特許第6792917号(P6792917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6792917
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ボイド管
(51)【国際特許分類】
   E04G 15/06 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   E04G15/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-31176(P2020-31176)
(22)【出願日】2020年2月27日
【審査請求日】2020年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516007928
【氏名又は名称】澤野 晴美
(74)【代理人】
【識別番号】716000097
【氏名又は名称】澤野 信行
(72)【発明者】
【氏名】澤野 信行
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−224960(JP,A)
【文献】 実開昭51−048815(JP,U)
【文献】 特開2011−202367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 15/06
B29C 67/14
B65H 75/10
B65H 81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイド管本体と、
前記ボイド管本体から引き抜き可能に前記ボイド管本体に螺旋状に巻き付けた中間部材と、
前記中間部材を介して前記ボイド管本体に螺旋状に巻き付けたテープ部材と、を有し、
前記テープ部材は、一方側の側縁端が互いに重なるように巻き付けられており、
前記テープ部材の重なり部分は、接着剤により固定されており、
前記テープ部材と前記ボイド管本体とが接触する面は、接着固定されておらず、
前記中間部材を前記ボイド管本体に間隔を空けて巻き付けることにより、前記ボイド管本体と前記テープ部材との間に第1の空隙部が設けられることを特徴とするボイド管。
【請求項2】
前記中間部材を引き抜くことにより、前記ボイド管本体と前記テープ部材との間に第2の空隙部が生じ、前記ボイド管本体と前記テープ部材が離間されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のボイド管。
【請求項3】
前記テープ部材の巻付ピッチは、前記中間部材の巻付ピッチよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のボイド管。
【請求項4】
前記テープ部材は、前記ボイド管本体が前記テープ部材から分離可能に前記ボイド管本体に巻き付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のボイド管。
【請求項5】
前記中間部材は、線材、又はテープ材から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のボイド管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートに穴を開けるために使用したボイド管をコンクリートより容易に抜き取ることが出来る様にしたボイド管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを用いて工事を行う際に、コンクリートに穴を開ける作業では、ボイド管を設置して、その周囲にコンクリートを流し込み、その後で、ボイド管を抜き取ることで、コンクリートに穴を設けている。コンクリートからボイド管を取り除く際には、専用の工具を使いボイド管を変形させたり、破ったりしながらコンクリとから引きはがしたり又はバールを使ってコンクリートより出ている突設を叩いてボイド管の内側に寄せて抜き取っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ボイド管はコンクリートが硬化した後ボイド管がコンクリートに接着したような状態になってしまうため、ボイド管を変形させたり破ったりしながらコンクリートから引きはがしてボイド管を除去している。
【0004】
コンクリートからボイド管を壊さずに簡単に取り除くことが出来るボイド管を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るボイド管は、ボイド管本体と、前記ボイド管本体から引き抜き可能に前記ボイド管本体に螺旋状に巻き付けた中間部材と、前記中間部材を介して前記ボイド管本体に螺旋状に巻き付けたテープ部材とを有する。また、前記テープ部材は、一方側の側縁端が互いに重なるように巻き付けられており、前記テープ部材の重なり部分は、接着剤により固定されており、前記ボイド管本体と前記テープ部材との間には、空隙部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係るボイド管では、コンクリートを流し込んだ後に、中間部材を引き抜き、ボイド管本体とテープ部材との間に空隙部を設けることにより、簡単にボイド管を引き抜くことができる。ボイド管を用いることで、ボイド管専用の工具やバールを使ってボイド管を破ったり、叩いたりする作業が不要となり、コンクリートの成形穴を簡単に形成することができる。
【0007】
また、本発明に係るボイド管において、前記テープ部材の巻付ピッチは、前記中間部材の巻付ピッチよりも大きいことを特徴としてもよい。
【0008】
本発明に係るボイド管では、テープ部材の巻付ピッチよりも、中間部材の巻付ピッチが小さく設定されているので、中間部材の上にテープ部材を巻き付けた際に、中間部材によってテープ部材が支持され、テープ部材の表面の凹凸が低減される。また、中間部材の上にテープ部材を巻き付けた際にテープ部材のたるみも低減することができる。この結果、コンクリートを流し込んだ後に、中間部材の引き抜きが容易となる。
【0009】
また、本発明に係るボイド管において、前記テープ部材は、前記ボイド管本体が前記テープ部材から分離可能に前記ボイド管本体に巻き付けられていることを特徴としてもよい。本発明に係るボイド管では、ボイド管本体を、テープ部材から分離して、簡単にボイド管を引き抜くことができる。
【0010】
また、本発明に係るボイド管において、前記中間部材は、線材、又はテープ材から成ることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボイド管を使用する事によって、ボイド管専用の工具やバールを使ってボイド管を破ったり、叩いたりする作業の負担もかけずに容易に抜き取ることが出来、作業の軽減と効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係るボイド管の概略図を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るボイド管の側面図を示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るボイド管における断面図を示す図である。図3(a)は、本発明の実施形態に係るボイド管における図2のIII−III線に沿った断面図である。図3(b)は、図3(a)のA部の拡大図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るボイド管における図2のIV−IV線断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るボイド管の使用状態を説明するための図である。図5(a)は、ボイド管をコンクリートで固めた状態を説明するための断面図である。図5(b)は、ボイド管の中間部材を抜いている時の状態を説明するための図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るボイド管の使用状態を説明するための図である。図6(a)は、ボイド管本体を抜いた後の状態を説明するための図である。図6(b)は、ボイド管本体を抜いた後にテープ部材を取り除いた状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照しながら本発明のボイド管に係る実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0014】
図1に、本発明の実施形態に係るボイド管の概略図を示す。図2に、本発明の実施形態に係るボイド管の側面図を示す。
【0015】
図1において、ボイド管1は、ボイド管本体2と、ボイド管本体2の外周に巻き付けたテープ部材3と、ボイド管本体2とテープ部材3との間に設けた中間部材5から構成されている。
【0016】
ボイド管本体2は、例えば、クラフト紙など紙材を螺旋状に巻いた紙管からなることができる。ボイド管本体2の内径は、例えば50mm〜400mm程度であり、厚みは、2mm〜5mm程度とすることができる。
【0017】
テープ部材3は、例えば、幅が50mm〜200mm程度の帯状のテープからなることができる。テープ部材3は、例えば、クラフト紙など紙材やビニールなどのプラスチック材からなることができる。また、テープ部材3の厚みは、0.2mm〜1.0mm程度とすることができる。
【0018】
中間部材5は、ボイド管本体2とテープ部材3との間に配置され、ボイド管本体2の外周に巻き付けられており、例えば線材、又はテープ材から成ることができる。線材の場合は、例えば0.5mm〜2.0mm程度の太さであり、綿、麻、紙、金属、プラスチックなどの材料から構成することができる。また、テープ材から成る場合は、例えば、厚さが0.5mm〜2.0mm程度であり、幅が2.0〜10mm程度であることができ、綿、麻、紙、金属、プラスチックなどの材料から構成することができる。
【0019】
図1に示すように、ボイド管本体2とテープ部材3との間に中間部材5を設けることで、ボイド管本体2とテープ部材3との間に空隙部4aが形成される。
【0020】
図1及び図2に示すように、中間部材5は、ボイド管本体2の外周に、例えばピッチがボイド管本体2の外径の1/2程度となるように、螺旋状に巻き付けられている。中間部材5をボイド管本体2の外周に巻き付ける際は、ズレない程度に一定の張力で巻き付けることが好ましい。
【0021】
図2に示したように、中間部材5をボイド管本体2の外周に巻き付けた後、中間部材5の一端は、ボイド管本体2の片端部から突出するように突出部5aが形成されている。後で詳細に説明するが、本実施形態のボイド管1を用いて穴開け作業等を行うコンクリート工事において、コンクリートに埋め込まれたボイド管1を除去するために中間部材5を引き抜くときに、中間部材5の一端をボイド管本体2の片端部から突出するように形成することで、中間部材5を容易に引き抜くことができる。
【0022】
また、テープ部材3は、中間部材5をボイド管本体2の外周に巻き付けた後、中間部材5の上から螺旋状にボイド管本体2の外周に巻きつけられている。本実施形態では、テープ部材3の巻き付け方向は、中間部材5の巻き付け方向と同じ方向にしてある。しかし、テープ部材3の巻き付け方向を、中間部材5の巻き付け方向と異なる方向にしてもよい。また、テープ部材3の巻き付けのピッチは、例えばボイド管本体2の外径の3/4程度とすることができる。本実施形態では、テープ部材3の巻き付けのピッチは、中間部材5の巻き付けのピッチよりも大きく設定している。テープ部材3をボイド管本体2の外周に巻き付ける際は、ズレない程度に一定の張力で巻き付けることが好ましい。
【0023】
テープ部材3の巻付ピッチよりも、中間部材5の巻付ピッチが小さく設定されているので、中間部材5の上にテープ部材を巻き付けた際に、テープ部材3は、すくなくとも一つ以上の中間部材5の上に巻き付けることができる。この結果、中間部材5によってテープ部材3が、たわみなく確実に支持され、テープ部材の表面の凹凸を低減することができる。また、コンクリートを流し込んだ後に、中間部材を引き抜く際に、テープ部材の表面の凹凸に起因する抵抗を小さくできるので、中間部材を容易に引き抜くことができる。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係るボイド管1における断面図を示す図である。図3(a)は、ボイド管1の図2のIII−III線に沿った断面図を示している。図3(b)は、図3(a)のA部の拡大図である。図3に示すように、テープ部材3は、巻き付けるときに、テープ部材3の幅方向の一方側の側縁端に接着剤9を塗布し、この一方側の側縁端を重ねて接着しながら螺旋状に巻き付ける。このテープ部材3を螺旋状に巻き付ける際に、テープ部材3同士が重なる重なり部分6の幅は、例えば2mm〜5mm程度とすることができる。このとき、図3(b)に示したようにテープ部材3の他方側の端の表面は、ボイド管本体2の外周表面に接触しているが、テープ部材3の他方側の端の表面とボイド管本体2の外周表面とは、接着されておらず、テープ部材3がボイド管本体2の外周表面に対して可動可能に構成されている。
【0025】
図4は、ボイド管1の図2のIV−IV線に沿った断面図を示している。図4に示すように、中間部材5は、ボイド管本体2とテープ部材3の間に設けられて、空隙部4aを形成している。ボイド管本体2にテープ部材3を巻き付けるときに、ボイド管本体2とテープ部材3とが中間部材5の太さ又は厚みに応じて離間し、空隙部4aが形成される。つまり、この空隙部4aが設けられることで、ボイド管本体2とテープ部材3とが離間し、接触しない面積が増加する。例えばコンクリートによりボイド管1が埋め込まれた後、中間部材5を抜いてからボイド管本体2を引き抜く際においても、ボイド管本体2とテープ部材3とが接触しない状態を維持できるので、ボイド管本体2とテープ部材3との間に摩擦力がより低下し、ボイド管本体2が抜きやすくなる。なお、テープ部材3は、コンクリートに貼りついた状態で残る。
【0026】
図4において、テープ部材3同士が重なった重なり部分6が接着されて固定されて、テープ部材3がボイド管本体2の外周に巻き付けられている。一方、テープ部材3と中間部材5とが接触する面、テープ部材3とボイド管本体2とが接触する面、及び中間部材5とボイド管本体2とが接触する面は、接着剤等で接着固定されておらず、可動可能に形成されている。
【0027】
図5は、本発明の実施形態に係るボイド管1の使用状態を説明するための図である。図5(a)は、ボイド管1をコンクリート7で固めた状態を説明するための断面図である。図5(b)は、ボイド管1の中間部材5を抜いている時の状態を説明するための図である。図5(a)に示したように、コンクリート工事において、まず、ボイド管1を用いて穴開け作業等を行う際に、ボイド管1を設置した後、ボイド管1の周囲にコンクリート7を流し込んでボイド管1を固定する。その後、固定した状態で、コンクリート7が硬化するまでこの状態を保つ。
【0028】
図5(b)に示したように、コンクリート7が硬化したところでボイド管1をコンクリート7に固定した状態で、中間部材5(5a)を引き抜く。中間部材5は、ボイド管本体2に巻きつけて固定されており、テープ部材3は、中間部材5の上からボイド管本体2に巻き付けられており、共に接着剤等で固定されていないので、中間部材5を容易に引き抜くことができる。
【0029】
図6は、引き続き本発明の実施形態に係るボイド管1の使用状態を説明するための図である。図6(a)は、ボイド管本体2を抜いた後の状態を説明するための図である。図6(b)は、ボイド管本体2を抜いた後にテープ部材を取り除いた状態を説明するための図である。図6(a)に示したように、中間部材5を引き抜くと、ボイド管本体2とテープ部材3の間に空隙部4bができる。このように中間部材5を引き抜いた後も、ボイド管本体2とテープ部材3との間に空隙部4bが形成され、ボイド管本体2とテープ部材3とが接触しない領域を設けることができる。これにより、ボイド管本体2とテープ部材3との間に摩擦力がより低下し、ボイド管本体2が抜きやすくなる。このとき、テープ部材3は、コンクリート7に貼りついたままの状態で残っている。
【0030】
図6(b)に示したように、コンクリート7に貼りついたテープ部材3を剥がし、コンクリート7中に成型穴8が形成されて、コンクリート工事が完了する。
【0031】
なお、コンクリート7に貼りついたテープ部材3をコンクリート7から剥がし易くするために、テープの外表面にコーティング剤を塗布してもよい。また、ボイド管1は、適宜、用途に応じて、切断して使用することができる。切断したときに、中間部材5の一端が、切断面の表面に露出しているので、この露出した中間部材5の一端を引き出して使用することができる。
【0032】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。

【符号の説明】
【0033】
1 ボイド管
2 ボイド管本体
3 テープ部材
4a、4b 空隙部
5 中間部材
5a 突出部
6 重なり部分
7 コンクリート
8 成型穴
9 接着剤

【要約】
【課題】ボイド管はコンクリートが硬化するとコンクリートに接着したような状態になってしまうため、専用の工具やバールを使ってボイド管をたたいて変形させたり、破ったりしながらコンクリートから引きはがしながら抜き取っているため、ボイド管の除去作業に時間を要している。
【解決手段】ボイド管(1)は、ボイド管本体(2)と、ボイド管本体(2)から引き抜き可能にボイド管本体(2)に螺旋状に巻き付けた中間部材(5)と、中間部材(5)を介してボイド管本体(2)に螺旋状に巻き付けたテープ部材(3)とを有する。テープ部材(3)は、一方側の側縁端が互いに重なるように巻き付けられており、テープ部材(3)の重なり部(6)は、接着剤により固定されており、ボイド管本体(2)とテープ部材(3)との間には、空隙部(4a)が設けられていることを特徴とするボイド管。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6