特許第6792973号(P6792973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792973導電性フィルムおよび導電性フィルムの製造方法
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  • 特許6792973-導電性フィルムおよび導電性フィルムの製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792973
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】導電性フィルムおよび導電性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20201119BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20201119BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20201119BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20201119BHJP
   B29C 61/06 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503B
   B32B7/025
   B29C55/06
   B29C61/06
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-141405(P2016-141405)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-14172(P2018-14172A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年5月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 由紀
(72)【発明者】
【氏名】松田 祥一
(72)【発明者】
【氏名】友久 寛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一正
(72)【発明者】
【氏名】武本 博之
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−215734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B29C 55/06
B29C 61/06
B32B 7/025
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸延伸して得られたフィルム上に、金属ナノワイヤを含む導電層形成用組成物を塗布し、その後、乾燥させて、導電層を形成することを含み、
該乾燥時に、該一軸延伸して得られたフィルムを収縮させ、
該乾燥時おいて、該一軸延伸して得られたフィルムの該一軸延伸方向における収縮率が、3%〜50%である、
導電性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記乾燥時の乾燥温度が、70℃〜150℃である、請求項1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記一軸延伸が、自由端延伸である、請求項1または2に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記一軸延伸の延伸倍率が、1.2倍〜5倍である、請求項1からのいずれかに記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記導電性フィルムが、前記一軸延伸して得られたフィルムを収縮させて形成された基材を備え、該基材の全光線透過率が80%以上である、請求項1からのいずれかに記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記導電層の全光線透過率が、85%以上である、請求項1からのいずれかに記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記導電性フィルムを所定の方向に10%延伸させた後の該導電性フィルムの表面抵抗値変化率(延伸後の表面抵抗値/延伸前の表面抵抗値)が200%以下である、 請求項1からのいずれかに記載の導電性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムおよび導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチセンサーの電極等に用いられる導電性フィルムとして、樹脂フィルム上にインジウム・スズ複合酸化物層(ITO層)等の金属酸化物層が形成された導電性フィルムが多用されている。しかし、金属酸化物層が形成された導電性フィルムは、屈曲性が不十分である。
【0003】
また、導電性フィルムとして、銀や銅などを用いた金属ナノワイヤを含む導電性フィルムが提案されている。このような導電性フィルムは屈曲性に優れるという利点がある。その一方、金属ナノワイヤを含む導電性フィルムは、屈曲または延伸した際に、金属ナノワイヤが断線したり、互いに接している金属ナノワイヤ同士が離れたりして、抵抗値が上昇することがある。このような現象は、曲面ディスプレイに導電性フィルムを適用する際に特に問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−505358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、屈曲性に優れ、かつ、屈曲または延伸されても抵抗値が上昇しがたい導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電性フィルムは、基材と、該基材の少なくとも片側に配置された導電層とを備え、該基材が、延伸性フィルムから構成され、該導電層が、金属ナノワイヤを含む。
1つの実施形態においては、上記基材の全光線透過率が、80%以上である。
1つの実施形態においては、上記導電層の全光線透過率が、85%以上である。
1つの実施形態においては、所定の方向に10%延伸させた後の表面抵抗値変化率(延伸後の表面抵抗値/延伸前の表面抵抗値)が200%以下である。
本発明の別の曲面によれば、光学積層体が提供される。この光学積層体は、上記導電性フィルムを含む。
本発明のさらに別の曲面によれば、表示デバイスが提供される。この表示デバイスは、上記導電性フィルムを含む。
本発明のさらに別の曲面によれば、導電性フィルムの製造方法が提供される。この製造方法は、一軸延伸して得られたフィルム上に、金属ナノワイヤを含む導電層形成用組成物を塗布し、その後、乾燥させて、導電層を形成することを含み、該乾燥時に、一軸延伸して得られたフィルムを収縮させる。
1つの実施形態においては、上記乾燥時の乾燥温度が、70℃〜150℃である。
1つの実施形態においては、上記乾燥時おいて、上記一軸延伸して得られたフィルムの該一軸延伸方向における収縮率が、3%〜50%である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属ナノワイヤを含む導電層を延伸性のフィルム(基材)上に設けることにより、屈曲性に優れ、かつ、屈曲または延伸されても抵抗値が上昇しがたい導電性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による導電性フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.導電性フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による導電性フィルムの概略断面図である。導電性フィルム100は、基材10と、基材10上の少なくとも片側に配置された導電層20とを備える。導電層は金属ナノワイヤを含む。また、基材10は、延伸性フィルムから構成される。
【0010】
1つの実施形態においては、導電層20は、ポリマーマトリックスから形成されている。この実施形態においては、ポリマーマトリックス中に金属ナノワイヤが存在する。
【0011】
上記導電性フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜500μmであり、より好ましくは15μm〜300μmであり、さらに好ましくは20μm〜200μmである。
【0012】
上記導電性フィルムは、光透過性を有することが好ましい。上記導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0013】
上記導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは0.01Ω/□〜1000Ω/□であり、より好ましくは0.1Ω/□〜500Ω/□であり、特に好ましくは0.1Ω/□〜300Ω/□であり、最も好ましくは0.1Ω/□〜100Ω/□である。このような範囲であれば、透明性に優れ、かつ、ノイズ遮断効果の大きい導電性フィルムを得ることができる。
【0014】
本発明の導電性フィルムは、基材が延伸性フィルムから構成されていることにより、屈曲または延伸されても、金属ナノワイヤの断線が防止され、表面抵抗値の上昇が抑制される。上記導電性フィルムを所定の方向に10%延伸した際の表面抵抗値変化率(延伸後の表面抵抗値/延伸前の表面抵抗値)は、好ましくは200%以下であり、より好ましくは150%以下であり、さらに好ましくは120%以下であり、特に好ましくは110%以下である。また、上記導電性フィルムを所定の方向に20%延伸した際の表面抵抗値変化率(延伸後の表面抵抗値/延伸前の表面抵抗値)は、好ましくは300%以下であり、より好ましくは250%以下であり、さらに好ましくは200%以下である。ここで、導電性フィルムの延伸方向(10%延伸方向、20%延伸方向)は、基材面内で最も延伸しやすい(10%延伸時の強度が最も小さい)方向に相当し、換言すれば、基材(延伸性フィルム)作製時の延伸方向に相当し得る。また、X%延伸とは、(延伸後の長さ−延伸前の長さ)/(延伸前の長さ)がX%であることを意味する。
【0015】
上記導電性フィルムの10%延伸後の表面抵抗値は、好ましくは0.01Ω/□〜2000Ω/□であり、より好ましくは0.1Ω/□〜1000Ω/□であり、特に好ましくは0.1Ω/□〜600Ω/□であり、最も好ましくは0.1Ω/□〜150Ω/□である。
【0016】
B.基材
上記のとおり、基材は延伸性フィルムから構成される。1つの実施形態においては、一軸延伸により形成されたフィルムを熱収縮させることにより、延伸性フィルムが得られる。このようにして形成された延伸性フィルムは、延伸性フィルムを構成する材料に応じて適切な温度範囲及び延伸方向を選択して使用される。好ましくは、延伸性フィルムは、該延伸性フィルムを構成する材料のガラス転移温度(Tg)±30℃の温度範囲で、破断なく延伸性を示す。該延伸性フィルムは、上記温度範囲で、延伸性フィルム作製時の一軸延伸の方向に相当する方向に延伸されて用いられ得る。このように、上記温度範囲および延伸方向を選択することにより、フィルム延伸時の応力を抑えることができ、その結果、加工性が良くなる。
【0017】
上記基材の厚みは、好ましくは8μm〜500μmであり、より好ましくは10μm〜250μmであり、さらに好ましくは10μm〜150μmであり、特に好ましくは15μm〜100μmである。
【0018】
上記基材の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような範囲であれば、タッチパネル等に備えられる導電性フィルムとして好適な導電性フィルムを得ることができる。
【0019】
上記基材を構成する樹脂(すなわち、延伸性フィルムを構成する樹脂)としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な樹脂が用いられ得る。基材を構成する樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等が挙げられる。好ましくは、シクロオレフィン系樹脂またはポリエチレンテレフタレート系樹脂である。シクロオレフィン系樹脂を用いれば、高い水分バリア性を有する基材を安価に得ることができる。高い水分バリア性を有する基材を用いれば、耐湿性の低い圧電フィルム(例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂フィルム)を備える圧電素子に備えられる導電性フィルムとして有用な導電性フィルムを得ることができる。ポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いれば、延伸性に特に優れる基材を得ることができる。
【0020】
上記シクロオレフィン系樹脂として、例えば、ポリノルボルネンが好ましく用いられ得る。ポリノルボルネンとは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。
【0021】
上記ポリノルボルネンとしては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0022】
上記基材を構成する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50℃〜200℃であり、より好ましくは60℃〜180℃であり、さらに好ましくは70℃〜160℃である。このような範囲のガラス転移温度を有する基材であれば、導電層を形成する際の劣化が防止され得る。
【0023】
上記基材は、必要に応じて任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤の具体例としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。
【0024】
C.導電層
上記導電層は、金属ナノワイヤを含む。金属ナノワイヤを含む導電層を形成すれば、屈曲性に優れ、かつ、光透過率に優れる導電性フィルムを得ることができる。
【0025】
1つの実施形態においては、導電層は、ポリマーマトリックスをさらに含む。この実施形態においては、ポリマーマトリックス中に、金属ナノワイヤが存在する。ポリマーマトリックスから構成される導電層においては、ポリマーマトリックスにより金属ナノワイヤが保護される。その結果、金属ナノワイヤの腐食が防止され、耐久性により優れる導電性フィルムを得ることができる。
【0026】
上記導電層の厚みは、好ましくは10nm〜1000nmであり、より好ましくは20nm〜500nmである。なお、導電層がポリマーマトリックスを含む場合は、該導電層の厚みはポリマーマトリックスの厚みに相当する。
【0027】
1つの実施形態においては、上記導電層はパターン化されている。パターン化の方法としては、導電層の形態に応じて、任意の適切な方法が採用され得る。導電層のパターンの形状は、用途に応じて任意の適切な形状であり得る。例えば、特表2011−511357号公報、特開2010−164938号公報、特開2008−310550号公報、特表2003−511799号公報、特表2010−541109号公報に記載のパターンが挙げられる。導電層は基材上に形成された後、導電層の形態に応じて、任意の適切な方法を用いてパターン化することができる。
【0028】
上記導電層の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0029】
上記金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、少量の金属ナノワイヤであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい導電性フィルムを得ることができる。さらに、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成して、光透過率の高い導電性フィルムを得ることができる。
【0030】
上記金属ナノワイヤの太さdと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは10〜100,000であり、より好ましくは50〜100,000であり、特に好ましくは100〜10,000である。このようにアスペクト比の大きい金属ナノワイヤを用いれば、金属ナノワイヤが良好に交差して、少量の金属ナノワイヤにより高い導電性を発現させることができる。その結果、光透過率の高い導電性フィルムを得ることができる。なお、本明細書において、「金属ナノワイヤの太さ」とは、金属ナノワイヤの断面が円状である場合はその直径を意味し、楕円状である場合はその短径を意味し、多角形である場合は最も長い対角線を意味する。金属ナノワイヤの太さおよび長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
【0031】
上記金属ナノワイヤの太さは、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、特に好ましくは10nm〜100nmであり、最も好ましくは10nm〜60nmである。このような範囲であれば、光透過率の高い導電層を形成することができる。
【0032】
上記金属ナノワイヤの長さは、好ましくは1μm〜1000μmであり、より好ましくは1μm〜500μmであり、特に好ましくは1μm〜100μmである。このような範囲であれば、導電性の高い導電性フィルムを得ることができる。
【0033】
上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。金属ナノワイヤは、金、白金、銀および銅からなる群より選ばれた1種以上の金属により構成されることが好ましい。
【0034】
上記金属ナノワイヤの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば溶液中で硝酸銀を還元する方法、前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法等が挙げられる。溶液中で硝酸銀を還元する方法においては、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩を液相還元することにより、銀ナノワイヤが合成され得る。均一サイズの銀ナノワイヤは、例えば、Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745 、Xia, Y.et al., Nano letters(2003)3(7)、955−960 に記載される方法に準じて、大量生産が可能である。
【0035】
上記導電層における金属ナノワイヤの含有割合は、導電層の全重量に対して、好ましくは30重量%〜100重量%であり、より好ましくは30重量%〜90重量%であり、さらに好ましくは45重量%〜80重量%である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる導電性フィルムを得ることができる。
【0036】
上記ポリマーマトリックスを構成するポリマーとしては、任意の適切なポリマーが用いられ得る。該ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系ポリマー;ポリウレタン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;ポリオレフィン系ポリマー;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS);セルロース;シリコン系ポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリアセテート;ポリノルボルネン;合成ゴム;フッ素系ポリマー等が挙げられる。好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等の多官能アクリレートから構成される硬化型樹脂(好ましくは紫外線硬化型樹脂)が用いられる。
【0037】
導電層がポリマーマトリックスから構成され、かつ、上記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤである場合、導電層の密度は、好ましくは1.3g/cm〜10.5g/cmであり、より好ましくは1.5g/cm〜3.0g/cmである。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる導電性フィルムを得ることができる。
【0038】
D.導電性フィルムの製造方法
1つの実施形態において、本発明の導電性フィルムの製造方法は、一軸延伸して得られたフィルム上に、金属ナノワイヤを含む導電層形成用組成物を塗布し、その後、塗布層を乾燥させて、導電層を形成することを含む。上記乾燥時にフィルム(一軸延伸して得られたフィルム)が収縮することにより、延伸性フィルムから構成される基材が形成される。該収縮の方向は、一軸延伸の方向に相当し得る。
【0039】
上記一軸延伸して得られたフィルムを得る方法としては、任意の適切な方法が用いられる。例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、およびソルベントキャスティング法等により成形して得られたフィルムを、任意の適切な方法により一軸延伸することにより、一軸延伸して得られたフィルムを得ることができる。
【0040】
上記一軸延伸の方法としては、固定端延伸(例えば、テンター延伸機を用いる方法)でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なる複数のロールを用いる方法)でもよい。好ましくは、自由端延伸である。
【0041】
上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは1.2倍〜5倍であり、より好ましくは1.5倍〜3倍である。このような範囲であれば、優れた延伸性を有する延伸性フィルムを得ることができる。
【0042】
必要に応じて、上記一軸延伸して得られたフィルムに対して各種表面処理を行ってもよい。表面処理は目的に応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、低圧プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理が挙げられる。1つの実施形態においては、一軸延伸して得られたフィルムを表面処理して、該フィルムの表面を親水化させる。該フィルムを親水化させれば、水系溶媒により調製された導電層形成用組成物(後述)を塗工する際の加工性が優れる。また、基材と導電層との密着性に優れる導電性フィルムを得ることができる。
【0043】
上記導電層形成用組成物は、金属ナノワイヤの他、任意の適切な溶媒を含み得る。導電層形成用組成物は、金属ナノワイヤの分散液として準備され得る。上記溶媒としては、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられる。環境負荷低減の観点から、水を用いることが好ましい。上記導電層形成用組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、金属ナノワイヤの腐食を防止する腐食防止剤、金属ナノワイヤの凝集を防止する界面活性剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0044】
上記導電層形成用組成物中の金属ナノワイヤの分散濃度は、好ましくは0.1重量%〜1重量%である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる導電層を形成することができる。
【0045】
上記導電層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布層の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には50℃〜200℃であり、好ましくは80℃〜150℃である。このような範囲であれば、一軸延伸して得られたフィルムを良好に収縮させることができ、優れた延伸性を有する延伸性フィルムを得ることができる。乾燥時間は代表的には1〜10分である。導電層形成用組成物中の溶媒を揮発させた後、一軸延伸して得られたフィルムを収縮させるために、加熱を継続してもよい。
【0046】
上記乾燥時において、上記一軸延伸して得られたフィルムの該一軸延伸方向における収縮率は、好ましくは3%〜50%であり、より好ましくは5%〜30%であり、さらに好ましくは5%〜20%である。このような範囲であれば、優れた延伸性を有する延伸性フィルムを得ることができる。なお、収縮率は、(乾燥前の長さ−乾燥後の長さ)/(乾燥前の長さ)により算出される。
【0047】
上記導電層がポリマーマトリックスを含む場合、ポリマーマトリックスは、上記のようにして、導電層形成用組成物を塗布し乾燥させた後、金属ナノワイヤから構成される層に上にポリマー溶液を塗布し、その後、ポリマー溶液の塗布層を乾燥または硬化させて、形成され得る。この操作により、ポリマーマトリックス中に金属ナノワイヤが存在した導電層が形成される。
【0048】
上記ポリマー溶液は、上記ポリマーマトリックスを構成するポリマー、または該ポリマーの前駆体(該ポリマーを構成するモノマー)を含む。
【0049】
上記ポリマー溶液は溶剤を含み得る。上記ポリマー溶液に含まれる溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、炭化水素系溶剤、または芳香族系溶剤等が挙げられる。好ましくは、該溶剤は、揮発性である。該溶剤の沸点は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0050】
E.用途
上記導電性フィルムは、光学フィルム(例えば、位相差フィルム、偏光板)等と組み合わせて用いられ得る。本発明の1つの実施形態においては、導電性フィルムとその他のフィルム(例えば、光学フィルム)とを備える光学積層体が提供される。
【0051】
また、上記導電性フィルムは、表示デバイス等の電子機器に好適に用いられ得る。より具体的には、導電性フィルムは、例えば、タッチパネル等に用いられる電極;電子機器の誤作動の原因となる電磁波を遮断する電磁波シールド等として用いられ得る。
【0052】
本発明の導電性フィルムは、屈曲による抵抗率上昇が抑制されているため、曲面ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ等に好適に用いられ得る。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。実施例および比較例における評価方法は以下のとおりである。
【0054】
(1)表面抵抗値
NAPSON製 商品名「EC−80」を用いて測定した。測定温度は23℃とした。
【0055】
[実施例1]
(銀ナノワイヤの合成および銀ナノワイヤ分散液の調製)
硝酸銀1.5g、形態調整剤としてのポリビニルピロリドンK−90(ナカライテスク社製、平均分子量:360,000)5.8g、食塩(NaCl)0.04g及びエチレングリコール(180ml)を、環流器及び攪拌機が付いたフラスコに添加し、攪拌しつつ溶解した後、温度をエチレングリコールの沸点近傍である170℃まで昇温し、60分間反応させた。反応終了後、室温下で放置して冷却した。次いで、上記のようにして得られた銀ナノワイヤを含む反応混合物に、該反応混合物の体積が5倍になるまでアセトンを加えた後、該反応混合物を遠心分離した(2000rpm、20分)。この作業を数回繰返し、銀ナノワイヤを得た。得られた銀ナノワイヤは、直径が10nm〜60nmであり、長さは1μm〜50μmであった。なお、銀ナノワイヤのサイズは、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡「S−4800」を用い、該顕微鏡により無作為に抽出した30個の金属ナノワイヤを観察して長さおよび直径を測定した。純水中に、該銀ナノワイヤ(濃度:0.2重量%)、およびペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル(濃度:0.1重量%)を分散させ、銀ナノワイヤ分散液(導電層形成用組成物)を調製した。
【0056】
(一軸延伸して得られたフィルムの作製)
A−PETフィルム(三菱化学社製、商品名「ノバクリアー」、厚み:100μm)を2.2倍に一軸延伸(自由端延伸、延伸方向:MD)して、一軸延伸して得られたフィルムを得た。
【0057】
(導電性フィルムの作製)
上記一軸延伸して得られたフィルムに、バーコーター(第一理科社製、製品名「バーコーター No.14」)を用いて、上記銀ナノワイヤ分散液を塗布し、送風乾燥機内において、100℃で2分乾燥させた。銀ナノワイヤ分散液を乾燥させる際、一軸延伸して得られたフィルムのMDにおける収縮率は、10%であった。
このようにして、延伸性フィルムから構成される基材と、該基材上に配置される導電層とを含む導電性フィルムを得た。この導電性フィルムの表面抵抗値は30Ω/□であった。
この導電性フィルムをMDに10%延伸したところ、延伸後の導電性フィルムの表面抵抗値は30Ω/□となった。
また、この導電性フィルムをMDに20%延伸したところ、延伸後の導電性フィルムの表面抵抗値は60Ω/□となった。
【0058】
[実施例2]
銀ナノワイヤ分散液の乾燥時間を1分としたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。銀ナノワイヤ分散液を乾燥させる際、一軸延伸して得られたフィルムのMDにおける収縮率は、5%であった。また、得られた導電性フィルムの表面抵抗値は30Ω/□であった。
この導電性フィルムをMDに10%延伸したところ、延伸後の導電性フィルムの表面抵抗値は53Ω/□となった。
【0059】
[比較例1]
一軸延伸して得られたフィルムに代えて、未延伸フィルム(三菱化学社製、商品名「ノバクリアー」、厚み:100μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。銀ナノワイヤ分散液を乾燥させる際、未延伸フィルムのMDにおける収縮率は、0%であった。また、得られた導電性フィルムの表面抵抗値は30Ω/□であった。
この導電性フィルムをMDに10%延伸したところ、延伸後の導電性フィルムの表面抵抗値は105Ω/□となった。
この導電性フィルムをMDに20%延伸したところ、延伸後の導電性フィルムの表面抵抗値は168Ω/□となった。
【0060】
[参考例1]
実施例1と同様に、A−PETフィルム(三菱化学社製、商品名「ノバクリアー」、厚み:100μm)を2.2倍に一軸延伸(自由端延伸、延伸方向:MD)して、一軸延伸して得られたフィルムを得た。該一軸延伸して得られたフィルムを送風乾燥機内において、100℃で2分加熱した。この一軸延伸後に収縮させて得られたフィルムのMDにおける収縮率は、10%であった。
この収縮フィルム上にバーコーター(第一理科社製、製品名「バーコーター No.14」)を用いて、上記銀ナノワイヤ分散液を塗布し、送風乾燥機内において、80℃で2分乾燥させた。銀ナノワイヤ分散液を乾燥させる際、一軸延伸後に収縮させて得られたフィルムのMDにおける収縮率は、0.1%であった。また、得られた導電性フィルムの表面抵抗値は32Ω/□であった。
この導電性フィルムをMDに10%延伸したところ、延伸後の導電性フィルムの表面抵抗値は125Ω/□となった。
この導電性フィルムをMDに20%延伸したところ、延伸後の導電性フィルムの表面抵抗値は192Ω/□となった。
【0061】
実施例および比較例の結果を表1にまとめる。
【表1】
【符号の説明】
【0062】
10 基材
20 導電層
100 導電性フィルム

図1