(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、ヘアエクステンションで装着するエクステンション用の毛束の本数はおよそ40束以上あり、短時間ですべてのエクステンション毛束を取り付けるためには作業の効率化が求められる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、一回の圧着作業当たりに頭髪に取付けられる義毛は一束のみであった。またその取り付け作業においては頭髪の一部を管体の穴に挿通しなければならなかった。リング状の管体の中に複数の頭髪を挿通するためには、通常はリングの中にカギ針を通し、カギ針に頭髪を引っ掛けて管体に挿通するなどの細かい作業を行う必要があり、一連の装着作業を効率的に行うことができなかった。
【0009】
また特許文献2においても、一回の圧着作業当たりに自毛に取付けられるエクステンション束は一束のみであった。またその取り付け作業においては、U字形状の腕部を有する圧着金具に自毛束を載置し、圧着ペンチで腕部を加締めて自毛束を装着する。この作業はエクステンション用束を一束取り付ける毎に必要であり、エクステンション束の装着作業が効率的でなかった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、人の地毛へのエクステンション毛束の取り付け作業を効率的に行うことのできる道具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るエクステンション用毛束の取付具である圧着具は、
断面が薄肉開断面のエクステンション用毛束取付用チップを地毛に圧着するための圧着具であって、
一対の柄からなる把持部と、
上顎部と下顎部からなる噛合部を備え、
前記上顎部と前記下顎部のそれぞれに、凹部と凸部が長手方向に交互に設けられ
前記下顎部の凸部の上部にはチップ載置溝が設けられ、
前記一対の柄部を近づけるように前記把持部を把持することで、前記上顎部の凹部と凸部がそれぞれ前記下顎部の凸部と凹部と噛合する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエクステンション用毛束の取付具を用いると、一回の圧着作業当たりに地毛に取付けられるエクステンション毛束を複数にでき、地毛へのエクステンション毛束の取り付け作業を効率的に行うことができる。
【0013】
また、圧着作業後に次の圧着作業に備えてチップ等の被圧着物を圧着工具に載置する作業を簡便化することで、連続した圧着作業を可能にし、エクステンション毛束の取り付け作業を効率化できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
まず本実施の形態に係るエクステンション用毛束の取付具の構成を説明し、その後、その使用方法について説明する。
【0016】
図1(a)及び(b)はそれぞれ本実施の形態に係るエクステンション用毛束の取付具である第1の圧着具1aの正面図と平面図である。
【0017】
第1の圧着具1aは一対の杆体2a及び2bで構成されている。杆体2a及び2bは、それぞれ長手方向に向かって若干屈曲した柄状の部材であって、例えば金属製の部材である。杆体2a及び2bは軸部9を中心に回動可能に軸支される。杆体2aの一端側には上顎部3が、杆体2bの一端側には下顎部4が形成されており、上顎部3及び下顎部4はそれぞれ所定の厚みを有する。
【0018】
上顎部3には、厚み方向に畝が延伸する凸部5aと、同じく厚み方向に溝が延伸する凹部5bが、杆体2aの長手方向に向かって交互に繰り返すように複数設けられている。また下顎部4には、厚み方向に溝が延伸する凹部6aと、同じく厚み方向に畝が延伸する凸部6bが、杆体2bの長手方向に向かって交互に複数設けられている。
【0019】
上顎部3の凸部5aは下顎部4の凹部6aと、上顎部3の凹部5bは下顎部の凸部6bと、それぞれ噛合可能なように形成されており、上顎部3と下顎部4によって噛合部10が構成される。
【0020】
また杆体2aの他端側には柄部7aが、杆体2bの他端側には柄部7bがそれぞれ設けられ、柄部7a及び柄部7bから把持部8が構成される。また柄部7aと柄部7bが離間する方向に付勢するように、ばね部材11が杆体2a及び杆体2bの間に設けられている。第1の圧着具1aは、ユーザが柄部7aと柄部7b近づけるように把持部8を把持することで、軸部9が回動し、上顎部3の凸部5aと凹部5bのそれぞれが、下顎部4の凹部6aと凸部6bと噛合する。
【0021】
ここで第1の圧着具1aの上顎部3をその厚み方向に見た場合、凸部5aの側部はテーパー状となっており、頭部は丸みを帯びた形状となっている。この形状により地毛の毛束を上顎部3の凹部5bに容易に集約できる。また第1の圧着具1aの下顎部4の凸部6bの上部には厚み方向に向かって浅い溝が設けられ、後述するエクステンション用毛束が取り付けられたチップが載置される。更に第1の圧着具1aの上顎部3の凹部5bの底部は、厚み方向から見て円弧状となっている。
【0022】
また
図1には図示しないが上顎部3の先端部分にはテールコーム(長細い柄付きの櫛)のテール部分(長細い柄の部分)が着脱可能に取り付けられるようになっていても良い。その際、テールの長さは上顎部3の長手方向の長さと同程度が望ましい。
【0023】
図1(c)に本実施の形態に係るエクステンション用毛束の取付具である第2の圧着具1bの正面図を示す。第2の圧着具1bの構成は、上顎部3の凹部5bの底部の形状が厚み方向から見て略M字の形状となっている点を除いて、第1の圧着具1と同様であるので詳細の説明は割愛する。本実施の形態においては後述するエクステンション用毛束付きチップの形状に応じて、第1の圧着具1aと第2の圧着具1bを選択して使用可能である。なお凹部5bの底部の形状はエクステンション用毛束付きチップの形状に応じて適宜変更可能である。
【0024】
次に
図2を用いて本実施の形態に係るエクステンション用毛束付きチップを説明する。ここでのチップとは人の地毛とエクステンション用毛束を連結する連結部材を意味している。
【0025】
図2(a)は第1のエクステンション用毛束付きチップ20aである。第1のエクステンション用毛束付きチップ20aはチップ本体21aとエクステンション用毛束22aからなる。
【0026】
図2(b)はチップ本体21aの平面図であり、
図2(c)は
図2(b)のA−A線におけるチップ本体21aの断面図である。
図2(c)に示すようにチップ本体21aの断面は、凸部23aを一つ有する薄肉の開断面である略L字断面の形状をしている。エクステンション用毛束22aは化学繊維や人毛で作られた毛束であって、一端が接着剤等によってチップ本体21aに取りけられている。
【0027】
図2(d)は第2のエクステンション用毛束付きチップ20bを示す。第2のエクステンション用毛束付きチップ20bはチップ本体21bとエクステンション用毛束22bからなる。
【0028】
図2(e)はチップ本体21bの平面図であり、
図2(f)は
図2(e)のB−B線におけるチップ本体21bの断面図である。
図2(f)に示すように、チップ本体21bの断面は、凸部23bを一つ有する薄肉の開断面であるU字断面の形状をしている。エクステンション用毛束22bもエクステンション用毛束22aと同様に、化学繊維や人毛で作られた毛束であって、一端が接着剤等によってチップ本体21bに取りけられている。
【0029】
なおエクステンション用毛束付きチップに用いられるチップ本体の形状は、チップ本体21a及び21bの形状に限られるものではなく、断面が開断面である形状を有するものであればよい。またその開断面において凸部を少なくとも一つ有するものであれば、その凸部を下顎部4の凸部6bの上部の溝に置くことで、安定してチップを圧着具の下顎部に載置できる。またその形状は使用する圧着具の上顎部の凹部の底部の形状に応じ適宜変更しても良い。例えばチップ本体21aは圧着具1aに対して、チップ本体21b圧着工具1bに対して好適な形状となっている。
【0030】
またチップ本体の材質については、衝撃を受けていない時には硬い形状が維持され、適度の衝撃を受けた時のみ圧潰することができるものであれよく、例えばアルミニウムや銅などの金属や、ポリマーアロイ等の高機能樹脂材料などが好適である。
【0031】
これにより本実施の形態における第1の圧着具1aや第2の圧着具1b等の圧着具によりチップ本体を圧潰することで、チップ本体を例えば筒形状に変形し、地毛を円筒の内部に包み込んでチップ本体に固定することができる。
【0032】
次に
図3及び
図4を用いて本実施の形態に係るエクステンション用毛束の取付具の使用方法を説明する。
【0033】
図3(a)及び(b)は第1の圧着具1aのユーザであるエクステンション施術者が、第1の圧着具1aを用いて、エクステンション用毛束付きチップ20aを被施術者の頭髪に取付ける作業(エクステンション作業)を施している図である。
【0034】
まず施術者は
図3(a)に示すように、被施術者の頭部から一定量の頭髪から板状の毛束を取り分ける。その際、施術者は圧着具1aの上顎部3の先端部分にはテール30を取り付け、そのテールで毛束を取り分ける作業を行っても良い。
【0035】
次に、施術者は
図3(b)に示すように、取り分けた板状の地毛の毛束に圧着具1aの上顎部3の凹凸部を当て、これらで毛束を梳かす。この時、第1の圧着具1aの上顎部3の凸部5aの頭部は丸みを帯びた形状であり、その側部は、厚み方向に見た場合、テーパー状になっているので、分けられた細い毛束は、
図3(c)に示すように上顎部3の凹部5bの底部に容易に集約される。つまり、板状の毛束を、上顎部3の凸部5aによって、より細い複数の毛束に容易に分けることができる。
【0036】
次に、
図4(a)及び(b)を用いて、第1の圧着具1aによって地毛にチップ本体21aを圧着する過程を説明する。
【0037】
まず第1の圧着具の下顎部4の複数の凸部6bのそれぞれについて、上部の浅い溝にエクステンション用毛束が取り付けられたチップ20aのチップ本体21aを載置する。
【0038】
図4(a)は第1の圧着具1aによって地毛にチップ本体21aを圧着する前の状態である。具体的には既に説明したように頭髪の毛束が第1の圧着具1aの上顎部3の凹部5bに集約され、第1の圧着具1aの下顎部4の凸部6bの上部の浅い溝に、チップ本体21aを載置した状態を示す。なおこの時、チップ本体21aが上顎部3にやや接触する程度に、上顎部3と下顎部4を近づけておくのが好ましい。チップ本体21aを安定して浅い溝状に載置できるからである。
【0039】
この状態で、施術者は第1の圧着具1aの柄部7aと柄部7b近づけるように把持部8を把持する。これにより軸部9が回動し、上顎部3の凸部5aと凹部5bのそれぞれが、前記下顎部4の凹部6aと凸部6bと噛合することでチップ本体21を圧潰する。
【0040】
図4(b)は第1の圧着具1aによる圧潰によって地毛にチップ本体21aを圧着した後の状態を示している。L字断面の形状のチップ本体21aは、厚み方向から見て円弧状となっている上顎部3の凹部5bの底部に沿って筒状に丸まる。この時、筒の内部に毛髪の束を包み込むように丸まるので、地毛がチップ本体21aに連結される。
【0041】
本実施の形態に係る第1の圧着具1aを用いることで、上記のような圧着を、第1の圧着具1aの下顎部4の複数の凸部6bに載置されたすべてのチップ本体21a対して同時に行うことができる。これにより一回の圧着作業当たりに地毛に取付けられるエクステンション毛束を複数にでき、地毛へのエクステンション毛束の取り付け作業を効率的に行うことができる。
【0042】
またこの圧着作業において、第1の圧着具1aに代えて第2の圧着具1bを用い、第1のエクステンション用毛束付きチップ20aの代わりに第2のエクステンション用毛束付きチップ20bを用いても良い。
【0043】
図4(c)及び(d)は第2の圧着具1bによって地毛にチップ本体21bを圧着する過程を示す図である。
【0044】
図4(c)は第2の圧着具1bによって地毛にチップ本体21bを圧着する前の状態である。具体的には頭髪の毛束が第2の圧着具1bの上顎部3の凹部5bに集められ、第2の圧着具1bの下顎部4の凸部6bの上部の溝にチップ本体21bが載置された状態を示す。
【0045】
この状態で、施術者が第2の圧着具1bの柄部7aと柄部7b近づけるように把持部8を把持する。これにより軸部9が回動し、上顎部3の凸部5aと凹部5bのそれぞれが、前記下顎部4の凹部6aと凸部6bと噛合することでチップ本体21bを圧潰する。
【0046】
図4(d)はこの第2の圧着具1bによる圧潰によって地毛にチップ本体21bを圧着した後の状態である。U字断面の形状のチップ本体21bは厚み方向から見てM字となっている上顎部3の凹部5bの底部に沿って、U字の2つの腕が、U字の内側に向かうように丸まる。これにより筒形状の内部の毛髪の束が包み込まれ地毛にチップ本体21bが連結される。
【0047】
第1の圧着具を用いた場合と同様に下顎部4の複数の凸部6bに載置されたすべてのチップ本体21b対して圧着を同時に行うことができ、一回の圧着作業当たりに地毛に取付けられるエクステンション毛束を複数にできる。これにより地毛へのエクステンション毛束の取り付け作業を効率的に行うことができる。
【0048】
<第2の実施の形態>
次に本発明に係る第2の実施形態について説明する。第2の実施の形態では、圧着具とエクステンション毛束取付用チップに加えて、エクステンション用毛束付きチップを圧着工具に載置する作業を効率化するためのチップ載置補助具60を用いる。また併せて、更に作業を簡易化させるためのチップ送り補助具70を用いても良い。
【0049】
まず
図5(a)には第2の実施形態に用いる圧着具の下顎部4の正面図を示す。また
図5(a)のC−C線における断面図を
図5(b)に示す。
【0050】
第2の実施形態における圧着具の下顎部4にはチップ載置補助具60を取り付けるためのネジを取り付けるためのネジ穴53が2つ設けられている。また下顎部4の長手方向に沿って、歯車の歯が施された平板であるラック51が取り付けられている。ラック51は、下顎部4に施されたライン52をレールとして、ライン52が施された方向を往来自在に動く。下顎部4のその他の構造は実施の形態1で説明したものと同一である。
【0051】
図6(a)はチップ載置補助具60を下顎部4に取り付けた状態を斜視図で示した図である。
図6(b)、(c)及び(d)はそれぞれ、チップ載置補助具60の正面図、平面図、側面図を示している。
【0052】
チップ載置補助具60は、その主面61において、下顎部4の凸部6bに設けられた溝と略同一の幅と深さを有する複数のチップ送り溝62が並列に設けられている。そしてチップ送り溝62は下顎部4に対して、チップ送り溝62が下顎部4の凸部6bに設けられた溝と連続するようネジを用いて結合される。なお下顎部4とチップ載置補助具60の連結方法はねじ止めの方法に限られず適宜の方法で連結しても良い。
【0053】
複数のチップ送り溝62のそれぞれには、
図6(a)に示すように、複数個のエクステンション毛束付きチップ20a又は20bを一列に並べることができる。並べられたチップは、チップ送り溝に62に沿って、下顎部50側に移動させることで、容易にチップを下顎部4の凸部6bの溝に載置することができる。これにより一回の圧着作業が終了した後、直ちに次の圧着作業に備えて新たなチップを下顎部4の凸部6bの溝に載置することができ、連続した圧着作業が可能となる。これによりエクステンション毛束の取り付け作業を効率化することができる。
【0054】
また本実施の形態においてはチップ送り溝62に沿ったチップの移動させる作業をさらに簡易化するためのチップ送り補助具を用いることもできる。
【0055】
図7は本実施の形態に係るチップ送り補助具70をチップ載置補助具60に取付けた状態を説明するための図である。また
図7においてチップ載置補助具60は下顎部4に連結されている。
【0056】
まず
図7(a)は、チップ送り補助具70をチップ載置補助具60のチップ送り溝62がある主面61側からみた図である。チップ送り補助具70は、チップ載置補助具60の主面61側に、チップを下顎側に押して移動させるため櫛歯部71を備える。櫛歯部71は、チップ載置補助具60のチップ送り溝62と同数の櫛歯を有する。
【0057】
またチップ送り補助具70の櫛歯部71と対向する面には裏面72がある。
図7(b)は裏面72側からチップ送り補助部70を見た図である。またチップ送り補助具70には側面73a、73bと正面73cがある。側面73aと73bはチップ載置補助具60の側面を外部からカバーする面で、裏面72と直交し、互いに対向している。正面73cは、チップ載置補助具60の正面を外部からカバーする面で、裏面72、側面73aと73bのそれぞれと直交する。裏面72のチップ載置補助具に近いほうの端部の中央付近にはワイヤ74が取り付けられている。
【0058】
ここでチップ載置補助具60は更にワイヤ巻取り用ピニオン75を備えている。ワイヤ巻取り用ピニオン75はピニオン部75a及びワイヤ巻取り部75bで構成される。
【0059】
ピニオン部75aは下顎部4に設けられたラック51との組み合わせにより、ラック・アンド・ピニオン構造を構成する。すなわち、ピニオン部75aとラック51のギアが篏合し、ラック51をスライドさせることにより、ピニオン部75aを回転させることができる。ピニオン75aの回転に伴いワイヤ巻取り部75bも回転し、ワイヤ74を巻き取ることができる。またこの機構に加えてラチェット機構などの逆回転防止機構76を備えていても良い。
【0060】
上記のラック・アンド・ピニオン機構により、エクステンションの施術者がラック51をスライドさせることで、ワイヤ74がワイヤ巻取り部75bに巻き取られる。これに伴い、チップ送り補助部70がチップ載置補助具60側にスライドして移動する。この時、櫛歯部71の櫛歯がチップ載置補助具60の主面上のチップを下顎部4側に押して移動させることができる。
【0061】
これによりチップ送り溝62に沿って、複数のチップを同時に移動させ、下顎部4の凸部6bの浅い溝にチップを載置する作業を簡易化することができ、エクステンション毛束の取り付け作業をさらに効率化することができる。
【解決手段】断面が薄肉開断面のエクステンション用毛束取付用チップを地毛に圧着するための圧着具であって、一対の柄からなる把持部と、上顎部と下顎部からなる噛合部を備え、前記上顎部と前記下顎部のそれぞれに、凹部と凸部が長手方向に交互に設けられ前記下顎部の凸部の上部にはチップ載置溝が設けられ、前記一対の柄部を近づけるように前記把持部を把持することで、前記上顎部の凹部と凸部がそれぞれ前記下顎部の凸部と凹部と噛合する圧着具。