特許第6792962号(P6792962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792962
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】側構体及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20201119BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20201119BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20201119BHJP
【FI】
   B61D17/08
   B61D17/00 C
   B23K26/21 N
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-105241(P2016-105241)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-210133(P2017-210133A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 誠
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−020729(JP,A)
【文献】 特開2017−088012(JP,A)
【文献】 特開2009−035123(JP,A)
【文献】 特開2006−027366(JP,A)
【文献】 特開平10−076940(JP,A)
【文献】 特開平06−312660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用構体を構成する側構体であって、
略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合されるフレーム部材とを含み、
前記外板は、前記フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだせぎり構造部を備え
前記外板は、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板を含み、該幕板のせぎり構造部が車両長手方向に沿って設けられていることを特徴とする側構体。
【請求項2】
鉄道車両用構体を構成する側構体であって、
略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合されるフレーム部材とを含み、
前記外板は、前記フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだせぎり構造部を備え、
前記外板は、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板と、該幕板の車両下方側に接続され前記開口部の少なくとも一部の車両長手方向側周縁を構成する吹寄板とを含み、
前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との突き合わせ部において、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との一方に、他方のせぎり構造部を避けるようにして切欠きが設けられていることを特徴とする側構体。
【請求項3】
前記外板は、該外板の車両内側の面の、前記せぎり構造部を避けた位置に接合される骨部材を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の側構体。
【請求項4】
前記フレーム部材の外周側端部と前記外板との間に、水密構造を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の側構体。
【請求項5】
前記せぎり構造部に接合されるフレーム部材がドアフレームであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の側構体。
【請求項6】
鉄道車両用構体を構成する側構体の製作方法であって、
略矩形の複数の開口部を設けた外板の、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねた状態でフレーム部材を接合し、この際、予め、少なくとも一部の前記複数の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ段付けしたせぎり構造部を設け
前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板を用いて、前記外板の一部を形成し、前記幕板に車両長手方向に沿ってせぎり構造部を設けることを特徴とする側構体の製作方法。
【請求項7】
鉄道車両用構体を構成する側構体の製作方法であって、
略矩形の複数の開口部を設けた外板の、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねた状態でフレーム部材を接合し、この際、予め、少なくとも一部の前記複数の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ段付けしたせぎり構造部を設け、
前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板と、該幕板の車両下方側に接続され前記開口部の少なくとも一部の車両長手方向側周縁を構成する吹寄板とを用いて、前記外板の一部を形成し、
前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との突き合わせ部において、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との一方に、予め、他方のせぎり構造部を避けるようにして切欠きを設けることを特徴とする側構体の製作方法。
【請求項8】
前記外板の車両内側の面の、前記せぎり構造部を避けた位置に、骨部材を接合することを特徴とする請求項6又は7記載の側構体の製作方法。
【請求項9】
前記フレーム部材の外周側端部と前記外板との間に、レーザ溶接又はシール部材によって水密構造を設けることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項記載の側構体の製作方法。
【請求項10】
前記せぎり構造部に前記フレーム部材としてドアフレームを接合することを特徴とする請求項6から9のいずれか1項記載の側構体の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用構体を構成する側構体と、この側構体の製作方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用構体を構成する側構体は、例えば、図8に示すような構造を有している。図8に示す側構体100は、4枚の幕板114、8枚の吹寄板116、及び、4枚の腰板118が接合されて構成される外板112と、外板112に設けられた複数(図8の例では7つ)の開口部20(20A、20B)に取り付けられるフレーム部材126(126A、126B)とを含んでいる。なお、ドア用の開口部及びフレーム部材を符号20A及び126Aで示し、窓用の開口部及びフレーム部材を符号20B及び126Bで示している。そして、このような側構体やそれを含む鉄道車両用構体に関して、様々な発明が発案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−68816号公報
【特許文献2】特開2007−137217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来の発明は、何れも、側構体100を構成する外板112とフレーム部材126とを接合する際に、外板112の上にフレーム部材126を重ねて接合している。すなわち、図9に示すように、外板112を構成する幕板114や吹寄板116の車両外側(図9(b)の右側)に、フレーム部材126を重ねて接合しているため、幕板114及び吹寄板116とフレーム部材126との間に段差が生じてしまう。このような段差が生じると、鉄道車両用構体を構成する各構体の中で、特に利用者の目につき易い側構体100の外観の美観を損ねることとなり、又、側構体100の車両外側の面に装飾シートを貼り付ける必要がある場合に、貼り付けの作業性が悪化してしまう。更に、図9の例では、フレーム部材126の、車両上方側の車両内側の面に、幕板114の肉厚と等しい深さの凹部126cを設け、この凹部126cに幕板114の接合領域を配置することで、特に、幕板114と吹寄板116とフレーム部材126との、3重の接合箇所における厚みの増加を防止している。このため、フレーム部材126に対して、凹部126cを設けるための追加加工を施す必要があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、側構体の車両外側の面をフラットに形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)鉄道車両用構体を構成する側構体であって、略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合されるフレーム部材とを含み、前記外板は、前記フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだせぎり構造部を備え、前記外板は、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板を含み、該幕板のせぎり構造部が車両長手方向に沿って設けられている側構体(請求項1)。
【0008】
本項に記載の側構体は、略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、これら複数の開口部の各々に取り付けられるフレーム部材とを含んでいる。外板は、開口部の車両上方側周縁を構成する幕板を含んでいる。フレーム部材は、各開口部の周縁に、周縁を構成する外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合される。そして、外板は、フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部に、せぎり構造部を備えている。このせぎり構造部は、フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだ(段付けされた)構造であり、開口部のフレーム部材との重ね合わせ領域に設けられ、幕板のせぎり構造部は車両長手方向に沿って設けられている。このため、せぎり構造部が設けられた開口部では、車両内側に凹んだせぎり構造部に対して、フレーム部材が車両外側に重ねられて接合され、あたかも、せぎり構造部にフレーム部材が収容されたような状態となる。しかも、せぎり構造部は、フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さに設けられていることから、せぎり構造部に収容されたフレーム部材と、外板のせぎり構造部の周囲部分との間に、段差が生じることはない。従って、外板とフレーム部材とを接合しても、側構体の車両外側の面が、フラットに形成されることとなる。なお、「フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さ」とは、加工精度上不可避の寸法差を含む趣旨である。
【0009】
(2)鉄道車両用構体を構成する側構体であって、略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合されるフレーム部材とを含み、前記外板は、前記フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだせぎり構造部を備え、前記外板は、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板と、該幕板の車両下方側に接続され前記開口部の少なくとも一部の車両長手方向側周縁を構成する吹寄板とを含み、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との突き合わせ部において、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との一方に、他方のせぎり構造部を避けるようにして切欠きが設けられている側構体(請求項2)。
本項に記載の側構体は、略矩形の複数の開口部が設けられる外板と、これら複数の開口部の各々に取り付けられるフレーム部材とを含んでいる。フレーム部材は、各開口部の周縁に、周縁を構成する外板に対して車両外側に重ねられた状態で接合される。そして、外板は、フレーム部材が接合された少なくとも一部の開口部に、せぎり構造部を備えている。このせぎり構造部は、フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ凹んだ(段付けされた)構造であり、開口部のフレーム部材との重ね合わせ領域に設けられている。このため、せぎり構造部が設けられた開口部では、車両内側に凹んだせぎり構造部に対して、フレーム部材が車両外側に重ねられて接合され、あたかも、せぎり構造部にフレーム部材が収容されたような状態となる。しかも、せぎり構造部は、フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さに設けられていることから、せぎり構造部に収容されたフレーム部材と、外板のせぎり構造部の周囲部分との間に、段差が生じることはない。従って、外板とフレーム部材とを接合しても、側構体の車両外側の面が、フラットに形成されることとなる。なお、「フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さ」とは、加工精度上不可避の寸法差を含む趣旨である。更に、本項に記載の側構体は、外板が、幕板と、幕板の車両下方側に接続される吹寄板とを含むものである。幕板は、外板の車両上方側の部位を成すものであり、略矩形の開口部の車両上方側周縁を構成する。又、吹寄板は、外板の開口部間の部位を成すものであり、窓用開口部の車両長手方向側周縁や、ドア用開口部の車両長手方向側周縁の一部を構成する。このため、幕板及び吹寄板には、夫々、開口部の周縁を構成する部位に、せぎり構造部が設けられる。
【0010】
ここで、幕板の、開口部の車両上方側周縁を構成する部位と、吹寄板の、開口部の車両長手方向側周縁を構成する部位との双方に、せぎり構造部を設けると、幕板と吹寄板とを接続した状態で、幕板のせぎり構造部と吹寄板のせぎり構造部との突き合わせ部において、双方のせぎり構造部同士が干渉し合うことになる。しかしながら、本項に記載の側構体は、双方のせぎり構造部の突き合わせ部において、幕板のせぎり構造部と吹寄板のせぎり構造部との一方に、他方のせぎり構造部を避けるようにして切欠きが設けられているため、せぎり構造部同士が干渉し合うことはなく、せぎり構造部が重なって配置されることもない。更に、双方のせぎり構造部の突き合わせ部において、フレーム部材と双方のせぎり構造部との3重構造を接合する必要はなく、幕板のせぎり構造部或いは吹寄板のせぎり構造部とフレーム部材との、2重構造を接合すればよいものである。従って、フレーム部材に対して、凹部等を形成するための追加加工を施すことなく、この接合部分において厚みが増すことが防止される。
【0011】
(3)上記(1)(2)項において、前記外板は、該外板の車両内側の面の、前記せぎり構造部を避けた位置に接合される骨部材を含む側構体(請求項3)。
本項に記載の側構体は、外板が骨部材を含むものであり、骨部材は、外板の車両内側の面の、せぎり構造部を避けた位置に接合される。すなわち、外板に対してフレーム部材が接合されるせぎり構造部を避けることで、外板とフレーム部材と骨部材との3重構造になることを防止する。これにより、厚みの増大や接合の手間を抑制しながら、骨部材によって側構体の強度を高めるものである。
【0012】
(4)上記(3)項において、前記骨部材は、その延在方向と直交する断面が、ハット状、Z字状、或いは、コの字状である側構体。
本項に記載の側構体は、骨部材の延在方向と直交する断面が、ハット状、Z字状、コの字状の、何れかの形状を有するものである。すなわち、断面がハット状の場合、骨部材は、延在方向と直交する断面がコの字状を成すチャネル部と、チャネル部の両側へ張り出した2つのフランジ部とを備えている。このような構造により、骨部材は、2つのフランジ部が外板の車両内側の面に対して接合される。又、骨部材は、断面がZ字状の場合には、Z字状の底辺又は頂辺に相当する面が、外板の車両内側の面に対して接合され、断面がコの字状の場合には、コの字状の開口部側が、外板の車両内側の面に向けて接合される。すなわち、断面が何れの形状であっても、骨部材は外板の車両内側の面に対して安定して接合され、側構体の強度を高めるものである。なお、同じ外板に接合される骨部材として、断面形状が異なる複数の骨部材が組み合わされて使用されていてもよい。
【0013】
(5)上記(4)項において、前記骨部材として、車両上下方向に延在する縦骨と、車両長手方向に延在する横骨とを含み、前記縦骨と前記横骨とが、前記縦骨と前記横骨との突き合わせ部において、平面視L字型のガセットプレートにより結合されている側構体。
本項に記載の側構体は、骨部材として、車両上下方向に延在する縦骨と、車両長手方向に延在する横骨とを含むものであり、これらの縦骨と横骨とが、両者の突き合わせ部において、平面視L字型のガセットプレートにより結合されている。すなわち、平面視L字型のガセットプレートの、直交する2つの直線に相当する部位のうち、一方の直線に相当する部位が縦骨に接合され、他方の直線に相当する部位が横骨に接合される。この際、縦骨及び横骨の、延在方向と直交する断面がハット状である場合、縦骨及び横骨の夫々を構成するチャネル部の、断面コの字状の中辺に相当する面に、ガセットプレートが接合される。又、縦骨及び横骨の、延在方向と直交する断面がZ字状である場合、縦骨及び横骨夫々の、断面Z字状の底辺又は頂辺に相当する面のうち、外板の車両内側の面に対して接合されていない方の面に、ガセットプレートが接合される。更に、縦骨及び横骨の、延在方向と直交する断面がコの字状である場合、縦骨及び横骨夫々の、断面コの字状の中辺に相当する面に、ガセットプレートが接合される。このような構造によって、側構体の強度がより一層向上されるものである。
【0014】
(6)上記(1)から(5)項において、前記フレーム部材の外周側端部と前記外板との間に、水密構造を備える側構体(請求項4)。
本項に記載の側構体は、外板の各開口部に取り付けられたフレーム部材の外周側端部と、外板との間に、例えば、レーザ溶接やシール部材による水密構造を備えるものである。すなわち、せぎり構造部に収容された状態のフレーム部材の外周側端部と、せぎり構造部を設けたことによって外板に生じる段差部分との間には、僅かに隙間があるため、この隙間を埋めるようにして、水密構造を設ける。これにより、外板とフレーム部材との結合部分に、水密性が確保されると共に、側構体の車両外側の面が、よりフラットに形成されることとなる。更に、水密構造をレーザ溶接により設けることとすれば、腐食の虞があるシール部材が不要になり、より確実に水密性が確保される。なお、せぎり構造部を設けていない開口部においても、フレーム部材の外周側端部と外板との間には、水密構造を備えるものとする。
【0015】
(7)上記(1)から(6)項において、前記せぎり構造部に接合されるフレーム部材がドアフレームである側構体(請求項5)。
本項に記載の側構体は、せぎり構造部に接合されるフレーム部材がドアフレームであることで、上記(1)から(6)項に記載の作用を奏しながら、ドアフレームを外板に対してフラットに接合するものである。
【0016】
(8)上記(1)から(7)項において、前記外板の車両外側の面に、装飾シートが貼り付けられている側構体。
本項に記載の側構体は、外板の車両外側の面に、装飾シートが貼り付けられているものである。すなわち、外板の開口部にせぎり構造部を備えていることにより、外板の車両外側の面は、外板に対してフレーム部材が接合されても、フラットな状態であるため、装飾シートが容易に貼り付けられる。更に、装飾シートが、外板とフレーム部材とを跨ぐようにして貼り付けられる場合には、外板とフレーム部材との結合部分の水密性が向上することとなる。
【0017】
(9)鉄道車両用構体を構成する側構体の製作方法であって、略矩形の複数の開口部を設けた外板の、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねた状態でフレーム部材を接合し、この際、予め、少なくとも一部の前記複数の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ段付けしたせぎり構造部を設け、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板を用いて、前記外板の一部を形成し、前記幕板に車両長手方向に沿ってせぎり構造部を設ける側構体の製作方法(請求項6)。
(10)鉄道車両用構体を構成する側構体の製作方法であって、略矩形の複数の開口部を設けた外板の、前記複数の開口部の各々の周縁に、前記外板に対して車両外側に重ねた状態でフレーム部材を接合し、この際、予め、少なくとも一部の前記複数の開口部の、前記フレーム部材との重ね合わせ領域に、前記フレーム部材の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側へ段付けしたせぎり構造部を設け、前記開口部の車両上方側周縁を構成する幕板と、該幕板の車両下方側に接続され前記開口部の少なくとも一部の車両長手方向側周縁を構成する吹寄板とを用いて、前記外板の一部を形成し、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との突き合わせ部において、前記幕板のせぎり構造部と前記吹寄板のせぎり構造部との一方に、予め、他方のせぎり構造部を避けるようにして切欠きを設ける側構体の製作方法(請求項7)。
【0018】
(11)上記(9)(10)項において、前記外板の車両内側の面の、前記せぎり構造部を避けた位置に、骨部材を接合する側構体の製作方法(請求項8)。
(12)上記(11)項において、前記骨部材として、延在方向と直交する断面が、ハット状、Z字状、或いは、コの字状である骨部材を用いる側構体の製作方法。
(13)上記(12)項において、前記骨部材として、車両上下方向に延在する縦骨と、車両長手方向に延在する横骨とを用い、前記縦骨と前記横骨とを、前記縦骨と前記横骨との突き合わせ部において、平面視L字型のガセットプレートにより結合する側構体の製作方法。
【0019】
(14)上記(9)から(13)項において、前記フレーム部材の外周側端部と前記外板との間に、レーザ溶接又はシール部材によって水密構造を設ける側構体の製作方法(請求項9)。
(15)上記(9)から(14)項において、前記せぎり構造部に前記フレーム部材としてドアフレームを接合する側構体の製作方法(請求項10)。
【0020】
(16)上記(9)から(15)項において、前記外板の車両外側の面に、装飾シートを貼り付ける側構体の製作方法。
そして、(9)から(16)項の側構体の製作方法は、各々、上記(1)から(8)項に記載の側構体を製作するものであり、上記(1)から(8)項の側構体に対応する同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記のような構成であるため、側構体の車両外側の面をフラットに形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る側構体の、幕板と吹寄板とドアフレームとの接合部分を示しており、(a)は車両外側から、斜め下方に見下ろした様子を示すイメージ図であり、(b)は(a)の要部の拡大図である。
図2】(a)は図1の接合部分を、車両外側の別の角度から、斜め上方に見上げた様子を示すイメージ図であり、(b)は(a)の要部の拡大図である。
図3図1の接合部分を車両内側から、斜め上方に見上げた様子を示すイメージ図である。
図4図1(a)の符号Aで示す方向からのイメージ断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る側構体の、図1に示した接合部分近傍の骨部材を示しており、(a)は車両内側から、斜め下方に見下ろした様子を示すイメージ図であり、(b)は(a)の要部を別角度から、斜め下方に見下ろした様子を示した拡大図である。
図6図5(a)の符号Bで示す方向からのイメージ断面図である。
図7図5(a)の符号Cで示す方向からのイメージ断面図である。
図8】鉄道車両用構体を構成する側構体の一例の正面図である。
図9】従来の側構体を示しており、(a)は幕板と吹寄板とドアフレームとの接合部分を車両外側から、斜め下方に見下ろした様子を示すイメージ図であり、(b)は(a)の符号Dで示す方向からのイメージ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。なお、以下の説明において、部材同士を「接合する」とは、状況に応じて、レーザ溶接、スポット溶接、アーク溶接、摩擦撹拌接合、接着剤、リベット・ボルトによる締結等によって、部材同士を接合することを示している。又、図1から図7には、説明の便宜上、各部材を破断した状態で図示しているが、それらの図が示す破断箇所は、各部材の実際の分割箇所を示すものではない。
【0024】
本発明の実施の形態に係る側構体10は、ステンレス構体、一般鋼構体、軽合金(アルミやマグネシウム等)構体といった、鉄道車両用構体を構成するものであり、基本的な構成は、図8に示した側構体100と同様である。すなわち、図8に示すように、側構体10は、4枚の幕板14、8枚の吹寄板16、及び、4枚の腰板18が接合されて構成される外板12と、外板12に設けられた複数の開口部20(ドア用開口部20A、窓用開口部20B)に取り付けられるフレーム部材26(ドアフレーム26A、窓フレーム26B)とを含んでいる。なお、図8に示す側構体10の構成は一例であり、外板12を構成する幕板14、吹寄板16、腰板18の各枚数や、開口部20及びそれに取り付けられるフレーム部材26の数は、車両の大きさや必要なドア用開口部20Aの数等に応じて、適宜、変更されるものである。
【0025】
又、本発明の実施の形態に係る側構体10は、図1から図4に示すように、ドア用開口部20Aにおいて、外板12(幕板14及び吹寄板16)に対し、ドアフレーム26Aが、車両外側(図4の右側)へ重ねられて接合されている。ここで、ドア用開口部20Aの周縁には、そのドアフレーム26Aとの重ね合わせ領域に、車両内側へ段付けされたせぎり構造部30(30A、30B)が設けられており、このせぎり構造部30にドアフレーム26Aの接合部分が配置されている。すなわち、ドア用開口部20Aの車両上方側周縁を構成する、幕板14の図1における下端の一部領域に、せぎり構造部30Aが設けられており、又、ドア用開口部20Aの車両長手方向側周縁を構成する、吹寄板16の図1における左端の領域に、せぎり構造部30Bが設けられている。そして、幕板14のせぎり構造部30Aに、ドアフレーム26Aの車両上方側端部が配置され、吹寄板16のせぎり構造部30Bに、ドアフレーム26Aの車両長手方向側端部が配置されている。このような構造により、図1(b)等で確認できるように、幕板14のせぎり構造部30Aと、吹寄板16のせぎり構造部30Bとの双方が、ドアフレーム26Aの車両内側に入り込むようにして設けられている。
【0026】
又、図1から図3の例では、吹寄板16のせぎり構造部30Bの、幕板14のせぎり構造部30Aとの突き合わせ部に相当する、車両上方側端部に、切欠き32が設けられている。この切欠き32は、せぎり構造部30同士の干渉を防止するためのものであり、図示の例とは逆に、吹寄板16のせぎり構造部30Bに切欠き32を設けずに、幕板14のせぎり構造部30Aの、図1における右側端部に、切欠き32を設けてもよい。更に、図4で確認できるように、せぎり構造部30は、ドアフレーム26Aのせぎり構造部30に対する接合部分の肉厚と、等しい深さで車両内側(図4における左側)へ段付けされて設けられている。
なお、詳しい説明は省略するが、幕板14や吹寄板16と共に外板12を構成する、腰板18に対しても、幕板14や吹寄板16と同様に、開口部20の周縁を構成する部位の、フレーム部材26との重ね合わせ領域に、せぎり構造部30を設けてもよい。
【0027】
又、図4に示すように、せぎり構造部30Aに接合された状態の、ドアフレーム26Aの外周側端部26cと、せぎり構造部30Aが設けられることで幕板14に形成される段差部分14aとの間には、水密構造36が設けられている。水密構造36は、例えば、ドアフレーム26Aの外周側端部26cと、幕板14の段差部分14aとの間を、レーザ溶接することにより設けられる。又、水密構造36は、シール部材等で構成されていてもよい。更に、図1(b)及び図2(b)に示すように、ドアフレーム26Aの外周側端部と、吹寄板16の段差部分との間にも、上記のような水密構造36が設けられている。なお、図示は省略するが、外板12を構成する吹寄板16等の車両外側の面に、上記の水密構造36の上から、装飾シートを貼り付けてもよい。
【0028】
一方、幕板14と吹寄板16との接合は、本実施例では、吹寄板16の車両上方側端部に、幕板14の肉厚と等しい深さで車両内側へ段付けしたせぎり構造部50を設け、このせぎり構造部50に幕板14を重ねて接合している。このような構造により、図2(b)、図3等で確認できるように、吹寄板16のせぎり構造部50は、幕板14の車両内側に入り込むようにして設けられている。なお、幕板14の車両下方側端部と、せぎり構造部50が設けられることで吹寄板16に形成された段差部分との間に、水密構造を備えていてもよい。
【0029】
次に、図5には、本発明の実施の形態に係る側構体10の、外板12の車両内側の面に接合される骨部材40を示している。本実施例では、骨部材40として、車両上下方向に延在する縦骨42と、車両長手方向に延在する横骨44とを含み、その双方の骨部材40が、延在方向と直交する断面の形状が、所謂ハット状になっている。すなわち、縦骨42は、断面コの字状のチャネル部42aと、このチャネル部42aの両側に張り出す2つのフランジ部42bとで形成されている。同様に、横骨44は、断面コの字状のチャネル部44aと、このチャネル部44aの両側に張り出す2つのフランジ部44bとで形成されている。そして、縦骨42及び横骨44は、それらのフランジ部42b、44bが、外板12を構成する幕板14或いは吹寄板16の、車両内側の面に接合されている。なお、本発明の実施の形態に係る側構体10において、外板12に接合される骨部材40(縦骨42及び横骨44)は、その延在方向と直交する断面の形状が、ハット状に限定されるものではなく、Z字状やコの字状であってもよい。
【0030】
又、縦骨42及び横骨44の双方は、幕板14のせぎり構造部30Aと、吹寄板16のせぎり構造部30B及び50とを、避けた位置に接合されている。すなわち、図5及び図6で確認できるように、縦骨42は、幕板14のせぎり構造部30A及び吹寄板16のせぎり構造部30Bの、図5における左側に隣接する位置に接合されており、かつ、吹寄板16のせぎり構造部50を避けるようにして、図5における上下方向に離間した2つの縦骨42に分かれている。又、横骨44は、図5及び図7で確認できるように、幕板14のせぎり構造部30A及び吹寄板16のせぎり構造部30Bよりも、図5における左側の位置、かつ、吹寄板16のせぎり構造部50の、図5における下側に隣接する位置に接合されている。
【0031】
又、図5の例では、縦骨42と横骨44との突き合わせ部において、横骨44のチャネル部44aが、フランジ部44bよりも、図5における右側へ突出して設けられており、縦骨42のフランジ部42bの上を、縦骨42のチャネル部42aに近接する位置まで延びている。更に、縦骨42と横骨44との突き合わせ部には、平面視L字型のガセットプレート46が接合されている。ガセットプレート46は、図5における上下方向に延びる部位が、断面ハット状の縦骨42の頂辺(断面コの字状のチャネル部42aの中辺)に相当する面42cに接合されており、この際、図5における上下方向に離間した2つの縦骨42に跨るようにして接合されている。又、ガセットプレート46は、図5における左右方向に延びる部位が、断面ハット状の横骨44の頂辺(断面コの字状のチャネル部44aの中辺)に相当する面44cに接合されている。このため、本実施例では、平面視L字型のガセットプレート46により、離間した2つの縦骨42の一方の縦骨42と、他方の縦骨42と、横骨44との、3つの骨部材40が接合されている。
【0032】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る側構体10は、図8に示されるように、略矩形の複数の開口部20(20A、20B)が設けられる外板12と、これら複数の開口部20の各々に取り付けられるフレーム部材26(26A、26B)とを含んでいる。フレーム部材26は、図1から図4に示されるように、各開口部20の周縁に、周縁を構成する外板12(幕板14及び吹寄板16)に対して車両外側に重ねられた状態で接合される。そして、外板12(幕板14及び吹寄板16)は、フレーム部材26が接合された少なくとも一部の開口部20に、せぎり構造部30(30A、30B)を備えている。
【0033】
このせぎり構造部30は、フレーム部材26の接合部分の肉厚と等しい深さで車両内側(図4における左側)へ凹んだ(段付けされた)構造であり、開口部20のフレーム部材26との重ね合わせ領域に設けられている。このため、せぎり構造部30が設けられた開口部20では、車両内側に凹んだせぎり構造部30に対して、フレーム部材26が車両外側(図4における右側)に重ねられて接合され、あたかも、せぎり構造部30にフレーム部材26が収容されたような状態となる。しかも、せぎり構造部30は、フレーム部材26の接合部分の肉厚と等しい深さに設けられていることから、せぎり構造部30に収容されたフレーム部材26と、外板12のせぎり構造部30の周囲部分との間に、段差が生じることはない。従って、外板12とフレーム部材26とを接合しても、側構体10の車両外側の面を、フラットに形成することができる。
【0034】
又、本発明の実施の形態に係る側構体10は、図8に示されるように、外板12が、幕板14と、幕板14の車両下方側に接続される吹寄板16とを含むものである。幕板14は、外板12の車両上方側の部位を成すものであり、略矩形の開口部20の車両上方側周縁を構成する。又、吹寄板16は、外板12の開口部20間の部位を成すものであり、窓用開口部20Bの車両長手方向側周縁や、ドア用開口部20Aの車両長手方向側周縁の一部を構成する。このため、幕板14及び吹寄板16には、夫々、図1から図4に示すように、開口部20の周縁を構成する部位に、せぎり構造部30が設けられる。
【0035】
ここで、幕板14の、開口部20の車両上方側周縁を構成する部位と、吹寄板16の、開口部20の車両長手方向側周縁を構成する部位との双方に、せぎり構造部30を設けると、幕板14と吹寄板16とを接続した状態で、幕板14のせぎり構造部30Aと吹寄板16のせぎり構造部30Bとの突き合わせ部において、双方のせぎり構造部30同士が干渉し合うことになる。しかしながら、本発明の実施の形態に係る側構体10は、双方のせぎり構造部30の突き合わせ部において、幕板14のせぎり構造部30Aと吹寄板16のせぎり構造部30Bとの一方(図1から図3の例では、吹寄板16のせぎり構造部30B)に、他方のせぎり構造部30を避けるようにして、切欠き32が設けられている。このため、せぎり構造部30同士が干渉し合うことはなく、せぎり構造部30が重なって配置されることもない。更に、双方のせぎり構造部30の突き合わせ部において、フレーム部材26と双方のせぎり構造部30との3重構造を接合する必要はなく、幕板14のせぎり構造部30A或いは吹寄板16のせぎり構造部30Bとフレーム部材26との、2重構造を接合すればよいものである。従って、フレーム部材26に対して、凹部等を形成するための追加加工を施すことなく、この接合部分において厚みが増すことを防止できる。
【0036】
又、本発明の実施の形態に係る側構体10は、図4に示されるように、外板12の各開口部20に取り付けられたフレーム部材26の外周側端部26cと、外板12(図4の例では幕板14)との間に、例えば、レーザ溶接やシール部材による水密構造36を備えるものである。すなわち、せぎり構造部30Aに収容された状態のフレーム部材26の外周側端部26cと、せぎり構造部30Aを設けたことによって幕板14に生じる段差部分14aとの間には、僅かに隙間があるため、この隙間を埋めるようにして、水密構造36を設ける。これにより、幕板14等で構成される外板12とフレーム部材26との結合部分に、水密性を確保することができると共に、側構体10の車両外側の面を、よりフラットに形成することが可能となる。更に、水密構造36をレーザ溶接により設けることとすれば、腐食の虞があるシール部材が不要になり、より確実に水密性を確保することができる。なお、せぎり構造部30を設けていない開口部20においても、フレーム部材26の外周側端部26cと外板12との間には、水密構造36を備えるものとする。
【0037】
更に、本発明の実施の形態に係る側構体10は、外板12の車両外側の面に、装飾シートが貼り付けられていてもよい。すなわち、外板12の開口部20にせぎり構造部30を備えていることにより、外板12の車両外側の面は、外板12に対してフレーム部材26が接合されても、フラットな状態であるため、装飾シートを容易に貼り付けることができる。更に、装飾シートを、外板12とフレーム部材26とを跨ぐようにして貼り付けることとすれば、外板12とフレーム部材26との結合部分の水密性を、より一層向上することができる。
【0038】
又、本発明の実施の形態に係る側構体10は、図5から図7に示されるように、外板12が骨部材40(42、44)を含むものであり、骨部材40は、外板12(幕板14及び吹寄板16)の車両内側の面の、せぎり構造部30を避けた位置に接合される。すなわち、外板12に対してフレーム部材26が接合されるせぎり構造部30を避けることで、外板12とフレーム部材26と骨部材40との3重構造になることを防止する。これにより、厚みの増大や接合の手間を抑制しながら、骨部材40によって側構体10の強度を高めることができる。
【0039】
又、本発明の実施の形態に係る側構体10は、骨部材40として、車両上下方向に延在する縦骨42と、車両長手方向に延在する横骨44とを含むものであり、縦骨42及び横骨44の双方が、各々の延在方向と直交する断面形状がハット状になっている。すなわち、縦骨42及び横骨44の各々は、延在方向と直交する断面がコの字状を成すチャネル部42a及び44aと、チャネル部42a及び44aの両側へ張り出した2つのフランジ部42b及び44bとを備えている。このような構造により、縦骨42及び横骨44の各々は、2つのフランジ部42b及び44bが外板12の車両内側の面に対して接合される。又、縦骨42及び横骨44の各々は、延在方向と直交する断面が、Z字状やコの字状であってもよく、断面がZ字状の場合には、Z字状の底辺又は頂辺に相当する面が、外板12の車両内側の面に対して接合され、断面がコの字状の場合には、コの字状の開口部側が、外板12の車両内側の面に向けて接合される。すなわち、断面が何れの形状であっても、骨部材40を外板12の車両内側の面に対して安定して接合することができ、側構体10の強度を高めることができる。なお、同じ外板12に接合する骨部材40として、断面形状が異なる複数の骨部材40を組み合わせて使用することとしてもよい。
【0040】
更に、本発明の実施の形態に係る側構体10は、車両上下方向に延在する縦骨42と、車両長手方向に延在する横骨44との突き合わせ部において、縦骨42の断面ハット状の頂辺に相当する面42cと、横骨44の断面ハット状の頂辺に相当する面44cとが、平面視L字型のガセットプレート46により結合されている。すなわち、平面視L字型のガセットプレート46の、直交する2つの直線に相当する部位のうち、一方の直線に相当する部位が、縦骨42のチャネル部42aの、断面コの字状の中辺に相当する面42cに接合され、他方の直線に相当する部位が、横骨44のチャネル部44aの、断面コの字状の中辺に相当する面44cに接合される。ここで、縦骨42及び横骨44の、延在方向と直交する断面がZ字状である場合、縦骨42及び横骨44夫々の、断面Z字状の底辺又は頂辺に相当する面のうち、外板12の車両内側の面に対して接合されていない方の面に、ガセットプレート46が接合される。又、縦骨42及び横骨44の、延在方向と直交する断面がコの字状である場合、縦骨42及び横骨44夫々の、断面コの字状の中辺に相当する面に、ガセットプレート46が接合される。このような構造によって、側構体10の強度を、より向上することが可能となる。
【0041】
すなわち、本発明の実施の形態に係る側構体10は、上述したように、外板12を構成する幕板14と吹寄板16との接合や、外板12に対するフレーム部材26及び骨部材40の接合を行っているにも関わらず、それらの接合箇所の重なりが3重以上になることはない。このため、側構体10の全体にわたって、厚みの増大を抑制しながら、必要な強度を確保しつつ、車両外側の面がフラットな側構体10を形成することができる。
なお、本発明の実施の形態に係る側構体10は、せぎり構造部30に接合されるフレーム部材26がドアフレーム26Aであることで、上記のような作用効果を奏しながら、ドアフレーム26Aを外板12に対してフラットに接合することができる。しかしながら、フレーム部材26が窓フレーム26Bであっても、フレーム部材26がドアフレーム26Aである場合と同様の作用効果を得られることは、理解されるであろう。
【符号の説明】
【0042】
10:側構体、12:外板、14:幕板、16:吹寄板、20(20A、20B):開口部、26(26A、26B):フレーム部材、26c:外周側端部、30(30A、30B):せぎり構造部、32:切欠き、36:水密構造、40:骨部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9