【実施例1】
【0019】
図2は、本発明の実施例1に係る双方向DC‐DCコンバータ装置における要部の回路構成並びに主機能制御に伴う電流の流れを示した概略ブロック図である。
【0020】
図2を参照すれば、ここでの双方向DC‐DCコンバータ装置は、
図1に示した制御部6を略図した双方向DC‐DCコンバータ部分の回路及び電流の流れを示している。DCリンクスイッチ5では、スイッチング素子H0のコレクタ端子側が高圧側直流電源(HV)1の正極側に接続され、エミッタ端子側が第1のスイッチング回路3におけるスイッチング素子H1、H3のドレイン端子側に接続され、スイッチング素子H1、H3のソース端子側がスイッチング素子H2、H4のドレイン端子側に接続されている。また、第1のスイッチング回路3では、スイッチング素子H2、H4のソース端子側が高圧側直流電源(HV)1の負極側に接続され、スイッチング素子H1のソース端子側とスイッチング素子H2のドレイン端子側との間からの引き出し線が共振チョークコイルLrを介在させて絶縁トランスTの1次巻線に接続され、その終端がスイッチング素子H4のドレイン端子側に接続されている。第2のスイッチング回路4では、スイッチング素子S0のソース端子側が平滑インダクタLを介して低圧側直流電源(LV)2の正極側に接続され、ドレイン端子側が平滑コンデンサCcを介して低圧側直流電源(LV)2の負極側に接続されている。更に、第2のスイッチング回路4では、スイッチング素子S1、S3のドレイン端子側が平滑インダクタLに接続され、ソース端子側がスイッチング素子S2、S4のドレイン端子側に接続されている。加えて、スイッチング素子S2、S4のソース端子側が平滑コンデンサCc及び低圧側直流電源(LV)2の負極側に接続されている。その他、スイッチング素子S1のソース端子側とスイッチング素子S2のドレイン端子側との間からの引き出し線が絶縁トランスTの2次巻線に接続され、その終端がスイッチング素子S4のドレイン端子側に接続されている。
【0021】
図2を参照して制御部6の主機能制御を具体的に説明すれば、放電動作の昇圧時において、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0を所定時間オンにすると共に、第1のスイッチング回路3における各スイッチング素子H1〜H4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子H1、H4をオン、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子H2、H4をオフにして共振チョークコイルLrから絶縁トランスTの1次巻線及び高圧側直流電源(HV)1を経由してDCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0へ向かう方向(太矢印で示す)に逆流電流を流し、且つ第2のスイッチング回路4における平滑コンデンサCcに接続されたスイッチング素子S0をオフ、各スイッチング素子H1〜H4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオン、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S4をオフにしての整流処理中に第1のスイッチング回路3における逆流電流の発生に応じて電流が流れる方向(太矢印で示す)とは逆向きの弱電流(細矢印で示す)を流して打消し合いを生じさせることで第2のスイッチング回路4におけるスイッチング損失を低減する制御を行うものである。具体的には、第2のスイッチング回路4におけるスイッチング素子S1、S4のスイッチング損失を低減する効果がある。この制御部6による制御機能は、双方向DC‐DCコンバータ装置の制御方法において、損失低減化制御処理ステップで実行されるものとみなせる。因みに、この第1のスイッチング回路3における逆流電流は、制御部6によって、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0をオフにするタイミングを持たせることにより制御することができる。
【0022】
図3は、
図2に示す双方向DC‐DCコンバータ装置における要部の回路構成並びに他の主機能制御に伴う電流の流れを示した概略ブロック図である。
【0023】
図3を参照すれば、ここでの双方向DC‐DCコンバータ装置についても、
図1に示した制御部6を略図した双方向DC‐DCコンバータ部分の回路及び電流の流れを示している。制御部6の他の主機能制御を具体的に説明すれば、放電動作の昇圧時において、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0を所定時間オンにすると共に、第1のスイッチング回路3における各スイッチング素子H1〜H4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子H1、H2をオフ、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子H2、H3をオンに維持して共振チョークコイルLrから絶縁トランスTの1次巻線及びDCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0を経由して高圧側直流電源(HV)1へ向かう方向(太矢印で示す)に電流を流して整流処理を行い、且つ第2のスイッチング回路4における平滑コンデンサCcに接続されたスイッチング素子S0をオン、各スイッチング素子S1〜S4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオフ、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S3をオンに維持して平滑インダクタLから絶縁トランスTの2次巻線を経由して低圧側直流電源(LV)2へ向かう方向(太矢印で示す)に電流を流して整流処理を行うことで変換効率を向上させる制御を行うものである。具体的には、DCリンクスイッチ5におけるダイオードDよりも損失の小さいスイッチング素子H0を電流が流れることで第1のスイッチング回路3での変換効率を向上させることができる。この制御部6による制御機能は、双方向DC‐DCコンバータ装置の制御方法において、変換効率向上化制御処理ステップで実行されるものとみなせる。
【0024】
ところで、
図2や
図3を参照して説明した制御部6による損失低減化制御処理や変換効率向上化制御処理は、放電動作の昇圧時において、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0のベースと第1のスイッチング回路3における各スイッチング素子H1〜H4及び第2のスイッチング回路4における各スイッチング素子S0〜S4のゲートとへ送出するスイッチング動作制御信号によるスイッチング動作のオン・オフのタイミングを所定の周期の半分の期間で適宜制御すれば、変換効率の向上効果を高めることができる。
【0025】
図4‐1は、上述した双方向DC‐DCコンバータ装置の放電動作の昇圧時における各スイッチング素子H0〜H4、S0〜S4に対するスイッチング動作制御信号の波形及び各スイッチング素子H0〜H4、S0〜S4の電圧の波形を示すタイミングチャートである。
図4‐2は、同様にこの双方向DC‐DCコンバータ装置の放電動作の昇圧時における各スイッチング素子H0〜H4、S0〜S4の電流の波形及び各デバイスにおける電流、電圧(具体的には平滑インダクタLの電流、絶縁トランスTの電圧、共振チョークコイルLrの電流及び電圧)の波形を示すタイミングチャート(時系列上で
図4‐1と共通)である。
【0026】
図4‐1及び
図4‐2を参照すれば、各スイッチング素子H0〜H4、S0〜S4に対するスイッチング動作制御信号の波形は、初期的に第2のスイッチング回路4におけるスイッチング素子S1、S4をオンに維持した状態でDCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0をオフからオンに移行してから再びオフにした後にスイッチング素子S1、S4がオフに移行するまでの期間(t1+t2+t3+t4+t5+t6)に該当する上述した所定の周期の半分の期間でオン・オフのタイミングを図示のように制御することを示している。
【0027】
具体的に云えば、期間t1では、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0はオフにされ、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオフ、スイッチング素子H2、H3はオンに維持され、共振チョークコイルLrに流れている電流を一定に保つことにより、絶縁トランスTに電流が流れ、スイッチング素子H2→共振チョークコイルLr→絶縁トランスT(1次巻線)→スイッチング素子H3→ダイオードDの向きに電流が流れ、高圧側直流電源(HV)1に供給される。また、第2のスイッチング回路4において、スイッチング素子S0はオフに維持されており、スイッチング素子S1〜S4は全てオンに維持され、平滑インダクタLにエネルギーを蓄えるタイミングに該当する。
【0028】
期間t2では、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0はオンに切り替えられ、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオン、スイッチング素子H2、H3はオフに切り替えられる。また、第2のスイッチング回路4において、スイッチング素子S0はオフに維持され、スイッチング素子S2、S3をオフにする。スイッチング素子S0はオフに維持されて電圧が0Vになるが、ボディダイオードを通して平滑コンデンサCcには電流が流れ込んでいる。
【0029】
期間t3では、平滑インダクタLに蓄えられたエネルギーを放出しているタイミングに該当し、期間t2のスイッチ設定を持続することにより、第1のスイッチング回路3において、
図2を参照して説明したようにスイッチング素子H0→スイッチング素子H1→共振チョークコイルLr→絶縁トランスT(1次巻線)→スイッチング素子H4の向きで逆流電流が流れ、高圧側直流電源(HV)1に供給される。また、第2のスイッチング回路4において、オンに維持されたスイッチング素子S1、S4を経由して絶縁トランスTに電流を流し、
図2を参照して説明したように平滑インダクタL→スイッチング素子S1→絶縁トランスT(2次巻線)→スイッチング素子S4の向きで電流が流れ、低圧側直流電源(LV)2に供給される他、スイッチング素子S4からスイッチング素子S3、スイッチング素子S2からスイッチング素子S1へ向かう方向にもボディダイオードを通して電流が流れる。このとき、第2のスイッチング回路4では、第1のスイッチング回路3で共振チョークコイルLrの電流が逆向きとなるために絶縁トランスTを介してエネルギーが送られ、スイッチング素子S1、S4を経由して絶縁トランスT(2次巻線)に流れる電流と逆向きに弱電流が流れようとして打消し合いを生じることにより、スイッチング損失を低減する損失低減化制御処理が行われる。
【0030】
期間t4では、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0がオンに維持され、第1のスイッチング回路3において、スイッチ設定が維持されていることにより、逆流電流が流れ続ける。また、第2のスイッチング回路4において、スイッチング素子S2、S3の電圧が0になったことを受け、スイッチング素子S2、S3をオンにしてそれ以前にスイッチング素子S1、S4を通っていた電流がスイッチング素子S2、S3の方にも通るようにする。このときのスイッチング動作は、ゼロボルトスイッチング(ZVS)で行われるため、スイッチング損失は発生しない。
【0031】
期間t5では、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0がオフに切り替えられ、第1のスイッチング回路3において、スイッチ設定が維持されていても逆流電流の流れが止まる。また、第2のスイッチング回路4において、スイッチ設定が維持されてスイッチング素子S1〜S4の全てがオンされていることにより、期間t1の場合と同様に平滑インダクタLにエネルギーが蓄えられる。
【0032】
期間t6では、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0がオフに維持され、第1のスイッチング回路3において、スイッチ設定が維持されていても逆流電流の流れが止まった状態が維持される。また、第2のスイッチング回路4において、スイッチ設定が維持されているため、平滑インダクタLにはエネルギーが蓄え続けられる。
【0033】
期間t6後の所定の周期の残り半分の期間では、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0をオンに切り替えてから再びオフに切り替える。このとき、第1のスイッチング回路3では、スイッチング素子H1、H4をオフ、スイッチング素子H2、H3をオンに切り替えて維持する。また、第2のスイッチング回路4では、平滑コンデンサCcに接続されたスイッチング素子S0をオンに切り替えてから再びオフに切り替え、スイッチング素子S1、S4をオフに切り替えてから再びオンに切り替え、スイッチング素子S2、S3をオンに切り替えて維持する。ここで、DCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0がオンにあり、第1のスイッチング回路3におけるスイッチング素子H1、H4がオフ、スイッチング素子H2、H3がオンにあり、第2のスイッチング回路4におけるスイッチング素子S0がオン、スイッチング素子S1、S4がオフ、スイッチング素子S2、S3がオンにあるとき、
図3を参照して説明したように第1のスイッチング回路3ではスイッチング素子H2→共振チョークコイルLr→絶縁トランスT(1次巻線)→スイッチング素子H3→スイッチング素子H0から高圧側直流電源(HV)1へ向かって巡回する経路で電流が流れて整流処理が行われ、第2のスイッチング回路4では平滑インダクタL→スイッチング素子S3→絶縁トランスT(2次巻線)→スイッチング素子S2から低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路で電流が流れて整流処理が行われる。因みに、第2のスイッチング回路4における整流処理では平滑コンデンサCcとスイッチング素子S0との間に双方向で電流が流れる。
【0034】
即ち、実施例1に係る双方向DC‐DCコンバータ装置では、制御部6によって、放電動作の昇圧時において、所定の周期でDCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0をオフからオン、オンからオフ、オフからオン、オンからオフにする動作を繰り返すと共に、第1のスイッチング回路3における各スイッチング素子H1〜H4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子H1、H4をオフからオン、オンからオフ、オフからオンにし、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子H2、H3をオンからオフ、オフからオンにする動作を繰り返し、更に、第2のスイッチング回路4における平滑コンデンサCcに接続されたスイッチング素子S0をオフに維持した後に一旦オンにしてからオフに維持し、対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオンに維持した後に一旦オフにしてからオンにし、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S3をオンからオフ、オフからオンにする動作を繰り返すことによって、上述した損失低減化制御処理や変換効率向上化制御処理を整流処理中に含めて実施することができる。この結果、
図4‐2に示される平滑インダクタL電流や共振チョークコイルLr電流は従来のDCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0をオフにしたまま行う放電動作の昇圧時の場合と比べて小さな値に抑制される。また、スイッチング動作制御信号の制御タイミングを適宜変更すれば、変換効率を常に最適な状態(最高効率に近い状態)にすることが可能である。
【0035】
そこで、実際に放電動作を2.2kWで実施した場合の2.2kW時の損失をシュミレーション結果で比較したところ、従来のDCリンクスイッチ5のスイッチング素子H0をオフにしたまま行う放電動作では116Wの損失があったのに対し、実施例1に係る損失低減化制御処理や変換効率向上化制御処理を含む整流処理を実施すると103Wの損失に改善できることが判った。
【実施例2】
【0036】
図5は、本発明の実施例2に係る双方向DC‐DCコンバータ装置における要部の回路構成を示した概略ブロック図である。
【0037】
図5を参照すれば、ここでの双方向DC‐DCコンバータ装置についても、
図1に示した制御部6を略図した双方向DC‐DCコンバータ部分の回路を示している。実施例2に係る双方向DC‐DCコンバータ装置の場合、DCリンクスイッチ50は、カソードが高圧側直流電源(HV)1の正極を向くように直列挿入された第1のダイオードD1及びこれに並列接続された高圧側第1のスイッチング素子H0−1と、カソードが高圧側直流電源(HV)1の正極を向くように直列挿入された第2のダイオードD2及びこれに並列接続された高圧側第2のスイッチング素子H0−2と、を含む熱分散用に2並列構成となっている他、第2のスイッチング回路4′において、平滑インダクタLからの引き出し線と平滑コンデンサCcとの間に並列接続された低圧側第1のスイッチング素子S0−1と低圧側第2のスイッチング素子S0−2とを含む構成となっている。また、制御部6は、放電動作の昇圧時において、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1をオフ、高圧側第2のスイッチング素子H0−2を所定時間オンにすると共に、第1のスイッチング回路3における各スイッチング素子H1〜H4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子H1、H4をオン、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子H2、H3をオフにして共振チョークコイルLrから絶縁トランスTの1次巻線及び高圧側直流電源(HL)1を経由してDCリンクスイッチ50の高圧側第2のスイッチング素子H0−2へ向かう方向に逆流電流を流し、且つ第2のスイッチング回路4′における低圧側第1のスイッチング素子S0−1を及び低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオフし、各スイッチング素子S1〜S4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオン、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S4をオンにしての整流処理中に第1のスイッチング回路3における逆流電流の発生に応じて電流が流れる方向とは逆向きの弱電流を流して打消し合いを生じさせることでスイッチング損失を低減する制御を行う。具体的には、第2のスイッチング回路4′におけるスイッチング素子S1〜S4の全部のスイッチング損失を低減する効果がある。この制御部6による制御機能は、双方向DC‐DCコンバータ装置の制御方法において、損失低減化制御処理ステップで実行されるものとみなせる。因みに、この第1のスイッチング回路3における逆流電流は、制御部6によって、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1及び高圧側第2のスイッチング素子H0−2をオフにするタイミングを持たせることにより制御することができる。
【0038】
また、制御部6は、放電動作の昇圧時において、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1をオフ、高圧側第2のスイッチング素子H0−2を所定時間オンにすると共に、第1のスイッチング回路3における各スイッチング素子H1〜H4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子H1、H4をオン、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子H2、H3をオフに維持して絶縁トランスTの1次巻線及び共振チョークコイルLrを経由して高圧側直流電源(HV)1へ向かう方向に電流を流して整流処理を行い、且つ第2のスイッチング回路4′における平滑コンデンサCcに接続された低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオフに維持し、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオンにし、各スイッチング素子S1〜S4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオン、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S3をオフに維持して平滑インダクタLから絶縁トランスTの2次巻線を経由して低圧側直流電源(LV)2へ向かう方向に電流を流して整流処理を行うことで変換効率を向上させる制御を行う。具体的には、DCリンクスイッチ50における第2のダイオードD2よりも損失の小さい高圧側第2のスイッチング素子H0−2を電流が流れることで第1のスイッチング回路3での変換効率を向上させることができる。この制御部6による制御機能は、双方向DC‐DCコンバータ装置の制御方法において、変換効率向上化制御処理ステップで実行されるものとみなせる。
【0039】
図6−1は、実施例2に係る双方向DC‐DCコンバータ装置の放電動作の昇圧時における各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4に対するスイッチング動作制御信号の波形及び各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4の電圧の波形を示すタイミングチャートである。
図6‐2は、同様にこの双方向DC‐DCコンバータ装置の放電動作の昇圧時における各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4の電流の波形及び各デバイスにおける電流、電圧(具体的には平滑インダクタLの電流、絶縁トランスTの電圧、共振チョークコイルLrの電流及び電圧)の波形を示すタイミングチャート(時系列上で
図6‐1と共通)である。また、
図7‐1〜
図7‐6は、
図6−1中に示す期間t1〜t6での双方向DC‐DCコンバータ装置の要部の回路構成における電流の流れを示した図である。
【0040】
図6‐1及び
図6‐2を参照すれば、各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4に対するスイッチング動作制御信号の波形は、初期的に第2のスイッチング回路4′におけるスイッチング素子S1、S4をオンに維持した状態でDCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1をオフ、その期間内で高圧側第2のスイッチング素子H0−2を所定時間オンにしてからオフに移行した後にスイッチング素子S1、S4がオフされるまでの期間(t1+t2+t3+t4+t5+t6)に該当する上述した所定の周期の半分の期間でオン・オフのタイミングを図示のように制御することを示している。
【0041】
具体的に云えば、期間t1では、
図7−1を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2は何れもオフにされ、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオフ、スイッチング素子H2、H3はオンに維持され、共振チョークコイルLrに流れている電流により絶縁トランスTの1次巻線に電流が流れ、共振チョークコイルLrからスイッチング素子H1、H3へ向かって共振チョークコイルLrに戻る流れとスイッチング素子H2、H4へ向かって共振チョークコイルLrに戻る流れとに分岐して電流が流れるが、高圧側直流電源(HV)1には供給されない。このとき、共振チョークコイルLrはほぼ一定に保たれる。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1、低圧側第2のスイッチング素子S0−2は何れもオフに維持されており、スイッチング素子S1〜S4は全てオンに維持され、平滑インダクタLにエネルギーを蓄えるタイミングとなる。第2のスイッチング回路4′では、平滑インダクタLからスイッチング素子S1及びスイッチング素子S2を経由して低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路と平滑インダクタLからスイッチング素子S3及びスイッチング素子S4を経由して低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路とスイッチング素子S1から分岐して絶縁トランスTの2次巻線を経由してスイッチング素子S4を通って低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路で電流が流れる。尚、各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4については、以降も同様であるが、ボディダイオードを省略して表記する。
【0042】
期間t2では、
図7−2を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2は何れもオフに維持され、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオフ、スイッチング素子H2、H3もオフにされ、各スイッチング素子H1〜H4が全てオフとなるが、ボディダイオードを介して期間t1の場合と逆向きに電流が流れ、共振チョークコイルLrからスイッチング素子H1を通って分岐し、高圧側第1のスイッチング素子H0−1及び高圧側第2のスイッチング素子H0−2と高圧側直流電源(HV)1を経由してスイッチング素子H4から絶縁トランスTの1次巻線へ向かって巡回する経路で電流が流れる。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1、低圧側第2のスイッチング素子S0−2及びスイッチング素子S1、S4をオンに維持し、スイッチング素子S2、S3をオフにして平滑インダクタLに蓄えられたエネルギーを放出するタイミングとなるが、ボディダイオードを介して平滑コンデンサCcには電流が流れ込む。第2のスイッチング回路4′では、平滑インダクタLからスイッチング素子S1を通って絶縁トランスTの2次巻線及びスイッチング素子S4を経由して低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路と平滑インダクタLから低圧側第1のスイッチング素子S0−1及び低圧側第2のスイッチング素子S0−2を通って平滑コンデンサCcを経由して低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路とで電流が流れる。因みに、期間t2では、低圧側第2のスイッチング素子S0−2の電圧が0Vになる。
【0043】
期間t3では、
図7−3を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1はオフ、高圧側第2のスイッチング素子H0−2はオンに切り替えられ、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオンに切り替えられ、スイッチング素子H2、H3はオフに維持され、共振チョークコイルLrからスイッチング素子H1を通って高圧側第2のスイッチング素子H0−2及び高圧側直流電源(HV)1を経由してスイッチング素子H4から絶縁トランスTの1次巻線へ向かって巡回する経路で電流が流れる。このときの電流はDCリンクスイッチ50における高圧側第2のスイッチング素子H0−2のボディダイオードでなく、高圧側第2のスイッチング素子H0−2自体に流れるため、変換効率向上化制御処理が行われることになる。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオフ、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオンに切り替え、スイッチング素子S1、S4をオンに維持し、スイッチング素子S2、S3をオフに維持する。低圧側第2のスイッチング素子S0−2をソフトスイッチングによりオンにすると、低圧側第1のスイッチング素子S0−1及び低圧側第2のスイッチング素子S0−2のボディダイオードに流れていた電流が全て低圧側第2のスイッチング素子S0−2に流れ込み、平滑コンデンサCcに流れる電流は所定の傾きで減少して0になり、低圧側第2のスイッチング素子S0−2に流れ込む電流は逆向きとなってスイッチング素子S1の電流をアシストする。この結果、第2のスイッチング回路4′では平滑インダクタLからスイッチング素子S1を通って絶縁トランスTの2次巻線及びスイッチング素子S4を通って低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路と平滑インダクタLから低圧側第2のスイッチング素子S0−2を通って平滑コンデンサCcを経由して低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路とで電流が流れる。因みに、第2のスイッチング回路4′における整流処理では平滑コンデンサCcと低圧側第2のスイッチング素子S0−2との間で逆方向にも電流が流れる。
【0044】
期間t4では、
図7−4を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1はオフ、高圧側第2のスイッチング素子H0−2はオンに維持し、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオンに維持し、スイッチング素子H2、H3はオフに維持し、期間t3の場合と同様に共振チョークコイルLrからスイッチング素子H1を通って高圧側第2のスイッチング素子H0−2及び高圧側直流電源(HV)1を経由してスイッチング素子H4から絶縁トランスTの1次巻線へ向かって巡回する経路で電流が流れる。このときの共振チョークコイルLrの電流は急変されない。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオフ、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオフに切り替え、スイッチング素子S1、S4をオンに維持し、スイッチング素子S2、S3をオフに維持する。ここでは平滑コンデンサCcを流れていた電流が行き場を無くしてスイッチング素子S2、S3のボディダイオードを通り、やがては0になり、スイッチング素子S2、S3の電圧も0になる。第2のスイッチング回路4′では平滑インダクタLからスイッチング素子S1を通って絶縁トランスTの2次巻線からスイッチング素子S3を通ってスイッチング素子S1へ向かって戻る経路と絶縁トランスTの2次巻線からスイッチング素子S4を通って低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路と絶縁トランスTの2次巻線からスイッチング素子S4を通って絶縁トランスTの2次巻線へ戻る経路とで電流が流れる。
【0045】
期間t5では、
図7−5を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1はオフ、高圧側第2のスイッチング素子H0−2はオンに維持され、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオンに維持され、スイッチング素子H2、H3もオフに維持され、高圧側直流電源(HV)1から高圧側第2のスイッチング素子H0−2及びスイッチング素子H1を通ってスイッチング素子H3へ向かって巡回する経路とスイッチング素子H1から共振チョークコイルLr及び絶縁トランスTの1次巻線を経由してスイッチング素子H4を通って分岐し、スイッチング素子H2を経由して共振チョークコイルLrに戻るように巡回する経路とスイッチング素子H4から高圧側直流電源(HV)1に向かって巡回する経路とで逆流電流が流れる。また、第2のスイッチング回路4′において、スイッチング素子S2、S3の電圧が0になったことを受け、スイッチング素子S2、S3をオンにしてそれ以前にスイッチング素子S1、S4を通っていた電流がスイッチング素子S2、S3の方にも通るようにする。このときのスイッチング動作は、ゼロボルトスイッチング(ZVS)で行われるため、スイッチング損失は発生しない。この結果、第2のスイッチング回路4′では平滑インダクタLからスイッチング素子S1及びスイッチング素子S2を通って低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路と平滑インダクタLからスイッチング素子S3及びスイッチング素子S4を通って低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路とで電流が流れる。このとき、第2のスイッチング回路4′では、第1のスイッチング回路3で共振チョークコイルLrの電流が逆向きとなるために絶縁トランスTを介してエネルギーが送られ、スイッチング素子S1、S4を経由して絶縁トランスT(2次巻線)に流れる電流と逆向きに弱電流が流れようとして打消し合いを生じることにより、スイッチング損失を低減する損失低減化制御処理が行われる。
【0046】
期間t6では、
図7−6を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1はオフに維持され、高圧側第2のスイッチング素子H0−2はオフに切り替えられ、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオン、スイッチング素子H2、H3はオフに維持され、期間t1の場合と逆向きに電流が流れるが、高圧側直流電源(HV)1には供給されない。また、第2のスイッチング回路4′において、スイッチ設定が維持されているが、逆流電流が流れ込まないため、平滑インダクタLからスイッチング素子S1及びスイッチング素子S2を通って低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路と平滑インダクタLからスイッチング素子S3及びスイッチング素子S4を通って低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路とスイッチング素子S3を通って分岐されて絶縁トランスTの2次巻線からスイッチング素子S2を通って低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路とで電流が流れる。
【0047】
期間t6後の所定の周期の残り半分の期間では、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1をオンに切り替えてから再びオフに切り替え、高圧側第2のスイッチング素子H0−2をオフに維持してから再びオンに切り替える。このとき、第1のスイッチング回路3では、スイッチング素子H1、H4をオフに維持してから再びオンに切り替え、スイッチング素子H2、H3をオンに切り替えて維持してから再びオフに切り替える。また、第2のスイッチング回路4′では、平滑コンデンサCcに接続された低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオンに切り替えてから再びオフに切り替え、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオフに維持してから再びオンに切り替える。更に、対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオンに維持した後に一旦オフにしてからオンにし、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S3をオンからオフ、オフからオン、オンからオフにする。
【0048】
即ち、実施例2に係る双方向DC‐DCコンバータ装置では、制御部6によって、放電動作の昇圧時において、所定の周期でDCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1をオフからオン、オンからオフにし、高圧側第2のスイッチング素子H0−2を高圧側第1のスイッチング素子H0−1のオフ期間内でオフからオン、オンからオフに維持した後、高圧側第1のスイッチング素子H0−1のオフ期間内でオンにする動作を繰り返すと共に、第1のスイッチング回路3における各スイッチング素子H1〜H4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子H1、H4をオフからオン、オンからオフ、オフからオンにし、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子H2、H3をオンからオフ、オフからオン、オンからオフにする動作を繰り返し、更に、第2のスイッチング回路4′における各スイッチング素子S0−1、S0−2、S1〜S4の低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオフに維持してからオン、オンからオフにし、低圧側第2のスイッチング素子S0−2を高圧側第1のスイッチング素子S0−1のオフ期間内でオフからオン、オンからオフにする動作を繰り返すと共に、対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオンに維持した後に一旦オフにしてからオンにし、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S3をオンからオフ、オフからオン、オンからオフにする動作を繰り返すことによって、上述した損失低減化制御処理や変換効率向上化制御処理を実施例1の場合と同様に整流処理中に含めて実施することができる。この結果、
図6‐2に示される平滑インダクタL電流や共振チョークコイルLr電流は従来のDCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1及び高圧側第2のスイッチング素子H0−2をオフにしたまま行う放電動作の昇圧時の場合と比べて小さな値に抑制される。また、ここでもスイッチング動作制御信号の制御タイミングを適宜変更すれば、変換効率を常に最適な状態(最高効率に近い状態)にすることが可能である。
【0049】
図8−1は、実施例2に係る双方向DC‐DCコンバータ装置の放電動作の昇圧時における各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4に対する周知技術に係るスイッチング動作制御信号の波形及び各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4の電圧の波形を示すタイミングチャートである。
図8‐2は同様にこの双方向DC‐DCコンバータ装置の放電動作の昇圧時における
図8−1でのスイッチング動作制御信号を適用した場合の各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4の電流の波形及び各デバイスにおける電流、電圧(具体的には平滑インダクタLの電流、絶縁トランスTの電圧、共振チョークコイルLrの電流及び電圧)の波形を示すタイミングチャートである。また、
図9−1〜
図9−5は
図8−1中に示す期間t1〜t5での双方向DC‐DCコンバータ装置の要部の回路構成における電流の流れを示した図である。
【0050】
図8‐1及び
図8‐2を参照すれば、各スイッチング素子H0−1、H0−2、H1〜H4、S0−1、S0−2、S1〜S4に対するスイッチング動作制御信号の波形は、初期的に第2のスイッチング回路4′におけるスイッチング素子S1、S4をオンに維持した状態でDCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2をオフに維持してスイッチング素子S1、S4がオフされる直前までの期間(t1+t2+t3+t4+t5)に該当する上述した所定の周期の半分の期間でオン・オフのタイミングを図示のように制御することを示している。
【0051】
具体的に云えば、期間t1では、
図9−1を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2は何れもオフに維持され、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオフ、スイッチング素子H2、H3はオンに維持され、共振チョークコイルLrに流れている電流により絶縁トランスTの1次巻線に電流が流れ、共振チョークコイルLrから絶縁トランスTの1次巻線を通ってスイッチング素子H3を経由して分岐し、高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2のボディダイオードを通って高圧側直流電源(HV)1及びスイッチング素子H2へ向かって共振チョークコイルLrに戻る巡回経路で電流が流れる。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1、低圧側第2のスイッチング素子S0−2は何れもオフに維持されており、スイッチング素子S1〜S4は全てオンに維持され、平滑インダクタLにエネルギーを蓄えるタイミングとなる。第2のスイッチング回路4′では、平滑インダクタLからスイッチング素子S1及びスイッチング素子S2を通って低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路、平滑インダクタLからスイッチング素子S3及びスイッチング素子S4を通って低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路、スイッチング素子S3から分岐して絶縁トランスTの2次巻線を経由してスイッチング素子S2を通って低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路で電流が流れる。因みに、第1のスイッチング回路3では、共振チョークコイルLrに流れている電流が徐々に少なくなってやがては0になる。
【0052】
期間t2では、
図9−2を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2は何れもオフに維持され、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオフ、スイッチング素子H2、H3もオフにされ、各スイッチング素子H1〜H4が全てオフとなるが、ボディダイオードを介して期間t1の場合と逆向きに電流が流れ、共振チョークコイルLrからスイッチング素子H1を通って分岐し、高圧側第1のスイッチング素子H0−1及び高圧側第2のスイッチング素子H0−2のボディダイオードと高圧側直流電源(HV)1を経由してスイッチング素子H4から絶縁トランスTの1次巻線へ向かって巡回する経路で電流が流れる。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオフに維持し、スイッチング素子S1、S4をオンに維持し、スイッチング素子S2、S3をオフにして平滑インダクタLに蓄えられたエネルギーを放出するタイミングとなるが、ボディダイオードを介して平滑コンデンサCcには電流が流れ込む。第2のスイッチング回路4′では、平滑インダクタLからスイッチング素子S1を通って絶縁トランスTの2次巻線及びスイッチング素子S4を経由して低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路と平滑インダクタLから低圧側第1のスイッチング素子S0−1及び低圧側第2のスイッチング素子S0−2のボディダイオードと平滑コンデンサCcとを通って低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路とで電流が流れる。因みに、期間t2では、低圧側第2のスイッチング素子S0−2の電圧が0Vになる。
【0053】
期間t3では、
図9‐3を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2は何れもオフに維持され、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオンに切り替えられ、スイッチング素子H2、H3はオフに維持され、期間t2の場合と同様に共振チョークコイルLrからスイッチング素子H1を通って分岐し、高圧側第1のスイッチング素子H0−1及び高圧側第2のスイッチング素子H0−2と高圧側直流電源(HV)1を経由してスイッチング素子H4から絶縁トランスTの1次巻線へ向かって巡回する経路で電流が流れる。このときの電流はDCリンクスイッチ50における高圧側第1のスイッチング素子H0−1及び高圧側第2のスイッチング素子H0−2のボディダイオードに流れるため、変換効率は低下されることになる。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオフ、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオンに切り替え、スイッチング素子S1、S4をオンに維持し、スイッチング素子S2、S3をオフに維持する。低圧側第2のスイッチング素子S0−2をソフトスイッチングによりオンにすると、低圧側第1のスイッチング素子S0−1及び低圧側第2のスイッチング素子S0−2のボディダイオードに流れていた電流が全て低圧側第2のスイッチング素子S0−2に流れ込み、平滑コンデンサCcに流れる電流は所定の傾きで減少して0になり、低圧側第2のスイッチング素子S0−2に流れ込む電流は逆向きとなってスイッチング素子S1の電流をアシストする。第2のスイッチング回路4′では平滑インダクタLからスイッチング素子S1を通って絶縁トランスTの2次巻線及びスイッチング素子S4を通って低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路と平滑インダクタLから低圧側第2のスイッチング素子S0−2を通って平滑コンデンサCcを経由して低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路とで電流が流れる。因みに、第2のスイッチング回路4′における整流処理では平滑コンデンサCcと低圧側第2のスイッチング素子S0−2との間で逆方向にも電流が流れる。
【0054】
期間t4では、
図9‐4を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2は何れもオフに維持し、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオンに維持し、スイッチング素子H2、H3はオフに維持し、期間t2の場合と同様に期間t2の場合と同様に共振チョークコイルLrからスイッチング素子H1を通って分岐し、高圧側第1のスイッチング素子H0−1及び高圧側第2のスイッチング素子H0−2と高圧側直流電源(HV)1を経由してスイッチング素子H4から絶縁トランスTの1次巻線へ向かって巡回する経路で電流が流れる。このときの共振チョークコイルLrの電流は急変されない。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオフ、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオフに切り替え、スイッチング素子S1、S4をオンに維持し、スイッチング素子S2、S3をオフに維持する。ここでは平滑コンデンサCcを流れていた電流が行き場を無くしてスイッチング素子S2、S3のボディダイオードを通り、やがては0になり、スイッチング素子S2、S3の電圧も0になる。第2のスイッチング回路4′では平滑インダクタLからスイッチング素子S1を通って絶縁トランスTの2次巻線からスイッチング素子S4を経由して低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路で電流が流れる。
【0055】
期間t5では、
図9−5を参照すれば、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2は何れもオフに維持し、第1のスイッチング回路3において、スイッチング素子H1、H4はオンに維持し、スイッチング素子H2、H3はオフに維持し、期間t2の場合と同様に期間t2の場合と同様に共振チョークコイルLrからスイッチング素子H1を通って分岐し、高圧側第1のスイッチング素子H0−1及び高圧側第2のスイッチング素子H0−2と高圧側直流電源(HV)1を経由してスイッチング素子H4から絶縁トランスTの1次巻線へ向かって巡回する経路で電流が流れる。また、第2のスイッチング回路4′において、低圧側第1のスイッチング素子S0−1、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオフに維持し、スイッチング素子S1、S4をオンに維持し、スイッチング素子S2、S3をオンに切り替える。第2のスイッチング回路4′では、スイッチング素子S2、S3の電圧が0になったことを受け、スイッチング素子S2、S3をオンにしてそれ以前にスイッチング素子S1、S4を通っていた電流がスイッチング素子S2、S3の方にも通るようにする。このときのスイッチング動作は、ゼロボルトスイッチング(ZVS)で行われるため、スイッチング損失は発生しない。この結果、第2のスイッチング回路4′では平滑インダクタLからスイッチング素子S1及びスイッチング素子S2を通って低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路と平滑インダクタLからスイッチング素子S3及びスイッチング素子S4を通って低圧側直流電源(LV)2へ向かって巡回する経路と平滑インダクタLからスイッチング素子S1を通って絶縁トランスTの2次巻線及びスイッチング素子S4を経由して低圧側直流電源(LV)2に向かって巡回する経路とで電流が流れる。
【0056】
期間t5後の所定の周期の残り半分の期間では、DCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2をオフに維持し続ける。このとき、第1のスイッチング回路3では、スイッチング素子H1、H4をオンからオフに切り替えて維持してから再びオンに切り替え、スイッチング素子H2、H3をオフからオンに切り替えて維持してから再びオフに切り替える。また、第2のスイッチング回路4′では、平滑コンデンサCcに接続された低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオンに切り替えてから再びオフに切り替え、低圧側第2のスイッチング素子S0−2をオフに維持してから再びオンに切り替える。更に、対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオンに維持した後に一旦オフにしてからオンにし、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S3をオンからオフ、オフからオン、オンからオフにする。
【0057】
即ち、周知技術のスイッチング動作制御信号を適用した双方向DC‐DCコンバータ装置では、制御部6によって、放電動作の昇圧時において、所定の周期でDCリンクスイッチ50の高圧側第1のスイッチング素子H0−1、高圧側第2のスイッチング素子H0−2を高圧側第1のスイッチング素子H0−1をオフに維持し、第1のスイッチング回路3における各スイッチング素子H1〜H4の対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子H1、H4をオフからオン、オンからオフ、オフからオンにし、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子H2、H3をオンからオフ、オフからオン、オンからオフにする動作を繰り返し、更に、第2のスイッチング回路4′における各スイッチング素子S0−1、S0−2、S1〜S4の低圧側第1のスイッチング素子S0−1をオフに維持してからオン、オンからオフにし、低圧側第2のスイッチング素子S0−2を高圧側第1のスイッチング素子S0−1のオフ期間内でオフからオン、オンからオフにする動作を繰り返すと共に、対角方向に配置される一方の対のスイッチング素子S1、S4をオンに維持した後に一旦オフにしてからオンにし、対角方向に配置される他方の対のスイッチング素子S2、S3をオンからオフ、オフからオン、オンからオフにする動作を繰り返すことによって、整流処理を実施するものである。この結果、
図8‐2に示される平滑インダクタL電流や共振チョークコイルLr電流は
図6‐2に示した実施例2の場合と比べて大きな値となっている。こうした状態では、スイッチング動作制御信号の制御タイミングを適宜変更しても、変換効率を常に最適な状態(最高効率に近い状態)にすることは不可能である。
【0058】
尚、上述した各実施例では、双方向DC‐DCコンバータ装置における高圧側直流電源(HV)1に接続されるDCリンクスイッチ5、50を第1のスイッチング回路3とは別回路として説明したが、機能構成上では第1のスイッチング回路3に含まれるとみなして良いものである。