供することができる。
【0093】
本開示の第3の実施形態によれば、カートリッジが交換された後にエアロゾル源の不足をより精度良く検知することができる、エアロゾル生成装置並びにそれを動作させる方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1A】本開示の一実施形態によるエアロゾル生成装置の構成の概略的なブロック図である。
図1B】本開示の一実施形態によるエアロゾル生成装置の構成の概略的なブロック図である。
図2】本開示の一実施形態による、エアロゾル生成装置の一部に関する例示的な回路構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態による、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する例示的な処理のフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態による、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する例示的な処理のフローチャートである。
図5】本開示の一実施形態による、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する例示的な処理のフローチャートである。
図6】本開示の一実施形態による、ユーザの吸引パターンが想定外のパターンであるときに実行される例示的な処理のフローチャートである。
図7】本開示の一実施形態による、負荷の温度変化によって変わる電圧の値を求めるための回路構成を示す図である。
図8】エアロゾル源の不足を検知するための例示的な処理のフローチャートである。
図9】同じ金属からなる負荷の電気抵抗値と温度との間の関係の例を示すグラフである。
図10】本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
図11A】本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
図11B】本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
図12】本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
図13】負荷132の製造ばらつきにより、エアロゾル源が不足していると判断するための温度閾値が高くなり過ぎる可能性があることを説明するグラフである。
図14】本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
図15】異なる金属からなる異なる負荷の温度−抵抗値特性の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳しく説明する。なお、本開示の実施形態は、電子たばこ,加熱式たばこ及びネブライザーを含むが、これらに限定されない。本開示の実施形態は、ユーザが吸引するエアロゾルを生成するための様々なエアロゾル生成装置を含み得る。
【0096】
図1Aは、本開示の一実施形態に係るエアロゾル生成装置100Aの構成の概略的なブロック図である。図1Aは、エアロゾル生成装置100Aが備える各コンポーネントを概略的且つ概念的に示すものであり、各コンポーネント及びエアロゾル生成装置100Aの厳密な配置、形状、寸法、位置関係等を示すものではないことに留意されたい。
【0097】
図1Aに示されるように、エアロゾル生成装置100Aは、第1の部材102(以下、「本体102」と呼ぶ)及び第2の部材104A(以下、「カートリッジ104A」と呼ぶ)を備える。図示されるように、一例として、本体102は、制御部106、通知部108、電源110、センサ112及びメモリ114を含んでもよい。エアロゾル生成装置100Aは、流量センサ、圧力センサ、電圧センサなどのセンサを有してもよく、本開示においてはこれらをまとめて「センサ112」とも呼ぶ。本体102はまた、後述する回路134を含んでもよい。一例として、カートリッジ104Aは、貯留部116A、霧化部118A、空気取込流路120、エアロゾル流路121、吸口部122、保持部130及び負荷132を含んでもよい。本体102内に含まれるコンポーネントの一部がカートリッジ104A内に含まれてもよい。カートリッジ104A内に含まれるコンポーネントの一部が本体102内に含まれてもよい。カートリッジ104Aは、本体102に対して着脱可能に構成されてもよい。あるいは、本体102及びカートリッジ104A内に含まれるすべてのコンポーネントが、本体102及びカートリッジ104Aに代えて、同一の筐体内に含まれてもよい。
【0098】
貯留部116Aは、エアロゾル源を収容するタンクとして構成されてもよい。この場合、エアロゾル源は、例えば、グリセリンやプロピレングリコールといった多価アルコール、水などの液体である。エアロゾル生成装置100Aが電子たばこである場合、貯留部116A内のエアロゾル源は、加熱することによって香喫味成分を放出するたばこ原料やたばこ原料由来の抽出物を含んでいてもよい。保持部130は、エアロゾル源を保持する。例えば、保持部130は、繊維状又は多孔質性の素材から構成され、繊維間の隙間や多孔質材料の細孔に液体としてのエアロゾル源を保持する。前述した繊維状又は多孔質性の素材には、例えばコットンやガラス繊維、またはたばこ原料などを用いることができる。エアロゾル生成装置100Aがネブライザー等の医療用吸入器である場合、エアロゾル源はまた、患者が吸入するための薬剤を含んでもよい。別の例として、貯留部116Aは、消費されたエアロゾル源を補充することができる構成を有してもよい。あるいは、貯留部116Aは、エアロゾル源が消費された際に貯留部116A自体を交換することができるように構成されてもよい。また、エアロゾル源は液体に限られるものではなく、固体でも良い。エアロゾル源が固体の場合の貯留部116Aは、空洞の容器であっても良い。
【0099】
霧化部118Aは、エアロゾル源を霧化してエアロゾルを生成するように構成される。センサ112によって吸引動作が検知されると、霧化部118Aはエアロゾルを生成する。例えば、吸引動作は、流量センサや流速センサによって検知されてもよい。この場合は、ユーザが吸口部112を咥えて吸引することで生じる空気取込流路120内の空気の流量や流速の絶対値や変化量が既定の条件を満たせば、流量センサや流速センサは吸引動作を検知してもよい。また例えば、吸引動作は、圧力センサによって検知されてもよい。この場合は、ユーザが吸口部112を咥えて吸引することで空気取込流路120内が負圧になるなどの既定の条件が満たされれば、圧力センサは吸引動作を検知してもよい。なお、流量センサ、流速センサ及び圧力センサはそれぞれ空気取込流路120内の流量、流速及び圧力を出力するのみで、その出力に基づいて制御部106が吸引動作を検知してもよい。
【0100】
また例えば、押しボタンやタッチパネル、または加速度センサなどを用いることで、吸引動作を検知することなく、または吸引動作の検知を待たずに、霧化部118Aはエアロゾルを生成してもよく、または霧化部118Aは電源110からの給電を受けてもよい。このような構成とすることで、例えば霧化部118Aを構成する保持部130や負荷132、またはエアロゾル源そのものの熱容量が大きい場合であっても、実際にユーザがエアロゾルを吸引するタイミングにおいて、霧化部118Aは適切にエアロゾルを生成できる。なお、センサ112は押しボタンやタッチパネルに対する操作を検知するセンサや、加速度センサを含んでいてもよい。
【0101】
例えば、保持部130は、貯留部116Aと霧化部118Aとを連結するように設けられる。この場合、保持部130の一部は貯留部116Aの内部に通じ、エアロゾル源と接触する。保持部130の他の一部は霧化部118Aへ延びる。なお、霧化部118Aへ延びた保持部130の他の一部は、霧化部118Aに収められてもよく、あるいは、霧化部118Aを通って再び貯留部116Aの内部に通じてもよい。エアロゾル源は、保持部130の毛細管効果によって貯留部116Aから霧化部118Aへと運ばれる。一例として、霧化部118Aは、電源110に電気的に接続された負荷132を含むヒータを備える。ヒータは、保持部130と接触又は近接するように配置される。吸引動作が検知されると、制御部106は、霧化部118Aのヒータ又は当該ヒータへの給電を制御し、保持部130を通じて運ばれたエアロゾル源を加熱することによって当該エアロゾル源を霧化する。霧化部118Aの別の例は、エアロゾル源を超音波振動によって霧化する超音波式霧化器であってもよい。霧化部118Aには空気取込流路120が接続され、空気取込流路120はエアロゾル生成装置100Aの外部へ通じている。霧化部118Aにおいて生成されたエアロゾルは、空気取込流路120を介して取り込まれた空気と混合される。エアロゾルと空気の混合流体は、矢印124で示されるように、エアロゾル流路121へと送り出される。エアロゾル流路121は、霧化部118Aにおいて生成されたエアロゾルと空気との混合流体を吸口部122まで輸送するための管状構造を有する。
【0102】
吸口部122は、エアロゾル流路121の終端に位置し、エアロゾル流路121をエアロゾル生成装置100Aの外部に対して開放するように構成される。ユーザは、吸口部122を咥えて吸引することにより、エアロゾルを含んだ空気を口腔内へ取り込む。
【0103】
通知部108は、LEDなどの発光素子、ディスプレイ、スピーカ、バイブレータなどを含んでもよい。通知部108は、必要に応じて、発光、表示、発声、振動などによって、ユーザに対して何らかの通知を行うように構成される。
【0104】
電源110は、通知部108、センサ112、メモリ114、負荷132、回路134などのエアロゾル生成装置100Aの各コンポーネントに電力を供給する。電源110は、エアロゾル生成装置100Aの所定のポート(図示せず)を介して外部電源に接続することにより充電することができてもよい。電源110のみを本体102又はエアロゾル生成装置100Aから取り外すことができてもよく、新しい電源110と交換することができてもよい。また、本体102全体を新しい本体102と交換することによって電源110を新しい電源110と交換することができてもよい。
【0105】
センサ112は、回路134の全体又は特定の部分に印加される電圧の値、負荷132の抵抗値に関する値又は温度に関する値などを取得するために用いられる1つ又は複数のセンサを含んでもよい。センサ112は回路134に組み込まれてもよい。センサ112の機能が制御部106に組み込まれてもよい。センサ112はまた、空気取込流路120及び/又はエアロゾル流路121内の圧力の変動を検知する圧力センサ又は流量を検知する流量センサを含んでもよい。センサ112はまた、貯留部116Aなどのコンポーネントの重量を検知する重量センサを含んでもよい。センサ112はまた、エアロゾル生成装置100Aを用いたユーザによるパフの回数を計数するように構成されてもよい。センサ112はまた、霧化部118Aへの通電時間を積算するように構成されてもよい。センサ112はまた、貯留部116A内の液面の高さを検知するように構成されてもよい。制御部106及びセンサ112はまた、電源110のSOC(State of Charge,充電状態)、電流積算値、電圧などを求める又は検知するように構成されてもよい。SOCは、電流積算法(クーロン・カウンティング法)やSOC−OCV(Open Circuit Voltage,開回路電圧)法等によって求められてもよい。センサ112はまた、ユーザが操作可能な操作ボタンなどであってもよい。
【0106】
制御部106は、マイクロプロセッサ又はマイクロコンピュータとして構成された電子回路モジュールであってもよい。制御部106は、メモリ114に格納されたコンピュータ実行可能命令に従ってエアロゾル生成装置100Aの動作を制御するように構成されてもよい。メモリ114は、ROM、RAM、フラッシュメモリなどの記憶媒体である。メモリ114には、上記のようなコンピュータ実行可能命令のほか、エアロゾル生成装置100Aの制御に必要な設定データ等が格納されてもよい。例えば、メモリ114は、通知部108の制御プログラム(発光、発声、振動等の態様等)、霧化部118Aの制御プログラム、センサ112により取得及び/又は検知された値、霧化部118Aの加熱履歴等の様々なデータを格納してもよい。制御部106は、必要に応じてメモリ114からデータを読み出してエアロゾル生成装置100Aの制御に利用し、必要に応じてデータをメモリ114に格納する。
【0107】
図1Bは、本開示の一実施形態に係るエアロゾル生成装置100Bの構成の概略的なブロック図である。
【0108】
図示されるように、エアロゾル生成装置100Bは、図1Aのエアロゾル生成装置100Aと類似した構成を有する。但し、第2の部材104B(以下、「エアロゾル発生物品104B」又は「スティック104B」と呼ぶ)の構成は第1の部材104Aの構成とは異なっている。一例として、エアロゾル発生物品104Bは、エアロゾル基材116B、霧化部118B、空気取込流路120、エアロゾル流路121、吸口部122を含んでもよい。本体102内に含まれるコンポーネントの一部がエアロゾル発生物品104B内に含まれてもよい。エアロゾル発生物品104B内に含まれるコンポーネントの一部が本体102内に含まれてもよい。エアロゾル発生物品104Bは、本体102に対して挿抜可能に構成されてもよい。あるいは、本体102及びエアロゾル発生物品104B内に含まれるすべてのコンポーネントが、本体102及びエアロゾル発生物品104Bに代えて、同一の筐体内に含まれてもよい。
【0109】
エアロゾル基材116Bは、エアロゾル源を担持する固体として構成されてもよい。図1Aの貯留部116Aの場合と同様に、エアロゾル源は、例えば、グリセリンやプロピレングリコールといった多価アルコール、水などの液体であってもよい。エアロゾル基材116B内のエアロゾル源は、加熱することによって香喫味成分を放出するたばこ原料やたばこ原料由来の抽出物を含んでいてもよい。エアロゾル生成装置100Aがネブライザー等の医療用吸入器である場合、エアロゾル源はまた、患者が吸入するための薬剤を含んでもよい。エアロゾル基材116Bは、エアロゾル源が消費された際にエアロゾル基材116B自体を交換することができるように構成されてもよい。エアロゾル源は液体に限られるものではなく、固体でも良い。
【0110】
霧化部118Bは、エアロゾル源を霧化してエアロゾルを生成するように構成される。センサ112によって吸引動作が検知されると、霧化部118Bはエアロゾルを生成する。霧化部118Bは、電源110に電気的に接続された負荷を含むヒータ(図示せず)を備える。吸引動作が検知されると、制御部106は、霧化部118Bのヒータ又は当該ヒータへの給電を制御し、エアロゾル基材116B内に担持されたエアロゾル源を加熱することによって当該エアロゾル源を霧化する。霧化部118Bの別の例は、エアロゾル源を超音波振動によって霧化する超音波式霧化器であってもよい。霧化部118Bには空気取込流路120が接続され、空気取込流路120はエアロゾル生成装置100Bの外部へ通じている。霧化部118Bにおいて生成されたエアロゾルは、空気取込流路120を介して取り込まれた空気と混合される。エアロゾルと空気の混合流体は、矢印124で示されるように、エアロゾル流路121へと送り出される。エアロゾル流路121は、霧化部118Bにおいて生成されたエアロゾルと空気との混合流体を吸口部122まで輸送するための管状構造を有する。なお、エアロゾル生成装置100Bにおいては、エアロゾル発生物品104Bは、その内部に位置する又はその内部に挿入される霧化部118Bによって、その内部から加熱されるよう構成されている。これに代えて、エアロゾル発生物品104Bは、自身を包囲又は収納するように構成した霧化部118Bによって、その外部から加熱されるよう構成されていてもよい。
【0111】
制御部106は、本開示の実施形態に係るエアロゾル生成装置100A及び100B(以下、まとめて「エアロゾル生成装置100」とも呼ぶ)を様々な方法で制御するように構成される。
【0112】
エアロゾル生成装置においてエアロゾル源が不足しているときにユーザが吸引を行うと、ユーザに対して十分なエアロゾルを供給できない。加えて、電子たばこや加熱式たばこの場合、意図しない香喫味を有するエアロゾルが放出され得る(このような現象を「意図しない挙動」とも呼ぶ)。貯留部116A又はエアロゾル基材116B内のエアロゾル源が不足しているときに加えて、貯留部116Aにエアロゾル源が十分に残っているが保持部130内のエアロゾル源が一時的に不足しているときにも、意図しない挙動が生じ得る。本願発明者らは、エアロゾル源が不足するときに適切な制御を実行するエアロゾル生成装置並びにそれを動作させる方法及びプログラムを発明した。以下では、主として、エアロゾル生成装置が図1Aに示す構成を有する場合を想定して、本開示の各実施形態について詳しく説明する。但し、必要に応じて、エアロゾル生成装置が図1Bに示す構成を有する場合についても併せて説明する。エアロゾル生成装置が図1A及び図1Bの構成以外の様々な構成を有する場合にも本開示の実施形態を適用できることは当業者にとって明らかであろう。
【0113】
<第1の実施形態>
図2は、本開示の第1の実施形態による、エアロゾル生成装置100Aの一部に関する例示的な回路構成を示す図である。
【0114】
図2に示す回路200は、電源110、制御部106、センサ112A乃至D(以下、まとめて「センサ112」とも呼ぶ)、負荷132(以下、「ヒータ抵抗」とも呼ぶ)、第1回路202、第2回路204、第1電界効果トランジスタ(FET,Field Emission Transistor)206を含むスイッチQ1、変換部208、第2FET210を含むスイッチQ2、抵抗212(以下、「シャント抵抗」とも呼ぶ)を備える。なお、センサ112は、制御部106や変換部208などの他の構成要素に内蔵されていてもよい。例えばPTC(Positive Temperature Coefficient,正の温度係数特性)ヒータやNTC(Negative Temperature Coefficient,負の温度係数特性)ヒータを用いることで、負荷132の電気抵抗値は温度に応じて変化する。シャント抵抗212は、負荷132と直列に接続され、既知の電気抵抗値を有する。シャント抵抗212の電気抵抗値は温度に対して実質的に不変であってもよい。シャント抵抗212は負荷132より大きな電気抵抗値を有する。実施形態に応じて、センサ112C、112Dは省略されてもよい。FETだけでなく、iGBT、コンタクタなどの様々な素子をスイッチQ1及びQ2として用いることができることは当業者にとって明らかであろう。
【0115】
変換部208は、例えばスイッチング・コンバータであり、FET214、ダイオード216、インダクタンス218及びキャパシタ220を含み得る。変換部208が電源110の出力電圧を変換して、変換された出力電圧が回路全体に印加されるように、制御部106は変換部208を制御してもよい。また、図2に示した降圧型のスイッチング・コンバータに代えて、昇圧型のスイッチング・コンバータや昇降圧型のスイッチング・コンバータ、またはLDO(Linear DropOut)レギュレータなどを用いてもよい。なお、変換部208は必須のコンポーネントではなく、省略することも可能である。さらに、制御部106とは別体の不図示の制御部が、変換部208を制御するように構成されていてもよい。この不図示の制御部は、変換部208に内蔵されていてもよい。
【0116】
図1Aに示される回路134は、電源110と負荷132とを電気的に接続し、第1回路202及び第2回路204を含み得る。第1回路202及び第2回路204は、電源110及び負荷132に対して並列接続される。第1回路202はスイッチQ1を含み得る。第2回路204はスイッチQ2及び抵抗212(及び、オプションとして、センサ112D)を含み得る。第1回路202は第2回路204よりも小さい抵抗値を有してもよい。この例において、センサ112B及び112Dは電圧センサであり、それぞれ、負荷132及び抵抗212の両端の電圧値を検知するように構成される。しかし、センサ112の構成はこれに限定されない。例えば、センサ112は既知抵抗を用いた又はホール素子を用いた電流センサであってもよく、負荷132及び/又は抵抗212を流れる電流の値を検知してもよい。
【0117】
図2において点線矢印で示すように、制御部106は、スイッチQ1、スイッチQ2等を制御することができ、センサ112により検知された値を取得することができる。制御部106は、スイッチQ1をオフ状態からオン状態に切り替えることにより第1回路202を機能させ、スイッチQ2をオフ状態からオン状態に切り替えることにより第2回路204を機能させるように構成されてもよい。制御部106は、スイッチQ1及びQ2を交互に切り替えることにより、第1回路202及び第2回路204を交互に機能させるように構成されてもよい。
【0118】
第1回路202はエアロゾル源の霧化に用いられる。スイッチQ1がオン状態に切り替えられて第1回路202が機能するとき、ヒータ(すなわち、ヒータ内の負荷132)に電力が供給され、負荷132は加熱される。負荷132の加熱により、霧化部118A内の保持部130に保持されているエアロゾル源(図1Bのエアロゾル生成装置100Bの場合、エアロゾル基材116Bに担持されたエアロゾル源)が霧化されてエアロゾルが生成される。
【0119】
第2回路204は、負荷132に印加される電圧の値、負荷132の抵抗値に関連する値、抵抗212に印加される電圧の値等を取得するために用いられる。一例として、図2に示すように、センサ112B及び112Dが電圧センサである場合を考える。スイッチQ2がオンであり第2回路204が機能しているとき、電流はスイッチQ2、抵抗212及び負荷132を流れる。センサ112B及び112Dにより、それぞれ、負荷132に印加される電圧の値及び/又は抵抗212に印加される電圧の値が得られる。また、センサ112Dにより取得された抵抗212に印加される電圧の値と、抵抗212の既知の抵抗値Rshuntとを用いて、負荷132を流れる電流の値を求めることができる。変換部208の出力電圧Voutと当該電流値とに基づいて、抵抗212及び負荷132の抵抗値の合計値を求めることができるので、当該合計値から既知の抵抗値Rshuntを差し引くことにより、負荷132の抵抗値RHTRを求めることができる。負荷132が温度に応じて抵抗値が変わる正又は負の温度係数特性を有している場合、予め知られている負荷132の抵抗値と温度との間の関係と、上述のようにして求められたと負荷132の抵抗値RHTRとに基づいて、負荷132の温度を推定することができる。抵抗212を流れる電流の値を用いて負荷132の抵抗値や温度を推定できることが当業者に理解されよう。この例における負荷132の抵抗値に関連する値は、負荷132の電圧値、電流値等を含み得る。センサ112B及び112Dの具体例は電圧センサに限定されず、電流センサ(例えば、ホール素子)などの他の素子を含み得る。
【0120】
センサ112Aは、電源110の放電時又は無負荷時における出力電圧を検知する。センサ112Cは、変換部208の出力電圧を検知する。あるいは、変換部208の出力電圧は、予め定められた目標電圧であってもよい。これらの電圧は、回路全体に印加される電圧である。
【0121】
負荷132の温度がTHTRであるときの負荷132の抵抗値RHTRは、以下のように表すことができる。
HTR(THTR)=(VHTR×Rshunt)/(VBatt−VHTR
ここで、VBattは回路全体に印加される電圧である。変換部208を用いない場合、VBattは電源110の出力電圧である。変換部208を用いる場合、VBattは変換部208の目標電圧に該当する。VHTRはヒータに印加される電圧である。VHTRに代えて、シャント抵抗212に印加される電圧を用いてもよい。
【0122】
以下に述べるように、本実施形態によれば、制御部106は、回路の全体に印加される電圧(電源110の出力電圧又は変換部208の目標電圧)の値(以下、「第1電圧値」とも呼ぶ)と、回路のうち負荷132の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧(負荷132又はシャント抵抗212に印加される電圧)の値(以下、「第2電圧値」とも呼ぶ)とに基づき、貯留部116Aから供給可能なエアロゾル源(又は、エアロゾル基材116Bに担持されたエアロゾル源)が不足しているか否かを判定することができる。本実施形態によれば、従来のエアロゾル生成装置の構成に対して最小限のセンサを追加するだけで、エアロゾル源が不足しているか否かを判定することができる。特に変換部208を用いた場合は、負荷132の抵抗値RHTRを求める上述の式においてセンサ112から取得すべきパラメータが、ヒータに印加される電圧かシャント抵抗212に印加される電圧のみになり、他の値は定数としてメモリ114に格納すれば足りる。従って、センサ112の誤差が負荷132の抵抗値RHTRに与える影響を極限まで小さくできるため、意図しない挙動が生じているか否かの判別精度が大幅に向上する。
【0123】
図3は、本開示の一実施形態による、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する例示的な処理のフローチャートである。ここでは、制御部106がすべてのステップを実行するものとして説明を行う。しかし、一部のステップがエアロゾル生成装置100の別のコンポーネントによって実行されてもよいことに留意されたい。
【0124】
処理はステップ302において開始する。ステップ302において、制御部106は、圧力センサ、流量センサ等から得られた情報に基づいて、ユーザによる吸引が検知されたか否かを判定する。例えば、制御部106は、これらのセンサの出力値が連続的に変化する場合、ユーザによる吸引が検知されたと判断してもよい。あるいは、制御部106は、エアロゾルの生成を開始するためのボタンが押されたことなどに基づいて、ユーザによる吸引が検知されたと判断してもよい。
【0125】
吸引が検知されない場合(ステップ302の「N」)、ステップ302の処理が繰り返される。
【0126】
吸引が検知されたと判定されると(ステップ302の「Y」)、処理はステップ304に進む。ステップ304において、制御部106は、現在のカウント値が所定のカウント閾値(例えば、3)以上であるか否かを判定する。ここで、カウント値は、後述するステップ314において判定される第1条件(又は、第2条件)が満たされた回数を示す。カウント値は、メモリ114に格納されてもよい。
【0127】
カウント値がカウント閾値以上である場合(ステップ304の「Y」)、処理はステップ306に進む。ステップ306において、制御部106は、貯留部116Aから供給することが可能なエアロゾル源(又は、エアロゾル基材116Bに担持されたエアロゾル源)が不足していると判定する。処理はステップ308に進み、制御部106は、ユーザに対して異常(エアロゾル源の不足)を通知するための制御を実行する。例えば、制御部106は、ユーザに異常を知らせるための発光、表示、発声、振動などを行うよう、通知部108を動作させる。ステップ308の後、処理は終了する。この場合、エアロゾル生成装置100を用いて再びエアロゾルを生成するためには、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bを交換すること、又は貯留部116Aやエアロゾル基材116Bにエアロゾル源を再充填することなどが必要である。
【0128】
カウント値がカウント閾値未満である場合(ステップ304の「N」)、処理はステップ310に進む。ステップ310において、制御部106は、スイッチQ1をオンに切り替え、第1回路202を機能させる。その結果、負荷132に電力が供給され、エアロゾル源が霧化されてエアロゾルが生成される。
【0129】
処理はステップ312に進む。制御部106は、スイッチQ1をオフに切り替え、スイッチQ2をオンに切り替える。したがって、第2回路204が機能する。制御部106は、センサ112Bを用いて負荷132に印加される電圧の値を測定する。あるいは、制御部106は、センサ112Dを用いてシャント抵抗212に印加される電圧の値を測定してもよい。負荷132の電気抵抗値は温度に応じて変化するので、負荷132の温度が変化すると、負荷132に印加される電圧及びシャント抵抗212に印加される電圧は変化する。
【0130】
処理はステップ314に進み、制御部106は、ステップ312において測定された電圧値を所定の閾値(例えば、V)と比較して、測定電圧値がV以上であるか否かを判定する。ここで、Vは、負荷132の温度がエアロゾル源の沸点よりも高い所定温度になるときに負荷132に印加される電圧値とすることができる。なお、負荷132の温度がTHTRであるときの負荷132に印加される電圧VHTRは、以下のように表すことができる。
HTR(THTR)=IHTR(THTR)×RHTR(THTR
ここで、IHTR(THTR)は負荷132の温度がTHTRであるときの負荷132を貫流する電流である。この式は以下のように変形できる。
HTR(THTR)=VBatt/{Rshunt+RHTR(THTR)}×RHTR(THTR
=RHTR/{Rshunt+RHTR(THTR)}×VBatt
=1/{Rshunt/RHTR(THTR)+1}×VBatt
従って、負荷132の温度が上昇すれば、負荷132に印加される電圧が増加することとなる。
【0131】
あるいは、制御部は、負荷132に印加される電圧に代えて、シャント抵抗212に印加される電圧と所定の閾値をステップ314において比較してもよい。なお、シャント抵抗212に印加される電圧と所定の閾値を比較する際は、シャント抵抗212に印加される電圧が所定の閾値以下であるか否かを判定する必要があることに留意すべきである。これは、次のように説明することができる。まず、負荷132の温度がTHTRであるときのシャント抵抗212に印加される電圧Vshuntは、以下のように表すことができる。
shunt(THTR)=VBatt−VHTR(THTR
この式に対して、上述した負荷132の温度がTHTRであるときの負荷132に印加される電圧VHTRを代入すれば、この式は以下のように変形できる。
shunt(THTR)=VBatt−1/{Rshunt/RHTR(THTR)+1}×VBatt
=[1−1/{Rshunt/RHTR(THTR)+1}]×VBatt
従って、負荷132の温度が上昇すれば、負荷132に印加される電圧が減少することとなる。つまり、後に続くステップ318における高温警告の通知や、ステップ320における負荷132への給電を禁止又は停止を実行するか否かを判断するためには、シャント抵抗212に印加される電圧が、所定の閾値以下であるか否かを判定する必要がある。
【0132】
ステップ314において、制御部106は、第1電圧値(回路全体に印加される電圧の値)が一定になるように制御されている間の第2電圧値(負荷132に印加される電圧の値又はシャント抵抗212に印加される電圧の値)が第1条件を満たすか否かを判定してもよい。なお、前述した通り、第2電圧値に負荷132に印加される電圧の値を用いる場合の第1条件はV以上であるか否かであり、第2電圧値にシャント抵抗212に印加される電圧の値を用いる場合の第1条件はV以下であるか否かである。あるいは、制御部106は、第1電圧値と第2電圧値とから導出される負荷132の電気抵抗値が第2条件を満たす(所定の抵抗値R以上である)か否かを判定してもよい。第1条件又は第2条件が複数回満たされた場合、ステップ304の後に処理がステップ306に進み、エアロゾル源が不足していると判定されてもよい。この構成によれば、所定の条件が複数回満たされた場合にエアロゾル源が不足していると判定される。センサ112の出力値に混ざるノイズ、センサ112の分解能、貯留部116Aやエアロゾル基材116Bの全体には十分な量のエアロゾル源が残っているにも関わらず吸引の仕方に起因する保持部130又はエアロゾル基材116Bの少なくとも一部における乾燥などの要因によって、所定の条件が満たされてもエアロゾル源が不足していない場合がある。したがって、条件が1回満たされただけでエアロゾル源が不足していると判定される場合と比較して、エアロゾル源の不足の検出精度が向上する。
【0133】
図2に示す変換部208(スイッチングコンバータなど)を用いる場合、電源110の出力電圧を変換して、変換された出力電圧が回路全体に印加されるように、制御部106は変換部208を制御する。制御部106は、一定電圧を出力するように変換部208を制御する。これにより、第1電圧が安定し、電源110の電圧そのものを印加する場合と比較して、エアロゾル源が不足しているか否かについての検出の精度が向上する。この場合、ステップ314において第1条件が判定されてもよい。すなわち、第2電圧値のみを用いてエアロゾル源が不足しているか否かを判断してもよい。他方、変換部208を用いない場合、ステップ314において第2条件が判定されてもよい。
【0134】
この例において、制御部106は、上記一定電圧の値である第1電圧値とセンサ112B又は112Dから出力される第2電圧値とに基づき、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する。制御部106は、センサ112B又は112Dから出力される第2電圧値と既定の閾値との比較に基づいて、エアロゾル源が不足しているか否かを判定してもよい。この場合には第2電圧のみを検出すれば良いので、ノイズが入り込む余地が減り、検出精度が向上する。
【0135】
センサ112Bは、参照電圧と、増幅された負荷132に印加される電圧との間の比較に基づき、第2電圧値を出力するように構成されてもよい。例えば、センサ112Bは、アナログ値である参照電圧と、アナログ値である負荷132に印加された電圧の増幅値との間の差分(アナログ値)をとり、当該差分をデジタル値に変換してもよい。当該デジタル値が上述の第2電圧値として用いられてもよい。
【0136】
一例において、第1電圧値はメモリ114に格納されていてもよい。制御部106は、第1電圧値及び第2電圧値を、メモリ114及びセンサ112B又は112Dから、それぞれ取得してもよい。
【0137】
変換部208を用いない場合、センサ112Aとセンサ112B又はセンサ112Dとを用いて、第1電圧値及び第2電圧値がそれぞれ出力される。制御部106は、これらのセンサから得られる出力値から導出される負荷132の電気抵抗値と既定の閾値との間の比較に基づいて、エアロゾル源が不足しているか否かを判定してもよい。
【0138】
測定電圧値がV未満である場合(ステップ314の「N」)、処理はステップ316に進む。ステップ316において、制御部106は、カウント値をリセットしてもよい。例えば、制御部106は、カウント値を初期値に戻してもよい。
【0139】
このように、処理300において、制御部106は、第1条件が満たされない場合又は第2条件が満たされない場合、カウント値を初期値(例えば、ゼロ)に戻してもよい。これにより、保持部130の一時的な乾燥などによって1回だけ条件が満たされてしまった場合でも、その後の検出精度を担保できる。
【0140】
測定電圧値がV以上である場合(ステップ314の「Y」)、処理はステップ318に進む。この場合、負荷132の温度が必要以上に高くなっていることになる。ステップ318において、制御部106は、高温警告を通知する。例えば、制御部106は、通知部108を所定の態様で動作させることにより当該警告を通知してもよい。
【0141】
処理はステップ320に進み、制御部106は、負荷132への給電を禁止又は停止する。次いでステップ322において、制御部106はカウント値を増加させる。例えば、制御部106は、カウント値を1だけ増やす。ステップ322の後、処理はステップ302の前に戻る。なお、ステップ318と320は省略できる。
【0142】
処理300において、制御部106は、上記の第1条件が連続して複数回満たされた場合、又は上記の第2条件が連続して複数回満たされた場合に、エアロゾル源が不足していると判定してもよい。これにより、エアロゾル源不足の検出の精度がさらに向上する。なお、ステップ322の後にステップ302においてユーザによる吸引が検知されることを待たずに、ステップ304の判定を行ってもよい。
【0143】
図3の実施形態によれば、回路の全体に印加される電圧の値である第1電圧値と、回路のうち負荷132の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧の値である第2電圧値と、に基づき、貯留部116Aから供給可能なエアロゾル源又はエアロゾル基材116Bに保持されたエアロゾル源が不足しているか否かを判定することができる。すなわち、貯留部116Aから供給可能なエアロゾル源又はエアロゾル基材116Bに保持されたエアロゾル源の残量を推定することができる。
【0144】
図4は、本開示の別の実施形態による、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する例示的な処理のフローチャートである。
【0145】
図4におけるステップ402〜418の処理は図3におけるステップ302〜318の処理と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0146】
ステップ418の後、処理はステップ419に進む。ステップ419において、制御部106は、ステップ412において測定された負荷132に印加される電圧値が所定の閾値(V)以上であるか否かを判定する。Vは、負荷132の温度がVよりもさらに高い所定温度になるときに負荷132に印加される電圧値とすることができる。なお、前述した通り、負荷132に印加される電圧値に代えてシャント抵抗212に印加される電圧値を用いる場合は、VはVよりも小さな値であり、シャント抵抗212に印加される電圧値がV以下であるか否かを判定することに留意すべきである。
【0147】
測定電圧値がV以上である場合(ステップ419の「Y」)、処理はステップ406及び408へと進み、その後終了する。
【0148】
測定電圧値がV未満である場合(ステップ419の「N」)、処理はステップ420に進む。ステップ420及び422の処理はステップ320及び322の処理と同様であるので、説明を省略する。なお、ステップ422の後にステップ402においてユーザによる吸引が検知されることを待たずに、ステップ404の判定を行ってもよい。
【0149】
このように、処理400において、制御部106は、第1電圧値及び第2電圧値に基づく第1基準(ステップ414)及び該第1基準と異なる第2基準(ステップ419)を用いて、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する。制御部106は、第1基準が複数回満たされた場合、又は第2基準が該複数回よりも少ない回数満たされた場合に、エアロゾル源が不足していると判定する。第2基準は第1基準よりも満たされにくい。これにより、処理400は2段階の判断基準を有するので、エアロゾルが不足しているか否かの即座の判定が可能となり、エアロゾル生成装置100の品質が向上する。
【0150】
一例において、第2電圧値として負荷132に印加される電圧値を用いる場合、第1基準は、第1電圧値が一定になるように制御されている間の第2電圧値が第1閾値を満たす(例えば、V以上である)か否か、又は第1電圧値と第2電圧値から導出される負荷132の電気抵抗値が第2閾値を満たす(例えば、所定の閾値R以上である)か否かであってもよい。第2電圧値として負荷132に印加される電圧値を用いる場合、第2基準は、第2電圧値が第1閾値よりも大きな閾値を満たすか否か、又は負荷132の電気抵抗値が第2閾値よりも大きな閾値を満たすか否かであってもよい。
【0151】
一例において、第2電圧値としてシャント抵抗212に印加される電圧値を用いる場合、第1基準は、第1電圧値が一定になるように制御されている間の第2電圧値が第1閾値を満たす(例えば、V以下である)か否か、又は第1電圧値と第2電圧値から導出される負荷132の電気抵抗値が第2閾値を満たす(例えば、所定の閾値R以上である)か否かであってもよい。第2電圧値としてシャント抵抗212に印加される電圧値を用いる場合、第2基準は、第2電圧値が第1閾値よりも小さな閾値を満たすか否か、又は負荷132の電気抵抗値が第2閾値よりも大きな閾値を満たすか否かであってもよい。
【0152】
図4の処理400の変形例として、ステップ414よりもステップ419が先に実行されてもよい。すなわち、制御部106は、第2基準が満たされたか否かを第1基準が満たされたか否かよりも前に判定するように構成されてもよい。
【0153】
一例において、制御部106は、第2基準が満たされ且つエアロゾル源が不足していると判定された場合、第1基準が満たされたか否かを判定せずに、電源110から負荷132への給電の停止又はユーザへの通知の少なくとも一方を行ってもよい。
【0154】
図5は、本開示の別の実施形態による、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する例示的な処理のフローチャートである。
【0155】
図5におけるステップ502〜514及び518〜522の処理は図3におけるステップ302〜314及び318〜322の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0156】
ステップ514において、負荷132に印加される電圧値である測定電圧値がV未満である場合(ステップ514の「N」)、処理はステップ516に進む。ステップ516において、制御部106は、カウント値をリセットするのではなく、カウント値を減少させる。例えば、ステップ516の処理の前のカウント値が2である場合、制御部106は、当該カウント値を1だけ減らして1に設定してもよい。なお、測定電圧値としてシャント抵抗212に印加される電圧値を用いる場合、測定電圧値がVを越える場合(ステップ514の「N」)、処理はステップ516に進むことに留意すべきである。
【0157】
このように、処理500において、制御部は、第1条件が満たされた回数又は第2条件が満たされた回数を記憶し、第1条件が満たされない場合又は第2条件が満たされない場合、当該回数を減らしてもよい。これにより、保持部130の一時的な乾燥などによって1回だけ条件が満たされてしまった場合でも、その後の検出精度を担保できる。
【0158】
一例において、エアロゾル生成装置100は、貯留部116Aを含むカートリッジ104A又はエアロゾル基材116Bを含むエアロゾル発生物品104Bの脱着を可能にし、且つカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bの脱着の検出を可能にする接続部を備えてもよい。例えば、エアロゾル生成装置100は、上記脱着のために使用される物理スイッチ、脱着を検知する磁気検知部などを備えてもよい。制御部106は、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104BのIDを認証する機能を有してもよい。制御部106は、物理スイッチが作動したこと、磁気検知部が磁場の変化を検知したこと、装着されるカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104BのIDが変わったことなどに基づいて、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bの脱着を検出してもよい。制御部106は、第1条件が満たされた回数又は第2条件が満たされた回数を記憶し、接続部へのカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bの装着を契機に、この回数を減らすよう構成されてもよい。この例では、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bが交換されるとカウント値が減少する。したがって、交換前のカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bについて記憶されていたカウント値を継承する必要がないので、新たなカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bに対する検出精度が向上する。
【0159】
上記の例において、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bの識別情報又は使用履歴は、既定の方法で取得することが可能であってもよい。制御部106は、接続部に装着されたカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bの識別情報又は使用履歴に基づき、上記回数を減らすか否かを判断してもよい。例えば、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bが新品に交換されると、カウント値が減少してもよい。したがって、同じカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bが再度接続された場合には回数がリセットされないので、このカートリッジに対する検出精度が向上する。
【0160】
図6は、本開示の実施形態における、ユーザの吸引パターンが想定外のパターンであるときに実行される例示的な処理のフローチャートである。図6の処理は、図3乃至図5において説明した本開示の実施形態の処理において、任意の適切な段階で実行され得る。
【0161】
ステップ602において、制御部106は、流量センサ、圧力センサ等を用いて、ユーザの吸引パターンを測定する。
【0162】
処理はステップ604に進み、制御部106は、測定された吸引パターンが想定外の吸引パターンであるか否かを判定する。例えば、制御部106は、測定された吸引パターンを、メモリ114に記憶されている通常の吸引パターンと比較することによって当該判定を実行してもよい。通常の吸引パターンは、ガウス分布などの、当業者に知られた様々なパターンを含み得る。制御部106は、測定された吸引パターンの高さ、裾野の長さ、吸引と次の吸引との間の間隔などが、通常の吸引パターンにおける通常の値に対して所定の閾値だけ乖離しているか否かに基づいて、ステップ604の判定を実行してもよい。
【0163】
測定された吸引パターンが想定外の吸引パターンである場合(ステップ604の「Y」)、処理はステップ606に進む。ステップ606において、制御部106は、ステップ304、404及び504において用いられるカウント閾値を増加させてもよい。あるいは、制御部106は、ステップ322、422及び522においてカウント値を増加させないよう、処理の内容を変更してもよい。あるいは、制御部106は、ステップ322、422及び522において用いられるカウント値の増加量を少なくしてもよい。
【0164】
測定された吸引パターンが想定外の吸引パターンでない場合(ステップ604の「N」)、処理はステップ608に進む。ステップ608において、制御部106は、ステップ606において行われるような設定変更を実行しない。
【0165】
このように、本実施形態において、制御部106は、エアロゾルの生成に対する要求の時系列的な変化が既定の正常な変化に合致せずに、第1条件又は第2条件が満たされた場合、既定の閾値(カウント閾値)を増加させること、回数(カウント値)を増加させないこと、又は回数(カウント値)の増加量を減らすことなどを実行してもよい。これにより、1回の吸引が長時間に亘る場合、吸引間のインターバルが短い場合など、ユーザの吸引がイレギュラーであるときに第1条件又は第2条件が満たされたとしても、エアロゾル源が不足しているか否かに関する検出精度が向上する。
【0166】
上述の説明において、本開示の第1の実施形態は、エアロゾル生成装置及びエアロゾル生成装置を動作させる方法として説明された。しかし、本開示が、プロセッサにより実行されると当該プロセッサに当該方法を実行させるプログラム、又は当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として実施され得ることが理解されよう。
【0167】
<第2の実施形態>
本開示の第1の実施形態に関して説明されたように、図1A乃至図2に示す構成を有するエアロゾル生成装置100を図3乃至図6に示す処理に従って動作させることにより、エアロゾル源が不足しているか否かを判定する(エアロゾル源の残量を推定する)ことができる。
【0168】
エアロゾル源が不足している状態は、貯留部116Aに貯留されているエアロゾル源が枯渇した状態、保持部130に保持されるエアロゾル源が一時的に枯渇した状態、及びエアロゾル発生物品104B(スティック104B)に保持されていたエアロゾル源が枯渇してエアロゾル基材116Bが乾燥した状態を含む。
【0169】
本開示の第1の実施形態によるエアロゾル生成装置100は、必要とされるコンポーネントの数が少なく、エアロゾル源の不足に関する検知精度が高いので、従来技術と比較して優位性を有する。しかし、負荷132に印加される電圧を測定するためのセンサ112Bは製品誤差を有する。電源110の出力電圧を測定するためのセンサ112Aもまた製品誤差を有する。さらに、非平衡状態(分極状態)における電源110の出力電圧は揺らぎやすい。本願発明者らは、これらの製品誤差等が本開示のエアロゾル生成装置100による検知精度に影響を与えることを、解決すべきさらなる課題として認識した。本開示の第2の実施形態は、このさらなる課題を解決し、エアロゾル源が不足しているか否かに関する検知精度がさらに改善されたエアロゾル生成装置を提供するものである。
【0170】
本実施形態によるエアロゾル生成装置100の基本的な構成は、図1A及び図1Bに示されるエアロゾル生成装置100及び図2に示される回路200の構成と同様である。
【0171】
エアロゾル生成装置100は、電源110、電源110からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する負荷132、負荷132がエアロゾル源を霧化するために用いられる第1回路202、負荷132の温度変化によって変わる電圧を検出するために用いられ、第1回路202と並列接続され、且つ第1回路202よりも電気抵抗値が大きい第2回路204、第2回路204及び負荷132に印加される電圧の値を取得する取得部、並びに、負荷132の温度変化によって変わる電圧の値を出力するセンサ112B又は112Dを備える。エアロゾル生成装置100は、スイッチングコンバータなどの変換部208を有してもよいし、有していなくてもよい。
【0172】
負荷(ヒータ)132の抵抗値は、以下の数式により表すことができる。
HTR(THTR)=(VHTR×Rshunt)/(VBatt−VHTR
=(VBatt−Vshunt)×Rshunt/Vshunt
ここで、RHTRは負荷132の電気抵抗値、THTRは負荷132の温度、VHTRは負荷132に印加される電圧の値、Rshuntはシャント抵抗212の電気抵抗値、VBattは電源110の出力電圧、Vshuntはシャント抵抗212に印加される電圧の値である。エアロゾル生成装置100が変換部208を有する場合、VBattは変換部208の出力電圧である。負荷132の電気抵抗値は負荷132の温度変化に応じて変化するので、負荷132に印加される電圧の値も負荷132の温度変化に応じて変化する。したがって、シャント抵抗212に印加される電圧の値もまた、負荷132の温度変化に応じて変化する。
【0173】
エアロゾル生成装置100が変換部208を有さない場合、上述の取得部は、電源110の出力電圧を検出するセンサ112Aであってもよい。エアロゾル生成装置100が変換部208を有する場合、一定となるように制御される変換部208の出力電圧の設定値がメモリ114に格納されてもよい。この場合、取得部は、当該設定値をメモリ114から読み出すリーダであってもよい。
【0174】
第2回路204はシャント抵抗212を含み、シャント抵抗212は既知の電気抵抗値を有する。シャント抵抗212は負荷132と直列に接続される。センサ112B及びセンサ112Dは、負荷132の温度変化によって変わる電圧の値として、それぞれ、負荷132及びシャント抵抗212に印加される電圧の値を出力する。
【0175】
本開示の第1の実施形態に関して述べたように、負荷132又はシャント抵抗212に印加される電圧値は、エアロゾル源が不足しているか否かを判定するために用いることができる。当該電圧値を得るために用いられる第2回路204は、シャント抵抗212を有するので、エアロゾルの生成に用いられる第1回路202よりも大きな電気抵抗値を有する。
【0176】
本実施形態において、シャント抵抗212は負荷132よりも大きな電気抵抗値を有することが好ましい。エアロゾル生成装置100は、センサ112Bを用いて負荷132に印加される電圧の値を測定することが好ましい。そして、参照電圧の値と、増幅された負荷132に印加される電圧の値との間の比較に基づいて、負荷132の温度変化によって変わる電圧の値が求められる。以下、具体例に基づいて説明する。
【0177】
常温を25℃、エアロゾル源の沸点を200℃、エアロゾル源が不足していると判断されるとき(過熱状態)の負荷132の温度を350℃と仮定する。スイッチQ2がオン状態にあり、第2回路204が機能しているとき、第2回路204に含まれるシャント抵抗212を貫流する電流値は、シャント抵抗212と直列に接続される負荷132を貫流する電流値に等しい。このときの電流値IQ2は以下のように表すことができる。
Q2=Vout/(RHTR(THTR)+RShunt
ここで、Voutは互いに直列に接続されたシャント抵抗212と負荷132が構成する合成抵抗に印加される電圧の値である。なお、エアロゾル生成装置100が変換部208を有さない場合、Voutは電源110の出力電圧に相当する。また、エアロゾル生成装置100が変換部208を有する場合、Voutは変換部208の出力電圧に相当する。常温の場合のIQ2と過熱状態の場合のIQ2との間の差分ΔIQ2は以下のように表される。
ΔIQ2=Vout/(RHTR(TR.T.)+RShunt)−Vout/(RHTR(Tdelep.)+RShunt
ここで、RHTR(TR.T.)は常温における負荷132の抵抗値であり、RHTR(Tdelep.)は過熱状態における負荷132の抵抗値である。一例として、Vout=2.0V、RHTR(TR.T.)=1Ω、RHTR(Tdelep.)=2Ω、RShunt=199Ωであるとき、ΔIQ2=0.05mAとなる。また、常温のときに第2回路204を貫流する電流値はIQ2(TR.T.)=10.00mAと計算される。過熱状態のときに第2回路204を貫流する電流値はIQ2(Tdelep.)=9.95mAと計算される。
【0178】
この例において、常温状態及び過熱状態においてシャント抵抗212に印加される電圧は、それぞれ、VShunt(TR.T.)=1990.00mV、VShunt.(Tdelep.)=1980.05mVである。両者の差は|ΔVShunt|=9.95mVである。他方、常温状態及び過熱状態において負荷132に印加される電圧は、それぞれ、VHTR(TR.T.)=10.00mV、VHTR(Tdelep.)=19.90mVである。両者の差は|ΔVHTR|=9.90mVである。
【0179】
図7は、一実施形態による、負荷132の温度変化によって変わる電圧の値を求めるための回路構成を示す。図7に示す回路700は、図2に示される回路200の一部を構成する、第1回路202、第2回路204、スイッチQ1及びQ2、シャント抵抗212、負荷132、センサ112B及び112Dに加えて、比較器702、アナログ/デジタル変換器704、増幅器706及び708、参照電圧用の電源710を備えている。回路700は、センサ112B及び112Dの両方を備える必要はなく、いずれか一方を有していればよい。回路700はまた、増幅器706及び708の両方を備える必要はなく、いずれか一方を有していればよい。
【0180】
回路700において、第2回路204が機能しているとき(電流が矢印で示されるように流れるとき)、電源710から出力される参照電圧Vref(アナログ値)と、シャント抵抗212又は負荷132に印加される電圧(アナログ値)との間の差分(アナログ値)が比較器702によって得られる。A/D変換器704を用いて当該差分をデジタル値に変換することにより、負荷132の温度変化によって変わる電圧の値が求められる。参照電圧Vrefは5.0V程度とすることができる。この参照電圧と比較する際には、シャント抵抗212又は負荷132に印加される電圧値が、参照電圧に近い値まで増幅されることが好ましい。この例において、シャント抵抗212に印加される電圧は1980.05mV〜1990.00mVであるので、参照電圧との比較のために可能な増幅率は2倍程度である。したがって、常温状態における印加電圧と過熱状態における印加電圧との間の差分9.95mVもまた2倍程度にしか増幅されない。これに対して、負荷132に印加される電圧は10.00mV〜19.90mVであるので、参照電圧との比較のために可能な増幅率は200倍程度にもなる。したがって、常温状態における印加電圧と過熱状態における印加電圧との間の差分9.90mVもまた200倍程度に増幅できる。したがって、シャント抵抗212の印加電圧を測定する場合よりも、負荷132の印加電圧を測定する場合の方が、常温状態と過熱状態とを区別する精度が高い。したがって、負荷132の印加電圧を測定することにより、エアロゾル源の不足の検出精度が向上する。
【0181】
一例において、エアロゾル生成装置100は、電源110の出力電圧を変換して、当該変換された出力電圧を第2回路204及び負荷132に印加する変換部208を備える。この場合、取得部は、電流が第2回路204を貫流している間に、変換部208の出力電圧の目標値を取得してもよい。例えば、取得部は、メモリ114に格納されている当該目標値を取得してもよい。この構成によれば、回路全体に印加される電圧をセンサによって測定する必要はない。
【0182】
一例において、変換部208は、第1回路202及び第2回路204が接続されるノードのうち高電圧側のノードと、電源110との間に接続される。これにより、エアロゾル生成のための第1回路202及び電圧計測のための第2回路204の上流に変換部208が配置される。したがって、エアロゾル生成の際にも、負荷132に印加される電圧を高度に制御することができるので、エアロゾル生成装置100によって生成されるエアロゾルに含まれる香喫味成分等が安定する。
【0183】
一例において、変換部208は、入力される電圧を降圧して出力することが可能なスイッチング・レギュレータ(バック・コンバータ)である。レギュレータの中でも、スイッチング・レギュレータを用いることにより、電圧変換の効率が向上する。さらに、回路に過電圧が印加されることを抑制できる。なお、第1回路202を機能させる際には、変換部208であるスイッチング・レギュレータがスイッチングを停止して、入力された電圧を変換せずにそのまま出力するように、制御部106は変換部208を制御してもよい。いわゆる直結モードで変換部208を制御することで、変換部208における遷移損失とスイッチング損失が無くなるため、電源110の蓄えた電力の利用効率が向上する。
【0184】
一例において、エアロゾル源を貯留する貯留部116A及び負荷132は、接続部を介してエアロゾル生成装置100に脱着可能なカートリッジ104Aに含まれてもよい。他方、センサ112Bはカートリッジ104Aに含まれず、本体102に含まれてもよい。すなわち、センサ112Bは、負荷132の温度変化によって変わる電圧の値として、負荷132及び接続部に印加される電圧の値を出力するように構成されてもよい。これにより、使い捨てされるカートリッジ104Aのコストを低減することができる。
【0185】
一例において、エアロゾル源を保持するエアロゾル基材116Bは、エアロゾル生成装置100に挿抜可能なエアロゾル発生物品104Bに含まれてもよい。他方、センサ112Bはエアロゾル発生物品104Bに含まれず、本体102に含まれてもよい。これにより、使い捨てされるエアロゾル発生物品104Bのコストを低減することができる。
【0186】
以下、本実施形態におけるシャント抵抗212の電気抵抗値について検討する。
【0187】
シャント抵抗212の電気抵抗値が大きすぎると、負荷132やシャント抵抗212の電圧値や抵抗値の計測時に電流が流れにくくなる。その結果、電流値はセンサの誤差に埋もれてしまう。その結果、電圧値や抵抗値を正確に計測することが困難になる。
【0188】
上記の問題を回避するため、一例において、シャント抵抗212の電気抵抗値(並びに、回路全体に印加される電圧及び負荷132の電気抵抗値)は、電流が第2回路204を貫流している状態を電流が第2回路204を貫流していない状態から区別することを可能にする大きさを有する電流が、第2回路204を貫流するような値を有するように設定されてもよい。これにより、センサ112Bやセンサ112Dの出力値がノイズに埋もれない程度の大きさとなる。したがって、エアロゾル源が不足しているか否かに関する誤検知を防止できる。
【0189】
電源110が劣化するに従って、電源110の出力電圧は低下する。したがって、第2回路204が機能しているときに第2回路204を貫流する電流の値も減少していく。電源110の電圧が放電終止電圧(残量0%)である場合においても、センサ112Bやセンサ112Dの出力値がノイズに埋もれない程度の大きさを有することが望ましい。この目的のため、一例において、シャント抵抗212の電気抵抗値(並びに、回路全体に印加される電圧及び負荷132の電気抵抗値)は、電流が第2回路204を貫流している状態を電流が第2回路204を貫流していない状態から区別することを可能にする大きさを有する電流が、電源110の電圧が放電終止電圧である場合に第2回路204を貫流するような値を有するように設定されてもよい。これにより、エアロゾル源が不足しているか否かに関する誤検知を防止できる。
【0190】
既に述べたように、エアロゾル生成装置100は、電源110の出力電圧を変換して、変換された電圧を第2回路204及び負荷132に印加する、変換部208を備えてもよい。この場合、シャント抵抗212の電気抵抗値(並びに、回路全体に印加される電圧及び負荷132の電気抵抗値)は、電流が第2回路204を貫流している状態を電流が第2回路204を貫流していない状態から区別することを可能にする大きさを有する電流が、変換部208の出力電圧が第2回路204及び負荷132に印加されている場合に第2回路204を貫流するような値を有するように設定されてもよい。これにより、エアロゾル源が不足しているか否かに関する誤検知を防止できる。
【0191】
一例において、シャント抵抗212の電気抵抗値(並びに、回路全体に印加される電圧及び負荷132の電気抵抗値)は、電流が第2回路204を貫流している状態を電流が第2回路204を貫流していない状態から区別することを可能にする大きさを有する電流が、負荷132の温度がエアロゾル源の不足時のみに到達可能な温度である場合に第2回路204を貫流するような値を有する。これにより、エアロゾル源が不足していて電流が最も流れにくい状態であっても、誤検知を防止できる。
【0192】
シャント抵抗212の電気抵抗値が小さすぎると、第2回路204を用いて負荷132の電圧値を測定する際に負荷132に必要以上の電力が供給され、エアロゾルが生成されてしまうおそれがある。この場合、エアロゾル源が無駄に消費されることになる。
【0193】
上記の問題を解決するため、一例において、シャント抵抗212の電気抵抗値(並びに、回路全体に印加される電圧及び負荷132の電気抵抗値)は、電流が第2回路204を貫流している間に、負荷132へ負荷132の保温に必要な電力のみが給電されるような値を有するように設定されてもよい。別の例において、シャント抵抗212の電気抵抗値(並びに、回路全体に印加される電圧及び負荷132の電気抵抗値)は、電流が第2回路204を貫流している間に、負荷132がエアロゾルを生成しないような値を有するように設定されてもよい。これらの構成により、エアロゾル源が無駄に消費されることを防止できる。
【0194】
一例として、電流が第2回路204を貫流している間に、負荷132へ負荷132の保温に必要な電力のみが給電されるようなシャント抵抗212の電気抵抗値を、エアロゾル生成装置100Aに関して検討する。まず、単位時間あたりに負荷132の保温のために必要な熱量Qは以下のように表される。
Q=(mwick×Cwick)×(TB.P.−ΔTwick
+(mcoil×Ccoil)×(TB.P.−ΔTcoil
+(mliquid×Cliquid)×(TB.P.−ΔTliquid
wick,mcoil,mliquidは、それぞれ保持部130,負荷132,保持部130に保持されるエアロゾル源の質量である。Cwick,Ccoil,Cliquidは、それぞれ保持部130,負荷132,保持部130に保持されるエアロゾル源の比熱である。−ΔTwick,−ΔTcoil,−ΔTliquidは、それぞれ保持部130,負荷132,保持部130の単位時間あたりの温度低下である。また、TB.P.はエアロゾル源の沸点である。
【0195】
なお、簡略化のためΔTwick,ΔTcoil,ΔTliquidが全て同一値のΔTと見做してもよい。この場合のQは以下のように表される。
Q=(mwick×Cwick+mcoil×Ccoil+mliquid×Cliquid
×(TB.P.−ΔT)
かっこの中をΣm×Cとすれば、Qは以下のように表される。
Q=(Σm×C)×(TB.P.−ΔT)
【0196】
また、電流が第2回路204を貫流している間に、負荷132において消費される電力Wは以下の式で表せられる。
W=VHTR×IQ2
=(Vout−Vshunt)×IQ2
=(Vout−IQ2×RShunt)×IQ2
ここで、VHTRは負荷132に印加される電圧の値,IQ2は第2回路を貫流する電流の値,Voutは互いに直列に接続されたシャント抵抗212と負荷132が構成する合成抵抗に印加される電圧の値,Vshuntはシャント抵抗212に印加される電圧の値,RShuntはシャント抵抗212の電気抵抗値である。
【0197】
つまり、電流が第2回路204を貫流している間に、負荷132へ負荷132の保温に必要な電力のみが給電されるようにするためには、以下の等式を満たす必要がある。
W=Q
Wに上述の式を代入して、シャント抵抗212の電気抵抗値RShuntについて解けば以下のように表される。
(Vout−IQ2×RShunt)×IQ2=Q
−Rshunt×IQ2+Vout×IQ2=Q
shunt=Vout/IQ2−Q/IQ2
=(Vout/VHTR)×RHTR−(RHTR/VHTR×Q
従って、上式が満たされるようにシャント抵抗212の電気抵抗値(並びに、回路全体に印加される電圧及び負荷132の電気抵抗値)を設定すればよい。なお、VHTRはVoutに1より小さい所定の係数を掛けた値と見做してもよい。また、本検討は理想的なモデルを用いており、且つ近似を行っているため、上式に補正項として機能する±Δを導入してもよい。
【0198】
スイッチ(開閉器)Q1は第1回路202の電気的導通を断接するために用いられる。スイッチQ2は第2回路204の電気的導通を断接するために用いられる。一例において、制御部106は、スイッチQ1がスイッチQ2よりも長いオン時間でスイッチングされるように、スイッチQ1及びQ2を制御してもよい。スイッチQ2がオン状態に切り替えられてからオフ状態に切り替えられるまでの時間(オン時間)は、制御部106が達成可能な最小時間とすることができる。このような構成によれば、負荷132又はシャント抵抗212の電圧を測定するためにスイッチQ2がオン状態にされる時間は、エアロゾルを生成するためにスイッチQ1がオン状態にされる時間より短い。したがって、エアロゾル源の無駄な消費を抑制できる。
【0199】
一例として、本実施形態に係るエアロゾル生成装置は、以下のステップを含む方法により製造されてもよい。
・電源110からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する負荷132を配置するステップ
・負荷132がエアロゾル源を霧化するために用いられる第1回路202を形成するステップ
・負荷132の温度変化によって変わる電圧を検出するために用いられ、第1回路202と並列接続され、且つ第1回路202よりも電気抵抗値が大きい第2回路204を形成するステップ
・第2回路204及び負荷132に印加される電圧の値を取得する取得部を配置するステップ
・負荷132の温度変化によって変わる電圧の値を出力するセンサ112B(又はセンサ112D)を配置するステップ
【0200】
<第3の実施形態>
貯留部116Aに貯留されるエアロゾル源が不足する場合には、カートリッジ104Aを交換する必要がある。同様に、エアロゾル基材116Bに担持されるエアロゾル源が不足する場合には、エアロゾル発生物品104Bを交換する必要がある。カートリッジ104A(又はエアロゾル発生物品104B)に含まれるヒータ(負荷132)の抵抗値は製造ばらつきを有する。したがって、エアロゾル源の不足を検知するためにすべてのカートリッジ104Aに対して同じ設定(例えば、負荷132の抵抗値に関する閾値、負荷132の電圧値に関する閾値など)を用いると、エアロゾル源の不足を精度良く検知できないことがあり得る。この場合、エアロゾル生成装置100が意図しない挙動をするなど、安全性の観点で問題が生じ得る。本願発明者らは、このような問題を新たな課題として認識した。本開示の第3の実施形態は、この新たな課題を解決し、エアロゾル源が不足しているか否かに関する検知精度がさらに改善されたエアロゾル生成装置を提供するものである。
【0201】
図8は、エアロゾル源の不足を検知するための例示的な処理のフローチャートである。ここでは、制御部106がすべてのステップを実行するものとして説明を行う。しかし、一部のステップがエアロゾル生成装置100の別のコンポーネントによって実行されてもよいことに留意されたい。なお、本実施形態では一例として図2に示す回路200を用いて説明するが、他の回路を用いることができることは当業者にとって明らかであろう。この点は、以下の他のフローチャートに関しても同様である。
【0202】
処理はステップ802において開始する。ステップ802において、制御部106は、圧力センサ、流量センサ等から得られた情報に基づいて、ユーザによる吸引が検知されたか否かを判定する。例えば、制御部106は、これらのセンサの出力値が連続的に変化する場合、ユーザによる吸引が検知されたと判断してもよい。あるいは、制御部106は、エアロゾルの生成を開始するためのボタンが押されたことなどに基づいて、ユーザによる吸引が検知されたと判断してもよい。
【0203】
吸引が検知されたと判定されると(ステップ802の「Y」)、処理はステップ804に進む。ステップ804において、制御部106はスイッチQ1をオン状態にして第1回路202を機能させる。
【0204】
処理はステップ806に進み、制御部106は、吸引が終了したか否かを判定する。吸引が終了したと判定されると(ステップ806の「Y」)、処理はステップ808に進む。
【0205】
ステップ808において、制御部106はスイッチQ1をオフ状態にする。ステップ810において、制御部106は、スイッチQ2をオン状態にして第2回路204を機能させる。
【0206】
処理はステップ812に進み、制御部106は負荷132の抵抗値を導出する。例えば、制御部106は、第2回路204を貫流する電流値を検出し、これに基づいて負荷132の抵抗値を導出してもよい。
【0207】
処理はステップ814に進み、制御部106は、負荷132の抵抗値が予め定められた閾値を超えるか否かを判定する。当該閾値は、負荷132の温度がエアロゾル源の沸点よりも高い所定の温度に達するときの抵抗値に設定されてもよい。負荷の抵抗値が閾値を超えると判定された場合(ステップ814の「Y」)、処理はステップ816に進み、制御部106は、エアロゾル生成装置100内のエアロゾル源が不足していると判断する。他方、負荷の抵抗値が閾値を超えないと判定された場合(ステップ814の「N」)、エアロゾル源が不足しているとは判断されない。
【0208】
図8は、エアロゾル生成装置100内のエアロゾル源が不足しているかどうかを判定する一般的なフローの例を示すものであることに留意されたい。
【0209】
図9は、同じ金属Aからなる負荷(ヒータ)132の電気抵抗値と温度との間の関係の例を示すグラフである。基本的に、負荷132の温度と電気抵抗値は比例関係にある。負荷132の抵抗値は製造ばらつきを有するので、図示されるように、室温(例えば、25℃)において、異なる個体ごとに、負荷132は、R、R及びRなどの異なる抵抗値を取り得る。エアロゾル源が不足したか否かの判定基準となる負荷132の温度閾値として350℃が用いられる場合、図示されるように、エアロゾル源が不足したか否かの判定基準となる負荷132の抵抗値の閾値は、各個体ごとに、R´、R´及びR´という異なる値をとることになる。
【0210】
本実施形態によるエアロゾル生成装置の構成は、基本的に、図1A及び図1Bに示されるエアロゾル生成装置100及び図2に示される回路200の構成と同様である。一例において、エアロゾル生成装置は、電源110と、電源110からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、図9に示すような温度−抵抗値特性を有する負荷132と、温度−抵抗値特性を記憶するメモリ114と、負荷132の抵抗値に関する値(電気抵抗値、電流値、電圧値など)を出力するセンサと、センサの出力値と該出力値に対応する負荷132の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された温度−抵抗値特性を較正するよう構成される制御部とを備える。
【0211】
本実施形態によれば、負荷132の電気抵抗値と温度との間の対応付けに基づいて、カートリッジ104A(又は、エアロゾル発生物品104B)のPTC特性が較正される。したがって、カートリッジ104A(又は、エアロゾル発生物品104B)が有するPTC特性に個体差がある場合でも、PTC特性を正しい値に較正できる。なお、負荷132がNTC特性を有する場合でも、同様の手法でNTC特性は較正できる点に留意されたい。
【0212】
図10は、本開示の一実施形態による、負荷132の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。ここでは、本実施形態のエアロゾル生成装置が図1Aに示されるエアロゾル生成装置100A又は図1Bに示されるエアロゾル生成装置100Bと同様の構成を有すると仮定する。しかし、他の構成を有する様々なエアロゾル生成装置についても同様の処理を適用できることは当業者にとって明らかであろう。
【0213】
ステップ1002の処理は、第1の実施形態に関する図3のステップ308、図4のステップ408及び図5のステップ508の処理と同様である。制御部106は、ユーザに対して異常を通知するための制御を実行する。例えば、制御部106は、発光、表示、発声、振動などを行うよう、通知部108を動作させる。この場合、エアロゾル生成装置100を用いてエアロゾルを生成するためには、ユーザは、カートリッジ104A(又は、エアロゾル発生物品104B)を取外して新しいカートリッジに交換する必要がある。
【0214】
処理はステップ1004に進み、制御部106は、カートリッジ104Aが取外されたか否かを検知するための取外し検査を実行する。一例において、エアロゾル生成装置100は、カートリッジ104Aの脱着又はエアロゾル発生物品104Bの挿抜を可能にする接続部を備えてもよい。制御部106は、接続部からのカートリッジ104Aの取り外し又は接続部からのエアロゾル発生物品104Bの抜き取りを検知した場合のみ、記憶された温度−抵抗値特性を較正してもよい。これにより、誤ったタイミングで較正が行われることを抑制できる。
【0215】
このように、制御部106は、記憶された温度−抵抗値特性の較正に先立ち、較正を行うべきか否かを、既定の条件に基づき判断してもよい。一例において、制御部106は、接続部から取り外されたカートリッジ104Aの抵抗値又は接続部から抜き取られたエアロゾル発生物品104Bの抵抗値を記憶してもよい。上記既定の条件は、制御部106が記憶した抵抗値が、接続部へ新たに装着されたカートリッジ104Aの抵抗値又は接続部へ新たに挿入されたエアロゾル発生物品104Bの抵抗値と異なることであってもよい。別の例において、上記既定の条件は、負荷132への給電を継続している間の、接続部に装着されたカートリッジ104Aの抵抗値の変化速度又は接続部に挿入されたエアロゾル発生物品104Bの抵抗値の変化速度が既定の閾値未満になることであってもよい。これらの構成により、一度取り外されたカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bがもう一度接続された場合などにおいて、不要な較正を抑制できる。また、一例において、上記既定の条件は、センサの出力値と該出力値に対応する負荷132の温度の推定値との間の対応関係から、記憶された温度−抵抗値特性を較正しなければ負荷132の温度を実際の値よりも過小に推定することになると判断されることであってもよい。
【0216】
ステップ1004における処理の結果に基づき、ステップ1006において、制御部106は、カートリッジ104Aの取り外し(又は、エアロゾル発生物品104Bの抜き取り)が検出されたか否かを判定する。なお、ステップ1006において、制御部106は、カートリッジ104Aの取り外し(又は、エアロゾル発生物品104Bの抜き取り)があった後に、カートリッジ104Aの取り付け(又は、エアロゾル発生物品104Bの挿し込み)が検出されたか否かを判定してもよい。また、カートリッジ104Aの取り付け(又は、エアロゾル発生物品104Bの挿し込み)が検出された場合のみ、ステップ1008に進んでもよい。
【0217】
カートリッジ104Aの取り外しが検出された場合(ステップ1006の「Y」)、処理はステップ1008に進む。ステップ1008において、制御部106は、負荷132への給電を既定時間だけ禁止する。当該既定時間は、例えば、負荷132の温度が室温になるのに十分な時間とすることができる。
【0218】
処理はステップ1010に進み、制御部106はスイッチQ2をオン状態にする。これにより、第2回路204が機能する。
【0219】
処理はステップ1012に進み、制御部106は、負荷132の抵抗値に関する値を取得する。例えば、エアロゾル生成装置100Aは、第2回路204を貫流する電流値を検出するための電流センサを有していてもよい。制御部106は、当該電流値とセンサ112Bにより得られる電圧値とに基づいて、負荷132の抵抗値を取得してもよい。あるいは、第1の実施形態に関連して説明されたように、ステップ1012において、制御部106は、センサ112Bを用いて負荷132の電圧値を取得してもよい。
【0220】
処理はステップ1014に進み、制御部106は、負荷132について記憶された温度−抵抗値特性を較正する。例えば、処理1000が実行される前に、図9に示す温度−抵抗値特性902がメモリに格納されていたと仮定する。ステップ1008において取得された、室温における負荷132の抵抗値がRである場合、ステップ1014において、制御部106は、温度−抵抗値特性902に代えて温度−抵抗値特性904を用いてもよい。
【0221】
ステップ1014において、制御部106は、記憶された温度−抵抗値特性の切片(図9の例の場合、R、R、R)を較正してもよい。PTC特性の切片のみが較正されるので、抵抗値と温度との間の関係のうち1点のみの情報を取得するだけでよく、より迅速な較正が可能となる。
【0222】
一例において、エアロゾル生成装置100は、負荷132の種類毎に、負荷132の電気抵抗値とそれに対応する温度−抵抗値特性の傾き及び切片のうちの一方とを格納するデータベースを備えてもよい。制御部106は、センサの出力値とデータベースに基づき、温度−抵抗値特性の傾きと切片のうちの一方を較正してもよい。制御部106はまた、センサの出力値と較正された温度−抵抗値特性の傾きと切片のうちの一方とに基づき、温度−抵抗値特性の傾きと切片のうちの他方を較正してもよい。別の例において、上述のデータベースはエアロゾル生成装置100の外部に位置してもよく、制御部106は当該データベースと通信するなどして必要な情報を得てもよい。
【0223】
一例において、上述のデータベースは、負荷132の種類毎に、室温又はエアロゾル生成が生じる温度における負荷132の電気抵抗値とそれに対応する温度−抵抗値特性の傾き及び切片のうちの他方を格納してもよい。
【0224】
処理はステップ1016に進み、制御部106は、エアロゾル源が不足しているか否かの判定(例えば、図8のステップ814)に用いられる抵抗値の閾値Rthresholdを更新する。上記の例においては、Rthresholdの値がR´からR´に変更される。
【0225】
このように、一例において、制御部106は、負荷132がエアロゾルを生成する前のセンサの出力値(電圧値、電流値、抵抗値など)と室温との間の対応関係に基づき、記憶された温度−抵抗値特性を較正してもよい。室温を基準としてPTC特性が較正されるので、PTC特性に対する較正の精度が向上する。
【0226】
また、一例において、制御部106は、負荷132の温度が室温であると判断される既定の条件が成立した場合に、負荷132がエアロゾルを生成する前のセンサの出力値と室温との間の対応関係に基づき、記憶された温度−抵抗値特性を較正してもよい。これにより、室温になったことが確からしい条件が成立した場合に較正が行われる。したがって、較正時の負荷の温度が確かに室温である可能性が高まり、PTC特性に対する較正の精度が向上する。
【0227】
一例において、既定の条件は、前回のエアロゾル生成から既定の時間が経過したことであってもよい。これにより、前回のエアロゾル生成から所定時間が経過したことが、負荷の温度を室温と見做す条件となる。したがって、較正時の負荷が十分に冷却され、室温に落ち着いている可能性が高まる。
【0228】
一例において、エアロゾル生成装置100は、負荷132とエアロゾル源を貯留する貯留部116Aとを備えるカートリッジ104A、又は、負荷132とエアロゾル源を保持するエアロゾル基材116Bとを備えるエアロゾル発生物品104B、並びに、カートリッジ104Aの脱着又はエアロゾル発生物品104Bの挿抜を可能にする接続部を備えてもよい。上述の既定の条件は、接続部にカートリッジ104Aが装着されてから又は接続部にエアロゾル発生物品104Bが挿入されてから既定の時間が経過したことであってもよい。これにより、カートリッジ104Aの接続から所定時間が経過したことが、負荷の温度を室温と見做す条件となる。したがって、較正時の負荷の温度が十分に冷却され、室温に落ち着いている可能性が高まる。
【0229】
一例において、エアロゾル生成装置100は、電源110や制御部106などの本体102を構成する電装品の温度、または本体102の内部の温度や周囲の温度のうちいずれか1つを出力する温度センサをセンサ112として含んでいてもよい。上述の既定の条件は、センサ112が出力する温度が室温であること、またはセンサ112が出力する温度と室温の差分の絶対値が既定の閾値以下となることであってもよい。このような条件も、負荷の温度を室温と見做す条件となり得る。したがって、センサ112が出力する温度が、電源110の温度や制御部106の温度、または本体102の内部の温度である場合は、エアロゾル生成装置100は、動作していないか、又は消費電力の小さい待機モードにある。換言すれば、負荷132に対して給電されていない状態であるため、較正時の負荷の温度が十分に冷却され、室温に落ち着いている可能性が高まる。また、センサ112が出力する温度が、本体102の周囲の温度である場合は、高温や低温といった室温ではなく、室温との差分の絶対値が大きい環境下でエアロゾル生成装置100が放置されていないため、較正時の負荷の温度が、室温に落ち着いている可能性が高まる。
【0230】
一例において、制御部106は、上述の既定の条件が満たされた場合、センサの出力値と該出力値に対応する温度の推定値を対応付けるまで負荷132がエアロゾルを生成しないよう制御してもよい。センサの出力値に応じて、温度−抵抗値特性が較正される場合もそうでない場合もあり得ることが理解されよう。この構成によれば、抵抗値が計測されるまではエアロゾルが生成されない。したがって、較正時の負荷の温度が室温よりも大幅に高くなっているという事態の発生を抑制できる。さらには較正前の温度−抵抗値特性を用いてエアロゾルを生成しないため、エアロゾルの香喫味を損ねることが抑制される。
【0231】
一例において、制御部106は、負荷132の温度を負荷132がエアロゾルを生成可能な温度まで昇温させるために必要な電力より小さな既定電力を、電源110から負荷132へ給電してもよい。制御部は、さらに、当該既定電力を負荷132へ給電している間のセンサの出力値に基づき、温度−抵抗値特性を較正してもよい。
【0232】
一例において、上述の既定電力は、負荷132の温度をセンサの分解能以上に昇温させない電力であってもよい。別の例において、上述の既定電力は、負荷132の温度を昇温させない電力であってもよい。
【0233】
一例において、制御部106は、センサの出力値と該出力値に対応する負荷132の温度の推定値との間の対応関係と、負荷132又は負荷132を備えるカートリッジ104Aに関する情報(例えば、温度−抵抗値特性の傾きを示す係数など)とに基づき、記憶された温度−抵抗値特性の傾きと切片を較正してもよい。これにより、カートリッジ104Aに関する情報にも基づいて、切片だけでなく傾きも較正される。したがって、異なる金属からなる負荷132を含む異なるカートリッジが接続される場合でも、それぞれのカートリッジに対して、高精度な較正を行うことができる。
【0234】
一例において、制御部106は、負荷132又はカートリッジ104Aに関する情報を、外部端末との通信,負荷132の識別情報,カートリッジ104A又はカートリッジ104Aのパッケージの識別情報,及びユーザ入力のうち少なくとも1つから取得してもよい。
【0235】
図11Aは、本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
【0236】
ステップ1102A乃至1106Aの処理は図10の例におけるステップ1002乃至1006の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0237】
カートリッジ104Aの取り外しが検出された場合(ステップ1106Aの「Y」)、処理はステップ1108Aに進む。ステップ1108Aにおいて、ユーザによる吸引が検知されると、制御部106はスイッチQ1をオン状態にする。したがって、第1回路202が機能し、エアロゾルが生成される。
【0238】
処理はステップ1110Aに進み、制御部106は、スイッチQ1をオフ状態に切り替え、スイッチQ2をオン状態にする。したがって、第1回路202が機能しなくなり、代わりに第2回路204が機能する。ステップ1112A乃至1116Aの処理は図10のステップ1012乃至1016の処理と同様であるので説明を省略する。
【0239】
図11Bは、本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
【0240】
ステップ1102B乃至1112Bの処理は図11Aのステップ1102A乃至1112Aの処理と同様であるので、説明を省略する。
【0241】
ステップ1113Bにおいて、制御部106は、ステップ1112Bにおいて取得された値が所定の閾値未満であるか否かを判定する。例えば、負荷132の温度がエアロゾル源の沸点よりも高い温度(例えば、300℃)に達するときの負荷132の抵抗値が当該閾値として設定されてもよい。ステップ1113Bの判定を行うことにより、負荷132がエアロゾルを発生している状態にあるのか、エアロゾル源が不足してエアロゾルが生成されない状態にあるのかを判定することができる。
【0242】
取得値が閾値未満である場合(ステップ1113Bの「Y」)、処理はステップ1114Bに進む。ステップ1114B及び1116Bの処理はステップ1114A及び1116Aの処理と同様であるので、説明を省略する。
【0243】
取得値が閾値以上である場合(ステップ1113Bの「N」)、ステップ1114B及び1116Bの処理は行われず、処理1110Bは終了する。
【0244】
このように、本実施形態によれば、一例において、制御部106は、エアロゾル生成に十分な電力が負荷132に給電された際のセンサの出力値とエアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係に基づき、記憶された温度−抵抗値特性を較正する。エアロゾル生成温度を基準としてPTC特性が較正されるので、PTC特性に対する較正の精度が向上する。
【0245】
一例において、制御部106は、エアロゾル生成に十分な電力が負荷132に給電された際のセンサの出力値が閾値以上の場合は、記憶された温度−抵抗値特性を較正しない。これにより、負荷の温度(抵抗値)が極端に高い場合は、PTC特性が較正されない。したがって、エアロゾル源が枯渇した場合における過剰に高い負荷の温度がエアロゾル生成温度であると誤って認識されないので、PTC特性に対する較正の精度が著しく悪化することを抑制できる。または別の一例において、制御部106は、既定の電力が負荷132に給電された際のセンサの出力値の変化量が閾値以上の場合は、記憶された温度−抵抗値特性を較正しない。これにより、負荷の温度(抵抗値)が極端に変動する場合は、PTC特性が較正されない。したがって、過剰な負荷の温度変動が生じ得るエアロゾル源の枯渇時には、PTC特性が較正されないため、PTC特性に対する較正の精度が著しく悪化することを抑制できる。
【0246】
一例において、制御部106は、エアロゾル生成に十分な電力が負荷132に給電され、且つ室温以外の値で定常状態になった時のセンサの出力値と、エアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係に基づき、記憶された温度−抵抗値特性を較正する。
【0247】
図12は、本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
【0248】
ステップ1202乃至1212の処理は、図10のステップ1002乃至1012の処理と同様である。ステップ1214乃至1218の処理は、図11Aのステップ1108A乃至1112Aの処理と同様である。図12のフローにおいては、これらの両方の処理を実行した後、ステップ1220に移行する。ステップ1220において、制御部106は、負荷132がエアロゾルを生成する前のセンサの出力値と室温との間の対応関係(ステップ1208乃至1212により得られる)と、エアロゾル生成に十分な電力が負荷132に給電された時のセンサの出力値とエアロゾル生成が生じる温度との間の対応関係(ステップ1214乃至ステップ1218により得られる)とに基づき、記憶された温度−抵抗値特性の傾きと切片を較正する。すなわち、(温度,抵抗値)のプロットを2つ利用して、PTC特性の切片と傾きが較正される。したがって、専用の情報取得手段を持つ必要がなく(例えば、較正に必要な情報をカートリッジ104Aに埋め込む必要がなく)、より簡便な方法でPTC特性の切片と傾きを較正できる。
【0249】
図11Bの例と同様に、上記の例において、制御部106は、エアロゾル生成に十分な電力が負荷132に給電された時のセンサの出力値が閾値以上の場合は、記憶された温度−抵抗値特性を較正しなくてもよい。
【0250】
図13は、負荷132の製造ばらつきにより、エアロゾル源が不足していると判断するための温度閾値が高くなり過ぎる可能性があることを説明するグラフである。図13に示される3つの直線は、同じ種類の金属Aからなる負荷(ヒータ)132の温度−抵抗値特性を示す。ここでは、実線1302が初期抵抗値Rを有する標準的な第1の負荷132−1の特性を示し、点線1304が標準よりも高い初期抵抗値Rを有する第2の負荷132−2の特性を示し、一点鎖線1306が標準よりも低い初期抵抗値Rを有する第2の負荷132−3の特性を示すものとする。また、エアロゾル源の沸点が200℃であり、第1の負荷132−1の温度が350℃になるときにエアロゾル源が不足していると判定されるものと仮定する。この場合、図から理解されるように、エアロゾル源が不足しているか否かを判定するための負荷の抵抗値の閾値はRthresholdである。第2の負荷132−2の場合、負荷の温度が330℃に達すると抵抗値がRthresholdになる。したがって、Rthresholdを閾値として用いても、標準的な温度閾値350℃よりも低い温度においてユーザに対して警告等が行われるので、過加熱状態は生じない。したがって、第2の負荷132−2に関しては、温度−抵抗値特性の較正は必ずしも必要ではないということができる。他方、第3の負荷132−3の場合、負荷の温度が370℃に達してはじめて、抵抗値がRthresholdになる。したがって、Rthresholdを閾値として用いると、負荷132−3の温度が370℃という非常に高い温度になるまで警告等が行われないので、過加熱状態が生じ得る。したがって、第2の負荷132−3に関しては、温度−抵抗値特性を較正する必要がある。一例において、負荷132の初期抵抗値が図13に示すRstandを下回るときのみ、負荷132の温度−抵抗値特性が較正されてもよい。
【0251】
図14は、図13に関して指摘された点を考慮に入れた、本開示の一実施形態による、負荷の温度−抵抗値特性を較正する例示的な処理のフローチャートである。
【0252】
ステップ1402乃至1412の処理は、図10におけるステップ1002乃至1012の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0253】
ステップ1413において、制御部106は、ステップ1412において取得された室温における負荷132の抵抗値(又は、当該抵抗値に関連する電圧値、電流値等)が、図13に示すRstand(又は、これに対応する電圧値、電流値等)未満であるか否かを判定する。
【0254】
負荷132の抵抗値がRstand未満である場合(ステップ1413の「Y」)、処理はステップ1414に進む。ステップ1414及び1416の処理は図10におけるステップ1014及び1016の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0255】
負荷132の抵抗値がRstand以上である場合(ステップ1413の「N」)、ステップ1414及び1416は実行されず、処理は終了する。
【0256】
本実施形態によれば、制御部106は、記憶された温度−抵抗値特性の較正に先立ち、較正を行うべきか否かを既定の条件に基づき判断してもよい。そして、上述のように、一例において、当該既定の条件は、センサの出力値と該出力値に対応する負荷132の温度の推定値との間の対応関係から、記憶された温度−抵抗値特性を較正しなければ負荷132の温度を実際の値よりも過小に推定することになると判断されることであってもよい。既定の条件は、センサの出力値が既定の閾値よりも小さいことであってもよい。これらの構成により、温度−抵抗値特性を較正しないと過加熱状態が生じる場合のみにおいて較正が行われる。したがって、測定された負荷の初期抵抗値がセンサの誤差等により僅かな誤差を含む場合など、較正が必要ない場合において、不要な較正が行われることを抑制することができる。
【0257】
図15は、異なる金属からなる異なる負荷(ヒータ)132の温度−抵抗値特性の例を示すグラフである。実線1502、一点鎖線1504及び点線1506は、それぞれ、金属Aからなる負荷132A、金属Bからなる負荷132B及び金属Cからなる負荷132Cの特性を示す。金属の種類が異なるので、抵抗温度係数も異なり、それぞれの特性の傾きもまた異なる。したがって、図示されるように負荷132A、負荷132B及び負荷132Cの初期抵抗値R、R及びRが同じ値であっても、各負荷の温度が350℃に達するときの各負荷の抵抗値R´、R´及びR´は異なる。理解されるように、ある金属からなる負荷を有するカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bを異なる金属からなる負荷を有するカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bへと交換する際には、エアロゾル源の不足の判定に用いる閾値を更新することが必要である。なお、負荷132A、負荷132B及び負荷132Cの初期抵抗値R、R及びRは、異なる値であってもよい。
【0258】
このような場合、一例において、制御部106は、エアロゾル生成装置100に新しいカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bを挿入した際に、負荷132の初期抵抗値を測定してもよい。次いで、制御部106は、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bの負荷132が有する温度−抵抗特性に基づき、エアロゾル源の不足の判定に用いる抵抗閾値を算出してもよい。一例において、制御部106は、このような温度−抵抗特性などの負荷132又はカートリッジ104Aもしくはエアロゾル発生物品104Bに関する情報を、サーバなどの外部端末との通信によって取得してもよい。制御部106はまた、そのような情報を、負荷132又はカートリッジ104Aもしくはエアロゾル発生物品104BのRFIDタグなどに含まれる識別情報、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bのパッケージの識別情報、ユーザによる入力などから取得してもよい。
【0259】
一例において、エアロゾル生成装置100は、負荷132とエアロゾル源を貯留する貯留部116Aとを備えるカートリッジ104A又は負荷132とエアロゾル源を保持するエアロゾル基材116Bとを備えるエアロゾル発生物品と、カートリッジ104Aの脱着又はエアロゾル発生物品104Bの挿抜を可能にする接続部とを備えてもよい。この例において、センサはカートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bに含まれなくてもよい。制御部106は、センサの出力値から既定値(例えば、カートリッジ104Aを接続する箇所の抵抗値)を減算した値と、該出力値に対応する負荷132の温度の推定値との間の対応関係に基づき、記憶された温度−抵抗値特性を較正してもよい。この構成によれば、抵抗値を計測するためのセンサは本体102に備え付けられる。したがって、カートリッジ104A又はエアロゾル発生物品104Bのコスト、重量、体積などの増大を抑制できる。
【0260】
一例において、エアロゾル生成装置100は、負荷132がエアロゾル源を霧化するために用いられる第1回路202と、負荷132の抵抗値に関する値を検出するために用いられ、第1回路202と並列接続され、且つ第1回路202よりも電気抵抗値が大きい第2回路204とを備えてもよい。この構成によれば、エアロゾル生成装置100は、電圧計測用の専用回路(第2回路204)を有する。したがって、負荷132の抵抗値の測定のために必要な電源110の電力を抑制することができる。
【0261】
一例において、エアロゾル生成装置100は、電源110と負荷132を電気的に接続する回路を備えてもよい。センサは、少なくとも、当該回路のうち負荷132の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧の値を出力してもよい。制御部106は、回路の全体に印加される電圧の値とセンサの出力値に基づいて、負荷132の電気抵抗値を導出してもよい。この構成によれば、回路全体に印加される電圧を測定するための電圧センサ及び負荷132の温度変化によって印加される電圧が変わる箇所に印加される電圧を測定するための電圧センサという、2つの電圧センサのみを使用すればよい。したがって、既存の装置に対して最小限必要なセンサを追加するだけでよい。
【0262】
一例において、エアロゾル生成装置100は、電源110の出力電圧を変換して、回路の全体に印加するように出力する変換部208を備えてもよい。制御部106は、負荷132の電気抵抗値を導出する場合には、変換部208が回路の全体に一定電圧を印加するように制御してもよい。この構成により、コンバータを利用して、抵抗値の測定時には回路全体に印加される電圧が一定に制御される。したがって、測定される抵抗値の確からしさが向上する。
【0263】
一例において、エアロゾル生成装置100は、電源110と、電源110からの給電による発熱でエアロゾル源を霧化し、且つ温度に応じて電気抵抗値が変化する、温度−抵抗値特性を有する負荷132と、温度−抵抗値特性を記憶するメモリ114と、負荷132の抵抗値に関する値を出力するセンサ112と、温度−抵抗値特性に基づき既定の制御を実行するように構成された制御部106とを備えてもよい。制御部106は、センサ112の出力値と、該出力値に対応する負荷132の温度の推定値との間の対応関係に基づき、当該既定の制御に関する値(定数、変数、閾値など)を較正してもよい。
【0264】
上述の説明において、本開示の第3の実施形態は、エアロゾル生成装置及びエアロゾル生成装置を動作させる方法として説明された。しかし、本開示が、プロセッサにより実行されると当該プロセッサに当該方法を実行させるプログラム、又は当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として実施され得ることが理解されよう。
【0265】
以上、本開示の実施形態が説明されたが、これらが例示にすぎず、本開示の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、実施形態の変更、追加、改良などを適宜行うことができることが理解されるべきである。本開示の範囲は、上述した実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ規定されるべきである。
【符号の説明】
【0266】
100A、100B…エアロゾル生成装置、102…本体、104A…カートリッジ、104B…エアロゾル発生物品、106…制御部、108…通知部、110…電源、112A〜112D…センサ、114…メモリ、116A…貯留部、116B…エアロゾル基材、118A、118B…霧化部、120…空気取込流路、121…エアロゾル流路、122…吸口部、130…保持部、132…負荷、134…回路、202…第1回路、204…第2回路、206、210、214…FET、208…変換部、212…抵抗、216…ダイオード、218…インダクタンス、220…キャパシタ、702…比較器、704…A/D変換器、706、708…増幅器、710…電源、902、904、906、1302、1304、1306、1502、1504、1506…温度−抵抗値特性
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
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図14
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