特許第6792934号(P6792934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792934
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】チゼル用鋼およびチゼル
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20201119BHJP
   B25D 17/02 20060101ALI20201119BHJP
   C22C 38/44 20060101ALI20201119BHJP
   C22C 38/54 20060101ALI20201119BHJP
   C21D 9/00 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   C22C38/00 301H
   B25D17/02
   C22C38/44
   C22C38/54
   !C21D9/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-230543(P2014-230543)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-94636(P2016-94636A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年10月2日
【審判番号】不服2019-4461(P2019-4461/J1)
【審判請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(72)【発明者】
【氏名】聒田 英治
(72)【発明者】
【氏名】前田 和生
(72)【発明者】
【氏名】梶浦 豪二
【合議体】
【審判長】 粟野 正明
【審判官】 北村 龍平
【審判官】 井上 猛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−144009(JP,A)
【文献】 特開昭59−025957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C38/00-38/60
C21D9/00-9/44
C21D9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チゼルを構成する材料として用いられるべきチゼル用鋼であって、
0.39質量%以上0.45質量%以下の炭素と、0.2質量%以上1.0質量%以下の珪素と、0.10質量%以上0.90質量%以下のマンガンと、0.002質量%以上0.005質量%以下の硫黄と、0.1質量%以上3.0質量%以下のニッケルと、0.70質量%以上1.50質量%以下のクロムと、0.10質量%以上0.60質量%以下のモリブデンとを含有し、0.05質量%以上0.20質量%以下のバナジウム、0.005質量%以上0.05質量%以下のニオブ、0.01質量%以上0.15質量%以下のジルコニウム、0.01質量%以上0.10質量%以下のチタンおよび0.1質量%以上2.0質量%以下のコバルトからなる群から選択される少なくとも1種以上をさらに含有し、残部が鉄および不可避的不純物からな、チゼル用鋼。
【請求項2】
0.001質量%以上0.005質量%以下の硼素をさらに含有する、請求項1に記載のチゼル用鋼。
【請求項3】
炭素の含有量の1/2と、硫黄の含有量の4倍と、不可避的不純物としてのリンの含有量との和であるRaの値が0.25質量%以下である、請求項1または請求項2に記載のチゼル用鋼。
【請求項4】
前記Raの値が0.22質量%以上である、請求項3に記載のチゼル用鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチゼル用鋼およびチゼルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ブレーカは、作業機械のアームの先端に取り付けられ、岩盤、コンクリート、炉壁、製鉄スラグ等の破砕に使用される。油圧ブレーカにおいては、ピストンにより軸方向に駆動されるチゼルが岩盤等を破砕する。硬度の高い岩盤等との接触による摩耗を抑制するため、チゼルを構成する材料(鋼)には高い耐摩耗性が要求される。また、棒状の部材であるチゼルは、岩盤等を破砕する際の衝撃により折損する場合がある。折損を抑制する観点から、チゼルを構成する鋼には、高い靱性も要求される。耐摩耗性と靱性とを両立することを意図して成分組成が調整されたチゼル用鋼が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−214485号公報
【特許文献2】特開平8−199287号公報
【特許文献3】特開平11−131193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧ブレーカの使用条件はより過酷になっており、チゼルの耐久性向上の要求がある。そのため、チゼルの耐久性を一層向上させるチゼル用鋼が必要である。
【0005】
本発明はこのような要求に対応するためになされたものであって、その目的は、耐久性の向上を達成することが可能なチゼル用鋼およびチゼルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従ったチゼル用鋼は、チゼルを構成する材料として用いられるべき鋼である。このチゼル用鋼は、0.39質量%以上0.45質量%以下の炭素と、0.2質量%以上1.0質量%以下の珪素と、0.10質量%以上0.90質量%以下のマンガンと、0.002質量%以上0.005質量%以下の硫黄と、0.1質量%以上3.0質量%以下のニッケルと、0.70質量%以上1.50質量%以下のクロムと、0.10質量%以上0.60質量%以下のモリブデンとを含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる。
【0007】
本発明者らは、チゼルの耐久性を向上させるための方策について検討を行った。そして、過酷な環境下で使用されるチゼルにおいては、岩盤等との接触による摩耗や折損のほかに、割損によるチゼルの損傷が発生する点に本発明者らは着眼した。割損は、チゼルが衝撃により破断する折損とは異なり、チゼルの先端付近が欠ける損傷である。割損は、折損のようにチゼルが直ちに使用不能となる損傷ではないが、実質的にチゼルの先端が急激に摩耗する状態と同様の損傷を受けることとなる。本発明者らの検討によれば、過酷な環境下で使用されるチゼルにおいては、この割損と摩耗とがチゼルの損傷において重要な要因となる。
【0008】
過酷な環境下で使用されるチゼルにおいては、高い耐摩耗性が要求される。耐摩耗性は、硬度を上昇させることにより向上させることができる。すなわち、耐摩耗性は硬度により評価することができる。一方、本発明者らの検討によれば、耐割損性向上のためには、耐折損性の場合とは異なり、シャルピー衝撃値を指標とするよりも引張試験における絞りを指標として、チゼルを構成する鋼の成分組成を調整することが有効である。
【0009】
この知見に基づき、本発明者らは、チゼルに求められる耐摩耗性および耐割損性を考慮し、焼入焼戻後の硬度57HRC以上、かつ絞り40%以上を達成可能な鋼の成分組成を検討した。その結果、上記成分組成を有する鋼によりこの目標値を達成可能であることが明らかとなり、本発明に想到した。すなわち、炭素、珪素、マンガン、硫黄、ニッケル、クロムおよびモリブデンを上記組成に調整した鋼に対して焼入焼戻処理を実施することにより、硬度を57HRC以上、かつ絞りの値を40%以上とすることができる。以上のように、本発明のチゼル用鋼によれば、チゼルの耐久性を向上させることが可能なチゼル用鋼を提供することができる。
【0010】
上記チゼル用鋼は、0.05質量%以上0.20質量%以下のバナジウム、0.005質量%以上0.05質量%以下のニオブ、0.01質量%以上0.15質量%以下のジルコニウム、0.01質量%以上0.10質量%以下のチタンおよび0.1質量%以上2.0質量%以下のコバルトからなる群から選択される少なくとも1種以上をさらに含有するものであってもよい。これらの元素を追加的に添加することにより、絞りの値が容易に向上し、チゼルの耐久性を一層向上させることができる。
【0011】
上記チゼル用鋼は、0.001質量%以上0.005質量%以下の硼素をさらに含有するものであってもよい。硼素は、鋼の焼入性を向上させる元素である。硼素を追加的に添加することにより、絞りを低下させる元素の含有量を抑制しつつ、鋼に十分な焼入性を付与することができる。なお、硼素は、鋼中の窒素と結合して窒化物を形成する。そのため、添加した硼素を有効に機能させるためには、硼素とともに、0.01質量%以上0.10質量%以下のチタンも添加することが望ましい。
【0012】
上記チゼル用鋼においては、炭素の含有量の1/2と、硫黄の含有量の4倍と、不可避的不純物としてのリンの含有量との和であるRaの値が0.25質量%以下であることが好ましい。これにより、チゼルの耐久性を一層向上させることができる。
【0013】
上記チゼル用鋼においては、上記Raの値が0.22質量%以上であってもよい。これにより、チゼルに十分な硬度を付与しつつ製造コストを低減することができる。
【0014】
本発明に従ったチゼルは、0.39質量%以上0.45質量%以下の炭素と、0.2質量%以上1.0質量%以下の珪素と、0.10質量%以上0.90質量%以下のマンガンと、0.002質量%以上0.005質量%以下の硫黄と、0.1質量%以上3.0質量%以下のニッケルと、0.70質量%以上1.50質量%以下のクロムと、0.10質量%以上0.60質量%以下のモリブデンとを含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼から構成される。
【0015】
上記チゼルにおいて、上記鋼は、0.05質量%以上0.20質量%以下のバナジウム、0.005質量%以上0.05質量%以下のニオブ、0.01質量%以上0.15質量%以下のジルコニウム、0.01質量%以上0.10質量%以下のチタンおよび0.1質量%以上2.0質量%以下のコバルトからなる群から選択される少なくとも1種以上をさらに含有するものであってもよい。
【0016】
また、上記チゼルにおいて、上記鋼は、0.001質量%以上0.005質量%以下の硼素をさらに含有するものであってもよい。
【0017】
チゼルを構成する材料として上記本発明のチゼル用鋼を採用することにより、高い耐摩耗性と高い耐割損性との両立を達成することができる。その結果、優れた耐久性を有するチゼルを提供することができる。
【0018】
上記チゼルにおいて、上記鋼の、炭素の含有量の1/2と、硫黄の含有量の4倍と、不可避的不純物としてのリンの含有量との和であるRaの値は0.25質量%以下であることが好ましい。これにより、チゼルの耐久性を一層向上させることができる。
【0019】
上記チゼルにおいては、上記Raの値が0.22質量%以上であってもよい。これにより、チゼルに十分な硬度を付与しつつ製造コストを低減することができる。
【0020】
ここで、鋼の成分組成を上記範囲に限定した理由について説明する。
【0021】
炭素:0.39質量%以上0.45質量%以下
炭素は、鋼の硬度に大きな影響を及ぼす元素である。炭素含有量が0.39質量%未満では、焼入焼戻によって硬度を57HRC以上とすることが難しくなる。一方、炭素含有量が0.45質量%を超えると、絞りの値を40%以上とすることが困難となる。そのため、炭素含有量は上記範囲とすることが必要である。また、十分な硬度を容易に確保する観点から、炭素含有量は0.40質量%以上とすることが好ましい。さらに、十分な絞りの値を容易に確保する観点から、炭素含有量は0.44質量%以下とすることが好ましい。
【0022】
珪素:0.2質量%以上1.0質量%以下
珪素は、鋼の焼入性の向上、鋼のマトリックスの強化、焼戻軟化抵抗性の向上等の効果に加えて、製鋼プロセスにおいては脱酸効果を有する元素である。珪素含有量が0.2質量%以下では、上記効果が十分に得られない。一方、珪素含有量が1.0質量%を超えると、絞りの値が低下する傾向がある。そのため、珪素含有量は上記範囲とすることが必要である。また、珪素は著しく焼入性を向上させる元素であり、過剰に添加すると焼割れが生じるおそれがある。焼割れの回避を容易にする観点から、珪素含有量は0.7質量%以下とすることが好ましい。
【0023】
マンガン:0.10質量%以上0.90質量%以下
マンガンは、鋼の焼入性の向上に有効であるとともに、製鋼プロセスにおいては脱酸効果を有する元素である。マンガン含有量が0.10質量%以下では、上記効果が十分に得られない。一方、マンガン含有量が0.90質量%を超えると、焼入硬化前の硬度が上昇し、加工性が低下する傾向がある。そのため、マンガン含有量は上記範囲とすることが必要である。また、鋼の十分な焼入性を確保する観点から、マンガン含有量は0.40質量%以上とすることが好ましい。また、加工性を重視する場合、マンガン含有量は0.85質量%以下であることが好ましく、0.80質量%以下とすることがより好ましい。
【0024】
硫黄:0.002質量%以上0.005質量%以下
硫黄は、鋼の被削性を向上させる元素である。また、硫黄は、製鋼プロセスにおいて意図的に添加しなくても混入する元素でもある。硫黄含有量を0.002質量%未満とすると、被削性が低下するとともに、鋼の製造コストが上昇する。一方、本発明者らの検討によれば、本発明のチゼル用鋼の成分組成において、硫黄含有量は絞りの値に大きく影響する。そして、硫黄含有量が0.005質量%を超えると、絞りの値を40%以上とすることが困難となる。そのため、硫黄含有量は上記範囲とすることが必要である。また、硫黄含有量を0.004質量%以下とすることにより、チゼルの耐割損性を一層向上させることができる。
【0025】
ニッケル:0.1質量%以上3.0質量%以下
ニッケルは、鋼のマトリックスの靭性を向上させるのに有効な元素である。ニッケル含有量が0.1質量%未満では、この効果が発揮されない。一方、ニッケル含有量が3.0質量%を超えると、ニッケルが鋼中において偏析する傾向が強くなる。その結果、鋼の機械的性質がばらつくという問題が生じ得る。そのため、ニッケル含有量は上記範囲とする必要がある。また、ニッケル含有量が2.0質量%を超えると、靱性の向上が緩やかとなる一方で、鋼の製造コストが高くなる。このような観点から、ニッケル含有量は、2.0質量%以下とすることが好ましい。一方、57HRC以上の硬度を有する鋼において、鋼のマトリックスの靭性を向上させるという効果を十分に発揮させるには、ニッケル含有量は1.0質量%以上とすることが好ましい。
【0026】
クロム:0.70質量%以上1.50質量%以下
クロムは、鋼の焼入性を向上させるとともに、焼戻軟化抵抗性を高める。とりわけ、モリブデン、ニオブ、バナジウム等との複合添加によって、鋼の焼戻軟化抵抗性を顕著に高める。クロム含有量が0.70質量%未満では、このような効果が十分に発揮されない。また、クロム含有量が1.50質量%を超えると、焼戻軟化抵抗性の向上が緩やかになる一方で、鋼の製造コストが高くなる。そのため、クロム含有量は上記範囲とする必要がある。
【0027】
モリブデン:0.10質量%以上0.60質量%以下
モリブデンは、焼入性を向上させ、焼戻軟化抵抗性を高める。また、モリブデンは、高温焼戻脆性を改善する機能も有している。モリブデン含有量が0.10質量%未満では、これらの効果が十分に発揮されない。一方、モリブデン含有量が0.60質量%を超えると、上記効果が飽和する。そのため、モリブデン含有量は上記範囲とする必要がある。
【0028】
バナジウム:0.05質量%以上0.20質量%以下
バナジウムは、本発明のチゼル用鋼において必須の元素ではない。しかし、バナジウムは、微細な炭化物を形成し、結晶粒の微細化に寄与する。バナジウム含有量が0.05質量%未満では、このような効果が十分に得られない。一方、バナジウム含有量が0.20質量%を超えると、上記効果は飽和する。また、バナジウムは比較的高価な元素であるため、添加量は必要最低限とすることが好ましい。そのため、バナジウムを添加する場合、添加量は上記範囲とすることが適切である。
【0029】
ニオブ:0.005質量%以上0.05質量%以下
ニオブは、鋼の強度および靱性の向上、ならびに結晶粒微細化に対して有効である。特に、ニオブはクロム、モリブデンとの複合添加によって著しく鋼の結晶粒を細粒化し、焼戻軟化抵抗性を顕著に高めるので、靱性改善に極めて有効な元素である。この効果を確保するためには、ニオブ含有量は0.005質量%以上必要である。一方、ニオブ含有量が0.05質量%を超えると、粗大な共晶NbCの晶出や、多量のNbC形成に起因してマトリックス中の炭素量低下を招くため、強度低下や靭性低下という問題が生じる。また、ニオブ含有量が0.05質量%を超えると、鋼の製造コストも高くなる。そのため、ニオブを添加する場合、添加量は上記範囲とすることが適切である。また、強度低下や靭性低下の問題をより確実に抑制し、製造コストを低減する観点から、ニオブ含有量は0.04質量%以下とすることが好ましい。
【0030】
ジルコニウム:0.01質量%以上0.15質量%以下
ジルコニウムは、必須の元素ではないが、鋼中において炭化物を球状細粒化して分散させることにより、鋼の靱性を一層改善する効果を有する。特に、高強度鋼に高靱性を付与するために添加することが好ましい。ジルコニウム含有量が0.01質量%未満では、その効果が十分に得られない。一方、ジルコニウム含有量が0.15質量%を超えると、かえって鋼の靱性が劣化する。そのため、ジルコニウムを添加する場合、添加量は上記範囲とすることが適切である。
【0031】
チタン:0.01質量%以上0.10質量%以下
チタンは、鋼の靱性を改善する目的で必要に応じて添加することができる。チタン含有量が0.01質量%未満では、靱性改善の効果が小さい。一方、チタン含有量が0.10質量%を超えると、かえって鋼の靱性が劣化する。そのため、チタンを添加する場合、添加量は上記範囲とすることが適切である。
【0032】
コバルト:0.1質量%以上2.0質量%以下
コバルトは、必須の元素ではないが、クロム、モリブデンなどのカーバイド形成元素のマトリックスへの固溶度を上昇させるとともに、鋼の焼戻軟化抵抗性を向上させる。そのため、コバルトの添加により炭化物の微細化と焼戻温度の高温化とを達成し、それによって鋼の強度および靭性を向上させることができる。コバルト含有量が0.1質量%未満では、このような効果が十分に得られない。一方、コバルトは、鋼の焼入性を低下させる。また、コバルトは高価な元素であるため、多量の添加は鋼の製造コストを上昇させる。コバルト含有量が2.0質量%を超えると、このような問題が顕著となる。そのため、コバルトを添加する場合、添加量は上記範囲とすることが適切である。
【0033】
硼素:0.001質量%以上0.005質量%以下
硼素は、鋼の焼入性を顕著に向上させる元素である。硼素を添加することにより、焼入性向上を目的として添加される他の元素の添加量を低減し、鋼の製造コストを低減することができる。また、硼素は、旧オーステナイト結晶粒界にリンおよび硫黄よりも偏析する傾向が強く、特に硫黄を粒界から排出して粒界強度を改善する。硼素含有量が0.001質量%以下では、このような効果が十分に発揮されない。一方、硼素含有量が0.005質量%を超えると、添加された硼素と窒素とが結合してBNが形成され、鋼の靭性を劣化させる。そのため、硼素を添加する場合、添加量は上記範囲とすることが適切である。
【発明の効果】
【0034】
以上の説明から明らかなように、本発明のチゼル用鋼およびチゼルによれば、耐久性の向上を達成することが可能なチゼル用鋼およびチゼルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】油圧ブレーカの構造を示す概略断面図である。
図2】チゼルの製造工程の概略を示すフローチャートである。
図3】硬度と衝撃値との関係を示す図である。
図4】硬度と伸びとの関係を示す図である。
図5】硬度と絞りとの関係を示す図である。
図6】硬度と絞りとの関係に及ぼすニッケルおよび炭素の含有量の影響を示す図である。
図7】硬度と絞りとの関係に及ぼすニッケル、炭素およびコバルトの含有量の影響を示す図である。
図8】硬度と絞りとの関係に及ぼすニッケル、炭素および硫黄等の含有量の影響を示す図である。
図9】Ra値と絞りとの関係を示す図である。
図10】摩耗試験の試験結果を示す図である。
図11】衝撃試験の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0037】
本実施の形態のチゼル用鋼は、たとえば以下のように、油圧ブレーカに含まれるチゼルを構成する材料として用いることができる。図1は、油圧ブレーカの構造を示す概略断面図である。図1を参照して、本実施の形態における油圧ブレーカ1は、チゼル10と、ピストン20と、フレーム30とを備える。チゼル10は、棒状の形状を有する。チゼル10は円筒形状を有するベース部12と、ベース部12に接続され、先端11Aに近づくにしたがって軸方向に垂直な断面における断面積が小さくなる縮径部11とを含む。軸方向において先端11Aとは反対側の基端側に、軸方向に交差する平面部である基端側平面部12Aが形成されている。軸方向において、チゼル10の基端側平面部12Aに近い側がフレーム30に取り囲まれており、先端11Aに近い側がフレーム30から突出している。フレーム30に取り囲まれるチゼル10の領域には、凹部12Bが形成される。凹部12Bに対応するフレーム30の内周面の領域には、ストッパーピン50が配置される。
【0038】
ピストン20は、棒状の形状を有する。ピストン20は、フレーム30に取り囲まれる領域に配置される。ピストン20は、チゼル10と同軸に配置される。ピストン20の先端側には、軸方向に交差する平面部である先端側平面部21が形成されている。ピストン20の先端側平面部21とチゼルの基端側平面部12Aとが対向するようにチゼル10およびピストン20は配置される。ピストン20はフレーム30に対して軸方向に相対的に移動可能に保持されている。ピストン20が軸方向に移動してチゼル10を叩くことにより、チゼル10に打撃力が伝達される。フレーム30の内周側に形成された打撃室31内において、ピストン20の先端側平面部21がチゼル10の基端側平面部12Aに接触することにより、ピストン20からチゼル10に打撃力が伝達される。チゼル10は伝達された打撃力により岩盤等を破砕する。
【0039】
ピストン20とフレーム30との間には、ピストン20を駆動するための作動油が進入するための油室32が形成されている。フレーム30の側面に、コントロールバルブ機構40が設置される。コントロールバルブ機構40から作動油が油室32に供給されることによりピストン20が軸方向に駆動され、ピストン20がチゼル10を打撃する。チゼル10はピストン20から伝達された打撃力により岩盤等を破砕する。
【0040】
このようなチゼル10が過酷な環境下で使用される場合、上述のように、硬度および絞りの値を上昇させることで耐摩耗性および耐割損性が向上し、優れた耐久性が得られる。本実施の形態におけるチゼル10は、0.39質量%以上0.45質量%以下の炭素と、0.2質量%以上1.0質量%以下の珪素と、0.10質量%以上0.90質量%以下のマンガンと、0.002質量%以上0.005質量%以下の硫黄と、0.1質量%以上3.0質量%以下のニッケルと、0.70質量%以上1.50質量%以下のクロムと、0.10質量%以上0.60質量%以下のモリブデンとを含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなるチゼル用鋼から構成されている。
【0041】
これにより、チゼル10において高い耐摩耗性が達成されつつ、耐割損性が高いレベルに維持される。その結果、本実施の形態におけるチゼル10は、耐久性に優れたものとなっている。
【0042】
さらに、チゼル10を構成する上記チゼル用鋼は、0.05質量%以上0.20質量%以下のバナジウム、0.005質量%以上0.05質量%以下のニオブ、0.01質量%以上0.15質量%以下のジルコニウム、0.01質量%以上0.10質量%以下のチタンおよび0.1質量%以上2.0質量%以下のコバルトからなる群から選択される少なくとも1種以上をさらに含有するものであってもよい。これらの元素を追加的に添加することにより、絞りの値が容易に向上し、チゼル10の耐久性を一層向上させることができる。
【0043】
また、チゼル10を構成する上記チゼル用鋼は、0.001質量%以上0.005質量%以下の硼素をさらに含有するものであってもよい。これにより、絞りを低下させる元素の含有量を抑制しつつ、鋼に十分な焼入性を付与することができる。なお、硼素は、鋼中の窒素と結合して窒化物を形成する。そのため、添加した硼素を有効に機能させるためには、硼素とともに、0.01質量%以上0.10質量%以下のチタンも添加することが望ましい。
【0044】
さらに、チゼル10を構成する上記チゼル用鋼において、炭素の含有量の1/2と、硫黄の含有量の4倍と、不可避的不純物としてのリンの含有量との和であるRaの値が0.25質量%以下となるように、鋼の成分組成が調整されることが好ましい。これにより、チゼル10の耐久性が一層向上する。また、上記Raの値が0.22質量%以上であってもよい。これにより、チゼル10に十分な硬度を付与しつつ製造コストを低減することができる。
【0045】
次に、チゼル10の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。図2は、チゼルの製造工程の概略を示すフローチャートである。本実施の形態におけるチゼル10の製造方法では、まず工程(S10)として鋼材準備工程が実施される。この工程(S10)では、たとえば上記チゼル用鋼の成分組成を有し、中実円筒状の形状を有する鋼材が準備される。
【0046】
次に、工程(S20)として加工工程が実施される。この工程(S20)では、工程(S10)において準備された鋼材に対して、切削加工などの加工が施される。これにより、本実施の形態のチゼル10の概略形状を有する成形体が得られる。
【0047】
次に、工程(S30)として焼入工程が実施される。この工程(S30)では、工程(S20)において得られた成形体に対して焼入処理が実施される。焼入処理は、たとえば成形体が雰囲気炉において870℃程度の温度に加熱した後、水冷または油冷することにより実施することができる。
【0048】
次に、工程(S40)として焼戻工程が実施される。この工程(S40)では、工程(S30)において焼入処理された成形体に対して焼戻処理が実施される。焼戻処理は、たとえば成形体が加熱炉において200℃程度に加熱した後、空冷することにより実施することができる。
【0049】
次に、工程(S50)として仕上げ工程が実施される。この工程(S50)では、工程(S40)において焼戻処理が実施された成形体に対して、切削加工、研削加工、ショットブラスト、塗装などの仕上げ処理が必要に応じて実施される。以上の手順により、本実施の形態のチゼル10を製造することができる。
【0050】
以上のように、上記成分組成を有するチゼル用鋼からなる鋼材を加工して成形体を作製し、熱処理を実施した後、必要に応じて仕上げ処理を実施することにより、本実施の形態におけるチゼル10を得ることができる。このチゼル10は、過酷な環境下において使用された場合でも、優れた耐摩耗性および耐割損性を有する。なお、上記チゼル10の製造方法において、焼戻温度を高くすることにより、硬度が低下し、絞りの値は大きくなる。そのため、チゼルが使用される環境に合わせて焼戻温度を設定することができる。すなわち、上記チゼル用鋼を材料として採用することにより、チゼルの表面を含む領域の硬度を57HRC以上、かつ絞りを40%以上としてもよいし、たとえば割損の低減を重視して硬度を55HRC程度とし、かつ絞りを50%以上としてもよい。
【実施例1】
【0051】
チゼルの耐摩耗性を向上させつつ耐割損性を高いレベルに維持する方策について、検討する実験を行った。実験の手順は以下の通りである。
【0052】
まず、以下の表1に示す成分組成を有する鋼材を準備した。表1の材料A〜FおよびO〜Qが本発明のチゼル用鋼(実施例)であり、材料G〜Nは、本発明の範囲外の鋼(比較例)である。
【0053】
【表1】
そして、従来から耐摩耗性と耐衝撃性とが求められる部品の材料として採用されている材料Iを用いて、耐割損性の指標とすべき材料特性の検討を行った。具体的には、同一条件で焼入処理した後、焼戻温度を調整することにより、硬度の異なる引張試験片およびシャルピー衝撃試験片を準備し、試験を実施した。引張試験片およびシャルピー衝撃試験片には、それぞれJIS Z 2201(日本工業規格)14A号試験片(直径φ6mm)およびJIS Z 2202(2mmUノッチ)試験片を採用した。そして、試験の結果得られた硬度と衝撃値との関係、硬度と伸びとの関係および硬度と絞りとの関係を調査した。
【0054】
図3を参照して、衝撃値は硬度54HRC付近において極大となっており、たとえば硬度51HRCの場合よりも硬度56HRCの場合のほうが、衝撃値が高くなっている。一方、チゼルが実際に使用された場合、材料Iからなるチゼルでは、硬度が55HRC以上となると、割損が発生する場合が多い。つまり、シャルピー衝撃値の上昇は、耐割損性の向上に直結しないことが分かる。したがって、シャルピー衝撃値を耐割損性の指標とすることは適切ではないといえる。
【0055】
また、図4を参照して、引張試験の伸びの値は、硬度50HRC以上の範囲においては大きく変化しない。そして、チゼルにおける割損発生が顕著となる閾値である硬度55HRC付近においても、伸びの値は大きく変化していない。したがって、引張試験の伸びの値も、耐割損性の指標としては適切でないといえる。
【0056】
一方、図5を参照して、引張試験の絞りの値は、硬度が55HRCを超えると急激に低下している。このことから、引張試験の絞りの値は、耐割損性の指標として適切であるといえる。そして、従来の鋼である材料Iからなるチゼルでは、硬度55HRC未満において割損が抑制されていることを考慮すると、絞り40%以上であることを、耐割損性の確保の指標として設定することができる。以上の検討結果に基づき、本発明者らは、耐摩耗性を向上させつつ耐割損性を維持する観点から、硬度57HRC以上、かつ絞り40%以上を、目標値として設定した。なお、製造プロセスの条件等のばらつきを考慮すると、硬度については58HRC以上を確保することが望ましい。
【0057】
次に、上記材料Iに対して靱性向上効果を有するNi(ニッケル)の添加、硬度上昇効果を有するC(炭素)の増量のほか、Mo(モリブデン)やNb(ニオブ)の含有量を変化させた材料J〜Nについて、焼入処理した後、焼戻温度を調整することにより硬度を変化させた引張試験片を準備し、引張試験を行った。試験片の形状は、上記と同形状である。そして、硬度と絞りとの関係を調査した。試験結果を図6に示す。
【0058】
図6を参照して、材料Iに対して行った上記成分調整では、焼戻温度を調整して硬度を変化させても、硬度57HRC以上、かつ絞り40%以上という目標値を達成することは困難であることが確認された。
【0059】
次に、上記材料Iに対してNiの添加、およびC(炭素)の増量を行うとともに、Co(コバルト)を添加した材料GおよびHについても同様の調査を行った。試験結果を図7に示す。
【0060】
図7を参照して、材料Iに対して行った上記成分調整により、ごく狭い範囲において上記目標値が達成されている。しかし、実際のチゼルの生産プロセスにおける鋼の成分のばらつきや熱処理条件等のばらつきを考慮すると、上記成分調整のみでは、所望の特性をチゼルに確実に付与することは容易ではない。
【0061】
次に、上記材料Iに対してNiの添加、およびS(硫黄)の低減を行うとともに、C、B(硼素)、V(バナジウム)、Zr(ジルコニウム)およびNb等の含有量を調整した材料A〜FおよびO〜Qについても同様の調査を行った。試験結果を図8に示す。
【0062】
図8を参照して、絞り値の低減にはSの低減が極めて有効であることが分かる。そして、実施例である材料A〜FおよびO〜Qを用いることで、上記目標値が達成可能であることが分かる。さらに、図8より、B、Nb、Ti、V、Zr、Coの添加が、上記目標値の達成に対して有効であることが分かる。以上のように、本発明のチゼル用鋼によれば、引張試験の絞り値を高いレベルに維持しつつ、従来の材料Iに比べて硬度を上昇させることが可能となる。その結果、チゼルの耐割損性を高いレベルに維持しつつ、耐摩耗性を向上させることが可能である。
【0063】
さらに、より好ましい硬度である硬度58HRC以上を確保しつつ、絞り40%以上を達成することが可能な成分組成について検討した。具体的には、表1の材料A〜Qのうち、焼戻温度を調整しても硬度58HRC以上を達成できなかったものを除く各材料について、炭素の含有量の1/2と、硫黄の含有量の4倍と、不可避的不純物としてのリンの含有量との和であるRaを算出した。すなわち、Raは以下の式(1)により定義される。
【0064】
Ra=(1/2)C+4S+P ・・・(1)
そして、Ra値と焼戻により硬度58HRCに調整した場合の絞りの値との関係を調査した。Ra値と当該絞りの値との関係を図9に示す。
【0065】
図9を参照して、Ra値と絞りの値との間には明確な相関が認められる。そして、Ra値を0.25質量%以下とすることにより、硬度58HRCに調整した場合の絞りの値を40%以上とすることが可能となっている。このことから、Ra値が0.25質量%以下となるように鋼の成分組成を調整することが好ましいことが確認される。なお、Ra値を0.22質量%未満とすることは、たとえばC(炭素)の量を低減することにより達成することができる。しかし、たとえば0.39質量%未満にまでC量を低減すると、十分な硬度を得ることが難しくなる。一方、十分な硬度を確保可能なC量が維持された場合、Ra値を0.22質量%未満とするためには、S(硫黄)および不可避的不純物であるP(リン)の量を極めて低い水準にまで低減する必要がある。この場合、鋼の製造コストが高くなる。このように、十分な硬度の確保および製造コスト低減の観点から、Ra値は0.22質量%以上であることが好ましい。
【実施例2】
【0066】
本発明のチゼル用鋼について、耐摩耗性を確認する実験を行った。実験の手順は以下の通りである。
【0067】
まず、本発明のチゼル用鋼である上記材料AおよびBの鋼材と、従来の鋼である材料Iの鋼材とを準備し、焼入処理および焼戻処理を実施した試験片を準備した。試験片の形状は、直径60mm、高さ7mmの円盤状である。この試験片を円盤状の形状を有する相手材(硬度52HRC)の外周面に面圧65kg/mmで接触させつつ、相対すべり1.04、回転数320rpmで周方向に回転させた。このとき、6号珪砂を45g/minの割合で投入することにより試験片と相手材との間に土砂(珪砂)を供給した。そして、所定時間経過後に試験片を取り出し、摩耗により減少した重量(摩耗重量)を計測した。図10に試験結果を示す。
【0068】
図10において、縦軸は、材料Aの摩耗重量を1とした比で表されている。図10に示すように、本発明のチゼル用鋼である材料AおよびBの摩耗重量と、従来の材料である材料Iの摩耗重量とを比較すると、約38%の差異がある。このことから、本発明のチゼル用鋼は、従来の鋼に比べて耐摩耗性(耐土砂摩耗性)に優れていることが確認される。
【実施例3】
【0069】
本発明のチゼル用鋼について、衝撃特性を確認する実験を行った。まず、本発明のチゼル用鋼である上記材料E、および従来の鋼である材料Iの鋼材を準備し、焼入処理および焼戻処理を実施した試験片を準備した。このとき、焼戻温度を調整することにより、各鋼材について硬度の異なる試験片を作製した。試験片としては、JIS Z 2202(2mmUノッチ)衝撃試験片を採用した。そして、作製された試験片を用いてシャルピー衝撃試験を実施し、硬度と衝撃値との関係を調査した。図11に試験結果を示す。
【0070】
図11を参照して、本発明のチゼル用鋼である材料Eは、硬度が約3HRC上昇しているにも関わらず、従来の鋼である材料Iと同等の衝撃値を有している。このことから、本発明のチゼル用鋼によれば、耐摩耗性と耐衝撃性が求められる部品の材料として従来から採用される鋼よりも優れた衝撃特性を得られることが確認される。
【0071】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のチゼルおよびチゼル用鋼は、過酷な環境下において使用されるチゼルおよびその材料として、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0073】
1 油圧ブレーカ、10 チゼル、11 縮径部、11A 先端、12 ベース部、12A 基端側平面部、12B 凹部、20 ピストン、21 先端側平面部、30 フレーム、31 打撃室、32 油室、40 コントロールバルブ機構、50 ストッパーピン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11