【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)鉄道車両用構体を構成する側構体であって、略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合されるフレーム部材とを含み、前記外板は、前記フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだせぎり構造部を備え
、前記外板は、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板を含み、該幕板のせぎり構造部が車両長手方向に沿って設けられている側構体(請求項1)。
【0008】
本項に記載の側構体は、略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、これら複数の開口部の各々に取り付けられるフレーム部材とを含んでいる。
外板は、開口部の車両上方側周縁を構成する幕板を含んでいる。フレーム部材は、各開口部の周縁に、周縁を構成する外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合される。そして、外板は、フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部に、せぎり構造部を備えている。このせぎり構造部は、フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだ(段付けされた)構造であり、開口部のフレーム部材との重ね合わせ領域に設けられ
、幕板のせぎり構造部は車両長手方向に沿って設けられている。このため、せぎり構造部が設けられた開口部では、車両内側に凹んだせぎり構造部に対して、フレーム部材が車両外側に重ねられて接合され、あたかも、せぎり構造部にフレーム部材が収容されたような状態となる。しかも、せぎり構造部は、フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さに設けられていることから、せぎり構造部に収容されたフレーム部材と、外板のせぎり構造部の周囲部分との間に、段差が生じることはない。従って、外板とフレーム部材とを接合しても、側構体の車両外側の面が、フラットに形成されることとなる。なお、「フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さ」とは、加工精度上不可避の寸法差を含む趣旨である。
【0009】
(2)
鉄道車両用構体を構成する側構体であって、略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合されるフレーム部材とを含み、前記外板は、前記フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだせぎり構造部を備え、前記外板は、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板と、該幕板の車両下方側に接続され前記開口部の少なくとも一部の車両長手方向側周縁を構成する吹寄板とを含み、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との突き合わせ部において、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との一方に、他方のせぎり構造部を避けるようにして切欠きが設けられている側構体(請求項2)。
本項に記載の側構体は、略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、これら複数の開口部の各々に取り付けられるフレーム部材とを含んでいる。フレーム部材は、各開口部の周縁に、周縁を構成する外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合される。そして、外板は、フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部に、せぎり構造部を備えている。このせぎり構造部は、フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだ(段付けされた)構造であり、開口部のフレーム部材との重ね合わせ領域に設けられている。このため、せぎり構造部が設けられた開口部では、車両内側に凹んだせぎり構造部に対して、フレーム部材が車両外側に重ねられて接合され、あたかも、せぎり構造部にフレーム部材が収容されたような状態となる。しかも、せぎり構造部は、フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さに設けられていることから、せぎり構造部に収容されたフレーム部材と、外板のせぎり構造部の周囲部分との間に、段差が生じることはない。従って、外板とフレーム部材とを接合しても、側構体の車両外側の面が、フラットに形成されることとなる。なお、「フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さ」とは、加工精度上不可避の寸法差を含む趣旨である。更に、本項に記載の側構体は、外板が、幕板と、幕板の車両下方側に接続される吹寄板とを含むものである。幕板は、外板の車両上方側の部位を成すものであり、略矩形の開口部の車両上方側周縁を構成する。又、吹寄板は、外板の開口部間の部位を成すものであり、窓用開口部の車両長手方向側周縁や、ドア用開口部の車両長手方向側周縁の一部を構成する。このため、幕板及び吹寄板には、夫々、開口部の周縁を構成する部位に、せぎり構造部が設けられる。
【0010】
ここで、幕板の、開口部の車両上方側周縁を構成する部位と、吹寄板の、開口部の車両長手方向側周縁を構成する部位との双方に、せぎり構造部を設けると、幕板と吹寄板とを接続した状態で、幕板のせぎり構造部と吹寄板のせぎり構造部との突き合わせ部において、双方のせぎり構造部同士が干渉し合うことになる。しかしながら、本項に記載の側構体は、双方のせぎり構造部の突き合わせ部において、幕板のせぎり構造部と吹寄板のせぎり構造部との一方に、他方のせぎり構造部を避けるようにして切欠きが設けられているため、せぎり構造部同士が干渉し合うことはなく、せぎり構造部が重なって配置されることもない。更に、双方のせぎり構造部の突き合わせ部において、フレーム部材と双方のせぎり構造部との3重構造を接合する必要はなく、幕板のせぎり構造部或いは吹寄板のせぎり構造部とフレーム部材との、2重構造を接合すればよいものである。従って、フレーム部材に対して、凹部等を形成するための追加加工を施すことなく、この接合部分において厚みが増すことが防止される。
【0011】
(3)上記(1)(2)項において、前記外板は、該外板の車両内側の面の、前記せぎり構造部を避けた位置に接合される骨部材を含む側構体(請求項3)。
本項に記載の側構体は、外板が骨部材を含むものであり、骨部材は、外板の車両内側の面の、せぎり構造部を避けた位置に接合される。すなわち、外板に対してフレーム部材が接合されるせぎり構造部を避けることで、外板とフレーム部材と骨部材との3重構造になることを防止する。これにより、厚みの増大や接合の手間を抑制しながら、骨部材によって側構体の強度を高めるものである。
【0012】
(4)上記(3)項において、前記骨部材は、その延在方向と直交する断面が、ハット状、Z字状、或いは、コの字状である側構体。
本項に記載の側構体は、骨部材の延在方向と直交する断面が、ハット状、Z字状、コの字状の、何れかの形状を有するものである。すなわち、断面がハット状の場合、骨部材は、延在方向と直交する断面がコの字状を成すチャネル部と、チャネル部の両側へ張り出した2つのフランジ部とを備えている。このような構造により、骨部材は、2つのフランジ部が外板の車両内側の面に対して接合される。又、骨部材は、断面がZ字状の場合には、Z字状の底辺又は頂辺に相当する面が、外板の車両内側の面に対して接合され、断面がコの字状の場合には、コの字状の開口部側が、外板の車両内側の面に向けて接合される。すなわち、断面が何れの形状であっても、骨部材は外板の車両内側の面に対して安定して接合され、側構体の強度を高めるものである。なお、同じ外板に接合される骨部材として、断面形状が異なる複数の骨部材が組み合わされて使用されていてもよい。
【0013】
(5)上記(4)項において、前記骨部材として、車両上下方向に延在する縦骨と、車両長手方向に延在する横骨とを含み、前記縦骨と前記横骨とが、前記縦骨と前記横骨との突き合わせ部において、平面視L字型のガセットプレートにより結合されている側構体。
本項に記載の側構体は、骨部材として、車両上下方向に延在する縦骨と、車両長手方向に延在する横骨とを含むものであり、これらの縦骨と横骨とが、両者の突き合わせ部において、平面視L字型のガセットプレートにより結合されている。すなわち、平面視L字型のガセットプレートの、直交する2つの直線に相当する部位のうち、一方の直線に相当する部位が縦骨に接合され、他方の直線に相当する部位が横骨に接合される。この際、縦骨及び横骨の、延在方向と直交する断面がハット状である場合、縦骨及び横骨の夫々を構成するチャネル部の、断面コの字状の中辺に相当する面に、ガセットプレートが接合される。又、縦骨及び横骨の、延在方向と直交する断面がZ字状である場合、縦骨及び横骨夫々の、断面Z字状の底辺又は頂辺に相当する面のうち、外板の車両内側の面に対して接合されていない方の面に、ガセットプレートが接合される。更に、縦骨及び横骨の、延在方向と直交する断面がコの字状である場合、縦骨及び横骨夫々の、断面コの字状の中辺に相当する面に、ガセットプレートが接合される。このような構造によって、側構体の強度がより一層向上されるものである。
【0014】
(6)上記(1)から(5)項において、前記フレーム部材の外周側端部と前記外板との間に、水密構造を備える側構体(請求項4)。
本項に記載の側構体は、外板の各開口部に取り付けられたフレーム部材の外周側端部と、外板との間に、例えば、レーザ溶接やシール部材による水密構造を備えるものである。すなわち、せぎり構造部に収容された状態のフレーム部材の外周側端部と、せぎり構造部を設けたことによって外板に生じる段差部分との間には、僅かに隙間があるため、この隙間を埋めるようにして、水密構造を設ける。これにより、外板とフレーム部材との結合部分に、水密性が確保されると共に、側構体の車両外側の面が、よりフラットに形成されることとなる。更に、水密構造をレーザ溶接により設けることとすれば、腐食の虞があるシール部材が不要になり、より確実に水密性が確保される。なお、せぎり構造部を設けていない開口部においても、フレーム部材の外周側端部と外板との間には、水密構造を備えるものとする。
【0015】
(7)上記(1)から(6)項において、前記せぎり構造部に接合されるフレーム部材がドアフレームである側構体(請求項5)。
本項に記載の側構体は、せぎり構造部に接合されるフレーム部材がドアフレームであることで、上記(1)から(6)項に記載の作用を奏しながら、ドアフレームを外板に対してフラットに接合するものである。
【0016】
(8)上記(1)から(7)項において、前記外板の車両外側の面に、装飾シートが貼り付けられている側構体。
本項に記載の側構体は、外板の車両外側の面に、装飾シートが貼り付けられているものである。すなわち、外板の開口部にせぎり構造部を備えていることにより、外板の車両外側の面は、外板に対してフレーム部材が接合されても、フラットな状態であるため、装飾シートが容易に貼り付けられる。更に、装飾シートが、外板とフレーム部材とを跨ぐようにして貼り付けられる場合には、外板とフレーム部材との結合部分の水密性が向上することとなる。
【0017】
(9)鉄道車両用構体を構成する側構体の製作方法であって、略矩形の複数の開口部を設けた外板の、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねた状態でフレーム部材を接合し、この際、予め、少なくとも一部の前記複数の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ段付けしたせぎり構造部を設け
、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板を用いて、前記外板の一部を形成し、前記幕板に車両長手方向に沿ってせぎり構造部を設ける側構体の製作方法(請求項6)。
(10)
鉄道車両用構体を構成する側構体の製作方法であって、略矩形の複数の開口部を設けた外板の、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねた状態でフレーム部材を接合し、この際、予め、少なくとも一部の前記複数の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ段付けしたせぎり構造部を設け、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板と、該幕板の車両下方側に接続され前記開口部の少なくとも一部の車両長手方向側周縁を構成する吹寄板とを用いて、前記外板の一部を形成し、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との突き合わせ部において、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との一方に、予め、他方のせぎり構造部を避けるようにして切欠きを設ける側構体の製作方法(請求項7)。
【0018】
(11)上記(9)(10)項において、前記外板の車両内側の面の、前記せぎり構造部を避けた位置に、骨部材を接合する側構体の製作方法(請求項8)。
(12)上記(11)項において、前記骨部材として、延在方向と直交する断面が、ハット状、Z字状、或いは、コの字状である骨部材を用いる側構体の製作方法。
(13)上記(12)項において、前記骨部材として、車両上下方向に延在する縦骨と、車両長手方向に延在する横骨とを用い、前記縦骨と前記横骨とを、前記縦骨と前記横骨との突き合わせ部において、平面視L字型のガセットプレートにより結合する側構体の製作方法。
【0019】
(14)上記(9)から(13)項において、前記フレーム部材の外周側端部と前記外板との間に、レーザ溶接又はシール部材によって水密構造を設ける側構体の製作方法(請求項9)。
(15)上記(9)から(14)項において、前記せぎり構造部に前記フレーム部材としてドアフレームを接合する側構体の製作方法(請求項10)。
【0020】
(16)上記(9)から(15)項において、前記外板の車両外側の面に、装飾シートを貼り付ける側構体の製作方法。
そして、(9)から(16)項の側構体の製作方法は、各々、上記(1)から(8)項に記載の側構体を製作するものであり、上記(1)から(8)項の側構体に対応する同等の作用を奏するものである。