特許第6792942号(P6792942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792942インクセット及びインクジェット記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792942
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】インクセット及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20201119BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20201119BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C09D11/40
   B41J2/01 501
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-528230(P2015-528230)
(86)(22)【出願日】2014年7月11日
(86)【国際出願番号】JP2014068597
(87)【国際公開番号】WO2015012132
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年5月1日
【審判番号】不服2019-8223(P2019-8223/J1)
【審判請求日】2019年6月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-154508(P2013-154508)
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-167512(P2013-167512)
(32)【優先日】2013年8月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【弁理士】
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】井内 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】川口 彬
(72)【発明者】
【氏名】石井 竜
【合議体】
【審判長】 川端 修
【審判官】 門前 浩一
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−6062(JP,A)
【文献】 特開2008−95089(JP,A)
【文献】 特開2007−51176(JP,A)
【文献】 特開2005−15765(JP,A)
【文献】 特開2004−91617(JP,A)
【文献】 特開2013−60565(JP,A)
【文献】 特開2006−316243(JP,A)
【文献】 特開2005−336285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B41J 2/01-2/21
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ水、界面活性剤、及び着色剤を少なくとも含有する、シアンインク及びブラックインクを含む少なくとも2種類の着色インクからなるインクセットであって、
前記界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤のみであり、
前記シアンインクの総質量中における界面活性剤の含有量をS1、前記ブラックインクの総質量中における界面活性剤の含有量をS2としたとき、S1が0.8質量%≦S1≦2.5質量%であり、S1からS2を減じた値であるS1−S2が0.2質量%≦S1−S2≦1.2質量%であり、且つS2が0.1質量%以上であるインクセット。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも2種類の着色インクからなるインクセットにおける各着色インクの液滴を、それぞれ記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記被記録材が情報伝達用シートである請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
請求項1に記載の少なくとも2種類の着色インクからなるインクセットにおける各着色インクをそれぞれ含有する、少なくとも2つの容器が装填されたインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1に記載のインクセットを用いるブリード現象の抑制方法。
【請求項6】
請求項1に記載のインクセットを用いるモットリング現象の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、及び該インクセットを用いるインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のカラー記録方法の中で、代表的な方法の1つであるインクジェット記録方法は、記録信号に応じてインクの小液滴を発生させ、これを紙等の被記録材に付着させて記録を行う方法である。近年のインクジェット技術の進歩により、デジタル商業印刷への展開も期待されており、これまで銀塩写真やオフセット印刷によって行われてきた高精細印刷の分野においてもインクジェット記録方法が用いられるようになってきた。
【0003】
水系インクを用いるインクジェット記録方法では、被記録材として、インクジェット専用紙;インクジェット用光沢紙;等のインク受容層を有する被記録材以外に、インクの吸収能力が低い、汎用普通紙等のインク受容層を有しない被記録材も用いられる。
【0004】
これらのうちインク受容層を有しない被記録材に対しては、インクが浸透し難いため、特に水系顔料インクを使用したときに、色間での滲み(ブリード)や、得られる画像の均一性が低い(モットリング)といった現象が生じることがある。インク受容層を有しない被記録材への記録も盛んに行われることから、これらの現象の抑制は1つの大きな課題とされている。
【0005】
上記の問題に対し、インク中に界面活性剤や浸透剤、ポリマーを添加することによる抑制が試みられている。
特許文献1には、アニオン系又はノニオン系の界面活性剤と、1,2−ヘキサンジオール等のアルカンジオールとを添加することにより、モットリングやブリードのない高画質な画像を実現可能としたインクが開示されている。
特許文献2には、インク中に、ある一定の親疎水度係数を有する水溶性化合物を添加することにより速乾性を高め、ブリードを抑制したインクセットが開示されている。
また、特許文献3及び4には、インク中にポリマーを添加することでブリード現象を抑制したインクセットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−213179号公報
【特許文献2】特開2013−86379号公報
【特許文献3】特開2012−1674号公報
【特許文献4】特開2012−188467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インクの吸収能力が低い被記録材に記録したときでもブリード現象及びモットリング現象を生じにくい記録画像を与える少なくとも2種類の着色インクからなるインクセットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、インクセットを構成するシアンインク及びブラックインクが含有する、それぞれの界面活性剤の含有量を特定の範囲に調整することにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下の(1)〜()に関する。
(1)
それぞれ水、界面活性剤、及び着色剤を少なくとも含有する、シアンインク及びブラックインクを含む少なくとも2種類の着色インクからなるインクセットであって、
上記界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤のみであり、
上記シアンインクの総質量中における界面活性剤の含有量をS1、上記ブラックインクの総質量中における界面活性剤の含有量をS2としたとき、S1が0.8質量%≦S1≦2.5質量%であり、S1からS2を減じた値であるS1−S2が0.2質量%≦S1−S2≦1.2質量%であり、且つS2が0.1質量%以上であるインクセット。
(2)
上記(1)に記載の少なくとも2種類の着色インクからなるインクセットにおける各着色インクの液滴を、それぞれ記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
(3)
上記被記録材が情報伝達用シートである上記(2)に記載のインクジェット記録方法
(4
上記(1)に記載の少なくとも2種類の着色インクからなるインクセットにおける各着色インクをそれぞれ含有する、少なくとも2つの容器が装填されたインクジェットプリンタ。

上記(1)に記載のインクセットを用いるブリード現象の抑制方法。

上記(1)に記載のインクセットを用いるモットリング現象の改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、インクの吸収能力が低い被記録材に記録したときでもブリード現象及びモットリング現象を生じにくい記録画像を与える、シアンインク及びブラックインクを含む少なくとも2種類の着色インクからなるインクセットを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において、「C.I.」とは、「カラーインデックス」を意味する。また、本明細書においては、実施例等も含めて、「%」及び「部数」については特に断りのない限り、いずれも質量基準で記載する。
また、シアンインク及びブラックインクの区別が必要でないときは、単に「着色インク」と記載し、それらの両者等の着色インクを含むものとする。
【0011】
上記の着色インクが含有する界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の公知の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は単独で使用することも、併用することもできる。
【0012】
アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸又はその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。他の具体例としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のハイテノールLA−10、LA−12、LA−16、NE−15、ネオハイテノールECL−30S、ECL−45(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0013】
カチオン界面活性剤としては、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0014】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0015】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;日信化学株式会社製 商品名サーフィノール104、105PG50、82、420、440、465、485、オルフィンSTG;ポリグリコールエーテル系(例えばSIGMA−ALDRICH社製のTergitol 15−S−7等);等が挙げられる。
これらの中では、アセチレングリコール系又はアセチレンアルコール系界面活性剤が好ましい。
【0016】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その一例としては、下記式(1)で表されるBYK−345、BYK−348(ビックケミー社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)、BYK−347(同、ポリエーテル変性シロキサン)、BYK−349、BYK−3455;ダイノール960、ダイノール980(エアープロダクツ社製);シルフェイスSAG001、シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSAG008、シルフェイスSAG009、シルフェイスSAG010(日信化学社製);等が挙げられる。
【0017】
【化1】
【0018】
上記式(1)中、aは0〜5の整数、nは3〜30の整数、mは0〜20の整数である。また、「Me」はメチル基を表す。
【0019】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。その一例としては、DuPont社製のZonyl TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、Capstone FS−30、FS−31;オムノバ社製のPF−151N、PF−154N;DIC社製のF−114、F−410,F−444、EXP.TF−2066、EXP.TF−2148、EXP.TF−2149、F−430、F−477、F−552、F−553、F−554、F−555、F−556、F−557、F−558、F−559、F−561、F−562、R−40、R−41、RS−72−K、RS−75、RS−76−E、RS−76−NS、RS−77、EXP.TF−1540、EXP.TF−1760;ビックケミー社製のBYK−3440、BYK−3441等が挙げられる。
【0020】
これらの界面活性剤のうち、シリコーン系界面活性及びフッ素系界面活性剤が好ましく、環境への負荷等を考慮するとシリコーン系界面活性剤がより好ましい。
【0021】
本発明においては、シアンインク及びブラックインクがそれぞれ含有する界面活性剤の含有量が極めて重要である。すなわち、シアンインクの総質量中における界面活性剤の含有量をS1、ブラックインクの総質量中における界面活性剤の含有量をS2としたとき、S1が0.8質量%≦S1≦2.5質量%であり、S1からS2を減じた値であるS1−S2が0.2質量%≦S1−S2≦1.2質量%であり、且つS2が0.1質量%以上であることが必須となる。
S1及びS1−S2の値のうち、いずれか一方でも上記の範囲から外れると、ブリード現象の抑制、モットリング現象の改善といった効果が得られなくなる。
なお、これらの値は、いずれも小数点以下2桁目を四捨五入して1桁目までを記載することとする。
【0022】
シアンインクが含有するシアン色の着色剤としては顔料が好ましい。その具体例としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等のブルー系の顔料が挙げられる。これらの中ではフタロシアニン顔料が好ましく、中でもC.I.Pigment Blue 15:3及び15:4が好ましい。
【0023】
ブラックインクが含有するブラック色の着色剤としては顔料が好ましい。その具体例としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、及び金属塩化物等のブラック色の顔料が挙げられる。
カーボンブラックの具体例としては、例えば、Raven760ULTRA、Raven780ULTRA、Raven790ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven1080ULTRA、Raven1170、Raven1190ULTRAII、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven2500ULTRA、Raven3500、Raven5000ULTRAII、Raven5250、Raven5750、Raven7000(以上、コロンビア・カーボン社製);Monarch700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Regal1330R、Regal1400R、Regal1660R、MogulL(以上、キャボット社製);ColorBlackFW1、ColorBlackFW2、ColorBlackFW18、ColorBlackFW200、ColorBlackFW285、Printex35、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、SpecialBlack5、SpecialBlack6、Nerox305、Nerox505、Nerox510、Nerox605、Nerox600(以上、オリオンエンジニアドカーボンズ社製);MA7、MA8、MA100、MA600、MCF−88、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300(以上、三菱化学社製);等が挙げられる。
【0024】
色相の調整等を目的として、上記の着色剤に、他の有機顔料、無機顔料、体質顔料、分散染料等の着色剤をさらに配合して使用することも可能である。
【0025】
有機顔料の具体例としては、例えば、C.I.Pigment Violet 19、23、29、37、38、50等のバイオレット系の顔料が挙げられる。
【0026】
無機顔料としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、金属塩化物等が挙げられる。
【0027】
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。これらの体質顔料は単独で使用されることはなく、通常、無機顔料又は有機顔料と併用される。
【0028】
分散染料としては、例えば、C.I.Dispers Blue 3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333等;C.I.Dispers Black 1、3、10、24等が挙げられる。これらの分散染料は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記の着色剤としては、いずれも単一の顔料を用いてもよい。また、記録される画像の色相の調整等を目的として、有機顔料、無機顔料、分散染料の3種類以上を併用してもよい。
また、顔料粒子の表面に、化学的に分散性付与基を導入した表面処理顔料(自己分散顔料ともいう。)を用いることもできる。さらに、顔料表面の一部又は全てを有機高分子類で被覆した顔料(マイクロカプセル顔料等ともいう。)を用いることもできる。
【0030】
着色インクの総質量中における着色剤の総含有量は、通常1〜30%、好ましくは1〜10%、より好ましくは2〜7%である。
【0031】
上記着色インクをインクジェット記録に用いるときは、着色インクが含有する金属陽イオンの塩化物(例えば塩化ナトリウム)、硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有量の少ないものを用いるのが好ましい。無機不純物は、一般に、市販品として入手する着色剤が含有していることが多い。無機不純物の含有量の目安は、おおよそ着色剤の総質量に対して1%以下程度であり、下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。無機不純物の少ない着色剤を得る方法としては、例えば逆浸透膜を用いる方法;着色剤の乾燥品あるいはウェットケーキをメタノール等のC1−C4アルコール及び水の混合溶媒中等で懸濁撹拌し、着色剤を濾過分離して、乾燥する方法;イオン交換樹脂で無機不純物を交換吸着する方法;等の精製方法が挙げられる。
【0032】
上記着色インクの調製においては、例えば、水溶性有機溶剤、分散剤、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、酸化防止剤、水分散性樹脂等のインク調製剤を、必要に応じて使用することができる。
【0033】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等のC1−C6アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン、エチレンカーボネート等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量400、800、1540、又はそれ以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
これらの中では、イソプロパノール、1,2−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,2−プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が好ましい。
また、水溶性ではない有機溶剤も、例えば層分離等を生じない範囲で使用してもよい。そのような有機溶剤としては、ヒドロキシ基とアシロキシ基とを有するC8−C16(好ましくはC8−12)アルキルが挙げられる。その具体例としては、例えばテキサノールが挙げられる。
【0034】
分散剤の具体例としては、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等;アクリル酸及びその誘導体;マレイン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;フマール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体;等よりなる群の単量体から選択される、少なくとも2つの単量体(好ましくは、このうち少なくとも1つが親水性の単量体)からなる共重合体、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、あるいはそれらの塩等が挙げられる。上記各種の共重合体やそれらの塩等は、2種類以上を併用してもよい。
分散剤の質量平均分子量としては、おおよそ1000〜30000、好ましくは1250〜25000、より好ましくは1500〜20000程度である。また、酸価としては、おおよそ80〜300mgKOH/g、好ましくは90〜275mgKOH/g、より好ましくは100〜250mgKOH/g程度である。
分散剤は市販品として入手することも可能であり、その具体例としては、いずれもBASF社製の、ジョンクリル61J、67、68、450、55、555、586、678、680、682、683、690;B−36;等が好ましく挙げられる。
さらに、分散剤としては、リビングラジカル重合法により共重合して得られるランダム共重合体及びブロック共重合体を用いることもできる。
【0035】
上記着色インクが顔料を着色剤として含有するときは、さらに分散剤を含有するのが好ましい。着色剤に対する分散剤の使用量は、着色剤を1部として、通常0.1〜1部、好ましくは0.1〜0.6部、より好ましくは0.2〜0.4部である。
【0036】
防腐剤の具体例としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。イソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製、商品名プロクセルGXL(S)やプロクセルXL−2(S)等が挙げられる。
【0037】
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。
【0038】
pH調整剤としては、調製されるインク組成物に悪影響を及ぼさずに、そのpHを上記の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基;等が挙げられる。
【0039】
キレート試薬の具体例としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0040】
防錆剤の具体例としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0041】
水溶性紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、スルホ化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
【0042】
水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0043】
酸化防止剤の具体例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
【0044】
水分散性樹脂は、常温で被膜化することにより着色インク中の着色剤を被記録材に定着させる働きを有する。水分散性樹脂に使用される樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂等が挙げられる。
水分散性樹脂は、例えば、連続相としての水中に分散された樹脂エマルションの状態で使用される。
樹脂エマルションの具体例としては、例えば、スーパーフレックス126、150、170、210、420、470、820、830、890(ウレタン系樹脂エマルション、第一工業製薬社製);ハイドランHW−350、HW−178、HW−163、HW−171、AP−20、AP−30、WLS−201、WLS−210(ウレタン系樹脂エマルション、DIC社製);0569、0850Z、2108(スチレン−ブタジエン系樹脂エマルション、JSR社製);AE980、AE981A、AE982、AE986B、AE104(アクリル系樹脂エマルション、イーテック社製);等が挙げられる。
水分散性樹脂を使用するとき、着色インクの総質量中における水分散性樹脂の含有量は、固形分換算で通常0.5〜20%、好ましくは1〜15%である。
【0045】
着色インクを調製する方法としては、例えば、サンドミル(ビーズミルともいう。)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いる公知の方法で着色剤を水に分散した分散液を調製し、これに水溶性有機溶剤、及び必要に応じてインク調製剤等を加え、撹拌又はホモジナイザー等を用いる公知の方法で各成分を混合し、着色インクを調製する方法等が挙げられる。各成分を混合する順番は特に制限されない。
【0046】
着色インクのpHとしては、保存安定性を向上させる目的で、pH5〜11が好ましく、pH7〜10がより好ましい。また、その粘度としては、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。また、その表面張力としては、10〜50mN/mが好ましく、20〜40mN/mがより好ましい。
【0047】
着色インクは、必要に応じてメンブランフィルター、ガラス濾紙等を用いた精密濾過により、夾雑物を除くこともできる。着色インクをインクジェット記録に用いるときは、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1〜0.1μm、好ましくは0.8〜0.1μmである。
【0048】
シアンインク及びブラックインクを含む少なくとも2種類の着色インクからなる上記インクセットは、各種の印刷分野において使用することができる。例えば、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録インク、捺染等に好適であり、インクジェット記録用インクとして用いることが特に好ましく、後述するインクジェット記録方法において好適に使用される。
【0049】
上記インクジェット記録方法は、上記インクセットにおける各着色インクの液滴を、それぞれ記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行う方法である。記録の際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
上記インクジェット記録方法は、通常インクジェットプリンタを使用して記録を行う方法である。そのインクジェットプリンタの吐出方式としては、公知のいずれの方式であってもよい。例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式ともいう。);電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、すなわちバブルジェット(登録商標)方式;等が挙げられる。
なお、上記インクジェット記録方法には、フォトインクと称する、インク中の着色剤の含有量の低いインクを、小さい体積で多数吐出する方式;実質的に同じ色相で、インク中の着色剤の含有量が異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式;無色透明のインクと着色剤を含有するインクとを併用することにより、被記録材に対する着色剤の定着性を向上させる方式;等も含まれる。
【0051】
上記着色体は、上記インクセットにより着色された物質を意味し、好ましくはインクジェットプリンタを用いるインクジェット記録方法によって着色された被記録材が挙げられる。
該被記録材としては特に制限はないが、情報伝達用シートが好ましく、非・難吸収性の被記録材が特に好ましい。その具体例としては塗工紙が挙げられ、例えば、微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等が含まれる。
塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙である。塗料としては、タルク、パイロフィライト、カオリン等の各種のクレー、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等と、デンプン、ポリビニルアルコール等とを混合したものが挙げられる。
塗料は、例えば、紙の製造工程の中でコーターを用いて紙に塗布することができる。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工を1工程とするインライン方式と、抄紙とは別工程とするオフライン式とがある。
微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m以下の記録用紙のことをいう。アート紙とは、上級記録用紙(上質紙、化学パルプの使用率が100%の紙)に40g/m前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。コート紙及びマット紙とは、20〜40g/m程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。キャスト紙とは、アート紙やコート紙を、キャストドラムという機械で表面に圧力をかけることで、光沢や記録効果がより高くなるように仕上げた記録用紙のことをいう。
本発明により得られる効果は、このような非・難吸収性の被記録材を用いたときに、極めて好適に発揮される。
【0052】
また、被記録材としては、例えば、いずれもインク受容層を有しない普通紙、グラビア印刷やオフセット印刷等に用いられるメディア;インク受容層を有するインクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、光沢フィルム等;繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等);皮革;カラーフィルター用基材;等も挙げられる。
ここで、インク受容層を有しない普通紙等の中には、上記の非・難吸収性の被記録材と同様にインク受容性の低いものが存在する。このような普通紙を用いたときも、本発明により得られる効果が極めて好適に発揮される。
【0053】
上記インクジェット記録方法で情報伝達用シート等の被記録材に記録するときは、例えば、上記インクセットにおける各着色インクをそれぞれ含有する、少なくとも2つの容器をインクジェットプリンタの所定の位置にセットし、上記の記録方法で被記録材に記録すればよい。
上記インクセットは、必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、オレンジ等の各色の着色インクと併用し、フルカラーの記録画像を得ることもできる。このときは、各色の着色インクは、それぞれの容器に注入され、その各容器を、上記インク組成物を含有する容器と同様にインクジェットプリンタの所定の位置に装填してインクジェット記録に使用すればよい。
【0054】
上記インクセットを用いることにより、インクジェット専用紙や汎用普通紙に限らず、通常のインクセットでは良好な記録が困難である非・難吸収性の被記録材を使用したときでもブリード現象の抑制、モットリング現象の改善、混色部分の高い印字濃度の実現等の効果を得ることができる。
また、各種の被記録材上でのインクドットの真円度が高く、平滑性があり、光沢感を損なわない記録画像が得られる。
さらに、擦過性、耐水性、耐光性、耐熱性、耐酸化ガス(例えば耐オゾンガス)性等の各種堅牢性に優れた記録画像を得ることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
[調製例1]:分散液1の調製
ジョンクリル68(MW:13000)11.3部、及びトリエタノールアミン6部をイオン交換水95.2部に溶解し、1時間撹拌した。得られた溶液にC.I.Pigment Blue 15:3(大日精化工業社製、シアニンブルー A220J)37.5部を加え、1500rpmの条件下で20時間、サンドグラインダーで分散処理を行った。得られた分散液にイオン交換水150部を滴下した後、この液を濾過して分散用ビーズを取り除くことにより、固形分の含有量が18.2%のシアン分散液を得た。得られた分散液を「分散液1」とする。
【0057】
[調製例2]:分散液2の調製
調製例1に記載のC.I.Pigment Blue 15:3を、カーボンブラック(オリオンエンジニアドカーボンズ社製、Nerox305)に代える以外は調製例1と同様にして、固形分の含有量が17.0%のブラック分散液を得た。得られた分散液を「分散液2」とする。
【0058】
[調製例3〜13]:着色インクの調製
調製例1及び2で得た分散液に、下記表1及び2に記載の各成分を加えて十分に撹拌して混合させた。その後、ポアサイズ3μmのメンブランフィルターで夾雑物を濾別し、着色インクNo.3〜7の5種類のシアンインク、及び着色インクNo.8〜13の6種類のブラックインクをそれぞれ得た。
表1及び表2中、各成分の数値は部数を意味する。また、残部とあるのは、純水を加えてインク組成物の総量を100部に調整したことを意味する。
なお、着色インクNo.7は比較用のシアンインクである。
【0059】
[実施例1〜4]:インクセットの調製
上記のようにして調製したシアンインク及びブラックインクから、上記「S1」及び「S1−S2」の範囲の両者を満たすように各着色インクを選択し、実施例1〜4のインクセットを調製した。実施例1〜4のインクセットの構成を下記表3に示す。
【0060】
[比較例1〜4]:比較用インクセットの調製
上記のようにして調製したシアンインク及びブラックインクから、上記「S1」及び「S1−S2」の範囲のいずれか一方、及び両方を満たさないように各着色インクを選択し、比較例1〜4の比較用インクセットを調製した。比較例1〜4のインクセットの構成を下記表3に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
[(A)インクジェット記録]
各実施例及び各比較例のインクセットをそれぞれ使用し、セイコーエプソン社製インクジェットプリンタ、商品名 PX105により、被記録材として三菱DFカラーGN(三菱製紙製:127.9g/m)に対してインクジェット記録を行い、着色体を得た。被記録材への記録は、いずれも100%Dutyのベタ画像が一部重なるような画像を印刷した。
得られた各着色体を試験片として用い、下記の評価試験を行った。
【0064】
[(B)モットリング試験]
上記[(A)インクジェット記録]にて得られた各試験片のモットリングの状態を目視にて観察し、下記A〜Cの3段階の評価基準で評価した。評価結果を下記表3に示す。
A:モットリング現象が抑制されており、形成画像は画像性能上問題ないレベルである。
B:モットリング現象による画像の微細な色ムラが視認できる。
C:モットリング現象の発生が目視でも目立ち、形成画像が不均一で色ムラが目立つ。
【0065】
[(C)ブリード試験]
上記[(A)インクジェット記録]にて得られた各試験片のブリードの状態を目視にて観察し、下記A〜Cの3段階の評価基準で評価した。評価結果を下記表3に示す。
A:ブリード現象による画像の滲みがほとんど認められない。
B:ブリード現象による画像の滲みが僅かに認められる。
C:ブリード現象による画像の滲みが目立つ。
【0066】
[(D)印字濃度試験]
上記[(A)インクジェット記録]にて得られた各試験片のうち、2色が重なって印刷されている部位の印字濃度を、X−rite社製濃度計、商品名Spectro Eyeにて測定した。観測光源はD50、観測視野は2°、濃度はANSI Aの条件で測定を行った。試験片としては、インクジェット記録の後、24時間経過した状態のベタ印字物を用い、記録画像の反射濃度D値を測定した。その結果、各実施例及び比較例は、いずれも1.9〜2.0の反射濃度を示し、印字濃度が良好であることが確認された。
【0067】
【表3】
【0068】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜4の画像はモットリング現象の抑制において各比較例と同等以上である上、各比較例と同じ着色剤を使用しているにもかかわらず、極めて顕著なブリード現象の抑制効果が認められた。
【0069】
[調製例14]:分散液3の調製
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られた高分子分散剤6部を2−ブタノン30部に溶解させ、均一な溶液とした。この溶液に、0.44部の水酸化ナトリウムを41部のイオン交換水に溶解させた液を加え、1時間撹拌して乳化溶液を調製した。このとき結晶の析出はなかった。これにC.I.Pigment Blue 15:3(大日精化工業社製、シアニンブルー A220J)を20部加え、サンドグラインダーで分散を行った。分散は1500rpmの条件下で15時間行った。その後、イオン交換水100部を滴下し、濾過して分散用ビーズを取り除いた後、エバポレータで2−ブタノン及び水を減圧留去した後、顔料固形分11.6%のシアン分散液を得た。水溶液中の固形分測定には株式会社エイ・アンド・デイ社製、MS−70を用いて、乾燥重量法により求めた。この液のpHは9.3、顔料の平均粒子径は106nm、粘度は6.2mPa・sであった。得られた着色分散液を「分散液3」とする。
【0070】
[調製例15]:分散液4の調製
調製例14に記載のC.I.Pigment Blue 15:3を、カーボンブラック(オリオンエンジニアドカーボンズ社製、Nerox305)に代える以外は調製例14と同様にして、固形分の含有量が11.9%のブラック分散液を得た。この液のpHは7.7、顔料の平均粒子径は77nm、粘度は4.6mPa・sであった。得られた分散液を「分散液4」とする。
【0071】
[調製例16〜20]:着色インクの調製
調製例14及び15で得た分散液に、下記表4及び5に記載の各成分を加えて十分に撹拌して混合させた。その後、ポアサイズ3μmのメンブランフィルターで夾雑物を濾別し、着色インクNo.14〜15の2種類のシアンインク、及び着色インクNo.16〜18の3種類のブラックインクをそれぞれ得た。
表4及び表5中、各成分の数値は部数を意味する。また、残部とあるのは、純水を加えてインク組成物の総量を100部に調整したことを意味する。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
[実施例5〜7]:インクセットの調製
上記のようにして調製したシアンインク及びブラックインクから、上記「S1」及び「S1−S2」の範囲の両者を満たすように各着色インクを選択し、実施例5〜7のインクセットを調製した。実施例5〜7のインクセットの構成を下記表6に示す。
【0075】
得られた各インクセットについて、それぞれ上記「(A)インクジェット記録」、[(B)モットリング試験]、及び「(C)ブリード試験」を行った。結果を下記表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
表6の結果から明らかなように、実施例5〜7のインクセットにより得られた記録画像は、ブリード現象及びモットリング現象の抑制効果が極めて高く、高画質な画像を得ることができた。
【0078】
[調製例21〜24]:着色インクの調製
調製例14及び15で得た分散液に、下記表7に記載の各成分を加えて十分に撹拌して混合させた。その後、ポアサイズ3μmのメンブランフィルターで夾雑物を濾別し、No.19〜20の2種類のシアンインク、及びNo.21〜22の2種類のブラックインクをそれぞれ得た。
表7中、各成分の数値は部数を意味する。また、残部とあるのは、純水を加えてインク組成物の総量を100部に調整したことを意味する。
【0079】
【表7】
【0080】
[実施例8〜9]:インクセットの調製
上記のようにして調製したシアンインク及びブラックインクから、上記「S1」及び「S1−S2」の範囲の両者を満たすように各着色インクを選択し、実施例8〜9のインクセットを調製した。実施例8〜9のインクセットの構成を下記表8に示す。
【0081】
得られた各インクセットについて、それぞれ上記「(A)インクジェット記録」及び「(C)ブリード試験」を行った。結果を下記表8に示す。
【0082】
【表8】
【0083】
表8の結果から明らかなように、各実施例のインクセットにより得られた記録画像は、ブリード現象の抑制効果が極めて高く、高画質な画像を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のインクセットは、ブリード現象及びモットリング現象の抑制効果に優れることから、各種の記録用インクとして、特に非・難吸収性の被記録材に対するインクジェット記録用インクとして極めて有用である。