(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。
【0018】
[研磨パッドの構成]
図1(a)は、本実施形態に係る研磨パッド100を示す模式的斜視図である。
研磨パッド100は、研磨層101、接着層102及びクッション層103を具備する。
【0019】
研磨層101は、被研磨物に当接し、研磨を行う層である。以下、研磨層101の表面を研磨面101aとする。研磨面101aには、スラリー液の流れをよくするための溝及び孔(不図示)が形成されてもよい。
【0020】
接着層102は、研磨層101とクッション層103を接着する層であり、例えば粘着テープである。
【0021】
クッション層103は、研磨層101の被研磨物への当接をより均一にする層である。クッション層103は、不織布や合成樹脂等の可撓性を有する材料からなるものとすることができる。
【0022】
研磨パッド100は、クッション層103に配設された粘着テープ等によって研磨装置に貼付される。研磨パッド100の大きさ(径)は研磨装置のサイズ等に応じて決定することができ、例えば、直径10cm〜1m程度とすることができる。なお、研磨パッド100の形状は円板状に限られず、帯状等であってもよい。
【0023】
研磨パッド100は、研磨装置によって被研磨物に押圧された状態で回転駆動され、被研磨物を研磨する。その際、研磨パッド100と被研磨物の間には、スラリー液が供給される。スラリー液は溝又は孔を介して研磨面101aに供給され、排出される。
【0024】
[研磨層の構成]
図1(b)は、本実施形態に係る研磨パッド100の模式的断面図である。
研磨パッド100において、研磨層101は、ポリマー110及び中空微粒子(微小中空球体)111を含む。
【0025】
ポリマー110は、研磨材料の主な構成材料である。ポリマー110は、プレポリマーと硬化剤の重合反応によって生成するポリマーであるものとすることができる。このようなポリマーとしては、ポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンは、入手性及び加工性がよく、好適な研磨特性を有するため、ポリマー110として好適である。
【0026】
プレポリマーは、イソシアネート基末端を有する化合物(以下、イソシアネート化合物)とすることができ、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、通常用いられる条件で反応させることにより得られる化合物であり、ポリウレタン結合とイソシアネート基を分子内に含むものである。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がポリウレタン結合含有イソシアネート化合物に含まれてもよい。
【0027】
ポリイソシアネート化合物は、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味し、例えばジフェニルメタンジイソシアートを用いることができる。
【0028】
この他にもポリイソシアネート化合物としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニルジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソフォロンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート(水添MDI)、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート及びエチリジンジイソチオシアネートが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
また、ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上のアルコール性水酸基(OH)を有する化合物を意味し、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)やジエチレングリコール(DEG)を用いることができる。
【0030】
この他にもポリオール化合物としては、エチレングリコール、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;PTMGなどのポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
硬化剤は、ポリアミン系硬化剤を利用することができる。ポリアミン系硬化剤は、2つ以上のアミノ基を有する物質であり、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジアミンなどの脂肪族環を有するジアミン;MOCA(3,3−ジクロロ−4,4−ジアミノジフェニルメタン)などの芳香族環を有するジアミン;2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン、特にヒドロキシアルキルアルキレンジアミン;などを用いることができる。また、3官能のトリアミン化合物、4官能以上のポリアミン化合物も使用可能である。
【0032】
また、硬化剤は、ポリオール系硬化剤を利用することもできる。ポリオール系硬化剤は2つ以上のヒドロキシル基を有する物質であり、例えば、エチレングリコール又はポリエーテルポリオールとすることができる。
【0033】
この他にも、ポリオール系硬化剤として、ブチレングリコール及びヘキサンジオール等の低分子量のポリオール化合物、並びに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ビスフェノールAとプロピレンオキサイドとの反応物等のポリエーテルポリオール化合物、エチレングリコールとアジピン酸との反応物、ブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物及びポリカプロラクトンポリオール化合物等の高分子量のポリオール化合物が挙げられる。
【0034】
硬化剤は、ポリアミン系硬化剤とポリオール系硬化剤のうちの1種又は複数種を利用することが可能である。
【0035】
ここで、プレポリマーの末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤に存在するアミノ基又はヒドロキシル基活性水素基の当量比であるR値が、0.70〜1.20となるよう、各成分を混合する。R値は、0.70〜1.20が好ましく、0.80〜1.00がより好ましく、さらに好ましくは0.85〜0.95である。R値を1以下とすることで、過剰となったイソシアネート基が後述する架橋反応に用いられる。
【0036】
中空微粒子111は、ポリマー110に分散されている。中空微粒子111は、中空の球体状の物体である。研磨面101aにおいて露出している半球状の中空微粒子111は、研磨層101を形成した後に、切断加工、バフ加工、ドレス加工等によって表出したものである。
【0037】
図1(c)は、本実施形態に係る中空微粒子111の模式的断面図である。
中空微粒子111は、熱可塑性樹脂からなる球殻状の外殻111aと、外殻111aに囲まれた内部空間111bを有する。中空微粒子111は、液状の低沸点炭化水素を熱可塑性樹脂の殻で包み、加熱することによって形成されたものとすることができる。中空微粒子111としては、既に加熱され膨張されている既膨張タイプのものが用いられてもよく、上記ポリウレタンの生成反応に伴う生成熱により膨張される未膨張タイプのものが用いられてもよい。
【0038】
加熱によって熱可塑性樹脂が軟化するとともに低沸点炭化水素が気体に変化し、気体の圧力によって熱可塑性樹脂が膨張することにより中空微粒子111が形成される。低沸点炭化水素は例えばイソブタンやペンタン等が用いられ、熱可塑性樹脂は例えば塩化ビニリデンやアクリロニトリルが用いられる。
【0039】
中空微粒子111は、市販品を利用することも可能である。例えばマツモトマイクロスフェアーシリーズ(松本油脂製薬株式会社製)やエクスパンセルシリーズ(AkzoNobel社製)を中空微粒子111として利用することができる。
【0040】
中空微粒子111の大きさは特に限定されないが、直径20μm〜200μm程度とすることができ、また径の異なる中空微粒子を2種類以上用いることもできる。研磨材料における中空微粒子111の含有割合は、研磨材料に対して、10〜60体積%が好適であり、15〜45体積%であるとより好適である。このような樹脂製の中空微粒子111を研磨層101に分散させることにより、研磨層101中の空隙の大きさを均一にすることができる。さらに、中空微粒子111の投入量によって研磨パッド100の研磨特性を調整できる。
【0041】
[研磨パッドの製造装置]
研磨パッド100の製造方法を説明する前に、研磨パッド100の製造する製造装置について説明する。
【0042】
図2は、本実施形態に係る研磨パッド100の製造に用いられる製造装置200の模式図である。
【0043】
製造装置200は、第1貯槽201(第1の槽)、第2貯槽202(第2の槽)、撹拌槽203(混合容器)、型204、ポンプ401(第1のポンプ)、ポンプ402(第2のポンプ)及び制御装置600を具備する。さらに、製造装置200は、切替弁410、切替弁420、流路501a、流路501b、流路502a、流路502b、容器212、流路503、容器213及び流路504を具備する。製造装置200は、上記の各部品が一括して制御装置600によって自動制御されている。又は、製造装置200においては、制御装置600による各部品の制御を解除されて、各部品を手動で動作することもできる。
【0044】
第1貯槽201は、プレポリマーを収容することができる。第1貯槽201においては、プレポリマーに中空微粒子111を混合させることができる。例えば、中空微粒子111は、容器212に予め収容される。容器212は、第1貯槽201に流路503を介して接続されている。中空微粒子111は、流路503を介して容器212から第1貯槽201に投入される。
【0045】
中空微粒子111は、細かな微粒子であり、中空微粒子111を第1貯槽201の上方から第1貯槽201に投入すると、第1貯槽201内で舞い上がり、第1貯槽201の内壁に中空微粒子111に付着する可能性がある。この結果、中空微粒子111が効率よくプレポリマー中に分散されない可能性がある。従って、中空微粒子111は、第1貯槽201の下側から流路503を介して投入される。これにより、中空微粒子111は、第1貯槽201に投入直後から第1貯槽201の底に溜ったプレポリマーに直接的に混入される。
【0046】
第2貯槽202は、硬化剤を収容することができる。製造装置200においては、第2貯槽202においても、硬化剤に中空微粒子111を混合させることができる。例えば、中空微粒子111は、容器213に予め収容される。容器213は、第2貯槽202に流路504を介して接続されている。中空微粒子111は、流路504を介して容器213から第2貯槽202に投入される。
【0047】
中空微粒子111は、第1貯槽201または第2貯槽202のいずれか一方に混在させてもよく、第1貯槽201及び第2貯槽202の両方に混在させてもよい。また、中空微粒子111の比重は、プレポリマー及び硬化剤の比重よりも軽い。従って、中空微粒子111を第1貯槽201及び第2貯槽202の下方から、第1貯槽201及び第2貯槽202に投入することで、中空微粒子111は、第1貯槽201及び第2貯槽202のそれぞれで効率よく分散される。
【0048】
ポンプ401は、第1貯槽201内に収容された内容物(以下、第1の液体)を第1貯槽201から撹拌槽203に供給することができる。ポンプ401は、流路501aの途中に設けられている。流路501aの途中に設けられたポンプ401の数は、1つとは限らない。例えば、複数のポンプ401が流路501aの途中に並列に設けられてもよい。また、流路501aには、切替弁410を介して、流路501bと流路501cとが接続されている。切替弁410は、いわゆる3方弁である。
【0049】
例えば、第1貯槽201内に収容された第1の液体を第1貯槽201から撹拌槽203に供給するときは、切替弁410によって流路501aと流路501bとを連通させる。そして、ポンプ401の作動により、第1の液体が第1貯槽201から流路501a、流路501bを通じて撹拌槽203に供給される。ここで、第1の液体が第1貯槽201から撹拌槽203に供給されているとき、ポンプ401内に流れる第1の液体の流量は、所定の流量(第1の流量)に制御されている。
【0050】
また、製造装置200においては、第1の液体の撹拌槽203への供給を停止することもできる。このとき、製造装置200においては、第1の液体をポンプ401と第1貯槽201との間で循環することができる。例えば、切替弁410によって流路501aと流路501cとを連通させる。そして、ポンプ401の作動により、第1の液体が第1貯槽201から流路501a、流路501cを通じて第1貯槽201に戻される。この液体の戻し動作が繰り返し行われる。
【0051】
ここで、第1の液体がポンプ401と第1貯槽201との間で循環しているとき、ポンプ401内に流れる第1の液体の流量は、第1の流量よりも小さくなるように制御される。この第1の流量よりも小さい流量を第2の流量とする。第2の流量は、例えば、第1の流量の50%以下に調整される。例えば、ポンプ401の回転数を調整することにより、第1の液体の流量が第1の流量または第2の流量に調整される。また、第1の液体の撹拌槽203への供給を停止するときには、ポンプ401自体を停止してもよい。また、ポンプ401の作動と停止が交互に繰り返されてもよい。
【0052】
ポンプ402は、第2貯槽202内に収容された内容物(以下、第2の液体)を第2貯槽202から撹拌槽203に供給することができる。ポンプ402は、流路502aの途中に設けられている。流路502aの途中に設けられたポンプ402の数は、1つとは限らない。例えば、複数のポンプ402が流路502aの途中に並列に設けられてもよい。また、流路502aには、切替弁420を介して、流路502bと流路502cとが接続されている。切替弁420は、いわゆる3方弁である。
【0053】
例えば、第2貯槽202内に収容された第2の液体を第2貯槽202から撹拌槽203に供給するときは、切替弁420によって流路502aと流路502bとを連通させる。そして、ポンプ402の作動により、第2の液体が第2貯槽202から流路502a、流路502bを通じて撹拌槽203に供給される。ここで、第2の液体が第2貯槽202から撹拌槽203に供給されているとき、ポンプ402内に流れる第2の液体の流量は、所定の流量(第3の流量)に制御されている。
【0054】
また、製造装置200においては、第2の液体の撹拌槽203への供給を停止することもできる。このとき、製造装置200においては、第2の液体をポンプ402と第2貯槽202との間で循環することができる。例えば、切替弁420によって流路502aと流路502cとを連通させる。そして、ポンプ402の作動により、第2の液体が第2貯槽202から流路502a、流路502cを通じて第2貯槽202に戻される。この液体の戻し動作が繰り返し行われる。
【0055】
ここで、第2の液体がポンプ402と第2貯槽202との間で循環しているとき、ポンプ402内に流れる第2の液体の流量は、第3の流量よりも小さくなるように制御される。この第3の流量よりも小さい流量を第4の流量とする。第4の流量は、例えば、第3の流量の50%以下に調整される。例えば、ポンプ402の回転数を調整することにより、第2の液体の流量が第3の流量または第4の流量に調整される。また、第2の液体の撹拌槽203への供給を停止するときには、ポンプ402自体を停止してもよい。また、ポンプ402の作動と停止が交互に繰り返されてもよい。
【0056】
製造装置200において、上記の切替弁410の切り替え、ポンプ401、402の作動は、制御装置600によって制御されている。ポンプ401、402としては、定量型のネジ式ポンプ(例えば、モーノポンプ)または定量型の容積式ポンプ(例えば、サインポンプ)が好ましく用いられ、中でも往復ポンプや回転ポンプが用いられる。これらのポンプは、中空微粒子111を含む粘性流体(第1及び第2の液体)を移送するのに優れる。制御装置600は、液体の流量を下げるときには、これらのポンプの回転数を下げる制御をし、液体の流量を上げるときには、これらのポンプの回転数を上げる制御をする。
【0057】
撹拌槽203は、プレポリマーと硬化剤と中空微粒子111を受けて、これらのプレポリマーと硬化剤と中空微粒子111を混合して研磨材料301を形成する。型204は、撹拌槽203から研磨材料301を受容し研磨材料301を硬化させて研磨層101を形成する。
【0058】
[研磨パッドの製造方法]
図2を参照しながら、研磨パッド100の製造方法について説明する。研磨層101の製造は、制御装置600によって制御されている。まず、中空微粒子111が第1貯槽201のみに混在しているときの研磨パッドの製造方法について説明する。
【0059】
例えば、第1貯槽201にプレポリマーと中空微粒子111とが投入される。プレポリマーは、イソシアネート化合物とすることができる。第2貯槽202には、硬化剤が投入される。硬化剤は、ポリオール系硬化剤及びポリアミン系硬化剤の両方又は一方である。各原料の流動性を安定にするために、第1貯槽201及び第2貯槽202は所定温度に加熱される。
【0060】
次に、第1貯槽201に収容されたプレポリマーと中空微粒子111とを含む液体(第1の液体)が第1の流量で第1貯槽201から撹拌槽203に供給される。例えば、制御装置600によってポンプ401が作動することにより、第1の液体が流路501a、切替弁410及び流路501bを通じて第1貯槽201から撹拌槽203に供給される。このとき、ポンプ401から吐出する第1の液体の流量は、第1の流量に制御される。
【0061】
例えば、ポンプ401がモーノポンプの場合、第1の流量は、30rpm以上150rpm以下のいずれかの流量に制御される。また、吐出量は、12000g/min以上30000g/min以下のいずれかの吐出量に制御される。吐出圧力は、0.5MPa以上1.0MPa以下のいずれかの吐出圧力に制御される。
【0062】
さらに、第1の液体の供給とともに、第2貯槽202に収容された硬化剤がポンプ402を通じて第2貯槽202から撹拌槽203に供給される。例えば、制御装置600によってポンプ402が作動することにより、硬化剤が流路502a、切替弁420及び流路502bを通じて第2貯槽202から撹拌槽203に供給される。
【0063】
例えば、ポンプ402がモーノポンプの場合、硬化剤の流量は、30rpm以上150rpm以下のいずれかの流量に制御される。また、吐出量は、4000g/min以上10000g/min以下のいずれかの吐出量に制御される。吐出圧力は、0.1MPa以上0.4MPa以下のいずれかの吐出圧力に制御される。
【0064】
次に、撹拌槽203において第1の液体と硬化剤とが混合した流動体状の研磨材料301が形成される。次に、研磨材料301は、撹拌槽203から型204に供給される。研磨材料301においては、プレポリマーと硬化剤が重合反応する。この際、型204は加熱されてもよい。重合反応の進行とともに混合物は硬化し、ポリマーからなるブロック状物が形成される。そして、型204においては、研磨材料301が硬化されて、研磨層101が形成される。
【0065】
例えば、得られたブロック状物を加熱し、ポリマーの架橋反応を進行させる。さらに、ブロック状物をスライス(切断加工)することにより、研磨層101が得られる。研磨層101に接着層102及び
クッション層103が積層されて所望の形状に裁断され、研磨パッド100が形成される。必要に応じて研磨層101には溝等が形成されてもよい。
【0066】
ここで、研磨層101の製造においては、第1の液体及び硬化剤の撹拌槽203への供給を一時的に停止する必要性も生じる。本実施形態においては、この停止中の期間において、第1の液体をポンプ401と第1貯槽201との間で循環させる。例えば、切替弁410を切り替えることにより、流路501aと流路501cとを連通させて、第1貯槽201、流路501a、切替弁410、流路501c、第1貯槽201の順で第1の液体を循環させる。
【0067】
この循環より、第1貯槽201内、流路501a内及び流路501c内において、互いに比重の異なるプレポリマーと中空微粒子111とが効率よく混ぜ合わさる。また、このような循環を続けることにより、第1の液体の撹拌槽203への供給を再開したときには、中空微粒子111がプレポリマーに効率よく分散した第1の液体が即座に流路501bから取り出すことができる。仮に、第1の液体の循環を止めてしまうと、第1貯槽201または流路501aに残存する微量の空気とプレポリマーとが反応して、第1貯槽201内または流路501a内に、複数のプレポリマーが固化した異物が発生しやすくなる。
【0068】
但し、第1の液体を長時間循環させると、中空微粒子111は、ポンプ401を通過する度にポンプ401から負荷を受け続ける。例えば、ポンプ401がモーノポンプの場合、第1の液体は、ポンプ401内のローターの回転によって押し出され、ポンプ401外に吐出する。ここで、第1の液体は、プレポリマーを含み、所定の粘度を有する。これにより、第1の液体は、粘性抵抗または慣性抵抗を有する。従って、第1の液体がポンプ401を通過する度に、中空微粒子111には応力が印加される。このような負荷が長く持続すると、中空微粒子111が変形したり、破損したりする場合がある。
【0069】
損傷を受けた中空微粒子111が研磨層101に混入すると、研磨パッド100が所望の特性を示さなくなる可能性がある。例えば、つぶれた中空微粒子111、又は、中空にプレポリマーが混入した中空微粒子111が研磨層101内に入ると、研磨層101の硬度が局所的に高くなったり、研磨層101全体が硬くなって被研磨物に損傷を与えたりする。
【0070】
従って、本実施形態においては、第1の液体をポンプ401と第1貯槽201との間で循環させているときには、第1の液体をポンプ401と第1貯槽201との間で第1の流量よりも小さい第2の流量で循環させる。これにより、中空微粒子111は、ポンプ401を通過する際にポンプ401から負荷を受けにくく、中空微粒子111の変形、破損が抑制される。これにより、中空微粒子111を含む研磨パッド100は、所望の特性を示す。
【0071】
例えば、ポンプ401がモーノポンプの場合、第2の流量は、15rpm以上75rpm以下のいずれかの流量に制御される。また、吐出量は、6000g/min以上15000g/min以下のいずれかの吐出量に制御される。吐出圧力は、0.25MPa以上0.5MPa以下のいずれかの吐出圧力に制御される。
【0072】
また、複数のポンプ401が流路501aに配置されているときは、複数のポンプ401のそれぞれの吐出量が第2の流量に制御されても、流路501a、501cを流れる第1の液体の流量は、それぞれのポンプ401から吐出される流量の合計になる。これにより、循環中には、ポンプ401による中空微粒子111の負荷を抑えつつ、流路501a、501cを流れる第1の液体の流量を第1の流量と同じにすることもできる。また、第1の液体及び硬化剤の撹拌槽203への供給を停止しているとき、ポンプ401による中空微粒子111への負荷をさらに低減させるには、ポンプ401自体を停止してもよい。
【0073】
この後、再び、第1の液体及び硬化剤が撹拌槽203に供給されて、研磨層101が再び形成される。すなわち、循環が終わった後に、第1の液体は、ポンプ401により第1の流量で第1貯槽201から撹拌槽203に供給されるとともに、硬化剤は、第2貯槽202から撹拌槽203に供給される。
【0074】
次に、中空微粒子111が第2貯槽202のみに混在しているときの研磨パッドの製造方法について説明する。例えば、第2貯槽202には、硬化剤と中空微粒子111とが投入される。第2貯槽202内の内容物を第2の液体とする。
【0075】
次に、第1貯槽201に収容されたプレポリマーが第1貯槽201から撹拌槽203に供給される。例えば、制御装置600によってポンプ401が作動することにより、プレポリマーが流路501a、切替弁410及び流路501bを通じて第1貯槽201から撹拌槽203に供給される。
【0076】
例えば、ポンプ401がモーノポンプの場合、プレポリマーの流量は、30rpm以上150rpm以下のいずれかの流量に制御される。また、吐出量は、12000g/min以上30000g/min以下のいずれかの吐出量に制御される。吐出圧力は、0.5MPa以上1.0MPa以下のいずれかの吐出圧力に制御される。
【0077】
さらに、プレポリマーの供給とともに、第2貯槽202に収容された第2の液体がポンプ402を通じて第2貯槽202から撹拌槽203に供給される。例えば、制御装置600によってポンプ402が作動することにより、第2の液体が流路502a、切替弁420及び流路502bを通じて第2貯槽202から撹拌槽203に供給される。このとき、ポンプ401から吐出する第2の液体の流量は、第3の流量に制御される。
【0078】
例えば、ポンプ402がモーノポンプの場合、第2の液体の流量は、30rpm以上150rpm以下のいずれかの流量に制御される。また、吐出量は、4000g/min以上10000g/min以下のいずれかの吐出量に制御される。吐出圧力は、0.1MPa以上0.4MPa以下のいずれかの吐出圧力に制御される。
【0079】
次に、撹拌槽203においてプレポリマーと第2の液体とが混合した流動体状の研磨材料301が形成される。次に、研磨材料301は、撹拌槽203から型204に供給される。そして、型204においては、研磨材料301が硬化されて、研磨層101が形成される。
【0080】
ここで、プレポリマー及び第2の液体の撹拌槽203への供給を一時的に停止するときには、第2の液体をポンプ402と第2貯槽202との間で循環させる。例えば、切替弁420を切り替えることにより、流路502aと流路502cとを連通させて、第2貯槽202、流路502a、切替弁420、流路502c、第2貯槽202の順で第2の液体を循環させる。
【0081】
第2の液体をポンプ402と第2貯槽202との間で循環させているときには、第2の液体をポンプ402と第2貯槽202との間で第3の流量よりも小さい第4の流量で循環させる。これにより、中空微粒子111は、ポンプ402を通過する際にポンプ402から負荷を受けにくく、中空微粒子111の変形、破損が抑制される。これにより、中空微粒子111を含む研磨パッド100は、所望の特性を示すようになる。
【0082】
例えば、ポンプ402がモーノポンプの場合、第4の流量は、15rpm以上75rpm以下のいずれかの流量に制御される。また、吐出量は、2000g/min以上5000g/min以下のいずれかの吐出量に制御される。吐出圧力は、0.05MPa以上0.2MPa以下のいずれかの吐出圧力に制御される。
【0083】
また、複数のポンプ402が流路502aに配置されているときは、複数のポンプ402のそれぞれの吐出量が第4の流量に制御されても、流路502a、502cを流れる第2の液体の流量は、それぞれのポンプ402から吐出される流量の合計になる。これにより、循環中には、ポンプ402による中空微粒子111の負荷を抑えつつ、流路502a、502cを流れる第2の液体の流量を第3の流量と同じにすることもできる。また、プレポリマー及び第2の液体の撹拌槽203への供給を停止しているとき、ポンプ402による中空微粒子111への負荷をさらに低減させるには、ポンプ402自体を停止してもよい。
【0084】
この後、再び、プレポリマー及び第2の液体が撹拌槽203に供給されて、研磨層101が再び形成される。
【0085】
さらに、本実施形態においては、中空微粒子111を第1貯槽201及び第2貯槽202の両方に混在させて、第1貯槽201及び第2貯槽202の両方から中空微粒子111を撹拌槽203に供給してもよい。
【0086】
[研磨層の評価]
図3(a)は、第1貯槽201における第1の液体の粘度と循環時間との関係を示すグラフ図である。実線は、ポンプ401としてモーノポンプを使用した場合の結果である。破線は、ポンプ401としてサインポンプを使用した場合の結果である。
【0087】
図3(a)に示すように、モーノポンプの場合、第1の液体の循環時間が5時間以内では、第1の液体の粘度は、6000(cp)以上を維持する。しかし、循環時間が5時間を超えると、第1の液体の粘度は、4500(cp)以下に減少する。さらに、循環時間が20時間を超えると、第1の液体の粘度が4000(cp)よりもさらに低くなる。
【0088】
サインポンプの場合、第1の液体の循環時間が5時間以内では、第1の液体の粘度は、12000(cp)以上を維持する。しかし、循環時間が5時間を超えると、第1の液体の粘度は、8500(cp)以下に減少する。さらに、循環時間が20時間を超えると、第1の液体の粘度が7000(cp)よりもさらに低くなる。
【0089】
このように、第1の液体の循環時間が5時間を超えると、第1の液体の粘度が著しく減少する。つまり、ポンプからの負荷を受け続けた結果、中空微粒子111の損傷が進行していると考えられる。従って、第1の液体の循環時間は、5時間以内であることが好ましい。
【0090】
図3(b)は、研磨層101の密度と循環時間との関係を示すグラフ図である。グレーの棒グラフは、モーノポンプを使用した場合の結果である。白の棒グラフは、サインポンプを使用した場合の結果である。
【0091】
図3(b)に示すように、第1の液体の循環時間が5時間以内では、モーノポンプ及びサインポンプのいずれの場合でも、研磨層101の密度が0.85(g/cm
3)以下を維持する。しかし、第1の液体の循環時間が5時間を超えると、密度がモーノポンプ及びサインポンプのいずれの場合でも、0.9(g/cm
3)程度に上昇する。さらに、第1の液体の循環時間が48時間になると、モーノポンプ及びサインポンプのいずれの場合でも、密度が1.0(g/cm
3)程度に上昇する。
【0092】
このように、第1の液体の循環時間が5時間を超えると、中空微粒子111を含む研磨層101の密度が著しく上昇する。従って、第1の液体の循環時間は、5時間以内であることが好ましい。
【0093】
また、本評価ではいずれの場合も、第1の液体を第1貯槽201に100kg用意し、第1の液体の流量を18kg/minとして行ったため、理論上5.6分間に1度、第1の液体がポンプ410を通過することとなる。ポンプ410を通過する度に中空微粒子111がポンプ410により変形・破損される可能性が生じるが、上記の通り5時間以内、すなわち理論上の第1の液体のポンプ通過回数が54回以内であれば、中空微粒子111の変形・破損が所定範囲内に抑えることができる。このため、理論上の第1の液体のポンプ通過回数を54回以内とするのが好ましい。一方、理論上の第1の液体のポンプ通過回数が上記を超えてしまうと、中空微粒子111の変形・破損が増加してしまい、研磨層101の密度が著しく上昇してしまう。
【0094】
図3(c)は、研磨層101のショアD硬度と循環時間との関係を示すグラフ図である。グレーの棒グラフは、モーノポンプを使用した場合の結果である。白の棒グラフは、サインポンプを使用した場合の結果である。
【0095】
図3(c)に示すように、第1の液体の循環時間が5時間以内(又は理論上の第1の液体のポンプ通過回数が54回以内)では、モーノポンプ及びサインポンプのいずれの場合でも、研磨層101のショアD硬度は、48以下を維持する。しかし、第1の液体の循環時間が5時間を超える(又は理論上の第1の液体のポンプ通過回数が54回を超える)と、ショアD硬度は、モーノポンプ及びサインポンプのいずれの場合でも、50程度に上昇する。さらに、第1の液体の循環時間が48時間になると、硬度は、モーノポンプ及びサインポンプのいずれの場合でも、52(°)程度に上昇する。
【0096】
このように、第1の液体の循環時間が5時間を超える(又は理論上の第1の液体のポンプ通過回数が54回を超える)と、中空微粒子111を含む研磨層101の硬度が著しく上昇する。従って、第1の液体の循環時間は、5時間以内(又は理論上の第1の液体のポンプ通過回数が54回以内)であることが好ましい。
【0097】
以上、説明したように、第1の液体の循環時間が5時間以内(又は理論上の第1の液体のポンプ通過回数が54回以内)であれば、中空微粒子111に印加される応力が抑制されて、中空微粒子111の変形、破損が抑制される。これにより、中空微粒子111を含む研磨パッド100は、所望の特性を示す。
【0098】
図4は、研磨層101の断面像と循環時間との関係を示すグラフ図である。断面像は、電子顕微鏡により取得される。
【0099】
図4に示すように、第1の液体の循環時間が5時間以内(又は理論上の第1の液体のポンプ通過回数が54回以内)では、モーノポンプ及びサインポンプのいずれの場合でも中空微粒子111が研磨層101に均一に分散されている。しかし、第1の液体の循環時間が5時間を超え、24時間になると中空微粒子111の研磨層101における分散が5時間以内よりも疎になる傾向にある。この傾向は、第1の液体の循環時間が48時間になると、さらに顕著になる。すなわち、第1の液体を循環させる時間は、5時間以内(又は理論上の第1の液体のポンプ通過回数が54回以内)であることが好ましい。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。