特許第6792936号(P6792936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792936
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20201119BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20201119BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20201119BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20201119BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20201119BHJP
   C07C 205/57 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C08F20/36
   C08F230/08
   G02F1/15
   C09K9/02 A
   C07C201/12
   C07C205/57
【請求項の数】4
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2015-175089(P2015-175089)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-48352(P2017-48352A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】加畑 雅之
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/029095(WO,A1)
【文献】 特開平04−019748(JP,A)
【文献】 特開昭60−058947(JP,A)
【文献】 特開昭61−059334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00−246/00;301/00
C08C19/00−19/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV):
【化1】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は水素原子またはニトロ基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有する(メタ)アクリレート系ポリマーを少なくとも含む、ここで、該(メタ)アクリレート系ポリマーにおける式(IV)で表わされる繰り返し単位の含有率は30質量%以上である、エレクトロクロミック材料用原料。
【請求項2】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、さらに、式(V):
【化2】
(式中、R4は水素原子またはメチル基、R5は炭素数1〜4のアルキレン基、R6〜R8はそれぞれ独立して、OR9基またはR10基、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示し、R6〜R8のうち少なくとも2個はOR9基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有する請求項1に記載の、エレクトロクロミック材料用原料。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレクトロクロミック材料用原料を含有することを特徴とするエレクトロクロミック材料。
【請求項4】
エレクトロクロミック層を有する透明電極と対向電極とを有するエレクトロクロミック素子であって、前記エレクトロクロミック層が、請求項3に記載のエレクトロクロミック材料で形成されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、エレクトロクロミック材料、当該エレクトロクロミック材料の原料として好適に用いることができる(メタ)アクリレート系ポリマーおよびその製造方法、当該(メタ)アクリレート系ポリマーの原料として好適に用いることができる(メタ)アクリレート系モノマーおよびその製造方法、ならびに前記エレクトロクロミック材料が用いられたエレクトロクロミック素子に関する。本発明のエレクトロクロミック材料は、例えば、窓、防眩ミラー、調光フィルム、電子ペーパー、電子広告、電子ラベルなどの用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロクロミック材料として種々のものが提案されている。エレクトロクロミック材料は、無機系エレクトロクロミック材料と有機系エレクトロクロミック材料とに分類される。
【0003】
無機系エレクトロクロミック材料としては、三酸化タングステン(WO3)、ヘキサシアノ鉄酸鉄(プルシアンブルー)などのアルカリ金属イオンの着脱によって消色を行なう物質を含有するものが知られている。有機系エレクトロクロミック材料としては、ビオロゲン誘導体、フタル酸エステル系化合物、芳香族ニトロ化合物などを含有するものが知られている(例えば、特許文献1〜3など参照)。
【0004】
しかし、無機系エレクトロクロミック材料を用いてエレクトロクロミック素子を製造する場合、当該無機系エレクトロクロミック材料を電極基板上に真空蒸着法によって製膜するという煩雑な工程を必要とする。また、有機系エレクトロクロミック材料を用いてエレクトロクロミック素子を製造する場合、当該有機系エレクトロクロミック材料は、結晶性を有するため、当該有機系エレクトロクロミック材料を溶媒に溶解させることによって得られた溶液を電極基板上に塗布し、乾燥させたときに結晶が生成するおそれがある。また、有機系エレクトロクロミック材料が用いられたエレクトロクロミック素子は、当該素子の電極間に直流電圧を印加して発色させた後、逆電圧を印加するかまたは放電させたときに、完全に消色せずに発色が残るので、消色時における透明性および光透過性が低く、使用時に有機系エレクトロクロミック材料が電解液中に溶出するため、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性が低い。
【0005】
したがって、近年、製膜性に優れ、消色時における透明性、光透過性および発消色(酸化還元)の繰り返し耐性に優れたエレクトロクロミック材料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−18336号公報
【特許文献2】特開平 2−14283号公報
【特許文献3】特開平 2−153989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、製膜性に優れ、消色時における透明性、光透過性および発消色(酸化還元)の繰り返し耐性に優れたエレクトロクロミック素子、当該素子の原料として好適に用いることができるエレクトロクロミック材料、当該エレクトロクロミック材料の原料として好適に用いることができる(メタ)アクリレート系ポリマーおよびその製造方法、当該(メタ)アクリレート系ポリマーの原料として好適に用いることができる(メタ)アクリレート系モノマーおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1) 式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は水素原子またはニトロ基を示す)
で表わされる(メタ)アクリレート系モノマー、
(2) 式(II):
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1およびR2は前記と同じ)
で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、式(III):
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、R3は前記と同じ)
で表わされるニトロ安息香酸とを反応させることを特徴とする式(I):
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ)
で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーの製造方法、
(3) 式(IV):
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ)
で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とする(メタ)アクリレート系ポリマー、
(4) さらに、式(V):
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、R4は水素原子またはメチル基、R5は炭素数1〜4のアルキレン基、R6〜R8はそれぞれ独立して、OR9基またはR10基、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示し、R6〜R8のうち少なくとも2個はOR9基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有する前記(3)に記載の(メタ)アクリレート系ポリマー、
(5) 式(I):
【0021】
【化7】
【0022】
(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ)
で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることを特徴とする式(IV):
【0023】
【化8】
【0024】
(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ)
で表わされる繰り返し単位を有する(メタ)アクリレート系ポリマーの製造方法、
【0025】
(6) 前記(3)または(4)に記載の(メタ)アクリレート系ポリマーを含有することを特徴とするエレクトロクロミック材料、および
(7) エレクトロクロミック層を有する透明電極と対向電極とを有するエレクトロクロミック素子であって、前記エレクトロクロミック層が、前記(6)に記載のエレクトロクロミック材料で形成されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子
に関する。
【0026】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、製膜性に優れ、消色時における透明性、光透過性および発消色(酸化還元)の繰り返し耐性に優れたエレクトロクロミック素子、当該素子の原料として好適に使用することができるエレクトロクロミック材料、(メタ)アクリレート系ポリマーおよび(メタ)アクリレート系モノマーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のエレクトロクロミック素子の一実施態様を示す概略説明図である。
図2】本発明の実施例IV−1(6)〔エレクトロクロミック材料:CT1〕で得られたエレクトロクロミック素子CT1の発消色時のUV−Vis吸収スペクトルである。
図3】本発明の実施例IV−1(6)〔エレクトロクロミック材料:CT1〕で得られたエレクトロクロミック素子CT1に−1.5Vおよび0Vの電圧を交互に印加することにより、消色状態および発色状態を繰り返したときの最大吸収波長における吸光度変化(サイクル特性)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の(メタ)アクリレート系モノマーは、前記したように、式(I):
【0030】
【化9】
【0031】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は水素原子またはニトロ基を示す)
で表わされる。
【0032】
式(I)で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーにおいて、R1は、水素原子またはメチル基である。R2は、炭素数1〜4のアルキレン基である。R3は、水素原子またはニトロ基である。
【0033】
3が水素原子であるとき、式(I)で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーは、発色性を向上させる観点から、ベンゼン環のエステル基に対してオルト位またはメタ位にニトロ(NO2)基を有するアクリレート系モノマーであるか、またはベンゼン環のエステル基に対してオルト位にニトロ基を有するメタクリレート系モノマーであることが好ましい。
【0034】
式(I)で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーは、例えば、式(II):
【0035】
【化10】
【0036】
(式中、R1およびR2は前記と同じ)
で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、式(III):
【0037】
【化11】
【0038】
(式中、R3は前記と同じ)
で表わされるニトロ安息香酸とを反応させることによって得ることができる。
【0039】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
式(III)で表わされるニトロ安息香酸は、式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと反応させる場合には、カルボキシル基に対してオルト位またはメタ位にニトロ基を有するニトロ安息香酸であることが好ましく、式(II)で表わされるヒドロキシアルキルメタクリレートと反応させる場合には、カルボキシル基に対してオルト位にニトロ基を有するニトロ安息香酸であることが好ましい。
【0041】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルあたりの式(III)で表わされるニトロ安息香酸の量は、理論的には化学量論量であるが、式(II)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの残存量を低減させる観点から、好ましくは0.5モル以上、より好ましくは0.8モル以上であり、式(III)で表わされるニトロ安息香酸の残存量を低減させる観点から、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.2モル以下である。
【0042】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸とを反応させる際には、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒のなかでは、式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸との反応は、脱水縮合反応であることから、非水系有機溶媒を用いることができる。非水系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系有機溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩化物系有機溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドなどのアミド系有機溶媒、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。有機溶媒の量は、当該有機溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、式(II)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート100質量部あたり、100〜1000質量部程度であることが好ましい。
【0043】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸とを効率よく脱水縮合させるために、触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、キヌクリジンなどの環状モノアミン;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどの環状ジアミン;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ジアザビシクロノネンなどの環状ジアミン化合物;1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、ジフェニルグアニジン(DPG)などの環状トリアミン化合物;N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン(PPY)、ピロコリン、イミダゾール、ピリミジン、プリンなどの窒素原子含有複素環式芳香族有機化合物;1,3−ジtert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)などのN−ヘテロサイクリックカルベンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの触媒のなかでは、立体障害による影響が小さく、求核性が高く、減圧除去が可能な沸点を有することから、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ジフェニルグアニジン(DPG)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、4−ピロリジノピリジン(PPY)および1,3−ジtert−ブチルイミダゾール−2−イリデン(ITBU)が好ましい。触媒の量は、当該触媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、式(II)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート100質量部あたり、1〜10質量部程度であることが好ましい。
【0044】
また、式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸との脱水縮合反応を促進させる観点から、縮合剤を用いることが好ましい。縮合剤としては、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホン酸塩などのカルボジイミドカルボジイミド系縮合剤;N,N’−カルボニルジイミダゾールなどのイミダゾール系縮合剤;4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−(2−オクトキシ−2−オキソエチル)ジメチルアンモニウムなどのトリアジン系縮合剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの縮合剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。縮合剤の量は、当該縮合剤の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、式(II)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート100質量部あたり、1〜10質量部程度であることが好ましい。
【0045】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸とを反応させる際には、両者を均一に反応させる観点から、撹拌下で行なうことが好ましい。
【0046】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸とを反応させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0047】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸とを反応させる際の反応温度は、副反応を抑制する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、反応収率を向上させる観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0048】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸とを反応させる際の反応時間は、特に限定されないが、好ましくは1〜10時間程度、より好ましくは2〜8時間程度である。
【0049】
式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸との反応の終了は、例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどにより、式(II)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたは式(III)で表わされるニトロ安息香酸の減少量を追跡することによって確認することができる。
【0050】
未反応の式(II)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび未反応の式(III)で表わされるニトロ安息香酸は、反応終了後に反応系を冷却し、例えば、濾過、遠心分離などを行なうことによって容易に除去することができる。なお、濾過、遠心分離などの操作をより容易に行なうために、例えば、反応系を溶媒で適宜希釈してもよい。当該溶媒の種類には特に限定がなく、例えば、前記非水系有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0051】
以上のようにして式(II)で表わされるヒドロキシアルキルアクリレートと式(III)で表わされるニトロ安息香酸とを反応させることにより、式(I)で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーを得ることができる。
【0052】
式(I)で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーが生成したことは、例えば、1H−核磁気共鳴スペクトル(以下、1H−NMRという)、マススペクトルなどによって容易に確認することができる。
【0053】
前記で得られた(メタ)アクリレート系モノマーは、反応溶液の状態でまたは当該反応溶液の濃縮液の状態で重合反応に供することができる。反応溶液の濃縮は、通常、大気中で常圧または減圧下で行なうことができる。反応溶液の濃縮温度は、濃縮中に結晶が析出することを防止する観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、濃縮中に(メタ)アクリレート系モノマーの重合を抑制する観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
【0054】
本発明の(メタ)アクリレート系ポリマーは、前記したように、式(IV):
【0055】
【化12】
【0056】
(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ)
で表わされる繰り返し単位を有する。
【0057】
式(IV)で表わされる繰り返し単位において、前記したように、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、炭素数1〜4のアルキレン基であり、R3は、水素原子またはニトロ基である。
【0058】
3が水素原子であるとき、式(IV)で表わされる繰り返し単位は、発色性を向上させる観点から、R1が水素原子であり、ベンゼン環のエステル基に対してオルト位またはメタ位にニトロ(NO2)基を有する繰り返し単位であるか、またはR1がメチル基であり、ベンゼン環のエステル基に対してオルト位にニトロ基を有する繰り返し単位であることが好ましい。
【0059】
本発明の(メタ)アクリレート系ポリマーは、式(I)で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得ることができる。
【0060】
モノマー成分における式(I)で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーの含有率は、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下、さらに一層好ましくは90質量%以下である。
【0061】
モノマー成分には、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、式(VI):
【0062】
【化13】
【0063】
(式中、R4は水素原子またはメチル基、R5は炭素数1〜4のアルキレン基、R6〜R8はそれぞれ独立して、OR9基またはR10基、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示し、R6〜R8のうち少なくとも2個はOR9基を示す)
で表わされるシランカップリング剤が含まれていることが好ましい。
【0064】
式(VI)で表わされるシランカップリング剤において、R4は、水素原子またはメチル基である。R5は、炭素数1〜4のアルキレン基である。R6〜R8は、それぞれ独立して、OR9基またはR10基である。R9およびR10は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり、R6〜R8のうち少なくとも2個は、OR9基である。
【0065】
式(VI)で表わされるシランカップリング剤は、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、R6〜R8において、R9がメチル基であるOR9基を2個有することが好ましく、OR9基を3個有することがより好ましい。
【0066】
式(VI)で表わされるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0067】
モノマー成分における式(VI)で表わされるシランカップリング剤の含有率は、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、0質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0068】
また、モノマー成分には、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他のモノマーが含まれていてもよい。
【0069】
他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシブチルアクリレート、メトキシブチルメタクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;エチルカルビトールアクリレート、エチルカルビトールメタクリレートなどのアルキルカルビトール(メタ)アクリレート;N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドなどのアルキル(メタ)アクリルアミド:N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのアルコキシ(メタ)アクリルアミド;アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリロイルモルホリン;ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミドなどのジアセトン(メタ)アクリルアミド;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;イタコン酸メチル、イタコン酸エチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の脂肪酸アルキルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;
【0070】
N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタインなどのN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジメチルアンモニウムアルキル−α−スルホベタインなどのスルホベタインモノマー、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素原子含有モノマーなどの単官能モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他のモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0071】
モノマー成分における他のモノマーの含有率は、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、0質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらに一層好ましくは30質量%である。
【0072】
モノマー成分を重合させる際には、得られるポリマーの分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどのチオール基を有する化合物;次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、当該連鎖移動剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、モノマー成分100質量部あたり、通常、0.01〜10質量部程度であることが好ましい。
【0073】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、式(IV)で表わされる繰り返し単位のみを有するホモポリマーであってもよく、式(IV)で表わされる繰り返し単位を有するコポリマーであってもよい。
【0074】
(メタ)アクリレート系ポリマーにおける式(IV)で表わされる繰り返し単位の含有率は、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下、さらに一層好ましくは90質量%以下である。
【0075】
(メタ)アクリレート系ポリマーには、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、式(V):
【0076】
【化14】
【0077】
(式中、R4〜R10は前記と同じ)
で表わされる繰り返し単位が含まれていることが好ましい。
【0078】
(メタ)アクリレート系ポリマーにおける式(V)で表わされる繰り返し単位の含有率は、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、0質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0079】
また、(メタ)アクリレート系ポリマーには、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他のモノマーからなる繰り返し単位が含まれていてもよい。他のモノマーからなる繰り返し単位を構成するモノマーとして、例えば、前記他のモノマーを挙げることができる。
【0080】
(メタ)アクリレート系ポリマーにおける他のモノマーに基づく繰り返し単位の含有率は、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、0質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらに一層好ましくは30質量%以下である。
【0081】
本発明の(メタ)アクリレート系ポリマーは、モノマー成分を、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などによって重合させることによって得ることができる。これらの重合法のなかでは、塊状重合法および溶液重合法が好ましい。
【0082】
モノマー成分を溶液重合法によって重合させる際には、溶媒が用いられる。溶媒のなかでは、非水系有機溶媒が好ましい。非水系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系有機溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩化物系有機溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、100〜1000質量部程度であることが好ましい。
【0083】
モノマー成分の重合は、例えば、ラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、付加重合法、重縮合法などの重合法によって行なうことができる。
【0084】
モノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
【0085】
熱重合開始剤としては、例えば、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0086】
光重合開始剤としては、例えば、2−オキソグルタル酸、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
重合開始剤の量は、当該重合開始剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、モノマー成分100質量部あたり、通常、0.01〜10質量部程度であることが好ましい。
【0088】
モノマー成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0089】
モノマー成分の重合温度は、特に限定がなく、通常、5〜100℃程度の温度であることが好ましい。モノマー成分の重合に要する時間は、重合条件によって異なるので一概には決定することができないことから任意である。
【0090】
重合反応は、通常、残存しているモノマーの量が10質量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存しているモノマーの量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定された転化率によって決定することができる。
【0091】
モノマー成分の重合時間は、特に限定されないが、好ましくは1〜20時間程度、より好ましくは1〜10時間程度である。
【0092】
以上のようにして式(I)で表わされる(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることにより、(メタ)アクリレート系ポリマーを得ることができる。
【0093】
(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、5000〜10万程度であることが好ましい。
【0094】
なお、本明細書において、ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel G−3000とを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
【0095】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、必要により、中和させてもよい。中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基性化合物;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、オクチルアミン、トリブチルアミン、アニリンなどの有機塩基性化合物が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0096】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、用途などによってはそのままの状態で用いてもよいが、必要により、例えば、蒸留、抽出などの精製方法で精製してもよい。
【0097】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、本発明の目的が阻害されない範囲内で、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、着色剤、浸透剤、消泡剤、吸水剤、防皺剤、風合い調整剤、造膜助剤、水溶性高分子化合物、熱硬化性樹脂、防虫剤、染料安定剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0098】
本発明のエレクトロクロミック材料は、式(IV)で表わされる繰り返し単位を有する(メタ)アクリレート系ポリマーを含有することを特徴とする。
【0099】
本発明のエレクトロクロミック材料は、本発明の(メタ)アクリレート系ポリマーを含有することから、エレクトロクロミック機能を発現させることができる。
【0100】
また、本発明のエレクトロクロミック材料は、本発明の(メタ)アクリレート系ポリマーを含有することから、電極基板に塗布した後、乾燥させたときに結晶が生成するおそれがなく、しかも均一な製膜を形成させることができる。
【0101】
さらに、本発明のエレクトロクロミック材料は、本発明の(メタ)アクリレート系ポリマーを含有することから、消色時における透明性に優れている。
【0102】
本発明のエレクトロクロミック材料に式(IV)で表わされる繰り返し単位および式(V)で表わされる繰り返し単位を有する(メタ)アクリレート系ポリマーが用いられる場合には、触媒を含有させることが好ましい。エレクトロクロミック材料に触媒を含有させた場合には、式(IV)で表わされる繰り返し単位と、式(V)で表わされる繰り返し単位との架橋反応が効率よく進行することから、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を大幅に向上させることができる。触媒としては、例えば、金属系触媒、酸触媒などが挙げられる。
【0103】
金属系触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどの金属系触媒;ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートなどの有機ジルコニウム化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの金属系触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。金属系触媒の量は、特に限定されないが、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部あたり、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0104】
酸触媒としては、例えば、酢酸、塩酸、硝酸、硫酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。酸触媒の量は、特に限定されないが、反応速度を高める観点から、(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部あたり、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を向上させる観点から、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。
【0105】
本発明のエレクトロクロミック材料は、(メタ)アクリレート系ポリマーを溶媒に溶解させた溶液として用いることができる。溶媒としては、例えば、水;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、トリメチルホスフェイトなどのエステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類;アセトニトリル、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリルなどのニトリル類;シクロヘキサノンなどのケトン類;ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソランなどのエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ポリエチレングリコールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類;スルホランなどの有機極性溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部あたり、100〜2000質量部程度であることが好ましい。
【0106】
また、前記溶媒として、例えば、粘度調整用ポリマーやゲル化剤を含有させて粘稠性が高いもの、ゲル化させたものなどを用いることもできる。粘度調整用ポリマーとしては、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの粘度調整用ポリマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。粘度調整用ポリマーの量は、粘度調整用ポリマーの種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部あたり、100〜2000質量部程度であることが好ましい。
【0107】
エレクトロクロミック材料には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、発色性を向上させるための化合物が用いられていてもよい。
【0108】
エレクトロクロミック材料は、例えば、(メタ)アクリレート系ポリマー、触媒などを溶媒に溶解させた溶液として用いることができる。
【0109】
(メタ)アクリレート系ポリマー、触媒などを溶媒に溶解させる際には、各成分が均一に分散するようにするために撹拌下で各成分を混合することが好ましい。
【0110】
(メタ)アクリレート系ポリマー、触媒などを溶媒に溶解させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0111】
(メタ)アクリレート系ポリマー、触媒などを溶媒に溶解させる際の温度は、副反応を抑制する観点から、好ましくは5〜40℃であり、より好ましくは10〜30℃である。
【0112】
(メタ)アクリレート系ポリマー、触媒などを溶媒に溶解させるのに要する時間は、特に限定されないが、好ましくは10分〜5時間程度、より好ましくは30分〜3時間程度である。
【0113】
本発明のエレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック層を有する透明電極と対向電極とを有するエレクトロクロミック素子であり、前記エレクトロクロミック層が、本発明のエレクトロクロミック材料で形成されていることを特徴とする。
【0114】
本発明のエレクトロクロミック素子は、前記エレクトロクロミック層が、本発明のエレクトロクロミック材料で形成されていることから、エレクトロクロミック機能を発現させることができるとともに、製膜性に優れ、消色時における透明性、光透過性および発消色(酸化還元)の繰り返し耐性に優れている。
【0115】
次に、本発明のエレクトロクロミック素子の一実施態様を図面に基づいて説明するが、本発明は、かかる実施形態のみに限定されるものではない。図1は、本発明のエレクトロクロミック素子の一実施態様を示す概略説明図である。
【0116】
図1に示されるように、エレクトロクロミック素子は、透明基板1の一方の面に形成された透明電極層2の表面上に、さらにエレクトロクロミック層3を有する透明電極4(以下、エレクトロクロミック電極4という)と、透明基板5の一方の面に透明電極層6が形成された透明電極7(以下、対向電極7という)とを、エレクトロクロミック層3と透明電極層6とが向き合うように配置され、エレクトロクロミック電極4と対向電極7との間隙に電解質を充填させた電解質層8を有する。
【0117】
エレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック電極4と対向電極7との間に直流電圧を印加したとき、エレクトロクロミック材料が還元され、所定の発色パターンを形成し、逆電圧を印加したとき、エレクトロクロミック材料が酸化され、消色または変色するというエレクトロクロミック機能を発現する。なお、電圧印加手段には、一般に用いられているものを用いることができる。
【0118】
透明基板1および5としては、例えば、ガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリノルボルネン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂などの樹脂からなる樹脂基板などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、透明基板1および5は、硬い板状の基板であってもよく、柔軟性を有するフィルム状の基板であってもよい。
【0119】
透明基板1および5に設けられる透明電極層2および6に使用される電極材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、アンチモン酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、フッ素酸化スズ(FTO)、アルミニウム酸化亜鉛(AZO)、ガリウム酸化亜鉛(GZO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化銀、酸化バナジウム、酸化モリブデン、金、銀、白金、銅、インジウム、クロムなどの金属や金属酸化物;多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系材料;カーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボンなどの炭素材料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの電極材料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、透明電極層2および6の形成方法には、特に限定がなく、膜または層を形成させるのに一般に用いられている方法を採用することができる。
【0120】
また、透明基板1および5には、例えば、透明電極層が形成されたITO電極付きガラス基板(以下、ITOガラス基板という)などを用いることもできる。
【0121】
本発明のエレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック層3が、本発明のエレクトロクロミック材料で形成されていることを特徴とする。本発明のエレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック層3が本発明のエレクトロクロミック材料で形成されていることから、エレクトロクロミック機能を発現させることができる。
【0122】
エレクトロクロミック層3を形成させる具体的な方法としては、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法などによって、エレクトロクロミック材料を透明基板1の一方の面に形成された透明電極層2の表面上に塗布し、薄膜を形成させた後、必要に応じてホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥させ、製膜させることにより、エレクトロクロミック層3を形成させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。塗布方法のなかでは、単時間で均一に塗布することができることから、スピンコート法が好ましい。
【0123】
エレクトロクロミック層3の厚さは、均一なエレクトロクロミック層3を形成させる観点から、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは1〜3μmである。
【0124】
電解質層8に用いられる電解質としては、例えば、LiClO4、LiSCN、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiPF6、LiI、NaI、NaSCN、NaClO4、NaBF4、NaAsF6、KSCN、KClなどのアルカリ金属塩;アルカリ土類金属塩;(CH34NBF4、(C254NBF4、(n−C494NBF4、(n−C494NPF6、(C254NBr、(C254NClO4、(n−C494NClO4などの4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの電解質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。電解質の量は、当該電解質の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、エレクトロクロミック材料100質量部あたり、100〜1000質量部程度であることが好ましい。
【0125】
なお、前記電解質は、溶液状態で用いることができる。電解質を溶解させる際には、溶媒が用いられる。溶媒は、極性を有することが好ましい。極性を有する溶媒としては、例えば、水;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、トリメチルホスフェイト、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、シクロヘキサノン、ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン、メタノール、エタノール、プロパノール、ポリエチレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、エレクトロクロミック材料100質量部あたり、100〜1000質量部程度であることが好ましい。
【0126】
また、前記溶媒として、例えば、粘度調整用ポリマーやゲル化剤を含有させて粘稠性が高いもの、ゲル化させたものなどを用いることもできる。粘度調整用ポリマーとしては、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの粘度調整用ポリマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。粘度調整用ポリマーの量は、粘度調整用ポリマーの種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、エレクトロクロミック材料100質量部あたり、100〜2000質量部程度であることが好ましい。
【0127】
電解質層8は、電解質を溶媒に溶解させた電解質溶液または当該電解質溶液とエレクトロクロミック材料との混合物溶液を電極上に塗布することによって形成された薄膜であってもよい。電解質層8を形成させる方法としては、例えば、エレクトロクロミック層3を形成させる方法と同様の方法が挙げられる。
【0128】
エレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック電極4と対向電極7との電極間距離を一定に保持するために、スペーサー9を用いることができる。スペーサー9には、例えば、ガラス、ポリイミド、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0129】
エレクトロクロミック素子は、液体注入口を有していてもよい。電解質8を溶媒に溶解させた電解質溶液を液体注入口から注入することにより、エレクトロクロミック電極4と対向電極7との間隙に充填した後、封止部材で注入口を封止し、さらに接着剤などで密閉することにより、エレクトロクロミック素子を製造することができる。なお、封止部材は、接着剤とエレクトロクロミック材料とが直接接触しないようにする役割も担っている。封止部材を設けた場合、エレクトロクロミック材料が電解液中に溶出することを防止することができることから、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を大幅に向上させることができる。封止部材の形状は、特に限定されず、例えば、楔形などの先細り形状などが挙げられる。
【0130】
エレクトロクロミック素子には、電圧印加時に対向電極7上で逆反応が生じることから、可逆的に酸化−還元が生じる対向電極反応物質を添加することが好ましい。対向電極反応物質としては、例えば、フェロセン、塩化第一鉄などの2価の鉄化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの対向電極反応物質は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。電極上には。対向電極反応物質の薄膜を形成させてもよい。対向電極反応物質の薄膜を形成させる方法としては、例えば、エレクトロクロミック層3を形成させる方法と同様の方法などが挙げられる。
【0131】
本発明のエレクトロクロミック素子は、前記構成、製造方法などによって限定されるものではなく、他の構成を有していてもよい。他の構成としては、例えば、紫外線反射層、紫外線吸収層などの紫外線遮蔽層、表面保護のためのオーバーコート層などを挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0132】
以上のようにして得られるエレクトロクロミック素子は、消色時における透明性、光透過性および発消色(酸化還元)の繰り返し耐性に優れていることから、例えば、窓、防眩ミラー、調光フィルム、電子ペーパー、電子広告、電子ラベルなどの用途に使用することができる。
【実施例】
【0133】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0134】
〔実施例I〕
実施例I−1
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた500mL容のコルベン内に、o−ニトロ安息香酸〔和光純薬工業(株)製、品番:141−04921〕25g、2−ヒドロキシエチルアクリレート18g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)〔和光純薬工業(株)製、品番:040−19213〕4gおよびテトラヒドロフラン200gを仕込み、攪拌しながら1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:A10807〕40gを徐々にコルベン内に添加し、40℃の空気中で5時間反応させた。
【0135】
反応終了後、得られた反応溶液の有機層を飽和食塩水で洗浄し、当該有機層を50℃で濃縮し、得られた粗結晶にメタノール79gを添加し、晶析を行なった。得られた結晶を40℃で3時間減圧乾燥させることにより、モノマー28gを白色固体で得た(収率:70%)。
【0136】
前記で得られたモノマーの1H−NMRを核磁気共鳴装置〔日本電子(株)製、品番:GX−500〕で調べ、マススペクトルをガスクロマトグラフ質量分析計〔(株)島津製作所製、品番:GCMS−QR5000〕で調べた。その結果を以下に示す。
【0137】
1H−NMR(CDCl3,ppm):4.53−4.56(2H,m)、4.61−4.64(2H,m)、5.87−5.91(1H,m)、6.12−6.21(1H,m)、6.43−6.49(1H,m)、8.20−8.24(2H,m)、8.28−8.32(2H,m)
・ 分子量:265.22
【0138】
以上の結果から、前記で得られたモノマーは、2−ニトロ安息香酸2−(アクリロイルオキシ)エチル(以下、o−NBzAHEAという)であることが確認された。
【0139】
実施例I−2
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた3L容のコルベン内に、o−ニトロ安息香酸〔和光純薬工業(株)製、品番:141-04921〕150g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート119g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)〔和光純薬工業(株)製、品番:040−19213〕22gおよびテトラヒドロフラン1200gを仕込み、攪拌しながら1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:A10807〕224gを徐々にコルベン内に添加し、40℃の空気中で5時間反応させた。反応終了後、反応溶液の有機層を飽和食塩水で洗浄し、当該有機層を50℃で濃縮し、得られた粗結晶にメタノール500gを添加し、晶析を行なった。得られた結晶を40℃で3時間減圧乾燥させることにより、モノマー163gを白色固体で得た(収率:65%)。
【0140】
前記で得られたモノマーの物性を実施例I−1と同様にして調べた。その結果を以下に示す。
【0141】
1H−NMR(CDCl3,ppm):1.96(3H,s)、4.51−4.54(2H,m)、4.64−4.66(2H,m)、5.61(1H,s)、6.16(1H,s)、7.65−7.70(1H,m)、8.36−8.45(2H,m)、8.86−8.87(1H,m)
・ 分子量:279.25
【0142】
以上の結果から、前記で得られたモノマーは、2−ニトロ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル(以下、o−NBzAHEMAという)であることが確認された。
【0143】
実施例I−3
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた500mL容のコルベン内に、m−ニトロ安息香酸〔和光純薬工業(株)製、品番:144−04592〕25g、2−ヒドロキシエチルアクリレート18g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)〔和光純薬工業(株)製、品番:040−19213〕4gおよびテトラヒドロフラン200gを仕込み、攪拌しながら1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:A10807〕40gを徐々にコルベン内に添加し、40℃の空気中で、5時間反応させた。反応終了後、反応溶液の有機層を飽和食塩水で洗浄し、当該有機層を50℃で濃縮し、得られた粗結晶にメタノール79gを添加し、晶析を行なった。得られた結晶を40℃で3時間減圧乾燥させることにより、モノマー28gを白色固体で得た(収率:70%)。
【0144】
前記で得られたモノマーの物性を実施例I−1と同様にして調べた。その結果を以下に示す。
【0145】
1H−NMR(CDCl3,ppm):4.51−4.54(2H,m)、4.64−4.66(2H,m)、5.87−5.91(1H,m)、6.12−6.21(1H,m)、6.43−6.49(1H,m)、7.65−7.70(1H,m)、8.36−8.45(2H,m)、8.86−8.87(1H,m)
・ 分子量:265.22
【0146】
以上の結果から、前記で得られたモノマーは、3−ニトロ安息香酸2−(アクリロイルオキシ)エチル(以下、m−NBzAHEAという)であることが確認された。
【0147】
実施例I−4
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた3L容のコルベン内に、m−ニトロ安息香酸〔和光純薬工業(株)製、品番:144−04592〕24g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート21g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)〔和光純薬工業(株)製、品番:040−19213〕4gおよびテトラヒドロフラン192gを仕込み、攪拌しながら1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:A10807〕39gを徐々にコルベン内に添加し、40℃の空気中で、5時間反応させた。反応終了後、反応溶液の有機層を飽和食塩水で洗浄し、当該有機層を50℃で濃縮し、得られた粗結晶にメタノール79gを添加し、晶析を行なった。得られた結晶を40℃で3時間減圧乾燥させることにより、モノマー26gを白色固体で得た(収率:64%)。
【0148】
前記で得られたモノマーの物性を実施例I−1と同様にして調べた。その結果を以下に示す。
【0149】
1H−NMR(CDCl3,ppm):1.96(3H,s)、4.51−4.54(2H,m)、4.64−4.66(2H,m)、5.61(1H,s)、6.16(1H,s)、7.65−7.70(1H,m)、8.36−8.45(2H,m)、8.86−8.87(1H,m)
・ 分子量:279.25
【0150】
以上の結果から、前記で得られたモノマーは、3−ニトロ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル(以下、m−NBzAHEMAという)であることが確認された。
【0151】
実施例I−5
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた500mL容のコルベン内に、p−ニトロ安息香酸〔和光純薬工業(株)製、品番:142−01852〕25g、2−ヒドロキシエチルアクリレート18g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)〔和光純薬工業(株)製、品番:040−19213〕4gおよびテトラヒドロフラン200gを仕込み、攪拌しながら1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:A10807〕40gを徐々にコルベン内に添加し、40℃の空気中で、5時間反応させた。反応終了後、反応溶液の有機層を飽和食塩水で洗浄し、当該有機層を50℃で濃縮し、得られた粗結晶にメタノール79gを添加し、晶析を行なった。得られた結晶を40℃で3時間減圧乾燥させることにより、モノマー28gを白色固体で得た(収率:70%)。
【0152】
前記で得られたモノマーの物性を実施例I−1と同様にして調べた。その結果を以下に示す。
【0153】
1H−NMR(CDCl3,ppm):4.53−4.56(2H,m)、4.61−4.64(2H,m)、5.87−5.91(1H,m)、6.12−6.21(1H,m)、6.43−6.49(1H,m)、8.20−8.24(2H,m)、8.28−8.32(2H,m)
・ 分子量:265.22
【0154】
以上の結果から、前記で得られたモノマーは、4−ニトロ安息香酸2−(アクリロイルオキシ)エチル(以下、p−NBzAHEAという)であることが確認された。
【0155】
実施例I−6
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた3L容のコルベン内に、p−ニトロ安息香酸〔和光純薬工業(株)製、品番:142−01852〕150g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート119g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)〔和光純薬工業(株)製、品番:040−19213〕22gおよびテトラヒドロフラン1200gを仕込み、攪拌しながら1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:A10807〕224gを徐々にコルベン内に添加し、40℃の空気中で、5時間反応させた。反応終了後、反応溶液の有機層を飽和食塩水で洗浄し、当該有機層を50℃で濃縮し、得られた粗結晶にメタノール500gを添加し、晶析を行なった。得られた結晶を40℃で3時間減圧乾燥させることにより、モノマー163gを白色固体で得た(収率:65%)。
【0156】
前記で得られたモノマーの物性を実施例I−1と同様にして調べた。その結果を以下に示す。
【0157】
1H−NMR(CDCl3,ppm):1.95(3H,s)、4.51−4.54(2H,m)、4.62−4.65(2H,m)、5.61(1H,s)、6.43(1H,s)、8.20−8.23(2H,m)、8.28−8.32(2H,m)
・ 分子量:279.25
【0158】
以上の結果から、前記で得られたモノマーは、4−ニトロ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル(以下、p−NBzAHEMAという)であることが確認された。
【0159】
実施例I−7
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた500mL容のコルベン内に、3,5−ジニトロ安息香酸〔和光純薬工業(株)製、品番:040−03402〕24g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート16g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)〔和光純薬工業(株)製、品番:040−19213〕3gおよびテトラヒドロフラン192gを仕込み、攪拌しながら1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:A10807〕30gを徐々にコルベン内に添加し、40℃の空気中で、5時間反応させた。反応終了後、反応溶液の有機層を飽和食塩水で洗浄し、当該有機層を50℃で濃縮し、得られた粗結晶にメタノール79gを添加し、晶析を行なった。得られた結晶を40℃で3時間減圧乾燥させることにより、モノマー27gを白色固体で得た(収率:73%)。
【0160】
前記で得られたモノマーの物性を実施例I−1と同様にして調べた。その結果を以下に示す。
【0161】
1H−NMR(CDCl3,ppm):1.96(3H,s)、4.56(2H,t)、4.72(2H,t)、5.64(1H,s)、6.16(1H,s)、9.16−9.17(2H,m)、9.24(1H,s)
・ 分子量:324.25
【0162】
以上の結果から、前記で得られたモノマーは、3,5−ジニトロ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル(以下、3,5−NBzAHEMAという)であることが確認された。
【0163】
〔実施例II〕
実施例II−1
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた50mL容のコルベン内に、実施例I−1で得られたo−NBzAHEA3.0gおよびメチルエチルケトン9.1gを仕込み、窒素ガスをコルベン内に1時間導入した後、コルベン内の反応溶液を78℃まで昇温させ、攪拌しながら2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)〔和光純薬工業(株)製、品番:V−60〕35mgを徐々にコルベン内に添加し、6時間熟成させることにより、ポリマーを得た。
【0164】
次に、前記で得られたポリマーを含有する反応溶液を35℃以下に冷却させた後、氷浴で冷却し、攪拌下でメタノール100gに滴下ロートで30分間かけて滴下した。その後、析出したポリマーを濾別し、50℃の温度で減圧乾燥させることにより、ポリマーA1を2.9g得た(収率:94%)。
【0165】
前記で得られたポリマーの重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、当該重量平均分子量は13000であった。
【0166】
実施例II−2
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた50mL容のコルベン内に、実施例I−1で得られたo−NBzAHEA3.0g、ブチルメタクリレート1.5gおよびメチルエチルケトン13.8gを仕込み、窒素ガスをコルベン内に1時間導入した後、コルベン内の反応溶液を78℃まで昇温させ、攪拌しながら2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)〔和光純薬工業(株)製、品番:V−60〕35mgを徐々にコルベン内に添加し、6時間熟成させることにより、ポリマーを得た。
【0167】
次に、前記で得られたポリマーを含有する反応溶液を35℃以下に冷却させた後、氷浴で冷却し、攪拌下でメタノール100gに滴下ロートにより30分間かけて滴下した。その後、析出したポリマーを濾別し、50℃の温度で減圧乾燥させることにより、ポリマーB1を4.3g得た(収率:95%)。
【0168】
前記で得られたポリマーの重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、当該重量平均分子量は16000であった。
【0169】
実施例II−3
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた50mL容のコルベン内に、実施例I−1で得られたo−NBzAHEA3.0g、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、品番:KBM−503〕0.3gおよびメチルエチルケトン7.8gを仕込み、窒素ガスをコルベン内に1時間導入した後、コルベン内の反応溶液を78℃まで昇温させ、攪拌しながら2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)〔和光純薬工業(株)製、品番:V−60〕35mgを徐々にコルベン内に添加し、6時間熟成させることにより、ポリマーを得た。
【0170】
次に、前記で得られたポリマーを含有する反応溶液を35℃以下に冷却させた後、氷浴で冷却し、攪拌下でメタノール100gに滴下ロートにより30分間かけて滴下した。その後、析出したポリマーを濾別し、50℃の温度で減圧乾燥させることにより、ポリマーC1を2.8g得た(収率:90%)。
【0171】
前記で得られたポリマーの重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、当該重量平均分子量は18000であった。
【0172】
実施例II−4
撹拌装置、不活性ガス導入口、環流冷却管および温度計を取り付けた50mL容のコルベン内に、実施例I−1で得られたo−NBzAHEA3.0g、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、品番:KBM−503〕0.3g、ブチルメタクリレート0.2gおよびメチルエチルケトン8.4gを仕込み、窒素ガスをコルベン内に1時間導入した後、コルベン内の反応溶液を78℃まで昇温させ、攪拌しながら2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)〔和光純薬工業(株)製、品番:V−60〕35mgを徐々にコルベン内に添加し、6時間熟成させることにより、ポリマーを得た。
【0173】
次に、前記で得られたポリマーを含有する反応溶液を35℃以下に冷却させた後、氷浴で冷却し、攪拌下でメタノール100gに滴下ロートにより30分間かけて滴下した。その後、析出したポリマーを濾別し、50℃の温度で減圧乾燥させることにより、ポリマーD1を2.8g得た(収率:90%)。
【0174】
前記で得られたポリマーの重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、当該重量平均分子量は16000であった。
【0175】
実施例II−5
実施例II−1において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−2で得られたo−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−1と同様の操作を行なうことにより、ポリマーA2を2.9g得た(収率:94%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は34000であった。
【0176】
実施例II−6
実施例II−2において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−2で得られたo−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−2と同様の操作を行なうことにより、ポリマーB2を4.3g得た(収率:95%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0177】
実施例II−7
実施例II−3において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−2で得られたo−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−3と同様の操作を行なうことにより、ポリマーC2を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は34000であった。
【0178】
実施例II−8
実施例II−4において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−2で得られたo−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−4と同様の操作を行なうことにより、ポリマーD2を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0179】
実施例II−9
実施例II−1において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−3で得られたm−NBzAHEAに変更したこと以外は、実施例II−1と同様の操作を行なうことにより、ポリマーA3を2.9g得た(収率:94%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は13000であった。
【0180】
実施例II−10
実施例II−2において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−3で得られたm−NBzAHEAに変更したこと以外は、実施例II−2と同様の操作を行なうことにより、ポリマーB3を4.3g得た(収率:95%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0181】
実施例II−11
実施例II−3において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−3で得られたm−NBzAHEAに変更したこと以外は、実施例II−3と同様の操作を行なうことにより、ポリマーC3を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は18000であった。
【0182】
実施例II−12
実施例II−4において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−3で得られたm−NBzAHEAに変更したこと以外は、実施例II−4と同様の操作を行なうことにより、ポリマーD3を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0183】
実施例II−13
実施例II−1において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−4で得られたm−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−1と同様の操作を行なうことにより、ポリマーA4を2.9g得た(収率:94%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は13000であった。
【0184】
実施例II−14
実施例II−2において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−4で得られたm−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−2と同様の操作を行なうことにより、ポリマーB4を4.3g得た(収率:95%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0185】
実施例II−15
実施例II−3において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−4で得られたm−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−3と同様の操作を行なうことにより、ポリマーC4を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は18000であった。
【0186】
実施例II−16
実施例II−4において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−4で得られたm−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−4と同様の操作を行なうことにより、ポリマーD4を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0187】
実施例II−17
実施例II−1において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−5で得られたp−NBzAHEAに変更したこと以外は、実施例II−1と同様の操作を行なうことにより、ポリマーA5を2.9g得た(収率:94%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は13000であった。
【0188】
実施例II−18
実施例II−2において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−5で得られたp−NBzAHEAに変更したこと以外は、実施例II−2と同様の操作を行なうことにより、ポリマーB5を4.3g得た(収率:95%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0189】
実施例II−19
実施例II−3において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−5で得られたp−NBzAHEAに変更したこと以外は、実施例II−3と同様の操作を行なうことにより、ポリマーC5を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は15000であった。
【0190】
実施例II−20
実施例II−4において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−5で得られたp−NBzAHEAに変更したこと以外は、実施例II−4と同様の操作を行なうことにより、ポリマーD5を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0191】
実施例II−21
実施例II−1において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−6で得られたp−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−1と同様の操作を行なうことにより、ポリマーA6を2.9g得た(収率:94%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は13000であった。
【0192】
実施例II−22
実施例II−2において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−6で得られたp−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−2と同様の操作を行なうことにより、ポリマーB6を4.3g得た(収率:95%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0193】
実施例II−23
実施例II−3において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−6で得られたp−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−3と同様の操作を行なうことにより、ポリマーC6を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は15000であった。
【0194】
実施例II−24
実施例II−4において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−6で得られたp−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−4と同様の操作を行なうことにより、ポリマーD6を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0195】
実施例II−25
実施例II−1において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−7で得られた3,5−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−1と同様の操作を行なうことにより、ポリマーA7を2.9g得た(収率:94%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は13000であった。
【0196】
実施例II−26
実施例II−2において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−7で得られた3,5−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−2と同様の操作を行なうことにより、ポリマーB7を4.3g得た(収率:95%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0197】
実施例II−27
実施例II−3において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−7で得られた3,5−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−3と同様の操作を行なうことにより、ポリマーC7を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は15000であった。
【0198】
実施例II−28
実施例II−4において、実施例I−1で得られたo−NBzAHEAを実施例I−7で得られた3,5−NBzAHEMAに変更したこと以外は、実施例II−4と同様の操作を行なうことにより、ポリマーD7を2.8g得た(収率:90%)。前記で得られたポリマーの重量平均分子量は16000であった。
【0199】
〔実施例III〕
実施例III−1
実施例IIで得られたポリマーA1〜A7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液を25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料A1〜A7を得た。
【0200】
実施例III−2
実施例IIで得られたポリマーB1〜B7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液を25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料B1〜B7を得た。
【0201】
実施例III−3
実施例IIで得られたポリマーC1〜C7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液を25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料C1〜C7を得た。
【0202】
実施例III−4
実施例IIで得られたポリマーA1〜A7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液にチタンテトラアセチルアセトネート(オルガチックス)〔マツモトファインケミカル(株)製、品番:TC−401〕3mgを添加し、25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料AT1〜AT7を得た。
【0203】
実施例III−5
実施例IIで得られたポリマーB1〜B7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液にチタンテトラアセチルアセトネート(オルガチックス)〔マツモトファインケミカル(株)製、品番:TC−401〕3mgを添加し、25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料BT1〜BT7を得た。
【0204】
実施例III−6
実施例IIで得られたポリマーC1〜C7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液にチタンテトラアセチルアセトネート(オルガチックス)〔マツモトファインケミカル(株)製、品番:TC−401〕3mgを添加し、25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料CT1〜CT7を得た。
【0205】
実施例III−7
実施例IIで得られたポリマーD1〜D7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液にチタンテトラアセチルアセトネート(オルガチックス)〔マツモトファインケミカル(株)製、品番:TC−401〕3mgを添加し、25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料DT1〜DT7を得た。
【0206】
実施例III−8
実施例IIで得られたポリマーC1〜C7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液に酢酸200mgを添加し、25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料CA1〜CA7を得た。
【0207】
実施例III−9
実施例IIで得られたポリマーD1〜D7をそれぞれ200mg秤量し、各ポリマーを濃度が10質量%となるように溶媒(シクロヘキサノン98質量%、水2質量%)に溶解させた溶液に酢酸200mgを添加し、25℃の空気中で1時間攪拌しながら溶解させることにより、エレクトロクロミック材料DA1〜DA7を得た。
【0208】
〔実施例IV〕
実施例IV−1(1)
実施例III−1で得られたエレクトロクロミック材料A1を乾燥後の被膜の厚さが0.8μm)となるように表面が平滑なITOガラス基板(縦:25mm、横:25mm、厚さ:0.7mm)にスピンコートによって塗布し、150℃のホットプレートで60分間加熱乾燥させることにより、エレクトロクロミック層を有するエレクトロクロミック素子A1を得た。なお、乾燥後の被膜の厚さは、触針式表面形状測定器〔(株)アルバック製、品番:DEKTAK150〕を用いて測定した(以下同じ)。
【0209】
次に、前記で得られたエレクトロクロミック素子A1を用いて、発色性、消色時の透明性、消色時の光透過性および発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0210】
〔発色性〕
エレクトロクロミック素子を石英セルに入れ、対極として白金電極、参照電極としてAg/Ag+電極〔ビー・エー・エス(株)製、品番:RE−7〕を用い、0.1M過塩素酸テトラブチルアンモニウム〔東京化成工業(株)製、品番:T0836〕/ジメチルスルホキシド(DMSO)〔和光純薬工業(株)製、品番:046−21981〕電解液で石英セルを満たした。その後、ポテンショスタット〔ビー・エー・エス(株)製、品番:ALS−612D〕を用いて−1.5Vの直流電圧を印加したときに当該素子の発色を目視によって観察し、以下の評価基準に基づいて発色性を評価した。
【0211】
なお、発色性は、当該素子の実用性の観点から、直流電圧を印加したときに発色が微かにでも確認されたことを合格の基準とした。
【0212】
(評価基準)
◎:発色を明確に確認することができる。
○:発色をやや確認することができる。
△:発色を微かに確認することができる。
×:発色を確認することができない。
【0213】
〔消色時の透明性〕
エレクトロクロミック素子にポテンショスタット〔ビー・エー・エス(株)製、品番:ALS−612D〕を用いて−1.5Vの電圧を1分間印加した後、電圧印加を停止し、1分間経過した後に、当該素子発色の有無およびUV−Vis吸収スペクトルを調べ、以下の評価基準に基づいて消色時の透明性を評価した。なお、UV−Vis吸収スペクトルは、重水素タングステンハロゲン光源(オーシャンオプティクス社製、品番:HL−2000)を用い、石英セルに光線を照射し、透過した光線をスペクトロメータ(オーシャンオプティクス社製、品番:USB4000)で検出した。
【0214】
なお、消色時の透明性は、目視で発色を明確に確認することができないことを合格の基準とした。
【0215】
(評価基準)
◎:目視で発色をまったく確認することができず、UV−Vis吸収スペクトルでも可視光領域に吸収極大領域が確認されない(無色透明)。
○:目視で発色を確認することができないが、UV−Vis吸収スペクトルでは可視光領域に小さな吸収極大領域が確認される。
△:目視で発色を微かに確認することができ、UV−Vis吸収スペクトルでは可視光領域に吸収極大領域が確認される。
×:目視で発色を明確に確認することができ、UV−Vis吸収スペクトルでも可視光領域に大きな吸収極大領域が確認される。
【0216】
〔消色時の光透過性〕
エレクトロクロミック素子の消色時の可視光領域(380〜720nm程度)に対する透過率をUV−visible Spectrophotometer〔日本分光(株)製、品番:V−660〕で測定し、以下の評価基準に基づいて光透過性を評価した。
【0217】
なお、消色時の可視光に対する透過率は、50%以上であることを合格の基準とした。
【0218】
(評価基準)
◎:消色時の可視光に対する透過率が80%以上である。
○:消色時の可視光に対する透過率が65%以上80%未満である。
△:消色時の可視光に対する透過率が50%以上65%未満である。
×:消色時の可視光に対する透過率が50%未満である。
【0219】
〔発消色(酸化還元)の繰り返し耐性〕
エレクトロクロミック素子に−1.5Vおよび0Vの電圧を交互に印加することにより、消色状態および発色状態を繰り返したときの最大吸収波長における吸光度変化(サイクル特性)を重水素タングステンハロゲン光源(オーシャンオプティクス社製、品番:HL−2000)を用いて石英セルに光線を照射し、透過した光線をスペクトロメータ(オーシャンオプティクス社製、品番:USB4000)で測定し、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0220】
なお、発消色(酸化還元)の繰り返し耐性は、少なくとも5回以上であることを合格の基準とした。
【0221】
(評価基準)
◎:吸光度変化(サイクル特性)が100回以上
○:吸光度変化(サイクル特性)が10回以上100回未満
△:吸光度変化(サイクル特性)が5回以上10回未満
×:吸光度変化(サイクル特性)が5回未満
【0222】
なお、測定された物性において、0点の評価が1つでもあるエレクトロクロミック素子は、実使用に適していないことから不合格である。
【0223】
実施例IV−1(2)
エレクトロクロミック材料として実施例III−2で得られたエレクトロクロミック材料B1を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子B1を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0224】
実施例IV−1(3)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−3で得られたエレクトロクロミック材料C1を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子C1を作製し、当該素子の物性を調べた結果、前記エレクトロクロミック素子A1と同様の結果が得られた。その結果を表1に示す。
【0225】
実施例IV−1(4)
エレクトロクロミック材料として実施例III−4で得られたエレクトロクロミック材料AT1を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子AT1を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0226】
実施例IV−1(5)
エレクトロクロミック材料として実施例III−5で得られたエレクトロクロミック材料BT1を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子BT1を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0227】
実施例IV−1(6)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−6で得られたエレクトロクロミック材料CT1を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CT1を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0228】
また、当該エレクトロクロミック素子CT1の発消色時のUV−Vis吸収スペクトルを図2に、当該エレクトロクロミック素子CT1に−1.5Vおよび0Vの電圧を交互に印加することにより、消色状態および発色状態を繰り返したときの最大吸収波長における吸光度変化(サイクル特性)を図3に示す。
【0229】
実施例IV−1(7)
エレクトロクロミック材料として実施例III−7で得られたエレクトロクロミック材料DT1を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DT1を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0230】
実施例IV−1(8)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−8で得られたエレクトロクロミック材料CA1を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CA1を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0231】
実施例IV−1(9)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−9で得られたエレクトロクロミック材料DA1を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DA1を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0232】
実施例IV−2(1)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−1で得られたエレクトロクロミック材料A2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子A2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0233】
実施例IV−2(2)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−2で得られたエレクトロクロミック材料B2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子B2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0234】
実施例IV−2(3)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−3で得られたエレクトロクロミック材料C2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子C2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0235】
実施例IV−2(4)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−4で得られたエレクトロクロミック材料AT2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子AT2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0236】
実施例IV−2(5)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−5で得られたエレクトロクロミック材料BT2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子BT2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0237】
実施例IV−2(6)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−6で得られたエレクトロクロミック材料CT2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CT2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0238】
実施例IV−2(7)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−7で得られたエレクトロクロミック材料DT2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DT2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0239】
実施例IV−2(8)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−8で得られたエレクトロクロミック材料CA2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CA2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0240】
実施例IV−2(9)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−9で得られたエレクトロクロミック材料DA2を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DA2を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0241】
実施例IV−3(1)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−1で得られたエレクトロクロミック材料A3を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子A3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0242】
実施例IV−3(2)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−2で得られたエレクトロクロミック材料B3を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子B3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0243】
実施例IV−3(3)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−3で得られたエレクトロクロミック材料C3を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子C3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0244】
実施例IV−3(4)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−4で得られたエレクトロクロミック材料AT3を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子AT3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0245】
実施例IV−3(5)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−5で得られたエレクトロクロミック材料BT3を用いたこと以外は実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子BT3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0246】
実施例IV−3(6)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−6で得られたエレクトロクロミック材料CT3を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CT3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0247】
実施例IV−3(7)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−7で得られたエレクトロクロミック材料DT3を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DT3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0248】
実施例IV−3(8)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−8で得られたエレクトロクロミック材料CA3を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CA3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0249】
実施例IV−3(9)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−9で得られたエレクトロクロミック材料DA3を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DA3を作製し、その物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0250】
実施例IV−4(1)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−1で得られたエレクトロクロミック材料A4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子A4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0251】
実施例IV−4(2)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−2で得られたエレクトロクロミック材料B4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子B4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0252】
実施例IV−4(3)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−3で得られたエレクトロクロミック材料C4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子C4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0253】
実施例IV−4(4)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−4で得られたエレクトロクロミック材料AT4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子AT4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0254】
実施例IV−4(5)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−5で得られたエレクトロクロミック材料BT4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子BT4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0255】
実施例IV−4(6)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−6で得られたエレクトロクロミック材料CT4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CT4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0256】
実施例IV−4(7)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−7で得られたエレクトロクロミック材料DT4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DT4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0257】
実施例IV−4(8)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−8で得られたエレクトロクロミック材料CA4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CA4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0258】
実施例IV−4(9)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−9で得られたエレクトロクロミック材料DA4を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DA4を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0259】
実施例IV−5(1)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−1で得られたエレクトロクロミック材料A5を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子A5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0260】
実施例IV−5(2)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−2で得られたエレクトロクロミック材料B5を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子B5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0261】
実施例IV−5(3)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−3で得られたエレクトロクロミック材料C5を用いたこと以外は実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子C5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0262】
実施例IV−5(4)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−4で得られたエレクトロクロミック材料AT5を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子AT5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0263】
実施例IV−5(5)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−5で得られたエレクトロクロミック材料BT5を用いたこと以外は実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子BT5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0264】
実施例IV−5(6)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−6で得られたエレクトロクロミック材料CT5を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CT5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0265】
実施例IV−5(7)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−7で得られたエレクトロクロミック材料DT5を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DT5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0266】
実施例IV−5(8)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−8で得られたエレクトロクロミック材料CA5を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CA5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0267】
実施例IV−5(9)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−9で得られたエレクトロクロミック材料DA5を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DA5を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0268】
実施例IV−6(1)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−1で得られたエレクトロクロミック材料A6を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子A6を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0269】
実施例IV−6(2)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−2で得られたエレクトロクロミック材料B6を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子B6を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0270】
実施例IV−6(3)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−3で得られたエレクトロクロミック材料C6を用いたこと以外は実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子C6を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0271】
実施例IV−6(4)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−4で得られたエレクトロクロミック材料AT6を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子AT6を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0272】
実施例IV−6(5)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−5で得られたエレクトロクロミック材料BT6を用いたこと以外は実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子BT6を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0273】
実施例IV−6(6)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−6で得られたエレクトロクロミック材料CT6を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CT6をその物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0274】
実施例IV−6(7)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−7で得られたエレクトロクロミック材料DT6を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DT6を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0275】
実施例IV−6(8)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−8で得られたエレクトロクロミック材料CA6を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CA6を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0276】
実施例IV−6(9)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−9で得られたエレクトロクロミック材料DA6を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DA6を作製し、その物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0277】
実施例IV−7(1)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−1で得られたエレクトロクロミック材料A7を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子A7を作製し、その物性を調べた。その結果を表3に示す。
【0278】
実施例IV−7(2)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−2で得られたエレクトロクロミック材料B7を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子B7を作製し、当該素子の物性を調べた結果、エレクトロクロミック素子B1と同様の結果が得られた。その結果を表3に示す。
【0279】
実施例IV−7(3)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−3で得られたエレクトロクロミック材料C7を用いたこと以外は実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子C7を作製し、その物性を調べた。その結果を表3に示す。
【0280】
実施例IV−7(4)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−4で得られたエレクトロクロミック材料AT7を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子AT7を作製し、その物性を調べた。その結果を表3に示す。
【0281】
実施例IV−7(5)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−5で得られたエレクトロクロミック材料BT7を用いたこと以外は実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子BT7を作製し、当該素子の物性を調べた結果、エレクトロクロミック素子BT1と同様の結果が得られた。その結果を表3に示す。
【0282】
実施例IV−7(6)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−6で得られたエレクトロクロミック材料CT7を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CT7を作製し、その物性を調べた。その結果を表3に示す。
【0283】
実施例IV−7(7)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−7で得られたエレクトロクロミック材料DT7を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DT7を作製し、その物性を調べた。その結果を表3に示す。
【0284】
実施例IV−7(8)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−8で得られたエレクトロクロミック材料CA7を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子CA7を作製し、その物性を調べた。その結果を表3に示す。
【0285】
実施例IV−7(9)
エレクトロクロミック材料として、実施例III−9で得られたエレクトロクロミック材料DA7を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子DA7を作製し、その物性を調べた。その結果を表3に示す。
【0286】
比較例1
4−ニトロベンゾイルクロライド〔和光純薬工業(株)製、品番:140−01892〕50g(2.0部)およびポリビニルアルコール25g(1.0部)をN,N−ジメチルアセトアミド〔和光純薬工業(株)製、品番:040−02547〕500g(20部)に溶解させ、40℃で反応させ、得られたポリマーを再沈させて精製した。前記で得られたポリマー25g(1.0部)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)25g(1.0部)、テトラブチルアンモニウムパークロレート(TBAP)〔和光純薬工業(株)製、品番:202−11291〕25g(1.0部)およびp−トルエンスルホン酸エチル12.5g(0.5部)をN,N−ジメチルアセトアミド〔和光純薬工業(株)製、品番:040−02547〕500g(20部)に溶解させた。
【0287】
次に、実施例IV−1において、エレクトロクロミック材料として、前記で得られた溶液を用いたこと以外は、実施例IV−1と同様にしてエレクトロクロミック素子を作製し、当該素子の物性を調べた。なお、印加電圧を3.0Vに調整した。
【0288】
前記で得られたエレクトロクロミック素子の消色時の透明性を目視で確認したところ、黄色味がかった発色が明確に確認された。また、UV−Vis吸収スペクトルを調べたところ、青色光領域に大きな吸収極大領域が確認されたことから、当該エレクトロクロミック素子は、実使用に適していないことが確認された。したがって、当該エレクトロクロミック素子の消色時の光透過性および発消色(酸化還元)の繰り返し耐性を調べなかった。当該エレクトロクロミック素子の物性の測定結果を表3に示す。
【0289】
【表1】
【0290】
【表2】
【0291】
【表3】
【0292】
以上の結果から、各実施例で得られたエレクトロクロミック素子は、直流電圧を印加すると発色し、逆電圧を印加するかまたは放電させると消色するというエレクトロクロミック特性を有し、製膜性に優れ、消色時における透明性、光透過性および発消色(酸化還元)の繰り返し耐性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0293】
本発明の(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系ポリマーは、いずれも、例えば、窓、防眩ミラー、調光フィルム、電子ペーパー、電子広告、電子ラベルなどの用途に用いられるエレクトロクロミック材料の原料として使用することが期待されるものである。
【符号の説明】
【0294】
1 透明基板
2 透明電極層
3 エレクトロクロミック層
4 透明電極(エレクトロクロミック電極)
5 透明基板
6 透明電極層
7 透明電極(対向電極)
8 電解質層
9 スペーサー
図1
図2
図3