(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、燃料としてLPGを使用する場合、燃料性状つまりプロパン率によって蒸発速度が違うため、吸気ポートの壁面に付着する壁面付着燃料量が異なる。例えば、プロパン率が高いほど、蒸発速度が速いため、壁面付着燃料量が少なくなる。そのため、燃料性状に応じて壁面付着燃料量を算出すべきであるが、中央燃料(プロパン率25%)が使用されているとして壁面付着燃料量が算出されているのが実情である。従って、中央燃料とは異なる燃料が使用された場合には、空燃比が不安定になり、排気性状やドライバビリティが悪化するおそれがある。
【0006】
ここで、プロパン率毎に壁面付着燃料量を算出するためのマップを作成することにより、プロパン率に応じて壁面付着燃料量を適切に算出することができる。ところが、マップを作成するための工数が多大になるとともに、多数のマップを記憶する必要があるので記憶容量が大きくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、燃料性状(プロパン率)にかかわらず壁面付着燃料量を適切に算出して、内燃機関に適正量の燃料を供給することができる燃料供給システム及び燃料供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一形態は、LPG燃料を貯蔵する燃料タンクと、前記燃料タンク内のLPG燃料を内燃機関に燃料供給配管
及びデリバリパイプを介して供給する燃料ポンプと、前記デリバリパイプから内燃機関へLPG燃料を噴射する燃料噴射装置と、余剰燃料を前記燃料タンクに戻すリターン配管と、前記燃料ポンプ及び前記燃料噴射装置の動作を制御する制御部とを備える内燃機関の燃料供給システムにおいて、前記制御部は、特定プロパン率の特定燃料を使用したときに、内燃機関の水温に基づいて内燃機関の吸気ポートに前記特定燃料が付着する壁面付着燃料量を算出するための壁面付着燃料量算出マップを記憶しており、内燃機関が過渡運転時である場合に、前記燃料タンク内の燃料圧力及び燃料温度
に基づき、LPGの飽和蒸気圧曲線を利用して使用燃料のプロパン率を算出し、
プロパン率が25%である中央燃料の蒸発エンタルピーと前記使用燃料のプロパン率
における蒸発エンタルピーとの比率に基づいて前記特定燃料に対する水温補正係数を算出し、前記水温補正係数
に内燃機関の水温を乗じて前記使用燃料のプロパン率に応じた補正後水温を算出し、前記補正後水温に基づき前記壁面付着燃料量算出マップを用いて、前記使用燃料のプロパン率に応じた壁面付着燃料量を算出し、
基本噴射量に前記壁面付着燃料量を加算して前記燃料噴射装置の燃料噴射量を決定することを特徴とする。
【0009】
この内燃機関の燃料供給システムでは、制御部により、内燃機関が過渡運転時である場合に、燃料タンク内の燃料圧力及び燃料温度から現在使用中の燃料(使用燃料)のプロパン率が算出され、そのプロパン率から特定燃料に対する水温補正係数が算出され、その水温補正係数から使用燃料のプロパン率に応じた補正後水温が算出され、その補正後水温に基づき特定燃料の壁面付着燃料量算出マップを用いて、使用燃料のプロパン率に応じた壁面付着燃料量が算出される。そして、算出された壁面付着燃料量を加算して燃料噴射装置からの燃料噴射量が決定される。そのため、現在使用している燃料の性状(プロパン率)に応じた適切な壁面付着燃料量が算出されるので、内燃機関に適正量の燃料を供給することができる。従って、内燃機関の過渡運転時において、空燃比を安定させることができ、排気性状やドライバビリティを向上させることができる。
【0010】
また、この内燃機関の燃料供給システムでは、壁面付着燃料量を算出するための壁面付着燃料量算出マップは、特定燃料に対するマップが1つだけである。そのため、マップを作成する工数、及び記憶容量が増えることはない。
【0011】
そして、上記の内燃機関の燃料供給システムにおいて、前記特定燃料は、プロパン率が25%である中央燃料であることが望ましい。
【0012】
中央燃料(プロパン率25%)は、最も流通量が多い燃料種であり、内燃機関の開発中の性能適合などの試験で評価燃料として一般的に使用されているからである。
【0013】
上記課題を解決するためになされた本発明の別形態は、LPG燃料を貯蔵する燃料タンクから燃料ポンプにより内燃機関に燃料供給配管
及びデリバリパイプを介して供給し、前記デリバリパイプから燃料噴射装置によって内燃機関へLPG燃料を噴射する際、内燃機関が過渡運転時である場合には、内燃機関の吸気ポートに付着する壁面付着燃料量を加算して前記燃料噴射装置からの燃料噴射量を決定する内燃機関の燃料供給制御方法において、前記燃料タンク内の燃料圧力及び燃料温度
に基づき、LPGの飽和蒸気圧曲線を利用して使用燃料のプロパン率を算出し、
プロパン率が25%である中央燃料の蒸発エンタルピーと前記使用燃料のプロパン率
における蒸発エンタルピーとの比率に基づいてプロパン率が25%の中央燃料に対する水温補正係数を算出し、前記水温補正係数
に内燃機関の水温を乗じて前記使用燃料のプロパン率に応じた補正後水温を算出し、中央燃料を使用したときの壁面付着燃料量を内燃機関の水温に基づいて算出するための壁面付着燃料量算出マップを用いて、前記補正後水温に基づき、前記使用燃料のプロパン率に応じた壁面付着燃料量を算出し、
基本噴射量に前記壁面付着燃料量を加算して前記燃料噴射装置の燃料噴射量を決定することを特徴とする。
【0014】
この内燃機関の燃料供給制御方法でも、上記のシステムと同様に、燃料タンク内の燃料圧力及び燃料温度から使用燃料のプロパン率を算出し、そのプロパン率から中央燃料に対する水温補正係数を算出し、その水温補正係数から使用燃料のプロパン率に応じた補正後水温を算出し、中央燃料を使用したときの壁面付着燃料量を内燃機関の水温に基づいて算出するための壁面付着燃料量算出マップを用いて、算出した補正後水温に基づき、使用燃料のプロパン率に応じた壁面付着燃料量を算出する。そして、算出した壁面付着燃料量を加算して燃料噴射装置からの燃料噴射量を決定する。そのため、現在使用している燃料の性状(プロパン率)に応じた適切な壁面付着燃料量を算出することができ、内燃機関に適正量の燃料を供給することができる。従って、内燃機関の過渡運転時において、空燃比を安定させることができ、排気性状やドライバビリティを向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る内燃機関の燃料供給システム及び燃料供給制御方法によれば、燃料性状(プロパン率)にかかわらず壁面付着燃料量を適切に算出して、内燃機関に適正量の燃料を供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の内燃機関の燃料供給システムを具体化した実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。そこで、実施形態に係るエンジンの燃料供給システムの構成を
図1及び
図2に示す。
図1において、多気筒のエンジン10は、周知の構造を有するレシプロタイプのものであり、本実施形態では、1番気筒#1〜4番気筒#4の4気筒を有する。エンジン10は、吸気通路15を通じて吸入される空気とLPG燃料との可燃混合気を、各気筒#1〜#4の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気を排気通路16を通じて排出させることにより、ピストンを動作させてクランクシャフトを回転させ、動力を得るようになっている。
【0018】
図2に示すように、吸気通路15には、エアクリーナ60とエアフローセンサ61とスロットルバルブ62と吸気ポート63が設けられている。エアクリーナ60は、外部から取り込む空気中の異物を除去するものである。エアフローセンサ61は、吸気通路15を流れてエンジン10に吸入される空気量(吸入空気量)を検知するものである。スロットルバルブ62は、バルブ開度を調整することにより吸気通路15を流れる空気の流量を制御するものである。吸気ポート63は、吸気通路15を通じて吸引された空気をエンジン10の各気筒#1〜#4へ分配するものである。
【0019】
一方、排気通路16には、A/Fセンサ65と触媒コンバータ66が設けられている。A/Fセンサ65は、エンジン10における空燃比を検知するものである。触媒コンバータ66は、エンジン10から排出される排気を浄化するものである。
【0020】
図1に示すように、各気筒#1〜#4に対応して、インジェクタ11〜14が設けられている。インジェクタ11〜14は、各気筒#1〜#4の吸気ポート63に対してLPG燃料を噴射するものである。これらのインジェクタ11〜14には、燃料タンク20内に設けられた燃料ポンプ21から圧送されたLPG燃料が、燃料供給配管22およびデリバリパイプ23を介して供給されるようになっている。なお、燃料ポンプ21は、エンジン10の運転状態に応じてポンプ回転数が制御されるようになっている。
【0021】
このようにして供給されたLPG燃料は、インジェクタ11〜14が作動することにより、吸気ポート63へ噴射され、空気との可燃混合気を形成して各気筒#1〜#4に取り込まれる。このとき、吸気ポート63の壁面に一部の燃料が付着するため、後述するように、その壁面付着燃料量を考慮してインジェクタ11〜14からの噴射量が制御されるようになっている。
【0022】
なお、燃料タンク20には、燃料タンク20内におけるLPG燃料の温度を検知する燃温センサ40およびLPG燃料の圧力を検知する燃圧センサ41とが設けられている。そして、燃温センサ40および燃圧センサ41で検出されるLPG燃料の温度およびLPG燃料の圧力に基づき、LPGの飽和蒸気圧曲線を利用して、燃料タンク20内(つまり現在使用中)のLPG燃料のプロパン率が算出されるようになっている。
【0023】
ここで、燃料供給配管22には、タンク遮断弁30とデリバリ遮断弁31が設けられている。タンク遮断弁30は燃料供給配管22のうち燃料タンク20近傍に配置されており、燃料タンク20からのLPG燃料の供給を遮断するためのものである。一方、デリバリ遮断弁31は燃料供給配管22のうちデリバリパイプ23近傍に配置されており、デリバリパイプ23へのLPG燃料の供給を遮断するためのものである。
【0024】
また、燃料供給配管22には、燃料タンク20とタンク遮断弁30の間にチェック弁35が設けられている。このチェック弁35は、燃料供給配管22から燃料ポンプ21へのLPG燃料の逆流を阻止する逆止弁である。また、デリバリパイプ23には、デリバリパイプ23内におけるLPG燃料の温度を検知する燃温センサ42およびLPG燃料の圧力を検知する燃圧センサ43とが設けられている。
【0025】
なお、各インジェクタ11〜14からの余剰燃料は、リターン配管25を通じて燃料タンク20内に戻されるようになっている。リターン配管25には、プレッシャレギュレータ26と残圧保持弁32とが配設されている。より具体的には、リターン配管25において、残圧保持弁32より上流側にプレッシャレギュレータ26が配置されている。残圧保持弁32の開弁・閉弁により、リターン配管25が連通・遮断するようになっている。この残圧保持弁32は、エンジン10の停止時に閉弁されてデリバリパイプ23内の燃圧を高く維持するようになっている。エンジン10の再始動性を向上させるためである。
【0026】
そして、タンク遮断弁30、デリバリ遮断弁31、および残圧保持弁32の開閉は、エンジンコントロールコンピュータ(ECU)50により制御されるようになっている。また、ECU50は、エンジン10の運転条件に合った燃料量をエンジン10に噴射供給するために、インジェクタ11〜14の開閉駆動および燃料ポンプ21の駆動(回転数)を制御するようになっている。このため、ECU50には、エンジン10の運転状況を把握するために各種センサから信号が入力されるようになっている。
【0027】
このようなECU50は、周知のように中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、およびバックアップRAM等を備えている。ROMは、各種制御に係る所定の制御プログラム、及び後述する中央燃料(プロパン率25%)の壁面付着燃料量算出マップを予め記憶している。そして、ECU(CPU)50は、これら制御プログラムに従い各種制御(例えば、プロパン率に応じた壁面付着燃料量の算出やインジェクタ11〜14の噴射量の決定など)を実行する。
【0028】
ここで、ECU50のROMに記憶されている壁面付着燃料量算出マップについて、
図3を参照しながら説明する。この壁面付着燃料量算出マップは、中央燃料(プロパン率25%)を使用したときに、吸気ポート63の壁面に付着する壁面付着燃料量を算出するためのマップである。この壁面付着燃料量算出マップは、
図3に実線で示すように、エンジン水温と壁面付着燃料量との対応関係をマップ化したものである。つまり、このマップを用いることにより、エンジン10の水温から中央燃料の壁面付着燃料量を算出することができる。このマップは、従来から性能適合試験により作成されているものである。
【0029】
なお、
図3に破線で示すマップは、プロパン率100%のLPG燃料(プロパン率上限燃料)の壁面付着燃料量算出マップである。このようにプロパン率が異なると、同じ運転条件下(同じ水温)において、壁面付着燃料量が変化することがわかる。このプロパン率100%のLPG燃料(プロパン率上限燃料)の壁面付着燃料量算出マップは、参考のために示したものであり、ECU50のROMには記憶されていない。
【0030】
そして、ECU50は、エンジン10が過渡運転時の場合に、
図3に実線で示す中央燃料の壁面付着燃料量算出マップを用いて、燃料性状(プロパン率)に応じた壁面付着燃料量を、以下の手順で算出する。そこで、ECU50が実行する過渡運転時における燃料供給制御の内容について、
図4を参照しながら説明する。
【0031】
まず、ECU50は、燃温センサ40および燃圧センサ41の各出力値に基づき、燃料タンク20内、言い換えると現在使用中のLPG燃料の温度(タンク燃温)および圧力(タンク燃圧)を検出する(ステップS1)。次に、ECU50は、検出したタンク燃温およびタンク燃圧に基づき、LPGの飽和蒸気圧曲線を利用して、燃料タンク20内のLPG燃料のプロパン率pを算出する(ステップS2)。
【0032】
そして、ECU50は、ステップS3で算出したプロパン率に基づき、水温補正係数Kを算出する(ステップS3)。水温補正係数Kは、ステップS2で算出したプロパン率pにおける水温をプロパン率25%における水温に換算するための係数である。この水温補正係数Kは、理論的に以下に示すように算出することができる。
【0033】
水温補正係数Kは、理論値(ΔH(p
0)/ΔH(p))に誤差補正係数αを乗じることにより算出することができる。すなわち、水温補正係数Kは、下記の数式により求めることができる。なお、誤差補正係数αは、吸気ポート63の壁温と水温との誤差を補正するための係数である。
【数1】
ΔH:蒸発エンタルピー
p:現在使用中の燃料のプロパン率
p
0:中央燃料のプロパン率
【0034】
ここで、プロパン単体の蒸発エンタルピーとブタン単体の蒸発エンタルピーは、それぞれ既知である。そのため、特定のプロパン率における蒸発エンタルピーを算出することができるので、現在使用中の燃料タンク20内のLPG燃料のプロパン率pに基づいて、水温補正係数Kを算出することができる。
【0035】
そして、吸気ポート63に付着して蒸発したLPG燃料の量をx
gとすると、蒸発速度は下記の数式で表すことができる。
【数2】
c:蒸発速度係数
x
0:噴射量(噴射総量)
【0036】
上記の数2から蒸発したLPG燃料の量x
gを求めると、下記の通りとなる。
【数3】
【0037】
ここでは、初期条件として、エンジン10に吸入される新気中にはLPG燃料は存在しないこととしている。このようにして求めた、蒸発したLPG燃料の量x
gは、噴射量(噴射総量)x
0と蒸発速度係数cで表すことができる。そして、噴射量(噴射総量)x
0は、燃料種別(燃料性状)によって1%以下の違いしかないため、モデル化する上で無視することができる。そうすると、蒸発速度係数cのみで蒸発した燃料量を算出することができる。また、噴射量(噴射総量)x
0がわかっているため、壁面付着燃料量も算出することができる。
【0038】
そして、蒸発速度係数cは、アレニウスの式より下記の通りとなる。
【数4】
A:温度に無関係な定数
k
B:ボルツマン定数
T:絶対温度
【0039】
プロパン率が異なるときに、LPG燃料の蒸発速度が同じになるためには、下記の数式が成立する必要がある。
【数5】
【0040】
上記の数5から下記の数式が導かれる。
【数6】
【0041】
上記の数6と数1とから、プロパン率pのときの温度(水温)に水温補正係数Kを乗じると、プロパン率25%のときの温度(水温)に換算することができることがわかる。そこで、ECU50は、ステップS3で算出した水温補正係数Kをエンジン10の水温THWに乗じることにより(K×THW)、補正後水温を算出する(ステップS4)。そして、ECU50は、補正後水温に基づき、
図3に実線で示す中央燃料の壁面付着燃料量算出マップを利用して、現在使用中のプロパン率pのLPG燃料における壁面付着燃料量を算出する(ステップS5)。
【0042】
例えば、プロパン率100%の燃料(プロパン率上限燃料)を使用している場合を想定すると、
プロパン単体の蒸発エンタルピー:21.6[kJ/kg(Air)]
ブタン単体の蒸発エンタルピー :23.6[kJ/kg(Air)]
であるから、中央燃料(プロパン率25%)の蒸発エンタルピーΔH(p
0)、および使用燃料であるプロパン率上限燃料(プロパン率100%)の蒸発エンタルピーΔH(p)は、
ΔH(p
0)=22.7[kJ/kg(Air)]
ΔH(p) =21.6[kJ/kg(Air)]
となる。なお、単位[kJ/kg(Air)]は、空気1kgとストイキ燃焼するための燃料質量あたりのエンタルピー(kJ)を示すものである。従って、水温補正係数Kは、
K=ΔH(p
0)/ΔH(p)=1.053
と算出されるので、例えば、現在の水温が283[K](10℃)であるとすると、補正後水温は298[K](25℃)となる。なお、誤差補正係数αは、α=1.0としている。
【0043】
ここで、
図3に示す中央燃料(実線)とプロパン率上限燃料(破線)のマップから、水温が10℃のときに、プロパン率上限燃料(破線)での壁面付着燃料量と同量となる中央燃料(実線)での水温は24.9℃となる。従って、使用燃料がプロパン率上限燃料である場合、上記の燃料供給制御で算出される補正後水温を用いて、中央燃料の壁面付着燃料量算出マップから壁面付着燃料量を算出することにより、燃料性状(プロパン率)に応じた壁面付着燃料量を精度良く求めることができる。つまり、プロパン率毎に壁面付着燃料量算出マップを記憶させなくても、従来と同様に1つの壁面付着燃料量算出マップ(本実施形態では、中央燃料の壁面付着燃料量算出マップ)を記憶させておけば、上記の燃料供給制御を実施することにより、現在使用中の燃料に応じた適切な壁面付着燃料量を求めることができるのである。
【0044】
その後、ECU50は、基本噴射量にステップS5で算出された壁面付着燃料量を加算して、インジェクタ11〜14の燃料噴射量を決定する(ステップS6)。従って、エンジン10の過渡運転時において、エンジン10に対して使用中のLPG燃料を適正量供給することができる。これにより、空燃比を安定させることができ、排気性状やドライバビリティを向上させることができる。
【0045】
以上、詳細に説明したように本実施形態に係るエンジン10の燃料供給システムによれば、ECU50により、エンジン10が過渡運転時である場合に、燃料タンク20内の燃料圧力及び燃料温度から現在使用中のLPG燃料のプロパン率pが算出され、プロパン率pから中央燃料に対する水温補正係数Kが算出され、水温補正係数Kからプロパン率pに応じた補正後水温が算出され、補正後水温に基づき中央燃料の壁面付着燃料量算出マップを用いて、プロパン率pに応じた壁面付着燃料量が算出される。そして、算出された壁面付着燃料量を加算してインジェクタ11〜14の燃料噴射量が決定される。そのため、エンジン10に対しプロパン率p(現在使用中のLPG燃料)に応じた適正量の燃料を供給することができる。従って、エンジン10の過渡運転時において、空燃比を安定させることができ、排気性状やドライバビリティを向上させることができる。
【0046】
なお、上記した実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、特定燃料を中央燃料(プロパン率25%)としているが、プロパン率25%以外の特定のプロパン率である燃料種を特定燃料とすることもできる。